説明

位置検出方法、液体吐出装置および印刷装置

【課題】装置の大型化を招くことなく、キャリッジの位置を迅速に求めることが可能な位置検出方法、液体吐出装置および印刷装置を提供する。
【解決手段】インク滴を吐出するインクノズルを有する印刷ヘッドが搭載されて移動可能とされたキャリッジの位置を求める位置検出方法であって、キャリッジの移動方向に沿って傾斜した検出面をキャリッジの移動経路の下方に配置し、印刷ヘッドのインクノズルから検出面に帯電させたインク滴を吐出させ、検出面での電流値を検出し、検出した電流値の振幅に基づいてキャリッジの位置を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出するノズルを有する液体吐出部が搭載されて移動可能とされたキャリッジの位置を求める位置検出方法、液体吐出装置および印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクジェットプリンタ等の印刷装置は、往復移動可能なキャリッジに搭載された印刷ヘッドが複数のノズルからインク滴を所望の位置に吐出することによって印刷を行うように構成されている。
この種のインクジェットプリンタにおいて、モータによって駆動されるキャリッジの位置を検出する位置検出部と、プリンタのホームポジション域側のフレームに向かってキャリッジが停止するまでキャリッジを移動するようにモータを駆動制御する第1の駆動制御部と、プリンタのホームポジション域側のフレームと反対側のフレームに向かってキャリッジが停止するまでキャリッジを移動するようにモータを駆動制御する第2の駆動制御部と、キャリッジをホームポジション付近の所定の位置まで移動させるようにモータを駆動制御する第3の駆動制御部と、第1、第2および第3の駆動制御部を選択して制御し、この制御結果および位置検出部の出力に基づいてキャリッジのホームポジションを決定する制御選択部と、を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−158143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のプリンタでは、ホームポジションを超えて移動限界点にて停止するまでキャリッジを移動させるため、その分、キャリッジの移動距離を長くしなければならなかった。しかも、キャリッジをホームポジション域及びホームポジション域と反対側へ移動させなければならず、位置検出に時間を要していた。
また、キャリッジが移動限界点にて停止したことをモータの電流値の上昇にて判定するため、モータへの負荷が大きく、モータの大型化が避けられなかった。
つまり、上記の位置検出方法では、装置の大型化及び検出時間の増大を招いてしまう。
【0004】
そこで、本発明の目的は、装置の大型化を招くことなく、キャリッジの位置を迅速に求めることが可能な位置検出方法、液体吐出装置および印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することのできる本発明に係る液滴を吐出するノズルを有する液体吐出部が搭載されて移動可能とされたキャリッジの位置を求める位置検出方法であって、
前記キャリッジの移動方向に沿って傾斜した検出面を前記キャリッジの移動経路の下方に配置し、前記液体吐出部の前記ノズルから前記検出面に帯電させた液滴を吐出させ、前記検出面での電流値を検出し、検出した電流値の振幅に基づいて前記キャリッジの位置を求めることを特徴とする。
【0006】
この位置検出方法によれば、帯電させた液滴を検出面に吐出させた際に検出される検出面での電流値の振幅はノズルと検出面との間隔によって変化する。具体的には、ノズルと検出面との間隔が狭いほど振幅が大きくなる。
したがって、キャリッジの移動方向に沿って傾斜した検出面にノズルから帯電させた液滴を吐出させて検出面での電流値を検出することにより、その電流値の振幅に基づいて、キャリッジの位置を迅速に求め、求めた位置に基づいてキャリッジをホームポジションへ容易に配置させることができる。
つまり、キャリッジを移動限界点へ突き当てた際の駆動モータの電流値の上昇からキャリッジの位置を求める方式と比較し、キャリッジの移動範囲を狭くすることができ、しかも、駆動モータの小型化を図ることができ、よって、装置の大型化を招くことなく、キャリッジの位置検出を迅速に行うことができる。
【0007】
本発明の位置検出方法において、検出した電流値の振幅と予め設定した目標値とを比較して前記キャリッジの位置を求めることが好ましい。
この位置検出方法によれば、検出した電流値の振幅と予め設定した目標値とを比較することにより、キャリッジの位置を迅速かつ高精度に求めることができる。
