説明

位置決めシステムおよび方法

本発明は固定ベース(2)、物体のためのサポート(3)、固定ベース(2)に対してサポート(3)を配置するのに力を加えるためのアクチュエータ(4)、サポート(3)上の荷重を測定するためのセンサ(5)、およびサポート(3)の位置を制御および/またはシステム(1)の少なくとも1つの共振周波数を減衰するために測定された荷重を処理するための制御装置(6)を含む物体を位置決めするためのシステム(1)を提供する。本発明はまた、システム(1)を制御するための方法(10)を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置決め方法およびシステムに関し、特に、ナノ位置決め装置のための方法およびシステムに関する。
【0002】
本発明は主として、ナノ位置決めシステムまたは装置に用いるために開発されたものであり、このアプリケーションに関して後述するが、発明がこの特定の使用分野に限定されないことが分かるであろう。特に発明は、位置決めシステム、装置および方法にも適応可能であり、位置決めシステム、または位置決め装置に取り付けられる物体の正確かつ的確な変位が要求されることを意図する。
【背景技術】
【0003】
以下の従来技術の考察は、適切な技術内容において発明を公開することを意図し、その有意性を正確に理解することが可能となる。これに反して、明確に示されない限り、本明細書における任意の従来技術の参照は、このような技術が幅広く知られていること、あるいはこの分野において共通の一般知識の部分を形成することを認めるものと解すべきではない。
【0004】
ナノ位置決めシステムおよび装置は、原子スケールにまで下げられる解像度周波数を有する優れた機械的変位を生成するのに用いられる。このようなシステムおよび装置は、ファイバアライナ、ビームスキャナ、および側方位置決めプラットフォームを含む。ナノ技術におけるナノ位置決め装置の他のアプリケーションは、走査型プローブ顕微鏡(SPM)、走査型トンネル顕微鏡(STM),原子力顕微鏡(AFM),ナノファブリケーションシステム、精密機械加工、光スイッチングおよび細胞生理学研究を含む。
【0005】
高剛性、小型および効果的な無限解像度のため、圧電アクチュエータは一般に、最大限の位置決め精度を提供するようナノ位置決めアプリケーションに採用され、追跡性能としても知られている。しかしながら、圧電アクチュエータの位置決め精度は、実際のところ比較的大きな変位上のヒステリシス、および低周波数でのクリープにより厳しく制限されている。ヒステリシスが起こり、プラットフォーム位置はその動きの過去の履歴の関数となる。これは、先の電圧履歴の関数である入力電圧への圧電応答のためである。クリープはプラットフォームがゆっくりと直近の動きの方向にドリフトするときに起こる。位置におけるこれらのスローなドリフトは、ナノ位置決め装置にかけられる先の入力電圧のために起こる。結果として、すべての位置決めシステムは一般に、ヒステリシスおよびクリープが要因である非直線性を低減するフィードバックあるいはフィードフォワード制御のいくつかの形態を要する。
【0006】
ナノ位置決めシステムを有する別の問題は機械的共振であり、これはサポート曲げ、機能的リンクおよび/またはアクチュエータの有限剛性と相互作用するプラットフォーム質量から生じる。機械的共振は不必要な振動をナノ位置決めシステムに取り込み、こうして位置決め精度、スキャニング速度および安定性に影響を及ぼす。このように駆動信号の周波数は共振周波数の約1%乃至10%に制限される。これによりナノ位置決めシステムの閉ループ帯域幅を必然的に制限することとなる。
【0007】
ナノ位置決めシステムの制御のための最も良く知られている技術の一つは、積分または比例積分制御を用いるセンサベースのフィードバックである。しかしながら、積分追跡制御の帯域幅は、高解像度モードやセンサ誘導ノイズの存在により厳しく制限されてきた。ノッチフィルタを用いる共振動力学の反転か、あるいは減衰制御装置を用いる共振動力学の停止かの何れかを用いることにより閉ループ帯域幅の向上が提案されてきた。
【0008】
しかしながら、これらの提案された各々の解決法には欠点がある。反転ベースの技術は、正確なシステムモデルを要するため不都合である。例えば、システムの共振周波数が1パーセント変わるだけで、高ゲインの反転ベースのフィードバック制御装置は不安定となりうる。大抵のアプリケーションにおいて、このことは負荷質量、ひいてはナノ位置決め装置の共振周波数がサービスの間著しく変化しうるので容認できない。この感受性のため、高性能の反転ベースの制御装置は一般に、共振周波数が安定しているか、フィードバック制御装置が絶えず再測定されているニッチアプリケーションのみに適用される。
【0009】
ナノ位置決めシステムおよび方法は、第1の共振モードを積極的に減衰させる減衰技術を利用する場合が多い。このことにより追跡制御装置の利益が増大し、セトリング時間を削減でき、走査速度を比例的に増加させ、より大きな追跡性能が容易となる。
【0010】
減衰制御装置は機械的共振が要因である帯域幅の制限を低減させるのに適切であるが、追跡制御装置の利益はまだ、安定余裕により制限されており、位置決め精度はセンサ誘導ノイズにより支配されたままである。
【発明の概要】
【0011】
本発明の第1の態様は物体を位置決めするシステムを提供し、
固定ベースと、
前記物体のためのサポートと、
前記固定ベースに対して前記サポートを配置するために力を加えるアクチュエータと、
前記サポート上の荷重を測定するセンサと、
前記サポートの位置を制御し、および/または、前記システムの少なくとも1つの共振周波数を減衰すべく、前記測定された荷重を処理(process)する制御装置とを含む。
【0012】
内容が明確に要求しない限り、記載および特許請求の範囲を通して、「具える」、「具えている」などの語は、排他的とは反対の意味、あるいは包括的な意味であると解され、すなわち、「含んでいる、がそれに限定されない」という意味である。
【0013】
好適には、制御装置はフィードバックループにおいて測定された荷重を処理する。
【0014】
好適には、制御装置は測定された荷重に応じてサポートの位置を調整する。好適には、制御装置はサポートの位置を調整するためにアクチュエータを制御する。
【0015】
好適には、制御装置は測定された荷重からサポートの変位を計算する。好適には、サポートの配置は次の関係式により計算される:

ここで、dはサポートの変位であり、
Fは測定された荷重であり、
はサポートの質量であり、
sはラプラス変換パラメータであり、
は曲げ減衰率であり、
は曲げ剛性である
ことを特徴とするシステム。
【0016】
好適には、力センサは測定された荷重に対応する出力電圧を生じさせる。より好適には、サポートの変位は力センサの出力電圧の比率として計算される。一好適な形態において、サポートの変位は次の関係式により計算され、

ここで、dはサポートの変位であり、
は測定された荷重の出力電圧であり、
Fは測定された荷重であり、
は力センサゲインであり、
はサポートの質量であり、
sはラプラス変換パラメータであり、
は曲げ減衰率であり、
は屈げ剛性である。
【0017】
好適には、力センサは力センサの電荷および/または電圧を用いて測定される。
【0018】
好適には、制御装置は所定のクロスオーバ周波数ωcより上の周波数で、フィードバックループにおいて測定された荷重を処理する。好適には、クロスオーバ周波数は、力センサのカットオフ周波数を超える。一好適な形態において、クロスオーバ周波数は次の関係式により決められ、

ここで、ωはクロスオーバ周波数であり、
ωcoはカットオフ周波数であり、
inは電圧バッファ入力インピーダンスであり、
Cは力センサのキャパシタンスである。
【0019】
好適には、システムはサポートの位置を測定する位置センサを含む。より好適には、測定サポート位置はサポートの変位を計算するのに用いられる。あるいは、制御装置はアクチュエータの入力電圧からサポートの変位およびシステムの開ループ応答を計算する。いずれの場合においても、制御装置がクロスオーバ周波数ωcより下の周波数でフィードバックループにおいて計算された変位を処理することが好ましい。
【0020】
好適には、システムはサポートの変位を測定する変位センサを含む。より好適には、制御装置は、クロスオーバ周波数ωcより低い周波数でフィードバックループにおいて測定された変位を処理する。
【0021】
好適には、制御装置はシステムの減衰率を増加させるために、フィードバックループにおいて測定された荷重を処理する。
【0022】
好適には、少なくとも1つの共振周波数は、システムの第1の共振モードである。好適には、システムは複数の共振モードを含み、制御装置はシステムの1以上の共振モードを減衰する。
【0023】
好適には、力センサはサポートとアクチュエータとの間に少なくとも部分的に挿入されている。好適には、力センサは圧電トランスデューサである。
【0024】
好適には、制御装置はフィードフォワード入力をフィードバックループに加え、システムの閉ループ応答を向上させる。
【0025】
発明の第2の態様は、物体を配置するためのシステムを制御する方法を提供し、前記システムは、固定ベースと、前記物体のためのサポートと、前記サポートに力を加えるアクチュエータとを含み、前記方法は、
前記固定ベースに対して前記サポートを配置するために力を加えるアクチュエータを作動させるステップと、
前記サポートへの荷重を測定するステップと、
前記サポートの位置を制御し、および/または、前記システムの少なくとも1つの共振周波数を減衰すべく測定された荷重を処理するステップとを含む。
【0026】
処理ステップが、フィードバックループにおいて測定された荷重を処理するステップを含むことは好適である。
【0027】
好適には、方法は測定された荷重に応じて、サポートの位置を調整するステップを含む。好適には、方法はサポートの位置を調整するアクチュエータを制御するステップを含む。
【0028】
好適には、方法は測定された荷重からサポートの変位を計算するステップを含む。好適には、サポートの変位は以下の関係式により計算され、

