説明

低周波吸音材

【課題】200Hzより低い周波数域の騒音を効果的に吸収する低周波吸音材を提供すること。
【解決手段】低周波吸音材100は、膜状の第1質量部101と、第1質量部101の背面側に積層され、多孔質体又は弾性体からなる第2質量部102とからなる質量層110と、第2質量部102の背面側に積層されるばね機能としての第1多孔質体層120と、を備える。質量層110は、第1質量部101と第2質量部102の面密度の合計が2.0乃至10.0kg/mである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音源からの音を一方の面上に受け、低周波音を吸収する低周波吸音材に係り、特に、設備等で問題となる200Hzより低い周波数域の騒音を効果的に吸収する低周波吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
我々の周囲には工場の機械類などの設備等から様々な音や振動が発生しており、近年、これら騒音に対する低減要求が厳しくなっている。この騒音を吸収する吸音材として、多孔質材料を使用することが知られている。多孔質材料には、グラスウールやロックウール等の無機繊維系のもの、ポリエステル等の高分子繊維系のもの、発泡軟質ウレタン等の樹脂発泡系のもの等がある。
【0003】
これら多孔質材料は、中・高音域用吸音材として優れた吸音材料であるが、500Hz以下の低周波数域では十分な吸音率を得ることはできない。500Hz以下の吸音率を高くするためには、多孔質材料の厚みを大きくしたり、多孔質材吸音材の背面(音源と反対側)に十分な厚みの空気層を確保しなければならない。しかし、施工する個所のスペースの関係で吸音構造体の厚さがとれないことや、厚くすることで全体的に吸音材の重量が重くなるという問題がある。
【0004】
500Hz以下の騒音を吸音する吸音材として、例えば以下の従来技術がある。
【0005】
特許文献1には、通気度が5〜100倍異なる高密度と低密度の繊維集合体を少なくとも2層以上積層した構造体が記載されている。特許文献1記載の構造体は、空気の粘性抵抗を利用し、音波のエネルギを熱エネルギに変換して吸音する多孔質吸音構造体に、さらに密度が異なる繊維集合体を積層することで、高密度部分が付加質量、低密度部分がばねの役割を担う、いわゆる動吸振機構を構成させて特に低周波領域の吸音率を向上させるものである。
【0006】
上記動吸振機構について説明する。動吸振機構とは、質量体が構築物等に対して振動エネルギが加わると運動するように設けられているものである。以下、動吸振機構として、ばね(弾性効果の役割)と付加質量(錘の役割)からなる、ばね−マス系を例に説明する。
【0007】
図1は、ばね−マス系の動吸振機構を模式的に示す図である。
【0008】
図1中、動吸振機構の単位面積当たりの質量をm(kg/m)、ばね定数をs(N/m/m)とすると、共振周波数fは、次式(1)で表される。
【0009】
【数1】

【0010】
ばねが第1多孔質体層、付加質量が膜からなる積層構造の吸音材において、共振周波数f(吸音率ピーク)を低周波数側にシフトさせる(共振周波数fを小さくする)ため、式(1)より以下の対応を実施している。
【0011】
(1)質量mを大きくする。
・膜の厚さを厚くして重くする。
・膜の面密度を高くする。
(2)ばね定数kを小さくする。
多孔質体層のばね定数s(N/m/m=N/m)=多孔質体層のヤング率(N/m)/多孔質体層の厚さ(m)の関係より、
・多孔質体層のヤング率を下げる。
・多孔質体層の厚さを厚くする。
【0012】
特許文献2には、各繊維の表面に粘弾性体を塗布した繊維状集合体を厚さ方向に繊維密度を異ならせて積層した吸音制振材が記載され、また繊維状集合体の音源側に金属薄膜層を積層する構成も記載されている。
【0013】
特許文献3には、ゴムからなる膜と膜の背面側(音源の反対側)にグラスウール等の多孔質体層を積層した吸音材構造が記載されている。特許文献3記載の吸音材は、膜の部分が付加質量、多孔質体層はばねの役割として作用し、剛壁から反射した音波を膜状吸音により低周波領域の騒音を減衰させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平8−152890号公報
【特許文献2】特開2003−150150号公報
【特許文献3】国際公開第2006/098064号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、このような従来の低周波吸音材にあっては、以下の問題点があった。
【0016】
(1)特許文献1には、音源側に高密度な(面密度の高い)繊維集合体層を設けた構成としており、JIS A 1405による垂直入射吸音率測定による200〜300Hz周波数帯域の吸音率が0.8〜0.9程度となる吸音材が開示されている。しかし、特許文献1には、200Hzより低い周波数域の吸音特性については記載されていない。
【0017】
(2)特許文献2には、繊維密度を音源側から40、32、24、20(kg/m)と傾斜させた積層構造の吸音制振材が開示されている。特許文献2記載の吸音制振材は、300Hz前後の周波数域における吸音率が0.9〜1.0となる。しかし、この吸音制振材は、100Hz周波数域では吸音率が低下してしまう。
【0018】
(3)特許文献3記載の吸音材構造は、200Hz程度の周波数域における吸音率が0.9〜1.0と良好であるものの、125Hz以下の周波数域においては吸音率が低下する。さらに、特許文献3記載の吸音材構成において、多孔質体層を厚くしてばね定数kを小さくし、吸音率ピークを低周波数側にシフトさせてみると、吸音率ピークは、低周波数側にシフトするものの、吸音率ピーク値も低下してしまう問題が発生した。
【0019】
また、膜の面密度を確保するため、金属膜、例えばアルミニウムからなる膜を適用した場合、膜を厚くするとアルミニウム自体の剛性が生じ、十分な膜振動による減衰が得られなくなる。このため、厚さの制約により十分な面密度を確保できない。
【0020】
上述したように、これまでは設備等で問題となる特に63Hz周波数帯〜125Hz周波数帯の周波数域において高い吸音率、具体的には垂直入射吸音率が0.8以上となる吸音材は得られていない。
【0021】
本発明の目的は、200Hzより低い周波数域の騒音を効果的に吸収する低周波吸音材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の低周波吸音材は、膜状の第1質量部と、音源と反対側の、前記第1質量部の背面側に積層され、多孔質体又は弾性体からなる第2質量部と、から構成される質量層と、前記音源と反対側の、前記第2質量部の背面側に積層される第1多孔質体層と、を備え、前記質量層は、前記第1質量部と前記第2質量部の面密度の合計が、2.0乃至10.0kg/mである構成を採る。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、設備等で問題となる200Hzより低い周波数域の騒音を効果的に吸収することができる。特に、63Hz周波数帯〜125Hz周波数帯の周波数域において吸音率ピークを有し、かつ所望のピーク値(垂直入射吸音率0.8以上)となる低周波吸音材を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来のばね−マス系の動吸振機構を模式的に示す図
