説明

位置検出システム、位置検出装置及びプログラム

【課題】電子ペーパーなどの表示手段側に位置検出のための多数のセンサや印刷パターンなどの構成を設けなくても、その表示面上において操作者が指定した位置を検出する。
【解決手段】電子ペン1は表示面の撮像画像データを所定周期毎に電子ペーパー2に送信する。電子ペーパー2は、取得した撮像画像データが表す撮像画像を、同一色の連続領域にそれぞれ分離し、分離された複数の領域から、予め決められた大きさの範囲内に収まる領域を、不良表示素子に相当する領域として抽出し、その領域の重心の座標値を割り出して、不良表示素子の配置パターンとして記憶する。そして、電子ペーパー2は、この不良表示素子の配置パターンと、直前に記憶した不良表示素子の配置パターンとを逐一照合することで、電子ペン1が撮像した位置が描く軌跡を、検出する。そして、電子ペーパー2は、この軌跡に応じた処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の表示素子から不良表示素子の位置を検出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子データに基づいて何度でも表示内容を書き換えることができる表示装置が開発されている。特に薄型の表示装置は電子ペーパーなどと呼ばれているが、この種の薄型の表示装置に適した表示方式として、電気泳動方式がある。この電気泳動方式は、着色した帯電粒子を分散させた有機溶媒等の液体をマイクロカプセルに封入し、このマイクロカプセルに対する電界を変化させることにより、帯電粒子をマイクロカプセル内で移動させて表示を行うというものである。電気泳動方式に基づく表示に関する技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
また、ペン先の軌跡を認識してこれに応じたデータを出力する電子ペンが開発されている。例えば特許文献2には、紙に特殊なパターンを印刷しておき、電子ペンに備えられたカメラがこれを撮像してパターン解析することにより、ペン先がその紙のどの部分に置かれているかを認識するという技術が開示されている。このような電子ペンによれば、書いた文字や図形等を電子データとして直接扱うことができるため、これらの文字等の加工、解析および再利用に適している。
【特許文献1】特許第3719172号
【特許文献2】特表2003−511761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような電子ペーパーに対し、電子データとして直接扱うことができる文字等を書き込むことを可能にするためには、電子ペーパー側か電子ペン側のいずれかにペン先の位置を認識するための構成を設ける必要がある。例えば電子ペーパーによりペン先の位置を認識する場合には、例えば感圧素子などの、表示方式に影響を与えないセンサを電子ペーパーに多数設けなければならない。しかし、このような多数のセンサを設けようとすると、電子ペーパーの製造工程が複雑化して製造コストが上昇するほか、電子ペーパーの重量が増すので、電子ペーパー自体の携帯性が損なわれてしまうという問題がある。一方、電子ペンによりペン先の位置を認識させるためには、電子ペーパー側に上述したような特殊なパターンを目立たないように予め印刷しておく必要がある。よって、この場合も、電子ペーパーの製造工程が増えるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、電子ペーパーなどの表示手段側に位置検出のための多数のセンサや印刷パターンなどの構成を設けなくても、その表示面上において操作者が指定した位置を検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明に係る位置検出システムは、複数の表示素子が並べられた表示面を有し、当該複数の表示素子をそれぞれ駆動手段により駆動して画像を表示する表示手段と、前記表示面を撮像し、撮像画像を表す撮像画像データを生成する撮像手段と、前記撮像画像データが表す撮像画像に含まれる色の違いに基づいて、前記駆動手段によって駆動することができない不良表示素子の位置を検出し、各々の当該位置を表す複数の位置情報を生成して出力する不良表示素子検出手段とを具備することを特徴とする。
本発明によれば、電子ペーパーなどの表示手段側に位置検出のための多数のセンサや印刷パターンなどの構成を設けなくても、その表示面上において操作者が指定した位置を検出することができる。
【0007】
好ましくは、前記表示素子には、着色された複数の帯電粒子を分散させた液体が封入されており、前記表示手段は、前記表示素子に対する電界の方向を変化させて、当該表示素子に封入されている液体内の前記帯電粒子を移動させることにより、画像を表示するとよい。
この態様によれば、表示手段の表示面に、位置の検出に充分な程度の割合で不良表示素子をランダムに散在させることができる。
【0008】
また、本発明に係る位置検出装置は、駆動手段により駆動させられる複数の表示素子が並べられた表示面を撮像して撮像画像を表す撮像画像データを生成する撮像手段から、当該撮像画像データを取得する取得手段と、前記撮像画像データが表す撮像画像に含まれる色の違いに基づいて、前記駆動手段によって駆動することができない不良表示素子の位置を検出し、各々の当該位置を表す複数の位置情報を生成して出力する不良表示素子検出手段とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、電子ペーパーなどの表示手段側に位置検出のための多数のセンサや印刷パターンなどの構成を設けなくても、その表示面上において操作者が指定した位置を検出することができる。
【0009】
また、好ましくは、前記不良表示素子検出手段は、前記撮像画像データが表す撮像画像を色毎の画像領域に分離し、分離した複数の画像領域のうち、予め決められた大きさの範囲内に収まる画像領域の位置を前記不良表示素子の位置として検出するとよい。
この態様によれば、表示手段の表示面に画像が表示されていても、その表示に関わらず、駆動手段により駆動させられる表示素子と、駆動手段により駆動することができない不良表示素子とを識別することができる。
【0010】
また、好ましくは、前記不良表示素子検出手段は、前記表示素子を駆動するための電極の形状を記憶しており、前記撮像画像データが表す撮像画像において、それぞれ異なる色の画像領域の境界線を特定し、特定した当該境界線と記憶しておいた前記電極の形状とが一致しない位置を、前記不良表示素子の位置として検出するとよい。
この態様によれば、上述した表示素子と不良表示素子との識別を、より精度良く行うことができる。
【0011】
