説明

位置検出システム

【課題】 移動体ごとに面倒な校正登録作業などの初期設定を要することなく、可動式の走査器を要することもなく、高い精度と信頼性をもって移動体の位置を検出することが可能な位置検出システムを提供する。
【解決手段】 光学ビーコン♯2〜♯6が、発光順序が自身より2つ前の光学ビーコンから発せられる光および自身より1つ前の光学ビーコンから発せられる光のいずれかを受けることにより、発光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物内の移動体の位置を検出する位置検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体の位置を知るための手段として、移動体に回転式のレーザレーダを設けるとともに、移動体の周りの空間に少なくとも3つの反射器を固定し、レーザレーダから発せられるレーザ光により移動体の周囲を走査するシステムが知られている。このシステムでは、レーザ光の走査に伴う各反射器からの反射光の有無、およびレーザ光の走査角度情報に基づいて、移動体から見た各反射器の方向を検知することができる。また、各反射器で反射した光が戻ってくるまでの時間を計ることにより、移動体と各反射器との間の距離を検知することができる。そして、検知した方向および距離に基づいて、移動体の位置を特定することができる(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−302469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のシステムでは、初期設定として、敷設後に移動体を定点に置いて校正登録作業を行う必要があることから、多数の移動体を用いるような場合には各移動体ごとに上記校正登録作業を行わねばならず、面倒であるため、このような用途には向いていなかった。また、それ以降も移動体の移動データを継続的に取得しながら各反射器の位置を監視し続け、場合によっては移動体の自律移動の制御データ(デッドレコニング)との比較をしなければならず、この点からも、多数の移動体が出入りしたり自由な移動を行うような用途には向いていなかった。また、回転式のレーザレーダのような可動式の走査器を設けねばならないために、移動体が大型化したり、故障の可能性およびコストが高くなるという問題がある。
【0004】
これに対し、移動体の移動空間に複数の発光手段を設け、これら発光手段から発せられる光の方向を検出し、この検出結果に基づいて移動体の位置を検出するシステムが考えられる。このシステムによれば、上記のような可動式の走査器を設けることなく、移動体の位置を検出することが可能である。また、上記システムにおいて、各発光手段を所定の順序で発光させるようにすれば、全ての発光手段を常に発光させておく必要がないので、消費電力を低減することが可能である。そして、各発光手段を所定の順序で発光させる手段として、各発光手段から発せられる光を発光手段の相互間で順に受け継いでいくようにすれば、各発光手段同士をネットワーク接続する必要がなく、システム全体として構成を簡略化することができる。
【0005】
ただし、上記構成においては、光が遮られる等何らかの原因で発光手段間の光の受け継ぎがうまくいかなかった場合には、そこで発光が途切れてしまい、高い精度での位置検出ができなくなるおそれがあり、その改善が望まれている。
【0006】
この発明は、上記事情を考慮したもので、移動体ごとに面倒な校正登録作業などの初期設定を要することなく、可動式の走査器を要することもなく、高い精度と信頼性をもって移動体の位置を検出することが可能な位置検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明の位置検出システムは、移動体の移動空間に分散して設けられ、所定の発光順序で且つそれぞれ自己の識別情報を含む発光パターンで発光する複数の光学ビーコンと、上記移動体に設けられ、上記各光学ビーコンにより発せられる光の識別情報から少なくとも3つの光学ビーコンを識別するとともに、この識別した各光学ビーコンからの光の方向を検出し、この検出結果に基づいて前記移動体の位置を検出する検出手段と、を備えている。そして、いずれかの光学ビーコンは、所定の光学ビーコンの発光パターンを認識してから第一の所定時間経過後、または上記所定の光学ビーコンより前に発光する光学ビーコンの発光パターンを認識してから第二の所定時間経過後のどちらかの時点で、発光する。
