説明

位置情報管理装置及び方法

【課題】利用者の秘匿したい滞在場所等の位置情報が無制限に開示されないようにし、これにより個人情報の保護性能の向上を図る。
【解決手段】秘匿化処理部43による秘匿化処理により、位置情報記憶部51に記憶された利用者の移動軌跡を表す各位置情報のうち、秘匿対象地点Qに対し半径r内に存在する各位置情報と、上記秘匿対象地点Qと公共地点P1,P2とを結ぶ区間に存在する各位置情報が、秘匿対象の位置情報と判定される。そして、これらの秘匿対象と判定された各位置情報は、そのフラグ情報の値が「秘匿化対象であることを示す値」に変更された状態で記憶されるか、又はその緯度経度が位置情報補記億部51から削除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば移動通信端末においてその存在位置を管理するために使用される位置情報の管理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistant)、車載端末機器等の移動通信端末においては、GPS(Global Positioning Service)受信機能を用いて当該端末の位置を定期的又は任意のタイミングで計測し、この計測された位置情報を移動通信端末からサーバへ送信して利用可能とした機能を備えた端末が増えている。移動通信端末が備えるこの種の機能を利用することで、例えば移動通信端末を所持する利用者に対しその存在位置に応じた適切な情報やサービスを提供することが可能となる。
【0003】
一方、名前や住所等の個人情報を提供するシステムとして、利用者が情報取得者用端末にある個人情報取得アプリケーションから個人情報処理プログラムに対しアクセスして、個人情報提供サーバに名前や住所等の履歴情報を登録し、利用者が情報開示者用端末の個人情報開示制御アプリケーションから上記個人情報提供サーバに対しアクセスしたときに、個人情報提供サーバが個人情報処理プログラム制御手段により、上記個人情報開示制御アプリケーションからの上記個人情報処理プログラムの起動及び停止を制御するようにしたシステムが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−99458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、先に述べた移動通信端末の位置情報の管理手法として、前記個人情報提供システムを適用すると、この従来の人情報提供システムはテキスト化された名前や住所の履歴情報のみを管理対象としているので、利用者の移動履歴情報については管理することができない。このため、移動通信端末の移動履歴情報がそのままサーバに送信されると、利用者の自宅の位置や勤務先又は通学先等のように利用者にとって第三者に知られたくない個人情報が第三者により推測可能となってしまう。このことは、個人情報を保護する上できわめて好ましくない。
【0006】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、利用者の秘匿したい滞在場所等の位置情報が無制限に開示されないようにし、これにより個人情報の保護性能の向上を図った位置情報管理装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためにこの発明の一観点は、利用者の存在位置を秘匿する必要がある秘匿対象地点に係わる位置情報と、上記利用者の存在位置を秘匿する必要がない公共地点に係わる位置情報を予め記憶しておき、この状態で上記利用者の存在位置を定期的又は任意のタイミングで計測して、この計測された利用者の存在位置を表す位置情報を記憶する。そして、上記記憶された秘匿対象地点に係わる位置情報と公共地点に係わる位置情報とをもとに、上記記憶された利用者の存在位置を表す位置情報の中から、上記秘匿対象地点と上記公共地点とを結ぶ区間に含まれる位置情報を検索し、この検索結果に基づいて、上記検索された位置情報を移動履歴から削除する処理と、上記検索された位置情報の読み出しを制限する処理のいずれか一方を実行するようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
