説明

位置特定システム及び位置特定方法

【課題】通常の通信機能を持つ電話機を用い、かつ、発信者による特殊な操作を必要とせずに該電話機の位置を特定できるようにすること。
【解決手段】位置情報生成部41がスピーカ45の位置情報を生成し、位置コード決定部42が位置コード辞書を参照して、位置情報に対応する位置コードを決定し、可聴音生成部43が位置コードに対応する可聴音を生成し、スピーカ45が可聴音を出力する。電話機3が上記可聴音を含む音情報を背景音として受信し、位置特定装置2に対して送信する。緊急連絡先などに設けられた電話設備51が電話機3からの上記音情報を受信し、可聴音検出部52が音情報からスピーカ45により出力された可聴音を検出し、コード変換部53が検出された可聴音を位置コードに変換し、位置情報決定部54が位置コード辞書を参照して、位置コードに対応する位置情報を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置特定技術に関し、特に、電話機が受信した背景音に基づいて、該電話機の位置を特定する、電話通信網を利用した位置特定システム及び位置特定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
施設内にいる人が緊急連絡(例えば、110番通報、119番通報等)を行う場合、緊急連絡を受けた受信者(例えば、警察、消防署等)が迅速に対応するためには、該受信者が緊急連絡の発信者の位置を正確に特定することが必須である。しかし、発信者が日常的に不慣れな場所にいる場合には、発信者が受信者に対して自分のいる位置を正確に伝えることができない場合が多い。
そこで、従来から、GPS(Global Positioning System )機能付きの携帯電話を用いて発信者の位置を特定する技術が提案されている。例えば、下記の特許文献1に、被保護者が保持する携帯電話であって、受信したGPS信号に基づいて被保護者の位置データを得る携帯電話について記載されている。また、発信があった携帯電話から送信される発信者番号に基づいて、どの基地局のエリアから発信があったかを特定する技術が提案されている。また、発信者が特殊な操作を行って、緊急連絡用の専用端末から自分の位置情報を受信者に通知する技術が提案されている。更に、発信者が、施設内に設置された案内板に表示等されたQRコードを携帯電話を用いて読み取って案内板の位置情報を取得し、取得された案内板の位置情報を受信者に対して送信する技術が提案されている。
【特許文献1】特開2007−87136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
GPS機能付きの携帯電話を用いて発信者の位置を特定する技術では、例えば、発信者がビルの中、トンネル、地下街等にいる場合には衛星との通信を十分に行うことができず、衛星から発信者の位置情報を得ることができないという問題がある。また、上記GPS機能付きの携帯電話が取得する発信者の位置情報は、二次元の情報(平面的な情報)であって、三次元の情報(高さ情報、深度情報、奥行き情報等)でないので、該携帯電話によっては発信者の詳細な位置情報を得ることができない。
また、発信があった携帯電話から送信される発信者番号に基づいて、どの基地局のエリアから発信されたかを特定する技術では、どの基地局のエリアからの発信であったかを探知することはできるが、市街地のどのエリアから発信があったか、建物の何階から発信があったか等を特定することは困難である。また、今後のFMC(Fixed Mobile Convergence)化の進展により、単純な発信者番号からだけでは位置情報を確認することはますます困難になる。
【0004】
緊急連絡用の専用端末を用いて位置情報を受信者に通知する技術は、該専用端末を発信者が保持する必要があり、また、発信者は該専用端末の使用方法について習熟していなければならない。更に、施設内に設置された案内板に表示等されたQR(Quick Response)コードを携帯電話を用いて読み取って案内板の位置情報を取得する技術は、発信者が、QRコードが表示等された案内板の場所を判らない場合には機能しない。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明の目的は、位置情報を通知する専用の装置を用いることなく、通常の通信機能を有する電話機を用い、かつ、発信者による特殊な操作を必要とせずに該電話機の詳細な位置を特定する位置特定システム及び位置特定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