【図2】本発明の実施の形態1に係る低周波吸音材の構造を示す断面図
【図3】上記実施の形態1に係る低周波吸音材の通気のないゴム膜と多孔質体の積層からなる吸音材の垂直入射吸音率を示す図
【図4】図3と同一の吸音材において、ゴム膜に多数の孔(開口)を設けた場合の垂直入射吸音率を示す図
【図5】上記実施の形態1に係る低周波吸音材の膜(質量)と第1多孔質体層(バネ)の積層体からなる吸音材モデルを示す図
【図6】上記実施の形態1に係る低周波吸音材の第1多孔質体層の厚さを変化させたときの吸音率ピークの変化をシミュレーションした図
【図7】上記実施の形態1に係る低周波吸音材の第1多孔質体層の厚さを変化させたときの吸音率ピークの変化をシミュレーションした図
【図8】上記実施の形態1に係る低周波吸音材の第1多孔質体層の厚さを変化させたときの吸音率ピークの変化をシミュレーションした図
【図9】上記実施の形態1に係る低周波吸音材の第1多孔質体層のヤング率を変化させたときの吸音率ピークの変化をシミュレーションした図
【図10】上記実施の形態1に係る低周波吸音材の第1多孔質体層のヤング率を変化させたときの吸音率ピークの変化をシミュレーションした図
【図11】上記実施の形態1に係る低周波吸音材の第1多孔質体層の面密度を変化させたときの吸音率ピークの変化をシミュレーションした図
【図12】上記実施の形態1に係る低周波吸音材の第1多孔質体層の減衰比を変化させたときの膜の面密度と理論上の垂直入射吸音率が最大(1.0)となる周波数の関係をシミュレーションした図
【図13】上記実施の形態1に係る低周波吸音材の50〜340Hzにおける垂直入射音圧吸音率を測定した図
【図14】上記実施の形態1に係る低周波吸音材の50〜340Hzにおける垂直入射音圧吸音率を測定した図
【図15】上記実施の形態1に係る低周波吸音材の50〜340Hzにおける垂直入射音圧吸音率を測定した図
【図16】上記実施の形態1に係る低周波吸音材の比較例1における50〜340Hzにおける垂直入射音圧吸音率を測定した図
【図17】本発明の実施の形態2に係る低周波吸音材の構造を示す断面図
【図18】上記実施の形態2に係る低周波吸音材の50〜340Hzにおける垂直入射音圧吸音率を測定した図
【図19】本発明の実施の形態3に係る低周波吸音材の構造を示す断面図
【図20】上記実施の形態3に係る低周波吸音材の他の構造を示す断面図
【図21】本発明の実施の形態4に係る低周波吸音材の構造を示す断面図
【図22】本発明の実施の形態5に係る低周波吸音材の構造を示す断面図
【図23】上記実施の形態5に係る低周波吸音材の実施例5の低周波吸音材の50〜5000Hzにおける残響室法吸音率を測定した図
【図24】上記実施の形態5に係る低周波吸音材の実施例6の低周波吸音材の構造を示す断面図
【図25】上記実施の形態5に係る低周波吸音材の実施例6の低周波吸音材の50〜5000Hzにおける残響室法吸音率を測定した図
【図26】上記実施の形態5に係る低周波吸音材の比較例2の構造を示す断面図
【図27】上記実施の形態5に係る低周波吸音材の比較例2の50〜5000Hzにおける残響室法吸音率を測定した図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
(実施の形態1)
図2は、本発明の実施の形態1に係る低周波吸音材の構造を示す断面図である。本実施の形態の吸音材は、200Hzより低い周波数域の騒音を効果的に吸収する低周波吸音材に適用した例である。
【0027】
図2において、低周波吸音材100は、音源1に対向して設置される膜状の第1質量部101と、第1質量部101の背面側(音源1と反対側)に積層され、多孔質体又は弾性体からなる第2質量部102からなる質量層110と、第2質量部102の背面側(音源1と反対側)に積層されるばね機能としての第1多孔質体層120と、を備える。低周波吸音材100は、第1多孔質体層120が剛壁130側に設置される。
【0028】
〔質量層110〕
質量層110は、質量層110の面密度、すなわち、第1質量部101と第2質量部102の面密度の合計が2.0〜10.0kg/mとなるように形成される。
【0029】
第1質量部101と第2質量部102は、接着により一体化する。第1質量部101と第2質量部102とが一体化することで、第1質量部101と第2質量部102の双方が、ばね−マス系のマス(質量層)を形成する。第1質量部101と第2質量部102からなる質量層110とすることで、質量層110の面密度(第1質量部101と第2質量部102の面密度の合計)を2.0〜10.0kg/mと大きくしても剛性による膜振動低下の問題を解決することができる。
【0030】
なお、第1質量部101と第2質量部102は、接着剤による一体化でも自己融着による一体化でも構わない。また、第2質量部102は、第1質量部101の膜振動を損なわないよう形成し、マス(質量層)としての機能に加えて、ばねとしての機能も有する。
【0031】
〔第1質量部101〕
第1質量部101の膜は、膜振動を損なわない柔軟性を有する。第1質量部101の膜は、通気性のない材料にて構成されており、ゴム、樹脂、金属からなる膜、あるいはこれらを組み合わせることにより柔軟性のある柔らかな層が形成される。第1質量部101の膜が柔軟性を有することで、音が斜めから入射しても追従した振動が可能となる。
【0032】
第1質量部101は、ゴム、アクリル樹脂やPVC樹脂等の樹脂、金属からなる膜、又はこれらの組み合わせにより形成される。第1質量部101は、剛性の小さい柔らかい層である。なお、金属膜の例としては例えばアルミ箔が、組み合わせの例としては、金属膜とゴム膜の積層体が挙げられる。
【0033】
膜の厚さは、ゴム、アクリルやPVC等の樹脂の場合には0.1〜3mm、金属膜の場合には0.01〜0.2mmが好適である。ゴム又は樹脂膜単体の膜厚が3mmを超える、あるいは金属膜単体の膜厚が0.2mmを超えると膜に剛性が生じ、膜としての振動が減少するため所定の吸音特性が得られなくなる。以下、膜の剛性が所定以下であって、所望の振動を得ることができる膜を、「膜振動を損なわない柔軟性を有する膜」と呼ぶ。
【0034】
膜振動を損なわない柔軟性を有する膜は、膜材のヤング率に対して厚さを調整することにより形成される。金属膜としてアルミ箔を設けた場合、アルミニウムのヤング率は7×1010(N/m)であるが、金属膜としての厚さを0.01〜0.2mmとすることで、膜の柔軟性を維持することができる。なお、アルミ箔単体としての面密度は、アルミニウムの密度が2700(kg/m)として、0.027(kg/m)〜0.54(kg/m)となる。
【0035】
また、金属膜としてアルミ箔を使用した場合、第1質量部101を厚さが0.01〜0.2mmのアルミ箔とゴム膜又は樹脂膜の積層体とし、第1質量部101の面密度と後述する第2質量部102の面密度の合計が2.0〜10.0(kg/m)となるように形成されることが好ましい。
