説明

位置測定装置、位置測定装置を用いた形状測定装置及び位置測定方法、並びに位置測定方法を用いた形状測定方法

【課題】測定対象物の位置測定装置、形状測定装置、位置測定方法、及び形状測定方法を提供する。
【解決手段】位置測定装置10は、支持部材14と、支持部材14に上端部が固定され自由状態で垂直配置された光ファイバー11と、光ファイバー11の下端部に設けられた探触子12と、光ファイバー11の上下方向中間位置にあって光ファイバー11の撓みを検知する光学振れ検知機構15と、測定対象物23を載せてX軸、Y軸、Z軸方向に測定対象物23を移動させるXYZステージ25と、光学振れ検知機構15及びXYZステージ25の制御部26とを有し、光ファイバー11は、光ファイバー11を揺らす振動手段30を介して支持部材14に取付けられ、探触子12がXYZテーブル25に載った測定対象物23に当接した場合の光ファイバー11の撓み量を光学振れ検知機構15で検知し、測定対象物23の特定部位の座標を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体に形成された、例えば、小孔、小穴、微細突起、又は微細溝等の測定対象物の特定部位の座標を検知する位置測定装置、位置測定装置を用いた形状測定装置及び位置測定方法、並びに位置測定方法を用いた形状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の精密微細加工技術の進歩に伴い、微細形状を測定する重要性が増加している。特に、微細金型、超精密機器、マイクロマシン等に使用するマイクロ部品、燃料噴射用や化学繊維用の各種ノズル孔、フェルール等の光通信機器、医療機器の微小径深穴、マイクロチャネル等の深溝といった微細物の形状の測定技術が加工技術向上や品質保証のために要望されている。
例えば、微小径孔の測定に関しては、各種の顕微鏡による測定が行なわれているが、顕微鏡による測定は、孔の上面からの測定となるため、孔の入口部あるいは出口部の形状のみしか測定できず、孔の内部の真円度、真直度、円筒度、及び表面粗さに関しては評価できないという問題がある。そして、孔の内部形状を測定する場合、孔が形成された物体を切断して、孔の断面形状を顕微鏡を用いて測定するという破壊検査が行なわれている。しかし、破壊検査を実行すると、その検査対象物は利用できないので、実際の加工物の品質(加工精度)を保証することができないという問題がある。
【0003】
そこで、微小径穴の測定に関しては、貫通穴(孔)の測定では光を穴内壁に反射させ、その反射光を穴出口で検出する光学的方式(例えば、非特許文献1、2参照)が報告されている。また、止まり穴にも適用可能な方法として、バイブロスキャニング方式のプローブを用いた方式(例えば、非特許文献3参照)、振動させたプローブの接触に伴う振幅変化を用いた方式(加振プローブ式)、プローブと測定対象面との接近をトンネル現象により検出する方式(例えば、非特許文献4、5参照)、空気圧により接触子の保持と接触の検出を行う方式(例えば、非特許文献6参照)等が報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】丸山六男、「光学的方法による小穴内径測定装置の開発」、精密工学会誌、1996年1月、第62巻、1号、p145−149
【非特許文献2】秋山信幸、外5名、「微小径深穴用光学式内径測定装置の開発」、精密工学会誌、1996年4月、第62巻、4号、p584−588
【非特許文献3】山本正樹、外2名、「バイブロスキャニング法を用いた微細形状測定システムの開発」、精密工学会誌、2001年2月、第67巻、2号、p251−255
【非特許文献4】白石利治、外1名、「マイクロ部品用形状測定装置の開発−装置の構成ならびに測定結果」、精密工学会誌、1998年9月、第64巻、9号、p1395−1399
【非特許文献5】白石利也、外3名、「マイクロ部品の形状・寸法測定に関する研究(装置の改良ならびにプローブの校正と寸法測定結果)」、日本機械学会論文集(C編)、2002年 9月、第68巻、673号、p2783−2790
