説明

位相差素子用配向膜およびその製造方法、位相差素子およびその製造方法、表示装置

【課題】所望の配向方向からのずれが小さな位相差素子およびそれを備えた表示装置を提供する。
【解決手段】位相差素子30は、配向膜31の表面に位相差層32が形成されたものである。配向膜31は、基板40の表面に無配向性薄膜50が形成された構造となっている。無配向性薄膜50は基板40表面に形成された複数の微細溝42A,42Bの表面に倣って形成されている。無配向性薄膜50の表面に位置する多数の分子は、配向性を有しておらず、ランダムな方向を向いており、下地である基板40の表面(特に微細溝42A,42Bの表面)の分子配向の、位相差層32への影響を緩和している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配向を制御する配向膜およびその製造方法に関する。また、本発明は、配向を制御する配向膜を備えた位相差素子およびその製造方法に関する。さらに、本発明は、上述の位相差素子を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、偏光眼鏡を用いるタイプの立体映像表示装置として、左目用画素と右目用画素とで異なる偏光状態の光を射出させるものがある。このような表示装置では、視聴者が偏光眼鏡をかけた上で、左目用画素からの射出光を左目のみに入射させ、右目用画素からの射出光を右目のみに入射させることにより、立体映像の観察を可能とするものである。
【0003】
例えば、特許文献1では、左目用画素と右目用画素とで異なる偏光状態の光を射出させるために位相差素子が用いられている。この位相差素子では、一の方向に遅相軸または進相軸を有する位相差領域が左目用画素に対応して設けられ、上記位相差領域とは異なる方向に遅相軸または進相軸を有する位相差領域が右目用画素に対応して設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3360787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の位相差素子は、例えば、表面がラビング処理された配向膜の上に液晶性モノマーを塗布し、それを加熱し、硬化させることにより形成される。ところで、配向膜の上に液晶性モノマーを塗布すると、液晶性モノマーは配向膜の配向機能によって配向する。配向膜の配向機能は、主に、配向膜の表面の分子配向によって発現するが、配向膜の表面の溝形状によっても発現する。従って、液晶性モノマーの配向方向は、配向膜の表面の分子配向による配向作用と、配向膜の表面の溝形状による配向作用とによって決定される。
【0006】
ところで、上記の位相差素子は、例えば、以下のようにして作製することが可能である。まず、左目用の溝形状、および右目用の溝形状を有する板状またはロール状の原盤を用意する。次に、予め用意した光学フィルムの表面にUV硬化樹脂を塗布したのち、UV硬化樹脂に原盤を押し当て、UV硬化樹脂を硬化させる。その後、UV硬化樹脂から原盤を剥離する。このようにして、光学フィルム上に、原盤の溝形状が転写された樹脂層が形成されるが、この原盤の剥離の際に、全ての溝形状の延在方向と、剥離方向とを合わせることが容易ではない。なぜなら、左目用の溝形状の延在方向と、右目用の溝形状の延在方向とが互いに異なっているからである。そのため、上記の位相差素子では、左目用の位相差領域(液晶性モノマー)の配向方向、および右目用の位相差領域(液晶性モノマー)の配向方向が所望の方向からずれてしまうという問題があった。
【0007】
配向方向が所望の方向からずれてしまうという問題は、上記の位相差素子だけでなく、原盤を溝形状の延在方向とは異なる方向に剥離して作成した位相差素子全般に生じるものである。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、所望の配向方向からずれる可能性を低減することを可能にする配向膜およびその製造方法を提供することにある。第2の目的は、所望の配向方向からのずれが小さな位相差素子およびその製造方法を提供することにある。第3の目的は、上述の位相差素子を備えた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の配向膜は、特定の方向に延在する複数の溝を表面に有する基板と、複数の溝の表面に倣って形成された無配向性薄膜とを備えたものである。無配向性薄膜とは、薄膜の表面に位置する多数の分子が配向性を有していない、つまりランダムな方向を向いている薄膜のことを指している。本発明の位相差素子は、上記配向膜と、無配向性薄膜の表面に接して設けられた位相差層とを備えたものである。位相差層は、無配向性薄膜によって形成される窪みの延在方向に沿って配向すると共に重合した液晶材料を含んで構成されている。本発明の表示装置は、画像信号に基づいて駆動される表示パネルと、表示パネルを照明するバックライトユニットと、表示パネルとの関係でバックライトユニットとは反対側に設けられた上記位相差素子とを備えたものである。
【0010】
本発明の配向膜、位相差素子および表示装置では、基板表面に形成された複数の溝の表面に倣って無配向性薄膜が形成されている。これにより、製造過程において配向膜上に所定の材料を形成した場合に、複数の溝の表面に直接、所定の配向膜の材料を形成した場合と比べて、基板表面の分子配向の影響が、配向膜上の材料に及ぶ割合を低減することができる。
【0011】
本発明の配向膜の製造方法は、基板表面に、特定の方向に延在する複数の溝を形成する第1工程と、複数の溝の表面に倣った無配向性薄膜を形成する第2工程とを含むものである。本発明の位相差素子の製造方法は、基板表面に、特定の方向に延在する複数の溝を形成する第1工程と、複数の溝の表面に倣った無配向性薄膜を形成する第2工程と、無配向性薄膜の表面に接して液晶材料を塗布し、重合させることにより、液晶材料が無配向性薄膜によって形成される窪みの延在方向に沿って配向した位相差層を形成する第3工程とを含むものである。
【0012】
本発明の配向膜および位相差素子の製造方法では、複数の溝の表面に倣った無配向性薄膜が形成される。これにより、配向膜上に所定の材料を形成した場合に、複数の溝の表面に直接、所定の材料を形成した場合と比べて、基板表面の分子配向の影響が、配向膜上の材料に及ぶ割合を低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の配向膜、位相差素子および表示装置、ならびに本発明の配向膜および位相差素子の製造方法によれば、基板表面の分子配向の影響が、配向膜上の材料に及ぶ割合を低減するようにした。これにより、複数の溝の表面の分子が複数の溝の延在方向とは異なる方向に配向しているときであっても、例えば、製造過程において配向膜上の材料の配向方向を無配向性薄膜によって形成される窪みの延在方向に揃えることが可能となる。その結果、配向方向が所望の方向からずれる可能性を低減することができる。これにより、所望の配向方向からのずれが小さな位相差素子およびそれを備えた表示装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る表示装置の構成の一例を表す断面図である。
【図2】図1の位相差素子の構成の一例を表す斜視図と、図2の位相差素子の遅相軸の一例を表す概念図である。
【図3】図2の配向膜の構成の一例を表す斜視図である。
【図4】図3の基板の構成の一例を表す斜視図と、図3の基板に形成された微細溝の延在方向の一例を表す概念図である。
【図5】図1の位相差素子の構成の一例を表す断面図である。
【図6】図1の表示装置内の透過軸および遅相軸について説明するための概念図である。
【図7】図1の表示装置と偏光眼鏡との関係について表すシステム図である。
【図8】図1の表示装置の映像を右目で観察する際の透過軸および遅相軸の一例について説明するための概念図である。
【図9】図1の表示装置の映像を右目で観察する際の透過軸および遅相軸の他の例について説明するための概念図である。
【図10】図1の表示装置の映像を左目で観察する際の透過軸および遅相軸の一例について説明するための概念図である。
【図11】図1の表示装置の映像を左目で観察する際の透過軸および遅相軸の他の例について説明するための概念図である。
【図12】図2の位相差素子の製造方法の一例について説明するための模式図である。
【図13】図12に続く工程について説明するための模式図である。
【図14】図13に続く工程について説明するための模式図である。
【図15】図2の位相差素子の製造方法の他の例で用いられる製造装置の構成の一例を表す模式図である。
【図16】図15に続く工程で用いられる製造装置の構成の一例を表す模式図である。
【図17】図16に続く工程で用いられる製造装置の構成の一例を表す模式図である。
【図18】図2の位相差素子の製造方法のその他の例で用いられる製造装置の構成の一例を表す模式図である。
【図19】図18の製造装置の構成の他の例を表す模式図である。
【図20】従来の製造方法で形成された位相差素子の配向角度を表す特性図である。
【図21】本実施の形態の製造方法で形成された位相差素子の配向角度を表す特性図である。
【図22】本実施の形態の製造方法で形成された位相差素子の配向角度の、厚さ依存性を表す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.実施の形態(表示装置、位相差素子、配向膜)
2.変形例
3.実施例
【0016】
<実施の形態>