【0036】
次に、膜振動を損なわない柔軟性を有する膜として、ゴム膜や樹脂膜を形成した場合、ゴム膜に使用されるゴム材は、硬度にも留意する必要がある。ヤング率は、室温下で0.2×10(N/m)〜5×10(N/m)の範囲とするのが好ましい。そして、ゴム膜又は樹脂膜の厚さを0.1〜3mmとすることで、膜の柔軟性を維持する。また、上記のように各々形成した金属膜とゴム膜又は樹脂膜を積層した構成であっても膜振動を損なわない柔軟性を有する。
【0037】
〔第2質量部102〕
第2質量部102は、柔軟性を有する第1質量部101の膜振動を損なわないよう形成する。第2質量部102は、多孔質体あるいは弾性体からなる。上記多孔質体としてはグラスウール、ロックウール又はこれらの混合物、あるいはウレタン樹脂から形成され、上記弾性体としてはゴム材から形成される。
【0038】
ここで、第1質量部101と第2質量部102は、接着剤又は自己融着にて一体化される。このため、第2質量部102の剛性が大きい場合、第1質量部101の膜振動が十分機能しない懸念がある。第1質量部101の膜振動を損なわない多孔質体又は弾性体とするためには、第2質量部102のヤング率は、室温下で1×10(N/m)〜1×10(N/m)の範囲とするのが好ましい。なお、第2質量部102の厚さは、質量部として第1質量部101と第2質量部102の面密度の合計が2.0〜10.0(kg/m)となるように調整する。
【0039】
上記第1質量部101、及び第2質量部102のゴム材として、シリコーンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、多硫化ゴム、ポリオレフィンのうちから選択された何れかのゴムを使用してもよい。
【0040】
〔第1多孔質体層120〕
第1多孔質体層120は、グラスウール、ロックウール又はこれらの混合物、あるいはウレタン樹脂からなる多孔質体で形成される。第1多孔質体層120は、減衰率(減衰比)が、0.05〜0.25程度となる。
【0041】
以下、上述のように構成された低周波吸音材100の構造について説明する。
【0042】
[膜状吸音材モデルによる吸音率予測]
まず、膜状吸音材モデルによる吸音率予測について述べる。
【0043】
図3は、通気のないゴム膜と多孔質体の積層からなる吸音材の垂直入射吸音率を示す図である。質量部は、ゴム膜とし、その厚さは、0.2mmとした。質量層の面密度は、0.5kg/mである。第1多孔質体層は、グラスウールとし、その厚さを50mmとした。
【0044】
図3に示すように、吸音率ピークは220Hz付近にみられ、吸音率ピーク値は0.86であった。
【0045】
図4は、図3と同一の吸音材において、ゴム膜に多数の孔(開口)を設けた場合の垂直入射吸音率を示す図である。
【0046】
図4に示すように、ゴム膜に多数の孔(開口)を設け、通気を有する構造とした場合には、220Hz付近にみられた吸音率ピークは消滅する。
【0047】
本発明者らは、63Hz周波数帯〜125Hz周波数帯の周波数域における騒音を効果的に吸収する吸音材を検討するにあたり、通気のない膜を有する吸音材とし、吸音率ピークの形成によって騒音を効果的に吸収することが有用であることに想到した。
【0048】
特許文献2及び3には、膜層を有する吸音材が記載されている。しかしながら、特に63Hz周波数帯〜125Hz周波数帯の周波数域で吸音率ピークがあり、しかも所定のピーク値(垂直入射吸音率0.8以上)となる吸音材は得られていない。
【0049】
本発明は、63Hz周波数帯〜125Hz周波数帯の周波数域で所定のピーク値(垂直入射吸音率0.8以上)が得られる膜状吸音材構成について、シミュレーションにて検討を行い、その結果をもとに最適な低周波吸音材を構築した。
【0050】
図5は、膜(質量)と第1多孔質体層(バネ)の積層体からなる吸音材モデルを示す図である。
【0051】
今回、膜(質量)の面密度や第1多孔質体層120のばね定数と垂直入射吸音率αの関係について、下記に示す理論式(2)を導出し、各周波数による垂直入射吸音率αをシミュレーションした。
【0052】
【数2】

【0053】
式(2)において、ζは多孔質体層の減衰率、sは多孔質体層のばね定数(N/m)、ρは空気の密度(kg/m)、cは空気中の音速(m/s)、fは周波数(Hz)、mは膜の面密度(kg/m)である。
【0054】
なお、第1多孔質体層のばね定数(N/m)は、第1多孔質体層のヤング率(N/m)を第1多孔質体層120の厚さ(m)で割ったものとなる。第1多孔質体層の減衰率(減衰比)は、適用する多孔質材料によって定まる値である。
【0055】
図6乃至図8は、第1多孔質体層の厚さを変化させたときの吸音率ピークの変化をシミュレーションした図である。図6は、膜(質量)の面密度が0.6kg/m、図7は、膜(質量)の面密度が2.4kg/m、図8は、膜(質量)の面密度が3.6kg/mである場合をそれぞれ示す。第1多孔質体層のヤング率は1.0×10N/m、第1多孔質体層の減衰比は0.1とした。
【0056】
そして、第1多孔質体層120の厚さを25mm、50mm、75mm、100mmと変化させたときの吸音率ピークの変化をシミュレーションした。
【0057】
図6乃至図8に示すように、第1多孔質体層の厚さを厚くする(すなわちばね定数を小さくする)に従い、吸音率ピークは低周波側にシフトする。しかし、膜(質量)の面密度が0.6kg/mの場合は、吸音率ピーク値も下がってしまう(図6参照)。一方、膜(質量)の面密度が2.4kg/m及び3.6kg/mの場合は、吸音率ピーク値が減少しないことがわかる(図7及び図8参照)。
【0058】
したがって、ばね定数を小さくして吸音率ピークを低周波側にシフトさせる場合、吸音率ピーク値を低下させないためには、膜(質量)の面密度を例えば2.4kg/mと高くする必要がある。
【0059】
図9及び図10は、第1多孔質体層のヤング率(N/m)を変化させたときの吸音率ピークの変化をシミュレーションした図である。図9は、膜(質量)の面密度が0.6kg/m、図10は、膜(質量)の面密度が3.6kg/mである場合を示す。第1多孔質体層120の減衰比が0.1、第1多孔質体層の厚さが25mmとした。
【0060】
そして、第1多孔質体層のヤング率(N/m)を変化させたときの吸音率ピークの変化をシミュレーションした。
【0061】
図9及び図10に示すように、第1多孔質体層120のヤング率(N/m)を小さくする(すなわちばね定数を小さくする)と吸音率ピークは低周波側にシフトする。しかし、膜(質量)の面密度が0.6kg/mの場合は、吸音率ピーク値も下がってしまう(図9参照)。一方、膜(質量)の面密度が3.6kg/mの場合は、第1多孔質体層のヤング率(N/m)を小さくして吸音率ピークを低周波側にシフトさせても吸音率ピーク値はほとんど変わらないことがわかる(図10参照)。
【0062】
