説明

低ゲル含有量及び強化されたガス退色を有するポリマー

立体障害フェノール及びホスファイトを含むポリマー安定剤組成物であって、低ゲル含有量及び強化されたガス退色に対する耐性をもたらす。上記安定剤組成物は、ポリエチレンホモポリマー及びポリエチレンコポリマー、例えばメタロセン触媒から生成された直鎖状低密度ポリエチレンを安定化するために特に有用である。立体障害フェノールは、1,3,5−トリス−(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス−(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、及び1,3,5−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼンからなる群から選択される。ホスファイトは、好ましくは、2種以上のアルキル化アリールホスファイトを含む液体ホスファイト組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その開示が、参照により本明細書に完全に組み込まれている2009年10月23日に出願された米国特許出願第12/604,981号からの優先権を主張する。
【0002】
本発明は、低ゲル含有量及び強化されたガス退色(gas−fading)を示すポリマー用の新規な安定剤の組成物に関する。より具体的には、該安定剤は、ポリオレフィンを安定化させるための立体障害フェノール及びホスファイトを含む。
【背景技術】
【0003】
ポリマー、例えば、ポリオレフィン、ポリビニルハライド、ポリエステル、ポリアミド、ニトリルポリマー、スチレン系ポリマー及びアクリレートポリマー、及びブタジエンゴム、ポリイソプレンなどのエラストマー材料などは、本質的に不安定で熱酸化的分解の影響を受けやすい。従って、これらのポリマー及びエラストマー材料は、溶融加工中にしばしば安定化を必要とする。例示的な安定剤には、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、有機ホスファイト、抗酸化物質、脂肪酸の金属塩、ヒドロタルサイト、金属酸化物、エポキシ化油、ヒドロキシルアミン、アミンオキシド、ラクトン、及びチオ相乗剤(thiosynergist)が含まれる。
【0004】
有機ホスファイトは、溶融加工、成形加工(fabrication)、及び長期の使用中に退色を防ぐ抗酸化物質としてポリオレフィンの安定化に広く使用される。様々なポリエチレン樹脂の安定化方策は、タイプ(HDPE、LDPE、LLDPE、等)、製造プロセス(気相、スラリー、溶液)、及びポリマー生成において使用される触媒(チーグラー・ナッタ、クロム、メタロセン、等)によって決まる。多くの場合、ホスファイトのヒンダードフェノール及び中和剤パッケージに対するモル比は、ポリマーグレードによって決まる。立体障害フェノール及びホスファイトの様々なモル比の組合せを、ポリエチレン用の安定剤システムとして使用することは、通常の商習慣である。一般的に使用される立体障害フェノールには、テトラキスメチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシルヒドロシンナメート)メタン、オクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ビス(オクタデシル)ヒドロキシルアミン、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸及び2,6−ジ−t−ブチル−4−エチル−フェノールが含まれる。一般的に使用されるホスファイトには、Alkanox(商標)240(Chemtura Corporation、Middlebury、Connecticut、米国)、Irgafos(商標)168(Ciba Specialty Chemicals Corporation、Tarrytown、New York、米国)、又はDoverphos(商標)S−480(Dover Chemical Corp、Dover、Ohio、米国)の商品名で市販されているトリス−ノニルフェニルホスファイト(TNPP)及びトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトが含まれる。
【0005】
TNPP及びトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトは、オクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートと共に、ポリエチレンの溶融安定化のために一般的に使用される。しかし、ホスファイトのオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとの組合せは、ポリエチレン樹脂に混合された場合、不十分なガス退色及び高いゲル含有量を示す。不十分なガス退色及び高いゲル含有量のために、これらの安定剤は、フィルム用途に不向きである。理論に束縛されることなく、ゲルは、反応器及び/又は押出機中で形成された高分子量ポリマー又はおおまかに架橋されたポリマーの小領域であり、一旦形成されると取り除くのが困難であると考えられる。ゲルは、低密度ポリエチレン及びポリ塩化ビニルにとって共通の問題であり、フィルム用途においてひずみを生じることがある。米国特許第4,540,538号に記載されたように、ゲル化防止剤、例えばポリエチレングリコール/オキシド又はエトキシル化直鎖アルコールを添加することによりゲル含有量を減少させるために、いくつかの先行する試みがなされた。
【0006】
従って、ポリマー樹脂及び組成物を、分解に対して有効に安定化し得る、安全で有効な安定剤のニーズが存在する。
【発明の概要】
【0007】
一実施形態において、本発明は、(1)立体障害フェノール;及び(2)以下:(i)トリス(ジアルキルアリール)ホスファイト、(ii)トリス(モノアルキルアリール)ホスファイト、(iii)ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリールホスファイト、及び(iv)ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリールホスファイトの少なくとも2種の異なるホスファイトを含むホスファイト組成物を含むポリオレフィン用安定剤組成物を対象とし;ここで、該ホスファイト組成物は、周囲条件で液体である。
【0008】
上記立体障害フェノールは、1,3,5−トリス−(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス−(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、及び1,3,5−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼンからなる群から選択することができる。
【0009】
上記ホスファイト組成物は、ホスファイト組成物の総重量に対して、0.1から20重量%までのトリス(ジアルキルアリール)ホスファイトを含むことができ;20から70重量%までのトリス(モノアルキルアリール)ホスファイト;2から20重量%までのビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリールホスファイト、及び15から60重量%までのビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリールホスファイトを含むことができる。
【0010】
別の実施形態において、a)ポリエチレンホモポリマー、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、及びポリプロピレンコポリマーからなる群から選択されるポリオレフィン;並びにb)有効量の安定剤組成物を含む物品が提供される。上記安定剤組成物は、(1)立体障害フェノール;並びに(2)以下:(i)トリス(ジアルキルアリール)ホスファイト、(ii)トリス(モノアルキルアリール)ホスファイト、(iii)ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリールホスファイト、及び(iv)ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリールホスファイトの少なくとも2種の異なるホスファイトを含むホスファイト組成物を含み;ここで、上記ホスファイト組成物は、周囲条件で液体である。好ましくは、上記ポリオレフィンは、メタロセン触媒から生成された直鎖状低密度ポリエチレンである。
【0011】
このような実施形態において、上記物品は、ゲルのサイズが200μmから400μmまでであり、1平方メートルのフィルム当たり0.01から0.5ゲル(ゲル/m)のゲル含有量を有し得る。好ましくは、上記組成物は、検出可能な400μmより大きいサイズのゲル形成を有さない。好ましくは、上記組成物は、実質的にゲル化防止剤を含まない。さらに、上記物品は、7日間では0未満の、18日間では0.7未満の、25日間では1.1未満の、33日間では1.7未満の又は41日間では2.5未満の、NOへの曝露後の黄色度指数を有することができる。
【0012】
一実施形態において、上記物品は、物品の総重量に対して250から5000wppmまでの安定剤組成物を含む。立体障害フェノールのホスファイト組成物に対する重量比は、1:1から1:20までであってよく、一実施形態において、1:10から1:20まであってよい。
【0013】
さらに別の実施形態において、(a)ポリエチレンホモポリマー、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、及びポリプロピレンコポリマーからなる群から選択されるポリオレフィン;並びに(b)有効量の安定剤組成物を含む物品が提供される。上記安定剤組成物は、(1)立体障害フェノール;並びに(2)トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニル−フェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスホナイト又はそれらの混合物からなる群から選択されるホスファイトを含む。この態様において、上記物品は、ゲルのサイズが200から400μmまでであり、物品の1平方メートル当たり0.01から0.5ゲル(ゲル/m)までのゲル含有量を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
序文
本発明は、立体障害フェノール及びホスファイト、好ましくは液体ホスファイトを含む、有効量の安定剤組成物を使用するポリマーの安定化に関する。上記安定剤組成物は、ポリオレフィン、例えばポリエチレン及びポリプロピレンを安定化するために特に有用である。有効量の本発明の立体障害フェノール及びホスファイトは、NOに曝露された場合に、ポリオレフィンの色の安定性の増加に寄与する。予想外で驚くべきことに、有効量の立体障害フェノール及びホスファイトは、さらにポリオレフィンのゲル含有量を減少する。これらの改善された性質は、ポリオレフィンから生成された物品における改善された性能をもたらす。
【0015】
A.ポリマー
本発明の安定剤組成物で安定化されるポリマーは、ポリエチレンホモポリマー若しくはコポリマー、又はポリプロピレンホモポリマー若しくはコポリマーであり得る。本発明が、ポリエチレン及びポリプロピレンに関して論じられたが、当技術分野で知られている他のポリマー、例えばポリオレフィンホモポリマー及びコポリマー、熱可塑性プラスチック、ゴム、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアルキレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、スチレン系ポリマー及びコポリマー、ポリカーボネート、アクリルポリマー、ポリアミド、ポリアセタール、ハロゲン化物含有ポリマー、及び生分解性ポリマーは、本発明の実施形態によって意図されている。