[表示装置1の構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る表示装置の断面構成を表すものである。表示装置1は、後述する偏光眼鏡2を眼球の前に装着した観察者(図示せず)に対して立体映像を表示する偏光眼鏡方式の表示装置である。この表示装置1は、バックライトユニット10、液晶表示パネル20(表示パネル)および位相差素子30をこの順に積層して構成されたものである。この表示装置1において、位相差素子30は液晶表示パネル20の光射出側の面に貼り合わされている。位相差素子30の表面が映像表示面となっており、観察者側に向けられている。
【0017】
なお、本実施の形態では、映像表示面が垂直面(鉛直面)と平行となるように表示装置1が配置されている。映像表示面は長方形状となっており、映像表示面の長手方向が水平方向(図中のy軸方向)と平行となっている。観察者は偏光眼鏡2を眼球の前に装着した上で、映像表示面を観察するものとする。偏光眼鏡2は、例えば円偏光タイプであり、表示装置1は、例えば円偏光眼鏡用の表示装置である。
【0018】
[バックライトユニット10]
バックライトユニット10は、例えば、反射板、光源および光学シート(いずれも図示せず)を有している。反射板は、光源からの射出光を光学シート側に戻すものであり、反射、散乱、拡散などの機能を有している。この反射板は、例えば、発泡PET(ポリエチレンテレフタレート)などによって構成されている。これにより、光源からの射出光を効率的に利用することができる。光源は、液晶表示パネル20を背後から照明するものであり、例えば、複数の線状光源が等間隔で並列配置されたり、複数の点状光源が2次元配列されたりしたものである。なお、線状光源としては、例えば、熱陰極管(HCFL;Hot Cathode Fluorescent Lamp)、冷陰極管(CCFL;Cold Cathode Fluorescent Lamp)などが挙げられる。また、点状光源としては、例えば、発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)などが挙げられる。光学シートは、光源からの光の面内輝度分布を均一化したり、光源からの光の発散角や偏光状態を所望の範囲内に調整したりするものであり、例えば、拡散板、拡散シート、プリズムシート、反射型偏光素子、位相差板などから選ばれた1または複数の部材によって構成されている。
【0019】
[液晶表示パネル20]
液晶表示パネル20は、複数の画素が行方向および列方向に2次元配列された透過型の表示パネルであり、映像信号に応じて各画素を駆動することによって画像を表示するものである。この液晶表示パネル20は、例えば、図1に示したように、バックライトユニット10側から順に、偏光板21A、透明基板22、画素電極23、配向膜24、液晶層25、配向膜26、共通電極27、カラーフィルタ28、透明基板29および偏光板21Bを有している。
【0020】
ここで、偏光板21Aは、液晶表示パネル20の光入射側に配置された偏光板であり、偏光板21Bは液晶表示パネル20の光射出側に配置された偏光板である。偏光板21A,21Bは、光学シャッターの一種であり、ある一定の振動方向の光(偏光)のみを通過させる。偏光板21A,21Bはそれぞれ、例えば、偏光軸が互いに所定の角度だけ(例えば90度)異なるように配置されており、これによりバックライトユニット10からの射出光が液晶層を介して透過し、あるいは遮断されるようになっている。
【0021】
偏光板21Aの透過軸(図示せず)の向きは、バックライトユニット10から射出された光を透過可能な範囲内に設定される。例えば、バックライトユニット10から射出される光の偏光軸が垂直方向となっている場合には、偏光板21Aの透過軸も垂直方向を向いている。また、例えば、バックライトユニット10から射出される光の偏光軸が水平方向となっている場合には、偏光板21Aの透過軸も水平方向を向いている。なお、バックライトユニット10から射出される光は直線偏光光である場合に限られるものではなく、円偏光や、楕円偏光、無偏光であってもよい。
【0022】
偏光板21Bの偏光軸(図示せず)の向きは、液晶表示パネル20を透過した光を透過可能な範囲内に設定される。例えば、偏光板21Aの偏光軸の向きが水平方向となっている場合には、偏光板21Bの偏光軸はそれと直交する方向(垂直方向)を向いている。偏光板21Aの偏光軸の向きが垂直方向となっている場合には、偏光板21Bの偏光軸はそれと直交する方向(水平方向)を向いている。
【0023】
透明基板22,29は、一般に、可視光に対して透明な基板である。なお、バックライトユニット10側の透明基板には、例えば、透明画素電極に電気的に接続された駆動素子としてのTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)および配線などを含むアクティブ型の駆動回路が形成されている。複数の画素電極23は、例えば透明基板22の面内に行列状に配置されている。この画素電極23は、例えば酸化インジウムスズ(ITO;Indium Tin Oxide)からなり、画素ごとの電極として機能する。配向膜24,26は、例えばポリイミドなどの高分子材料からなり、液晶に対して配向処理を行う。液晶層25は、例えば、VA(Vertical Alignment)モード、TN(Twisted Nematic)モードまたはSTN(Super Twisted Nematic)モードの液晶からなる。この液晶層25は、図示しない駆動回路からの印加電圧により、バックライトユニット10からの射出光を画素ごとに透過または遮断する機能を有している。共通電極27は、例えばITOからなり、共通の対向電極として機能する。カラーフィルタ28は、バックライトユニット10からの射出光を、例えば、赤(R)、緑(G)および青(B)の三原色にそれぞれ色分離するためのフィルタ部28Aを配列して形成されている。このカラーフィルタ28では、フィルタ部28Aは画素間の境界に対応する部分に、遮光機能を有するブラックマトリクス部28Bが設けられている。
【0024】
[位相差素子30]
次に、位相差素子30について説明する。図2(A)は、本実施の形態の位相差素子30の構成の一例を斜視的に表したものである。図2(B)は、図2(A)の位相差素子30の遅相軸について表したものである。
【0025】
位相差素子30は、液晶表示パネル20の偏光板21Bを透過した光の偏光状態を変化させるものである。この位相差素子30は、例えば、図1、図2(A)に示したように、配向膜31と、位相差層32とを有している。配向膜31は、液晶などを配向させる配向機能を有するものであり、例えば、後述の液晶層46(位相差層32の前躯体に相当する層)を特定の方向に配向させる機能を有している。
【0026】
図3は、配向膜31の構成の一例を斜視的に表したものである。図4(A)は、後述の基板40の構成の一例を斜視的に表したものであり、図4(B)は、後述の微細溝42A,42Bの延在方向の一例を表したものである。図5(A),(B)は、図2(A)の位相差素子30の断面構成の一例を表したものである。
【0027】
以上を換言すると、図4(A)の基板40上に無配向性薄膜50を設けたものが図3に示す配向膜31であり、さらに、配向膜31上に位相差層32を設けたものが図2(A)に示す位相差素子30である。
【0028】
図5(A)は、位相差素子30のうち右目用領域41A(後述)に対応する部分の断面構成の一例を表したものであり、図5(B)は、位相差素子30のうち左目用領域41B(後述)に対応する部分の断面構成の一例を表したものである。
【0029】
配向膜31は、図3に示したように、基板40と、無配向性薄膜50とを有している。基板40は、例えば、透明樹脂フィルムによって構成されている。透明樹脂フィルムとしては、光学異方性の小さい、つまり複屈折の小さいものが好ましい。そのような透明樹脂フィルムとしては、例えば、COP(シクロオレフィンポリマー)、日本ゼオン社のゼオノア(登録商標)もしくはゼオネックス(登録商標)、JSR社のアートン(登録商標)、またはTAC(トリアセチルセルロース)が挙げられる。TACは比較的安価であるが、比較的高い湿度膨張係数を有しており、収縮・膨張しやすいという性質を有している。基板40は、単層構造となっていてもよいし、後述の微細溝42A,42Bの形成されている最表層と、最表層を支持する層との積層構造となっていてもよい。なお、後者の場合に、最表層を支持する層が例えばTACにより形成され、最表層がUV硬化樹脂により形成されていてもよい。
【0030】
基板40は、図4(A)に示したように、表面に、右目用領域41A(第1溝領域)および左目用領域41B(第2溝領域)を有している。右目用領域41Aおよび左目用領域41Bは、共通する一の方向(水平方向)に延在する帯状の形状となっている。これら右目用領域41Aおよび左目用領域41Bは、基板40の面内方向に、隣接して規則的に配置されており、具体的には、右目用領域41Aおよび左目用領域41Bの短手方向(垂直方向)に交互に配置されている。従って、右目用領域41Aおよび左目用領域41Bが互いに隣接する(接する)境界線BL1は、右目用領域41Aおよび左目用領域41Bの長手方向(水平方向)と同一の方向を向いている。また、右目用領域41Aおよび左目用領域41Bは、複数の画素電極23の配列に対応して配置されている。
【0031】
右目用領域41Aは、図4(A),(B)に示したように、境界線BL1と直交以外の角度θ1で交差する方向G1(第1方向)に延在する複数の微細溝42A(第1溝)を含んでいる。一方、左目用領域41Bは、図4(A),(B)に示したように、境界線BL1と直交以外の角度θ2で交差する方向であって、かつ微細溝42Aの延在方向とは異なる方向G2(第2方向)に延在する複数の微細溝42B(第2溝)を含んでいる。微細溝42Aの延在方向と微細溝42Bの延在方向とは、例えば互いに直交しており、例えば、θ1が−45°(境界線BL1を基準に時計回り方向に45°)となっており、θ2が+45°(境界線BL1を基準に反時計回り方向に45°)となっている。