【非特許文献6】高橋潔、外5名、「吸気型ボールプローブの開発(第1報)−基本的構成−」、精密工学会誌、1998年8月、第64巻、8号、p1153−1157
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に記載された方法では、測定対象物が貫通穴に限定され、止まり穴、溝の測定ができないという問題がある。
また、非特許文献2〜6に記載された方法、加振プローブ式では、プローブの小径化が困難なため、例えば、10μm未満の内径、幅を有する測定対象物の形状の測定ができないという問題がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、物体に形成された測定対象物の特定部位の座標を、低測定力で高感度かつ高精度で測定することが可能な位置測定装置、位置測定装置を用いた形状測定装置及び位置測定方法、並びに位置測定方法を用いた形状測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る位置測定装置は、支持部材と、該支持部材に上端部が固定され自由状態で垂直配置された光ファイバーと、該光ファイバーの下端部に設けられた探触子と、前記光ファイバーの上下方向中間位置にあって該光ファイバーの測定対象物への接触に伴う撓みを検知する光学振れ検知機構と、前記測定対象物を載せてX軸、Y軸、Z軸方向に該測定対象物を移動させるXYZステージと、前記光学振れ検知機構及び前記XYZステージに連結される制御部とを有する位置測定装置であって、
前記光ファイバーは、該光ファイバーを揺らす振動手段を介して前記支持部材に取付けられ、前記探触子が前記XYZテーブルに載った前記測定対象物に当接した場合の前記光ファイバーの撓み量を前記光学振れ検知機構で検知し、前記測定対象物の特定部位の座標を検知している。
【0008】
第1の発明に係る位置測定装置において、前記振動手段は、前記光ファイバーを横方向、縦方向、又は縦横方向に振動させることが好ましい。ここで、横方向及び縦方向は、XYZステージのX方向及びY方向と一致させる必要はないが、一致させると信号処理が容易となる。
【0009】
第1の発明に係る位置測定装置において、前記光学振れ検知機構は、平面視して前記光ファイバーに対して交差する方向からレーザ光を照射する第1、第2のレーザ光照射手段と、前記光ファイバーを中央にして、前記第1、第2のレーザ光照射手段にそれぞれ対向して配置された第1、第2の受光部を備えた第1、第2のレーザ光受光手段とを有することが好ましい。
【0010】
第1の発明に係る位置測定装置において、前記第1、第2のレーザ光照射手段からのレーザ光は直交状態で前記光ファイバーに照射されていることが好ましい。
【0011】
この場合、前記第1、第2の受光部にはそれぞれ2分割型あるいは4分割型光半導体が使用され、前記撓み量は、前記第1、第2の受光部で受光したレーザ光の各光受光センサの受光量の差から検知されることが好ましい。
【0012】
第1の発明に係る位置測定装置において、前記振動手段は振動信号を生成するファンクションジェネレータを備え、前記第1、第2のレーザ光受光手段は、前記第1、第2の受光部から出力される検出信号を、前記振動信号(場合によってはレーザ変調信号)を参照信号として検出するロックインアンプを備えていることが好ましい。
ここで、レーザ変調信号とは高周波でレーザ光に変調をかけることをいい、これによって、振動手段無しで、対象物の位置測定が可能となる。
【0013】
第1の発明に係る位置測定装置において、前記探触子の表面には、撥水層が形成されていることが好ましい。
また、第1の発明に係る位置測定装置において、前記支持部材は透明材料で形成されていることが好ましい。
そして、第1の発明に係る位置測定装置において、前記探触子と前記測定対象物との相対位置を観察する撮像手段を有していることが好ましい。
【0014】
前記目的に沿う第2の発明に係る形状測定装置は、第1の発明に係る位置測定装置を用い、前記測定対象物の複数の特定部位の座標を検知して、該測定対象物の形状を特定する。
【0015】