図1は、本発明のシステム構成例を示す図である。
本発明の位置特定システムは、電話機3が受信した背景音に基づいて、該電話機の位置を特定する、電話通信網を利用したシステムである。該位置特定システムは、トンネル、地下街、ビル等の施設内に設置され音情報を発生する音情報発生装置1と、施設内の電話機3から発信され、電話通信網を介して受信した上記音情報から該電話機3の位置を特定する位置特定装置2とを備える。なお、位置特定装置2は、例えば、警察や消防署等の緊急連絡先に配置される。また、電話機3は、通常の通信機能を有する電話機であり、例えば、携帯電話、固定電話、IP電話等である。
音情報発生装置1は、音情報生成手段11と1又は複数の音情報出力手段12とを備える。音情報生成手段11は、施設内のエリアの位置情報を表す可聴音を含む音情報を生成する。音情報出力手段12は、自身が位置するエリアの位置情報を表す可聴音を含む上記音情報を出力する。
警察署、消防署、防災センタなどの緊急連絡先には、音情報送受信手段21と、位置特定装置2が設けられる。位置特定装置2は、音情報送受信手段21から送られる音情報から発信者の位置を検出する位置検出手段22と、表示手段23を備える。
音情報送受信手段21は、上記電話機3から発信された音情報を電話通信網を介して受信し、対応するオペレータの音声を電話通信網を介して通話者の電話機3に送信する。
位置検出手段22は、受信された音情報に基づいて、上記電話機3の位置を検出する。表示手段23は、検出された電話機3の位置、すなわち通話者の位置を表示する。
【0006】
図2は、図1に示す本発明の位置特定システムを用いた位置特定処理を説明する図である。
まず、音情報発生装置1内の音情報生成手段11が、音情報発生装置1が設置されている施設10内の各エリア(例えば、AAショッピングセンターの地下2階のCエリア等)の位置情報を生成する(図2の#1を参照)。音情報生成手段11が、音情報発生装置1内の図示を省略する位置コード辞書を参照して、上記生成された位置情報に対応する位置コードを決定する(図2の#2を参照)。位置コード辞書は、図4を参照して後述するように、位置情報と位置コードとの対応情報である。そして、音情報出力手段12が、上記決定された位置コードに対応する可聴音を生成し(図2の#3を参照)、生成された可聴音を出力する(図2の#4を参照)。音情報出力手段12が、生成された可聴音を音楽やチャイム等の音(原音)と合成して合成音を生成し、生成した合成音を出力するようにしてもよい。
【0007】
次に、施設10内にいる発信者が、電話機3を用いて警察署、消防署、防災センタなどの緊急連絡先へ電話し、呼が接続されると、通話先のオペレータは、電話通話網および前記音情報送受信手段21を介して発信者と会話する。
その際、上記電話機3で、上記発信者が発生する音声とともに、上記音情報出力手段12から出力される上記可聴音が背景音として受信され、電話通話網6および音情報送受信手段21を介して、位置特定装置2に送られる。
すなわち、電話通信網6を通じて音情報送受信手段21で受信された、上記電話機3から出力された上記可聴音を含む音情報が、位置特定装置2に対して送信される(図2の#5を参照)。
位置特定装置2の位置検出手段22は、電話機3から受信した音情報から上記#3において生成された可聴音を検出し(図2の#6を参照)、該可聴音に対応する位置コードを取得する(図2の#7を参照)。位置検出手段22が、位置特定装置2内の位置コード辞書を参照して、上記取得された位置コードに対応する位置情報を検出する(図2の#8を参照)。そして、表示手段23が、検出された位置情報が示す電話機3の位置を表示する(図2の#9を参照)。
【0008】
すなわち、本発明においては、次のようにして上記課題を解決する。
(1)電話機が受信した背景音に基づいて、該電話機の位置を特定する、電話通信網を利用した位置特定システムを設ける。上記位置特定システムが、施設内に設置され、上記施設内のエリアの位置情報を表す可聴音を含む音情報を生成する音情報生成手段と、自身が位置するエリアの位置情報を表す可聴音を含む上記音情報を出力する1又は複数の音情報出力手段とを備えた音情報発生装置と、上記施設内の電話機から発信され、上記電話通信網を介して受信した上記音情報から該電話機の位置を特定する位置情報特定手段とを備える。
(2)上記音情報生成手段は、少なくとも異なった周波数を持つ複数の可聴音を合成し、上記位置情報を表す可聴音を生成する。
(3)上記位置情報を表す可聴音は、単位時間継続する複数の合成音からなり、上記音情報生成手段は、上記複数の合成音の周波数の組み合わせを選定して、上記位置情報を表す可聴音を生成する。