【0032】
各微細溝42Aの開口幅W1(複数の微細溝42Aのピッチ)(図5(A))は、例えば2μm以下となっている。複数の微細溝42Aのピッチが2μm以下となっていれば、製造過程において、複数の微細溝42A上に無配向性薄膜50を形成したときに、その上の液晶層46(後述)を配向させることが容易となる。各微細溝42Bの開口幅W2(複数の微細溝42Bのピッチ)(図5(B))は、例えば2μm以下となっている。複数の微細溝42Bのピッチが2μm以下となっていれば、製造過程において、複数の微細溝42B上に無配向性薄膜50を形成したときに、その上の液晶層46(後述)を配向させることが容易となる。各微細溝42A,42Bに隣接するストライプ状の山の高さH1,H2は、例えば、数百nm程度となっている。なお、高さH1,H2は、微細溝42A,42Bに隣接するストライプ状の山の頂部42Cから、その頂部42Cの両側に位置する微細溝42Aまたは微細溝42Bの底部42D同士を結んだ直線まで、基板40の法線方向に延ばした線分の長さである。
【0033】
無配向性薄膜50は、この無配向性薄膜50の表面に位置する多数の分子が配向性を有していない、つまりランダムな方向を向いている薄膜である。無配向性薄膜50は、下地である基板40の表面(特に微細溝42A,42Bの表面)の分子配向の、位相差層32への影響を緩和するものである。無配向性薄膜50は、例えばUV硬化樹脂からなる。UV硬化樹脂としては、例えば、UV硬化アクリル樹脂が挙げられる。無配向性薄膜50がUV硬化アクリル樹脂を硬化させることにより形成されたものである場合に、無配向性薄膜50の原料である未硬化のUV硬化アクリル樹脂は、3官能以上の官能基を有するものであることが好ましい。
【0034】
無配向性薄膜50は、基板40と同一材料によって構成されていてもよいし、基板40とは異なる材料によって構成されていてもよい。なお、後述するように無配向性薄膜50は基板40とは別工程で作成されるので、無配向性薄膜50が、基板40と同一材料によって構成されている場合であっても、無配向性薄膜50と基板40との間には境界が存在する。つまり、位相差素子30の断面を解析したときに無配向性薄膜50の存在を確認することが可能である。無配向性薄膜50は、例えば、塗布やスパッタなどの、分子に配向性が生じないような方法によって作成されている。無配向性薄膜50は、複数の微細溝42A,42Bの表面に倣って形成されており、おおむね均一な厚さとなっている。無配向性薄膜50の厚さは、下地の分子配向の影響をなくする観点からは、20nm以上となっていることが好ましい。無配向性薄膜50の厚さの上限は、後述の窪み50A,50Bが埋まらない程度の厚さとなっていることが好ましい。
【0035】
無配向性薄膜50は、例えば、図5(A),(B)に示したように、複数の微細溝42A,42Bの表面に倣って形成されており、複数の微細溝42A,42Bによって形成される凹凸に対応してうねっている。無配向性薄膜50は、複数の微細溝42Aの直上に窪み50Aを形成しており、複数の微細溝42Bの直上に窪み50Bを形成している。無配向性薄膜50によって形成される複数の窪み50Aは、微細溝42Aの延在方向に延在しており、無配向性薄膜50によって形成される複数の窪み50Bは、微細溝42Bの延在方向に延在している。窪み50Aの延在方向と窪み50Bの延在方向とは、例えば互いに直交しており、例えば、窪み50A(微細溝42Aに対応)は境界線BL1を基準に時計回り方向に45°回転した方向(角度θ1)に延在しており、窪み50B(微細溝42Bに対応)は境界線BL1を基準に反時計回り方向に45°回転した方向(角度θ21)に延在している(図4(A),(B)参照)。
【0036】
各窪み50Aは、その形状(特に各窪み50Aのエッジ部分)によって液晶などを配向させる配向機能を有している。各窪み50Aの開口幅W3(複数の窪み50Aのピッチ)は、例えば2μm以下となっている。複数の窪み50Aのピッチが2μm以下となっていれば、製造過程において、複数の窪み50A上の液晶層46(後述)を形成したときに、液晶層46内の液晶分子を配向させることが容易となる。複数の窪み50Aのピッチは、例えば、2μm以下となっており、好ましくは1μm以下となっている。特に、複数の窪み50Aのピッチが1μm以下となっている場合には、例えば、従来技術であるSiO斜め蒸着法で作成した配向膜のオーダーパラメータよりも高いオーダーパラメータを得ることができる。
【0037】
各窪み50Aの深さD1は、30nm以上、1μm以下となっていることが好ましい。なお、深さD1は、窪み50Aの底部50Cから、窪み50Aを両側から挟み込むストライプ状の山の頂部50D同士を結んだ直線まで、基板40の法線方向に延ばした線分の長さである。深さD1が10nm未満の場合には、液晶層46内の液晶分子を正しく配向させることが困難となり、深さD1が1μmを越える場合には、各窪み50Aの縁部で液晶の配向が乱れる傾向がある。
【0038】
各窪み50Bも、各窪み50Aと同様、その形状(特に各窪み50Bのエッジ部分)によって液晶などを配向させる配向機能を有している。各窪み50Bの開口幅W4(複数の窪み50Bのピッチ)は、例えば2μm以下となっている。複数の窪み50Bのピッチが2μm以下となっていれば、製造過程において、複数の窪み50B上の液晶層46(後述)を形成したときに、液晶層46内の液晶分子を配向させることが容易となる。複数の窪み50Bのピッチは、1μm以下となっていることが好ましい。複数の窪み50Bのピッチが1μm以下となっている場合には、例えば、従来技術であるSiO斜め蒸着法で作成した配向膜のオーダーパラメータよりも高いオーダーパラメータを得ることができる。
【0039】
各窪み50Bの深さD2は、30nm以上、1μm以下となっていることが好ましい。なお、深さD2は、窪み50Bの底部50Eから、窪み50Bを両側から挟み込むストライプ状の山の頂部50F同士を結んだ直線まで、基板40の法線方向に延ばした線分の長さである。深さD2が10nm未満の場合には、液晶層46内の液晶分子を正しく配向させることが困難となり、深さD2が1μmを越える場合には、各窪み50Bの縁部で液晶の配向が乱れる傾向がある。
【0040】
位相差層32は、光学異方性を有する薄い層である。この位相差層32は、配向膜31(無配向性薄膜50)の表面に設けられたものであり、液晶表示パネル20の光射出側の表面(偏光板21B)に貼り付けられている。この位相差層32は、例えば、配向膜31(無配向性薄膜50)の表面に、液晶性モノマーを含む溶液を配置して、液晶性モノマーを配向させたのち、配向した後の液晶性モノマーを重合させることにより形成されたものである。この位相差層32は、遅相軸の向きが互いに異なる二種類の位相差領域(右目用領域32A,左目用領域32B)を有している。
【0041】
右目用領域32Aおよび左目用領域32Bは、例えば、図1、図2(A)に示したように、共通する一の方向(水平方向)に延在する帯状の形状となっている。これら右目用領域32Aおよび左目用領域32Bは、配向膜31の面内方向に、隣接して規則的に配置されており、具体的には、右目用領域32Aおよび左目用領域32Bの短手方向(垂直方向)に交互に配置されている。位相差層32の右目用領域32Aは、図4(A)に示す右目用領域41A(第1溝領域)の直上に配置されており、位相差層32の左目用領域32Bは、図4(A)に示す左目用領域41B(第2溝領域)の直上に配置されている。従って、位相差層32の右目用領域32Aおよび左目用領域32Bが互いに隣接する(接する)境界線BL2は、右目用領域41Aおよび左目用領域41Bを隔てる境界線BL1と同一の方向を向いている(図2(A)、図4(A)参照)。また、位相差層32の右目用領域32Aおよび左目用領域32Bは、複数の画素電極23の配列に対応して配置されている。
【0042】
位相差層32の右目用領域32Aは、図2(A),(B)に示したように、境界線BL2と直交以外の角度θ3で交差する方向に遅相軸AX1を有している。遅相軸AX1は、図4(A)に示す複数の微細溝42A(無配向性薄膜50によって形成される窪み50A)の延在方向と平行な方向または所定の角度で交差する方向を向いている。一方、位相差層32の左目用領域32Bは、図2(A),(B)に示したように、境界線BL2と直交以外の角度θ4で交差する方向であって、かつ遅相軸AX1の向きとは異なる方向に遅相軸AX2を有している。遅相軸AX2は、図4(A)に示す複数の微細溝42B(無配向性薄膜50によって形成される窪み50B)の延在方向と平行な方向または所定の角度で交差する方向を向いている。遅相軸AX1および遅相軸AX2は、例えば互いに直交しており、例えば、θ3が−45°(境界線BL2を基準に時計回り方向に45°)となっており、θ4が+45°(境界線BL2を基準に反時計回り方向に45°)となっている。
【0043】
ここで、「遅相軸AX1の向きとは異なる方向」とは、単に、遅相軸AX1の向きとは異なるということを意味しているだけでなく、境界線BL2に関して、遅相軸AX1とは反対方向に回転しているということを意味している。つまり、遅相軸AX1,AX2は、境界線BL2を挟んで互いに異なる方向に回転している。遅相軸AX1の角度θ3と、遅相軸AX2の角度θ4とは、絶対値としては(回転方向を考慮しない場合には)、互いに等しいことが好ましい。ただし、これらが、製造誤差(製造ばらつき)などによって若干、互いに異なっていてもよい。
【0044】
遅相軸AX1,AX2は、図2(A),(B)に示したように、水平方向および垂直方向のいずれの方向とも交差する方向を向いている。また、遅相軸AX1,AX2は、遅相軸AX1と遅相軸AX2とがなす角(図2(B)において水平方向のなす角)の二等分線が境界線BL2と平行な方向を向くような方向に向いていることが好ましい。