前記目的に沿う第3の発明に係る位置測定方法は、支持部材に上端部が振動手段を介して固定され、下端部に探触子が設けられた光ファイバーを自由状態で垂直配置し、前記光ファイバーの上下方向中間位置に該光ファイバーの撓み量(軸振れ)を検知する光学振れ検知機構を設け、X軸、Y軸、Z軸方向に移動させるXYZステージに載せた測定対象物を前記探触子に向けて移動させ、前記振動手段によって振動させた前記光ファイバーの振動振幅変化量及び/又は受光部から出力される検出信号と振動信号の位相差の変化量(位相変化量)から前記測定対象物が前記探触子に当接したとを検知して前記測定対象物の特定位置の座標を検知している。
【0016】
前記目的に沿う第4の発明に係る形状測定方法は、第3の発明に係る位置測定方法を用い、前記測定対象物の特定位置を複数箇所検知するか、或いは前記振動振幅変化量及び/又は前記位相変化量が一定範囲に維持するようにして、前記XYZステージを移動させて、前記測定対象物の形状を特定する。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明に係る位置測定装置、第2の発明に係る形状測定装置、第3の発明に係る位置測定方法、及び第4の発明にかかる形状測定方法においては、測定対象物に当接する部分が、自由状態で垂直配置された光ファイバーの下端部に設けられた探触子からなる簡単な構成のため、装置の製造が容易になる。
【0018】
そして、探触子と測定対象物が当接した際の光ファイバーの撓み量を、光学振れ検知機構により非接触で検出するので、光ファイバーの弾性の影響を除去して、探触子と測定対象物との当接(接触)を検知できる。また、光ファイバーを振動することで探触子が測定対象物に付着することが防止でき、探触子と測定対象物との当接を繰返し行うことができる。
【0019】
ここで、レーザ光が光ファイバーを透過する場合、光ファイバーはロッドレンズとして作用するので、光ファイバーの撓み量(軸振れ)に伴うレーザ光の光路変化が拡大されることにより光路変化の分解能が向上し、探触子と測定対象物との当接を高精度で検知できる。また、探触子と測定対象物とが当接すると光ファイバーは容易に撓むので、光ファイバーの破損を抑制することができると共に、探触子を介して測定対象物に加わる測定力が小さくなって、測定対象物の表面に生じる損傷を防止することができる。
【0020】
第1の発明に係る位置測定装置において、振動手段を用いて、光ファイバーを横方向、縦方向、又は縦横方向に振動させる場合、探触子と測定対象物が当接した際の光ファイバーの撓み量が異なるため、測定対象物と探触子との接触方向を検出することができ、測定対象物に対する探触子の接触位置を考慮することで、測定対象物の特定部位の座標を精度よく検知することができる。
【0021】
第1の発明に係る位置測定装置において、光学振れ検知機構が、平面視して光ファイバーに対して交差する方向からレーザ光を照射する第1、第2のレーザ光照射手段と、光ファイバーを中央にして、第1、第2のレーザ光照射手段にそれぞれ対向して配置された第1、第2の受光部を備えた第1、第2のレーザ光受光手段とを有する場合、探触子と測定対象物が当接した際の光ファイバーの撓み量を効率的に検出することができる。
【0022】
第1の発明に係る位置測定装置において、第1、第2のレーザ光照射手段からのレーザ光が直交状態で光ファイバーに照射されている場合、探触子と測定対象物が当接した際の光ファイバーの撓み量及び撓んだ方向を精度よく検出することができる。
【0023】
第1の発明に係る位置測定装置において、撓み量が、第1、第2の受光部で受光したレーザ光の各光受光センサの受光量の差から検知される場合(更に、この差が一定の閾値を超えたことから撓み量が検知される場合)、撓み量の検知を自動で行うことができる。
【0024】
第1の発明に係る位置測定装置において、第1、第2の受光部にそれぞれ2分割型又は4分割型の光半導体を使用する場合、撓み量を2分割型又は4分割型の光半導体の各光半導体からの出力差の変化から容易に検出することができる。
【0025】
第1の発明に係る位置測定装置において、振動手段が振動信号を生成するファンクションジェネレータを備え、第1、第2のレーザ光受光手段が、第1、第2の受光部から出力される検出信号を、振動信号を参照信号として増幅(検出)するロックインアンプを備えている場合、撓み量に伴う第1、第2のレーザ光受光手段からの出力変化をノイズの影響を少なくして検出することができる。