したがって、利用者は自宅や勤務先、通学先等のように秘匿したい自身の個人的な滞在場所に係わる位置情報を、駅やバス停等の秘匿する必要がない公共場所に係わる位置情報と共に予め登録しておくことで、これらの位置情報に基づいて、利用者の移動履歴を表す位置情報の中から上記秘匿対象地点と上記公共地点とを結ぶ区間に含まれる位置情報が検索され、この検索結果に基づいて上記検索された位置情報が移動履歴から削除されるか又は読み出しが制限される。この結果、利用者の移動履歴に含まれる、自宅や勤務先、通学先等のように秘匿したい個人的な滞在場所に係わる位置情報の開示は阻止又は制限され、これにより個人情報は保護される。
すなわち、この発明によれば、利用者の秘匿したい滞在場所に係わる位置情報が無制限に開示されないようになり、これにより個人情報の保護性能の向上を図った位置情報管理装置及び方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係わる位置情報管理装置の機能を備えた移動通信端末の構成を示すブロック図である。この移動通信端末は例えば携帯電話機からなり、移動通信用アンテナ1Aと、無線ユニット1と、信号処理ユニット2と、音声処理ユニット3と、制御ユニット4と、記憶ユニット5と、GPS受信機9とを備え、さらにユーザインタフェースとして、スピーカ8R及びマイクロホン8Sからなる通話ユニットと、入力デバイス6と、表示デバイス7とを備えている。
【0010】
無線ユニット22は、移動通信ネットワークの基地局との間で移動通信用アンテナ1Aを介して無線通信信号を送受信するために、制御データ及び情報データに対する変復調処理や周波数変換処理を行う。信号処理ユニット2は例えばDSP(Digital Signal Processor)により構成され、制御データ及び情報データに対する符号復号処理と、CDMA(Code Division Multiple Access)又はOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)通信のためのフォーマット変換処理等のベースバンド信号処理を行う。
【0011】
音声処理ユニット3は、上記信号処理ユニット2により復号された受信情報データに音声データが含まれている場合に、この音声データをアナログ音声信号に復号してスピーカ8Rから出力させる。また音声処理ユニット3は、マイクロホン8Sから入力された送話音声信号を音声データに符号化して信号処理ユニット2へ出力する。
【0012】
GPS受信機9は、図示しないGPS衛星から送信されるGPS信号をGPS用アンテナ9Aを介して受信し、その受信信号をディジタル信号に変換して制御ユニット4に入力する。
【0013】
入力デバイス6は、ダイヤルキーパッドと、発信キー、終了キー及びカーソルキー等を含む複数の機能キーとから構成される。また、表示デバイス7はLCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro Luminescence)を用いた表示器からなる。
【0014】
ところで、制御ユニット4及び記憶ユニット5は以下のように構成される。図2はその機能構成を示すブロック図である。
すなわち、記憶ユニット5には、電話帳データや発着信履歴データを記憶する領域と、音楽や映像等のコンテンツデータが記憶される領域の他に、この発明を実施する上で必要な領域として、位置情報記憶部51と、秘匿対象地点情報記憶部52と、公共地点情報記憶部53と、暫定記憶部54が設けられている。
【0015】
位置情報記憶部51は、後述する制御ユニット4においてGPS信号をもとに定期的に計算される自端末の位置情報(緯度経度により表される)を記憶するために使用される。秘匿対象地点情報記憶部52には、利用者が入力デバイス6により入力した秘匿対象地点に対応する位置情報(緯度経度)が記憶される。公共地点情報記憶部53には、利用者が入力デバイス6により入力した公共地点に対応する位置情報(緯度経度)が記憶される。暫定記憶部54は、後述する制御ユニット4による秘匿化判定処理において秘匿化対象と判定された位置情報を保存するために使用される。
【0016】
制御ユニット4は例えばCPU(Central Processing Unit)を備え、この発明を実施するために必要な制御機能として、位置計測制御部41と、秘匿/公共地点設定制御部42と、秘匿化判定部43とを備えている。なお、これらの制御機能は何れも、制御ユニット4内のプログラムメモリに格納されたアプリケーション・プログラムを上記CPUに実行させることにより実現される。