【0045】
遅相軸AX1,AX2は、図6(A),(B)に示したように、液晶表示パネル20の偏光板21Bの偏光軸AX4とも交差する方向を向いている。さらに、遅相軸AX1は、後述する偏光眼鏡2の右目用位相差フィルム61Bの遅相軸AX5の向きと同一の方向か、またはその方向と対応する方向を向いており、偏光眼鏡2の左目用位相差フィルム62Bの遅相軸AX6の向きと異なる方向を向いている。一方、遅相軸AX2は、遅相軸AX6の向きと同一の方向か、またはその方向と対応する方向を向いており、遅相軸AX5の向きと異なる方向を向いている。
【0046】
[偏光眼鏡2]
次に、偏光眼鏡2について説明する。図7は、偏光眼鏡2の構成の一例を、表示装置1と共に斜視的に表したものである。偏光眼鏡2は、観察者(図示せず)の眼球の前に装着されるものであり、映像表示面に映し出される映像を観察する際に観察者によって用いられるものである。この偏光眼鏡2は、例えば、図7に示したように、右目用眼鏡61および左目用眼鏡62を有している。
【0047】
右目用眼鏡61および左目用眼鏡62は、表示装置1の映像表示面と対向するように配置されている。なお、これら右目用眼鏡61および左目用眼鏡62は、図7に示したように、できるだけ一の水平面内に配置されることが好ましいが、多少傾いた平坦面内に配置されていてもよい。
【0048】
右目用眼鏡61は、表示装置1から射出された映像光Lのうち右目用画像光L2を選択的に透過するものであり、例えば、偏光板61Aおよび右目用位相差フィルム61Bを有している。一方、左目用眼鏡62は、表示装置1から射出された映像光Lのうち左目用画像光L3を選択的に透過するものであり、例えば、偏光板62Aおよび左目用位相差フィルム62Bを有している。右目用位相差フィルム61Bは、偏光板61Aの表面であって、かつ光入射側に設けられたものである。左目用位相差フィルム62Bは、偏光板62Aの表面であって、かつ光入射側に設けられたものである。
【0049】
偏光板61A,62Aは、偏光眼鏡2における光Lの光射出側に配置されており、ある一定の振動方向の光(偏光)のみを通過させる。偏光板61A,62Aの偏光軸AX7,AX8はそれぞれ、表示装置1における偏光板21Bの偏光軸AX4と直交する方向を向いている(図8(A),(B))。偏光軸AX7,AX8はそれぞれ、例えば、図8(A),(B)に示したように、偏光軸AX4が垂直方向を向いている場合には水平方向を向いており、偏光軸AX4が水平方向を向いている場合には垂直方向を向いている。
【0050】
右目用位相差フィルム61Bおよび左目用位相差フィルム62Bは、光学異方性を有する薄い層である。右目用位相差フィルム61Bの遅相軸AX5および左目用位相差フィルム62Bの遅相軸AX6は、図8(A),(B)に示したように、水平方向および垂直方向のいずれの方向とも交差する方向を向いており、偏光板61A,62Aの偏光軸AX7,AX8とも交差する方向を向いている。また、遅相軸AX5,AX6は、遅相軸AX5,AX6がなす角の水平方向の二等分線が境界線BL2と直交する方向を向くような方向に向いていることが好ましい(図2参照)。また、遅相軸AX5は、遅相軸AX1の向きと同一の方向か、またはその方向と対応する方向を向いており、遅相軸AX2の向きと異なる方向を向いている。一方、遅相軸AX6は、遅相軸AX2と同一の方向か、またはその方向と対応する方向を向いており、遅相軸AX1の向きと異なる方向を向いている(以上、図6、図8参照)。
【0051】
[リタデーション]
ところで、偏光眼鏡2を用いて観察した場合に、例えば、図8(A),(B)、図9(A),(B)に示したように、右目には右目用画素の画像が認識でき、左目には右目用画素の画像が認識できないようにすることが必要である。また、同時に、例えば、図10(A),(B)、図11(A),(B)に示したように、左目には左目用画素の画像が認識でき、右目には左目用画素の画像が認識できないようにすることが必要である。そのためには、以下に示したように、位相差層32の右目用領域32Aおよび偏光眼鏡2の右目用位相差フィルム61Bのリタデーションならびに位相差層32の左目用領域32Bおよび偏光眼鏡2の左目用位相差フィルム62Bのリタデーションを設定することが好ましい。
【0052】
具体的には、右目用領域32Aおよび左目用領域32Bのリタデーションのうち一方が+λ/4となっており、他方が−λ/4となっていることが好ましい。ここで、リタデーションの符号が逆になっているのは、それぞれの遅相軸の向きが90°異なることを示している。このとき、右目用位相差フィルム61Bのリタデーションは右目用領域32Aのリタデーションと同一となっていることが好ましく、左目用位相差フィルム62Bのリタデーションは左目用領域32Bのリタデーションと同一となっていることが好ましい。
【0053】
[位相差素子30の製造方法]
次に、位相差素子30の製造方法の一例について説明する。以下では、位相差素子30に含まれる配向膜31を製造する際に、板状の原盤を用いた場合と、ロール状の原盤を用いた場合とに分けて説明する。
【0054】
(板状の原盤を用いた場合)
図12、図13は、板状の原盤により配向膜31を製造する過程を示したものである。まず、基板40を作成する。例えば、図4(A)に示すような複数の微細溝42Aおよび複数の微細溝42Bの反転パターンが形成された板状の原盤110の表面に、例えばUV硬化アクリル樹脂液を含むUV硬化樹脂層43を配置したのち、UV硬化樹脂層43を、例えばTACからなる基材フィルム44で封止する(図12)。次に、図示しないが、UV硬化樹脂層43に紫外線を照射して、UV硬化樹脂層43を硬化させたのち、原盤110を剥離する。これにより、基板40が形成される(図13)。
【0055】
次に、基板40のうち、複数の微細溝42Aおよび複数の微細溝42B側の表面に、例えば塗布またはスパッタにより、例えばUV硬化アクリル樹脂液を含むUV硬化樹脂層45を配置する(図13)。UV硬化樹脂層45は、UV硬化樹脂層43と同一材料によって構成されていてもよいし、UV硬化樹脂層43とは異なる材料によって構成されていてもよい。続いて、図示しないが、UV硬化樹脂層45に紫外線を照射して、UV硬化樹脂層45を硬化させる。
【0056】
例えば、基板40のうち、複数の微細溝42Aおよび複数の微細溝42B側の表面に、UV硬化アクリル樹脂液(またはこれを含む混合液)を、2、3、4、または5番手のバーコーターを用いて手塗りで成膜する。続いて、成膜したUV硬化アクリル樹脂液(またはこれを含む混合液)からなる層を、例えば、80℃のオーブンの中で30秒乾燥させたのち、例えば約1000mJ/cm2の強度によるUV照射により硬化させる。これにより、複数の微細溝42A,42Bの表面に倣って無配向性薄膜50が形成される。このようにして、配向膜31が形成される(図14)。
【0057】
ところで、UV硬化樹脂層45としては、3官能以上の官能基を有するUV硬化アクリル樹脂を用いることが好ましく、例えば、表1の実施例1〜4に示した樹脂を用いることが好ましい。表1の比較例1〜4に示したような官能基の数が少ない材料を用いた場合には、密着性があまり良くなく、無配向性薄膜50が基板40から剥離することが多くなる。一方、表1の実施例1〜4に示したような官能基の数が多い(3以上の)材料を用いた場合には、密着性が良く、無配向性薄膜50が基板40から剥離することがない。ただし、表1の実施例4に示したような官能基の数が多い(5以上の)材料を用いた場合には、粘度が非常に高くなり、硬化による寸法変化(カール)が大きくなってしまう。従って、UV硬化アクリル樹脂のうち、官能基の数が3または4となっているものをUV硬化樹脂層45として用いることにより、密着性および寸法変化の双方において良好な結果を得ることができる。
【表1】

【0058】
なお、表1の密着性において○としているのは、クロスハッチテープ剥離試験において100回中1度も剥離が生じなかったことを意味しており、表1の密着性において△としているのは、クロスハッチテープ剥離試験において剥離が生じなかったものが100回中20以上100未満であったことを意味している。また、表1の密着性において×としているのは、クロスハッチテープ剥離試験において剥離が生じなかったものが100回中20に満たなかったことを意味している。また、表1の寸法変化において○としているのは、カール量計測試験において全ての寸法変化量(カール量)が許容範囲内であったことを意味しており、表1の寸法変化において△としているのは、カール量計測試験において寸法変化量(カール量)が許容範囲内にあったものが100回中20以上100未満であったことを意味している。
【0059】
図14は、上記のようにして形成した配向膜31を利用して位相差素子30を製造する過程を示したものである。配向膜31のうち、無配向性薄膜50側の表面に、液晶性モノマーを含む液晶層46を、例えばロールコータなどでコーティングして形成する。このとき、液晶層46には、必要に応じて、液晶性モノマーを溶解させるための溶媒、重合開始剤、重合禁止剤、界面活性剤、レベリング剤などを用いることができる。溶媒としては、特に限定されないが、液晶性モノマーの溶解性が高く、室温での蒸気圧が低く、また室温で蒸発しにくいものを用いることが好ましい。室温で蒸発しにくい溶媒としては、例えば、1−メトキシ−2−アセトキシプロパン(PGMEA)、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)などが挙げられる。これは、室温で蒸発しやすい溶媒を用いると、液晶層46を塗布形成後の溶媒の蒸発速度が速すぎて、溶媒の蒸発後に形成される液晶性モノマーの配向に乱れが生じやすくなるためである。