【0026】
第1の発明に係る位置測定装置において、探触子の表面に、撥水層が形成されている場合、水分の影響で探触子が測定対象物に付着することを防止して、探触子と測定対象物との当接を繰返し行うことが容易になる。
【0027】
第1の発明に係る位置測定装置において、支持部材が透明材料で形成されている場合、支持部材を介して測定対象物を上方から直接観察することができ、探触子と測定対象物との位置関係を容易に把握することができる。
【0028】
第1の発明に係る位置測定装置において、探触子と測定対象物との相対位置を観察する撮像手段を有している場合、測定対象物の移動状況を容易に把握することができ、探触子と測定対象物との当接を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態に係る位置測定装置及び位置測定装置を用いた形状測定装置の説明図である。
【図2】同位置測定装置の自由状態で振動させた光ファイバーの撓み量を振れ検知手段で検知する際の説明図である。
【図3】同位置測定装置の光ファイバーに生じたX方向への撓みを光学振れ検知機構で検知する際の説明図である。
【図4】同位置測定装置の光ファイバーに生じたY方向への撓みを光学振れ検知機構で検知する際の説明図である。
【図5】(A)、(B)は、光ファイバーがX方向に変位した際の第1、第2のレーザ光受光手段の出力測定値と出力予想値との関係を示す説明図である。
【図6】探触子が小穴の内側表面に当接する前後における第2のレーザ光受光手段の出力の変化の説明図である。
【図7】(A)、(B)は、実施例1の微小径穴の形状測定方法における測定開始時、測定中の測定対象物の位置を示す説明図である。
【図8】実施例2のルビー球の形状測定方法における測定中の探触子とルビー球の位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る位置測定装置10(形状測定装置も同じ)は、支持部材14と、支持部材14に上端部が固定され自由状態で垂直配置された光ファイバー11と、光ファイバー11の下端部に設けられた探触子12とを有している。このような構成とすることで、位置測定装置10のプローブ13が構成されている。
【0031】
また、位置測定装置10は、光ファイバー11の上下方向中間位置にあって光ファイバー11の測定対象物への接触に伴う撓み量(即ち、異常撓み、光ファイバーの異常軸振れ)を検知する光学振れ検知機構15と、測定対象物の一例である小穴23が形成された部品24を載せてX軸、Y軸、Z軸方向に小穴23を移動させるXYZステージ25と、光学振れ検知機構15及びXYZステージ25に連結される制御部26とを有している。更に、位置測定装置10は、プローブ13(探触子12)と小穴23との相対位置を観察する撮像手段27を有している。ここで、小穴23の内側寸法は、例えば、1〜100μmの範囲である。以下、詳細に説明する。なお、制御部26には公知の表示部40を備えている。
【0032】
光ファイバー11は、例えば、直径が3μm、長さが2mmである。
探触子12は、例えば超硬金属、ガラス、立方晶窒化ケイ素等の高硬度材料で形成された例えば直径が5μmの球体であり、エポキシ樹脂等の接着剤を介して光ファイバー11の先端に固定されている。ここで、探触子12の表面には、例えばフッ素樹脂系の撥水層が形成されている。これによって、水分の影響で探触子12が小穴23の内側表面に付着することを防止できる。
【0033】
支持部材14は、垂直状態の光ファイバー11の上端部がエポキシ樹脂等の接着剤を介して下端面の中央部に固定される円柱形状のプローブ固定部28と、プローブ固定部28の上端部を把持する円柱形状の取付け部29とを有し、プローブ固定部28と取付け部29はいずれもガラス等の透明材料で形成されている。これにより、支持部材14を介して小穴23を上方から直接観察することができ、小穴23に対するプローブ13の位置決めを容易に行うことができる。そして、取付け部29は、XYZステージ25の上方に配置されるように、XYZステージ25を載置したフレーム(図示せず)に、図示しない保持部材を介して固定されている。このような構成とすることにより、自由状態で垂直配置される光ファイバー11の先端部に設けられた探触子12の下方に、XYZステージ25を配置することができる。