また、好ましくは、前記撮像手段は、それぞれ異なる撮像タイミングで前記表示面の一部を撮像し、各々の撮像画像を表す撮像画像データを出力するものであり、前記取得手段は、前記撮像手段によって出力される各々の前記撮像画像データを取得し、前記不良表示素子検出手段により各々の前記撮像画像から検出された複数の不良表示素子のうち、素子どうしの相対的な位置関係が一致する不良表示素子を、各々の前記撮像画像において共通する共通不良表示素子として特定する共通素子特定手段と、前記共通素子特定手段により特定された共通不良表示素子の前記各撮像画像における位置の変位と、前記各撮像画像の撮像タイミングとに基づいて、前記表示面に対する前記撮像手段の移動方向、又は、移動速度若しくは移動量を算出して出力する算出手段とを備えるとよい。
この態様によれば、電子ペーパーなどの表示面上において操作者が指定した位置が時間の経過に従って移動したときに、その移動方向、又は、移動速度若しくは移動量として検出することができる。
【0012】
また、好ましくは、前記算出手段によって算出された移動方向、又は、移動速度若しくは移動量に応じた処理を行う処理手段を備えるとよい。
この態様によれば、表示手段の表示面上で操作者によって指定された位置の移動方向、又は、移動速度若しくは移動量に応じた処理を行うことができる。
【0013】
また、好ましくは、前記共通素子特定手段は、素子どうしの相対的な位置関係に加えて、各々の前記不良表示素子の大きさ又は形状の少なくとも一方が一致する不良表示素子を、前記共通不良表示素子として特定するとよい。
この態様によれば、上述した共通不良表示素子の特定を、より精度良く行うことができる。
【0014】
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、駆動手段により駆動させられる複数の表示素子が並べられた表示面を撮像して撮像画像を表す撮像画像データを生成する撮像手段から、当該撮像画像データを取得する取得手段と、前記撮像画像データが表す撮像画像に含まれる色の違いに基づいて、前記駆動手段によって駆動することができない不良表示素子の位置を検出し、各々の当該位置を表す複数の位置情報を生成して出力する不良表示素子検出手段として機能させるためのプログラムである。
本発明によれば、電子ペーパーなどの表示手段側に位置検出のための多数のセンサや印刷パターンなどの構成を設けなくても、その表示面上において操作者が指定した位置を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(A:構成)
(A−1:画像処理システムの全体構成)
図1は、画像処理システム9の全体構成を示す図である。
画像処理システム9は、電子ペン1と、電子ペーパー2とを有する。電子ペン1は、操作者が文字や図形等を記入するべく電子ペーパー2の表示面上を移動させられる筆記具として機能する。この電子ペン1は、電子ペーパー2と通信可能に構成されているとともに、ペン先部分にカメラを備えており、このカメラによって撮像された画像を表す撮像画像データを電子ペーパー2に送信する。電子ペーパー2は、電気泳動方式で画像を表示する表示装置である。この電子ペーパー2は、電子ペン1から送信されてくる撮像画像データを用いて、表示面における電子ペン1のペン先の移動方向および移動距離を検出し、その検出した移動方向および移動距離をもとにペン先の軌跡を計算して、操作者が描いた文字や図形を表現する。図1では、操作者が、電子ペーパー2の表示面の下方の領域に電子ペン1で所望の図形(図中点線R)を描いたときに、その電子ペン1のペン先の軌跡(図中実線R’)が、電子ペーパー2の上方の領域に表示される様子が示されている。つまり、操作者が描いた点線Rの位置に画像は表示されない代わりに、実線R’が表示される。
【0016】
(A−2:電子ペンの構成)
次に、図2は、電子ペン1の機能構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、電子ペン1は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、センサ14、カメラ15、通信部16および電源部17を備えている。これらの各構成11〜16は、バス19に接続されているとともに、図示しない電力線により電源部17に接続されている。CPU11は、ROM12に記憶されているコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、電子ペン1の各部を制御する。ROM12は、読み出し専用の不揮発性記憶装置であり、上述のコンピュータプログラムが記憶されている。RAM13はCPU11がプログラムを実行する際のワークエリアとして利用される。センサ14は、ペン先に連動した感圧装置であり、図示しない弾性体等により外部方向へ付勢力を与えられたペン先が対象物と接触して反力を受け、ペンの内部へ押される力を検知して、オン信号を出力する。つまり、このセンサ14は、ペン先が電子ペーパー2の表示面に接触するとオン信号を出力することになる。カメラ15は、ペン先が向けられた方向を撮像する撮像手段であり、電子ペーパー2の表示面の領域の一部(例えば直径5mm程度の円形領域)を撮像する。このカメラ15は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の固体撮像素子により、ペン先に備えられたレンズから撮りこまれる光を電気信号に変換して、その光に応じた撮像画像データを生成して出力する。通信部16は、赤外線やBluetooth(登録商標)などの通信規格に従った無線通信を行う無線通信回路を備えており、電子ペーパー2とデータ通信を行う。電源部17は、例えば充電可能なバッテリを備え、上述の電力線を介して上記の各構成11〜16に電力を供給する。
【0017】
(A−3:電子ペーパーの構成)
次に、図3は、電子ペーパー2の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、電子ペーパー2は、CPU21、ROM22、RAM23、記憶部24、表示部25、通信部26および電源部28を備えている。これらの各構成21〜26は、バス29に接続されているとともに、図示しない電力線により電源部28に接続されている。CPU21は、ROM22に記憶されているコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、電子ペーパー2の各部を制御する。ROM22は、読み出し専用の不揮発性記憶装置であり、上述のコンピュータプログラムが記憶されている。RAM23は、CPU21がプログラムを実行する際のワークエリアとして利用される。記憶部24は、例えばフラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性記憶装置であり、後述する画素電極PEの位置が記述された電極位置テーブル242を記憶している。通信部26は、電子ペン1の通信部16と同様の通信規格に従った無線通信を行う無線通信回路を備えており、電子ペン1とデータ通信を行う。電源部28は、例えば充電可能なバッテリを備え、上述の電力線を介して各構成21〜26に電力を供給する。表示部25は、CPU21の制御の下で画像を表示する表示手段である。表示部25は、多数の電気泳動素子や電極を備えた反射型の表示体252と、CPU21が送信する描画命令を駆動信号に変換し、この駆動信号により各電気泳動素子を駆動する駆動部251とを備えている。