図11は、第1多孔質体層の面密度(kg/m)を変化させたときの吸音率ピークの変化をシミュレーションした図である。第1多孔質体層のヤング率が1.0×10N/m、第1多孔質体層の減衰比が0.1、第1多孔質体層の厚さが50mmとした。
【0063】
そして、膜(質量)の面密度(kg/m)を0.6kg/m、1.2kg/m、2.4kg/m、3.6kg/mと変化させたときの吸音率ピークをシミュレーションした。
【0064】
図11に示すように、膜(質量)の面密度が高いほど吸音率ピークは低周波側にシフトすることがわかる。
【0065】
図12は、第1多孔質体層の減衰比を変化させたときの膜の面密度と理論上の垂直入射吸音率が最大(1.0)となる周波数の関係をシミュレーションした図である。
【0066】
膜(質量)の面密度と、上述した理論式(2)の垂直入射吸音率αが最大(吸音率1.0)となる周波数の関係について、第1多孔質体層の減衰比を変化させてシミュレーションした。なお、第1多孔質体層の減衰比の範囲は、グラスウールやロックウール又はこれらの混合物、ウレタン樹脂を想定すると0.05〜0.25となる。
【0067】
図12から下記(1)−(3)がわかる。
【0068】
(1)第1多孔質体層120の減衰比を0.25とした場合
例えば、63Hz近傍における理論上の垂直入射吸音率αを最大(吸音率1.0)とするためには、膜(質量)の面密度を2.0kg/mとすればよい。
【0069】
(2)第1多孔質体層120の減衰比を0.05とした場合
この場合でも、膜(質量)の面密度が10.0kg/mであれば、理論上の垂直入射吸音率αが最大(吸音率1.0)となる周波数を63Hz近傍とすることが可能となる。
【0070】
(3)膜(質量)の面密度が同一であっても、減衰比を大きくすることで、理論上の垂直入射吸音率αをより低周波数側にシフトさせることが可能である。
【0071】
前記図11に示すように、膜(質量)の面密度を2.4kg/m、3.6kg/mと高くすることにより吸音率のピーク周波数を低周波数側にシフトさせることができる。さらに、第1多孔質体層120の厚さを厚くしたり、ヤング率を下げることによって第1多孔質体層のばね定数を小さくしてする。これにより、吸音率のピーク周波数を低周波側にシフトさせた場合であっても、膜(質量)の面密度を2.4kg/mあるいは3.6kg/mとすることにより、吸音率ピーク値の低下を招くことなく、所定の吸音率特性が得られることがわかった(前記図7、図8及び図10参照)。
【0072】
[第1多孔質体層120の検討]
次に、第1多孔質体層120について説明する。
【0073】
第1多孔質体層120は、グラスウールやロックウール又はこれらの混合物やウレタン樹脂を想定している。この場合の第1多孔質体層120の減衰比は、0.05〜0.25となる。前記図12より、吸音率のピークを所望の周波数とする場合、第1多孔質体層120の減衰比が小さいほど、膜(質量)の面密度は高くする必要がある。ここで、第1多孔質体層の減衰比は、0.05〜0.25と想定されるので、第1多孔質体層120の減衰比が0.05の場合において、63Hz近傍の理論上吸音率を最大(吸音率1.0)とすることが可能となるように膜(質量)の面密度を規定すればよい。
【0074】
前記図12より、膜の面密度が10.0kg/mであれば、第1多孔質体層120の減衰比が0.05であっても63Hz近傍にて理論上吸音率を最大(吸音率1.0)とすることが可能となる。
【0075】
また、膜(質量)の面密度が2.0kg/m以上であれば、第1多孔質体層120のばね定数を小さくして吸音率ピークを低周波数側にシフトさせても吸音率ピーク値は低下しない。面密度を2.0kg/mとした場合は、減衰比が0.15〜0.25の多孔質体を適宜設定することで、63Hz〜125Hz近傍において理論上、吸音率が最大(吸音率1.0)とすることが可能となる。
【0076】
以上のことから、膜(質量)の面密度を2.0kg/m〜10.0kg/mとする。これにより、グラスウールやロックウール、ウレタン樹脂等からなる第1多孔質体層120のばね定数を小さくして、吸音率ピークを低周波数側にシフトさせても、63Hz周波数帯〜125Hz周波数帯の周波数域において所望の吸音率ピーク値(垂直入射吸音率0.8以上)を得ることが可能となる。第1多孔質体層120のばね定数を小さくするには、第1多孔質体層120の厚さを厚くしたり、ヤング率を下げる方法がある。
【0077】
[吸音材構造の検討]
上述したシミュレーションの結果より、膜(質量)の面密度を2.0kg/m〜10.0kg/mの範囲で設定すれば、63Hz〜125Hzの周波数域においても理論上の垂直入射吸音率αを最大(吸音率1.0)とすることが可能となる。
【0078】
一方、吸音率ピークを低周波数側にシフトさせるため、膜の質量を重くするという考えは従来からあった。しかし、吸音ピーク値を所定のピーク値(垂直入射吸音率0.8以上)とする方法については見出されていなかった。従来の膜状吸音材構造では、特に63Hz周波数帯〜125Hz周波数帯の周波数域で所定のピーク値(垂直入射吸音率0.8以上)となる吸音材が実現できていなかった。この理由を以下のように推測した。
【0079】
(1)膜の質量を重くするため、膜厚を厚くした場合、膜に剛性が生じてしまい、逆に膜の振動が減少することで所定の吸音特性が得られない。
【0080】
(2)膜の質量を重くするため、金属膜のように密度の大きい材料を膜材として選定した場合、材料自体の剛性により十分な膜振動ができない懸念がある。このため、膜の厚さに制約が生じ、所望の面密度を確保できない。
【0081】
そこで、音のエネルギが膜の振動エネルギに変化し吸音する膜振動機能を維持しつつ、シミュレーション結果より得られた膜(質量)の面密度に設定するため、本低周波吸音材は、以下の構成を有する。
【0082】
前記図2に示すように、低周波吸音材100は、膜状の第1質量部101と、第1質量部101の背面側(音源と反対側)に積層され、多孔質体又は弾性体からなる第2質量部102により質量層110を形成し、質量層110の面密度、すなわち、第1質量部101と第2質量部102の面密度の合計が2.0〜10.0kg/mとした。また、低周波吸音材100は、第2質量部102層の背面側(音源1と反対側)にばね機能としての第1多孔質体層120を積層し、第1多孔質体層120を剛壁130側に設置する。
【0083】
第1質量部101の膜は、通気性のない材料にて構成されており、ゴム、樹脂、金属からなる膜、あるいはこれらを組み合わせ柔軟性のある柔らかな層を形成する。第1質量部101の膜が柔軟性を有することで、音が斜めから入射しても追従した振動が可能となる。
【0084】
第1質量部101と第2質量部102は、接着により、一体化構造とすることで、ばね−マス系のマス(質量層)を形成する。第1質量部101と第2質量部102からなる質量層110とすることで、質量層110の面密度(第1質量部101と第2質量部102の面密度の合計)を2.0〜10.0kg/mと大きくしても剛性による膜振動低下の問題を解決することができる。
【0085】