ここで、dはサポートの変位であり、
Fは測定された荷重であり、
はサポートの質量であり、
sはラプラス変換パラメータであり、
は曲げ減衰率であり、
は曲げ剛性である。
【0029】
好適には、荷重測定ステップは荷重を測定する力センサを用いることを含む。より好適には、力センサは測定された荷重に対応する出力電圧を生成する。さらに好適には、方法は力センサの出力電圧の比率として、サポートの変位を計算するステップを含む。一好適な形態において、サポートの変位は次の関係式により計算される。

ここで、dはサポートの変位であり、
は測定された荷重の出力電圧であり、
Fは測定された荷重であり、
は力センサゲインであり、
はサポートの質量であり、
sはラプラス変換パラメータであり、
は曲げ減衰率であり、
は曲げ剛性である。
【0030】
好適には、方法は力センサの電荷および/または電圧を用いる力センサを測定するステップを含む。
好適には、処理ステップはクロスオーバ周波数ωcより上の周波数でフィードバックループにおいて測定された荷重を処理するステップを含む。より好適には、クロスオーバ周波数ωcは力センサのカットオフ周波数を超える。一好適な形態において、クロスオーバ周波数ωcは次の関係式により決められ、

ここで、ωはクロスオーバ周波数であり、
ωcoはカットオフ周波数であり、
は電圧バッファ入力インピーダンスであり、
Cは力センサのキャパシタンスである。
【0031】
好適には、方法はサポートの位置を測定するステップと、測定サポート位置からサポートの変位を計算するステップとを含む。あるいは、方法はアクチュエータの入力電圧からサポートの変位と、システムの開ループ応答とを計算するステップとを含む。いずれの場合においても、方法がさらに、クロスオーバ周波数ω周波数でフィードバックループにおいて測定された変位を処理するステップを含むことは好ましい。
【0032】
好適には、方法はサポートの変位を測定するステップを含む。さらに好適には、方法は所定のクロスオーバ周波数ωより下の周波数でフィードバックループ処理において測定された変位を処理するステップを含む。
【0033】
好適には、方法はフィードバックループにおいて測定された荷重を処理し、システムの減衰率を増大させるステップを含む。
【0034】
好適には、少なくとも1つの共振周波数はシステムの第1の共振モードである。好適には、システムは複数の共振モードを含み、制御装置は共振モードの1以上を減衰する。
【0035】
好適には、方法はフィードフォワード入力をフィードバックループに追加し、システムの閉ループ応答を向上させるステップを含む。
【0036】
好適には、システムはナノ位置決めシステムである。すなわち、システムは正確な動きとナノスケールでの物体の位置決めを可能にする。
【0037】
発明において、アクチュエータの荷重の測定は、フィードバックループにおいて、追跡(位置)および/または減衰制御の双方にとって変動可能なフィードバックとして用いられる。都合のよいことに、フィードバック制御ループにおける測定された荷重の使用は、無極性規制(zero-pole ordering)となる。このことは、簡易積分制御装置が、ゲインに関していかなる制限もなく、優れた追跡および減衰性能を提供することが可能となる。システムはこのように、論理上無限のゲインマージンと90度のフェーズマージンとで安定している。圧電力センサが容量性または誘導性の位置決めセンサより小さいノイズを生成するので、位置決めノイズも実質的に低減される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
発明の好適な実施形態が添付の図面を参照して、例のみの方法によりここに記載されている。
【図1】図1は、一般的なナノ位置決めシステムGを表す回路の概略図である。
【図2】図2aは、図1のナノ位置決めシステムの周波数応答グラフである。図2bは、図1のナノ位置決めシステムの閉ループゲイングラフである。
【図3】図3は、本発明の一実施形態による1自由度のナノ位置決めステージの概略図である。
【図4】図4は、図3のシステムに実施する発明の一実施形態による方法の概略図である。
【図5】図5aは、本発明の別の実施形態によるナノ位置決めシステムを表す回路の概略図である。図5bは、図5aのシステムのための閉ループ周波数応答グラフである。図5cは、図5aのシステムのための位置ノイズグラフである。
【図6】図6aは、図3のナノ位置決めステージに用いるノリアック社の一体型積層アクチュエータの図である。図6bは、図4のアクチュエータを表す概略図である。
【図7】図7は、力センサの電気モデルの概略図および図3のシステムに用いる関連する電荷測定回路である。
【図8】図8は、図3のシステムを表す機械回路の概略図である。
【図9】図9は、図3のシステムのための力伝達関数の周波数応答グラフである。
【図10】図10は、発明の別の実施形態によるナノ位置決めシステムを表す回路の概略図である。
【図11】図11は、図10から積分制御装置C用の閉ループポールの根軌跡である。
【図12】図12は、図9のシステムの開ループおよび閉ループ周波数応答を比較する周波数応答グラフである。
【図13】図13は、本発明のさらなる実施形態による1自由度のナノ位置決めステージの概略図である。
【図14】図14aは、図13のナノ位置決めシステムを表す回路の概略図である。図14bは、図13および図14aのシステムのための閉ループ周波数応答グラフである。図14cは、図13および図14aのシステムのための位置決めノイズグラフである。
【図15】図15は、図13のシステムに実施する本発明の別の実施形態による方法の概略図である。
【図16】図16aは、本発明の別の実施形態によるナノ位置決めシステムを表す回路の概略図である。図16bは、図16aのシステムのための閉ループ周波数反応グラフである。図16cは、図16aのシステムのための位置ノイズグラフである。
【図17】図17は、基本的な積分制御装置を有する図5および図13乃至図16の実施形態の性能を比較する周波数応答グラフである。
【図18】図18は、基本的な積分制御装置を有する図5および図13乃至図16の実施形態の性能を比較する周波数応答グラフである。
【図19】図19a乃至図19cは、本発明の例によるナノ位置決めプラットフォームおよび関連する2種類の力センサ各々の図である。
【図20】図20a乃至図20bは、図19のナノ位置決めプラットフォームの性能を示す開ループおよび閉ループ周波数応答グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の好適なアプリケーションは、ナノ位置決めシステム、装置および方法の分野にある。このようなシステムおよび装置は一般に、可動プラットフォームまたはステージを有する固定ベースを有し、ガイド曲げおよび/または機械的リンク機構を有し、プラットフォームまたはステージの動きを1自由度に抑える。物体はプラットフォームまたはステージに取り付けられるか、あるいは配置され、装置は物体を正確に配置するためにプラットフォームを動かす。さらなる曲げおよび/または機械的リンク機構はまた、プラットフォームに接続され、プラットフォームは多自由度を有することができ、一度に1自由度で動くよう抑制することができる。
【0040】
上述のように、このようなナノ位置決めシステムはヒステリシス、クリープおよび機械的共振のため制限される。特に、機械的共振は位置決め精度、速度および安定性によりナノ位置決めシステムの動作を制限する。
【0041】
最低の共振モードは最大の関心であり、一般的なナノ位置決めシステムの動力学は、ユニティーゲインの二次ローパスシステムGにより概算され、図1および以下の等式に示されるように、ゲインαを有する積分制御装置Cにより制御される:

ここで、ωは共振周波数であり、
ξは減衰率であり、
sはラプラス変換パラメータである。
【0042】
本システムの振幅および位相周波数は図2に描写されている。機械的共振の励振を避けるために、駆動信号の周波数は共振周波数の約1%乃至10%に制限されている。走査周波数が最大の性能制限であるアプリケーションにおいて、例えば、ビデオ速度AFMにおいて、位置決めシステムは調和性を低減させるよう成形される駆動信号を有する開ループにおいて動作される。このような技術は高速応答を提供するが、非線形性やディスターバンスが制御不能なままであるため正確ではない。
【0043】
一般にナノ位置決めシステムおよび装置の応答は、センサやフィードバックループを用いることにより向上する。市販のナノ位置決めシステムにおける一般的な技術の1つは、積分あるいは比例積分制御を用いるセンサベースのフィードバックである。このような制御装置は簡易であり、モデリング誤差に対してロバストであり、低周波数で高ループゲインのため、圧電非線形性を効果的に低減する。
【0044】
しかしながら、積分追跡制御装置は高度な共振モードの存在により厳しく制限されている。このような制限された閉ループ帯域幅の原因は、図2のループゲインを検査することにより説明できる。最大フィードバックゲインおよび閉ループ帯域幅を制限する要因はゲインマージンである。共振周波数ωで位相のずれはπを超え、よってループゲインは閉ループ安定性のために1乃至0dB未満でなければならない。閉ループ安定性のための条件は、

ここで、αはフィードバックゲインであり、
ωは共振周波数であり、
ξは減衰率である。
【0045】
システムGはユニティーゲインを有し、フィードバックゲインαは閉ループ帯域幅ωclでもある(ラジアン/秒において)。このように、最大閉ループ帯域幅は減衰率ξと共振周波数ωとの積の2倍と等しい。これは減衰率ξがいつも0.01の位数にあるため厳しい制限であり、最大閉ループ帯域幅ωclが共振周波数ωの2%未満であることを意味する。
【0046】
閉ループ帯域幅を向上させる1つの技術は、減衰制御装置を用いて減衰された共振動力学に基づいている。減衰制御装置はフィードバックループを用いてシステムの減衰率ξを人工的に増加させる。等式(2)のため、減衰率ξの増加はフィードバックゲインや閉ループ帯域幅における比例的な増加を可能とし、これにより機械的共振の帯域幅制限を克服する。減衰制御装置だけでは共振周波数をはるかに超える閉ループ帯域幅を増加させることはできないが、共振周波数における変動には鈍感であるという利点がある。さらに、減衰制御装置が機械的共振を反転するより抑制することにより、反転ベースのシステムより外部ディスターバンスをうまく遮断することができる。
【0047】
減衰制御は追跡制御と組み合わされることが多く、システムの性能を向上させる。しかしながら、すべてのフィードバック制御システムのように、追跡制御装置ゲインはまだ安定余裕により制限されており、位置決め解像度はセンサ誘導ノイズにより支配されている。センサノイズにより課される制限を証明するために、±100μmの範囲の高性能キャパシティブセンサおよび

の二乗平均平方根(RMS)ノイズから得られたフィードバック制御を用いるナノ位置決め装置を考察する。RMS位置決めノイズの概算は閉ループ帯域幅の平方根によるノイズ密度を乗じることにより求めることができる、すなわち:

例えば、ノイズが100Hzの閉ループ帯域幅で通常どおり配信されると、位置決めノイズは0.2nmRMS、あるいは約1.2nmの最大振幅である。原子分解のためには、閉ループ帯域幅は1Hz以下まで低減されなければならず、厳しい制限である。このように高度なセンサ誘導ノイズは、帯域幅が増加するにつれ位置決め解像度を不利にする。
【0048】
図3を参照すると、本発明の一実施態様は、固定ベース2と物体(図示せず)のためのプラットフォーム3の形状のサポートとを有するナノ位置決めステージ1の形状で物体を配置するシステムを提供する。圧電アクチュエータ4は、固定ベース2とプラットフォーム3との間に取り付けられ、固定ベース2に対してプラットフォーム3を配置するために力を加える。プラットフォーム3への荷重を測定する圧電トランスデューサ5の形態において、センサはプラットフォーム3とアクチュエータ4との間に挿入される。制御装置6は接続線7および8の各々を介して、アクチュエータ4と圧電トランスデューサ5とに電気的に接続され、サポート(ひいては物体)の位置を制御、あるいはシステム1の少なくとも1つの共振周波数で減衰するために測定された荷重を処理する。
【0049】
ステージ1はさらに、プラットフォーム3の変位を自由度を維持したまま抑制し、プラットフォームの変位がdの方向および距離のみであるようプラットフォーム3の変位を導くために複数の撓曲部9を有する。すなわち、撓曲部9はプラットフォーム3が単一方向(すなわち、1自由度)に距離dに沿ってスライドまたは並進する。機械的リンク機構は撓曲部9と組み合わされてもよいし、その代わりに用いられてもよい。
【0050】
ここで図4を参照すると、本発明の一実施形態による方法が記載され、対応する特徴が同じ参照番号に与えられている。方法10がナノ位置決めシステム1での実施に関して記載される一方、方法は図3に示されているものとは別の位置決めおよびナノ位置決めシステムに適用可能であってもよいことが分かるであろう。
【0051】
方法10において、圧電アクチュエータ4は力をプラットフォーム3に加えるために作動し、ステップ11において固定ベースに対して配置する。圧電トランスデューサはステップ12においてプラットフォーム3への荷重を測定する。ステップ13では測定された荷重はプラットフォーム3の位置を制御するか、あるいはシステムの少なくとも1つの共振周波数を減衰するために処理される。
【0052】
発明者はシステム1および方法10が、追跡(すなわち、位置決め)および減衰(帯域幅または速度)制御の双方のため制御装置6のフィードバックループにおいて有利に実施されると信じている。本発明は簡易な積分制御装置の使用を認め、ゲインを制限することなくナノ位置決めシステムおよび方法の追跡および減衰性能を提供する。
【0053】
運転中、プラットフォーム3に対する物体の所望の位置に対応する入力信号が制御装置6に送られ、それを必要な変位dに対応する信号に変換する。制御装置6は次いで、接続線7を通して圧電アクチュエータ4を作動する。アクチュエータ4は次いで、プラットフォーム3に力を加え、それを距離dに配置する。圧電トランスデューサ5は、プラットフォーム3への荷重を測定し、次いで接続線8を通して測定された荷重に対応する信号を制御装置6に送る。測定された荷重信号が制御装置6のフィードバックループに送られ、所定の比例関係に従い実際の変位dを計算し、以下により詳細に記載されるであろう。もし所望の変位dに対してプラットフォーム3の実際の変位dに変化があると、すなわちd≠dであると、次いで制御装置6は接続線7を通して圧電アクチュエータ4に信号を送り、プラットフォーム3に加えられる力を減少または増加させ、よってプラットフォーム3に加えられる荷重は、このようにしてプラットフォーム3の位置を調整する。このように、ステージ1はセンサ誘導ノイズにより不利に影響されることなく、荷重に応答してプラットフォームの位置を有利に動的に訂正することができる。これは圧電トランスデューサ5が誘電性および容量性位置センサのような標準的な位置センサよりはるかに小さいノイズを生成するためである。
【0054】
代替的、あるいは追加的に位置調節のために、制御装置6はステージ1のための減衰率ξを増加させるためにフィードバックループにおいて測定された荷重を処理する。これがステージ1、特に第1の(最低周波数)共振モードの共振周波数を減衰または抑制する。そのゲインが増加されるので、追跡制御装置のフィードバックゲインと閉ループ帯域幅とを比例して増加させる。等式(2)に従って、閉ループの安定性の条件におおよそ合わせながら、ステージ1はより大きな閉ループ帯域幅で動作可能である。好都合にも、制御装置は物体質量の変化に同時に応答して、ステージ1の共振周波数(あるいは複数の共振モードがある周波数)を減衰することができるので、異なる質量の物体がプラットフォーム3に取り付けられる度にステージ1の測定を要求しない。
【0055】
図5を参照すると、本発明の別の実施形態が示され、対応する特徴が同じ参照番号に与えられている。この実施形態において、制御装置6は減衰制御装置Cと追跡制御装置Cとを具え、互いに離れており、測定された荷重を用いてシステムGの共振周波数または周波数を減衰するのみである。追跡制御装置Cは変位フィードバックループを用いてステージ1の直接追跡を適用する。変位dは容量性、誘導性または光学センサのような物理的な変位センサを用いて得られるにちがいない。
【0056】
積分追跡制御装置Cの低帯域幅は図5aに示されているように、減衰制御装置Cの内部力フィードバックループを追加することにより著しく向上した。減衰制御装置Cが軽微に減衰された共振を除くので、ゲインマージンは大幅に増加し、追跡帯域幅における比例的増加が可能となる。内部ループの伝達関数を求めることは一番都合がよい。すなわち、伝達関数