【0060】
続いて、図示しないが、配向膜31の表面に塗布された液晶層46の液晶性モノマーの配向処理(加熱処理)を行う。この加熱処理は、液晶性モノマーの相転移温度以上であって、特に溶媒を用いた場合には、この溶媒が乾燥する温度以上の温度で行うようにする。ここで、前工程における液晶性モノマーのコーティングによって、液晶性モノマーと配向膜31との界面にずり応力が働き、流れによる配向(流動配向)や力による配向(外力配向)が生じ、液晶分子が意図しない方向に配向してしまうことがある。上記加熱処理は、このような意図しない方向に配向してしまった液晶性モノマーの配向状態を一旦キャンセルするために行われる。これにより、液晶層46では、溶媒が乾燥して液晶性モノマーのみとなり、その状態は等方相となる。
【0061】
この後、図示しないが、液晶層46を相転移温度よりも少し低い温度まで徐冷する。これにより、液晶性モノマーは、配向膜31の表面に形成された複数の微細溝42Aおよび複数の微細溝42Bのパターンに応じて配向する。すなわち、液晶性モノマーが複数の微細溝42Aおよび複数の微細溝42Bの延在方向に沿って配向する。
【0062】
続いて、図示しないが、配向処理後の液晶層46に対して、例えばUV光を照射することにより、液晶性モノマーを重合させる。なお、このとき、処理温度は、一般に室温付近であることが多いが、リタデーション値を調整するために温度を相転移温度以下の温度まで上げてもよい。これにより、複数の微細溝42Aおよび複数の微細溝42Bの延在方向に沿って液晶分子の配向状態が固定され、右目用領域32Aおよび左目用領域32Bが形成される。以上により、位相差素子30が完成する。
【0063】
(変形例1)
なお、上記とは異なる方法で基板40を作製してもよい。例えば、基材フィルム44の熱変形による形状転写を使って、基板40として単層構造のものを作製することが可能である。この場合、基材フィルム44を、高温に加熱された板状の原盤110に押し付けて、基材フィルム44の表面に直接、微細溝形状を形成する(図示せず)。具体的には、上記の板状の原盤110の表面に基材フィルム44を直接配置した状態で、高温・真空雰囲気下にてプレスを行い、冷却後に原盤110を剥離する。これにより、凹凸パターンが転写された単層構造の基板40が形成される。なお、凹凸パターンが転写された単層構造の基板40の製造方法以外については、上記製造方法と同様の方法で位相差素子30を作製することができる。
【0064】
(ロール状の原盤を用いた場合)
図15は、ロール状の原盤により配向膜31を製造する製造装置の構成の一例を表したものである。図15に記載の製造装置は、巻き出しロール200と、ガイドロール220,230,250,260と、ニップロール240と、型ロール210と、巻き取りロール270と、吐出機280と、紫外線照射機290とを備えたものである。ここで、巻き出しロール200は、基材フィルム44を同心円状に巻いたものであり、基材フィルム44を供給するためものである。巻き出しロール200から巻き出された基材フィルム44は、ガイドロール220、ガイドロール230、ニップロール240、型ロール210、ガイドロール250、ガイドロール260の順に流れて行き、最後に巻き取りロール270で巻き取られるようになっている。ガイドロール220,230は、巻き出しロール200から供給された基材フィルム44をニップロール240に導くためのものである。ニップロール240は、ガイドロール230から供給された基材フィルム44を型ロール210に押し当てるものである。型ロール210は、ニップロール240と所定の間隙を介して配置されている。型ロール210の周面には、複数の微細溝42Aおよび複数の微細溝42Bの反転パターンが形成されている。ガイドロール250は、型ロール210に巻きついている基材フィルム44を剥がすためのものである。また、ガイドロール260は、ガイドロール250によって剥がされた基材フィルム44を巻き取りロール270に導くためのものである。吐出機280は、巻き出しロール200から供給された基材フィルム44のうちガイドロール230と接する部分と所定の間隙を介して設けられている。吐出機280は、例えばUV硬化アクリル樹脂液を含むUV硬化樹脂液43Dを、基材フィルム44上に滴下するようになっている。紫外線照射機290は、巻き出しロール200から供給された基材フィルム44のうちニップロール240を通過した後の部分であって、かつ型ロール210と接している部分に対して紫外線を照射するようになっている。
【0065】
このような構成の製造装置を用いて、基板40を形成する。具体的には、まず、巻き出しロール200から巻き出した基材フィルム44を、ガイドロール220を介してガイドロール230に導いたのち、基材フィルム44上に、UV硬化樹脂液43Dを、例えば吐出機280から滴下して、UV硬化樹脂層43を形成する。基材フィルム44上のUV硬化樹脂層43をニップロール240で、基材フィルム44を介して型ロール210の周面に押し当てる。これにより、UV硬化樹脂層43が型ロール210の周面に接し、UV硬化樹脂層43に、型ロール210の周面に形成された凹凸形状が転写される。
【0066】
その後、紫外線照射機290から、UV硬化樹脂層43に対して紫外線を照射して、UV硬化樹脂層43を硬化させる。続いて、ガイドロール250で、基材フィルム44を型ロール210から剥離したのち、ガイドロール260を介して巻き取りロール270に巻き取る。このようにして、基板40が形成される。
【0067】
次に、図16に示したように、巻き出しロール310から基板40を巻き出したのち、巻き出した基板40のうち、複数の微細溝42Aおよび複数の微細溝42B側の表面に、例えばUV硬化アクリル樹脂液を含むUV硬化樹脂液45Dを、例えば吐出機320から滴下して、UV硬化樹脂層45を形成する。
【0068】
ここで、UV硬化樹脂層45としては、3官能以上の官能基を有するUV硬化アクリル樹脂を用いることが好ましく、例えば、表1の実施例1〜4に示した樹脂を用いることが好ましい。また、密着性および寸法変化の双方を考慮すると、UV硬化樹脂層45としては、3官能または4官能の官能基を有するUV硬化アクリル樹脂を用いることが好ましい。
【0069】
UV硬化樹脂層45は、UV硬化樹脂層43と同一材料によって構成されていてもよいし、UV硬化樹脂層43とは異なる材料によって構成されていてもよい。次に、紫外線照射機330からUV硬化樹脂層45に紫外線を照射して、UV硬化樹脂層45を硬化させる。例えば、UV硬化樹脂層45をヒータで乾燥させたのち、例えば約1000mJ/cm2の強度によるUV照射により硬化させる。これにより、複数の微細溝42A,42Bの表面に倣って無配向性薄膜50が形成される。このようにして、配向膜31が形成される。その後、配向膜31を巻き取りロール340に巻き取る。
【0070】
次に、図17に示したように、巻き出しロール350から配向膜31を巻き出したのち、巻き出した配向膜31における複数の窪み50A,50Bの表面(図中の上側の表面)に、液晶性モノマーを含む液晶46Dを吐出機360から滴下して、液晶層46を形成する。続いて、上記の製造方法と同様の目的で、ヒータ370を用いて、配向膜31の表面に塗布された液晶層46の液晶性モノマーの配向処理(加熱処理)を行った後、液晶層46を相転移温度よりも少し低い温度まで徐冷する。これにより、液晶性モノマーは、配向膜31の表面に形成された複数の微細溝42Aおよび複数の微細溝42Bのパターンに応じて配向する。すなわち、液晶性モノマーが複数の微細溝42Aおよび複数の微細溝42Bの延在方向に沿って配向する。
【0071】
次に、紫外線照射機380から、配向処理後の液晶層46に対して、紫外線を照射して、の液晶層46内の液晶性モノマーを重合させる。なお、このとき、処理温度は、一般に室温付近であることが多いが、リタデーション値を調整するために温度を相転移温度以下の温度まで上げてもよい。これにより、複数の微細溝42Aおよび複数の微細溝42Bの延在方向に沿って液晶分子の配向状態が固定され、位相差層32(右目用領域32Aおよび左目用領域32B)が形成される。以上により、位相差素子30が完成する。その後、位相差素子30を巻き取りロール390に巻き取る。
【0072】
(変形例2)
なお、上記とは異なる方法で基板40を作製してもよい。例えば、基材フィルム44の熱変形による形状転写を使って、基板40として単層構造のものを作製することが可能である。この場合、基材フィルム44を、高温に加熱された型ロール210に押し付けて、基材フィルム44の表面に直接、微細溝形状を形成する(図示せず)。図15に示すような製造装置を用いる場合、吐出機280によるUV硬化樹脂液43Dの滴下工程を省略して、基材フィルム44に直接、型ロール210の反転パターンを転写すればよい。あるいは、図18に示すように、高温に加熱された型ロール210と、ニップロール400とによって基材フィルム44を挟み込む比較的簡素な製造装置で、基材フィルム44に微細溝形状を形成する方法がある。このような方法によっても、凹凸パターンが転写された単層構造の基板40が形成される。なお、上記いずれの場合においても、凹凸パターンが転写された単層構造の基板40の製造方法以外については、上記製造方法と同様の方法で位相差素子30を作製することができる。
【0073】
(変形例3)
また、単層構造の基板40の製造方法に関して、図19に示すようにベルト状原盤600を基材フィルム44に押し付ける方法がある。図19に記載の製造装置は、例えば、ベルト状原盤600と、ベルト状原盤600の内側に配置された加熱ロール610および冷却ロール620とを備えている。この製造装置は、さらに、例えば、ニップロール630および対向ロール640と、巻き出しロール200と、巻き取りロール270とを備えている。