なお、第1質量部101と第2質量部102は、接着剤による一体化でも自己融着による一体化でも構わない。また、第2質量部102は、第1質量部101の膜振動を損なわないよう形成し、マス(質量層)としての機能と合わせ、ばねとしての機能も有する。
【0086】
上記構成により、低周波吸音材100は、吸音率のピークが63Hz周波数帯〜125Hz周波数帯の周波数域で、かつ所定の吸音率ピーク値(垂直入射吸音率0.8以上)を有する優れた効果を有する吸音材が得られる。
【0087】
なお、上記構成において、第1質量部101と第2質量部102の面密度の合計が10.0kg/mを超えた場合、ばね機能としての第1多孔質体層120の選択も含め、吸音率ピークを63Hz周波数帯〜125Hz周波数帯の周波数域にコントロールすることが困難になる。
【0088】
本実施の形態の低周波吸音材100は、第1質量部101と第1質量部101の背面側(音源の反対側、図2では剛壁130側)に積層される第2質量部102からなる質量層110と、第2質量部102の背面側に積層される第1多孔質体層120とを備えている。低周波吸音材100は、第1質量部101と第2質量部102の面密度の合計が2.0kg/m〜10.0kg/mとなるように構成されている。
【0089】
以下、本実施の形態に係る低周波吸音材100の実施例と比較例について説明する。
【0090】
[実施例1]
実施例1は、第1質量部101が金属膜とゴム膜の積層体、第2質量部102がウレタン樹脂からなる質量層110と、第2質量部102の背面側(音源1と反対側)にウレタン樹脂からなる第1多孔質体層120が積層され、質量層110の面密度(第1質量部101と第2質量部102の面密度の合計)が2.36kg/mの吸音体である。
【0091】
なお、実施例1の第1質量部101には金属膜のヤング率が7×1010(N/m)、ゴム膜のヤング率が0.5×10(N/m)の材料を採用し、全体の厚さを1mmに形成して膜振動を損なわない柔軟性を有する第1質量層とした。また、第2質量部102のウレタン樹脂はヤング率0.2×10(N/m)の材料を採用して膜振動を損なわないよう形成している。
【0092】
図13は、実施例1における吸音材の50〜340Hzにおける垂直入射音圧吸音率を測定した図である。
【0093】
図13に示すように、吸音率のピークは125Hzとなり、吸音率ピーク値も0.90と所望のピーク値が得られた。
【0094】
第1質量部101:金属膜+ゴム膜 厚さ:1mm
第2質量部102:ウレタン樹脂 厚さ:25mm
質量層110の面密度:2.36kg/m
第1多孔質体層120:ウレタン樹脂 厚さ:75mm
吸音率ピーク 125Hz
吸音率ピーク値 0.90
【0095】
[実施例2]
実施例2は、第1質量部101が樹脂膜、第2質量部102がグラスウールからなる質量層110と、第2質量部102の背面側(音源1と反対側)にグラスウールからなる第1多孔質体層120が積層され、質量層110の面密度(第1質量部101と第2質量部102の面密度の合計)が2.90kg/mの吸音体である。
【0096】
なお、実施例2の第1質量部101における樹脂膜のヤング率は1.0×10(N/m)の材料を採用、全体の厚さを0.2mmに形成して、膜振動を損なわない柔軟性を有する第1質量層とした。また、第2質量部のグラスウールは、ヤング率1.0×10(N/m)の材料を採用して膜振動を損なわないよう形成している。なお、第2質量部102と第1多孔質体層120はともにグラスウールからなるが、実施例2では第2質量部102の密度を96(kg/m)、第1多孔質体層120の密度を32(kg/m)とした。第2質量部102の密度を第1多孔質体層120の密度より大きくした構成とした方が吸音率ピークの低周波シフトには好適である。
【0097】
図14は、実施例2における吸音材の50〜340Hzにおける垂直入射音圧吸音率を測定した図である。
【0098】
図14に示すように、吸音率のピークは103Hzとなり、吸音率ピーク値も0.84と所望のピーク値が得られた。
【0099】
第1質量部101:樹脂膜 厚さ:0.2mm
第2質量部102:グラスウール 厚さ:25mm
質量層110の面密度:2.90kg/m
第1多孔質体層120:グラスウール 厚さ:75mm
吸音率ピーク 103Hz
吸音率ピーク値 0.84
【0100】
[実施例3]
実施例3は、第1質量部101が金属膜とゴム膜の積層体、第2質量部102がグラスウールからなる質量層110と、第2質量部102の背面側(音源1と反対側)にグラスウールからなる第1多孔質体層120が積層され、質量層110の面密度(第1質量部101と第2質量部102の面密度の合計)が7.61kg/mの吸音体である。
【0101】
図15は、実施例3における吸音材の50〜340Hzにおける垂直入射音圧吸音率を測定した図である。
【0102】
図15に示すように、質量層110の面密度を7.61kg/mまで高くし、第1多孔質体層120を実施例1、2より厚くすることで、吸音率のピーク周波数が60Hzと63Hz帯域の中心周波数以下までシフトさせることができ、しかも63Hz帯域の低周波数域においても吸音率ピーク値が0.81と所望の値を維持できている。
【0103】
なお、実施例3の第1質量部101には、金属膜のヤング率が7×1010(N/m)、ゴム膜のヤング率が0.5×10(N/m)の材料を採用し、全体の厚さを3mmに形成して膜振動を損なわない柔軟性を有する第1質量層とした。また、第2質量部102のグラスウールは、ヤング率1.0×10(N/m)の材料を採用して膜振動を損なわないよう形成している。実施例3においても第2質量部102のグラスウール密度を96(kg/m)、第1多孔質体層120のグラスウール密度を32(kg/m)とした。
【0104】
第1質量部101:金属膜+ゴム膜 厚さ:3.0mm
第2質量部102:グラスウール 厚さ:25mm
質量層110の面密度:7.61kg/m
第1多孔質体層120:グラスウール 厚さ:125mm
吸音率ピーク 60Hz
吸音率ピーク値 0.81
【0105】
[比較例1]
比較例1は、第1質量部101がゴム膜、第2質量部102がグラスウールからなる質量層と、第2質量部102の背面側(音源1と反対側)にグラスウールからなる第1多孔質体層120が積層され、質量層110の面密度(第1質量部101と第2質量部102の面密度の合計)が1.3kg/mの吸音体である。ここで比較例1は、第1質量部101と第2質量部102の面密度の合計が、2.0〜10.0kg/mの範囲から外れている。
【0106】
図16は、比較例1における50〜340Hzにおける垂直入射音圧吸音率を測定した図である。
【0107】
図16に示すように、吸音率ピークは176Hzであり、吸音率ピーク値は0.94であるが、125Hz周波数帯の中心周波数125Hzにおける吸音率は0.56、63Hz周波数帯の中心周波数63Hzにおける吸音率は0.11と低下してしまい。所望の吸音率ピーク値(垂直入射吸音率0.8以上)には至らなかった。
【0108】
第1質量部101:ゴム膜 厚さ:0.2mm
第2質量部102:グラスウール 厚さ:25mm
質量層110の面密度:1.3kg/m
第1多孔質体層120:グラスウール 厚さ:75mm