【0016】
一実施形態において、上記ポリマーは、一般的にエチレンベースのポリマーであるが、0.86g/ccから0.97g/ccまでの範囲の、好ましくは0.88g/ccから0.965g/ccまでの範囲の、より好ましくは0.900g/ccから0.96g/ccまでの範囲の、一層より好ましくは0.905g/ccから0.95g/ccまでの範囲の、さらに一層より好ましくは0.910g/ccから0.940g/ccまでの範囲の密度を、最も好ましくは0.915g/ccより大きい密度を有する。本発明のポリマーは、狭い、広い又は二峰性の分子量分布、約1.5から約15、特に約2から約10、より好ましくは約2.2から約8、一層より好ましくは約2.2から約5、最も好ましくは約2.5から約4の重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)を有し得る。一実施形態において、本発明のポリマーは、目的に応じた分子量分布を有し得る。Mw/Mnの比は、当技術分野で周知のゲル透過クロマトグラフィー技術によって測定することができる。一実施形態において、本発明のポリマーは、0.01から1000g毎10分、より好ましくは約0.01から約100g毎10分、一層より好ましくは約0.1から約50g毎10分、最も好ましくは約0.1から約10g毎10分の範囲のASTM−D−1238−Eで測定されたメルトインデックス(MI)又は(I2)を有する。一実施形態において、本発明のポリマーは、10から25まで、例えば、15から5までのメルトインデックス比(I21/I2)(I21は、ASTM−D−1238−Fで測定される)を有する。好ましい一実施形態において、本発明のポリマーは、好ましくは25より大きい、より好ましくは30より大きい、一層より好ましくは40より大きい、さらに一層より好ましくは50より大きい、最も好ましくは65より大きいメルトインデックス比(I21/I2)(I21は、ASTM−D−1238−Fで測定される)を有する。
【0017】
限定されないポリマーには、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン及び3個以上の炭素原子、例えば、3〜12個の炭素原子を有するオレフィンのコポリマーなどのエチレンベースのポリマー、並びにアタクチック、アイソタクチック、及びシンジオタクチックポリプロピレンポリマーを含むポリプロピレンポリマー、及びプロピレンランダム、ブロック又は耐衝撃性コポリマーなどのプロピレンコポリマーなどのプロピレンベースのポリマーが含まれる。さらに、ポリエチレンのポリマーには、高密度ポリエチレン(HDPE)が含まれ、ポリエチレンを含むポリプロピレンなどの他のオレフィンとの混合物(例えば、PP/HDPE、PP/LDPE)及び異なるタイプのポリエチレンの混合物(例えば、LDPE/HDPE)も使用することができる。同様に有用であるのは、モノオレフィン及びジオレフィンの互いの又は他のビニルモノマーとのコポリマー、例えば、エチレン/プロピレン、LLDPE及びLDPEとのその混合物、プロピレン/ブテン−l、エチレン/ヘキセン、エチレン/エチルペンテン、エチレン/ヘプテン、エチレン/オクテン、プロピレン/イソブチレン、エチレン/ブタン−l、プロピレン/ブタジエン、エチレン/アルキルアクリレート、エチレン/アルキルメタクリレート、エチレン/ビニルアセテート(EVA)又はエチレン/アクリル酸コポリマー(EAA)及びそれらの塩(アイオノマー)及びエチレンのプロピレン及びジエン、例えばヘキサジエン、ジシクロペンタジエン又はエチリデン−ノルボルネンとのターポリマー;同様にこのようなコポリマーの混合物及び上述のポリマーとのそれらの混合物、例えばポリプロピレン/エチレンプロピレン−コポリマー、LDPE/EVA、LDPE/EAA、LLDPE/EVA、及びLLDPE/EAAである。当業者は容易に理解されるように、本明細書で使用されるポリエチレンポリマー、例えば、LLDPEは、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン及び1−オクテンコモノマーなどの様々なコモノマーを含有し得る。
【0018】
本発明の安定剤組成物と組み合わせて使用されるポリマーは、フリーラジカル重合又は、例えば、チーグラー・ナッタ、シングルサイト、メタロセン、フィリップス型(クロムベース)触媒、TNZ(DuPont)又はスタンダードオイルインディアナ(Standard Oil Indiana)を含む様々な触媒を使用し、溶液、高圧、スラリー及び気相を含む様々な重合プロセスを使用して生成される。ポリエチレン及び/又はポリプロピレンポリマーは、場合によって、例えば、MgCl、クロム塩及びそれらの錯体、シリカ、シリカ−アルミナなどの担体上のチーグラー・ナッタ触媒の存在下の、例えばオレフィンの重合によって生成することができる。オレフィンポリマーは、クロム触媒又はシングルサイト触媒、例えば、Ti及びZrなどの金属のシクロペンタジエン錯体などのメタロセン触媒を利用して生成することもできる。例示的なメタロセン触媒は、それらの全体の内容及び開示が参照により組み込まれている、米国特許第4,827,064号、同第4,892,851号、同第4,912,272号、同第5,012,020号、同第5,126,303号、同第5,296,434号、同第5,324,800号、同第5,731,254号、同第6,706,828号、及び同第6,858,767号に記載されている。
【0019】
別の実施形態において、ポリエチレン又はポリプロピレンポリマーは、生分解性ポリマー又はたい肥にできるポリマー(compostable polymer)を含むことができる。生分解性ポリマーは、分解が、自然発生的な微生物、例えば細菌、菌類及び藻類の作用に起因するものである。たい肥にできるポリマーは、たい肥化中に生物学的なプロセスによる分解を受けて、CO、水、無機化合物及びバイオマスを、他のたい肥にできる材料に一致する速度で生ずる。一般的に、生分解性又はたい肥にできるポリマーは、植物供給源に由来し、合成的に生成される。生分解性又はたい肥にできるポリマーの例には、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、及びそれらのコポリマーが含まれる。生分解性又はたい肥にできるポリマーは、植物のデンプン及び従来の石油に基づくポリマーのブレンドからも導くことができる。例えば、生分解性ポリマーは、ポリオレフィンとブレンドすることができる。
【0020】
いくつかのポリエチレン及びポリプロピレンは、本発明の範囲内に記載されているが、一実施形態において、ポリマーは、0.88から0.94g/ccまで、例えば、0.9から9.4g/ccまで又は0.91から9.4g/ccまでの密度及び0.3から150g毎10分まで、例えば、0.6から15g毎10分まで又は0.8から3g毎10分までのメルト・フロー・インデックスを有するエチレン−ヘキセン又はエチレン−オクテンコポリマーである直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)である。一実施形態において、LLDPEは、メタロセン触媒を用いて生成される(mLLDPE)。一実施形態において、LLDPEは、2.8から8までの広い分子量分布を有する。
【0021】
B.安定剤組成物
本発明の安定剤組成物は、一般的に立体障害フェノール及びホスファイト、好ましくは液体ホスファイトを含む。先に論じられたように、安定化量又は有効量の本発明の立体障害フェノール及び液体ホスファイト組成物を、様々な種類のポリマー樹脂の安定剤として使用することができる。本明細書で使用される「安定化量」及び「有効量」は、本発明の安定剤組成物を含有するポリマー樹脂が、本発明の安定剤組成物を含まない類似のポリマー組成物と比較して、その物理的特性又は色特性のいずれかにおいて改善された安定性を示す場合を意味する。改善された安定性の例には、例えば、溶融加工、耐候試験、及び/又は大気、暑さ、光、及び/又は他の元素への長期野外曝露からの、例えば、分子量低下、退色、などに対する改善された安定化が含まれる。一例を挙げれば、改善された安定性は、上記安定剤添加剤を含まないポリマー又は従来の安定剤を含むポリマーと比べた場合、黄変度指数(YI)によって測定されるより低い初期色及び/又は溶融ポリマーのメルトフローレイト又は例えば、初期黄変度指数によって、若しくは黄変及び変色に対する抵抗性によって測定される耐候試験に対する追加の抵抗性の一つ又は両方の形態で得られる。一例を挙げれば、改善された安定性は、低ゲル含有量、黒点(black spec)のないこと、及び/又は改善されたスクリーンパック目詰まりによって測定される。
【0022】
一実施形態において、上記安定剤組成物は、250から5000wppmまで、例えば、300から3000wppmまで又は800から2600wppmまでの量でポリマーに添加される。立体障害フェノールのホスファイトに対する重量比は、1:1から1:20まで、例えば、1:3から1:15まで又は1:5から1:12までであり得る。従来の安定剤組成物は、より多くのフェノール又は当量のフェノール及びホスファイトを使用するが、本発明の一実施形態において、立体障害フェノールの量は、重量比が1:10から1:20まで、例えば、1:12から1:18まで又は1:12から1:15までとなるように減少させることができる。
【0023】
1.立体障害フェノール
本発明に使用される立体障害フェノールは、一般的に2個以上のヒドロキシル基、例えば、3個以上のヒドロキシル基を有する。一実施形態において、立体障害フェノールは、化合物Iに示された構造を有する。
【化1】

【0024】
別の実施形態において、立体障害フェノールは、化合物IIに示された構造を有する。
【化2】

【0025】
式中:xは、独立に0、1、2、又は3であり;R、R、及びRは、独立に水素、C〜C12アルキル、及びC〜C10シクロアルキルであり、但し、R、R、及びRの少なくとも一つは、水素ではなく;Rは、独立にC〜Cアルキルである。好ましくは、xは、0又は1のいずれかである。一実施形態において、R、R、及びRの少なくとも一つは、分枝C〜Cアルキル、例えば、分枝ブチル基又は分枝ペンチル基である。一実施形態において、R、R、及びRの少なくとも一つは、メチルである。
【0026】
化合物Iの好適な立体障害フェノールには、1,3,5−トリス−(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス−(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、Anox(商標)IC−14(Chemtura)として市販されており、同様にIrganox(商標)3114(Ciba)として市販されている1,3,5−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、及びLowinox(商標)1790(Chemtura)として市販されており、同様にCyanox(商標)1790(Cytec Industries)として市販されている1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオンが含まれる。
【0027】