(4)上記位置情報は、三次元の位置情報である。
(5)電話機が受信した背景音に基づいて、該電話機の位置を特定する、電話通信網を利用した位置特定方法を用いる。上記位置特定方法が、上記施設内のエリアの位置情報を表す可聴音を含む音情報を生成し、1又は複数の音情報出力手段から、各音情報出力手段が位置するエリアの位置情報を表す可聴音を含む上記音情報を出力し、上記施設内の電話機から発信され、上記電話通信網を介して受信した上記音情報から該電話機の位置を特定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)本発明の位置特定システムは、施設内のエリアの位置情報を表す可聴音を含む音情報を出力し、施設内の電話機から発信され、電話通信網を介して受信した該音情報から該電話機の位置を特定する。
従って、本発明によれば、位置情報を通知する専用の装置を用いることなく、通常の通信機能を有する電話機を用いて該電話機の詳細な位置を特定することができる。また、本発明によれば、発信者は、自分のいる詳細な位置について知らない場合でも、特殊な操作を必要とせずに、自分の位置を緊急連絡先に知らせることができる。また、本発明によれば、緊急連絡先は、施設内を移動する発信者の位置をリアルタイムに特定することができる。その結果、該緊急連絡先は、発信者が遭遇している事態を迅速に把握して、該事態に応じた行動を実行することができる。
(2)本発明の位置特定システムは、少なくとも異なった周波数を持つ複数の可聴音を合成して、上記位置情報を表す可聴音を生成する。また、上記位置情報を表す可聴音は、単位時間継続する複数の合成音からなり、上記位置特定システムは、上記複数の合成音の周波数の組み合わせを選定して、位置情報を表す可聴音を生成する。従って、本発明によれば、位置情報を単一の可聴音によって表す場合に比べて、より多くの情報量を有する位置情報を表す可聴音を出力することが可能となる。
(3)上記位置情報は、三次元の位置情報であってもよい。従って、本発明によれば、発信者が立体的な施設内にいるときであっても、該発信者の詳細な位置を特定することができる。例えば、発信者がビルの中にいる場合に、該発信者がビルの何階にいるかを特定することができ、発信者がトンネルの中にいる場合に、トンネルの入口からどのくらいの距離の位置にいるか等を特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図3は、本発明の第1の実施の形態の構成を示す図である。
図3に示す位置特定システムは、電話機3が受信した背景音に基づいて、該電話機3の位置を特定する、電話通信網6を利用したシステムである。
背景音は、後述する位置情報を表す可聴音を含む音である。該位置特定システムは、施設10内に設置され、音情報を発生する音情報発生装置4と、施設10内の電話機3から発信され、電話通信網6および電話設備51を介して受信した上記音情報から該電話機3の位置を特定する位置特定装置5とを備える。
【0011】
音情報発生装置4は、位置情報生成部41、位置コード決定部42、可聴音生成部43、配信設備44、スピーカ45、位置コード記憶部46を備える。位置情報生成部41は、各々のスピーカ45の位置情報を生成し、位置コード生成部42に送信する。該位置情報が、三次元の位置情報であってもよい。また、位置情報生成部41は、生成した位置情報がどのスピーカ45に対応するかを示す識別情報(例えば、位置情報が生成されたスピーカ45の識別情報)を配信設備44に送信する。位置コード決定部42は、位置情報生成部41から位置情報を受信し、後述する位置コード記憶部55内の位置コード辞書を参照して、該位置情報に対応する位置コードを決定する。
可聴音生成部43は、決定された位置コードに対応する可聴音(位置情報を表す可聴音)を生成し、配信設備44に送信する。可聴音生成部43が、少なくとも異なった周波数を持つ複数の可聴音(例えば、異なった周波数と信号レベルを持つ複数の可聴音)を合成し、上記位置情報生成部41によって生成された位置情報を表す可聴音を生成するようにしてもよい。また、上記位置情報を表す可聴音が、単位時間継続する複数の合成音からなるようにしてもよく、可聴音生成部43が、上記複数の合成音の周波数の組み合わせを選定して、該位置情報を表す可聴音を生成するようにしてもよい。
【0012】