【0008】
本発明の位置検出方法において、前記検出面に傾斜方向が変わる傾斜変化点を設け、検出した電流値の振幅から前記傾斜変化点を割り出すことにより前記キャリッジの位置を求めることが好ましい。
この位置検出方法によれば、例えば、検出面を山型形状あるいは谷型形状として、検出面に傾斜方向が変わる傾斜変化点を設け、検出した電流値の振幅から傾斜変化点を割り出すことにより、キャリッジの位置を迅速かつ高精度に求めることができる。特に、ノズルと検出面との間隔が相対的に変化したとしても、その間隔の変化の影響を受けることなく、キャリッジの位置検出を行うことができる。
【0009】
本発明の位置検出方法において、前記液体吐出部の一つの前記ノズルから帯電液滴を吐出させながら前記キャリッジを移動させて前記検出面での電流値を求めることが好ましい。
この位置検出方法によれば、液体吐出部の一つのノズルから帯電液滴を吐出させながらキャリッジを移動させて検出面での電流値を検出するので、検出時における液滴の消費量を極力抑えつつキャリッジの位置を求めることができる。
【0010】
本発明の位置検出方法において、前記液体吐出部の前記キャリッジの移動方向に沿う複数の前記ノズルから帯電液滴を吐出させて前記検出面でのそれぞれの電流値を求めることが好ましい。
この位置検出方法によれば、液体吐出部のキャリッジの移動方向に沿う複数のノズルから帯電液滴を吐出させて検出面でのそれぞれの電流値を検出するので、複数のポイントにて電流値を検出することができ、キャリッジの位置検出をより迅速に行うことができる。
【0011】
本発明の液体吐出装置は、液滴を吐出するノズルを有する液体吐出部が搭載されて移動可能とされたキャリッジを備えた液体吐出装置であって、
前記キャリッジの移動方向に沿って傾斜し、前記キャリッジの移動経路の下方に配置された検出面と、
前記液体吐出部の前記ノズルと前記検出面との間に電位差を発生させる電位差発生部と、
前記液体吐出部と前記検出面との間で電位差を生じさせた状態で、前記ノズルから液滴を前記検出面へ吐出させた際に生じる電流値を検出する電流検出部と、
前記電流検出部にて検出された電流値の振幅を求める演算部と、
前記演算部にて求められた前記電流値の振幅に基づいて前記キャリッジの位置を判定する判定部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
この構成の液体吐出装置によれば、検出面に帯電させた液滴を吐出させた際に検出される検出面での電流値の振幅はノズルと検出面との間隔によって変化する。具体的には、ノズルと検出面との間隔が狭いほど振幅が大きくなる。
したがって、電位発生部にて液体吐出部と検出面との間で電位差を生じさせた状態で、ノズルから液滴を検出面へ吐出させた際に生じる電流値を電流検出部で検出し、この電流値から演算部が求めた電流値の振幅に基づいて、判定部がキャリッジの位置を迅速に求めることができ、求めた位置に基づいてキャリッジをホームポジションへ容易に配置させることができる。
つまり、キャリッジを移動限界点へ突き当てた際の駆動モータの電流値の上昇からキャリッジの位置を求める方式と比較し、キャリッジの移動範囲を狭くすることができ、しかも、駆動モータの小型化を図ることができ、よって、装置の大型化を招くことなく、キャリッジの位置検出を迅速に行うことができる。
【0013】
本発明の液体吐出装置において、予め設定された目標値を記憶する記憶部を備え、前記判定部は、検出した電流値の振幅と記憶部に記憶されている目標値とを比較して前記キャリッジの位置を求めることが好ましい。
この構成の液体吐出装置によれば、判定部が、検出した電流値の振幅と記憶部に記憶されている予め設定した目標値とを比較することにより、キャリッジの位置を迅速かつ高精度に求めることができる。
【0014】
本発明の液体吐出装置において、前記検出面に傾斜方向が変わる傾斜変化点が設けられ、前記判定部は、検出した電流値の振幅から前記傾斜変化点を割り出すことにより前記キャリッジの位置を求めることが好ましい。
この構成の液体吐出装置によれば、例えば、検出面が山型形状あるいは谷型形状とされて、検出面に傾斜方向が変わる傾斜変化点が設けられているので、判定部は、検出した電流値の振幅から傾斜変化点を割り出すことにより、キャリッジの位置を迅速かつ高精度に求めることができる。特に、ノズルと検出面との間隔が相対的に変化したとしても、その間隔の変化の影響を受けることなく、キャリッジの位置検出を行うことができる。
【0015】
本発明の液体吐出装置において、前記検出面は、前記キャリッジの移動経路の下方位置に出没可能とされていることが好ましい。