【0017】
位置計測制御部41は、予め設定した周期で定期的にGPS受信機9を起動してGPS信号を受信させ、受信されたGPS信号をGPS受信機9から取り込んで自端末の位置情報(緯度経度)を計算する。そして、計算された位置情報を記憶ユニット5内の位置情報記憶部51に利用者の移動履歴情報として格納する処理を実行する。
【0018】
秘匿/公共地点設定制御部42は、秘匿/公共地点登録モードが設定された状態で、利用者が入力デバイス6により自身が秘匿したい滞在場所(秘匿対象地点)を表す住所、及び不特定多数の人が様々な方向へ移動する際の起点となる公共の地点(公共地点)の住所を入力した場合に、例えば記録ユニット5に設けられた地図情報データベース(図示せず)から上記入力された各住所に対応する緯度経度を読み出す。そして、この読み出した秘匿対象地点の緯度経度及び公共地点の緯度経度をそれぞれ、上記秘匿対象地点情報記億部52及び公共地点記憶部53に格納する処理を行う。
【0019】
秘匿化判定部43は、上記位置情報記憶部51に移動履歴情報として記憶された利用者の移動履歴を示す各位置情報を、上記秘匿対象地点情報記億部52に格納された秘匿対象地点の位置情報及び上記公共地点記憶部53に格納された公共地点の位置情報と比較する。そして、その比較結果をもとに、上記利用者の移動履歴を示す各位置情報が上記秘匿対象地点と公共地点とを結ぶ区間に含まれるか否かを判定し、含まれると判定された位置情報を秘匿化対象の位置情報として暫定記憶部54に格納する処理を実行する。
【0020】
次に、以上のように構成された移動通信端末の動作を説明する。
(1)秘匿対象地点及び公共地点の登録
利用者は、先ず入力デバイス6を操作して秘匿/公共地点登録モードを指定する。そうすると、表示デバイス7に秘匿対象地点/公共地点の住所入力画面が表示される。この状態で利用者は、入力デバイス6を操作して、自身が秘匿したい滞在場所(秘匿対象地点)、例えば自宅や通勤先又は通学先を表す住所を入力する。そうすると制御ユニット4の秘匿/公共地点設定制御部42は、記憶ユニット5に記憶されている地図情報データベースから上記入力された住所に対応する緯度経度情報を読み出し、この読み出した緯度経度情報を記憶ユニット5の秘匿対象地点情報記憶部52に格納する。
【0021】
また、利用者が入力デバイス6を操作して公共地点、例えば駅やバス停の位置を表す住所、高速道路のインターチェンジ或いは主要国道の交差点の住所を入力したとする。この場合制御ユニット4の秘匿/公共地点設定制御部42は、上記秘匿対象地点の登録の場合と同様に、記憶ユニット5の地図情報データベースから、上記入力された住所に対応する緯度経度情報を読み出し、この読み出した緯度経度情報を記憶ユニット5の公共地点情報記憶部53に格納する。以後同様に、利用者が他の公共地点を表す住所を入力するごとに、この入力された住所に対応する緯度経度情報が記憶ユニット4の公共地点情報記憶部53に格納される。
このようにすると、利用者は逐一秘匿対象地点及び公共地点に出向かなくても、また位置情報検索サイトにアクセスすることなく、秘匿対象地点及び公共地点の緯度経度情報をそれぞれ記憶ユニット5に登録することができる。
【0022】
(2)利用者の移動位置の計測
待ち受け状態において、制御ユニット4の位置計測制御部41は、定期的に自端末の位置を計測し、この計測された位置情報を利用者の移動履歴を表す情報として記憶ユニット5に格納する処理を行う。
例えば、予め設定した周期(例えば1分)でGPS受信機9を起動してGPS信号を受信させ、この受信されたGPS信号をGPS受信機9から取り込んで自端末の位置情報(緯度経度)を計算する。そして、計算された位置情報を記憶ユニット5内の位置情報記憶部51に格納する。図6は格納された位置情報の一例を示すもので、各位置情報はRecord Numberに日付、時刻、緯度及び経度を対応付けたものとなっている。
【0023】
なお、上記位置情報記憶部51に格納された位置情報と、上記秘匿対象地点情報記憶部52及び公共地点情報補記億部53に格納された秘匿対象地点及び公共地点とは、その緯度経度情報をもとに相互に対応付けることが可能である。図7はこの対応付けがなされた状態を示すものである。
【0024】
(3)位置情報の秘匿化処理