化合物IIの好適な立体障害フェノールには、Anox(商標)330(Chemtura)として市販されており、同様にIrganox(商標)1330(Ciba)及びEthanox(商標)330(Albemale)として市販されている1,3,5−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼンが含まれる。
【0028】
2.ホスファイト
先に論じられた立体障害フェノール、例えば、化合物I又はIIと組み合わせることができる、いくつかの異なるタイプのホスファイト又はホスホナイトが存在する。一実施形態において、ホスファイト又はホスホナイトは、液体である。ホスファイトの性能は、リン含有量、加水分解安定性、ポリマー適合性、溶解性、及び添加濃度によって影響を受けることがある。
【0029】
a.一般的に
一実施形態において、ホスファイト又はホスホナイトは、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニル−フェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスホナイト又はそれらの混合物から選択することができる。特定の好適なホスファイト化合物には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニル−フェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、トリス(ジプロピレングリコール)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、及びそれらの混合物が含まれる。好適な市販のホスファイトには、例えば、Chemtura Corporation製のNaugalube(商標)TPP、Naugalube TPP、Alkanox(商標)240、Ultranox(商標)626、Naugard P、Weston(商標)399、Weston TNPP、Weston 430、Weston 618F、Weston 619F、Weston DPDP、Weston DPP、Weston PDDP、Weston PTP、Weston TDP、Weston TLP、Weston TPP、及びWeston TLTTP(トリラウリルトリチオホスファイト);Dover Chemical製のDoverphos(商標)4、Doverphos 4−HR、Doverphos 4−HR Plus、Doverphos HiPure 4、及びDoverphos S−9228;並びにClariant Chemicals製のHostanox PEPQが含まれる。
【0030】
b.液体ホスファイト組成物
別の好ましい実施形態において、ホスファイトは、その全体の内容及び開示が、参照により本明細書に組み込まれている同時係属米国特許出願第11/787,531号、同第12/534,000号、同第12/534,010号、同第12/534,019号、同第12/534,025号、同第12/534,035号、同第12/534,051号、及び同第12/534,043号、並びに米国特許仮出願第61/230,658号、同第61/230,654号及び同第61/230,652号に記載されているように、トリス(ジアルキルアリール)ホスファイト、トリス(モノアルキルアリール)ホスファイト、ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリールホスファイト、及びビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリールホスファイトからなる群から選択される、少なくとも2種の異なるホスファイト、例えば、少なくとも3種の異なるホスファイト、又は少なくとも4種の異なるホスファイトを含む液体ホスファイト組成物である。市販の液体ホスファイト組成物には、例えば、Chemtura Corporation製のWeston(商標)705が含まれる。
【0031】
いくつかの好ましい実施形態において、ホスファイト組成物は、式IIIの構造を有する少なくとも2種の異なるホスファイトを含む。
【化3】


(ここで、R、R及びRは、独立に選択されるアルキル化アリール基であり、ここで、該液体ホスファイト組成物は、周囲条件で液体である)「周囲条件」は、室温、例えば、25℃、及び1気圧を意味する。
【0032】
液体ホスファイト組成物のホスファイトに存在するアリール部分は、好ましくは、6から18個まで炭素原子の芳香族部分、例えば、フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラシル、ビフェニル、ターフェニル、o−クレシル、m−クレシル、p−クレシルなどであり、好ましくはフェニルである。各々の芳香族部分は、少なくとも1個のC〜C18、例えば、C〜C10、又はC〜Cアルキル基で置換されている。好ましくは、芳香族部分は、いずれのCアルキル基によっても置換されていない。芳香族部分は、オルト及び/又はパラ位で一置換、二置換、又は三置換されていてよいが、好ましくは、ホスファイト自体は、一置換ばかりでなく、二置換ばかりでなく、三置換ばかりでない。
【0033】
好ましい実施形態において、本発明は、液体ホスファイト組成物及びアミン化合物を含む安定化された液体ホスファイト組成物に関し、ここで、液体ホスファイト組成物は、トリス(ジアルキルアリール)モノホスファイト、トリス(モノアルキルアリール)ホスファイト、ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリールホスファイト、及びビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリールホスファイトの少なくとも二つを含み、ここで、ホスファイト組成物は、周囲条件で液体である。従って、液体ホスファイト組成物は、多置換された少なくとも一つの芳香族部分を有する少なくとも1種のホスファイト、例えばビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリールホスファイト、ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリールホスファイト、又はトリス(ジアルキルアリール)ホスファイトを含む。液体ホスファイト組成物には、同様に好ましくは、各アリール部分が完全に一置換されている少なくとも1種のホスファイト化合物、例えば、トリス(モノアルキルアリール)ホスファイトが含まれる。アルキルアリールホスファイト化合物におけるアルキル基は、好ましくは、C〜Cアルキル基、例えば、C〜Cアルキル基、最も好ましくは、t−ブチル及び/又はt−アミルを含み、アリール基は、好ましくはフェニル又はクレシル、例えば、o−、m−、及び/又はp−クレシルを含む。
【0034】
より一般的に、アリール部分上のアルキル置換基(単数又は複数)は、直鎖又は分枝C〜C18アルキル、例えば、C〜Cアルキル、C〜Cアルキル、又はC〜Cアルキル、好ましくはCアルキル又はCアルキルから選択される。好ましい一実施形態において、アルキル置換基(単数又は複数)は、C〜C10アルキルではなく、例えば、Cアルキルではない。アルキル置換基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル(あまり好ましくないが)、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、及びそれらの異性体が含まれ得る。最も好ましくは、アルキル基(単数又は複数)は、ブチル(特にsec−ブチル及び/又はtert−ブチル)及びアミル基(特にsec−アミル、tert−アミル、及び/又はネオ−アミル)から選択される。上述のとおり、好ましい一実施形態において、アルキル部分は、ノニルを含まず、ホスファイト組成物は、好ましくは、50wppm未満の、例えば、10wppm未満の、又は5wppm未満の、ノニル置換アリールホスファイト化合物を含み、最も好ましくは、検出可能なノニル置換アリールホスファイト化合物を含まないことを意味する。さらに、ホスファイト組成物は、好ましくは、50wppm未満、例えば、10wppm未満、又は5wppm未満の、ノニルフェノールを含む。最も好ましくは、ホスファイト組成物は、検出可能なノニルフェノールを含まない。
【0035】
一実施形態において、ホスファイト組成物は、α位に水素を有するアルキル基で置換されたアリール基を有するホスファイト化合物を実質的に含まない。好ましい実施形態において、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のアリール部分は、第三α−炭素を有するアルキル基、例えば、tert−ブチル及び/又はtert−アミルで置換されている。
【0036】
一実施形態において、R、R、及びRは、式(IV)の構造の独立に選択されるアルキル化アリール基である。
【化4】


(式中、R、R、及びR10は、水素及び直鎖又は分枝C〜Cアルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、及びそれらの異性体、例えば、イソプロピル、tert−ブチル、tert−アミル、ネオ−アミルからなる群から独立に選択され、但し、R、R、及びR10の少なくとも一つは、水素ではない。)一実施形態において、R及びR10は、水素であり、Rは、水素ではない。一実施形態において、オルトアルキル基、例えば、R及びR10は、α−水素原子を有さない。一実施形態において、オルトアルキル基、例えば、R及びR10は、tert−ブチル及びtert−アミルからなる群から選択される第三α−炭素原子を有する。
【0037】
一実施形態において、R及びRは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、ヘキシル、及びそれらの異性体からなる群から独立に選択され、R10は水素である。別の実施形態において、R及びR10は水素であり、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、ヘキシル、及びそれらの異性体からなる群から独立に選択される。これらの実施形態の一態様において、R、R、及びR10の少なくとも一つは、C又はCアルキルであり、最も好ましくはtert−ブチル又はtert−アミルである。
【0038】
様々な任意選択の実施形態において、R、R、及びRのためのアルキル化アリール基は、表1に示されたように提供される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載された液体ホスファイト組成物は、任意の2種以上のこれらの化合物を、該ホスファイト組成物が周囲条件で液体となるのに十分な量で含むことができる。
【表1】

【0039】
一実施形態において、R、R、及びRは、式(V)の構造の独立に選択されるアルキル化アリール基である。
【化5】

【0040】
(式中、R、R、及びR10は、上記で定義されており、R11は、水素又はメチルであり、但し、R、R、R10、及びR11の一つは、メチルであり、R、R、R10、及びR11の少なくとも二つは、水素ではない。)このようなホスファイトは、例えば、1種又は複数のアルキル化クレゾール化合物、例えば、1種又は複数のアルキル化オルト−、メタ−、及び/又はパラ−クレゾールと、PClとの反応によって形成することができる。
【0041】