配信設備44は、可聴音生成部43から可聴音を受信すると、上述した位置情報生成部41から受信した識別情報に基づいて、該可聴音に対応する位置コードにより表される位置にあるスピーカ45を特定する。配信設備44は、上記特定されたスピーカ45に指示して、該可聴音を出力させる。スピーカ45は、配信設備44から指示を受けて可聴音を出力する。位置コード記憶部46は、位置情報と位置コードとの対応情報である位置コード辞書を記憶する。施設10内の電話機3は、発信者の操作に従って、電話通信網6を通じて位置特定装置2に対する電話通信を実行する。具体的には、電話機3は、呼が接続した後、スピーカ45から出力された可聴音を含む音情報を位置特定装置5が備える電話設備51に送信する。
【0013】
緊急連絡先には、電話設備51と位置特定装置5が設けられる。位置特定装置5は、可聴音検出部52、コード変換部53、位置情報決定部54、位置表示部55、位置コード記憶部56を備える。
電話設備51は、電話機3からの電話着信を受けて、該電話機3から送信される音情報を受信するとともに、対応するオペレータ音声を電話機3に送信する。
可聴音検出部52は、音情報発生装置4内のスピーカ45によって出力された位置情報を示す可聴音を、上記受信された音情報から検出する。コード変換部53は、音情報をコード情報に変換する公知の技術を用いて、上記検出された可聴音を該可聴音に対応する位置コードに変換する。位置情報決定部54は、後述する位置コード記憶部56内の位置コード辞書を参照して、上記変換された位置コードに対応する位置情報を決定(又は検出)する。位置表示部55は、決定された位置情報が示す位置を表示する。位置コード記憶部56は、位置情報と位置コードとの対応情報である位置コード辞書を記憶する。
【0014】
図4は、位置コード辞書のデータ構成例を示す図である。
図4では、音情報発生装置4が備える位置コード記憶部46に記憶される位置コード辞書を例にとって説明する。位置特定装置5が備える位置コード記憶部56に記憶される位置コード辞書のデータ構成は、図4に示す位置コード辞書のデータ構成と同様であるので、説明を省略する。図4に示すように、位置コード辞書は、施設10内のエリアの位置情報と該位置情報を示すコード情報である位置コード情報との対応情報からなる。施設管理者情報、施設情報、住所、詳細エリア情報(高度、深度)、詳細エリア情報(面的情報)毎に位置情報とコード情報とが対応付けられている。施設管理者情報は、施設10の管理者の識別情報である。施設情報は施設10の識別情報である。住所は施設10の住所を示す情報である。詳細エリア情報(高度、深度)は施設10内のエリアの高度情報又は深度情報(三次元情報)である。位置コード辞書が、三次元情報として奥行き情報を含むようにしてもよい。詳細エリア情報(面的情報)は該エリアの平面的情報(二次元情報)である。なお、位置コード辞書のレコード(一行分のデータ)は、例えば7バイト長である。
【0015】
図5は、音情報発生装置が備える可聴音生成部の構成の一例を示す図である。
可聴音生成部43は、セレクタ101、バッファ102、デコーダ103、音源104−1乃至104−n、レベル変換器105、ゲート106、合成器107を備える。
セレクタ101は、位置コード決定部42によって決定された位置コードから、単位長のデータを取り出して、バッファ102に記憶する。デコーダ103は、バッファ102に記憶されたデータに対応する可聴音を選択する。具体的には、デコーダ103は、レベル変換器105に制御信号を送信して音源からの可聴音の信号レベルを制御するとともに、ゲート106を開閉して、合成する可聴音を選択する。
各音源は可聴音を出力する。各音源が出力する可聴音の周波数は、それぞれ異なる。レベル変換器105は、音源から出力された可聴音の信号レベルをデコーダ103から送信された制御信号に基づいて制御する。
ゲート106は、デコーダ103からの指示によって開閉動作を行って、合成器107への送信対象となる可聴音を選択する。合成器107は、ゲート106を通じて送信された可聴音を合成して合成音を生成し、該合成音を出力する。合成器107による可聴音の合成の結果、例えば、図6に示すような、例えば、各々が単位時間(例えば20ms)の間継続する複数の合成音が、前記位置コードに対応した位置情報を表す可聴音として出力される。
可聴音の出力時間を任意に設定することにより、合成器107は任意の数の合成音を位置情報を表す可聴音として出力することができる。なお、電話回線で送信することができる周波数は3.4kHz以下であるので、施設内の共振により倍音が発生しても3.4kHz以下にならないようにするのが望ましい。従って、可聴音生成部43は、例えば上記合成音の周波数成分が2000Hz以上となるように合成する可聴音を選定する。