【0018】
(A−4:電子ペーパーの表示体の構成)
ここで、図4は、表示体252の構造を模式的に示した図である。
図4に示すように、表示体252は、第1基板2521、第2基板2522、電気泳動素子P、バインダ2523により構成されている。図4においては、上方向が表示面の表面側であり、下方向が裏面側である。第1基板2521は、樹脂基板であり、その上方には複数の画素電極PEが設けられている。この画素電極PEは、全て略同一の大きさ(数十ミクロン程度)の正方形であり、規則的な格子状に並べられている。また、第1基板2521に対向する第2基板2522は、透明な樹脂基板であり、その下方には透明な共通電極CEが設けられている。複数の画素電極PEと共通電極CEの間には、複数の電気泳動素子Pが、光透過性を有するバインダ2523により固定されている。この電気泳動素子Pは、約数十ミクロン程度の大きさで略球状ではあるが、それぞれの大きさおよび形状は完全に同一ではなく、互いに近接して並べられている。
【0019】
図5は、電気泳動素子Pの構造および状態を模式的に示す断面図である。より詳細には、図5(a)は、黒色を表示するときの電気泳動素子Pの状態を示し、図5(b)は、白色を表示するときの電気泳動素子Pの状態を示すものである。また、図5(c)は、図中左側部分に白色を、右側部分に黒色をそれぞれ表示するときの電気泳動素子Pの状態を示すものである。
電気泳動素子Pは、図5(a)〜(c)に示すように、マイクロカプセル化されている。カプセル壁CWとしてのポリマー膜内には、プラス(+)に帯電した黒色顔料粒子BGおよびマイナス(−)に帯電した白色顔料粒子WGを含む、液体の分散媒DMが封入されている。黒色顔料粒子BGおよび白色顔料粒子WGの位置は、外部から与えられる電界により規定され、さらに分散媒DMにより安定的に維持される。なお、実際の黒色顔料粒子BGおよび白色顔料粒子WGの粒径は、図に示すよりも小さく、数ナノメートル程度である。上述したように、この電気泳動素子Pは、大きさおよび形状が完全に同一ではなく、いわば不規則に並べられた状態でバインダ2523により固定されているから、必ずしも画素電極PEと一対一の対応関係にはない。図5においては、簡略に説明するため、電気泳動素子Pの裏面側には、2つの画素電極PE1およびPE2が配置されている場合を図示したが、画素電極の大きさによっては、1つの電極と複数電気泳動素子Pとが対応する場合も3つ以上の電極と複数電気泳動素子Pとが対応する場合もある。
【0020】
電気泳動素子Pによって黒色を表示しようとするときには、図5(a)に示すように、画素電極PE1と共通電極CEとの間および画素電極PE2と共通電極CEとの間に図中矢印E1方向の向きを持つ電界を生じさせるような電圧が駆動部251により印加される。これにより、プラス(+)に帯電している黒色顔料粒子BGは、カプセル壁CW内において表面側に近付くように移動すると共に、マイナス(−)に帯電している白色顔料粒子WGは、カプセル壁CW内において裏面側に近付くように移動する。このようにして、電気泳動素子Pの表面側に黒色顔料粒子BGが集められるので、ユーザが表面側からこの電気泳動素子Pを観察したときには、黒色を認識する。他方で、電気泳動素子Pは、白色を表示しようとするときには、図5(b)に示すように、画素電極PE1と共通電極CEとの間および画素電極PE2と共通電極CEとの間に図中矢印E2方向の向きを持つ電界を生じさせるような電圧が駆動部251により印加される。これにより、白色顔料粒子WGは、表面側に近付くように移動すると共に、黒色顔料粒子BGは、裏面側に近付くように移動する。このようにして、電気泳動素子Pの表面側に白色顔料粒子WGが集められるので、ユーザが表面側からこの電気泳動素子Pを観察したときには、白色を認識する。
【0021】
また、一つの電気泳動素子Pが同時に表示することができる色は一色ではなく、図5(c)に示すように、一つの電気泳動素子Pが同時に白色と黒色の両方を表示する状態もある。この場合、電気泳動素子Pの図中右側においては、画素電極PE1と共通電極CEとの間に図中矢印E1方向の向きを持つ電界を生じさせるような電圧が駆動部251により印加され、電気泳動素子Pの図中左側においては、画素電極PE2と共通電極CEとの間に図中矢印E2方向の向きを持つ電界を生じさせるような電圧が駆動部251により印加される。これにより、電気泳動素子Pの図中右側においては、黒色顔料粒子BGが表面側に近付くように移動すると共に、白色顔料粒子WGが裏面側に近付くように移動する。また、電気泳動素子Pの図中左側においては、白色顔料粒子WGが表面側に近付くように移動すると共に、黒色顔料粒子BGが裏面側に近付くように移動する。
【0022】
(A−5:不良表示素子の説明)
ここで、図6は、駆動部251により正常に駆動することができない不良表示素子の状態の例を示す図である。
電気泳動素子Pのカプセル壁CW内の黒色顔料粒子BG又は白色顔料粒子WGは、帯電粒子に付された帯電量が不足しているなどの様々な原因により、カプセル壁CWの壁面に固着したり、或いは、粒子どうしでお互いに固着したりすることがある。図6(a)に示す例では、黒色顔料粒子BGが電気泳動素子Pのカプセル壁CWの表面側に固着している。この固着による力は、駆動部251が与える電界による力を上回っているため、矢印E2方向の電界を与えても、白色顔料粒子WGはカプセル壁CWの表面側に到達することができず、電気泳動素子Pは黒色を表示し続けることになる。
【0023】
一方、図6(b)に示す例では、黒色顔料粒子BGは、カプセル壁CWとは固着していないが、黒色顔料粒子BG同士が固着して大きな塊になっている。そのため、駆動部251が矢印E1方向の電界を与えても、黒色顔料粒子BGのそれぞれは分散媒DMの中を自由に動くことができず、塊となった黒色顔料粒子BGは、その両端が電気泳動素子Pのカプセル壁CWと衝突してしまう。そのため、黒色顔料粒子BGはカプセル壁CWの表面側に到達することができず、電気泳動素子Pは白色を表示し続けることになる。
【0024】