【0034】
振動手段30は、支持部材14のプローブ固定部28の側面に周方向に沿って複数(例えば、等間隔に4つ)取付けられる、例えば圧電体から構成される側振動部(振動子)30aと、プローブ固定部28の上端面に取付けられる、例えば圧電体から構成される上振動部(図示せず)と、側振動部30a及び上振動部にそれぞれ駆動用信号を入力する振動制御器31と、振動制御器31に振動信号(振動指令信号)を入力する振動信号生成器の一例であるファンクションジェネレータ32とを有している。このような構成とすることにより、光ファイバー11を任意の振動数で振動させることができる。これによって、探触子12を小穴23の内側表面に当接させた際、探触子12が小穴23の内側表面に付着することを効果的に防止できる。
【0035】
ここで、複数の側振動部30aを同期して、又はその一部を振動させることにより、光ファイバー11を三次元内で自由に振動させることができる。即ち、光ファイバー11を水平横方向、水平縦方向、上下方向のいずれか1又は2以上の方向に振動させることができる。
【0036】
光学振れ検知機構15は、平面視して光ファイバー11に対して交差する方向(例えば、直交する方向)からレーザ光を照射する第1、第2のレーザ光照射手段17、18と、光ファイバー11を中央にして、第1、第2のレーザ光照射手段17、18にそれぞれ対向して配置された第1、第2の受光部である第1、第2の2分割型光半導体19、20を備えた第1、第2のレーザ光受光手段21、22とを有している。ここで、2分割型光半導体素子の代わりに4分割型の光半導体素子あるいは他の受光素子を使用することもできる。
第1、第2のレーザ光照射手段17、18は、発光ダイオード、半導体レーザ等の発光素子を用いて構成され、対物レンズ(収束レンズ16)を用いて集光する。
【0037】
第1、第2のレーザ光受光手段21、22は、プローブ13の光ファイバー11を透過してX方向、Y方向に沿って進むレーザ光をそれぞれ受光する第1、第2の2分割型光半導体19、20と、第1、第2の2分割型光半導体19、20から出力される検出信号を用いて、プローブ13を振動させるファンクションジェネレータ32の信号(振動信号)を参照信号としロックインアンプ35、35aを用いて同期検波することで各種ノイズを取り除く。ここで、プローブ13を加振せずにレーザ光を変調することで各種信号ノイズを取り除くことも可能である。この場合、測定はプローブ13に振動を加えずに実施する。
【0038】
図2に示すように、光ファイバー11の下端部に設けられた探触子12が部品24に形成された小穴23の内側表面に接触していない場合、以下に説明する光半導体素子33a、34aからの出力値IPY1、IPY2は等しい。また、光半導体素子33、34からの出力値においても同じである。なお、図2において、Dは光ファイバー11の直径、
【0039】
光ファイバー11を加振し測定する際、光ファイバー11が振動しX軸方向に変位した場合、あるいはプローブ13を振動させずに測定しプローブ13先端が小穴23の内側表面(測定対象面)に接触し、プローブ13がX軸方向に変位した場合、第1の2分割型光半導体19の光半導体素子(光受光センサの一例)33、34からの出力値IPX1、IPX2は等しいが、第2の2分割型光半導体20の光半導体素子33a、34aからの出力値IPY1、IPY2は等しくなくなる(図3ではIPY1>IPY2)。これによりプローブ13の変位量及び変位する方向を検出できる。即ち、各光受光センサの受光量の差から測定対象物を検知できる。
【0040】