この構成の液体吐出装置によれば、検出面が、キャリッジの移動経路の下方位置に出没可能とされているので、キャリッジの位置検出を要するときだけ検出面をキャリッジの移動経路の下方へ配置させることができる。
【0016】
本発明の印刷装置は、上記の液体吐出装置を備え、前記液体としてインクが使用され、前記液体吐出部がインク滴を吐出する印刷ヘッドであることを特徴とする。
【0017】
この構成の印刷装置によれば、キャリッジを移動限界点へ突き当てた際の駆動モータの電流値の上昇からキャリッジの位置を求める方式と比較し、キャリッジの移動範囲を狭くすることができ、しかも、駆動モータの小型化を図ることができ、よって、装置の大型化を招くことなく、キャリッジの位置検出を迅速に行うことができ、キャリッジを素早くホームポジションへ配置させて印刷処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る位置検出方法、液体吐出装置および印刷装置の実施形態の例を、図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施形態に係る印刷装置であるロール紙プリンタの外観斜視図であり、図2は図1に示したロール紙プリンタのロール紙カバーを開いた状態の外観斜視図であり、図3は図1に示したロール紙プリンタの内部構成を示す概略側面図であり、図4は図1に示したロール紙プリンタからプリンタケースを取り外した状態の斜視図である。
【0019】
本実施形態のロール紙プリンタ1は、複数種のカラーインク液を使用してインクジェット方式によりロール紙にカラー印刷するものであり、図1に示すように、プリンタ本体2の外装をなすプリンタケース2aの前面には、ロール紙カバー3及びインクカートリッジカバー7が開閉自在に設けられている。また、プリンタケース2aの前面には、ロール紙の幅に対応した所定幅の記録紙排出口4が形成されている。記録紙排出口4の下側には排紙ガイド5が前方に突出しており、当該排紙ガイド5の側方にはロール紙カバー3を開くための開閉レバー6が配置されている。プリンタケース2aにおける排紙ガイド5および開閉レバー6の下側には、ロール紙を出し入れするための矩形の開口部2bが形成されており、この開口部2bがロール紙カバー3によって封鎖されている。
【0020】
開閉レバー6を操作するとロール紙カバー3のロックが解除される。ロック解除後、排紙ガイド5を前方に引くと、図2に示すように、ロール紙カバー3が下端部を中心として前方にほぼ水平になるまで開く。ロール紙カバー3が開くと、プリンタ内部に形成されているロール紙収納部11が開放状態となるとともに、ロール紙収納部11から記録紙排出口4に至る記録紙搬送経路が開放状態となり、プリンタ前方からロール紙の交換作業などを簡単に行うことができるようになっている。なお、図2においては、ロール紙カバー3の外装部分および開閉レバー6の図示を省略している。
【0021】
図3に示すように、ロール紙プリンタ1の内部には、本体フレーム10における幅方向の中央部分にロール紙収納部11が形成されている。ロール紙収納部11にはロール紙12がプリンタ幅方向にロール紙幅方向を沿わせた向きで収納される。
【0022】
ロール紙収納部11の上側には、本体フレーム10の上端にヘッドユニットフレーム13が水平に取り付けられている。ヘッドユニットフレーム13には、インクジェットヘッドである印刷ヘッド14、印刷ヘッド14の位置を検出するためのリニアスケール15およびエンコーダセンサ16、印刷ヘッド14およびエンコーダセンサ16を搭載しているキャリッジ17、キャリッジ17のプリンタ幅方向への移動をガイドするキャリッジガイド軸18が配置されている。また、キャリッジ17をキャリッジガイド軸18に沿って往復移動させるためのキャリッジモータ19およびタイミングベルト20を備えたキャリッジ搬送機構が配置されている。
【0023】
印刷ヘッド(液体吐出部)14はインク滴を吐出するノズル形成面14aが下向きになるようにキャリッジ17に搭載されている。エンコーダセンサ16は印刷ヘッド14の上端面14bに配置されている。キャリッジガイド軸18はプリンタ幅方向に水平に掛け渡されており、リニアスケール15は、印刷ヘッド14の上方においてキャリッジガイド軸18と平行に掛け渡されている。
【0024】
印刷ヘッド14の下側には一定のギャップを設けてプリンタ幅方向に水平に延びるプラテン21が配置されている。プラテン21によって印刷ヘッド14の印刷位置が規定されている。プラテン21の後端には下方に湾曲しているテンションガイド22が取り付けられている。テンションガイド22はバネによって上方に付勢されており、ロール紙収納部11に収納されているロール紙12から引き出された記録紙12aは、テンションガイド22によって所定の張力が付与された状態で印刷位置を経由する記録紙搬送経路に沿って引き出される。