吸音率ピーク 176Hz
吸音率ピーク値 0.94
【0109】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、低周波吸音材100は、膜状の第1質量部101と、第1質量部101の背面側に積層され、多孔質体又は弾性体からなる第2質量部102とからなる質量層110と、第2質量部102の背面側に積層されるばね機能としての第1多孔質体層120と、を備える。質量層110は、第1質量部101と第2質量部102の面密度の合計が2.0乃至10.0kg/mである。
【0110】
上記構成により、63Hz周波数帯〜125Hz周波数帯の周波数域において吸音率ピークを有し、かつ所望のピーク値(垂直入射吸音率0.8以上)となる低周波吸音材を実現することができる。したがって、設備等で問題となる200Hzより低い周波数域の騒音を効果的に吸収することができる。
【0111】
また、本実施の形態では、第1質量部101と第2質量部102は接着により、一体化構造とすることで、ばね−マス系のマス(質量層110)を形成する。第1質量部101と第2質量部102からなる質量層110とすることで、質量層110の面密度を2.0〜10.0kg/mと大きくしても剛性による膜振動低下を防ぐことができる。
【0112】
また、本実施の形態では、第1質量部101の膜が、膜振動を損なわない柔軟性を有し、第2質量部102は、第1質量部101の膜振動を損なわないように形成することで、音が斜めから入射しても追従した振動が可能となる。
【0113】
また、第2質量部102は、マス(質量層)としての機能と、ばねとしての機能を併せ持つことで、ばね機能としての第1多孔質体層120と共働してばね定数を低下させることができる。
【0114】
(実施の形態2)
実施の形態2は、第2質量部の背面側表面を凹凸をつけた波形や平目形状とする例である。
【0115】
図17は、本発明の実施の形態2に係る低周波吸音材の構造を示す断面図である。本実施の形態の説明に当たり、図2と同一構成部分には同一番号を付して重複箇所の説明を省略する。
【0116】
図17において、低周波吸音材200は、膜状の第1質量部101と、第1質量部101の背面側(音源1と反対側)に積層される第2質量部202からなる質量層210と、第2質量部202の背面側(音源1と反対側)に積層されるばね機能としての第1多孔質体層120と、を備える。低周波吸音材200は、第1多孔質体層120が剛壁130側に設置される。
【0117】
低周波吸音材200は、第1質量部101と第2質量部202の面密度の合計が2.0kg/m〜10.0kg/mとなるように構成されている。
【0118】
第2質量部202は、背面側表面が波形や平目形状の凹凸構造202aを有する。凹凸構造202aの凸部が対向する第1多孔質体層120と当接して点支持あるいは線支持される。
【0119】
このように、低周波吸音材200は、第2質量部202の背面側表面に凹凸構造202aを設け、対向する第1多孔質体層120に点支持あるいは線支持とすることで、さらにばね定数を低下させることができる。
【0120】
[実施例4]
実施例4は、図17の構成による低周波吸音材200の実施例である。第1質量部101が金属膜とゴム膜の積層体、第2質量部202がウレタン樹脂からなる質量層(質量層210)と、第2質量部202の背面側(音源1と反対側)にグラスウールからなる第1多孔質体層120が積層される。第2質量部202は、第1多孔質体層120と対向する背面側表面が波形や平目形状の凹凸構造202aを有する。
【0121】
上記質量層の面密度(第1質量部101と第2質量部202の面密度の合計)は6.46kg/mである。
【0122】
図18は、実施例4における吸音材の50〜340Hzにおける垂直入射音圧吸音率を測定した図である。
【0123】
図18に示すように、第2質量部202の第1多孔質体層120と対向する背面側表面に波形や平目形状の凹凸構造202aを設けることにより、さらにばね定数を低下させた結果、92Hzの吸音率ピーク周波数における吸音率ピーク値を0.92まで高めることができた。
【0124】
第1質量部101:金属膜+ゴム膜 厚さ:3.0mm
第2質量部102:背面側表面に凹凸を付けたウレタン樹脂 厚さ:50mm
質量層110の面密度:6.46kg/m2
第1多孔質体層120:グラスウール 厚さ:50mm
吸音率ピーク 92Hz
吸音率ピーク値 0.92
【0125】
このように、本実施の形態の低周波吸音材200は、第2質量部202は、背面側表面に凹凸構造202aを設けることで、さらにばね定数を低下させることができ、吸音率ピーク値をより高めることができる。
【0126】
(実施の形態3)
実施の形態3は、第1多孔質体層の背面側表面又は音源側表面に波形や平目形状の凹凸構造を設ける例である。
【0127】
図19は、本発明の実施の形態3に係る低周波吸音材の構造を示す断面図である。図2と同一構成部分には同一番号を付している。
【0128】
図19において、低周波吸音材300は、膜状の第1質量部101と、第1質量部101の背面側(音源1と反対側)に積層される第2質量部102からなる質量層110と、第2質量部102の背面側(音源1と反対側)に積層されるばね機能としての第1多孔質体層320と、を備える。低周波吸音材300は、第1多孔質体層320が剛壁130側に設置される。
【0129】
低周波吸音材300は、第1質量部101と第2質量部102の面密度の合計が2.0kg/m〜10.0kg/mとなるように構成されている。
【0130】
第1多孔質体層320は、背面側表面が波形や平目形状の凹凸構造320aを有する。凹凸構造320aの凸部が対向する剛壁130と当接して点支持あるいは線支持される。
【0131】
このように、低周波吸音材300は、第1多孔質体層320の背面側表面に凹凸構造320aを設け、対向する剛壁130に点支持あるいは線支持とすることで、さらにばね定数を低下させることができる。
【0132】
図20は、本発明の実施の形態3に係る低周波吸音材の他の構造を示す断面図である。
【0133】
図20に示すように、低周波吸音材300Aは、第1多孔質体層320Aの音源側表面に凹凸構造320bを設け、対向する第2質量部102に点支持あるいは線支持とする。
【0134】
低周波吸音材300Aは、図19の低周波吸音材300の第1多孔質体層320の背面側表面に凹凸構造320aを設ける構成に代えて、第1多孔質体層320Aの音源側表面に凹凸構造320bを設ける。
【0135】
このように、本実施の形態の低周波吸音材300Aは、第2質量部102の対向面である第1多孔質体層320Aの音源側表面に凹凸構造320bを設けることで、図19の第1多孔質体層320の背面側表面に凹凸構造320aを設ける構成と同様に、効果的にばね定数を低下させることができ、吸音率ピーク値をより高めることができる。
【0136】
(実施の形態4)
実施の形態4は、第2質量部及び第1多孔質体層の双方の背面側表面に凹凸構造を設ける例である。
【0137】