【0016】
図7(A),(B)は、位置コードを構成する文字を表現する複数の可聴音を示す図である。
可聴音生成部43は、図5を参照して説明したように、異なる周波数を持つ可聴音を選択するとともに、各々の可聴音の信号レベルを制御して、位置情報を表す可聴音(合成音)を生成する。すなわち、可聴音生成部43は、位置コード決定部42によって決定された位置コードを構成する各文字を、複数の可聴音の周波数及び信号レベルの違い(大小関係)の組合せによって表現する。この表現の単位時間は、例えば、標準的なIP電話通信網の1パケットの音声収容時間である20msとする。可聴音生成部43は、位置コードを構成する文字のうちの一文字を表現する複数の可聴音を選択して合成して、該一文字を表現する合成音を生成し、生成した合成音を上記単位時間の間継続させる。
可聴音生成部43は、位置コードを構成する各文字について、各文字を表現する合成音を生成し、生成された各々の合成音を所定数連結することで、位置情報を表す可聴音を生成する。
【0017】
位置コードを構成する文字の、複数の可聴音の組合せによる表現について以下に説明する。一つの文字を、異なる3つの周波数f1、f2、f3と、各々の周波数に対応する可聴音の信号レベルの違いの組合せによって表現する場合、ある文字Cは、C(f1,f2,f3)と表すことができる。信号レベルについては、f1>f2>f3である。例えば、C(f2,f1,f3)とC(f1,f2,f3)とは、周波数の組合せは同じであるが、信号レベルの違いの組合せが異なっているため、別の文字を表す。可聴音生成部43は、各文字を表現する周波数及び信号レベルの組合せを構成する各々の可聴音を合成して、各文字を表現する合成音を生成する。具体的には、図7(A)に示す3個の可聴音の合成音が、C(f2,f1,f3)を表現する合成音であり、図7(B)に示す3個の可聴音の合成音が、C(f1,f2,f3)を表現する合成音である。
【0018】
上述した位置コードを構成する各文字を表現する合成音の連結について、図8を参照して説明する。可聴音生成部43は、位置コードを構成する文字C(Fa,Fb,Fc)を表現する周波数Fa、Fb、Fcのそれぞれに対応する可聴音(可聴音300、301、302)を合成して、該文字Cを表現する合成音303を生成する。なお信号レベルについては、Fa>Fb>Fcであり、周波数の大きさについては、Fc>Fa>Fbである。可聴音生成部43は、合成音303を例えば20msという単位時間継続させる。可聴音生成部43は、位置コードを構成する他の文字についても、上記と同様に合成音を生成する。そして、生成された各々の合成音を例えば50個連結して、1秒間継続する可聴音を生成する。該1秒間継続する可聴音が、位置コードを構成する全ての文字を表現する可聴音(位置情報を表す可聴音)である。
可聴音生成部43が、PB(プッシュボタン)選択信号のように12種類の異なる周波数から3個の異なる周波数を選定し、該選定された周波数と信号レベルの違いの組合せによって、位置コードを構成する各文字を表現するようにすれば、1320種類の文字を表現することができる。これは、単位時間では2進数で10.3ビット長相当の表現能力を持つ。可聴音の出力時間が1秒間に設定されていれば、単位時間50個分であるため、2進数換算で515ビット(64バイト)長の表現能力を持つ。
なお、連結する合成音の数を増加するか、又は、選定対象の周波数の候補の数を増加することによって、可聴音生成部43が生成する位置情報を表す可聴音の情報量を更に増加させることができる。例えば、30個の選定対象の周波数の候補から3個の異なる周波数を選定する場合には、選定される周波数の組合せは2460通りとなり、単位時間内に14.5ビットの表現能力を持つ。可聴音の出力時間が1秒間に設定されていれば、728ビット(91バイト)長の情報量を有する可聴音を生成することができる。
【0019】
図9は、音情報発生装置による音情報発生処理フローの一例を示す図である。
まず、位置情報生成部41が、スピーカ45の位置情報を生成し(ステップS1)、該スピーカ45の識別情報を配信設備44に送信する(ステップS2)。次に、位置コード決定部42が、位置コード記憶部55内の位置コード辞書を参照して、上記生成された位置情報に対応する位置コードを決定する(ステップS3)。可聴音生成部43が、決定された位置コードに対応する可聴音を生成する(ステップS4)。そして、配信設備44が、ステップS2において配信設備44に対して送信された識別情報が示すスピーカ45に指示して、ステップS4において生成された可聴音を出力させる(ステップS5)。