【0025】
プラテン21の後側には、後側紙送りローラ23がプリンタ幅方向に水平に掛け渡されている。後側紙送りローラ23には所定幅の後側紙押さえローラ24が記録紙12aを介して、所定の押圧力で押し付けられている。プラテン21における前端側の部位には、前側紙送りローラ25が配置されている。前側紙送りローラ25には、上側から前側紙押さえローラ26が記録紙12aを介して、押し付けられている。後側紙送りローラ23および前側紙送りローラ25は、本体フレーム10に搭載されている紙送りモータ27によって駆動される。
【0026】
キャリッジ17をキャリッジガイド軸18に沿って往復移動させながら、キャリッジ17に搭載されている印刷ヘッド14により、ロール紙12から繰り出されて印刷位置に位置している記録紙12aの部分の表面に印刷が行われる。印刷位置はエンコーダセンサ16の検出信号に基づいて制御されている。記録紙12aの幅方向への一連の行印刷が終了した後は、後側紙送りローラ23および前側紙送りローラ25が回転駆動されて、所定ピッチだけ記録紙12aが送り出される。この後に、次の行の印刷が行われる。このように、記録紙12aは、所定ピッチで間欠的に送り出されながら印刷ヘッド14によって印刷が施される。印刷後の記録紙12aが排出される記録紙排出口4には、例えば鋏式の記録紙切断装置28が配置されている。記録紙切断装置28によって、これらの間に位置する記録紙12aが幅方向に切断される。
【0027】
なお、プラテン21、テンションガイド22、後側紙送りローラ23、前側紙送りローラ25は、ロール紙カバー3と一緒に開閉するようになっている。
【0028】
また、図1および図2に示したインクカートリッジカバー7を開くと、その内側のカートリッジ装着部9(図4参照)が開放状態になり、このカートリッジ装着部9へのインクカートリッジ8の着脱が可能になる。
【0029】
インクカートリッジ8は、カートリッジケース内に複数個のカラーインクパックを収容したものである。本実施形態のロール紙プリンタ1の場合は、インクカートリッジカバー7を開く動作に連動して、カートリッジ装着部9の前方にインクカートリッジ8が所定距離だけ引き出される構成になっている。
【0030】
インクカートリッジ8内の各インクパックは、インクカートリッジ8をカートリッジ装着部9に装着した際に、カートリッジ装着部9側に設けられたインク供給針がインクパックのインク供給口に差込接続される。カートリッジ装着部9のインク供給針には、プリンタケース2a内に固定されたインク流路31が接続され、このインク流路31には、可撓性のインク供給チューブ33の一端が接続されている。
インク供給チューブ33の他端は、キャリッジ17に接続され、ダンパユニットや背圧調整ユニットを介して印刷ヘッド14に連通している。
【0031】
図4に示すように、印刷領域から外れたカートリッジ装着部9の上方が、往復移動するキャリッジ17の待機位置(ホームポジション)となっている。そして、この待機位置の下方には、キャリッジ17の下面に露出する印刷ヘッド14の保守動作を行うヘッドメンテナンス機構40が配置されている。
【0032】
図5に示すように、ヘッドメンテナンス機構40は、印刷ヘッド14のノズル形成面14aを封止するヘッドキャップ63を備えている。ヘッドキャップ63は、印刷ヘッド14のノズル形成面14aを封止可能な大きさの開口を有する箱型状のゴムで形成されたもので、上端縁部は、ノズル形成面14aに密着可能なリップ部96とされている。
【0033】
このヘッドキャップ63は、収納凹部94を有し、この収納凹部94内に、廃インクを吸収する多層構造の吸収材95が収納され、この吸収材95は、図示しない押さえ部材によって保持され、その上面が、リップ部96の先端位置よりも下がった位置とされている。
【0034】
このヘッドキャップ63には、インク吸引機構(図示略)からのチューブの一端が接続されており、ノズル形成面14aにリップ部96が密着した状態にて、インク吸引機構のポンプモータが駆動されることにより、ヘッドキャップ63内を減圧して印刷ヘッド14のインクノズルからインクが吸引され、インクカートリッジ8の廃インク貯留室に排出される。
【0035】
また、このヘッドキャップ63の収納凹部94内には、電流検査用の検出部である金属軸97が立設されており、この金属軸97は、吸収材95と導通可能とされている。この金属軸97には、その下端にリード線98が接続されており、このリード線98を介して信号が取り出し可能とされている。そして、吸収材95の表面が検査面Sとされている。