はuからdである。

ここで、GdVaは印加電圧から変位への伝達関数であり、
は本発明の実施形態に従い力フィードバックを用いる減衰制御装置であり、
VsVaは印加電圧から検知された(出力)電圧への伝達関数である。
rからdへの閉ループ応答

は次いで

あるいは、同様に、

【0057】
この伝達関数の周波数応答は図5bに描写されている。積分制御装置を同じゲインマージン(5dB)と比べると、帯域幅は60Hzから1kHzに増加した。このことは基本的な積分制御装置にとっては優れた改良であるが、ゲインマージンはまだ共振周波数における変化に敏感である。実際問題として、制御装置は可能な限り低い共振周波数で安定性のために控えめに設計される必要がある。増加する閉ループ帯域幅の不都合なことの1つは、位置ノイズが増加することである。これは図5cに描写されているより広い帯域幅のパワースペクトル密度によって示されており、フィードバックループの付加的なセンサノイズの密度およびノイズ感度から得られる。従って、変位フィードバックの代わりに追跡制御装置において、力フィードバックを付加的に用いることは好適である。発明者はまた、フィードバック変数として測定された荷重を用いることは、現存するフィードバックループ、特に変位測定がフィードバック変数として用いられる変位フィードバックループへ利益を与えることを発見した。これらの利益の詳細な考察に先だち、本発明のシステム1および方法10のための基礎理論を以下により詳細に記載する必要がある。
【0058】
システム1および方法10は、多くのナノ位置決め配置により示された優性力学を表す。以下の考察の目的のために、いくつかの層26を含む一般的な多層一体構造、ノリアック社の積層アクチュエータ25は、図6aに最良に示されるような圧電アクチュエータ4を表すのに用いられる。積層アクチュエータ25を表す回路の概略図は図6bに示されており、回路は電圧依存発生力F、剛性k、有効質量Mおよび減衰率cを含む。
【0059】
システム1の動作において、圧電積層アクチュエータ4は、印加電圧に応答して内部応力を経験する。電圧依存発生力Fはこの応力を表し、以下の式によりプラットフォーム3の「自由な」変位に関連している:

ここで、ΔLはアクチュエータ長(m)における変化であり、
はアクチュエータ剛性(N/m)である。
【0060】
発生力Fは単には非拘束の線状積層アクチュエータの一般式で始めることにより適用される圧力に関連しており、

ここで、d33は圧電ひずみ定数(m/V)であり、
nは層数であり、
は印加電圧である。
【0061】
等式(7)および(8)を組み合わせることは、印加電圧の関数としての発生力の式を得る。

すなわち、発生力Fの印加電圧Vに対する割合は、ボルト当たりd33nkニュートンであり、比例関係である。以下の考察において、この定数をgと示す。

【0062】
力Fのいくらかが撓曲部およびアクチュエータの剛性と減衰効果との組み合わせ、およびプラットフォームとアクチュエータの質量により損失するため、プラットフォーム3に適用される発生力Fは、変位dを生じさせるのにプラットフォーム3にかかる荷重と同じではない。
【0063】
荷重Fは多くの方法で測定可能であるが、本実施形態において、圧電トランスデューサ5を用いて力センサに関連する追加の質量およびコンプライアンスを最小にする。特に、圧電トランスデューサは高感度と高周波数で低ノイズの帯域幅を有利に提供する。図3において、トランスデューサ5はプラットフォーム3とアクチュエータ4との間に挿入または挟まれる圧電材料の単一ウェハの形態をとる。この原理において、単位面積D(C/m)当たりの生成電荷量は、以下の圧電成分の式の標準ひずみ電荷形式(standard stream-charge form)により与えられる:

ここで、d33は圧電ひずみ定数(m/V)、および
Tはトランスデューサ5への応力である。
生成された電荷は次いで、

ここで、圧電トランスデューサ5はn層を有し、生成された電荷は

である。
【0064】
圧電力センサ30および電荷測定回路31の電気モデルは図7に示されている。この回路において、出力電圧Vは以下と等しい:

ここで、Vは回路の出力電圧であり、
qは電荷であり、
は回路の出力キャパシタンスであり、
nはアクチュエータの層数であり、
33は圧電ひずみ定数(m/V)であり、
Fは荷重である。
このように、荷重Fおよび出力電圧Vはニュートン当たり

ボルトである。すなわち、荷重Fはトランスデューサ5の出力電圧に正比例する。
【0065】
圧電力センサはまた、電荷測定より電圧を用いて測定されうる。このケースにおいて、生成された電荷はトランスデューサの内蔵可能容量に預けられる。端子電圧はゼロではないので、力センサ5の動力学はわずかに変化する。実際に、トランスデューサ5はわずかに剛性を増す。しかしながら、力センサ5の剛性がすでにアクチュエータ4および撓曲部6の剛性よりも実質的に大きいのでこの効果は無視できる。したがって、圧電力センサの開回路電圧はおおよそ次のようになる:

この式において、Vは出力または測定電圧であり、
nは圧電力センサの層数であり、
33は圧電ひずみ定数(m/V)であり、
Fは荷重であり、
Cはトランスデューサキャパシタンスである。
【0066】
したがって、荷重Fおよび測定(出力)電圧V間の倍数はニュートン当たり

ボルトである。このように、荷重Fは力感知トランスデューサ5からの出力電圧Vから直接計算されうる。すなわち、トランスデューサ5は(アクチュエータ4の動作により)プラットフォーム3上の荷重Fを感知し、荷重Fを出力電圧Vに変換する。この第1の共振モードのケースにおいて、トランスデューサ5は出力電圧Vを信号として接続線8を通して制御装置6に伝達し、次いでフィードバックループにおいて出力電圧信号を処理し、プラットフォーム3の位置を制御し、および/または、ステージ1において、少なくとも1つの共振周波数を制御する。
【0067】
上述の比例関係により、システム1における荷重Fの容易な測定が可能となり、こうしてプラットフォーム3の位置を制御およびまたはシステム1の共振周波数を減衰するために便利かつ好適なフィードバック変数を提供する。以下の考察において、この定数はgとして提供され、よって:

【0068】
プラットフォーム3に加えられる展開アクチュエータ力Fおよび結果の荷重F間の関係がここに記載されている。
【0069】
図3の単軸ナノ位置決めシステム1の概略機械図が図8に示されている。展開アクチュエータ力Fは荷重Fおよびプラットフォーム変位dとなる。アクチュエータおよび撓曲部6の剛性と減衰率は、各々k,c,およびk,cである。したがって、ニュートンの第2の法則は、停止したプラットフォーム3の動力学を以下のように支配する:

ここで、Mはアクチュエータ4の有効質量であり、
はプラットフォーム3の有効質量であり、
dはプラットフォーム3の変位であり、
は生成されたアクチュエータ力であり、
はアクチュエータ4の剛性であり、
はアクチュエータ4の減衰率であり、
は撓曲部6の剛性であり、
は撓曲部6の減衰率であり、

は一階微分値であり、

は二階微分値である。
【0070】
アクチュエータ4および屈曲部6は停止したプラットフォーム3と機械的に並行であり、質量、剛性および減衰率はともに以下のようにグループ分けされている。



動きの等式は、次いで

およびアクチュエータ力Fからプラットフォーム変位dまでの伝達関数は:

であり、
アクチュエータゲインgを含み、適用された電圧から変位までの伝達関数は以下のように記載されている:

【0071】
負荷荷重Fは興味深く、これは以下のようにニュートンの第2の法則をアクチュエータ質量に適用することによりアクチュエータ生成力Fと関連付けることができる。

【0072】
これは、かけられた力Fと測定された力Fとの間の以下の伝達関数をもたらす。


等式(25)において、伝達関数は以下のように書き直すことができる:

【0073】
この伝達関数は周波数ωおよびωで2対の共振ポールおよびゼロからなる。

【0074】
一般に、ゼロの共振周波数はポール以下であらわれる。これを生じさせる条件は:

【0075】
アクチュエータ質量Mおよび屈曲部剛性kはアクチュエータ剛性kおよびプラットフォーム質量Mよりも著しく低いので、共振ゼロはいつもポールの共振周波数以下で生じるであろう。この特徴は図9に示されたF/Fの振幅および位相周波数応答グラフに示されている。
【0076】
図3のシステム1の例が、図10においてより詳細に記載され、概略で示されている。この例において、アクチュエータ4は200層を有する10mmの長さのPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)線状アクチュエータである。力感知圧電トランスデューサ5は同じ領域の単一PZTウェハである。システムの寸法と物性は以下の表1に挙げられている。

これらの値から、アクチュエータおよびセンサゲインは

これは以下の開ループ変位感度となる

【0077】
フルスケール変位はしたがって、200Vで8.5μmであり、システム共振周波数は以下のとおりである。

【0078】
例において、測定された荷重はまた、積分制御装置を用いてフィードバックループにおいてナノ位置決めシステム1の共振周波数を処理することにより減衰するのに用いられ、積分力フィードバック(IFF)として後述される。一般的な状況の下で実施するのは容易であるので、IFFは特に柔軟構造の減衰を増大させるのに有用であり、保証された安定性で優れた減衰性能を提供する。
【0079】
IFF減衰制御装置Cは図10に示されており、システムGVsVaに接続され、各アクチュエータおよびセンサゲインgおよびgを有するナノ位置決めシステム1を表す。したがって:


ここにおいて、GVsVa(s)はシステムGVsVaであり、
はアクチュエータゲインであり、
はセンサゲインであり、
F(s)は荷重であり、
(s)はアクチュエータ4により適用された力であり、
はプラットフォーム3の有効質量であり、
Mはプラットフォーム3およびアクチュエータ4の有効質量の合計であり、
は屈曲部6の減衰率であり、
cは屈曲部6およびアクチュエータ4の減衰率の合計であり、
は屈曲部6の剛性の合計であり、
kは屈曲部6およびアクチュエータ4の剛性の合計であり、
sはラプラス変換パラメータである。
アクチュエータおよびセンサゲインg、およびgを含むことにより、印加電圧から測定電圧GVsVaまでのシステム伝達関数が以下の式から導かれうる。

【0080】
2つのシステム伝達関数GdVaおよびGVsVaはフィードバック制御システムの性能を促進させるのに用いられうる。これらの伝達関数の双方は同じ入力Vおよびポールを有し、これらの伝達関数の双方を含む1入力2出力システムGを規定することは利便性がある。

【0081】
システムGVsVaにおいて、位相応答は0度乃至180度にある。これは、適用され、測定される力に比例する入力および出力を有する柔軟構造の一般的な特徴である。このようなシステムの独特な特徴は積分制御が直接適用されうることであり、すなわち:

この式において、C(s)は積分制御装置であり、
αは制御装置ゲインであり、
sはラプラス変換パラメータである。
【0082】
積分制御装置Cが90度の一定の位相のずれを有するとき、ループゲイン位相は−90度乃至90度の間にある。すなわち、閉ループシステムは無限のゲインマージンおよび90度のフェーズマージンを有する。結果として、システムGVsVaはIFFの使用のため、簡易性および堅牢性の有利な性質を有する。
【0083】
光学フィードバックゲインαのための1つの解決法は2つの有効な仮定を作る;第1に、システム減衰率は小さく、かつ無視できる。第2に、アクチュエータ質量Mはプラットフォーム質量Mと比べると無視できる。これらの仮定とともに、光学フィードバックゲインαおよび対応する最大閉ループ減衰率ξは:


【0084】
閉ループポールは以下の等式の根拠から得られる:

対応する閉ループ根軌跡は図11に描写されており、閉ループポールが左半面に残っており、システムが無条件に安定していることを意味する。根軌跡はまた、光学フィードバックゲインを数値的に求める簡単で便利な方法を提供する。例えば、システムGVsVaがシステム同定により試験的なデータから直接得られると、モデルパラメータが知られていないところでは有用である。
【0085】
例えば、上記記載のシステム例のために、オプティカルゲインおよび最大減衰率は等式(38)および(39)から各々算出される。

これらの値は数的な根痕跡プロットを用いてチェックできる。数的に最大のゲインは4.07×10であり、0.45の閉ループ減衰率を提供する。このことは等式(41)の予想値と密接に関係しており、オプティカルゲインを推理する際になされる仮定の正確性をサポートする。
【0086】
図10の実施形態によりIFFを採用するシステム1において、外乱入力wから測定センサ電圧Vへの促進された開ループおよび閉ループ周波数応答は、図12の周波数応答グラフにおいて描写されている。閉ループ応答が線101として描写されているが、振幅グラフにおいて、開ループ周波数応答は線100として描写されている。位相グラフにおいて、開ループ周波数応答は線102として描写されており、閉ループ応答は線103として描写されている。開ループ線100および102と閉ループ線101および103とを各々比較することは、積分制御装置Cがシステム減衰を著しく向上させ、IFFが本発明の実施形態に用いられるところでは低周波数でシステム減衰および妨害拒否を示す。すなわち、測定された荷重をフィードバック変数として用いることは、システム1の減衰を向上させる。
【0087】
測定された荷重とプラットフォーム3の位置を制御するためにフィードバックループにおいて制御装置6により用いられる変位dとの関係がここで導かれる。これはニュートンの第2の法則をプラットフォーム質量Mに適用することによりなされてもよいし、あるいは2つのシステム伝達関数(24)および(26)を乗ずることによりなされてもよく、すなわち;


このように、測定電圧Vは以下の式による変位と関連付けられている

【0088】
このように、制御装置6はフィードバックループにおいて等式(44)における関係を用い、システム1におけるトランスデューサ5からの測定出力電圧Vからプラットフォーム3の変位dを計算する。
【0089】
等式(44)において伝達関数d/Vから、変位がシステムゼロ

の周波数まで上昇するよう比例している。この倍率はボルトあたりgcl=1/gメートルであり、すなわち、

【0090】
がω以下の周波数で配置されるよう直接比例するので、測定された力はまた、システムゼロ以下の周波数での変位に比例している。
【0091】
結論として、測定された荷重Fは、出力電圧Vを介して応答周波数ω以上または以下の変位dを計算するよう用いることができる。このように、測定された荷重は位置または軌道追跡がシステム内に要求されると、制御装置6に適したフィードバック変数を提供する。
【0092】
この比例関係の論理的進行は、参照入力rを力フィードバックループに容易に適用し、DCからωへの周波数で変位追跡を予想するが、発明者はチャージアンプおよび電圧バッファの圧電キャパシタンスおよび有限入力インピーダンスにより形成されたハイパスフィルタのため正確な変位追跡を得ることが難しいことが分かった。圧電力センサをわたり測定された電圧は以下の式と等しい

ここで、Vは圧電ひずみ電圧であり、
inは電圧バッファ入力インピーダンスであり、
Cはトランスデューサキャパシタンスである。
等式(46)において、フィルタは1/RinCのカットオフ周波数を有する高域である。
【0093】
この問題を改善するために、ハイパスカットオフ周波数は1mHzのオーダで極端に低くすることができる。しかしながら、これはシステム1のためのセトリング時間が極端に長くなるので常に好ましいとは限らない。さらに、システム1はまだDCを追跡することができず、高ソースインピーダンスはバッファ入力電流ノイズのため雑音のある測定となる。したがって、圧電力センサが用いられない「クロスオーバ」周波数を設定することにより圧電センサのカットオフ周波数を除去することは好適である。
【0094】
測定された荷重の代わりに、発明者は低周波数で応答を訂正するために、補助信号、実際の変位の概算、あるいは変位測定の何れかを用いることを提案する。対応する特徴が同じ参照番号に与えられている図13乃至図15に示されているように、補助信号を提供するために、システム1は本発明の別の実施形態において、デュアルセンサ制御ループを組み込むよう変更されている。
【0095】
この実施形態は、位置決めステージ150がアクチュエータ4により配置されるとき、プラットフォーム3の位置または変位を測定するための光センサ151の形態で位置および変位センサを有する点で図3の実施形態とは異なる。光センサ151は、各々が固定ベース2およびプラットフォーム3に取り付けられる2つのセンサエレメント152および153を含む。光センサ151は接続線154を介して制御装置6に電気的に接続されている。光センサ151から得られる変位信号は、フィードバックループにおいて処理するための接続線154を介して制御装置6に伝達される。実際に、ナノ位置決めステージ150は力感知圧電トランスデューサ5および光学式変位センサ151を含むデュアルセンサフィードバックループを有する。また、光学式変位センサは、必要ならば、容量性または誘導性近接センサと取り換えられてもよい。
【0096】
追跡制御ループは図14に概略的に示されており、対応する特徴は同じ参照文字が与えられている。ループ160は付加的な相補フィルタFおよびFを除いて図8と類似である。これらの相補フィルタFおよびFは、変位測定値dを上述のクロスオーバ周波数ωより下の周波数、好適にはカットオフ周波数より大きい周波数で、測定された荷重出力電圧Vで代用し、圧電センサはノイズのため信頼できないと考えられている。相補フィルタの最も簡易な選択は:

【0097】
クロスオーバ周波数ωはフィルタFおよびFの帯域幅と等しい。
【0098】
測定変位信号dはVとは異なる感度を有するので、図14に示されているように等価定数λにより計測されなければならない。λの値は

λが正しく選択されると、閉ループ応答

は、

【0099】
この制御ループが無条件に安定しているので、Cのゲインに関して制限はない。しかしながら、Cが図5の実施形態において選択され、最適減衰性能を提供し、この値が保持されるべきである。共振周波数での外乱抑制が弱まるので、Cにおけるさらなる増加は生産的ではない。
【0100】
このデュアルセンサ制御ループの閉ループ周波数応答は図14bにおいて描写されている。より高いゲインは図5の実施形態と比べて、1kHz乃至5.1kHzの帯域幅を増加させ、測定された荷重を用いてシステムの共振周波数を抑制する。この増加は論理的な無限のゲインマージンおよび90度のフェーズマージンから導かれ、これらの双方は共振周波数における変化に影響されない。位置ノイズはまた図14cに描写されており、ノイズ性能において著しい向上を示す。
【0101】
変位センサは一般に大きな帯域幅を超えて騒々しいが、圧電センサより良い熱およびドリフト特性を有する。事実上、相補フィルタFおよびFは各信号の最良の態様を利用する。圧電力センサの広い帯域幅および低いノイズがクロスオーバ周波数ωより上の周波数で利用される一方、変位センサはDCおよびクロスオーバ周波数ωより下の周波数で高レベルの安定性を提供する。
【0102】
ナノ位置決めステージ150の動作はここでは図13および図15を参照して記載され、図15は本発明による別の実施形態による方法170を示し、対応する特徴には同じ参照番号が与えられている。ナノ位置決めステージ150は図3の実施形態と同じ方法で機能する。すなわち、プラットフォーム3上の物体の所望の位置に対応する入力信号が制御装置6に送られ、この信号を必要な変位dに対応する信号に変換する。制御装置6は次いで、この変位信号を用いて接続線7を通して圧電アクチュエータ4を作動させる。アクチュエータ4は次いで、ステップ21において力をプラットフォーム3に加え、この力を距離dに配置する。ステップ22において、圧電トランスデューサ5はプラットフォーム3上の荷重を測定し、この荷重Fを出力電圧Vに変換し、次いでステップ171において、この出力電圧Vを測定された荷重に対応する信号として、接続線8を通して制御装置6に戻す。
【0103】
しかしながら、同時に光学的変位センサ151は、光学式感知エレメント152および153を用いてステップ172で変位dを測定し、それを測定変位dと対応する信号に変換し、ステップ171で接続線154を通して制御装置6に戻す。
【0104】
制御装置6はステップ173で応答周波数ωを表す信号を、各々アイテム174および175として設計された、クロスオーバ周波数ωより上あるいは下のエレメントに分割する。ωを超える成分174は、測定された荷重信号をフィードバックループに送り、ステップ176で図14aに最も良く示されているように、等式(43)の所定の比例関係に従って実際の変位dを計算する。同時に、クロスオーバ周波数ωより下の成分175は、ステップ177での測定された荷重の代わりにフィードバックループに測定変位dを送ることにより処理される。これは図15aにおいて示されている概略図である。
【0105】
成分174および175を処理した後、これらの成分はステップ178で再び組合され、圧電アクチュエータ4にかけられるべきステップ179での制御装置6からの出力電圧信号Vを生成する。
【0106】
所望の変位dに対して、実際の変位dあるいは測定された変位dにおいて変動がある場合、すなわち、d≠dまたはd≠dであり、次いで制御装置6は接続線7を通して出力電圧信号Vを圧電アクチュエータ4に適用し、プラットフォーム3に加えられる力、ひいてはプラットフォーム上の荷重を減少または増加させ、こうしてプラットフォーム3の位置を調整する。このようにステージ1はセンサ誘導ノイズにより不利に影響されずにプラットフォーム位置を有利に、動力学的に正すことができる。これはクロスオーバ周波数ωより上のを超える周波数で、圧電トランスデューサ5がより広い帯域幅を有し、誘導性かつ容量性センサのような標準位置センサよりはるかに低いノイズを生成するためである。DCおよびクロスオーバ周波数ωより下の周波数で、変位センサ151は高レベルの安定性を提供し、圧電センサよりよい熱およびドリフト特性を有する。実際、システム150および170は各信号の最良の態様を利用する。
【0107】
代替的に、または付加的に、位置調節のためにステップ180で制御装置6はフィードバックループにおいて測定された荷重を処理し、ステージ150のための減衰率ξを増加させる。上述のように、これはフィードバックゲインおよび閉ループ帯域幅を比例して増加させる。このように、ステージ150は等式(2)に従って、閉ループ安定性のための条件に合わせながら、より大きな閉ループ帯域幅において動作可能である。
【0108】
変位信号dが物理的な変位センサ150を用いて得られるが、変位信号dは、代わりに入力電圧Vおよびシステムの開ループ応答から概算で計算されたものから得ることができる。これは物理的な変位センサが利用できないか、あるいはDCで高レベルの精度を要求しないところでは適している。さらなる実施形態が図16に示されており、発明者は上述の推定変位信号を採用している低周波数バイパスと呼んでおり、対応する特徴には同じ参照番号が与えられている。図16aに最もよく示されているように、ループ180は図14aのループ160と類似であり、相補フィルタFおよびFが、クロスオーバ周波数ωより下の周波数で測定された最大荷重電圧Vの代わりに推定変位dを用いる。すなわち、図16の実施形態において、測定された荷重はまだ図14におけるようなクロスオーバ周波数ωおよび/または減衰制御より上の周波数のための追跡制御のために用いられるが、変位測定またはセンサは用いられない。信号VはVと同じ感度を要し、したがって、倍数λは

【0109】
λが正しく選択されると、閉ループ応答および安定性の特徴は、図16bの閉ループ周波数応答グラフによりよく示されているように上記記載と同じである。物理的な変位センサを無くすことの主な利益はノイズリダクションである。図16cに描写されている閉ループ位置ノイズ密度は、ここでは

これらは他の制御装置以下の振幅のオーダである。低周波数のバイパスを用いる力フィードバック技術は、大きな範囲、広い帯域幅および亜原子解像度でナノ位置決めシステムの可能性を開く。これらの特性は以下の例において実験的に証明されている。物理的な変位センサを無くすことの主な不利益は線形性が、ここでは圧電力センサおよび(信頼性の低い)屈曲部のばね定数kにのみ依存している。クリープの制御もまたない。これらの欠点が、いくつかのアプリケーションにおいてこの技術の使用を妨げるかもしれないが、幅広い帯域幅を有する亜原子解像度を要する別のアプリケーションは、例えば、ビデオ速度走査プローブ顕微鏡にとって大きな利益となるであろう。
【0110】
図14aおよび図16aにおける双方の制御ループのための閉ループ応答は以下の通りである。

【0111】
図14aおよび図16aにおいて最良に示されているように、フィードフォワード入力uffは、システムの閉ループ応答を向上させるのにオプションで用いることができる。反転ベースのフィードフォワードは最良の性能を提供するが、付加的な煩雑性はアナログインプリメンテーションにとって望ましくない。従って、フィードフォワード補正の基本的ではあるが効果的な形態はフィードフォワード圧入フィルタとしてシステムの反転DCゲインを単に用いることであり、すなわち

このことは容易に実行され、かつ追跡ラグにおけるリダクションを提供することができる。
【0112】
フィードフォワード入力とともに、デュアルセンサの閉ループ伝達関数および低周波数のバイパス制御装置は