図21は、本発明の実施の形態4に係る低周波吸音材の構造を示す断面図である。図17及び図19と同一構成部分には同一番号を付している。
【0138】
図21において、低周波吸音材400は、膜状の第1質量部101と、第1質量部101の背面側(音源1と反対側)に積層される第2質量部202からなる質量層210と、第2質量部202の背面側(音源1と反対側)に積層されるばね機能としての第1多孔質体層320と、を備える。低周波吸音材400は、第1多孔質体層320が剛壁130側に設置される。
【0139】
第2質量部202は、背面側表面が波形や平目形状の凹凸構造202aを有する。凹凸構造202aの凸部が対向する第1多孔質体層320の音源側表面と当接して点支持あるいは線支持される。
【0140】
第1多孔質体層320は、背面側表面が波形や平目形状の凹凸構造320aを有する。凹凸構造320aの凸部が対向する剛壁130と当接して点支持あるいは線支持される。
【0141】
このように、本実施の形態の低周波吸音材400は、第2質量部202の背面側表面に凹凸構造202aを設け、さらに第1多孔質体層320の背面側表面に凹凸構造320aを設けているので、より一層効果的にばね定数を低下させることができる。
【0142】
(実施の形態5)
上記各実施の形態に係る低周波吸音材は、200Hzより低い周波数域の騒音を効果的に吸収することができた。特に、63Hz周波数帯〜125Hz周波数帯の周波数域においても所望の吸音率となる低周波吸音材を実現することができた。
【0143】
本実施の形態では、上記各実施の形態に係る低周波吸音材による63Hz周波数帯〜125Hz周波数帯の低周波数域に加え、低周波数域から5000Hzの高周波数域まで広帯域に亘って所望の吸音率となる吸音材構成を説明する。
【0144】
図22は、本発明の実施の形態5に係る低周波吸音材の構造を示す断面図である。本実施の形態の説明に当たり、図17と同一構成部分には同一番号を付して重複箇所の説明を省略する。
【0145】
図22において、低周波吸音材500は、膜状の第1質量部101と、第1質量部101の背面側(音源1と反対側)に積層される第2質量部202からなる質量層210と、第2質量部202の背面側(音源1と反対側)に積層されるばね機能としての第1多孔質体層120と、第1質量部101の音源側に積層される第2多孔質体層510と、を備える。低周波吸音材500は、第1多孔質体層120が剛壁130側に設置される。
【0146】
第2多孔質体層510は、第1多孔質体層120と同様に、グラスウール、ロックウール又はこれらの混合物、あるいはウレタン樹脂からなる多孔質体で形成される。多孔質体層は、減衰率(減衰比)が、0.05〜0.25程度となる。
【0147】
第2多孔質体層510は、剛壁130側から音源1側に向かって密度が減少する構成とする。具体的には、第2多孔質体層510は、密度が異なる複数の層(高密度層511,低密度層512)を備え、複数の層(高密度層511,低密度層512)は、剛壁130側から音源側に向かって密度が順次小さくなるように配置されている。
【0148】
低周波吸音材500は、第2多孔質体層510を備えることで、剛壁130から反射した音波は、第2多孔質体層510の高密度層511から低密度層512に伝達することで、高密度部分が付加質量の役割を果たし、低密度部分がバネとして作用することにより吸音を行うことができる。
【0149】
なお、本実施の形態では、第2多孔質体層510は、剛壁側から音源側に向かって密度が順次小さくなるように配置される密度が異なる複数の層(高密度層511,低密度層512)を備えているが、第2多孔質体層510は、剛壁130側から音源1側に向かって密度が減少するように構成する態様であれば、どのような構成でもよい。
【0150】
例えば、第2多孔質体層510は、密度が剛壁130側から音源1側に向かって段階的に減少するように構成されていてもよく、第2多孔質体層510は、剛壁130側から音源1側に向かって密度が連続的に減少するように構成されていてもよい。
【0151】
以下、本実施の形態に係る低周波吸音材の実施例と比較例について説明する。
【0152】
[実施例5]
実施例5は、第1質量部101が金属膜とゴム膜の積層体、第2質量部202がウレタン樹脂からなる。このウレタン樹脂の背面側表面に凹凸構造を設け、凹凸構造の凸部が対向する第1多孔質体層120と当接して点支持あるいは線支持されている。第2質量部202の背面側(音源1と反対側)に密度32(kg/m)のグラスウールからなる第1多孔質体層120が積層される。
【0153】
第1質量部101の前面側(音源側)に第2多孔質体層510を音源側からの密度がそれぞれ16(kg/m)、24(kg/m)のグラスウール層から構成されている。質量層の面密度(第1質量部101と第2質量部202の面密度の合計)は、6.46kg/mの吸音体である。
【0154】
図23は、実施例5の低周波吸音材の50〜5000Hzにおける残響室法吸音率を測定した図である。50〜5000Hzの広域測定のため、残響室法吸音率にて測定している。
【0155】
図23に示すように、質量層の面密度を6.46kg/mまで高くし、第2質量部202の背面側(音源1と反対側)に第1多孔質体層120を積層する。また、第1質量部101の前面側(音源1側)に第2多孔質体層510を音源1側からの密度がそれぞれ16(kg/m)、24(kg/m)と密度の異なる積層体を積層する。
【0156】
これにより、トータル厚さ203mmとなり、広域な周波数域に亘って吸音する吸音材として使用されている従来の吸音構造の1/3程度の厚さとなる。また、63Hz帯域から5000Hzまで非常に広域な周波数帯域まで所望の吸音率(残響室法吸音率において0.8以上)を維持することができる。
【0157】
また、本実施の形態に係る低周波吸音材500は、例えば前記図15の実施例3と比較して、63Hz周波数帯〜125Hz周波数帯の低周波数域に加え、中高低周波数域(〜5000Hz)も吸音できる効果がある。すなわち、前記図15の実施例3では、63Hz近傍に吸収ピークがあり低周波数帯の吸収のみであった。これに対して、本実施の形態に係る低周波吸音材500は、63Hz周波数帯〜125Hz周波数帯の低周波数域に加え、低周波数域から5000Hzの高周波数域まで広帯域に亘って所望の吸音率となる。
【0158】
実施例5の第1質量部101には、厚さ0.1mm、ヤング率が7×1010(N/m)の金属膜と、ヤング率が0.5×10(N/m)のゴム膜材を採用し、全体の厚さを3mmに形成して膜振動を損なわない柔軟性を有する第1質量層101とした。また、第2質量部202のウレタン樹脂は、ヤング率0.2×10(N/m)の材料を採用して膜振動を損なわないよう形成している。
【0159】
第1質量部101:金属膜+ゴム膜 厚さ:3.0mm
第2質量部202:背面側表面に凹凸を付けたウレタン樹脂 厚さ:50mm
質量層の面密度:6.46kg/m
第1多孔質体層120:密度32(kg/m)のグラスウール 厚さ:50mm
第2多孔質体層510:音源側から密度16(kg/m)厚さ 50mm、24(kg/m3)のグラスウール 厚さ50mm の2層構造