利用者が入力デバイス6により秘匿化処理の開始要求を入力するか、又は位置情報を利用するサービスサーバから送信された秘匿化処理開始要求が無線ユニット1及び信号処理ユニット2を介して受信されると、制御ユニット4の秘匿化判定部43が起動されて、以後移動履歴情報に対する秘匿化処理が次のように実行される。図3及び図4はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【0025】
秘匿化判定部43は、先ずステップS1により記憶ユニット5の位置情報記憶部51からすべて又は一部の位置情報群を読み出す。一部の位置情報群を読み出す場合には、位置情報記憶部51に記憶された位置情報群を予め定めた区切りと数又は期間に従い複数のブロックに分割し、これらのブロックを予め定めた優先順位に従い選択することによりなされる。例えば、予め定めた区切りを日付変更のタイミングとし、期間を1日、選択優先順位を日付の古い順とすれば、1日分ずつに分割された複数のブロックの中から先ず日付が最も古いブロックが選択されて、当該ブロックに含まれる位置情報群が位置情報記憶部51から読み出される。
【0026】
秘匿化判定部43は、続いてステップS2において、上記選択的に読み出された位置情報群が秘匿化判定済みか否かを判定する。この秘匿化判定済か否かの判定は、例えば位置情報にそれぞれフラグ情報を付与しておき、このフラグ情報の値が「秘匿化判定済」を示す値か否かを判定することにより行うことが可能である。なお、フラグ情報には、秘匿判定済か否かを示す値だけでなく、秘匿判定の結果、つまり秘匿対象とすべき情報であるか否かを示す値も含められる。
【0027】
秘匿化判定部43は、上記秘匿判定済か否かの判定の結果、ブロックに含まれるすべての位置情報が「秘匿化判定済」であればそのまま処理を終了する。一方、未判定の位置情報が含まれていれば、この未判定の位置情報の一つを選択し、この選択した位置情報について以下のように秘匿化判定処理を実行する。
【0028】
すなわち、秘匿化判定部43は先ずステップS3により、記憶ユニット5の秘匿対象地点情報記憶部52から予め登録した複数の秘匿対象地点の緯度経度をそれぞれ読み出して、上記選択した未判定の位置情報の緯度経度と上記読み出された各秘匿対象地点の緯度経度との間の距離をそれぞれ算出する。そして、ステップS4において、上記算出された各距離を予め設定したしきい値とそれぞれ比較することにより、上記未判定の位置情報が上記複数の秘匿対象地点のうちのいずれかの近傍に存在するか否かを判定する。
【0029】
例えば、図5に示すようにしきい値を秘匿対象地点の緯度経度を中心とする半径rに設定し、未判定の位置情報と秘匿対象地点との間の距離が上記r以内であれば、上記未判定の位置情報は秘匿対象地点近傍に存在すると判定する。そして、この判定の結果、いずれの秘匿対象地点の近傍にも存在しないと判定された場合には、ステップS2に戻って次の未判定の位置情報を1つ選択し、上記ステップS3及びステップS4による判定処理を実行する。以後同様に、未判定のすべての位置情報についてそれぞれ上記ステップS3及びステップS4により秘匿対象地点の近傍に存在するか否かを判定する処理を繰り返し実行する。
【0030】
一方、上記未判定の位置情報がいずれかの秘匿対象地点の近傍に存在すると判定されると、秘匿化判定部43は当該位置情報を記憶ユニット5の暫定記憶部54に格納したのち、ステップS5に移行して、当該位置情報に付与されているフラグ情報を「秘匿化判定済」でかつ「秘匿化対象であることを示す値」に変更する。
【0031】
次に秘匿化判定部43は、ステップS6において、記憶ユニット5の公共地点情報記憶部53から予め登録された複数の公共地点の緯度経度をそれぞれ読み出し、上記ステップS5から渡された位置情報の緯度経度と、上記読み出された各公共地点の緯度経度との間の距離をそれぞれ算出する。そして、ステップS7において、上記算出された各距離を予め設定したしきい値とそれぞれ比較することにより、上記位置情報が上記複数の公共地点のいずれかの近傍に存在するか否かを判定する。
【0032】
そして、この判定の結果、上記位置情報が上記複数の公共地点のいずれの近傍にも存在しないと判定されると、秘匿化判定部43はステップS8において、当該位置情報が先にステップS1で選択したブロック内の先頭データであるか否か、つまり計測時刻が最も古い位置情報があるか否かを判定する。この結果、先頭データでなければ、ステップS9において当該位置情報より1回前の計測時刻において得られた位置情報を選択する。そして、この選択された1回前の計測時刻で得られた位置情報について、先に述べたステップS5〜ステップS8により、当該位置情報が公共地点の近傍に存在するか否かを判定する処理を実行する。