【0074】
ベルト状原盤600は、ニップロール630および対向ロール640と所定の間隙を介して配置されている。ベルト状原盤600の周面には、複数の微細溝42Aおよび複数の微細溝42Bの反転パターンが形成されている。ベルト状原盤600は、例えば、ニッケル、NiP、銅(Cu)およびステンレスなどの金属材料によって構成されている。加熱ロール610は、ベルト状原盤600を動作させるとともに、ベルト状原盤600を加熱するものである。冷却ロール620は、ベルト状原盤600を動作させるとともに、ベルト状原盤600を冷却するものである。ニップロール630および対向ロール640は、巻き出しロール200から巻き出された基材フィルム44をベルト状原盤600に押し当てるものである。ニップロール630は、ベルト状原盤600を介して加熱ロール610と対向配置されており、対向ロール640は、ベルト状原盤600を介して冷却ロール620と対向配置されている。
【0075】
巻き出しロール200から供給された基材フィルム44は、ベルト状原盤600のうち加熱ロール610によって加熱された部分とニップロール630とによって、加熱されるとともに押圧され、その結果、微細溝形状が基材フィルム44の表面に転写される。その後、基材フィルム44は、ベルト状原盤600のうち冷却ロール620によって冷却された部分と対向ロール640とによって冷却されるとともにベルト状原盤600から剥離される。このようにして、凹凸パターンが転写された単層構造の基板40が作製される。最後に、基板40は、巻き取りロール270に巻き取られる。
【0076】
なお、基材フィルム44の相転移温度(液晶相−等方相)をTg(℃)とした場合、加熱ロール610の温度Th(℃)は、基材フィルム44のうちベルト状原盤600と接している部分の温度が転写時にTg(℃)以上となるような温度となっている。Th(℃)は、例えば、Tg+60℃<Th<Tg+90℃を満たす温度となっていることが好ましい。また、冷却ロール620の温度Tc(℃)は、基材フィルム44のうちベルト状原盤600と接している部分の温度が剥離時にTg(℃)よりも低くなるような温度となっている。Tc(℃)は、例えば、Tc<Tgを満たす温度となっていることが好ましい。
【0077】
また、ベルト状原盤600は、シームレス(継ぎ目なし)であることが好ましい。例えば、凹凸形状を内面側に有する円筒状の樹脂原盤にニッケル等を電鋳方式により成長させたり、または、円筒状のロールに巻装して直接、精密切削加工を施して凹凸形状を形成したりすることにより、シームレスのベルト状原盤600を作製することが可能である。なお、ベルト状原盤600の製法は、これらに限定されるものではない。
【0078】
なお、基板40の製造方法以外については、上記製造方法と同様の方法で位相差素子30を作製することができる。
【0079】
[表示装置1の製造方法]
次に、表示装置1の製造方法の一例について説明する。まず、透明基板22、画素電極23、配向膜24、液晶層25、配向膜26、共通電極27、カラーフィルタ28および透明基板29を順に含んで構成された積層体(図示せず)を用意する。次に、この積層体の透明基板22側の表面に、偏光板21Aを貼り付けるとともに、この積層体の透明基板29側の表面に、偏光板21Bを貼り付ける。このようにして、液晶表示パネル20が完成する。次に、偏光板21B上に、位相差素子30を貼り付けた後、液晶表示パネル20の偏光板21A側に、バックライトユニット10を取り付ける。このようにして、表示装置1が完成する。
【0080】
[基本動作]
次に、本実施の形態の表示装置1において画像を表示する際の基本動作の一例について、図8(A),(B)〜図11(A),(B)等を参照しつつ説明する。
【0081】
まず、図7等において、バックライトユニット10から照射された光が液晶表示パネル20に入射している状態で、映像信号として右目用画像および左目用画像を含む視差信号が液晶表示パネル20に入力される。すると、奇数行の画素から右目用画像光L2が出力され(図8(A),(B)または図9(A),(B))、偶数行の画素から左目用画像光L3が出力される(図10(A),(B)または図11(A),(B))。なお、実際には、右目用画像光L2および左目用画像光L3は、混在した状態で出力されるが、図8(A),(B)〜図11(A),(B)では、説明の便宜上、右目用画像光L2と左目用画像光L3が別個に分けて記述されている。
【0082】
その後、右目用画像光L2および左目用画像光L3は、位相差素子30の右目用領域32Aおよび左目用領域32Bによって楕円偏光に変換され、位相差素子30の配向膜31を透過したのち、表示装置1の画像表示面から外部に出力される。
【0083】
その後、表示装置1の外部に出力された光は、偏光眼鏡2に入射し、右目用位相差フィルム61Bおよび左目用位相差フィルム62Bによって楕円偏光から直線偏光に戻されたのち、偏光眼鏡2の偏光板61A,62Aに入射する。
【0084】
このとき、偏光板61A,62Aへの入射光のうち右目用画像光L2に対応する光の偏光軸は、偏光板61Aの偏光軸AX7と平行となっており(図8(A)、図9(A))、偏光板62Aの偏光軸AX8と直交している(図8(B)、図9(B))。従って、偏光板61A,62Aへの入射光のうち右目用画像光L2に対応する光は、偏光板61Aだけを透過して、観察者の右目に到達する(図8(A),(B)または図9(A),(B))。
【0085】
一方、偏光板61A,62Aへの入射光のうち左目用画像光L3に対応する光の偏光軸は、偏光板61Aの偏光軸AX7と直交しており(図10(A)、図11(A))、偏光板62Aの偏光軸AX8と平行となっている(図10(B)、図11(B))。従って、偏光板61A,62Aへの入射光のうち左目用画像光L3に対応する光は、偏光板62Aだけを透過して、観察者の左目に到達する(図10(A),(B)または図11(A),(B))。
【0086】
このようにして、右目用画像光L2に対応する光が観察者の右目に到達し、左目用画像光L3に対応する光が観察者の左目に到達した結果、観察者は表示装置1の映像表示面に立体画像が表示されているかのように認識することができる。
【0087】
[効果]
ところで、本実施の形態では、基板40表面に形成された複数の微細溝42A,42Bの表面に倣って無配向性薄膜50が形成されている。これにより、製造過程において、配向膜31上に液晶層46を形成した場合に、複数の微細溝42A,42Bの表面に直接、液晶層46を形成した場合と比べて、基板40表面の分子配向の影響が、配向膜31上の液晶層46に及ぶ割合を低減することができる。その結果、複数の微細溝42A,42Bの表面の分子が複数の微細溝42A,42Bの延在方向とは異なる方向に配向しているときであっても、例えば、製造過程において配向膜31上の液晶層46(位相差層32)の配向方向を無配向性薄膜50によって形成される窪みの延在方向に揃えることが可能となる。その結果、液晶層46(位相差層32)の配向方向が所望の方向からずれる可能性を低減することができる。
【0088】
図20は、複数の微細溝42A,42Bの表面に直接、液晶層46(位相差層32)が形成された従来型の位相差素子の配向角度(遅相軸の配向角度)と、原盤から基材フィルムを剥離する際の剥離方向との関係を表したものである。図21は、本実施の形態の位相差素子30の配向角度と、剥離方向との関係を表したものである。なお、図中の黒丸は微細溝42Aに対応する配向角度であり、図中の白丸は微細溝42Bに対応する配向角度である。また、図20,図21中の剥離方向において、「平行」とは図4(B)の境界線BL1と平行な方向であることを意味しており、「斜め」とは境界線BL1と45°で交差する方向であることを意味しており、「垂直」とは境界線BL1と直交する方向であることを意味している。
【0089】
図20から、従来型の位相差素子では、いずれの方向に剥離した場合であっても、位相差素子の配向角度が、所望の角度である45°からずれていることがわかる。特に、ロール状の原盤により配向膜31を作成する際の剥離方向である、境界線BL1と平行な方向に剥離した場合には、位相差素子の配向角度が、所望の角度である45°から大幅にずれていることがわかる。これは、複数の微細溝42A,42Bの表面の分子配向と、複数の微細溝42A,42Bの延在方向とが互いに異なる方向を向いており、製造過程において、複数の微細溝42A,42B上の液晶分子の配向が乱れてしまったためである。また、位相差素子の配向角度が45°からずれていたことから、従来型の位相差素子を回転させながら、偏光顕微鏡にλ/4板を挿入して作成した位相差パターンを観察したときに従来型の位相差素子はシャッターとしての機能が十分でなかった。
【0090】
一方、図21から、本実施の形態の位相差素子30では、いずれの方向に剥離した場合であっても、位相差素子30の配向角度が、所望の角度である45°になっていることがわかる。これは、製造過程において、無配向性薄膜50が、基板40表面の分子配向の影響が配向膜31上の液晶層46に及ぶのを緩和していることを意味している。これにより、液晶層46(位相差層32)の配向方向を、その直下にある複数の微細溝42Aまたは複数の微細溝42Bの延在方向に揃えることができる。また、位相差素子の配向角度が45°またはほぼ45°になっていたことから、当該位相差素子30を回転させながら、偏光顕微鏡にλ/4板を挿入して作成した位相差パターンを観察したときに本実施の形態の位相差素子30がシャッターとして機能した。
【0091】