このように、電気泳動素子Pの中には、着色された帯電粒子が内壁に固着したり、その帯電粒子同士が固着したりすることにより、正常に駆動しない不良表示素子がある。電子ペーパー2の製造工程においては、このような不良表示素子がどうしても含まれてしまい、一般にその不良表示素子の割合は、電気泳動素子全体の1〜5%程度である。ただし、この程度の割合で不良表示素子が含まれているかぎり、不良表示素子の色が、画像全体に与える影響は小さく、人が画像全体を認識することを妨げる程ではないことが分かっている。
【0025】
この不良表示素子は、表示面の全面にわたってランダムな位置に発生する。図7(a)は、表示部25の表示面全面に白色を表示したときに、黒色の不良表示素子が点在している様子を例示した図である。この図7(a)に示したように、ほとんどの領域で白色が表示されている中にあって、いくつかの領域においては黒色が表示されている。この黒色の領域が、常時黒色を表示し続ける不良表示素子(以下、黒色不良表示素子)に相当する。よって、表示面を撮像した撮像画像に含まれる色(白色及び黒色)の違いに基づいて、黒色不良表示素子を検出することが可能である。また、図7(b)は、表示部25の全面に黒色を表示したときに、白色を表示している白色不良表示素子が点在している様子を例示した図である。同様にして、操作者は、常時白色を表示し続ける不良表示素子(以下、白色不良表示素子という)を検出することが可能である。
なお、記憶部24の電極位置テーブル242には、図7(a)に示すように表示体252の左上隅の頂点Oを原点とするxy座標系によって、画素電極PEの位置が記述されている。
【0026】
(B:動作)
次に、画像処理システム9の動作を説明する。
(B−1:手書き入力の動作)
図8は、電子ペン1により電子ペーパー2に手書き入力をする動作の流れを説明するシーケンス図である。
図8において、まず、操作者が、電子ペン1のペン先を電子ペーパー2の表示体252の表示面にあて、その表示面上に沿って移動させると、電子ペン1のセンサ14は、自身がペンの内部へ押される力を検知して、オン信号を出力する。このオン信号を受け取った電子ペン1のCPU11は、カメラ15に対し、撮像を開始する命令を送信する(ステップSB01)。カメラ15は、この命令を受け取ると、ペン先が向いている方向にある表示面を撮像し(ステップSB02)、その撮像画像データを生成する。CPU11は、通信部16を介して、この撮像画像データを電子ペーパー2に送信する(ステップSB03)。ここで、カメラ15が撮像する領域は、所定の大きさを有しており、前述したように例えば直径5mm程度の円形である。電気泳動素子Pの径はおおよそ数十ミクロン程度であるから、このカメラ15が1度に撮像した領域には、数千〜数万の電気泳動素子Pが含まれている。また、画素電極PEの大きさを電気泳動素子Pの大きさとおおよそ同じ程度とすると、このカメラ15が1度に撮像した領域には、電気泳動素子Pと同じく、数千〜数万の画素電極PEが含まれている。
【0027】
電子ペーパー2のCPU21は、電子ペン1の通信部16から送信された撮像画像データを通信部26によって取得すると、これに基づいて、この撮像画像データが表す撮像画像を撮像した撮像位置が、直前の撮像位置からどの方向にどれだけ移動したかを示す移動ベクトルを算出する移動ベクトル算出処理を行う(ステップSB04)。この移動ベクトル算出処理については詳しくは後述するが、これにより、ある単位時間に電子ペン1のペン先が表示面上を移動した方向と距離を示す移動ベクトルが算出されることになる。
【0028】
そして、CPU21は、算出した移動ベクトルに応じて描画位置情報を更新する(ステップSB05)。ここで、描画位置情報とは表示部25の表示体252のいずれかの位置に対応した座標値であり、図7(a)の左上隅の頂点Oを原点としたxy座標系で表される。この描画位置情報は、初期状態においては予め定められた位置(例えばxy座標系の原点である頂点O近傍の決められた位置など)に設定され、RAM23に記憶されている。そして、この描画位置情報の更新とは、このRAM23に既に記憶されている座標値に対し、算出した移動ベクトルと同一または比例するベクトルを逐次加算してRAM23に記憶することである。
【0029】
続いて、CPU21は、記憶部24の電極位置テーブル242を参照して、更新した描画位置情報が示す位置にある画素電極PEを特定するとともに、表示部25の駆動部251に対してその画素電極PEを指定した描画命令を送信する。この描画命令を受けた駆動部251は、CPU21が特定した画素電極PE及びその近傍にある所定数の画素電極PEを駆動して、これらの画素電極PEに近接する複数の電気泳動素子Pを駆動する(ステップSB06)。これにより、操作者が電子ペン1のペン先で描いた軌跡と同一または相似形の軌跡に沿って、所定色(例えば背景色が白色の場合には所定色を黒色とする)の点画像が表示される。
【0030】
電子ペン1は、CPU11に内蔵されたタイマに従って、所定周期毎に上述の表示面を撮像し、撮像画像データを生成してこれを電子ペーパー2に送信することで、上述したステップSB02からステップSB06までの処理が繰り返し行われる。これらの処理が短期間の間に繰り返し行われることで、操作者が電子ペン1のペン先を移動させた方向および距離に応じた位置に表示された点画像が表示面上で線画像として連なる。よって、表示面においてはペン先の軌跡に応じた軌跡が線として表示されることになり、操作者は所望の文字や図形を描くことができる。
【0031】
(B−2:移動ベクトル算出処理の動作)
次に、図9は、上述したステップSB04の移動ベクトル算出処理の動作の流れを説明するフローチャートである。
図8で説明したように、電子ペン1は表示面の撮像画像データを所定周期毎に電子ペーパー2に送信してくるので、電子ペーパー2のCPU21は、通信部26を介して、これを定期的に取得することになる(ステップSC01;YES)。そして、CPU21は、取得した撮像画像データが表す撮像画像を、同一色の連続領域にそれぞれ分離する(ステップSC02)。CPU21は、この領域分離の際に、例えば同一色の連続領域に共通のラベルを割り当てる周知のラベリング処理などを用いればよい。
【0032】
ここで、図10は、ある瞬間の撮像画像データが表す撮像画像Q1を例示した図である。
図10に例示した撮像画像Q1に対して上記の領域分離処理が行われると、白色の領域W1と、黒色の領域B1−1,B1−2,B1−3,・・・B1−N(Nは整数)とに分離されることになる。
そして、図9において、電子ペーパー2のCPU21は、上記領域分離処理によって分離された複数の領域から、予め決められた大きさの範囲内に収まる領域を不良表示素子に相当する領域(以下、不良表示素子領域という)として抽出し、その領域の重心の座標値を割り出してRAM23に記憶する(ステップSC03)。