【0008】
請求項2に係る発明の位置検出システムは、移動体の移動空間に分散して設けられ、所定の順序で且つそれぞれ自己の識別情報を含む発光パターンで発光する複数の光学ビーコンと、上記移動体に設けられ、上記各光学ビーコンにより発せられる光の識別情報から少なくとも3つの光学ビーコンを識別するとともに、この識別した各光学ビーコンからの光の方向を検出し、この検出結果に基づいて前記移動体の位置を検出する検出手段と、を備えている。そして、いずれかの光学ビーコンは、発光順序が自身より前の光学ビーコンの発光パターンを認識することにより発光し、その発光から所定時間経過しても、発光順序が自身より後の光学ビーコンの発光パターンを認識しない場合に再び発光する。
【発明の効果】
【0009】
この発明の位置検出システムによれば、移動体ごとに面倒な校正登録作業などの初期設定を要することなく、可動式の走査器を要することもない。これにより、多数の移動体を用いるようなものにも適用可能とすることができ、しかも、移動体が大型化したり、故障の可能性およびコストが高くなるといった不都合を生じることがない。また、高い精度と信頼性をもって移動体の位置を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[1]以下、この発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、1は大型商店などの建物で、床、壁、天井で覆われている。この建物1の床面に移動体2が移動自在に存している。
【0011】
建物1の内壁上部あるいは天井に、少なくとも3つ以上の発光手段たとえば6個の光学ビーコン♯0〜♯6が分散して取付けられている。これら光学ビーコン♯0〜♯6は、発光素子として赤外線光を発する発光ダイオードを用いており、取付け位置(平面座標)については施設時に移動体2に設けられた後述する検出ユニットの位置データメモリに記憶されている。
【0012】
光学ビーコン♯0〜♯6から発せられる赤外線光は、壁面に取付けられている場合に平面図上で最大180度(角部に取付けのものは90度または270度)の範囲で上下左右方向に拡がり、天井に取付けられている場合に平面図上で最大360度の範囲で横方向および下方向に拡がる。
【0013】
とくに、光学ビーコン♯0〜♯6には、符号順にそのまま対応する発光順位が予め定められている。そして、光学ビーコン♯0〜♯6のうち、発光順位が1番目の光学ビーコン♯0の除く残りの光学ビーコン♯1〜♯6は、自己以外の複数の光学ビーコンたとえば発光順位が2つ前と1つ前の2つの光学ビーコンから発せられる光の到達領域に存している。
【0014】
発光順位が1番目の光学ビーコン♯0は、基準光学ビーコンとして、予め定められた一定周期で発光を繰返すもので、図2に示すように、発光パターン生成部10、タイマ11、ID設定部12、および発光素子(発光ダイオード)13により構成されている。このうち、発光パターン生成部10およびタイマ11により、発光制御部が構成されている。
タイマ11は、光学ビーコン♯0の発光の繰返しの基準となる一定周期(一定時間t1)をカウントする。この一定周期は、残りの従属光学ビーコンである光学ビーコン♯1〜♯6の発光パターンに要する時間の総和よりも長く設定されている。ID設定部12は、光学ビーコン♯0に固有の識別情報いわゆるIDを人為的な操作により可変設定するためのものである。
【0015】
発光パターン生成部10は、タイマ11が一定時間t1をカウントするごとに、所定周波数のキャリア信号を変調し、その変調信号(パルス信号)により、先頭の起動情報として特定の発光パターンを有する開始信号を生成し、続いてID設定部12の設定に応じたIDコードを生成し、これら開始信号およびIDコードに応じて発光素子(発光ダイオード)13を発光させる。開始信号の立上がりからIDコードの終了までに一定時間taが確保される。IDコードは、一定時間tbに収まる3ビットの2進数値であり、光学ビーコン♯0用として“0”が2進数値で設定されている。一定時間ta,tbについては、発光パターン生成部10内のクロック信号のカウントにより設定される。