【0033】
一方、上記ステップS7による判定の結果、上記位置情報が各公共地点のうちのいずれかの近傍に存在すると判定されたとする。この場合秘匿化判定部43は、ステップS10により、上記ステップS4により秘匿対象地点の近傍に存在すると判定された位置情報を記憶ユニット5の暫定記憶部54から読み出す。そして、図4のステップS11により、当該位置情報が先にステップS1で選択したブロック内の最終データであるか否か、つまり計測時刻が最も新しい位置情報があるか否かを判定する。この結果、計測時刻が最も新しい位置情報があればそのまま秘匿化処理を終了する。
【0034】
これに対し、上記位置情報が最終データでなければ、秘匿化処理部43はステップS12に移行し、ここで当該位置情報より1回後の計測時刻において得られた位置情報を選択する。そして、この選択された1回後の計測時刻で得られた位置情報に付与されているフラグ情報を「秘匿化判定済」でかつ「秘匿化対象であることを示す値」に変更する。
【0035】
次に秘匿化処理部43は、ステップS14において、記憶ユニット5の公共地点情報記憶部53から予め登録された複数の公共地点の緯度経度をそれぞれ読み出し、上記ステップS12により選択された位置情報の緯度経度と、上記読み出された各公共地点の緯度経度との間の距離をそれぞれ算出する。そして、ステップS15において、上記算出された各距離を予め設定したしきい値とそれぞれ比較することにより、上記位置情報が上記複数の公共地点のいずれかの近傍に存在するか否かを判定する。
【0036】
この判定の結果、上記位置情報が上記複数の公共地点のいずれの近傍にも存在しないと判定されると、秘匿化判定部43はステップS11に戻ってここで当該位置情報が最終データか否かを判定する。そして、最終データでなければステップS12において1回後の計測時刻における位置情報を選択し、この位置情報のフラグ情報を「秘匿化対象であることを示す値」に変更した後、当該位置情報がいずれかの公共地点の近傍にあるか否かを判定する。以後同様に、判定対象の位置情報が最終データとなったことが確認されるまで、上記ステップS12〜S15による処理が繰り返し実行され、最終データとなったことが確認されると秘匿化処理は終了する。
【0037】
一方、上記ステップS15による判定において、判定対象の位置情報が複数の公共地点のいずれかの近傍に存在すると判定されたとする。この場合秘匿処理部43は、ステップS2に戻り、選択中のブロックに含まれるすべての位置情報が「秘匿化判定済」になったか否かを判定する。そして、すべての位置情報が「秘匿化判定済」になったことが確認されると、秘匿化処理を終了する。これに対し、選択中のブロックにまだ「秘匿化未判定」の位置情報が残っていれば、この未判定の位置情報を選択してステップS3以降の処理を実行する。
【0038】
以上のように秘匿化処理部43の制御の下で位置情報に対し秘匿化判定処理を実行することにより、位置情報記憶部51に記憶された利用者の移動軌跡を表す位置情報のうち、秘匿対象地点に対し半径r内に存在する位置情報と、上記秘匿対象地点と公共地点とを結ぶ区間に存在する各位置情報が、秘匿対象の位置情報と判定される。そして、これらの秘匿対象と判定された各位置情報は、そのフラグ情報の値が「秘匿化対象であることを示す値」に変更される。
【0039】
したがって、例えばいま図5に示すように利用者が破線Rに示す経路で移動し、その移動軌跡を表す位置情報が位置情報記憶部51に記憶されたとする。この場合には、秘匿対象地点Qに対し半径r内に存在する各位置情報と、上記秘匿対象地点Qと各公共地点P1,P2とを結ぶ区間に存在する各位置情報が、図5中にxで図示したように秘匿対象の位置情報と判定される。そして、これらの秘匿対象と判定された各位置情報は、そのフラグ情報の値が「秘匿化対象であることを示す値」に変更された状態で記憶される。
【0040】
なお、秘匿対象と判定された位置情報に付与されたフラグ情報を「秘匿化対象であることを示す値」に変更する代わりに、位置情報記憶部51から該当する位置情報の緯度経度を削除することも可能である。図8に、この緯度経度を削除した後の位置情報の記憶状態を示す。
【0041】