いくつかの好ましい実施形態において、液体ホスファイト組成物は、トリス(4−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(4−t−ブチルフェニル)−2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4−t−ブチルフェニルホスファイト、ビス(2−t−ブチルフェニル)−2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−2−t−ブチルフェニルホスファイト、トリス(4−t−アミルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−アミルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)ホスファイト、ビス(4−t−アミルフェニル)−2,4−ジ−t−アミルフェニルホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)−4−タミルフェニルホスファイト、ビス(2−t−アミルフェニル)−2,4−ジ−t−アミルフェニルホスファイト、及びビス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)−2−タミルフェニルホスファイトからなる群から選択される少なくとも2種のホスファイトを含む。一実施形態において、ホスファイト組成物は、組成物に混合された場合、固体組成物をもたらすホスファイトのみ含まない。固体組成物をもたらすホスファイトの一例は、米国特許第5,254,709号に記載された2,4−ジ−t−ブチルフェノール及び2,4−ジ−t−アミルフェノールの三塩化リンとの反応から生成されるものである。
【0042】
いくつかの実施形態において、ホスファイト組成物は、TNPPのそれ以上である総リン含有量、例えば、少なくとも4.5重量%、例えば、少なくとも4.8重量%、又は少なくとも5.1重量%を有する。範囲に関して、ホスファイト組成物の総リン含有量は、ホスファイト組成物の全てのリンを含む化合物の総重量に対して、4.5から10.0重量%まで、例えば、4.8から8.0重量%まで、又は5.1から6.0重量%までの範囲に及び得る。
【0043】
上述のとおり、ホスファイト組成物は、好ましくは、以下:トリス(ジアルキルアリール)モノホスファイト、トリス(モノアルキルアリール)ホスファイト、ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリールホスファイト、及びビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリールホスファイトの少なくとも二つを含み、ここで、ホスファイト組成物は、周囲条件で液体である。ホスファイト組成物中に含有されるそれぞれのホスファイト成分の相対量は、ホスファイト組成物自体が、周囲条件で液体であることを条件に、いくらか変化し得る。好ましくは、ホスファイト組成物は、ホスファイト組成物中の全てのホスファイト化合物の総重量に対して、80重量%、90重量%、又は95重量%より大きい量の、これらの化合物の少なくとも二つ、これらの化合物の少なくとも三つ、又はこれらの化合物の全ての四つを含む。当然、少量の他の種、ホスファイト又は非ホスファイト、例えば、トリス(2−tert−アミルフェニル)ホスファイト、ビス(2−tert−アミルフェニル)−2,4−ジ−tert−アミルフェニルホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−アミルフェニル)−2−tert−アミルフェニルホスファイトなどの一つ又は複数は存在し得る。
【0044】
本明細書で記載された液体ホスファイト組成物中に含有されるそれぞれのホスファイト成分の相対量は、ホスファイト組成物が周囲条件で液体であることを条件に、いくらか変化し得る。範囲に関して、例えば、ホスファイト組成物は、20から70重量%まで、例えば、15から55重量%まで、又は37から54重量%までの量の、トリス(モノアルキルアリール)ホスファイト、例えば、トリス(4−t−アミル−フェニル)ホスファイト又はトリス(4−t−ブチル−フェニル)ホスファイト、並びに15から60重量%まで、例えば、31から50重量%まで、又は34から45重量%までの量の、ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリールホスファイト、例えば、ビス(4−t−アミル−フェニル)−2,4−ジ−t−アミル−フェニル)ホスファイト又はビス(4−t−ブチル−フェニル)−2,4−ジ−t−ブチル−フェニル)ホスファイトを含む。場合によって、ホスファイト組成物は、トリス(ジアルキルアリール)ホスファイト、及び/又はビス(ジアルキルアリール)モノアリールホスファイトをさらに含む。存在する場合、トリス(ジアルキルアリール)ホスファイト、例えば、トリス(2,4−ジ−tert−アミル−フェニル)ホスファイト又はトリス(2,4−ジ−tert−ブチル−フェニル)ホスファイトは、好ましくは、0.1から20重量%まで、例えば、0.3から5重量%まで、又は0.5から1重量%までの量で存在する。存在する場合、ビス(ジアルキルアリール)モノアリールホスファイト、例えば、ビス(2,4−ジ−tert−アミル−フェニル)−4−t−アミル−フェニルホスファイト又はビス(2,4−ジ−tert−ブチル−フェニル)−4−t−ブチル−フェニルホスファイトは、好ましくは、2から20重量%まで、例えば、4から20重量%まで、又は5から10重量%までの量で存在する。特に指定のない限り、重量パーセント(重量%)は、ホスファイト組成物の総重量に基づく。
【0045】
重量比に関して、ホスファイト組成物は、場合によって、1:4から7:3まで、例えば、2:5から3:2まで、又は3:5から6:5までの、トリス(モノアルキルアリール)ホスファイトの、ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリールホスファイト、ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリールホスファイト及びトリス(ジアルキルアリール)ホスファイトの組合せに対する重量比を有する。
【0046】
ホスファイト組成物は、場合によって、1:6から3:2まで、例えば、1:3から1:1まで、又は1:2から2:3までの、ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリールホスファイトの、トリス(モノアルキルアリール)ホスファイト、ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリールホスファイト及びトリス(ジアルキルアリール)ホスファイトの組合せに対する重量比を有する。
【0047】
ホスファイト組成物は、場合によって、1:50から2:5まで、例えば、1:30から1:5まで、若しくは1:20から1:9まで、又は場合によって0.2:1未満、0.1:1未満、0.05:1未満、若しくは0.02:1未満の、ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリールホスファイトの、トリス(モノアルキルアリール)ホスファイト、ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリールホスファイト、及びトリス(ジアルキルアリール)ホスファイトの組合せに対する重量比を有する。
【0048】
ホスファイト組成物は、場合によって、1:10,000から2:5まで、例えば、1:5,000から1:20まで、若しくは1:1,000から1:100まで、又は場合によって0.02:1未満、0.01:1未満、若しくは0.005:1未満の、トリス(ジアルキルアリール)ホスファイトの、ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリールホスファイト、ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリールホスファイト及びトリス(モノアルキルアリール)ホスファイトの組合せに対する重量比を有する。
【0049】
好ましくは、液体ホスファイト組成物は、トリス(ジ−C〜Cアルキルアリール)ホスファイト、トリス(C〜Cアルキルアリール)ホスファイト、ビス(ジ−C〜Cアルキルアリール)C〜Cアルキルアリールホスファイト、及びビス(C〜Cアルキルアリール)ジ−C〜Cアルキルアリールホスファイトの少なくとも二つを含む。好ましくは、上記組成物は、次の量のこれらのホスファイトの各々:1−5重量%のトリス(ジ−C〜Cアルキルアリール)ホスファイト、10−70重量%のトリス(C〜Cアルキルアリール)ホスファイト、1−35重量%のビス(ジ−C〜Cアルキルアリール)C〜Cアルキルアリールホスファイト、及び5−70重量%のビス(C〜Cアルキルアリール)ジ−C〜Cアルキルアリールホスファイトを含む。
【0050】
上に示されたように、液体ホスファイト組成物は、全体としてどのように、アリール部分、例えば、フェニル部分が、置換、例えば、アルキル(例えば、t−ブチル又はt−アミル)置換されているかに基づいて特徴付けることができる。例えば、一実施形態において、大部分のアリール部分が、パラ位で一置換されており、例えば、ホスファイト組成物中のアリール部分の数に対して、少なくとも50%、少なくとも70%、又は少なくとも90%が、パラ位で一置換されており、場合によって50から95%まで、例えば、55から90まで、又は60から85%までが、パラ位で一置換されている。他の実施形態において、アリール部分のいくつかは、少なくとも部分的に、二置換されており、例えば、オルト−及びパラ−二置換されている。好ましくは、ホスファイト組成物中のアリール部分の総数に対して、アリール部分の少なくとも10%が、オルト−及びパラ−二置換されており、例えば、少なくとも20%がオルト−及びパラ−二置換されており、又は少なくとも50%がオルト−及びパラ−二置換されており、場合によって5から50%までがオルト−及びパラ−二置換されており、例えば、10から45%までがオルト−及びパラ−二置換されており、又は15から40%までがオルト−及びパラ−二置換されている。他の実施形態において、モノアルキルアリール基のジアルキルアリール基に対する比は、5:1から1:1まで、例えば、4:1から1:1まで、又は3.5:1から2:1までの範囲に及ぶ。
【0051】
ホスファイトがどのように製造されたかに大いに依存して、ホスファイト化合物は、分子毎の各アリール部分上で同様に置換されてよく、例えば、あるホスファイト化合物は、一置換、例えばパラ置換だけであってよく、且つ/又は、あるホスファイト化合物は、二置換、例えばオルト及びパラ二置換だけであってよく、但し、全体のホスファイト組成物中のアリール部分の少なくともある部分が、一置換されており、全体のホスファイト組成物中のアリール部分の少なくともある部分が、二置換されていることを条件とする。例えば、いくつかの又は全てのホスファイト分子は、一置換及び二置換アリール部分の両方を含有してよい。加えて又は別法として、ホスファイト組成物は、一置換、例えばパラ置換だけのホスファイト分子及び/又は二置換、例えばo/p二置換だけのホスファイト分子を含んでよい。
【0052】
上述のとおり、本明細書に記載された液体ホスファイト組成物には、モノアルキル化及びジアルキル化されたアリール部分を有するホスファイト化合物が含まれる。理想的には、もしあっても、アリール部分の少ししか三置換されていない。例えば、3重量%より少ないアリール部分、例えば、2重量%より少ない、又は1重量%より少ないアリール部分が、三置換されている。
【0053】
同様に、もしあっても、アリール部分の少ししか、オルト位で一置換されていないことが好ましい。好ましくは、アリール部分は、たとえあったとしても、3重量%未満、例えば、2重量%未満、又は1重量%未満の量がオルト位で一置換されている。
【0054】