【0036】
図6に示すように、ロール紙プリンタ1の制御部100は、印刷ヘッド14のインク吐出部75及びキャリッジモータ19に制御信号を送信することにより、インク吐出部75及びキャリッジモータ19の駆動を制御し、ロール紙12への印刷処理等を実行するものである。また、制御部100には、キャリッジ17の位置情報を送信するエンコーダセンサ16が接続されている。
また、制御部100には、後述のインク吐出検査及びキャリッジ位置検出処理を行うための電流検査センサ(電流検査部)65、電位差発生部74及びキャリッジ検出センサ101が接続されている。
【0037】
この制御部100は、検知手段111、演算手段112、比較手段113、記憶手段114及びCPU(判定部)115を備え、検知手段111、演算手段112及び比較手段113はCPU115によって制御される。
【0038】
そして、上記ロール紙プリンタ1では、ヘッドメンテナンス機構40によって印刷ヘッド14のクリーニングが行われる。なお、このクリーニングは、予め設定された所定のタイミングあるいはユーザの操作時に行われるもので、印刷ヘッド14のノズル形成面14aにヘッドキャップ63を密着させてインク吸引機構によって内部を吸引して印刷ヘッド14のインクノズルから増粘状態のインクを吸引するインク吸引処理などが行われる。
【0039】
また、上記ヘッドメンテナンス機構40を備えたロール紙プリンタ1では、印刷ヘッド14のインクノズルでのインクのメニスカスを形成するために、印刷開始前あるいは定期的に印刷ヘッド14のインクノズルから所定量のインクをヘッドキャップ63内に吐出するフラッシング処理、インクノズルの詰まりを防止するために印刷休止後にて印刷ヘッド14のノズル形成面14aにヘッドキャップ63を密着させて保護するキャッピング処理を行う。
【0040】
さらに、上記ロール紙プリンタ1では、ヘッドメンテナンス機構40によって、印刷ヘッド14のノズル形成面14aに形成された複数のインクノズルから正常にインク滴が吐出されるかを検査するインク吐出検査が行われる。
【0041】
インク吐出検査では、具体的には、ヘッドキャップ63が上昇し、印刷ヘッド14のノズル形成面14aに対して僅かな隙間をあけた位置となる高さに配置されるとともに、そのヘッドキャップ63の真上に印刷ヘッド14が移動する。この状態にて、印刷ヘッド14とヘッドキャップ63との間に、電位差発生部74によって所定の電位差にて電圧を印加し、インク吐出部75によって印刷ヘッド14の全てのインクノズルから、順番に帯電したインク滴(液滴)を吐出させる。このようにすると、帯電インクが吸収材95の表面からなる検出面Sに着弾することにより生じる電流変化の信号が、電流検査センサ65である電流検査用の金属軸97からリード線98を介して取り出され、その電流変化に基づいて、各インクノズルからのインク滴の吐出状態が検査される。
【0042】
また、上記ロール紙プリンタ1では、上記のように帯電インクを吐出した際の電流値からなる検出信号の振幅が、インクノズルと吸収材95からなる検出面Sとの距離によって変化することを利用し、キャリッジ17の位置検出処理を行う。
【0043】
次に、このロール紙プリンタ1におけるキャリッジ17の位置検出処理について図7のフローチャートを用いて説明する。
ここで、本実施形態のロール紙プリンタ1では、図8に示すように、ヘッドキャップ63の吸収材95からなる検出面Sが、キャリッジ17の移動方向に沿って予め傾斜されている。
【0044】
なお、検出面Sだけを傾斜させても良いが、ヘッドキャップ63の全体を傾斜させても良い。特に、ヘッドキャップ63の全体を傾斜させた場合は、印刷ヘッド14のノズル形成面14aにヘッドキャップ63を密着させた状態から引き離す際に、ノズル形成面14aに対してヘッドキャップ63のリップ部96が一端側から次第に離れる。したがって、ノズル形成面14aとヘッドキャップ63のリップ部96との間におけるインク膜の形成が抑制され、インク膜の崩壊に伴ってインクの飛沫が生じる不具合を抑えることができる。
また、ロール紙プリンタ1には、検出面Sの上方におけるキャリッジ17の有無を検出するキャリッジ検出センサ101を備えている。
【0045】
キャリッジ17の位置検出処理が開始されると、まず、キャリッジ検出センサ101によってキャリッジ17が検出面Sの上方に配置されているかが検出され(ステップS01)、検出面Sの上方に配置されていない場合は(ステップS01:No)、キャリッジ17が検出面Sの上方へ移動される(ステップS02)。