【0113】
図13乃至図16の実施形態に従って、積分制御装置Cの性能を評価するために、それらは図5a最良に示されているように、変位フィードバックループを有する基本的な積分追跡制御装置と、減衰制御のための内部力フィードバックループを有する直接追跡制御装置Cとに比べられた。この比較において、積分制御装置Cは安定余裕とは関係なく、最大限可能な性能を提供することとなった。制御装置Cはまた、上記から得られ、記載されるのと同じフィードバックゲインを有する。センサキャパシタンスおよびバッファ入力インピーダンスにより誘導された低周波のドリフトは、1Hzのカットオフ周波数を有して設計された相補フィルタを用いて除去される。信号dは位置決めプラットフォーム3の開ループ感度から得られる。
【0114】
図17に示されるような3つの制御装置の閉ループ周波数応答が描写された。振幅周波数応答グラフにおいて、線200は基本的な制御装置の周波数応答であり、線201は直接追跡制御装置の周波数応答であり、線202は(デュアルセンサループまたは低周波数バイパスを用いる)IFFを有する制御装置Cである。上述のように、λが正しく選択されると、低周波数バイパスの閉ループ応答および安定性特徴およびデュアルセンサループは同じである。振幅応答グラフは、図5および図13乃至図16の実施形態に従って力フィードバック(直接追跡またはIFF)を採用する制御装置は、システムの共振周波数に近い帯域幅を提供し、これはフィードバックループの高ゲインによる開ループ周波数応答に相当する。さらに、標準的な制御装置(線200)と比べるとき、特に、大きな安定余裕および制御装置の平易性を考慮するとき、力フィードバックを採用する制御装置は例外的な性能を提供する。
【0115】
3つの制御装置の帯域幅および安定余裕は比較のため表2にリストされている。

【0116】
図18において、基本的な制御装置、直接追跡制御装置、デュアルセンサまたは低周波数のバイパスを有するIFFを用いる積分制御装置は500Hzの基準三角波を用いて比較され、線300により示されている。線301はフィードバックのない、システム1の開ループ応答であり、線302はデュアルセンサまたは低周波数バイパスを有するIFFを用いる積分制御装置の周波数応答であり、線303は直接追跡制御装置の周波数応答であり、線304は基本的な積分制御装置の周波数応答である。線304により示されるように、動作の周波数が、基本的な積分制御装置の容量を下回るグラフから分かる。しかしながら、参照線300および開ループ線301に近接する線302に関して示されているように、デュアルセンサまたは低周波数バイパス(線302)を有するIFFを実行する制御装置は、システム共振より1ディケードのみ低い入力周波数でも良好な追跡性能を達成するために十分な帯域幅を提供する。減衰制御(線303)のための測定された荷重を用いる直接追跡制御装置はさらに、向上した追跡性能のための適切な帯域幅を提供するが、より大きな追跡ラグを有する。
【0117】
従って、フィードバック変数として、力および変位を用いるデュアルセンサフィードバックループを組み込む発明の実施形態を用いる例は、本発明の方法およびシステムを実行する提案された追跡および減衰制御装置の有効性を示す。都合のよいことには、本実施形態は、低周波数力信号を開ループシステム動力学により、変位測定または変位信号低周波数で圧電センサにより示される高域特性を克服する。特に、本発明の実施形態によるデュアルセンサ/低周波数バイパス積分力フィードバック制御装置は、無限のゲインマージンおよび90度のフェーズマージンを維持しながら、開ループ共振周波数に近付ける閉ループ帯域幅を提供する。比較することにより、基本的な積分変位フィードバック制御装置は5dBのみのゲインマージンを有する帯域幅の1%のみを達成する。
【0118】
本発明の実施形態に従う例は図19および図20を参照して記載されるであろう。図15のデュアルセンサループの配置は図19aに最良に示されているように、ビデオ速度走査プローブ顕微鏡のために設計された高帯域幅の側方ナノ位置決めプラットフォームに適用された。この装置はリーフ屈曲部により停止され、10mmの積層アクチュエータにより直接駆動された2つの変位ステージを有する一連の運動学的な装置である。小さなステージが中央に配置され、5kHzまで走査率を上げるよう設計され、29kHzの共振周波数を有する十分な速さとなる。より大きなステージは隣接する軸に動きを提供し、1.5kHzの共振周波数により制限されている。このステージが100Hzまでの三角軌道とともに動作するとき、能動制御が要求される。ナノ位置決めプラットフォームのための主たるアプリケーションは、高速走査プローブ顕微鏡であり、高解像度および広帯域幅が最も望ましい性能特性である。
【0119】
プラットフォームは図13におけるシステムに機械的に類似している。主に異なるところは第1の共振周波数を超えるより高い周波数モードの存在である。これらは図20aに描写される開ループ周波数応答に観察されうる。単一モードシステムのみが容易性のために記載されてきたが、発明の方法およびシステムがより高次の周波数モードに容易に適用可能であることが認められるであろう。IFFが高次の共振システムに特に適していることが分かった。これは等式(25)における大きな貫通タームのためであり、システムオーダに関係なく無極性規制を保証する。よって、最良の安定特性は高次の共振モードの存在に影響されない。
【0120】
位置決めプラットフォームは設置された2つのセンサ、ADE Tech 2804容量センサおよび圧電力センサを有する。図19bに最良に示されているような標準プレートセンサおよび図19cにうまく示されているような積分力センサを有するカスタム積層アクチュエータがテストされた。プレートセンサは上面および下面に金属電極を有する単一層の圧電材料のみである。積層アクチュエータは5×5×10mmの寸法であり、デンマークのノリアック社のA/Sにより製造された。このトランスデューサはプレートセンサより強く、容量が大きく、電流ノイズに対してより感度がより小さい。アクチュエータは発明者自身の設計で駆動された。
【0121】
図20aにおいて、7番目の指令、単一入力、2つの出力識別されたモデルは、本システム応答に近づいて合致するよう確認された。根軌道技術を用いて最良の制御ゲインはβ=7800であるよう決定された。1Hzのコーナー周波数相補フィルタとともに用いて、制御装置はアナログ回路で実行された。制御ループの簡易性のため、アナログ実装の使用は直接的であり、量子化ノイズ、有限解像度およびデジタル制御装置と関連するサンプリング遅延を避ける利点を有する。
【0122】
閉ループ周波数が図20bに描写されており、24、9および4dBによりはじめの3つのモードの著しい減衰を表す。実験的なデータに追加して、促進された応答がまた近い相関関係を示すオーバーレイである。閉ループシステムの追跡帯域幅は2.07kHzであり、開ループ応答周波数より高く、直接追跡制御装置を用いて達成可能な帯域幅より著しく大きく、5dBのゲインマージンを有する210Hzとなるよう予測される。圧電力センサと関連する別の主たる利益は極端に低い付加ノイズである。
【0123】
このように、本発明の実施形態は力センサをナノ位置決めシステムに追加し、プラットフォームにかけられる荷重を測定し、こうして制御装置が測定された荷重を用いることを可能とし、プラットフォームの位置を制御および/またはシステムの共振周波数を減衰させる。プラットフォーム位置決め制御のケースにおいて、測定された荷重を用いてプラットフォーム変位を計算する。このことは広い帯域幅の減衰制御装置が、安定余裕を犠牲にすることなく、例外的に高性能の追跡制御装置に適用することが可能となる。さらに、圧電センサは力センサとして用いることができ、よって現存の変位センサと比べて減じられたセンサ誘導ノイズの量を生成する。
【0124】
減衰制御に関連して、適用された電圧から測定された荷重への伝達関数は無極性規制を示し、これは減衰制御装置の設計および実施を大きく簡素化し、ゲイン上にいかなる制限なしで簡易な積分制御装置を用いて達成される例外的な減衰性能を許可する。本発明によるシステムはこうして論理的に有限なゲインマージンおよび90度のフーズマージンで安定化される。別の顕著な特徴は保証された安定性および共振周波数における変化に対する非感受性を含む。
【0125】
特に、本発明により提供された増加した帯域幅および解像度は簡易な実施と高レベルのロバストとを組み合わせ、高速アプリケーションの新しい範囲に採用される発明を実施するナノ位置決めシステムを可能とする。例えば、閉ループ制御に関する性能不利のため、高速走査プローブ顕微鏡は現在、開ループナノ位置決め装置を用いる。本発明の簡易性および帯域幅のため、このようなアプリケーションはここでも向上した線形性、より小さな振動および障害の拒絶とともに閉ループ制御を利用する。これらすべての態様において、本発明は従来技術における実質的かつ商業上著しい向上を表す。
【0126】
本発明が特定の例に関して記載されてきたが、多くの他の形態において実施されてもよいことが当業者には分かるであろう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を位置決めするためのシステムであって、
固定ベースと、
前記物体のためのサポートと、
前記固定ベースに対して前記サポートを転位させるために力を加えるためのアクチュエータと、
前記サポート上の荷重(load force)を測定するためのセンサと、
前記サポートの位置を制御し、および/または、前記システムの少なくとも1つの共振周波数を減衰すべく前記測定された荷重を処理(process)するための制御装置とを含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1のシステムにおいて、前記制御装置が、フィードバックループにおいて、前記測定された荷重を処理することを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシステムにおいて、前記制御装置が、前記測定された荷重に応じて前記サポートの位置を調整することを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載のシステムにおいて、前記制御装置が、前記サポートの位置を調整するために前記アクチュエータを制御することを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1乃至の4の何れか1つに記載のシステムにおいて、前記制御装置が、前記測定された荷重から前記サポートの変位を計算することを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムにおいて、前記サポートの変位が以下の関係式により計算され、