【0016】
光学ビーコン♯1〜♯6は、自己以外の光学ビーコンから発せられる光のうち、予め定められている発光順位が2つ前および1つ前の光学ビーコンから発せられる光をその光に含まれているIDコードからそれぞれ判別し、その判別した光を受けることにより動作して発光する。
【0017】
光学ビーコン♯1〜♯6の制御回路は互いに同じもので、そのうちの光学ビーコン♯1の制御回路を代表して図3に示している。すなわち、自己以外の光学ビーコンから発せられる光を受ける受光素子(フォトダイオード)20、この受光素子20の受光信号に含まれている開始信号およびIDコードを判別する信号判別部21、この信号判別部21で開始信号およびIDコードが判別された場合に同判別されたIDコードとIDメモリ23a内の第1の特定IDコード(発光順位が自身より2つ前の光学ビーコンのIDコード)およびIDメモリ23b内の第2の特定IDコード(発光順位が自身より1つ前の光学ビーコンの第2のIDコード)とをそれぞれ比較する比較部22が設けられている。この比較部22の比較結果が、発光パターン生成部24に供給される。そして、発光パターン生成部24に、タイマ25、ID設定部26、発光素子(発光ダイオード)27が接続されている。
タイマ25は、比較部22の各比較結果のいずれかが一致の場合に、発光動作開始までの所定時間をカウントするために用意されている。ID設定部26は、光学ビーコン♯1に固有の識別情報であるIDを人為的な操作により可変設定するためのものである。
【0018】
発光パターン生成部24は、比較部22の各比較結果のいずれかが一致の場合にタイマ25を動作させ、そのタイマ25による所定時間のカウントが終了した後、所定周波数のキャリア信号を変調し、その変調信号(パルス信号)により、特定の発光パターンを有する開始信号を生成し、続いてID設定部26の設定に応じたIDコードを生成し、これら開始信号およびIDコードに応じて発光素子27を発光させる。開始信号の立上がりからIDコードの終了までに一定時間taが確保される。IDコードは、一定時間tbに収まる3ビットの2進数値であり、光学ビーコン♯1用として“1”が2進数値で設定されている。一定時間ta,tbについては、発光パターン生成部24内のクロック信号のカウントにより設定される。
【0019】
上記信号判別部21、比較部22、IDメモリ23a,23b、発光パターン生成部24、およびタイマ25により、発光制御部が構成されている。
【0020】
なお、光学ビーコン♯2〜♯6のIDコードとして、“2”“3”“4”“5”“6”がそれぞれ2進数値で設定されている。光学ビーコン♯0〜♯6のそれぞれのIDコード、IDメモリ23a内の第1の特定IDコード(発光順位が自身より2つ前の光学ビーコンのIDコード)、およびIDメモリ23b内の第2の特定IDコード(発光順位が自身より1つ前の光学ビーコンのIDコード)の関係を、図4に示している。
【0021】
光学ビーコン♯0〜♯6の発光動作を図5のタイムチャートに示す。
すなわち、光学ビーコン♯0が一定時間t1ごとに発光して開始信号およびIDコードを発する。光学ビーコン♯1は、他の光学ビーコンから受ける光のIDコードを監視し、発光順序が自身より1つ前の光学ビーコン♯0のIDコードを認識した場合に、それから一定時間t2後に発光して開始信号およびIDコードを発する。光学ビーコン♯2は、発光順序が自身より1つ前の光学ビーコン♯1のIDコードを認識した場合に、それから第一の所定時間t2後に発光して開始信号およびIDコードを発するとともに、発光順序が自身より2つ前の光学ビーコン♯0のIDコードを認識した場合に、それから第二の所定時間(t2+ta+t2)後に発光して開始信号およびIDコードを発する。
【0022】