図4に示すようにY軸方向についても同様の原理で検出できる。これにより、振動させたプローブ13の振動振幅及び参照信号との位相差を求めることができる。プローブ13の先端部が測定対象面に接触すると振幅が減少し、また位相差が生じることから、プローブ13の先端部の測定対象面への接触を検出できる。また、プローブ13を振動させずに測定する場合は測定対象面への接触に伴うプローブ13の先端部変位量を検出可能である。なお、測定前の初期状態では、光ファイバー11、第1、第2のレーザ光照射手段17、18、第1、第2のレーザ光受光手段21、22を、出力値がそれぞれ等しくなるようにしておく。このような状態から、各光受光センサの受光量の差から(撓み量を検知し)測定対象物を検知できる。
【0041】
図5(A)、(B)に、光ファイバー11の直径(D)が3μm、軸長が2mmの場合における、プローブ13の先端変位量と信号変化量の実測値とシミュレーション値の関係を示す。実測値とシミュレーション値が一致していることが判る。なお、レーザ光の軸心、光ファイバー11の軸心、光半導体の軸心は直線上に配置され、好ましくは、レーザ光は、軸心に対して広がって入射するようにしている(図2参照)。
【0042】
XYZステージ25は、部品24を載置するテーブル36と、テーブル36をX方向及びY方向に独立して、例えば1nmピッチで移動させることが可能な移動機構を備えたXY方向移動手段37と、フレームに取付けられ、テーブル36をXY方向移動手段37を介して、例えば10nmピッチでZ方向に上下移動させることが可能な移動機構を備えたZ方向昇降手段38とを有している。また、XYZステージ25は、設定された移動方向、移動範囲、及び移動速度でテーブル36を移動する駆動制御部(図示せず)を有している。また、本実施の形態では測定対象物を移動させて測定しているが、プローブを移動させることで測定することも可能である。なお、高さ方向の形状を測定しない場合は、Z方向の移動を省略したXYテーブルであってもよい。
【0043】
撮像手段27は、探触子12と小穴23の位置関係を撮影するカメラ部39と、カメラ部39を操作する図示しない操作部を有し、カメラ部39はXYZステージ25を載置したフレームに、図示しない支持部材を介して取付けられ、操作部はフレームに載置されている。
【0044】
続いて、本発明の一実施の形態に係る位置測定装置10を用いた位置(形状)測定方法について説明する。
先ず、上端部が支持部材14に固定され、下端部に探触子12が設けられた光ファイバー11を自由状態で垂直配置する。そして、ファンクションジェネレータ32から出力される振動信号に基づいて振動制御器31から駆動用信号を側振動部30aに入力して光ファイバー11を自由状態で振動する。次いで、自由状態で振動している光ファイバー11の上下方向中間位置の外側に設けた第1、第2のレーザ光照射手段17、18から、平面視して光ファイバー11に向けて直交する方向からそれぞれ集束したレーザ光を照射し、光ファイバー11を透過したレーザ光を光ファイバー11を中央にして第1、第2のレーザ光照射手段17、18にそれぞれ対向して配置した第1、第2の2分割型光半導体19、20を備えた第1、第2のレーザ光受光手段21、22で受光する。
【0045】
前記した原理により、光ファイバー11(プローブ13)の振動振幅量及び位相を監視し、プローブ13の先端の測定対象面への接触にともなう振動振幅変化及び位相変化(撓み量となる)を検出することで測定対象面の形状を測定する。この際、変化量に閾値を設けて閾値を超える箇所(即ち、閾値となる)の座標を記録することで形状を測定する。また、このほかにも振幅や位相の変化量から形状を逆算することで形状を測定することも可能である。
【0046】
図6に、光ファイバー11の探触子12が小穴23の内側表面に接触して、光ファイバー11が例えばX方向に撓んだ場合における、接触前後の第2のレーザ光受光手段22の出力としてロックインアンプ35aから出力される出力値の振幅の変化を示す。接触前後で、第2のレーザ光受光手段22の出力値の振幅値及び位相が変化していることがわかる。
【0047】
以上説明した位置測定装置10を用いて、対象物の複数箇所の位置を測定して測定対象物の形状を検知(又は推定)する形状測定装置とすることもできる。また、第1、第2の受光部の出力値に対応する光ファイバーの撓み量を一定範囲となるようにXYZステージを動かすことによって、対象物の輪郭(形状)を測定することもできる。
【実施例】
【0048】
(実施例1)