以上のように位置情報に対し秘匿化処理を行うと、例えば利用者の位置に応じた情報配信サービスなどを行うサーバから位置情報の送信要求が到来した場合に、各位置情報に付与されているフラグ情報をもとに当該位置情報が秘匿化の対象であるか否かを判定し、秘匿対象と判定された場合には当該位置情報を送信対象から除外するようにすることができる。
【0042】
また、秘匿対象の位置情報の緯度経度を位置情報記憶部51から削除した場合であれば、サーバからの位置情報送信要求に応じて、位置情報記憶部51に記憶された移動履歴をそのまま送信しても、利用者の自宅や通勤先、通学先等の秘匿対象とすべき位置情報が第三者に知られる心配はない。したがって、利用者の個人情報のセキュリティを高く保つことが可能となる。
【0043】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図8に示した例では、秘匿対象と判定された位置情報の緯度経度を削除したが、削除する代わりに乱数などを使用して暗号化するようにしてもよい。このようにすると、暗号化キーを用いて位置情報を復号することにより、利用者自身は必要に応じて秘匿対象地点の位置情報の緯度経度を確認することが可能となる。
【0044】
また、前記実施形態では、計測した移動通信端末の位置情報を当該端末内の位置情報記憶部51に利用者の移動履歴情報として格納し、この記憶された各位置情報の秘匿化処理を当該移動通信端末において実行するようにした。しかしこれに限らず、例えば上記移動通信端末において計測された移動履歴情報をサーバ・コンピュータ又は同一ユーザのパーソナル・コンピュータに送信し、これらのサーバ・コンピュータ又はパーソナル・コンピュータにおいて各位置情報について秘匿化処理を実行するようにしてもよい。このようにすると、移動通信端末の秘匿化処理に要する処理負荷を軽減することができる。
【0045】
さらに、秘匿対象地点の位置情報の登録手段として、次のようなものも考えられる。すなわち、秘匿したい地点において、入力デバイス6を操作して秘匿対象地点の登録メニューを選択する。そうすると、制御ユニット4の秘匿/公共地点設定制御部42は、GPS受信機9を起動してGPS信号を受信させ、この受信されたGPS信号をもとに上記地点における緯度経度を計算する。そして、この計算された緯度経度を上記秘匿したい地点の位置情報として記憶ユニット5の秘匿対象地点情報記憶部52に格納する。以後同様に、利用者が秘匿したい地点に移動して同様の操作を行うごとに、秘匿対象地点の緯度経度を記憶ユニット5の秘匿対象地点情報記憶部52にそれぞれ格納することができる。
このようにすると、秘匿対象地点の緯度経度情報を、地図データベースを備える外部サイト等に頼ることなく移動通信端末が自力で取得することができるので、秘匿対象地点に関する情報の秘匿性をさらに高めることができる。
【0046】
また、公共地点の登録手段としては、住所を緯度経度に変換するサービスを行うサイト(例えばhttp://www.geocoding.jp/)を利用する方法が考えられる。この場合制御ユニット4は、ブラウザ機能を用いて上記サイトに対し移動通信ネットワークを介してアクセスし、当該サイトに住所データを送信する。そして、当該サイトから返信される緯度経度情報を受信し、この受信された緯度経度情報を記憶ユニット4の公共地点情報記憶部53に格納する。
【0047】
さらに、公共地点の登録手段としては次のようなものも考えられる。すなわち、駅やバス停、高速道路のインターチェンジ、主要国道の交差点等の代表的な公共地点について、その名称又は住所と緯度経度とを対応付けて記憶した地図データベースをサーバ等に記憶しておく。移動通信端末は、上記サーバに対しアクセスして、利用者が入力した公共地点の名称、又は住所を移動通信ネットワークを介して上記サーバに送る。サーバは、上記移動通信端末から送られた公共地点の名称又は住所に対応する緯度経度情報を地図データベースから読み出し、問い合わせ元の移動通信端末へダウンロードする。移動通信端末は、サーバからダウンロードされた緯度経度情報を受信して、記憶ユニット5内の公共地点情報記憶部53に格納する。
このようにすると、移動通信端末は自力で地図データベースを備える必要がないので、その分記憶ユニット5の記憶容量を削減して端末のコストアップを抑えることができる。
【0048】