光学ビーコン♯3は、発光順序が自身より1つ前の光学ビーコン♯2のIDコードを認識した場合に、それから第一の所定時間t2後に発光して開始信号およびIDコードを発するとともに、発光順序が自身より2つ前の光学ビーコン♯1のIDコードを認識した場合に、それから第二の所定時間(t2+ta+t2)後に発光して開始信号およびIDコードを発する。光学ビーコン♯4〜♯6も光学ビーコン♯2,♯3と同様に動作する。
【0023】
全ての光学ビーコン♯0〜♯6の発光が終了するタイミング(各光学ビーコン間で光が遮られることなく、光学ビーコン♯0〜♯6で光の受け継ぎが行われた場合)は、上記一定時間t1のカウントが終了するタイミングの前である。これにより、一定時間t1ごとに、光学ビーコン♯0〜♯6の順繰りの発光が繰返される。
【0024】
一方、移動体2は、光学ビーコン♯0〜♯6からの入射光に含まれているIDコードから少なくとも3つの光学ビーコンを識別し、識別した各光学ビーコンからの光の方向を検出し、この検出結果に基づく演算により自己の位置を検出する機能を有するもので、図6の制御回路に示すように、検出手段として、受光部30、光点位置計測部33、入射角度計算部34、自己位置演算部35、コード検知部36、位置データメモリ37を有している。
【0025】
受光部30は、光学ビーコン♯0〜♯6から発せられて入射部31に入射する光を、二次元光学センサ32に集光する。入射部31は、図7に示すように、絞り板31aを有し、その絞り板31aの開口(絞り)に入射する光をレンズ31bにより二次元光学センサ32に集光して、二次元光学センサ32の上面に集光点を形成する。光点位置計測部33は、二次元光学センサ32における各集光点を計測する。入射角度計算部34は、光点位置計測部33で計測される各集光点と二次元光学センサ32の上面の中心位置に立つ中心軸との間の距離に基づいて、上記入射部31への各入射光の入射角度(各入射光の光源方向)を計算する。
【0026】
二次元光学センサ32としては、例えばPSD(Position Sensitive Detector)と称される位置センサが採用される。この位置センサは、フォトダイオードの表面抵抗を利用して集光点の受光強度の重心位置を検知するもので、その重心位置に応じた電圧レベルの信号を出力する。すなわち、集光点の受光強度の重心位置のX,Y座標がXc,Ycであれば、電圧レベルVXc,VYcの信号が位置センサから出力される。そして、この重心位置Xc,Ycを用いた下式で得られる角度の方向に、発光元の光学ビーコンが存在することが分かる。
tan−1(Yc/Xc)±π
コード検知部36は、上記入射部31への各入射光に含まれている開始信号およびIDコードを上記二次元光学センサ32の出力により検知する。位置データメモリ37は、光学ビーコン♯0〜♯6の位置データをその光学ビーコン♯0〜♯6のIDコードに対応付けて記憶している。
【0027】
自己位置演算部35は、コード検知部36で開始信号が検知されるごとに、同コード検知部36で検知されるIDコードに基づいて位置データメモリ37を参照し、この参照により上記入射部31へ入射する3つの光の発光元である3つの光学ビーコンを識別し、この識別結果および上記入射角度計算部34の算出結果から上記入射部31へ入射する3つの光の方向を検出し、この検出結果に基づく演算(三角測量の一種である後方交会法)により、当該移動体2の位置を検出する。
【0028】
さらに、移動体2は、自己位置演算部35で検出される位置を蓄積して記憶するための蓄積メモリ38を有している。この蓄積メモリ38の記憶内容に基づき、移動体2の移動経路を解析することが可能である。
【0029】
また、移動体2は、自律走行可能な例えば移動ロボットとしての使用を可能にするため、コントローラ40、走行ユニット41、マップデータメモリ42、移動ルートプログラムメモリ43を有している。マップデータメモリ42は、建物1内の移動空間のマップデータを記憶している。移動ルートプログラムメモリ43は、当該移動体2の移動ルートを指定するための移動ルートプログラムを記憶している。コントローラ40は、移動ルートプログラムメモリ43内の移動ルートプログラムに従い、かつ自己位置演算部35の検出位置とマップデータメモリ42内のマップデータとの照合により、自律走行ユニット41を駆動制御する。
【0030】