【0020】
図10は、位置特定装置による位置特定処理フローの一例を示す図である。
電話設備51が、電話機3からの電話着信を受けて、該電話機3から音情報を受信する(ステップS11)。可聴音検出部52が、受信された音情報から、スピーカ45によって出力された可聴音を検出したかを判断する(ステップS12)。可聴音検出部52が、受信された音情報から、スピーカ45によって出力された可聴音を検出していないと判断した場合はステップS16に進む。可聴音検出部52が、受信された音情報から、スピーカ45によって出力された可聴音を検出したと判断した場合は、コード変換部53が、検出された可聴音を位置コードに変換する(ステップS13)。そして、位置情報決定部54が、位置コード辞書を参照して、上記変換された位置コードに対応する位置情報を決定する(ステップS14)。位置表示部55が、決定された位置情報が示す位置を表示する(ステップS15)。電話設備51が、電話機3との通話が終了したかを判断する(ステップS16)。電話設備51が、電話機3との通話が終了していないと判断した場合は、上記ステップS12に戻る。電話設備51が、電話機3との通話が終了したと判断した場合は、処理を終了する。
【0021】
図11は、施設内を移動する発信者の位置を特定する処理の一例を説明する図である。 図11では、発信者が、携帯電話で緊急連絡先などのオペレータと通話しながら、図11の矢印で示す経路に沿って、施設10における地下3階のエリア2(エリア2−B3F)のA点から地下2階のエリア2(エリア2−B2F)のB点を経由して地下2階のエリア1(エリア1−B2F)のC点に移動する場合を例にとって説明する。
また、音情報発生装置4が備えるスピーカ45は、施設10の各エリアに配置されているものとする。
【0022】
発信者が、図11に示すA点からB点に移動すると、音情報発生装置4は、エリア2−B2Fに対応する位置コードを決定し、該位置コードに対応する可聴音をエリア2−B2Fに設置されているスピーカ45から出力する。緊急連絡先等に設けられた位置特定装置5は、上記出力された可聴音を携帯電話を通じて受信し、受信した可聴音に対応する位置を特定し、表示する。
次に、発信者が、B点からC点に移動すると、音情報発生装置4は、エリア1−B2Fに対応する位置コードを決定し、該位置コードに対応する可聴音をエリア1−B2Fに設置されているスピーカ45から出力する。位置特定装置5は、上記出力された可聴音を携帯電話を通じて受信し、受信した可聴音に対応する位置を特定し、表示する。このように、本発明によれば、発信者は、例えばGPSシステムの電波が届かない施設10内や、立体的な施設10内を移動中であっても、特別な操作を必要とせずに自分の位置を位置特定装置5が配置された緊急連絡先に知らせることができる。
また、該緊急連絡先は、施設10内を移動する発信者の位置をリアルタイムに特定することができる。その結果、該緊急連絡先は、発信者が遭遇している事態を迅速に把握して、該事態に応じた行動(例えば、発信者の救助や発信者に対する最適な避難経路の指示等)を実行することができる。
【0023】
図12は、本発明の第2の実施の形態の構成を示す図である。
図12に示す位置特定システムが備える処理部のうち、図3に示す位置特定システムが備える処理部と同符号の処理部は、図3に示す位置特定システムが備える処理部と同様であるので、詳細な説明は省略する。
図12に示す位置特定システムは、音情報発生装置7と位置特定装置5とを備える。音情報発生装置7は、図3に示す音情報発生装置4が備える処理部に加えて、原音生成部47と音合成部48とを備える。原音生成部47は、施設10内に出力する原音(音楽、チャイム等の音)を生成する。
音合成部48は、可聴音生成部43によって生成された可聴音と原音生成部47によって生成された原音とを合成して合成音を生成する。例えば、図13に示すように、所定のタイミング(例えば、原音201の信号レベルが所定の値以下になるタイミング)で可聴音200を原音201に対して重畳することで可聴音200と原音201とを合成し、合成音を生成する。配信設備44は、音合成部48によって生成された合成音をスピーカ45から出力する。
【0024】
電話機3は、上記出力された合成音を含む音情報を電話通信網6を通じて位置特定装置5の電話設備51に送信する。そして、可聴音検出部52が、電話設備51によって受信された上記音情報から、スピーカ45によって出力された可聴音を検出する。