好ましくは、ホスファイト組成物は、ホスファイト組成物中に含有される場合、アルキル化されているかアルキル化されていないに関わらず、本明細書で「遊離フェノール」と呼ばれる、フェノール(例えば、フェノール、クレゾール又はキシレノール)を低レベル有するか実質的に含まない。量に関して、ホスファイト組成物は、好ましくは、ホスファイト組成物の総重量に対して、5重量%未満、例えば、3重量%未満、又は1重量%未満の遊離フェノールを含む。いずれの遊離フェノールも、例えば、蒸留によって除去することができる。遊離フェノールの極めて低い濃度は、例えば、ワイプドフィルム分子(短路)蒸留器(wiped−film molecular(Short−Path)still)、ワイプドフィルム蒸発器(wiped film evaporator)(WFE)、薄膜蒸発器、又は同様の装置を使用して、達成することができる。量に関して、ホスファイト組成物は、ホスファイト組成物の総重量に対して、0.5重量%未満、例えば、0.2重量%未満、又は0.1重量%未満の遊離フェノールを含むことができる。
【0055】
別の場合では、少量の遊離フェノールは、例えば、粘度降下剤として有益な場合がある。従って、ホスファイト組成物は、例えば、ホスファイト組成物の総重量に対して、1から4重量パーセントまで、例えば、2から3重量パーセントまでの少量の遊離フェノールを含むことができる。
【0056】
さらに、ホスファイト組成物は、好ましくは、非置換アリール部分を有するホスファイト化合物、例えば、トリフェニルホスファイト、ビス(フェニル)アルキルフェニルホスファイト、又はビス(アルキルフェニル)フェニルホスファイトを実質的に含まない。量に関して、ホスファイト組成物は、好ましくは、ホスファイト組成物の総重量に対して、2重量%未満、例えば、1重量%未満、又は0.5重量%未満の少なくとも一つの非置換アリール部分を有するホスファイト化合物を含む。
【0057】
上述のとおり、ホスファイト組成物は、周囲条件で液体である。本明細書で使用される「液体」は、ホスファイト組成物が、3回以下のサイクル後に液体に留まらない「準安定性液体」と対照的に、少なくとも3回の「凍結/解凍」サイクル後に液体に留まることを意味する。凍結/解凍サイクルは、次のとおり定義される:1)周囲温度の組成物を、0.5時間撹拌し;2)次いで、撹拌した組成物を、約5℃で3日間冷蔵し;3)次いで、冷蔵した組成物を、周囲温度にして3日間周囲温度に維持する。ステップ3の完了後、上記組成物を、固体分、例えば、結晶化について調べる。ステップ1−3の完了は、1回の凍結/解凍サイクルを意味する。
【0058】
上述のとおり、ホスファイト組成物の一つの特徴は、それが、室温で液体の物理的形態にあることである。先行技術が、その成分が周囲条件で別々に固体である固体ホスファイト組成物のいくつかの例を教示していることを考慮すると、これは明らかに驚くべきことである(特開昭59−030842号公報;国際公開第9303092号;カナダ特許第2,464,551号を参照されたい)。対照的に、本明細書で論じられたホスファイト組成物は、個別の成分が固体であっても液体である。表2は、安定化されたホスファイト組成物に含むことができる、いくつかの異なる個別のホスファイト化合物の融点を提供している。
【表2】

【0059】
ホスファイト組成物の粘度は、その中に含有される様々なホスファイト化合物の相対量に応じて変化し得る。いくつかの例示的な実施形態において、ホスファイト組成物は、11,000cSt未満、例えば、7,300cSt未満、5,000cSt未満、3,000cSt未満、又は2850cSt未満の粘度を有し、これらの粘度は、30℃で測定される。範囲に関して、組成物の粘度は、1cStから15,000cStまで、100cStから12,000cStまで、500cStから10,000cStまで、500cStから6,500cStまで、500cStから5,000cStまで、500cStから3,000cStまで、1,000cStから4,000cStまで、1,500cStから3,500cStまで、2,000cStから3,000cStまで、又は2,000から2,800cStまでの範囲に及んでよく、これらの粘度は、30℃で測定される。
【0060】
一実施形態において、液体ホスファイトは、ホスファイト組成物を含めて、1種又は複数の加水分解安定剤を含む。好適な加水分解安定剤には、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、及びテトライソプロパノールエチレンジアミンが含まれる。別の態様において、加水分解安定剤には、オクチル−ビス(2−エタノール)アミン、ノニル−ビス(2−エタノール)アミン、デシル−ビス(2−エタノール)アミン、ウンデシル−ビス(2−エタノール)アミン、ドデシル−ビス(2−エタノール)アミン、トリデシル−ビス(2−エタノール)アミン、テトラデシル−ビス(2−エタノール)アミン、ペンタデシル−ビス(2−エタノール)アミン、ヘキサデシル−ビス(2−エタノール)アミン、ヘプタデシル−ビス(2−エタノール)アミン、オクタデシル−ビス(2−エタノール)アミン、オクチル−ビス(2−プロパノール)アミン、ノニル−ビス(2−プロパノール)アミン、デシル−ビス(2−プロパノール)アミン、ウンデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、ドデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、トリデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、テトラデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、ペンタデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、ヘキサデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、ヘプタデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、オクタデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、及びそれらの異性体が含まれる。市販の加水分解安定剤には、Akzo Nobel Polymers製のArmostat(商標)300及びArmostat 1800が含まれる。追加の加水分解安定剤には、Drapex(商標)39、Drapex 392、Drapex 4.4、及びDrapex 6.8(Chemtura Corp.)として市販されているエポキシ化大豆油(ESBO)などのエポキシが含まれる。
【0061】
C.他の液体ホスファイト
さらに別の一実施形態において、ホスファイトは、その全体の内容及び開示が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第7,468,410号に記載された、液体のトリス(モノ−アルキル)フェニル亜リン酸エステル又は液体のトリス(モノ−アルキル)フェニル亜リン酸エステルの液体混合物である。特には、ホスファイトは、トリス(3−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−sec−ブチルフェニル)ホスファイト、又はトリス(4−sec−ブチルフェニル)ホスファイトであってよい。一実施形態において、液体混合物は、その一方が、トリス(3−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−sec−ブチルフェニル)ホスファイト、又はトリス(4−sec−ブチルフェニル)ホスファイトであり、その他方が、トリス(3−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−sec−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(4−sec−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(4−t−ブチルフェニル)ホスファイト、又はトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトである様々なホスファイトを含む。
【0062】
3.他の添加剤
立体障害フェノール及びホスファイトに加えて、好ましくは組成物の安定性を改善するために有効な量で存在する1種又は複数の添加剤及び安定剤が存在してよい。1種又は複数の添加剤及び安定剤には、追加のフェノール系酸化防止剤、芳香族アミン、ヒドロキシルアミン、アルキルアミン−N−オキシド、ラクトン、及びチオエーテル、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、紫外線吸収剤、アルカリ金属脂肪酸の塩、ヒドロタルサイト、金属酸化物、エポキシ化大豆油、ヒドロキシルアミン、第3アミンオキシド、ラクトン、第3アミンオキシドの熱反応生成物、及びチオ相乗剤が含まれる。一実施形態において、立体障害フェノール及び液体ホスファイトを含む添加剤の合計量は、ポリマー及び添加剤の総重量に対して、0.025重量%から20重量%まで、例えば、0.1から5重量%まで、又は0.3から3重量%までであってよい。
【0063】
一実施形態において、ポリマーの総重量パーセントに対する,安定剤組成物中の各成分の量は、表3に示されている。
【表3】

【0064】
本発明の安定剤組成物又は得られる安定化されたポリマー組成物は、場合によって、本発明の立体障害フェノールとブレンド又は混合された追加のフェノール系酸化防止剤も含む。追加のフェノール系酸化防止剤には、以下のものが含まれる:
【0065】
(i)アルキル化モノフェノール、例えば:2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−イソブチルフェノール、2,6−ジシクロペンチル−4−メチルフェノール、2,6−ビス(α−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(α−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジオクタデシル−4−メチルフェノール、2,4,6,−トリシクロヘキシフェノール、及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシメチルフェノール。市販のアルキル化モノフェノールには、Chemtura Corp.製のLowinox(商標)624及びNaugard(商標)431が含まれる。他のフェノールは、Nanjing Datang Chemical Co.,Ltd.からBHEBとして市販されている。
【0066】
(ii)アルキル化ヒドロキノン、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,5−ジ−tert−ブチル−ヒドロキノン、2,5−ジ−tert−アミル−ヒドロキノン、及び2,6−ジフェニル−4オクタデシルオキシフェノール。市販のアルキル化ヒドロキノンには、Chemtura製のLowinox AH25が含まれる。
【0067】
(iii)ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、例えば、2,2’−チオ−ビス−(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−チオ−ビス−(4−オクチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、及び4,4’−チオ−ビス−(6−tert−ブチル−2−メチルフェノール)。市販のヒドロキシル化チオジフェニルエーテルには、Chemtura製のLowinox TMB6、及びLowinox TBP6が含まれる。