【0033】
より詳細に説明すると、上述したように、電気泳動素子Pの大きさは、ばらつきがあるものの、おおよそ数十ミクロン程度であるから、CPU21は、領域分離処理によって分離された複数の領域のうち、例えば20ミクロンから70ミクロンの範囲に収まる大きさの領域を抽出することで、不良表示素子領域を抽出することができる。例えば図10の場合、白色の領域W1は、撮像画像Q1の全域のほとんどの面積を占めているから、CPU21はこの領域W1を、予め決められた、20ミクロンから70ミクロンの範囲に収まらないと判断する。一方、黒色の領域B1−1,B1−2,B1−3,・・・B1−Nは、白色の領域W1と比較すると圧倒的に小さい面積であるが、これらがそれぞれ20ミクロンから70ミクロンの範囲に収まる場合には、CPU21は、これらを全て不良表示素子領域として抽出する。そして、CPU21は、例えば撮像画像Q1の中心C1(図中×印)を原点としたXY座標系に従って、抽出した不良表示素子領域B1−1,B1−2,B1−3・・・B1−Nのそれぞれの重心の位置を表すXY座標値を求めてRAM23に記憶する。これにより、RAM23には、電子ペン1の1回の撮像によって得られた直径約5mm程度の画像領域に含まれる、不良表示素子の配置パターンが記憶されることになる。
【0034】
次に、CPU21は、移動ベクトルを算出する。ここで、移動ベクトルとは、電子ペン1から取得した撮像画像の位置が、直前の撮像画像の位置からどの方向にどれだけ移動したかを示すものであり、XY座標によって(X,Y)という様に表される。CPU21は、直前の不良表示素子の配置パターンがRAM23に記憶されているか否かを判断し(ステップSC04)、記憶されていない場合には(ステップSC04;NO)、上述した移動ベクトルを0ベクトル、即ち(0,0)に設定する(ステップSC05)。
【0035】
一方、直前の不良表示素子の配置パターンがRAM23に記憶されている場合には(ステップSC04;YES)、CPU21は、RAM23に記憶された現在の不良表示素子の配置パターンと、直前の不良表示素子の配置パターンとを照合し(ステップSC06)、移動ベクトルを算出する(ステップSC05)。具体的には、CPU21は、RAM23に記憶された現在の不良表示素子の配置パターンに含まれる或る1つの不良表示素子の座標値を、直前の不良表示素子の配置パターンに含まれる1つの不良表示素子の座標値に一致すると仮定し、現在の不良表示素子の配置パターンのうち、所定の割合以上の数が、直前の不良表示素子の配置パターンに一致するか否かという判断を行う。そして、両者が一致しなければ、CPU21は、RAM23に記憶された現在の不良表示素子の配置パターンに含まれる上記或る1つの不良表示素子の座標値を、直前の不良表示素子の配置パターンに含まれる別の1つの不良表示素子の座標値に一致すると仮定して上記と同様の判断を行う。この判断を、上記の仮定の対象となる現在および直前の不良表示素子の座標値の組み合わせを順次変更しながら、RAM23に記憶された現在の不良表示素子の配置パターンと直前の不良表示素子の配置パターンとが所定の割合以上一致するまで、繰り返し行う。
【0036】
図11は現在と直前の配置パターン同士の一致を判断する処理を説明するための図である。この図に従って、配置パターン同士の一致を判断する処理の具体例を説明する。
図11に示すように、RAM23には、現在の撮像画像Q1と直前の撮像画像Q0の不良表示素子の配置パターンが記憶されている。すなわち、撮像画像Q1の直前に撮像された撮像画像Q0においては、不良表示領域としてB0−1,B0−2,B0−3,・・・B0−M(Mは整数)が抽出され、撮像画像Q0の中心C0(図中×印)を原点としたXY座標系に従って、これら不良表示領域のそれぞれの重心の位置を示す座標値がRAM23に記憶されている。一方、撮像画像Q1においては、不良表示領域としてB1−1,B1−2,B1−3,・・・B1−N(Nは整数)が抽出され、撮像画像Q1の中心C1(図中×印)を原点としたXY座標系に従って、これら不良表示領域のそれぞれの重心の位置を示す座標値がRAM23に記憶されている。
【0037】
CPU21はまず、直前の不良表示領域B0−1と現在の不良表示領域B1−1が一致すると仮定し、撮像画像Q1と撮像画像Q0のそれぞれの不良表示領域が一致するか否かを判断する。図を参照すると分かるように、不良表示領域B0−1と不良表示領域B1−1とは異なる不良表示領域であるから、この判断は否定的となる。CPU21は、この組み合わせを順次変更しながら、現在の不良表示素子の配置パターンと直前の不良表示素子の配置パターンとが所定の割合以上一致するまで、繰り返し行う。そして、CPU21は、直前の不良表示領域B0−2と現在の不良表示領域B1−1とが一致すると仮定して、判断を行ったときに、両者が一致していると判断する。このとき、不良表示領域B0−2はC0を原点としたXY座標系で表され、不良表示領域B1−1はC1を原点としたXY座標で表されているから、CPU21は、不良表示領域B1−1のXY座標値から不良表示領域B0−2のXY座標値を減算することで、C1を、C0を原点としたXY座標系で表すことができる。CPU21は、このC1をXY座標系で表した座標値を、撮像画像Q0から撮像画像Q1へ撮像位置が移動した際の移動方向と移動距離を示す「移動ベクトル」V1として、算出し、RAM23に書き込む(出力する)。
【0038】
(B−3:描画位置情報の更新の動作)
上述したように、RAM23には、描画位置情報が、図7(a)の左上隅の頂点Oを原点としたxy座標系で表される座標値として記憶されている。CPU21は、ステップSB04の移動ベクトル算出処理で得られた「移動ベクトル」V1を、RAM23に記憶されている描画位置情報に加算し、これを新たな描画位置情報としてRAM23に記憶する。CPU21は、この描画位置情報に対応する位置にある電気泳動素子Pを駆動部251により駆動させ、表示体252に点画像を表示させる。なお、「移動ベクトル」V1を描画位置情報に加算するに当たり、所定の係数をV1に乗算したうえで、これを描画位置情報に加算してもよい。このようにすると、操作者が電子ペン1を用いて、電子ペーパー2の表示面に描いた文字や図形等を拡大または縮小した文字や図形等が、電子ペーパー2のいずれかの場所に表示される。
【0039】