ここで、dは前記サポートの変位であり、
Fは前記測定された荷重であり、
は前記サポートの質量であり、
sはラプラス変換パラメータであり、
は曲げ減衰率であり、
は曲げ剛性である
ことを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1乃至4の何れかに記載のシステムにおいて、前記力センサが、前記測定された荷重に対応する出力電圧を生成し、前記サポートの変位が、前記出力電圧に比例して計算されることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のシステムにおいて、前記サポートの変位が、以下の関係式により計算され、

ここで、dは前記サポートの変位であり、
は前記測定された荷重の出力電圧であり、
Fは前記測定された荷重であり、
は力センサ利得であり、
は前記サポートの質量であり、
sはラプラス変換パラメータであり、
は曲げ減衰率であり、
は曲げ剛性である
ことを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1つに記載のシステムにおいて、前記力センサが、当該力センサの電荷および/または電圧を用いて較正されることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項2乃至9の何れか1つに記載のシステムにおいて、前記制御装置が、所定のクロスオーバ周波数ωより上の周波数で、前記フィードバックループにおいて前記測定された荷重を処理することを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムにおいて、前記クロスオーバ周波数ωが、前記力センサのカットオフ周波数より高いことを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項10乃至11の何れか1項に記載のシステムにおいて、前記クロスオーバ周波数ωが、以下の関係式により決定され、

ここで、ωはクロスオーバ周波数であり、
ωcoはカットオフ周波数であり、
inは電圧バッファ入力インピーダンスであり、
dはサポートの変位であり、
Cは力センサのキャパシタンスである
ことを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項10乃至12の何れかに記載のシステムがさらに、前記サポートの位置を測定するための位置センサを含み、測定された前記サポートの位置が、前記サポートの変位を計算するのに用いられ、前記制御装置が、前記クロスオーバ周波数ωより下の周波数で前記計算された変位を処理することを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項10乃至12の何れかに記載のシステムにおいて、前記制御装置が、前記アクチュエータの入力電圧および前記システムの開ループ応答から前記サポートの変位を計算し、計算された前記変位を前記クロスオーバ周波数ωより下の周波数で処理することを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項10乃至12の何れかに記載のシステムがさらに、前記サポートの変位を測定するための変位センサを具え、前記制御装置が、前記フィードバックループにおいて所定のクロスオーバ周波数ωより下の周波数で前記測定された変位を処理することを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項2乃至15の何れかに記載のシステムにおいて、前記制御装置が、前記システムの減衰率を増大させるために前記フィードバックループにおいて測定された前記荷重を処理することを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項2乃至16の何れかに記載のシステムにおいて、前記制御装置が、フィードフォワード入力を前記フィードバックループに加えて、前記システムの閉ループ応答を向上させることを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項1乃至17の何れか1つに記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの共振周波数が、前記システムの第1の共振モードであることを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項1乃至18の何れか1つに記載のシステムがさらに、複数の共振モードを含み、前記制御装置が、前記システムの1以上の共振モードを減衰することを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項1乃至19の何れか1つに記載のシステムにおいて、前記力センサが、前記サポートと前記アクチュエータとの間に少なくとも部分的に挟まれていることを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項1乃至20の何れか1つに記載のシステムにおいて、前記システムが、ナノ位置決めシステムであることを特徴とするシステム。
【請求項22】
物体を位置決めするためのシステムを制御する方法であって、前記システムが、固定ベースと、前記物体のためのサポートと、前記サポートに力を加えるためのアクチュエータとを含み、前記方法が、
前記固定ベースに対して前記サポートを変位させる力を加えるために前記アクチュエータを作動させるステップと、
前記サポート上の荷重(load force)を測定するステップと、
前記サポートの位置を制御し、および/または、前記システムの少なくとも1つの共振周波数を減衰すべく前記測定された荷重を処理(process)するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、前記処理するステップが、フィードバックループにおいて前記測定された荷重を処理するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項22または23に記載の方法がさらに、前記測定された荷重に応答して、前記サポートの位置を調整するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項22乃至24の何れかに記載の方法がさらに、前記サポートの位置を調整するために前記アクチュエータを制御するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項22乃至25の何れかに記載の方法がさらに、前記測定された荷重から前記サポートの変位を計算するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法において、前記サポートの変位が、以下の関係式により計算され、

ここで、dは前記サポートの変位であり、
Fは前記測定された荷重であり、
は前記サポートの質量であり、
sはラプラス変換パラメータであり、
は曲げ減衰率であり、
は曲げ剛性である
ことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項22乃至25の何れか1つに記載の方法において、前記荷重を測定するステップが、前記荷重を測定するために力センサを用いるステップを含み、前記力センサは、測定された前記荷重に対応する出力電圧を生成し、前記方法がさらに、前記出力電圧に比例するものとして前記サポートの変位を計算するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、前記サポートの変位が、以下の関係式により計算され、

ここで、dは前記サポートの変位であり、
は前記測定された荷重の出力電圧であり、
Fは前記測定された荷重であり、
は力センサ利得であり、
は前記サポートの質量であり、
sはラプラス変換パラメータであり、
は曲げ減衰率であり、
は曲げ剛性である
ことを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項22乃至29の何れかに記載の方法がさらに、前記力センサの電荷および/または電圧を用いて前記力センサを較正するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項23乃至30の何れかに記載の方法において、前記処理するステップが、所定のクロスオーバ周波数ωより上の周波数で、前記フィードバックループにおいて測定された前記荷重を処理するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法において、前記クロスオーバ周波数ωが、前記力センサのカットオフ周波数より上であることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項31または32に記載の方法において、前記クロスオーバ周波数ωが、以下の関係式により決定され、

ここで、ωはクロスオーバ周波数であり、
ωcoはカットオフ周波数であり、
inは電圧バッファ入力インピーダンスであり、
Cは前記力センサのキャパシタンスである
ことを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項31乃至33の何れか1つに記載の方法がさらに、前記サポートの位置を測定するステップと、測定された前記サポートの位置から前記サポートの変位を計算するステップと、所定のクロスオーバ周波数ωより下の周波数で、前記フィードバックループにおいて計算された前記変位を処理するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項31乃至33の何れか1つに記載の方法がさらに、前記アクチュエータの入力電圧および前記システムの開ループ応答から前記サポートの変位を計算するステップと、前記所定のクロスオーバ周波数ωより下の周波数で、前記フィードバックループにおいて計算された前記変位を処理するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項31乃至33の何れか1つに記載の方法がさらに、前記サポートの変位を測定するステップと、前記所定のクロスオーバ周波数ωより下の周波数で、前記フィードバックループにおいて測定された前記変位を処理するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項23乃至36の何れか1つに記載の方法がさらに、前記フィードバックループにおいて測定された前記荷重を処理して前記システムの減衰率を増加させるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項23乃至37の何れか1つに記載の方法がさらに、フィードフォワード入力を前記フィードバックループに加えて前記システムの閉ループ応答を向上させるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項22乃至38の何れか1つに記載の方法において、前記少なくとも1つの共振周波数が、前記システムの第1の共振モードであることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項22乃至39の何れか1つに記載の方法において、前記システムが、複数の共振モードを含み、前記制御装置が、前記共振モードの1以上を減衰することを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項22乃至40の何れか1つに記載の方法において、前記システムが、ナノ位置決めシステムであることを特徴とする方法。


【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図19b】
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【図19c】
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【図20】
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【公表番号】特表2012−505447(P2012−505447A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530331(P2011−530331)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/AU2009/001338
【国際公開番号】WO2010/040185
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511090420)ニューカッスル イノベイション リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】NEWCASTLE INNOVATION LIMITED
【Fターム(参考)】