【0046】
ここで、印刷処理が行われていない場合は、キャリッジ17は、通常、ヘッドキャップ63の検出面S上に配置されているが、停電やコンセントが引き抜かれたような場合は、キャリッジ17が検出面Sから離れていることがある。そして、この状態から電源がONされて位置検出処理が開始されると、位置検出のためのインク滴の吐出により、印刷領域を汚してしまうという不具合がある。
【0047】
しかし、上記のように、検出センサ101によってキャリッジ17が検出面Sの上方に配置されているかを検出し、検出面Sの上方にキャリッジ17がない場合はキャリッジ17を検出面Sの上方へ移動させるので、位置検出のためのインク滴の吐出により、印刷領域を汚してしまうような不具合が防止される。
【0048】
検出面Sの上方にキャリッジ17が配置されている場合は(ステップS01:Yes)、印刷ヘッド14とヘッドキャップ63との間に、電位差発生部74によって所定の電位差の電圧が印加された状態にて、一つの所定インクノズルNから、インク吐出部75によって帯電インクが吐出される(ステップS03)。
そして、この所定インクノズルNからの帯電インクが吸収材95からなる検出面Sに着弾することにより生じる電流変化の信号からなる検出信号が、金属軸97からなる電流検査センサ65によって捕らえられ検出手段111によって検出され、その検出信号の振幅が演算手段112によって求められる(ステップS04)。
【0049】
このようにして検出した検出信号の振幅と、予め記憶手段114に記憶されている目標値とが、比較手段113によって比較され(ステップS05)、検出信号の振幅が目標値であるか否かがCPU115によって判定される(ステップS06)。
【0050】
ここで、検出信号の振幅が目標値でない場合は(ステップS06:No)、キャリッジ17を移動させる(ステップS07)。そして、この電流値の検出及びキャリッジ17の移動(ステップS03〜S07)を、検出信号の振幅が目標となるまで繰り返す。
この結果、検出信号の振幅が目標値であると判定されると(ステップS06:Yes)、キャリッジ17がホームポジションに配置されたと判定し(ステップS08)、位置検出処理を終了する。
【0051】
以上、説明したように、上記実施形態によれば、検出面Sに帯電させたインク滴を吐出させた際に検出される検出面Sでの電流値の振幅はインクノズルと検出面Sとの間隔によって変化する。具体的には、インクノズルと検出面Sとの間隔が狭いほど振幅が大きくなる。
したがって、キャリッジ17の移動方向に沿って傾斜した検出面Sにインクノズルから帯電させたインク滴を吐出させて検出面Sでの電流値を検出することにより、その電流値の振幅に基づいて、キャリッジ17の位置を迅速に求め、求めた位置に基づいてキャリッジ17をホームポジションへ容易に配置させることができる。
【0052】
つまり、キャリッジ17を移動限界点へ突き当てた際のキャリッジモータ19の電流値の上昇からキャリッジ17の位置を求める方式と比較し、キャリッジ17の移動範囲を狭くすることができ、しかも、キャリッジモータ19の小型化を図ることができ、よって、装置の大型化を招くことなく、キャリッジ17の位置検出を迅速に行うことができ、キャリッジ17を素早くホームポジションへ配置させて印刷処理を行うことができる。
また、検出した電流値の振幅と予め設定した目標値とを比較することにより、キャリッジ17の位置を迅速かつ高精度に求めることができる。
【0053】
しかも、印刷ヘッド14の一つのインクノズルから帯電インク滴を吐出させながらキャリッジ17を移動させて検出面Sでの電流値を検出するので、検出時におけるインク滴の消費量を極力抑えつつキャリッジ17の位置を検出し、ホームポジションへ位置決めすることができる。
【0054】
なお、上記実施形態では、一つの所定インクノズルNから帯電インクを吐出させたが、キャリッジ17の移動方向に沿う複数列のインクノズルから帯電インクを吐出させても良い。
【0055】
この場合の位置検出処理を、図9に示すフローチャートによって説明する。
まず、キャリッジ17が検出面Sの上方へ移動されると(ステップS11,S12)、印刷ヘッド14とヘッドキャップ63との間に、電位差発生部74によって所定の電位差の電圧が印加された状態にて、キャリッジ17の移動方向に沿う複数列のインクノズルN1〜Nnからインク吐出部75によって帯電インクが順に吐出される(ステップS13)。
【0056】
そして、これら複数列のインクノズルN1〜Nnからの帯電インクが検出面Sに着弾することにより生じる電流変化の信号からなるそれぞれの検出信号が順に検出され(ステップS14)、その検出信号の振幅が演算手段112によって求められて比較手段113によって目標値と比較される(ステップS15,S16)。