以上のように、IDコードを含む発光パターンで発光する複数の光学ビーコン♯0〜♯6を移動体2の移動空間に分散して設け、移動体2では、光学ビーコン♯0〜♯6から到達して入射する光のIDコードから少なくとも3つの光学ビーコンを識別するとともに、識別した各光学ビーコンから上記入射光の入射角度を算出し、これら識別結果および算出結果から上記入射光の方向を検出し、この検出結果に基づく演算によって移動体2の位置を検出することにより、従来のような敷設後に各移動体を所定の位置に置いて行う校正登録作業などの初期設定を要することなく、可動式の走査器を要することもない。したがって、移動体2が大型化したり、故障の可能性およびコストが高くなるといった不都合を生じることなく、移動体2の位置検出に関して高い信頼性を確保することができる。
【0031】
光学ビーコン♯0〜♯6の発光については、常に発光させることなく、所定の順序で発光させるので、光学ビーコン♯0〜♯6の発光に要する電力が少なくてすみ、省エネルギー効果が得られる。
【0032】
しかも、光学ビーコン♯0〜♯6が同時に発光しないので、移動体2側の受光システムの複雑化や高コスト化を招くことなく、光学ビーコン♯0〜♯6の光を移動体2側でそれぞれ確実に捕らえることができる。
【0033】
光学ビーコン♯0は定期的に発光し、かつ光学ビーコン♯1〜♯6は自己以外の光学ビーコン(発光順序が1つ前の光学ビーコン)から発せられる光を受けて順に発光するので、光学ビーコン♯0〜♯6の相互を配線接続する必要がない。よって、構成の簡略化およびコストの低減が図れる。
【0034】
光学ビーコン♯0が発光する周期を他の光学ビーコン♯1〜♯6の発光パターンの総和より長くしているので、複数の光学ビーコンが同時に発光することが抑制される。このため、移動体2および光学ビーコン♯1〜♯6の受光部での検出精度を向上させることができる。
【0035】
光学ビーコン♯2〜♯6については、発光順序が自身より2つ前の光学ビーコンから発せられる光および自身より1つ前の光学ビーコンから発せられる光のいずれかを受けることにより発光する構成であるから、光学ビーコン♯1から発せられた光が何かに遮られて後続の光学ビーコン♯2に届かない場合でも、光学ビーコン♯2は光学ビーコン♯0の光を受けて自己の発光タイミングで途切れることなく確実に発光する。光学ビーコン♯2から発せられた光が何かに遮られて後続の光学ビーコン♯3に届かない場合には、光学ビーコン♯3は、光学ビーコン♯1の光を受けて自己の発光タイミングで途切れることなく確実に発光する。こうして、各光学ビーコンの発光が途切れることなく継続することにより、高い精度と信頼性をもって移動体2の位置を検出することができる。
【0036】
ID設定部12,26によって光学ビーコン♯0〜♯6のIDコードを可変設定できるので、光学ビーコン♯0〜♯6の構成を共通化することができる。すなわち、光学ビーコン♯0は図2の構成を有し、光学ビーコン♯1〜♯6は図3の構成を有しているが、両者は部品数、制御機能、符合が異なるだけで、基本的なハードウェアは同じである。このように、光学ビーコン♯0〜♯6の基本的なハードウェアを共通化できることにより、コストの低減が図れる。
【0037】
光学ビーコン♯0〜♯6から発せられる光の最初に、起動情報として特定の発光パターンを有する開始信号が含まれている。移動体2の自己位置演算部35は、その開始信号に応じてIDコードの認識態勢に入り、IDコードを的確に認識することができる。この点でも、位置検出の精度および信頼性が向上する。
【0038】
[2]第2の実施形態について説明する。
図8に示すように、移動体2に、二次元光学センサ32よりも応答性の良好な受光素子(例えばフォトダイオード)39が設けられている。この受光素子39は、光学ビーコン♯0〜♯6から発せられる光を受光する。
【0039】
受光素子39の採用に伴い、コード検知部36は、光学ビーコン♯0〜♯6から届く光に含まれている開始信号およびIDコードを応答性よく検知できる。
【0040】
他の構成、作用、効果については、第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0041】
[3]第3の実施形態について説明する。