図7(A)に示す長さが2mm、直径が3μmの光ファイバーの先端に、直径が5μmのガラス球からなる探触子を設けたプローブを、図7(B)に示すように、直径が10μm、深さが40μmとなるように部品に形成した微小径穴内に挿入して、微小径穴の形状を測定した。
測定は、テーブル上に部品を載置してXYZステージを操作し、微小径穴の穴壁に設定した複数の当接目標位置をXY面内で1μm/秒の速度で探触子に向けて順次移動し、探触子が当接する都度、光ファイバーの撓み量に伴う第1、第2のレーザ光受光手段からの出力値I(=(I+I1/2)を求め、出力値Iが予め求めておいた閾値と等しくなるときのステージ座標(XY方向の分解能1nm)をそれぞれ記録した。ここで、IはIPX1−IPX2、IはIPY1−IPY2である。
【0049】
(実施例2)
実施例1で使用したプローブを用いて、図8に示すように、直径が600μmとなるように形成したルビー球の形状を測定した。測定範囲は、X方向及びY方向に300μm、Z方向に100μmである。
測定は、テーブル上にルビー球を載置してXYZステージを操作し、プローブのXY方向位置を固定した状態で探触子に対して、Z方向から1μm/秒の速度でルビー球の球面を接近させ、探触子にルビー球が当接して光ファイバーに撓みが生じたことを第1、第2のレーザ光受光手段からの出力値Iの変化から検出し、ルビー球をZ方向に戻して出力値Iが閾値と等しくなるときのステージ座標を記録した。
【0050】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも本発明に含まれる。
【0051】
例えば、光ファイバーを振動する振動部(振動手段)として圧電体(ピエゾ素子)を使用したが、振動数範囲に応じて、モータ、電磁石、アクチュエータ等を使用することもできる。
なお、光ファイバーの振動を停止し、探触子に測定対象物の表面を当接させて測定対象物の表面に沿って移動させながら、第1、第2のレーザ光受光手段で受光する出力値を検出することにより、光ファイバーの撓み量を介して測定対象物の表面に対する探触子の位置変化を検出することができ、測定対象物の表面粗さを求めることができる。また、光ファイバーを振動させず、レーザ光を変調しその変調信号を参照信号に用いてロックイン検出することで低ノイズで測定することも可能である。
更に、光ファイバーの上端部を振動させないで、レーザー光に高周波変調(例えば、100kHz)をかけて、前記した第1、第2のレーザ光照射手段、及び第1、第2のレーザ光受光手段を用いて、プローブが測定対象物に当接するのを検知することもできる。
【符号の説明】
【0052】
10:位置測定装置、11:光ファイバー、12:探触子、13:プローブ、14:支持部材、15:光学振れ検知機構、16:集束レンズ、17:第1のレーザ光照射手段、18:第2のレーザ光照射手段、19:第1の2分割型光半導体、20:第2の2分割型光半導体、21:第1のレーザ光受光手段、22:第2のレーザ光受光手段、23:小穴、24:部品、25:XYZステージ、26:制御部、27:撮像手段、28:プローブ固定部、29:取付け部、30:振動手段、30a:側振動部(振動子)、31:振動制御器、32:ファンクションジェネレータ、33、34、33a、34a:光半導体素子、35、35a:ロックインアンプ、36:テーブル、37:XY方向移動手段、38:Z方向昇降手段、39:カメラ部、40:表示分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と、該支持部材に上端部が固定され自由状態で垂直配置された光ファイバーと、該光ファイバーの下端部に設けられた探触子と、前記光ファイバーの上下方向中間位置にあって該光ファイバーの測定対象物への接触に伴う撓みを検知する光学振れ検知機構と、前記測定対象物を載せてX軸、Y軸、Z軸方向に該測定対象物を移動させるXYZステージと、前記光学振れ検知機構及び前記XYZステージに連結される制御部とを有する位置測定装置であって、