以上説明した実施形態によれば、電子ペーパー2は、電子ペン1によって撮像した表示面の画像から、その画像に含まれる色の違いに基づいて、表示体252の表示面全面に点在する不良表示素子の位置を検出する。そして、電子ペーパー2は、これらの不良表示素子の位置を撮像の度に順次記憶しておき、直前に記憶した記憶内容と、電子ペン1によって撮像した表示面の一部の領域に含まれる不良表示素子の位置とを照合することで、電子ペン1の撮像画像の表示面上の移動ベクトルを算出して、これに応じて更新された描画位置に対応する表示素子を駆動する。これにより、操作者が電子ペン1を用いて、電子ペーパー2の表示面に文字や図形等を描くと、電子ペン1のペン先が描いた軌跡が電子ペーパー2のいずれかの場所に表示されることになるので、操作者はあたかも、ペンによって紙に手書き入力をするように、文字等を電子ペーパー2に記入することができる。そして、このようにして記入された文字等を示すデータは電子データとして扱うことができるため、これらの文字等の加工、解析および再利用などを容易に行うことができる。
【0040】
(C:変形例)
上述の実施形態を以下のように変形してもよい。
(1)画像処理システム9は、電子ペン1と、電子ペーパー2という2つの構成を有していたが、これに限らず、これらの構成が実現する各機能を、1つの装置に集中化してもよいし、さらに複数の装置に分散化してもよい。
【0041】
(2)上述の実施形態においては、各電気泳動素子Pには、白色と黒色の2色に分けられた複数の顔料粒子を含む分散媒DMが封入されていたが、この顔料粒子の色は、1色のみでもよいし、白色や黒色以外であってもよい。例えば1色の場合、その顔料粒子を分散させる分散媒DMを当該顔料粒子の色と異なる光透過性の無い色に着色しておけばよい。このようにすると、画素電極PEと共通電極CEとの間に電圧をかけることによって、顔料粒子が表面側に移動すれば、その色が表面に表示され、顔料粒子が裏面側に移動すれば、分散媒DMの色が表面に表示されるので、駆動電圧に応じた発色がなされるように、電気泳動素子を駆動させることができる。
【0042】
(3)上述の実施形態においては、手書き入力の際に、電子ペン1のCPU11は通信部16を介して撮像画像データを電子ペーパー2に送信していたが(図8のステップSB03)。このとき、電子ペン1は、撮像画像データではなく、不良表示素子に相当する領域の重心のXY座標値(撮像画像の中心を原点としたXY座標系における座標値)を計算して、これを電子ペーパー2に送信してもよい。この場合、図9に示すステップSC01ないしSC03までの処理を電子ペン1のCPU11が行い、電子ペーパー2のCPU21は、図9に示すステップSC04およびSC07の処理を行う。すなわち、電子ペン1および電子ペーパー2(或いは前述のとおり機能を分散化する場合には、これら以外の第3の装置を含む)の少なくともいずれか一方が「撮像画像データが表す撮像画像に含まれる色の違いに基づいて、駆動手段によって駆動することができない不良表示素子の位置を検出し、各々の当該位置を表す複数の位置情報を生成する不良表示素子検出手段」として機能すればよい。
【0043】
(4)上述の実施形態の移動ベクトル算出処理において、電子ペーパー2のCPU21は、仮定の対象となる現在および直前の不良表示素子の座標値の組み合わせを順次変更しながら、両者が一致するか否かを判断するようになっており、その判断の際の組み合わせの優先順位については特に規定していなかった。このとき、移動ベクトル算出処理は繰り返し行われるので、直前に行われた移動ベクトル算出処理で特定した撮像画像の位置を、その次の移動ベクトル算出処理において参考にしてもよい。具体的には、電子ペーパー2のCPU21は、直前の撮像画像の中心C0に近いものから順に仮定の対象となる現在および直前の不良表示素子の座標値の組み合わせを変更していけばよい。電子ペン1は人間の動作速度と比較して非常に短い周期で撮像を繰り返しているため、或る時の撮像位置と、その直前の撮像位置とは近接していることがほとんどである。そして、直前の撮像画像Q0の中心C0に近い不良表示素子ほど、現在の撮像画像Q1に含まれている可能性が高いから、これを優先して判断を試みるのが合理的である。このようにすると、現在と直前の配置パターン同士の一致する確率の高い組み合わせが優先して判断されるため、移動ベクトルを算出するまでの時間が短縮され、処理速度が向上する。
【0044】
(5)上述の実施形態においては、電子ペーパー2のCPU21は、移動ベクトル算出処理によって電子ペン1の移動ベクトルが算出されると、算出した移動ベクトルに応じて描画位置情報を更新していた。そして、CPU21は、更新した描画位置情報が示す位置にある画素電極PEを指定する描画命令を送信し、この画素電極PE及びその近傍にある所定数の画素電極PEを、表示部25の駆動部251によって駆動させていた。つまり、電子ペン1のペン先の位置に応じた処理の内容は描画処理であったが、この処理の内容はこれに限らず、移動ベクトル算出処理によって算出された移動ベクトルに応じた処理であればどのようなものであってもよい。例えば、CPU21は、操作者が描いた軌跡を図形データとして、記憶部24や、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置に記憶させてもよい。
また、実施形態では、移動方向及び移動量からなる移動ベクトルを算出していたが、必ずしもそうである必要はなく、これら移動方向、又は、移動速度若しくは移動量を算出し、その算出結果に応じた処理を行うものであってもよい。
【0045】
(6)上述の実施形態の移動ベクトル算出処理においては、CPU21は、まず領域分離処理を行い(図9のステップSC02)、その領域分離処理によって分離された複数の領域から、所定の大きさの範囲内に収まる領域を、不良表示素子領域として抽出していた。これは、表示面に画像が表示されていない場合に有効な方法であるが、例えば、表示面に点画像が表示されている場合であっても有効な方法である。後者の場合には、所定の大きさの範囲内に収まる領域を不良表示素子領域として抽出することで、それぞれの大きさのオーダーが異なる点画像と不良表示素子領域とを区別できるからである。
しかし、例えば上述したように、複数の処理名とチェックボックスとを併せて表示体252に表示しているような場合には、不良表示素子領域を精度良く抽出できないことがある。なぜなら、画像データに基づいた画像の輪郭部分においては、その画像を表示している表示素子と、不良表示素子とを区別しづらいからである。
【0046】
ここで、図12は、電子ペン1のカメラ15が、画像データに基づいた画像の輪郭部分を撮像したときの撮像画像を例示した図である。
図12において、境界線Lは、記憶部24など記憶された画像データに基づいて表示された画像の輪郭を意味している。この境界線Lを境にして、その左側には黒色の領域が、その右側には白色の領域がそれぞれある程度以上の大きさで存在している。