光学ビーコン♯1〜♯6は、発光順位が自身より1つ前の光学ビーコンの光の到達領域に存するとともに、発光順位が自身より1つ後の光学ビーコンから発せられる光の到達領域にも存している。
【0042】
また、光学ビーコン♯1〜♯6は、発光順序が自身より1つ前の光学ビーコンの発光パターンを認識することにより発光し、その発光から所定時間経過しても、発光順序が自身より1つ後の光学ビーコンの発光パターンを認識しない場合に再び発光する。
【0043】
光学ビーコン♯1〜♯6におけるIDメモリ23aは、第1の特定IDコードとして、発光順位が自身より1つ前の光学ビーコンのIDコードを記憶している。IDメモリ23bは、第2の特定IDコードとして、発光順位が自身より1つ後の光学ビーコンのIDコードを記憶している。比較部22は、信号判別部21で判別されるIDコードとIDメモリ23a,23b内の各IDコードとをそれぞれ比較する。
【0044】
タイマ25は、発光パターン生成部24による発光動作開始までの所定時間t2をカウントするとともに、その発光動作終了から再発光動作までの所定時間(t2+ta)をカウントする。
【0045】
発光パターン生成部24は、比較部22の比較において、信号判別部21で判別されるIDコードとIDメモリ23a内のIDコードとが一致した場合にタイマ25を動作させ、タイマ25による所定時間t2のカウントが終了した後、所定周波数のキャリア信号を変調し、その変調信号(パルス信号)により、特定の発光パターンを有する開始信号を生成し、続いてID設定部26の設定に応じたIDコードを生成し、これら開始信号およびIDコードに応じて発光素子27を発光させる。また、発光パターン生成部24は、この発光に続き、タイマ25を動作させて所定時間(t2+ta)をカウントし、その所定時間(t2+ta)内の比較部22の比較において、信号判別部21で判別されるIDコードとIDメモリ23b内のIDコードとが一致しない場合に、再び、同じ開始信号およびIDコードを生成し、その開始信号およびIDコードに応じて発光素子27を発光させる。
【0046】
光学ビーコン♯0〜♯6のそれぞれのIDコード、IDメモリ23a内の第1の特定IDコード(発光順位が自身より1つ前の光学ビーコンのIDコード)、およびIDメモリ23b内の第2の特定IDコード(発光順位が自身より1つ後の光学ビーコンのIDコード)の関係を、図9に示している。
【0047】
光学ビーコン♯0〜♯6の発光動作を図10のタイムチャートに示す。
光学ビーコン♯0は、一定時間t1ごとに発光して開始信号およびIDコードを発する。光学ビーコン♯1は、他の光学ビーコンから受ける光のIDコードを監視し、発光順序が自身より1つ前の光学ビーコン♯0のIDコードを認識した場合に、それから一定時間t2後に発光して開始信号およびIDコードを発する。また、光学ビーコン♯1は、この発光の直後、所定時間((t2+ta))において他の光学ビーコンから受ける光のIDコードを監視し、発光順序が自身より1つ後の光学ビーコン♯2のIDコードを認識できなかった場合に、それから一定時間t2後に再び発光して同じ開始信号および同じIDコードを発する。光学ビーコン♯2〜♯6も、同様の動作を行う。
【0048】
全ての光学ビーコン♯0〜♯6の発光および再発光が終了するタイミング(各光学ビーコン間で光が遮られることなく、光学ビーコン♯0〜♯6で光の受け継ぎが行われた場合)は、上記一定時間t1のカウントが終了するタイミングの前である。これにより、一定時間t1ごとに、光学ビーコン♯0〜♯6の順繰りの発光が繰返される。
【0049】
このように、後続の光学ビーコンが発光しない場合に1つ前の光学ビーコンを再発光させることにより、後続の各光学ビーコンの発光を途切れることなく継続することができる。これにより、高い精度と信頼性をもって移動体2の位置を検出することができる。
【0050】
他の構成、作用、効果については、第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0051】
