説明

位置決め装置

【課題】小型化(薄型化)を図ることができ、かつ、センサ不要で基準位置出し(原点出し)の制御シーケンスも不要となる位置決め装置を提供する。
【解決手段】本発明の位置決め装置は、複数の振動モードを発生させる電気機械変換素子9を固定して運動抽出部10を楕円運動させる弾性振動体3を一平面上に三角形状に配置する駆動体ユニット1を備える。また、移動板6を有する移動体ユニット2を備える。そして、移動板6を運動抽出部10に接触させて駆動する。このような構成において、永久磁石5の磁気吸引力で、移動板6と運動抽出部10の接触部に加圧力を与えると共に、永久磁石5の磁束集中位置を移動板6の基準位置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の振動モードを発生させる電気機械変換素子を貼り付けて運動抽出部を楕円運動させる、板状に形成された弾性振動体を複数個使用して移動体を駆動する位置決め装置に係わる。特に、カメラの手ぶれ補正機構に適した撮像素子に好適な位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
縦振動と横振動モードとを合成した表面波発生機構を一平面上に3箇所設け、かつその表面波発生機構を、動体板を挟んで対峙させ、動体板を座標系X、Y、θの3軸移動可能とした表面波アクチュエータが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、複数の振動モードを発生させる電気機械変換素子を貼り付けて運動抽出部を楕円運動させる、板状に形成された弾性振動体を用いた振動波モータとして代表的なものには、2つの曲げ振動モードを合成した振動波モータが知られている(特許文献2参照)。
【0004】
更に、縦振動と屈曲振動モードとを合成した振動波モータも知られている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開昭63−257478号公報(特許第2003489号)
【特許文献2】特開平6−311765号公報(特許第3363510号)
【特許文献3】特開平7−143771号公報(特許第3279021号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の提案は、一層構造のXYθの3軸駆動のアクチュエータとして有効である。しかしながら、以下の欠点がある。
(1)2つの表面波発生機構を、動体板を挟んで対峙させる構成のため、厚み方向(動体板平面に直交する方向)に寸法が大きくなる。
(2)弾性体に縦振動用の電歪素子と横振動用の電歪素子とを重ねて貼り付けて表面波発生機構を構成するために、やはり厚み方向に寸法が大きくなる。
【0006】
このため、例えば、カメラの撮像素子を駆動して手ぶれ補正を行う機構などにおいては、厚み方向(レンズの光軸方向)に薄く、かつ全体に小型であることが要求されるので、適用が困難となる。
【0007】
また、特許文献1には「高精度の位置決めをする際には、位置検出機能(変位センサ、角度センサ)を付加するシステムにすれば良い」との示唆がある。しかしながら、カメラなどの小型な民生機器においては、寸法的にもコスト的にも最小限の構成で位置決めのシステムを構成することが要求される。特に、カメラの撮像素子を駆動して手ぶれ補正を行う機構においては、レンズの光軸に対して撮像素子の基準位置を合わせる(原点出し)動作を速やかに行うことも要求される。
【0008】
本発明の目的は、小型化(薄型化)を図ることができ、かつ、センサ不要で基準位置出し(原点出し)の制御シーケンスも不要となる位置決め装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の位置決め装置は、複数の振動モードを発生させる電気機械変換素子を固定して運動抽出部を楕円運動させる弾性振動体を一平面上に三角形状に配置する駆動体ユニットと、移動板を有する移動体ユニットとからなり、前記移動板を前記運動抽出部に接触させて駆動する位置決め装置において、永久磁石の磁気吸引力で、前記移動板と前記運動抽出部の接触部に加圧力を与えると共に、前記永久磁石の磁束集中位置を前記移動板の基準位置とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の位置決め装置によれば、小型化(薄型化)を図ることができ、かつ、センサ不要で基準位置出し(原点出し)の制御シーケンスも不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る位置決め装置の構成図であり、(a)は平面図、(b)は側面図断面である。
【0013】
本実施の形態の位置決め装置は、図1に示すように、駆動体ユニット1と移動体ユニット2とで構成され、特許文献1に開示されている駆動方法により、移動体ユニット2をX、Y、θの3軸移動可能とした装置である。
【0014】
図2は、図1における駆動体ユニットの構成図であり、(a)は平面図、(b)は側面図断面である。
【0015】
図2に示すように、駆動体ユニット1は、弾性振動体3と基台4とを備え、弾性振動体3は基台4の同一平面上に三角形状に位置決めして配置固定されている。また基台4には、移動体ユニット2を吸引して駆動体ユニット1と加圧接触させるための永久磁石5も固定されている。
【0016】
永久磁石5は、移動体ユニット2を吸引する方向に着磁され、移動体ユニット2に対向する端面側は凸球面形状に加工されている。そして基台4は、樹脂或いはアルミニウム系金属材料などの非磁性材料を用いて成形されている。