次に、図13は、この図12で示した撮像画像のうち、破線で囲われた部分を拡大した図である。図13に示すように、電気泳動素子P1およびP2は、黒色の領域に属しており、その素子の輪郭の内側全部が黒色に発色している。一方、電気泳動素子P3,P5は、左側が黒色の領域に属し、右側が白色の領域に属しているから、境界線Lを境にしてそれぞれ属する領域に応じた色に発色しているが、電気泳動素子P4だけは、この境界線L上にあるにもかかわらず、その素子の輪郭の内側全部が黒色に発色している。この電気泳動素子P4は不良表示素子であるから、画像の輪郭に相当する境界線Lとは異なる形状で表示されているのである。そこで、電子ペーパー2のCPU21は、このような撮像画像データから、境界線Lと異なる形状部分を、周波数解析等の画像認識処理を用いて検出する。そして、電子ペーパー2のCPU21は、検出した形状部分から電気泳動素子P4の輪郭を推測し、電気泳動素子P4の重心の位置を表す座標値を求めてRAM23に記憶する。より具体的には、まず、CPU21は、図14に示すような画像の輪郭、つまり黒色の領域と白色の領域との境界線Lとは異なる形状の部分l1を検出する。この境界線Lは、要するに、画素電極PEの形状の輪郭部分を連ねた線である。よって、電子ペーパー2の記憶部24には、画素電極PEの形状を表すデータが記憶されており、CPU21は、境界線Lにおいて、このデータが表す形状と一致しない孤の部分l1を検出する。次に、CPU21は、電気泳動素子P4の輪郭がほぼ円形であることに鑑みて、部分l1の孤を延長した孤である部分l2を計算により求める。そして、CPU21は、孤の部分l1と孤の部分l2からなる円の中心のXY座標値を、不良表示素子(電気泳動素子P4)の位置を表す座標値としてRAM23に記憶する。
なお、現在の不良表示素子の配置パターンと、直前にRAM23に記憶された不良表示素子の配置パターンとを照合する際に、不良表示素子の座標値の組み合わせを順次変更して決定しても、電子ペン1はその軸を中心として回転していることも考えられるため、照合は、その組み合わせ毎に、互いの撮像画像を360度回転させて、一致するか否かを確認しなければならない。一方、このように画素電極PEの形状を予め記憶部24に記憶しておくと、所定の画像解析を行うことで、撮像画像データから、画素電極PEの形状に由来する画像の輪郭を特定することができる。そして、この特定した輪郭から撮像画像の向きを限定することができる。例えば、画素電極PEの形状が正方形であれば、照合は、0度、90度、180度、270度の4通りに限られるので、照合にかかる時間を短縮することができる。
【0047】
また、この場合、画素電極PEの形状は正方形に限定されない。
図15は、この変形例における画素電極PEの形状の一例を示す図である。図15に示す例においては、画素電極PEは概ね正方形であるが、一部の辺において、欠けた部分を有している。このような場合であっても、予め画素電極PEの形状を電子ペーパー2の記憶部24が記憶していることにより、上述と同様に、電気泳動素子Pとの形状の違いから不良表示素子を検出することができる。
なお、CPU21は、画像の輪郭部分については上記のような処理を行って不良表示素子を検出すればよいし、輪郭部分以外の領域(例えば1色で表示された画像の内側の領域)から、実施形態と同様の手順で不良表示素子を検出すればよい。
【0048】
(7)上述の実施形態においては、電子ペン1が順次撮像した撮像画像に含まれる不良表示素子の現在の位置と直前の位置とを照合することで、電子ペン1のペン先が描く軌跡を特定していた。このような位置に基づく照合に加えて、各々の電気泳動素子の大きさや形状が微妙に異なることに鑑み、各不良表示素子の大きさ又は形状に基づく照合を行ってもよい。
具体的には、CPU21は、移動ベクトル算出処理の動作において、電子ペン1が撮像した撮像画像から、予め決められた大きさの範囲内に収まる不良表示素子領域の座標値のほか、各領域の大きさ又は形状の少なくともいずれか一方を求めて、これをRAM23に記憶する。そして、CPU21は、直前にRAM23に記憶された不良表示素子領域の座標値及び上記大きさ又は形状と、現在の撮像画像から抽出した不良表示素子領域の座標値及び大きさ又は形状とを照合して、所定の割合以上一致するものを特定する。
この態様によれば、一致する不良表示素子を精度良く照合することができる。
【0049】
(8)上述の実施形態においては、電子ペン1のCPU11は、センサ14が出力したオン信号を受け取ると、カメラ15に対し、撮像を開始する命令を送信していたが(図8のステップSB01)、カメラ15に撮像を開始する命令を送信するタイミングや仕組みはこれに限られない。例えば、受光した像のコントラストを検出したり、光学センサを複数用いてペン先から電子ペーパー2の表示体252までの距離を算出したりすることで、撮像を開始する命令を送信するタイミングを決定してもよい。
また、センサ14に連動して、カメラ15が撮像を開始する際に、照明を点灯させてもよい。上述の電子ペーパー2は反射型の表示デバイスであるから、ペン先と表示体252との隙間がなくなると、撮像領域に光が当たりにくくなる虞があるからである。
【0050】
(9)上述の実施形態においては、カメラ15の撮像のタイミングは周期的であったが、周期的でなくてもよく、例えば操作者が指定したときだけ撮像するというものであってもよい。また、電子ペン1が撮像画像データを送信するタイミングは撮像の都度であったが、他のタイミングで送信してもよい。例えば、電子ペン1は、所定回数分の撮像画像データをRAM13に逐次記憶し、撮像画像データが示す画像の変化に応じて送信してもよい。
【0051】
(10)上述した実施形態では、表示体252の表示面は、複数の電気泳動素子が並べられることによって構成されていたが、これ以外の表示素子によって表示面が構成される表示体を用いてもよい。要するに、表示体が多数の表示素子によって構成され、かつ、或る程度の数の表示素子が不良表示素子となり得るのであれば、その不良表示素子の分布状況に基づいて、表示面上の位置を特定することができる。電気泳動素子の場合は、不良表示素子の割合が1〜5%であり、これは位置の検出に充分な程度の割合と言える。
【0052】
(11)本発明を上述したCPU11及びCPU21が実行するプログラムとして実現してもよい。また、これらプログラムは、磁気テープ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光記録媒体、光磁気記録媒体、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、RAMなどの記録媒体に記録した状態で提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】画像処理システムの全体構成を示す図である。
【図2】電子ペンの機能構成の一例を示すブロック図である。