【0068】
(iv)アルキリデン−ビスフェノール、例えば、2,2’−メチレン−ビス−(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−tert−ブチル−4−エチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−(α−メチルシクロヘキシル)フェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−ノニル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−ノニル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−(α−メチルベンジル)−4−ノニルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−(α,α−ジメチルベンジル)−4−ノニル−フェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデン−ビス−(6−tert−ブチル−4−イソブチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス−(6−tert−ブチル−2−メチルフェノール)、1,1−ビス−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェノール)ブタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,6−ジ−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−ドデシル−メルカプトブタン、エチレングリコール−ビス−(3,3,−ビス−(3’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−ブチレート)−ジ−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−ジシクロペンタジエン、及びジ−(2−(3’−tert−ブチル−2’ヒドロキシ−5’メチル−ベンジル)−6−tert−ブチル−4−メチルフェニル)テレフタレート。市販のアルキリデン−ビスフェノールには、Chemtura製のLowinox 22M46、Lowinox WSP、Lowinox 44B25、Naugard 536、Naugawhite(商標)、及びLowinox 22IB46が含まれる。
【0069】
(v)アシルアミノフェノール、例えば、4−ヒドロキシラウリン酸アニリド、4−ヒドロキシ−ステアリン酸アニリド、2,4−ビス−オクチルメルカプト−6−(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−s−トリアジン、及びオクチル−N−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−カルバメート。
【0070】
(vi)ベータ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオン酸の一価又は多価アルコール、例えば、メタノール、ジエチレングリコール、オクタデカノール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリトリトール、ネオペンチルグリコール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、チオジエチレングリコール、ジ−ヒドロキシエチルシュウ酸ジアミドとのエステル。このようなフェノールには、テトラキス[メチレン{3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシシンナメート}]メタンも含まれる。市販のエステルには、Chemtura製のAnox 20、Anox 1315、Lowinox GP45、Naugalube 38、Naugalube 531、Anox PP18、Naugard PS48及びNaugard XL−1が含まれる。
【0071】
(vii)ベータ−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロピオン酸の、一価又は多価アルコール、例えば、メタノール、ジエチレングリコール、オクタデカノール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリトリトール、ネオペンチルグリコール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、チオジエチレングリコール、ジヒドロキシエチルシュウ酸ジアミドとのチオエステル。市販のチオエステルには、Chemtura製のNaugalube(商標)15及びAnox 70が含まれる。
【0072】
(viii)ベータ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオン酸のアミド、例えば、N,N’−ジ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)−ヘキサムメチレン−ジアミン、N,N’−ジ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)トリメチレンジアミン、N,N’−ジ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)−ヒドラジン、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド、及び1,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン
市販のアミドには、Chemtura製のLowinox HD98及びLowinox MD24が含まれる。
【0073】
(ix)他のフェノール系酸化防止剤には、以下のフェノールが含まれる。Lowinox CSTLとして市販されている、4−メチルフェノールのジシクロペンタジエン及びイソブチレンの反応生成物などのポリマーフェノール;Chemtura。アルキリデン−ポリ−フェノール、例えば1,3トリス(3−メチル−4−ヒドロキシル−5−t−ブチル−フェニル)−ブタン(Lowinox CA22;Chemtura)。2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール(Irganox(商標)565;Ciba)、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール(Irganox 1520;Ciba);4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール(Irganox 1726;Ciba)などのチオフェノール。ヒドロキシルアミン、例えばビス(オクタデシル)ヒドロキシルアミン(Irgastab(商標)FS 042;Ciba)。エステルフェノールには、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)ブタン酸]グリコールエステル(Hostanox(商標)O3;Clariant Chemicals)が含まれる。さらに他のフェノールには、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート(Sumilizer GS;Sumitomo Chemical)が含まれる。
【0074】
安定剤組成物及び/又は得られる安定化されたポリマー組成物は、場合によって、以下のものなどの1種又は複数のUV吸収剤及び/又は光安定剤も含む。
【0075】
(i)2−(2’−ヒドロキシフェニル)−ベンゾトリアゾール、例えば、5’−メチル−、3’5’−ジ−tert−ブチル−、3’5’−ジ−tert−アミル−、5’−tert−ブチル−、5’−tert−アミル−、5’(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−、5−クロロ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−、5−クロロ−3’−tert−ブチル−5’メチル−、3’−sec−ブチル−5’tert−ブチル−,4’−オクトキシ、3’,5’−ジtert−アミル−3’,5’−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)−誘導体。市販の2−(2’−ヒドロキシフェニル)−ベンゾトリアゾールには、Chemtura製のLowilite(商標)26、Lowilite 27、Lowilite 28、Lowilite 29、Lowilite 35、Lowilite 55、及びLowilite 234が含まれる。
【0076】
(ii)2−ヒドロキシ−ベンゾフェノン、例えば、4−ヒドロキシ、4−メトキシ−、4−オクトキシ、4−デシルオキシ−、4−ドデシルオキシ−、4−ベンジルオキシ−、2,4−ジヒドロキシ−、4,2’,4’−トリヒドロキシ−及び2’−ヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−誘導体。例示的な2−ヒドロキシ−ベンゾフェノンには、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−エトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、及び2−ヒドロキシ−4−プロポキシベンゾフェノンが含まれる。市販の2−(2’−ヒドロキシフェニル)−ベンゾトリアゾールには、Chemtura製のLowilite 20、Lowilite 22、Lowilite 20S、及びLowilite 24が含まれる。
【0077】
(iii)置換及び非置換安息香酸のエステル、例えば、フェニルサリチレート、4−tert−ブチルフェニル−サリチレート、オクチルフェニルサリチレート、ジベンゾイルレゾルシノール、ビス−(4−tert−ブチルベンゾイル)−レゾルシノール、ベンゾイルレゾルシノール、2,4−ジ−tert−ブチル−フェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート及びヘキサデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート。
【0078】
(iv)UV吸収剤及び光安定剤は、アクリレート、例えば、アルファ−シアノ−ベータ、ベータ−ジフェニルアクリル酸−エチルエステル又はイソオクチルエステル、アルファ−カルボメトキシ−桂皮酸メチルエステル、アルファ−シアノ−ベータ−メチル−p−メトキシ−桂皮酸メチルエステル又はブチルエステル、アルファ−カルボメトキシ−p−メトキシ−桂皮酸メチルエステル、N−(ベータ−カルボメトキシ−ベータ−シアノ−ビニル)−2−メチル−インドリンも含むことができる。
【0079】
(v)ニッケル化合物は、同様に好適なUV吸収剤及び光安定剤である。例示的なニッケル化合物には、場合によってn−ブチルアミン、トリエタノールアミン又はN−シクロヘキシル−ジエタノールアミンなどの追加のリガンドを含む、1:1又は1:2錯体などの、2,2’−チオ−ビス(4−(1,1,1,3−テトラメチルブチル)−フェノール)のニッケル錯体、ニッケルジブチルジチオカルバメート、メチル、エチル、又はブチルエステルなどの、4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジルホスホン酸モノアルキルエステルのニッケル塩、2−ヒドロキシ−4−メチル−フェニルウンデシルケトオキシムなどのケトオキシムのニッケル錯体、場合によって追加のリガンドを含む、1−フェニル−4−ラウロイル−5−ヒドロキシ−ピラゾールのニッケル錯体が含まれる。市販のニッケル化合物には、Chemtura製のLowilite Q84(2,2’−チオビス(4−tert−オクチル−フェノラト))−N−ブチルアミン−ニッケル(II)が含まれる。