【0057】
そして、この検出信号の振幅が目標値から外れている場合は(ステップS16:No)、目標位置とのずれ量が算出され(ステップS17)、そのずれ量分だけキャリッジ17が移動され(ステップS18)、再び、キャリッジ17の移動方向に沿う複数列のインクノズルから帯電インクが吐出され(ステップS13)、それぞれの検出信号の振幅が検出されて目標値と比較される(ステップS14,S15,16)。
【0058】
検出信号の振幅が目標値であると判定されるまで上記の検出信号の振幅と目標値とのずれの補正が繰り返され、検出信号の振幅が目標値と判定されると(ステップS16:Yes)、キャリッジ17がホームポジションに配置されたと判定し(ステップS19)、位置検出処理を終了する。
【0059】
そして、上記の位置検出処理の場合も、キャリッジ17を移動限界点へ突き当てた際のキャリッジモータ19の電流値の上昇からキャリッジ17の位置を求める方式と比較し、キャリッジ17の移動範囲を狭くすることができ、しかも、キャリッジモータ19の小型化を図ることができ、よって、装置の大型化を招くことなく、キャリッジ17の位置検出を迅速に行うことができ、キャリッジ17を素早くホームポジションへ配置させて印刷処理を行うことができる。
【0060】
特に、印刷ヘッド14のキャリッジ17の移動方向に沿う複数のインクノズルN1〜Nnから帯電インク滴を吐出させて検出面Sでのそれぞれの電流値を検出するので、複数のポイントにて電流値を検出することができ、キャリッジ17の位置検出をより迅速に行うことができる。
【0061】
図10に示すものは、検出面Sの形状が、キャリッジ17の移動方向の中間部を頂点Tとして山型とされ、頂点Tの両側が下方へ傾斜されたものである。つまり、検出面Sに傾斜方向が変わる頂点Tからなる傾斜変化点が設けられている。
【0062】
そして、上記形状の検出面Sを備えたロール紙プリンタ1では、位置検出処理のときに、その検出信号の振幅が、検出面Sの傾斜変化点である頂点Tにて変化する。
よって、検出信号の振幅の変化点を検出することにより、キャリッジ17の位置を正確に求めることができる。
【0063】
しかも、この山型形状の検出面Sを備えたロール紙プリンタ1の場合、頂点Tでの振幅の変化を検出して位置検出するので、印刷ヘッド14のノズル形成面14aと検出面Sとの間隔が、例えば、熱や摩耗などによって相対的に変化したとしても、その間隔の変化に影響されることなく、より正確にキャリッジ17の位置検出を行うことができる。
なお、検出面Sは、山型形状に限らず、谷型形状として傾斜方向が変わる傾斜変化点を設けも良い。
【0064】
また、上記実施形態では、インク吐出検査の際に帯電インクを受けるヘッドキャップ63の吸収材95の表面からなる検出面Sを、位置検出処理の際の帯電インクを受ける検出面Sとして兼用したが、位置検出処理用の検出面Sを有する別部材を用いても良い。この場合、この別部材を、キャリッジ17の移動経路の下方位置に出没可能とし、位置検出を要する時にキャリッジ17の移動経路の下方へ配置させるようにすれば良い。
【0065】
なお、本発明に係る位置検出方法、液体吐出装置は、上記実施形態で例示したインクジェット式のプリンタをはじめとして、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造に用いられる色材吐出ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材吐出ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物吐出ヘッド等の液体を吐出する液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置、精密ピペットとしての試料吐出装置等にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷装置であるロール紙プリンタの外観斜視図である。
【図2】図1に示したロール紙プリンタのロール紙カバーを開いた状態の外観斜視図である。
【図3】図1に示したロール紙プリンタの内部構成を示す概略側面図である。
【図4】図1に示したロール紙プリンタからプリンタケースを取り外した状態の斜視図である。
【図5】ヘッドメンテナンス機構の一部の断面図である。
【図6】ロール紙プリンタの制御系を説明するブロック図である。
【図7】位置検出処理を説明するフローチャートである。