【図3】電子ペーパーの機能構成の一例を示すブロック図である。
【図4】表示体の構造を模式的に示した図である。
【図5】電気泳動素子の構造および状態を模式的に示す断面図である。
【図6】不良表示素子の状態の例を示す図である。
【図7】表示部の全面に白色を表示したときに、黒色を表示している不良表示素子の配置を例示した図及び表示部の全面に黒色を表示したときに、白色を表示している白色不良表示素子の配置を例示した図である。
【図8】電子ペンにより電子ペーパーに手書き入力をする動作の流れを説明するシーケンス図である。
【図9】移動ベクトル算出処理の動作の流れを説明するフローチャートである。
【図10】撮像画像データが表す撮像画像を例示した図である。
【図11】現在と直前の配置パターン同士の一致を判断する処理を説明するための図である。
【図12】撮像画像データが表す撮像画像を例示した図である。
【図13】図12で示した撮像画像のうち、破線で囲われた部分を拡大した図である。
【図14】画像の輪郭とは異なる形状の部分を検出する方法を説明するための図である。
【図15】変形例における画素電極の形状の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1…電子ペン、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…センサ、15…カメラ、16…通信部、17…電源部、19…バス、2…電子ペーパー、21…CPU、22…ROM、23…RAM、24…記憶部、242…電極位置テーブル、25…表示部、251…駆動部、252…表示体、2521…第1基板、2522…第2基板、2523…バインダ、26…通信部、28…電源部、29…バス、9…画像処理システム、B0−1〜M,B0−1〜N…黒色不良表示素子領域、BG…黒色顔料粒子、CE…共通電極、CW…カプセル壁、DM…分散媒、L…境界線、P…電気泳動素子、PE…画素電極、W1…白色の領域、WG…白色顔料粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表示素子が並べられた表示面を有し、当該複数の表示素子をそれぞれ駆動手段により駆動して画像を表示する表示手段と、
前記表示面を撮像し、撮像画像を表す撮像画像データを生成する撮像手段と、
前記撮像画像データが表す撮像画像に含まれる色の違いに基づいて、前記駆動手段によって駆動することができない不良表示素子の位置を検出し、各々の当該位置を表す複数の位置情報を生成して出力する不良表示素子検出手段と
を具備することを特徴とする位置検出システム。
【請求項2】
前記表示素子には、着色された複数の帯電粒子を分散させた液体が封入されており、
前記表示手段は、前記表示素子に対する電界の方向を変化させて、当該表示素子に封入されている液体内の前記帯電粒子を移動させることにより、画像を表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項3】
駆動手段により駆動させられる複数の表示素子が並べられた表示面を撮像して撮像画像を表す撮像画像データを生成する撮像手段から、当該撮像画像データを取得する取得手段と、
前記撮像画像データが表す撮像画像に含まれる色の違いに基づいて、前記駆動手段によって駆動することができない不良表示素子の位置を検出し、各々の当該位置を表す複数の位置情報を生成して出力する不良表示素子検出手段と
を備えることを特徴とする位置検出装置。
【請求項4】
前記不良表示素子検出手段は、前記撮像画像データが表す撮像画像を色毎の画像領域に分離し、分離した複数の画像領域のうち、予め決められた大きさの範囲内に収まる画像領域の位置を前記不良表示素子の位置として検出する
ことを特徴とする請求項3に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記不良表示素子検出手段は、
前記表示素子を駆動するための電極の形状を記憶しており、
前記撮像画像データが表す撮像画像において、それぞれ異なる色の画像領域の境界線を特定し、特定した当該境界線と記憶しておいた前記電極の形状とが一致しない位置を、前記不良表示素子の位置として検出する
ことを特徴とする請求項3に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記撮像手段は、それぞれ異なる撮像タイミングで前記表示面の一部を撮像し、各々の撮像画像を表す撮像画像データを出力するものであり、
前記取得手段は、前記撮像手段によって出力される各々の前記撮像画像データを取得し、
前記不良表示素子検出手段により各々の前記撮像画像から検出された複数の不良表示素子のうち、素子どうしの相対的な位置関係が一致する不良表示素子を、各々の前記撮像画像において共通する共通不良表示素子として特定する共通素子特定手段と、
前記共通素子特定手段により特定された共通不良表示素子の前記各撮像画像における位置の変位と、前記各撮像画像の撮像タイミングとに基づいて、前記表示面に対する前記撮像手段の移動方向、又は、移動速度若しくは移動量を算出して出力する算出手段とを備える
ことを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記算出手段によって算出された移動方向、又は、移動速度若しくは移動量に応じた処理を行う処理手段を備える
ことを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記共通素子特定手段は、素子どうしの相対的な位置関係に加えて、各々の前記不良表示素子の大きさ又は形状の少なくとも一方が一致する不良表示素子を、前記共通不良表示素子として特定する
ことを特徴とする請求項3乃至7のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項9】
コンピュータを、
駆動手段により駆動させられる複数の表示素子が並べられた表示面を撮像して撮像画像を表す撮像画像データを生成する撮像手段から、当該撮像画像データを取得する取得手段と、
前記撮像画像データが表す撮像画像に含まれる色の違いに基づいて、前記駆動手段によって駆動することができない不良表示素子の位置を検出し、各々の当該位置を表す複数の位置情報を生成して出力する不良表示素子検出手段と
して機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−140158(P2009−140158A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314764(P2007−314764)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】