【0080】
(vi)立体障害アミンは、UV吸収剤及び光安定剤として使用することができる。立体障害アミン、例えばビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−セバケート、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)−セバケート、n−ブチル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)エステル、1−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシ−ピペリジン及びコハク酸の縮合生成物、N,N’−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−ヘキサメチレンジアミン及び4−tert−オクチルアミノ−2,6−ジクロロ−1,3,5−s−トリアジンの縮合生成物、トリス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−ニトリロトリアセテート、テトラキス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタン−テトラ−炭酸、1,1’(1,2−エタンジイル)−ビス−(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)。このようなアミンには、ヒンダードアミンから導かれるヒドロキシルアミン、例えばジ(1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート:1−ヒドロキシ2,2,6,6−テトラメチル−4−ベンゾオキシピペリジン;1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイルオキシ)−ピペリジン;及びN−(1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−イル)−エプシロンカプロラクタムが含まれる。市販のヒンダードアミンには、Chemtura製のLowilite 19、Lowilite 62、Lowilite 77、Lowilite 92及びLowilite 94が含まれる。
【0081】
(vii)シュウ酸ジアミド、例えば、4,4’−ジオクチルオキシ−オキサニリド、2,2’−ジ−オクチルオキシ−5’,5’−ジ−tert−ブチルオキサニリド、2,2’−ジ−ドデシルオキシ−5’,5’ジ−tert−ブチル−オキサニリド、2−エトキシ−2’−エチル−オキサニリド、N,N’−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)−オキサルアミド、2−エトキシ−5−tert−ブチル−2’−エチルオキサニリド及び2−エトキシ−2’エチル−5,4−ジ−tert−ブチルオキサニリドとのその混合物並びにo−及びp−メトキシ−並びにo−及びp−エトキシ−二置換オキサニリドの混合物。
【0082】
本発明のポリマー樹脂及びホスファイト組成物は、例えば、以下の一つ又は複数を含めた1種又は複数の追加の添加剤も含むことができる。
【0083】
(i)金属不活性化剤、例えば、N,N’−ジフェニルシュウ酸ジアミド、N−サリチラル−N’−サリチロイルヒドラジン、N,N’−ビス−サリチロイルヒドラジン、N,N’−ビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロフェニルプロピオニル)−ヒドラジン、サリチロイルアミノ−1,2,4−トリアゾール、ビス−ベンジリデン−シュウ酸ジヒドラジド。
【0084】
(ii)過酸化物スカベンジャー、例えば、ベータチオジプロピオン酸のエステル、例えばラウリル、ステアリル、ミリスチル又はトリデシルエステル、メルカプトベンズイミダゾール又は2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩、亜鉛−ジブチルジチオカルバメート、ジオクタデシルジスルフィド、ペンタエリトリトールテトラキス−(ベータ−ドデシルメルカプト)−プロピオネート。
【0085】
(iii)ポリアミド安定剤、例えば、ヨウ化物及び/又はリン化合物と組み合わせた銅塩並びに二価マンガンの塩も、ポリマー樹脂及び/又はホスファイト組成物中に含むことができる。
【0086】
(iv)塩基性共安定剤、例えば、メラミン、ポリビニルピロリドン、ジシアンジアミド、トリアリルシアヌレート、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、アミン、ポリアミド、ポリウレタン、ヒドロタルサイト、高級脂肪酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、例えば、Caステアレート、カルシウムステアロイルラクテート、カルシウムラクテート、Znステアレート、Znオクトエート、Mgステアレート、Naリシノレート及びKパルミテート、アンチモンピロカテコレート又は亜鉛ピロカテコレート。市販の共安定剤には、Chemtura製のMark(商標)6045、Mark 6045ACM、Mark 6055、Mark 6055ACM、Mark 6087ACM、Mark 6102、Mark CE 345、Mark CE 350、及びMark CE 387;並びにKisuma Chemicals製のDHT−4A(商標)が含まれる。
【0087】
(v)核形成及び清澄剤、例えば、4−tertブチル安息香酸の金属塩、アジピン酸、ジフェニル酢酸、ソルビトール及びその誘導体、安息香酸ナトリウム、及び安息香酸。
【0088】
(vi)メチル−3−(N,N−ジベンジルアミノキシ)プロパノエート;エチル−3−(N,N−ジベンジルアミノキシ)プロパノエート;1,6−ヘキサメチレン−ビス(3−N,N−ジベンジルアミノキシ)プロパノエート);メチル−(2−(メチル)−3(N,N−ジベンジルアミノキシ)プロパノエート);オクタデシル−3−(N,N−ジベンジルアミノキシ)プロパン酸;テトラキス(N,N−ジベンジルアミノキシ)エチルカルボニルオキシメチ)メタン;オクタデシル−3−(N,N−ジエチルアミノキシ)−プロパノエート;3−(N,N−ジベンジルアミノキシ)プロパン酸カリウム塩;及び1,6−ヘキサメチレンビス(3−(N−アリル−N−ドデシルアミノキシ)プロパノエート)などのアミノキシプロパノエート誘導体。
【0089】
(vii)他の添加剤、例えば、可塑剤、潤滑剤、乳化剤、顔料、蛍光増白剤、防炎剤、帯電防止剤、発泡剤及びジラウリルチオジプロピオネート又はジステアリルチオジプロピオネートなどのチオ相乗剤。
【0090】
一実施形態において、本発明の安定剤組成物は、ゲル化防止剤、例えばポリエチレングリコール/オキシド又はエトキシル化直鎖アルコールを実質的に含まず、5wppm未満のゲル化防止剤又は2wppm未満のゲル化防止剤を含有するか、ゲル化防止剤をまったく含有しない。本明細書で使用されるゲル化防止剤は、ゲル形成を減少させるために安定剤混合物に添加される化合物であり、本発明の立体障害フェノール及びホスファイトの安定剤組成物を含まない。
【0091】
場合によって、ポリマー又はポリマー樹脂中に、5−50重量%、例えば、10−40重量%又は15−30重量%の充てん剤及び補強剤、例えば、炭酸カルシウム、シリケート、ガラス繊維、アスベスト、タルク、カオリン、雲母、硫酸バリウム、金属酸化物及び水酸化物、カーボンブラック及び黒鉛も存在してよい。
【0092】
C.用途
立体障害フェノール及び液体ホスファイトを含む安定剤組成物によって安定化されたポリマーは、フィルム、シート、及び繊維押出及び共押出並びに吹込み成形、射出成形及び回転式成形などの成形作業において有用である。フィルムには、食品接触又は食品非接触用途における収縮フィルム、クリングフィルム(cling film)、ストレッチフィルム、シーリングフィルム(sealing film)、配向フィルム、スナック包装(snack packaging)、重包装袋、買物袋、汎用袋(general purpose bag)、手提袋、食品包装フィルム、焼成冷凍食品包装(baked and frozen food packaging)、農業フィルム、医療包装、工業用ライナー(industrial liner)、又はメンブランとして有用な、共押出又はラミネーションにより成形されたインフレートフィルム又はキャストフィルムが含まれる。溶融紡糸、溶液紡糸及びメルトブローン繊維製法(melt blown fiber operation)によって調製されるものなどの繊維は、フィルター、おむつ、医用服、ジオテキスタイルなどを製造するために織布又は不織布形態で使用される。押出品には、例えば、医療用管類、ワイヤ及びケーブル被覆、ジオメンブラン、及び池のライナー(pond liner)が含まれる。成形品には、ボトル、タンク、大型の中空物品、硬質食品容器及び玩具などの形態の単層及び多層構造が含まれる。上記に加え、安定剤組成物は、タイヤ、バリア(barrier)などの様々なゴムベースの製品に使用することができる。
【0093】
D.改善された性能特性
本発明の安定剤組成物を、ポリマー組成物中に混合する場合、ポリマー組成物の特性及び/又は性質、例えば、黄変度指数によって測定される色安定性、ゲル含有量、メルト・フロー・インデックス、及び酸素誘導時間を、著しく改善することができる。加えて、固体ホスファイト組成物と異なり、液体ホスファイト組成物は、溶融することなくポリマー組成物中に有益に混合することができる。
【0094】
色を改善することに関して、本発明の安定剤は、60℃の温度におけるAATCC 23に記載されたガス退色からの変色に対する改善された耐性を提供する。汚染物質に起因する大気中の窒素の酸化物(NOx)は、安定剤、特にフェノール安定剤と反応して、曝露時間が増加するにつれて増加する変色を誘発することがある。本発明の安定剤で安定化されたポリマーのASTM D1925で測定された黄色度指数は、0未満、例えば、−0.5未満又は−0.9未満のNOxへの曝露の7日間の値を示し;0.7未満、例えば、0.1未満又は−0.3未満の18日間の値を示し;1.2未満、例えば、1.1未満又は1未満の25日間の値を示し;1.8未満、例えば、1.7未満又は1.65未満の33日間の値を示し;3未満、例えば、2.5未満又は2.4未満の41日間の値を示す。これは、従来の安定剤で安定化された樹脂に比べて著しい改善である。
【0095】
ゲル含有量は、1平方メートルのポリマーフィルム中の200から400μmまでのサイズのゲル形成の数を測ることによって測定することができる。本発明の安定剤で安定化されたポリマーは、好ましくは、1平方メートルのフィルム当たり0.01から0.5ゲル(ゲル/m)、例えば、0.05から0.45ゲル/m、又は0.1から0.42ゲル/mの範囲に及ぶ、200から400μmまでのサイズのゲル形成のゲル含有量を有する。本発明の安定剤組成物を用いて得られるこれらのゲル含有量は、一般的に1ゲル/mより大きい、例えば、2ゲル/mより大きい、又は3ゲル/mより大きいゲル含有量を有する、従来の安定剤を使用して得られるものに比べて著しく低い。一実施形態において、本発明の安定剤組成物を用いて安定化されたポリマーは、検出可能な400μmより大きいサイズのゲル形成を有さない。従来の安定剤は、一般的に、5ゲル/m未満、例えば、2ゲル/m未満又は0.5ゲル/m未満の、検出可能な400μmより大きいゲル含有量を有する。