また、前記実施形態ではGPS信号をもとに位置情報を計測する場合を例にとって説明したが、例えば移動通信システムの基地局や制御局が各移動通信端末の位置管理機能を有している場合には、この位置管理機能で管理されている移動通信端末の位置情報を利用するようにしてもよい。
【0049】
その他、位置情報管理装置の構成、位置情報の秘匿化処理の手順と内容等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明の一実施形態に係わる位置情報管理装置の機能を備えた移動通信端末の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した移動通信端末の制御ユニット及び記憶ユニットの機能構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示した制御ユニットによる位置情報秘匿化処理手順の前半部分を示すフローチャートである。
【図4】図2に示した制御ユニットによる位置情報の秘匿化処理手順の後半部分を示すフローチャートである。
【図5】移動通信端末の移動履歴と秘匿化対象と判定された位置の一例を示す図である。
【図6】位置情報記憶部に記憶される移動履歴情報の一例を示す図である。
【図7】位置情報に秘匿対象地点及び公共地点を対応付けた状態を示す図である。
【図8】秘匿化対象の位置情報を移動履歴情報から削除した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1A…移動通信用アンテナ、1…無線ユニット、2…信号処理ユニット、3…音声処理ユニット、4…制御ユニット、5…記憶ユニット、6…入力デバイス、7…表示デバイス、8R…スピーカ、8S…マイクロホン、9A…GPS用アンテナ、9…GPS受信機、41…位置計測制御部、42…秘匿/公共地点設定制御部、43…秘匿化判定部、51…位置情報記憶部、52…秘匿対象地点情報記憶部、53…公共地点情報記憶部、54…暫定情報記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の存在位置を秘匿する必要がある秘匿対象地点に係わる位置情報を記憶する第1の記憶手段と、
前記利用者の存在位置を秘匿する必要がない公共地点に係わる位置情報を記憶する第2の記憶手段と、
前記利用者の存在位置を定期的又は任意のタイミングで計測する位置計測手段と、
前記計測された利用者の存在位置を表す位置情報を記憶する第3の記憶手段と、
前記第1の記憶手段に記憶された秘匿対象地点に係わる位置情報と前記第2の記憶手段に記憶された公共地点に係わる位置情報とをもとに、前記第3の記憶手段に記憶された前記利用者の存在位置を表す位置情報の中から、前記秘匿対象地点と前記公共地点とを結ぶ区間に含まれる位置情報を検索する検索手段と、
前記第3の記憶手段から前記検索された位置情報を削除する処理と、前記第3の記憶手段から前記検索された位置情報の読み出しを制限する処理のいずれか一方を実行する秘匿化手段と
を具備することを特徴とする位置情報管理装置。
【請求項2】
利用者の存在位置を秘匿する必要がある秘匿対象地点に係わる位置情報を第1の記憶手段に格納する過程と、
前記利用者の存在位置を秘匿する必要がない公共地点に係わる位置情報を第2の記憶手段に格納する過程と、
前記利用者の存在位置を定期的又は任意のタイミングで計測し、この計測された利用者の存在位置を表す位置情報を第3の記憶手段に格納する過程と、
前記第1の記憶手段に記憶された秘匿対象地点に係わる位置情報と前記第2の記憶手段に記憶された公共地点に係わる位置情報とをもとに、前記第3の記憶手段に記憶された前記利用者の存在位置を表す位置情報の中から、前記秘匿対象地点と前記公共地点とを結ぶ区間に含まれる位置情報を検索する過程と、
前記第3の記憶手段から前記検索された位置情報を削除する処理と、前記第3の記憶手段から前記検索された位置情報の読み出しを制限する処理のいずれか一方を実行する過程と
を具備することを特徴とする位置情報管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−34784(P2010−34784A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193829(P2008−193829)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】