【図8】位置検出処理を説明するキャリッジ及び電流検出センサの概略正面図である。
【図9】位置検出処理の他の例を説明するフローチャートである。
【図10】位置検出処理の他の例を説明するキャリッジ及び電流検出センサの概略正面図である。
【符号の説明】
【0067】
1…ロール紙プリンタ(液体吐出装置,印刷装置)、14…印刷ヘッド(液体吐出部)、14a…ノズル形成面、17…キャリッジ、74…電位差発生部、97…金属軸(電流検出部)、112…演算手段(演算部)、114…記憶手段(記憶部)、115…CPU(判定部)、N…インクノズル、S…検出面、T…頂点(傾斜変化点)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルを有する液体吐出部が搭載されて移動可能とされたキャリッジの位置を求める位置検出方法であって、
前記キャリッジの移動方向に沿って傾斜した検出面を前記キャリッジの移動経路の下方に配置し、前記液体吐出部の前記ノズルから前記検出面に帯電させた液滴を吐出させ、前記検出面での電流値を検出し、検出した電流値の振幅に基づいて前記キャリッジの位置を求めることを特徴とする位置検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の位置検出方法において、
検出した電流値の振幅と予め設定した目標値とを比較して前記キャリッジの位置を求めることを特徴とする位置検出方法。
【請求項3】
請求項1に記載の位置検出方法において、
前記検出面に傾斜方向が変わる傾斜変化点を設け、検出した電流値の振幅から前記傾斜変化点を割り出すことにより前記キャリッジの位置を求めることを特徴とする位置検出方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の位置検出方法において、
前記液体吐出部の一つの前記ノズルから帯電液滴を吐出させながら前記キャリッジを移動させて前記検出面での電流値を検出することを特徴とする位置検出方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の位置検出方法において、
前記液体吐出部の前記キャリッジの移動方向に沿う複数の前記ノズルから帯電液滴を吐出させて前記検出面でのそれぞれの電流値を検出することを特徴とする位置検出方法。
【請求項6】
液滴を吐出するノズルを有する液体吐出部が搭載されて移動可能とされたキャリッジを備えた液体吐出装置であって、
前記キャリッジの移動方向に沿って傾斜し、前記キャリッジの移動経路の下方に配置された検出面と、
前記液体吐出部の前記ノズルと前記検出面との間に電位差を発生させる電位差発生部と、
前記液体吐出部と前記検出面との間で電位差を生じさせた状態で、前記ノズルから液滴を前記検出面へ吐出させた際に生じる電流値を検出する電流検出部と、
前記電流検出部にて検出された電流値の振幅を求める演算部と、
前記演算部にて求められた前記電流値の振幅に基づいて前記キャリッジの位置を判定する判定部とを備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の液体吐出装置において、
予め設定された目標値を記憶する記憶部を備え、前記判定部は、検出した電流値の振幅と記憶部に記憶されている目標値とを比較して前記キャリッジの位置を求めることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
請求項6に記載の液体吐出装置において、
前記検出面に傾斜方向が変わる傾斜変化点が設けられ、前記判定部は、検出した電流値の振幅から前記傾斜変化点を割り出すことにより前記キャリッジの位置を求めることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか一項に記載の液体吐出装置において、
前記検出面は、前記キャリッジの移動経路の下方位置に出没可能とされていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項10】
請求項6から8のいずれか一項に記載の液体吐出装置を備え、前記液体としてインクが使用され、前記液体吐出部がインク滴を吐出する印刷ヘッドであることを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−110982(P2010−110982A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285090(P2008−285090)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】