【0096】
さらなる詳細を必要とせずに、当業者は、本明細書の説明を使用して、本発明をその最大限に利用することができると考えられる。以下の実施例は、請求の範囲に記載されている発明を実施する上で当業者への追加の手引きを提供するために含まれている。提供される実施例は、本出願の教示に寄与する研究を単に代表するものである。従って、これらの実施例は、いかなる方法によっても、添付の特許請求の範囲に定義された本発明を制限することを意図したものではない。
【実施例】
【0097】
本発明は、以下の限定されない例を参照してさらに理解される。
【0098】
(例1)
0.918g/ccの密度及び0.6から1.0g毎10分までのメルト・フロー・インデックスを有するエチレン−ヘキセンコポリマーであるLLDPEを、2150wppmの1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン(Lowinox 1790)及びトリス(ノニル−フェニル)ホスファイト(Weston TNPP)を用いて安定化した。このLLDPEは、メタロセン触媒を使用する気相重合プロセスで生成された。
【0099】
(比較例A)
【0100】
例1からのLLDPEを、2500wppmのオクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(Anox PP18)及びトリス(ノニル−フェニル)ホスファイト(Weston TNPP)を用いて安定化した。
【0101】
(比較例B)
例1からのLLDPEを、2000wppmのオクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(Anox PP18)及びトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(Alkanox 240)を用いて安定化した。
【0102】
(例2)
予想外で驚くべきことに、例1並びに比較例A及びBのゲル含有量の測定値は、以下の表4に要約されたように、例1は、比較例A及びBと比較して著しく低いゲル含有量を有することを示した。例1並びに比較例A及びBは、ゲル化防止剤を含有しなかった。
【表4】

【0103】
(例3)
以下の表5に要約されたように、例1並びに比較例A及びBのガス退色分析は、例1は、試験期間にわたってNOxに対する低いガス退色(AATCC 23)を有することを示した。黄色度指数(YI)は、ASTM D1925によって測定された。
【表5】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
低ゲル含有量及び強化されたガス退色を有するポリオレフィンを調製する方法であって、
(1)立体障害フェノール、並びに
(2)(i)トリス(2,4−ジ−tert−アミル−フェニル)ホスファイト及びトリス(2,4−ジ−tert−ブチル−フェニル)ホスファイトから選択されるトリス(ジアルキルアリール)ホスファイト、
(ii)トリス(4−t−アミル−フェニル)ホスファイト及びトリス(4−t−ブチル−フェニル)ホスファイトから選択されるトリス(モノアルキルアリール)ホスファイト、
(iii)ビス(2,4−ジ−tert−アミル−フェニル)−4−t−アミル−フェニルホスファイト及びビス(2,4−ジ−tert−ブチル−フェニル)−4−t−ブチル−フェニルホスファイトから選択されるビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリールホスファイト、及び
(iv)ビス(4−t−アミル−フェニル)−2,4−ジ−t−アミル−フェニル)ホスファイト及びビス(4−t−ブチル−フェニル)−2,4−ジ−t−ブチル−フェニル)ホスファイトから選択されるビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリールホスファイト:
から選択される少なくとも2種の異なるホスファイトを含み、周囲条件で液体である該ホスファイト組成物
を含む組成物をポリオレフィンに添加することによる上記方法。
【請求項2】
前記立体障害フェノールが、1,3,5−トリス−(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス−(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、及び1,3,5−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
立体障害フェノールが、化合物I:
【化1】


(式中、xは、独立に0、1、2、又は3であり、R、R、及びRは、独立に水素、C〜C12アルキル、及びC〜C10シクロアルキルであり、但し、R、R、及びRの少なくとも一つは、水素ではない)の構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
立体障害フェノールが、化合物II:
【化2】


(式中、xは、独立に0、1、2、又は3であり、R、R、及びRは、独立に水素、及びC〜C12アルキル、及びC〜C10シクロアルキルであり、但し、R、R、及びRの少なくとも一つは、水素ではなく、Rは、独立にC〜Cアルキルである)の構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ホスファイト組成物が、ホスファイト組成物の総重量に対して、
0.1から20重量%までのトリス(ジアルキルアリール)ホスファイト、
20から70重量%までのトリス(モノアルキルアリール)ホスファイト、
2から20重量%までのビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリールホスファイト、及び
15から60重量%までのビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリールホスファイト
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ポリオレフィンに添加される組成物が、ゲル化防止剤を実質的に含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
立体障害フェノールのホスファイト組成物に対する重量比が、1:1から1:20までである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ポリオレフィンが、メタロセン触媒から生成される直鎖状低密度ポリエチレンである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
a)ポリエチレンホモポリマー、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、及びポリプロピレンコポリマーからなる群から選択されるポリオレフィン、並びに
b)(1)立体障害フェノール、及び
(2)(i)トリス(2,4−ジ−tert−アミル−フェニル)ホスファイト及びトリス(2,4−ジ−tert−ブチル−フェニル)ホスファイトから選択されるトリス(ジアルキルアリール)ホスファイト、
(ii)トリス(4−t−アミル−フェニル)ホスファイト及びトリス(4−t−ブチル−フェニル)ホスファイトから選択されるトリス(モノアルキルアリール)ホスファイト、
(iii)ビス(2,4−ジ−tert−アミル−フェニル)−4−t−アミル−フェニルホスファイト及びビス(2,4−ジ−tert−ブチル−フェニル)−4−t−ブチル−フェニルホスファイトから選択されるビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリールホスファイト、及び
(iv)ビス(4−t−アミル−フェニル)−2,4−ジ−t−アミル−フェニル)ホスファイト及びビス(4−t−ブチル−フェニル)−2,4−ジ−t−ブチル−フェニル)ホスファイトから選択されるビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリールホスファイト:
から選択される少なくとも2種の異なるホスファイトを含み、周囲条件で液体である該ホスファイト組成物
を含む有効量の安定剤組成物
を含み、フィルムの1平方メートル当たり0.01から0.5ゲル(ゲル/m)までの200から400μmまでのサイズのゲル形成のゲル含有量を有する物品。
【請求項10】
検出可能な400μmより大きいサイズのゲル形成を有さない、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
7日間では0未満、18日間では0.7未満、25日間では1.1未満、33日間では1.7未満又は41日間では2.5未満の、NOxへの曝露後の黄色度指数を有する、請求項9に記載の物品。
【請求項12】
250から5000wppmまでの量の安定剤組成物を含む、請求項9に記載の物品。
【請求項13】
ホスファイト組成物が、ホスファイト組成物の総重量に対して、
0.1から20重量%までのトリス(ジアルキルアリール)ホスファイト、
20から70重量%までのトリス(モノアルキルアリール)ホスファイト、
2から20重量%までのビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリールホスファイト、及び
15から60重量%までのビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリールホスファイト
を含む、請求項9に記載の物品。
【請求項14】
a)ポリエチレンホモポリマー、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、及びポリプロピレンコポリマーからなる群から選択されるポリオレフィン、並びに
b)(1)立体障害フェノール、及び
(2)トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニル−フェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスホナイト及びそれらの混合物からなる群から選択されるホスファイト
を含む有効量の安定剤組成物
を含み、1平方メートル当たり0.01から0.5ゲル(ゲル/m)の200から400μmまでのサイズのゲル形成のゲル含有量を有する上記物品。
【請求項15】
検出可能な400μmより大きいサイズのゲル形成を有さない、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
7日間では0未満、18日間では0.7未満、25日間では1.1未満、33日間では1.7未満又は41日間では2.5未満の、NOxへの曝露後の黄色度指数を有する、請求項14に記載の物品。
【請求項17】
250から5000wppmまでの量の安定剤組成物を含む、請求項14に記載の物品。

【公表番号】特表2013−508507(P2013−508507A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535219(P2012−535219)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/051036
【国際公開番号】WO2011/049728
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(508201282)ケムチュア コーポレイション (69)
【Fターム(参考)】