図22(A),(B)は、無配向性薄膜50の厚さと、位相差素子30の配向角度、ヘイズおよび各窪み50A,50Bの深さD1,D2との関係の一例を表したものである。図22(A)は、基板40に形成された各微細溝42A,42Bに隣接するストライプ状の山の高さHを200nm程度(実際には195nm)としたときの結果であり、図22(B)は、高さHを300nm程度(実際には292nm)としたときの結果である。なお、図22(A),(B)に示した無配向性薄膜50の厚さは、無配向性薄膜50のうち各窪み50A,50Bの底部に対応する部分の厚さ、または無配向性薄膜50のうち、各窪み50A,50Bに隣接するストライプ状の山の頂部に対応する部分の厚さである。なお、表2は、図22(A)の具体的な数値を表したものであり、表3は、図22(B)の具体的な数値を表したものである。無配向性薄膜50の厚さについては、無配向性薄膜50を製造する過程で、無配向性薄膜50の前躯体であるUV硬化樹脂層45の固形分の値を変えることにより調整した(表2,表3参照)。
【表2】

【表3】

【0092】
図22(A),(B)から、無配向性薄膜50の厚さが20nmを下回ると、無配向性薄膜50の厚さが薄くなるにつれて、基板40表面の分子配向の影響が配向膜31上の液晶層46に徐々に強く及んでいくことがわかる。このことから、基板40表面の分子配向の影響が配向膜31上の液晶層46に及ぶのを緩和するためには、無配向性薄膜50がある程度の厚さ(20nm以上)を有していることが好ましいことがわかる。なお、無配向性薄膜50が過度に厚くなり、窪み50A,50Bが過度に小さくなると、製造過程において液晶層46が配向しなくなる。従って、無配向性薄膜50の厚さは、製造過程において液晶層46が配向する範囲内となっていることが好ましい。また、窪み50A,50Bの深さD1,D2も、製造過程において液晶層46が配向する範囲内(30nm以上)となっていることが好ましい。
【0093】
また、図22(A),(B)から、位相差層32の配向性の指標となるヘイズ(3%以下)の観点からは、各窪み50A,50Bの深さD1,D2が80nmと、ある程度深くなっていることが好ましいことがわかる。
【0094】
<変形例>
また、上記実施の形態では、位相差素子30が偏光板21B上に設けられている場合が例示されていたが、それ以外の場所に設けられていてもよく、位相差素子30が、例えば、図示しないが、偏光板21Bと透明基板29との間に設けられていてもよい。このような構成の表示装置1では、バックライトユニット10から発せられた光は、偏光板21Aへ入射すると、水平方向の偏光成分のみが透過されて、位相差素子30に入射する。位相差素子30を透過した光は、液晶表示パネル20および偏光板21Bを順に透過して、垂直方向の偏光成分として射出される。これにより、2次元表示がなされる。ここで、位相差素子30が配置されていることにより、斜め方向からみた場合の液晶の位相差が補償され、黒表示の際の斜め方向の漏れ光や色づきを低減することができる。すなわち、位相差素子30を、AプレートやCプレートなどの視野角補償フィルムとして用いることができる。
【0095】
本変形例にかかる表示装置1は、例えば、以下のようにして製造することが可能である。まず、透明基板22、画素電極23、配向膜24、液晶層25、配向膜26、共通電極27、カラーフィルタ28および透明基板29を順に含んで構成された積層体(図示せず)を用意する。次に、この積層体の透明基板22側の表面に、偏光板21Aを貼り付けるとともに、この積層体の透明基板29側の表面に、位相差素子30を貼り付ける。次に、位相差素子30上に、偏光板21Bを貼り付けた後、偏光板21B上に、バックライトユニット10を取り付ける。このようにして、本変形例にかかる表示装置1が完成する。
【0096】
上記実施の形態では、無配向性薄膜50の厚さが複数の微細溝42A,42Bの深さと比べて十分に薄くなっている場合が例示されていたが、例えば、無配向性薄膜50の厚さが複数の微細溝42A,42Bの深さと同等かそれよりも厚くなっていてもよい。
【0097】
また、上記実施の形態では、位相差素子30には、遅相軸の向きが互いに異なる2種類の位相差領域(右目用領域32A,左目用領域32B)が設けられていたが、遅相軸の向きが互いに異なる3種類以上の位相差領域が設けられていてもよい。
【0098】
また、上記実施の形態では、位相差素子30の位相差領域(右目用領域32A,左目用領域32B)が水平方向に延在している場合が例示されていたが、それ以外の方向に延在していてもかまわない。
【0099】
また、上記実施の形態および変形例では、位相差素子30の位相差領域(右目用領域32A,左目用領域32B)が位相差素子30の水平方向もしくは垂直方向全体に渡って延在している場合が例示されていたが、例えば、水平方向および垂直方向の双方に2次元配置されていてもよい。
【0100】
また、上記実施の形態および各変形例では、位相差素子30を表示装置1に適用した場合が例示されていたが、他のデバイスに適用することももちろん可能である。
【0101】
また、上記実施の形態および各変形例では、液晶表示パネル20から出力される光の発散角を制御する部材(例えば、アンチグレアフィルム)を特に設けていなかったが、例えば、液晶表示パネル20と位相差素子30との間であって、かつ液晶表示パネル20内の画素電極23との非対向領域に設けられていてもよい。
【0102】
以上では、偏光眼鏡2が円偏光タイプであり、表示装置1としては円偏光眼鏡用の表示装置である場合について説明をしたが、本発明は、偏光眼鏡2が直線偏光タイプであり、表示装置1として直線偏光眼鏡用の表示装置である場合についても適用可能である。
【0103】
<実施例>
以下では、位相差素子30の製造方法の実施例について説明する。以下では、位相差素子30に含まれる配向膜31を製造する際に、板状の原盤を用いた場合と、ロール状の原盤を用いた場合とに分けて説明する。
【0104】
(板状の原盤を用いた場合)
まず、フェムト秒レーザを利用して、基板40の作成に用いる板状の原盤110を作成した。このとき、原盤110としては、鏡面加工された、厚さ1mmのSUS(ステンレス鋼)を使用した。次に、原盤110の表面に、UV硬化アクリル樹脂液を含むUV硬化樹脂層43を配置したのち、UV硬化樹脂層43を、TACからなる基材フィルム44で封止した。次に、UV硬化樹脂層43に紫外線を基板40側から照射して、UV硬化樹脂層43を硬化させたのち、原盤110を剥離した。このようにして基板40を作成した。
【0105】
このとき、剥離方向の互いに異なる基板40を3種類、作成した。具体的には、境界線BL1と平行な方向に剥離した基板40と、境界線BL1と45°で交差する方向に剥離した基板40と、境界線BL1と直交する方向に剥離した基板40とを作成した。それぞれの基板40の表面をAFM(Atomic Force Microscope: 原子間力顕微鏡)で観察したところ、サブミクロンオーダーの複数の微細溝42Aが境界線BL1に対して+45°の方向に延在すると共に、サブミクロンオーダーの複数の微細溝42Bが境界線BL1に対して−45°の方向に延在していることを確認することができた。
【0106】
次いで、スピンコート法により、それぞれの基板40上に、UV硬化アクリル樹脂液を1.5wt%含むMEK溶液からなるUV硬化樹脂層45を形成した。このとき、硬化させた後のUV硬化樹脂層45によって複数の微細溝42A,42Bが埋まらないように、UV硬化樹脂層45の厚さを調整した。具体的には、硬化後のUV硬化樹脂層45の厚さが5nm、15nm、30nm、60nm、または100nmとなるように、UV硬化樹脂層45の厚さを調整した。続いて、UV硬化樹脂層45に紫外線を照射して、UV硬化樹脂層45を硬化させることにより、無配向性薄膜50を形成した。このようにして種々の配向膜31を作成した。それぞれの配向膜31の断面をSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)で観察したところ、厚さ60nmの無配向性薄膜50が複数の微細溝42A,42Bの表面に倣っているのを確認することができた。
【0107】
続いて、スピンコート法により、それぞれの配向膜31上に、液晶性モノマーを含む液晶層46を形成したのち、液晶層46を55℃の温度環境下で2分間加熱し、さらに窒素雰囲気下で液晶層46に対して紫外線を照射した。このようにして種々の位相差素子30を作成した。
【0108】
(ロール状の原盤を用いた場合)
まず、フェムト秒レーザを利用して、基板40の作成に用いる型ロール210を作成した。このとき、型ロール210としては、鏡面加工された、φ100mm、幅150mmのSUSロールを使用した。次に、巻き出しロール200から巻き出した幅140mmのTACフィルムである基材フィルム44を、ガイドロール220を介してガイドロール230に導いたのち、基材フィルム44上に、UV硬化アクリル樹脂液を含むUV硬化樹脂液43Dを吐出機280から滴下して、UV硬化樹脂層43を形成した。次に、基材フィルム44上のUV硬化樹脂層43をニップロール240で、基材フィルム44を介して型ロール210の周面に押し当てて、UV硬化樹脂層43に、型ロール210の周面に形成された凹凸形状を転写した。その後、紫外線照射機290から、UV硬化樹脂層43に対して紫外線UVを照射して、UV硬化樹脂層43を硬化させた。続いて、ガイドロール250で、基材フィルム44を型ロール210から剥離したのち、ガイドロール260を介して巻き取りロール270に巻き取った。このようにして、基板40を作成した。
【0109】
このとき、基材フィルム44を、境界線BL1と平行な方向で型ロール210から剥離した。基板40の表面をAFMで観察したところ、サブミクロンオーダーの複数の微細溝42Aが境界線BL1に対して+45°の方向に延在すると共に、サブミクロンオーダーの複数の微細溝42Bが境界線BL1に対して−45°の方向に延在していることを確認することができた。
【0110】