[4]なお、上記各実施形態では、各光学ビーコンにおいて、発光順位が自身より2つ前の光学ビーコンのIDコード、1つ前の光学ビーコンのIDコード、あるいは1つ後の光学ビーコンのIDコードをIDメモリ23a,23bに記憶しておく構成としたが、それらのIDコードはID設定部26で設定される自身のIDコードに基づいて計算により求めることが可能であり、その計算の採用により、IDメモリ23a,23bを不要にすることができる。これは、コストの低減および光学ビーコンの小型化につながる。
【0052】
その他、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、1つの実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】各実施形態の全体的な構成を示す図。
【図2】各実施形態の発光順位が第1位の光学ビーコンの制御回路のブロック図。
【図3】各実施形態の残りの各光学ビーコンの制御回路のブロック図。
【図4】第1および第2の実施形態における各光学ビーコンのIDコードおよび各光学ビーコンに記憶される特定IDコードの関係を示す図。
【図5】第1および第2の実施形態における各光学ビーコンの発光動作を示すタイムチャート。
【図6】第1および第2の実施形態における移動体の制御回路のブロック図。
【図7】各実施形態における受光部の構成を示す図。
【図8】第3の実施形態における移動体の制御回路のブロック図。
【図9】第4の実施形態における各光学ビーコンのIDコードおよび各光学ビーコンに記憶される特定IDコードの関係を示す図。
【図10】第4の実施形態における各光学ビーコンの発光動作を示すタイムチャート。
【符号の説明】
【0054】
1…建物、2…移動体、♯0〜♯6…光学ビーコン、10…発光パターン生成部、11…タイマ、12…ID設定部、13…発光素子、20…受光素子、21…信号判定部、22…比較部、23a…IDメモリ、23b…IDメモリ、24…発光パターン生成部、25…タイマ、26…ID設定部、27…発光素子、30…受光部、32…二次元光学センサ、33…光点位置計測部、34…入射角度計算部、35…自己位置演算部、36…コード検知部、38…蓄積メモリ、39…受光素子、40…コントローラ、41…走行ユニット、42…マップデータメモリ、43…移動ルートプログラムメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の移動空間に分散して設けられ、所定の発光順序で且つそれぞれ自己の識別情報を含む発光パターンで発光する複数の光学ビーコンと、
前記移動体に設けられ、前記各光学ビーコンにより発せられる光の識別情報から少なくとも3つの光学ビーコンを識別するとともに、この識別した各光学ビーコンからの光の方向を検出し、この検出結果に基づいて前記移動体の位置を検出する検出手段と、を備え、
いずれかの前記光学ビーコンは、所定の光学ビーコンの発光パターンを認識してから第一の所定時間経過後、または前記所定の光学ビーコンより前に発光する光学ビーコンの発光パターンを認識してから第二の所定時間経過後のどちらかの時点で発光することを特徴とする位置検出システム。
【請求項2】
移動体の移動空間に分散して設けられ、所定の順序で且つそれぞれ自己の識別情報を含む発光パターンで発光する複数の光学ビーコンと、
前記移動体に設けられ、前記各光学ビーコンにより発せられる光の識別情報から少なくとも3つの光学ビーコンを識別するとともに、この識別した各光学ビーコンからの光の方向を検出し、この検出結果に基づいて前記移動体の位置を検出する検出手段と、を備え、
いずれかの前記光学ビーコンは、発光順序が自身より前の光学ビーコンの発光パターンを認識することにより発光し、その発光から所定時間経過しても、発光順序が自身より後の光学ビーコンの発光パターンを認識しない場合に再び発光することを特徴とする位置検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−170848(P2007−170848A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365145(P2005−365145)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】