図12を参照して説明した位置特定システムにおいては、音情報発生装置7が、位置情報を表す可聴音と原音とを合成して合成音を生成し、該合成音を電話機3を通じて位置特定装置5に対して送信する。従って、緊急連絡先などのオペレータにとっては、位置情報を表す可聴音と原音とを合成しない場合に比べて、電話機3から送信される音情報を聴いた場合の耳障り感が緩和される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のシステム構成例を示す図である。
【図2】本発明の位置特定システムを用いた位置特定処理を説明する図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の構成を示す図である。
【図4】位置コード辞書のデータ構成例を示す図である。
【図5】音情報発生装置が備える可聴音生成部の構成の一例を示す図である。
【図6】可聴音生成部によって生成される合成音を示す図である。
【図7】位置コードを構成する文字を表現する複数の可聴音を示す図である。
【図8】位置コードを構成する各文字を表現する合成音の連結を説明する図である。
【図9】音情報発生装置による音情報発生処理フローの一例を示す図である。
【図10】位置特定装置による位置特定処理フローの一例を示す図である。
【図11】施設内を移動する発信者の位置を特定する処理の一例を説明する図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態の構成を示す図である。
【図13】可聴音と原音との合成を説明する図である。
【符号の説明】
【0026】
1、4、7 音情報発生装置
2、5 位置特定装置
3 電話機
10 施設
11 音情報生成手段
12 音情報出力手段
21 音情報送受信手段
22 位置検出手段
23 表示手段
41 位置情報生成部
42 位置コード決定部
43 可聴音生成部
44 配信設備
45 スピーカ
46 位置コード記憶部
47 原音生成部
48 音合成部
51 電話設備
52 可聴音検出部
53 コード変換部
54 位置情報決定部
55 位置表示部
56 位置コード記憶部
101 セレクタ
102 バッファ
103 デコーダ
104−1、104−2、104−n 音源
105 レベル変換器
106 ゲート
107 合成器
200、300、301、302 可聴音
201 原音
303 合成音

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話機が受信した背景音に基づいて、該電話機の位置を特定する、電話通信網を利用した位置特定システムであって、
施設内に設置され、上記施設内のエリアの位置情報を表す可聴音を含む音情報を生成する音情報生成手段と、自身が位置するエリアの位置情報を表す可聴音を含む上記音情報を出力する1又は複数の音情報出力手段とを備えた音情報発生装置と、
上記施設内の電話機から発信され、上記電話通信網を介して受信した上記音情報から該電話機の位置を特定する位置特定装置とを備える
ことを特徴とする位置特定システム。
【請求項2】
上記音情報生成手段は、少なくとも異なった周波数を持つ複数の可聴音を合成し、上記位置情報を表す可聴音を生成する
ことを特徴とする位置特定システム。
【請求項3】
上記位置情報を表す可聴音は、単位時間継続する複数の合成音からなり、
上記音情報生成手段は、上記複数の合成音の周波数の組み合わせを選定して、上記位置情報を表す可聴音を生成する
ことを特徴とする位置特定システム。
【請求項4】
上記位置情報は、三次元の位置情報である
ことを特徴とする請求項1、2、又は請求項3に記載の位置特定システム。
【請求項5】
電話機が受信した背景音に基づいて、該電話機の位置を特定する、電話通信網を利用した位置特定方法であって、
上記施設内のエリアの位置情報を表す可聴音を含む音情報を生成し、1又は複数の音情報出力手段から、各音情報出力手段が位置するエリアの位置情報を表す可聴音を含む上記音情報を出力し、
上記施設内の電話機から発信され、上記電話通信網を介して受信した上記音情報から該電話機の位置を特定する
ことを特徴とする位置特定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−159390(P2009−159390A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336226(P2007−336226)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(598057291)株式会社富士通エフサス (147)
【Fターム(参考)】