次に、巻き出しロール310から基板40を巻き出したのち、巻き出した基板40のうち、複数の微細溝42Aおよび複数の微細溝42B側の表面に、塗布により、UV硬化アクリル樹脂液を含むUV硬化樹脂層45を形成した。このとき、硬化させた後のUV硬化樹脂層45によって複数の微細溝42A,42Bが埋まらないように、UV硬化樹脂層45の厚さを調整した。具体的には、硬化後のUV硬化樹脂層45の厚さが5nm、15nm、30nm、60nm、または100nmとなるように、UV硬化樹脂層45の厚さを調整した。UV硬化樹脂層45の厚さを、基板40の巻き出し速度で調整した。続いて、UV硬化樹脂層45に紫外線を照射して、UV硬化樹脂層45を硬化させることにより、無配向性薄膜50を形成した。このようにして種々の配向膜31を作成した。種々の配向膜31の断面をSEMで観察したところ、厚さ60nmの無配向性薄膜50が複数の微細溝42A,42Bの表面に倣っているのを確認することができた。
【0111】
次に、巻き出しロール350から配向膜31を巻き出したのち、巻き出した配向膜31における複数の窪み50A,50Bの表面に、液晶性モノマーを含む液晶層46を形成した。続いて、乾燥ゾーンの温度100℃、移動速度1.0m/分、乾燥ゾーンの長さ1mの条件で、液晶層46を乾燥ゾーンに通過させ、さらに窒素雰囲気下で液晶層46に対して紫外線を照射した。このようにして位相差素子30を作成した。
【0112】
(配向角度と、剥離方向との関係)
上記のようにして作成した種々の位相差素子30の配向角度と、原盤から基材フィルム44を剥離する際の剥離方向との関係を評価した。その結果は、上述した図18の内容と一致した。すなわち、いずれの方向に剥離した場合であっても、位相差素子30の配向角度が、所望の角度である45°になった。従って、実施例に係る位相差素子30の製造過程において、無配向性薄膜50が、基板40表面の分子配向の影響が配向膜31上の液晶層46に及ぶのを緩和していることがわかった。
【0113】
(配向角度と、無配向性薄膜50の厚さとの関係)
さらに、上記のようにして作成した種々の位相差素子30の配向角度と、無配向性薄膜50の厚さとの関係を評価した。その結果は、上述した図22の内容と一致した。すなわち、基板40表面の分子配向の影響が配向膜31上の液晶層46に及ぶのを緩和するためには、無配向性薄膜50がある程度の厚さ(20nm以上)を有していることが必要であることがわかった。
【符号の説明】
【0114】
1…表示装置、2…偏光眼鏡、10…バックライトユニット、20…液晶表示パネル、21A,21B,61A,62A…偏光板、22,29…透明基板、23…画素電極、24,26,31…配向膜、25…液晶層、27…共通電極、28…カラーフィルタ、28A…フィルタ部、28B…ブラックマトリクス部、30…位相差素子、32…位相差層、32A,41A…右目用領域、32B,41B…左目用領域、40…基板、42A,42B…微細溝、42C,50D,50F…頂部、42D,50C,50E…底部、43,45…UV硬化樹脂層、43D,45D…UV硬化樹脂液、44…基材フィルム、46,46D…液晶層、50…無配向性薄膜、50A,50B…窪み、61…右目用眼鏡、61B…右目用位相差フィルム、62…左目用眼鏡、62B…左目用位相差フィルム、110…原盤、200,310,350…巻き出しロール、210…型ロール、220,230,250,260…ガイドロール、240,400,630…ニップロール、270,340,390…巻き取りロール、280,320,360…吐出機、290,330,380…紫外線照射機、370…ヒータ、600…ベルト状原盤、610…加熱ロール、620…冷却ロール、640…対向ロール、AX1,AX2,AX4,AX5,AX6,AX7,AX8…遅相軸または偏光軸(透過軸)、BL1,BL2…境界線、D1,D2…深さ、G1,G2…方向、H1,H2…高さ、L…映像光、L2…右目用画像光、L3…左目用画像光、W1,W2,W3,W4…開口幅、θ1、θ2、θ3、θ4…角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の方向に延在する複数の溝を表面に有する基板と、
前記複数の溝の表面に倣って形成された無配向性薄膜と
を備えた配向膜。
【請求項2】
前記複数の溝は、第1方向に延在した複数の第1溝と、前記第1方向と交差する第2方向に延在した第2溝とを含み、
前記複数の第1溝を含む第1溝領域、および前記複数の第2溝を含む第2溝領域は、それぞれ帯状となっており、かつ交互に配置されている
請求項1に記載の配向膜。
【請求項3】
前記無配向性薄膜は、20nm以上の厚さを有し、
前記無配向性薄膜によって形成される窪みの深さが、30nm以上となっている
請求項1または請求項2に記載の配向膜。
【請求項4】
前記基板は、基材フィルム上に樹脂層が設けられた構成を有する
請求項1または請求項2に記載の配向膜。
【請求項5】
前記基材フィルムは、COP(シクロオレフィンポリマー)またはTAC(トリアセチルセルロース)からなる
請求項4に記載の配向膜。
【請求項6】
前記樹脂層は、UV硬化樹脂からなる
請求項4に記載の配向膜。
【請求項7】
前記無配向性薄膜は、3官能以上の官能基を有するUV硬化樹脂を硬化させることにより形成されたものである
請求項1または請求項2に記載の配向膜。
【請求項8】
特定の方向に延在する複数の溝を表面に有する基板と、前記複数の溝の表面に倣って形成された無配向性薄膜とを有する配向膜と、
前記無配向性薄膜の表面に接して設けられ、前記無配向性薄膜によって形成される窪みの延在方向に沿って配向すると共に重合した液晶材料を含む位相差層と
を備えた位相差素子。
【請求項9】
前記複数の溝は、第1方向に延在した複数の第1溝と、前記第1方向と交差する第2方向に延在した第2溝とを含み、
前記複数の第1溝を含む第1溝領域、および前記複数の第2溝を含む第2溝領域は、それぞれ帯状となっており、かつ交互に配置されている
請求項8に記載の位相差素子。
【請求項10】
前記無配向性薄膜は、20nm以上の厚さを有し、
前記無配向性薄膜によって形成される窪みの深さが、30nm以上となっている
請求項8または請求項9に記載の位相差素子。
【請求項11】
前記基板は、基材フィルム上に樹脂層が設けられた構成を有する
請求項8または請求項9に記載の位相差素子。
【請求項12】
前記基材フィルムは、COP(シクロオレフィンポリマー)又はTAC(トリアセチルセルロース)からなる
請求項11に記載の位相差素子。
【請求項13】
前記樹脂層は、UV硬化樹脂からなる
請求項11に記載の位相差素子。
【請求項14】
前記無配向性薄膜は、3官能以上の官能基を有するUV硬化樹脂を硬化させることにより形成されたものである
請求項8または請求項9に記載の位相差素子。
【請求項15】
画像信号に基づいて駆動される表示パネルと、
前記表示パネルを照明するバックライトユニットと、
前記表示パネルとの関係で前記バックライトユニットとは反対側に設けられた位相差素子と
を備え、
前記位相差素子は、
特定の方向に延在する複数の溝を表面に有する基板と、前記複数の溝の表面に倣って形成された無配向性薄膜とを有する配向膜と、
前記無配向性薄膜の表面に接して設けられ、前記無配向性薄膜によって形成される窪みの延在方向に沿って配向すると共に重合した液晶材料を含む位相差層と
表示装置。
【請求項16】
基板表面に、特定の方向に延在する複数の溝を形成する第1工程と、
前記複数の溝の表面に倣った無配向性薄膜を形成する第2工程と
を含む配向膜の製造方法。
【請求項17】
前記第2工程において、塗布またはスパッタにより、前記無配向性薄膜を形成する
請求項16に記載の配向膜の製造方法。
【請求項18】
前記第1工程において、前記基板表面に直接、原盤の反転パターンを転写することにより、前記複数の溝を形成する
請求項16または請求項17に記載の配向膜の製造方法。
【請求項19】
前記第2工程において、前記基板表面に3官能以上の官能基を有するUV硬化樹脂を形成したのち硬化させることにより、前記無配向性薄膜を形成する
請求項16または請求項17に記載の配向膜の製造方法。
【請求項20】
基板表面に、特定の方向に延在する複数の溝を形成する第1工程と、
前記複数の溝の表面に倣った無配向性薄膜を形成する第2工程と、
前記無配向性薄膜の表面に接して液晶材料を塗布し、重合させることにより、前記液晶材料が前記無配向性薄膜によって形成される窪みの延在方向に沿って配向した位相差層を形成する第3工程と
を含む位相差素子の製造方法。
【請求項21】
前記第2工程において、塗布またはスパッタにより、前記無配向性薄膜を形成する
請求項20に記載の位相差素子の製造方法。
【請求項22】
前記第1工程において、前記基板表面に直接、原盤の反転パターンを転写することにより、前記複数の溝を形成する
請求項20または請求項21に記載の位相差素子の製造方法。
【請求項23】
前記第2工程において、前記基板表面に3官能以上の官能基を有するUV硬化樹脂を形成したのち硬化させることにより、前記無配向性薄膜を形成する
請求項20または請求項21に記載の位相差素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−242740(P2011−242740A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163944(P2010−163944)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【特許番号】特許第4645772号(P4645772)
【特許公報発行日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】