前記光ファイバーは、該光ファイバーを揺らす振動手段を介して前記支持部材に取付けられ、前記探触子が前記XYZテーブルに載った前記測定対象物に当接した場合の前記光ファイバーの撓み量を前記光学振れ検知機構で検知し、前記測定対象物の特定部位の座標を検知することを特徴とする位置測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の位置測定装置において、前記振動手段は、前記光ファイバーを横方向、縦方向、又は縦横方向に振動させることを特徴とする位置測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の位置測定装置において、前記光学振れ検知機構は、平面視して前記光ファイバーに対して交差する方向からレーザ光を照射する第1、第2のレーザ光照射手段と、前記光ファイバーを中央にして、前記第1、第2のレーザ光照射手段にそれぞれ対向して配置された第1、第2の受光部を備えた第1、第2のレーザ光受光手段とを有することを特徴とする位置測定装置。
【請求項4】
請求項3記載の位置測定装置において、前記第1、第2のレーザ光照射手段からのレーザ光は直交状態で前記光ファイバーに照射されていることを特徴とする位置測定装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載の位置測定装置において、前記撓み量は、前記第1、第2の受光部で受光したレーザ光の各光受光センサの受光量の差から検知されることを特徴とする位置測定装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の位置測定装置において、前記第1、第2の受光部にはそれぞれ2分割型あるいは4分割型光半導体を使用することを特徴とする位置測定装置。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載の位置測定装置において、前記振動手段は振動信号を生成するファンクションジェネレータを備え、前記第1、第2のレーザ光受光手段は、前記第1、第2の受光部から出力される検出信号を、前記振動信号を参照信号として検出するロックインアンプを備えていることを特徴とする位置測定装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の位置測定装置において、前記探触子の表面には、撥水層が形成されていることを特徴とする位置測定装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の位置測定装置において、前記支持部材は透明材料で形成されていることを特徴とする位置測定装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の位置測定装置において、前記探触子と前記測定対象物との相対位置を観察する撮像手段を有していることを特徴とする位置測定装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の位置測定装置を用い、前記測定対象物の複数の特定部位の座標を検知して、該測定対象物の形状を特定することを特徴とする形状測定装置。
【請求項12】
支持部材に上端部が振動手段を介して固定され、下端部に探触子が設けられた光ファイバーを自由状態で垂直配置し、前記光ファイバーの上下方向中間位置に該光ファイバーの軸振れを検知する光学振れ検知機構を設け、
X軸、Y軸、Z軸方向に移動させるXYZステージに載せた測定対象物を前記探触子に向けて移動させ、前記振動手段によって振動させた前記光ファイバーの振動振幅変化量及び/又は位相変化量から前記測定対象物が前記探触子に当接したとを検知して前記測定対象物の特定位置の座標を検知することを特徴とする位置測定方法。
【請求項13】
請求項12記載の位置測定方法を用い、前記測定対象物の特定位置を複数箇所検知するか、或いは、前記振動振幅変化量及び/又は前記位相変化量が一定範囲に維持するようにして前記XYZステージを移動させて、前記測定対象物の形状を特定することを特徴とする形状測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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