【0017】
図3は、図1における移動体ユニットの構成図であり、(a)は平面図、(b)は側面図断面である。
【0018】
図3に示すように、移動体ユニット2は、移動板6に撮像素子7(CCD、CMOSなど)が固定されている。移動板6には、駆動体ユニット1と接触する側(撮像素子7とは反対側)の面に凸球面形状の突起6aが形成されている。
【0019】
また、レンズの光軸に対する撮像素子7の基準中心位置が凸球面形状の突起6aの中心位置と一致するように、撮像素子7は移動板6に固定されている。そして、移動板6は鉄系金属材料などの高透磁率材料で成形されている。
【0020】
図4は、図2における弾性振動体の斜視図である。
【0021】
図4に示すように、弾性振動体3は、板状弾性体8の片面に複数の振動モードを発生させる電気機械変換素子9を貼り付けて固定し、電気機械変換素子9の反対面側に運動抽出部10を、複数の振動モードの腹の位置で板状弾性体8に固定して形成される。
【0022】
運動抽出部10の自由端面10aは、送り方向の定在波と突上げ方向の定在波の合成により楕円運動をする。尚、運動抽出部10の自由端面10aは凸球面形状とする方が性能の安定上、望ましい。また、板状弾性体8には、取付け位置決め用穴8bを有する支持部8aが形成されていて、基台4の所定位置に板状弾性体8の支持部8aが固定されている。
【0023】
ここで、永久磁石5の中心位置と移動板6の凸球面形状の突起6aの中心位置が一致している状態が、駆動体ユニット1と移動体ユニット2との接触部における加圧力が最大となり、かつ最も磁気的にバランスが取れている状態である。これにより安定した静止状態を実現することができる。
【0024】
また、移動板6の凸球面形状の突起6aの中心位置が磁束集中位置でもあるため、永久磁石5の中心位置とのずれが生じると、永久磁石5の中心位置の方向に移動体ユニット2引き戻す吸引力が作用する。
【0025】
以上の構成にすることにより、薄型の位置決め装置を実現することができる。また、三角形状に配置された弾性振動体3の運動抽出部10と移動板6とを永久磁石5の吸引力により加圧接触させ、運動抽出部10の自由端面10aの楕円運動を制御することにより撮像素子7をX、Y、θの3軸移動させて手ぶれ補正動作を行うことができる。
【0026】
そして、手ぶれ補正動作終了後の基準位置出し動作時には弾性振動体3の運動抽出部10に突上げ方向の定在波のみを適正な振幅で発生させ、加圧接触部の摩擦力を最小化する。このことにより、磁束集中位置である移動板6の凸球面形状の突起6aが永久磁石5の吸引力により引っ張られて移動板6が移動するので、永久磁石5の中心位置と移動板6の凸球面形状の突起6aの中心位置が一致する安定位置で静止させることができる。
【0027】
従って、カメラの光軸に対して所定位置に固定した駆動体ユニット1と移動体ユニット2の撮像素子7の基準位置出し動作を、センサなしで、かつ、位置出し動作のための制御シーケンスもなしで実現することができる。
【0028】
また、レンズの光軸に対して撮像素子7を駆動して手ぶれ補正を行う薄型の位置決め装置を実現することができる。また、基準位置出し動作時に、移動板6を突上げる方向の定在波のみ発生するように入力することにより、移動板6と弾性振動体3の運動抽出部10との摩擦力が激減し、移動板6は磁気吸引力により基準位置に引っ張られて静止する。このことにより、センサが不要で基準位置出し(原点出し)の制御シーケンスも不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る位置決め装置の構成図である。
【図2】図1における駆動体ユニットの構成図である。
【図3】図1における移動体ユニットの構成図である。
【図4】図2における弾性振動体の斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 駆動体ユニット
2 移動体ユニット
3 弾性振動体
4 基台
5 永久磁石
6 移動板
7 撮像素子
8 板状弾性体
9 電気機械変換素子
10 運動抽出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の振動モードを発生させる電気機械変換素子を固定して運動抽出部を楕円運動させる弾性振動体を一平面上に三角形状に配置する駆動体ユニットと、移動板を有する移動体ユニットとからなり、前記移動板を前記運動抽出部に接触させて駆動する位置決め装置において、
永久磁石の磁気吸引力で、前記移動板と前記運動抽出部の接触部に加圧力を与えると共に、前記永久磁石の磁束集中位置を前記移動板の基準位置とすることを特徴とする位置決め装置。
【請求項2】
前記移動板の基準位置出し動作時に、前記電気機械変換素子に前記移動板を突上げる方向の定在波のみ発生するように入力することを特徴とする請求項1記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記移動板に撮像素子が固定されていることを特徴とする請求項1または2記載の位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−27769(P2009−27769A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185774(P2007−185774)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】