トータル厚さ:203mm
【0160】
[実施例6]
図24は、実施例6の低周波吸音材の構造を示す断面図である。本実施の形態の説明に当たり、図20と同一構成部分には同一番号を付して重複箇所の説明を省略する。
【0161】
図24において、低周波吸音材600は、膜状の第1質量部101と、第1質量部101の背面側(音源1と反対側)に積層される第2質量部102からなる質量層110と、第2質量部102の背面側(音源1と反対側)に積層されるばね機能としての第1多孔質体層520と、第1質量部101の音源側に積層される第2多孔質体層510と、を備える。低周波吸音材600は、第1多孔質体層520が剛壁130側に設置される。
【0162】
第1質量部101は、PVCからなる樹脂膜、第2質量部102は、密度96(kg/m)のグラスウールからなる。質量層の面密度(第1質量部101と第2質量部102の面密度の合計)は2.90kg/mの吸音体である。
【0163】
第1多孔質体層520は、音源側表面に凹凸構造を有するウレタン樹脂層520Aと、ウレタン樹脂層520Aの背面側に、密度32(kg/m)のグラスウール520Bとが積層されている。ウレタン樹脂層520Aは、音源側表面に凹凸構造を設け、対向する第2質量部102に点支持あるいは線支持される。
【0164】
第2多孔質体層510は、剛壁130側から音源1側に向かって密度が減少するように、密度が異なる複数の層(高密度層511,低密度層512)を備える。高密度層511は、24(kg/m)のグラスウール層、低密度層512は、16(kg/m)のグラスウール層から構成される。
【0165】
図25は、実施例6の低周波吸音材の50〜5000Hzにおける残響室法吸音率を測定した図である。
【0166】
図25に示すように、質量層の面密度を2.90kg/mとし、第2質量部102の背面側(音源1と反対側)に第1多孔質体層520を、第1質量部101の前面側(音源側)に第2多孔質体層510を音源側からの密度がそれぞれ16(kg/m)、24(kg/m)として、積層する。これにより、トータル厚さ250mmと、従来の吸音構造の1/2程度の厚さで、かつ、63Hz帯域から5000Hzまで非常に広域な周波数帯域まで所望の吸音率(残響室法吸音率において0.8以上)を維持することができる。
【0167】
これにより、63Hz帯域から5000Hzまで非常に広域な周波数帯域まで所望の吸音率を維持することができる。実施例6における低周波吸音材600は、例えば前記図14の実施例2と比較して、63Hz周波数帯〜125Hz周波数帯の低周波数域に加え、低周波数域から5000Hzの高周波数域まで広帯域に亘って所望の吸音率となる。
【0168】
実施例6の第1質量部101には、ヤング率が1.0×10(N/m)のPVCからなる樹脂膜とし、全体の厚さを0.2mmに形成して膜振動を損なわない柔軟性を有する第1質量層とした。また、第2質量部102は密度96(kg/m)で、ヤング率が1.0×10(N/m)のグラスウールとし、膜振動を損なわないよう形成している。
【0169】
第1質量部101:樹脂膜 厚さ:0.2mm
第2質量部102:密度96(kg/m)のグラスウール 厚さ:25mm
質量層の面密度:2.90kg/m
第1多孔質体層520:音源側表面に凹凸を付けたウレタン樹脂 厚さ:25mm
密度32(kg/m)のグラスウール 厚さ:50mm
第2多孔質体層510:音源側から密度16(kg/m)厚さ100mm、24(kg/m)のグラスウール 厚さ50mm の2層構造
トータル厚さ:250mm
【0170】
[比較例2]
図26は、本発明の実施の形態5の比較例2の構造を示す断面図である。本実施の形態の説明に当たり、図2及び図22と同一構成部分には同一番号を付して重複箇所の説明を省略する。
【0171】
比較例2は、第1質量部101がゴム膜、第2質量部102がグラスウールからなる質量層と、第2質量部102の背面側(音源1と反対側)にグラスウールからなる第1多孔質体層120と、第1質量部101の前面側(音源側)にグラスウールからなる第2多孔質体層510が積層され、質量層110の面密度(第1質量部101と第2質量部102の面密度の合計)が1.3kg/m、第2多孔質体層510が音源側からの密度がそれぞれ16(kg/m)、24(kg/m)の吸音体である。
【0172】
比較例2は、第1質量部101と第2質量部102の面密度の合計が、2.0〜10.0kg/mの範囲から外れている。
【0173】
比較例2の第1質量部101には、ヤング率が0.5×10(N/m)のシリコーンゴム膜とし、全体の厚さを0.2mmに形成して膜振動を損なわない柔軟性を有する第1質量層とした。また、第2質量部は密度32(kg/m)で、ヤング率が1.0×10(N/m)のグラスウールとし、膜振動を損なわないよう形成している。
【0174】
図27は、比較例2の50〜5000Hzにおける残響室法吸音率を測定した図である。
【0175】
図27に示すように、質量層の面密度が1.3kg/mの場合、100〜5000Hzの周波数域においては、所望の吸音率(残響室法吸音率において0.8以上)を維持している。しかし、100Hzより低い周波数域においては残響室法吸音率における吸音率は低下し、63Hz周波数帯の中心周波数63Hzにおける吸音率は0.4程度となり、所望の吸音率には至らなかった。
【0176】
第1質量部101:ゴム膜 厚さ:0.2mm
第2質量部102:密度32(kg/m)のグラスウールグラスウール 厚さ:25mm
質量層の面密度:1.3kg/m
第1多孔質体層120:密度32(kg/m)のグラスウール 厚さ:25mm
第2多孔質体層510:音源側から密度16(kg/m)厚さ 50mm、24(kg/m)のグラスウール 厚さ50mm の2層構造
トータル厚さ:150mm
【0177】
比較例2は、第1質量部101と第2質量部102の面密度の合計が、2.0〜10.0kg/mの範囲から外れている。このため、第2多孔質体層510の積層により、100Hzから中高周波数域は良好に吸音できるものの、100Hzより低い周波数領域においては吸音率が低下する。
【0178】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。
【0179】
例えば、本発明は、63Hz周波数帯〜125Hz周波数帯の周波数域であっても吸音率ピークを有し、また所望のピーク値(垂直入射吸音率0.8以上)を達成できる低周波吸音材であるが、200Hz近傍の騒音を効果的に吸収するため、本発明の低周波吸音材の構成を適用することも可能である。
【0180】
また、上記各実施の形態では、低周波吸音材という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、吸音材、吸音材の構造体等であってもよい。
【0181】
さらに、上記低周波吸音材を構成する各部、例えば金属膜、ゴム膜等の種類、厚み、数及び接続方法などは前述した実施の形態に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本発明に係る低周波吸音材は、設備等で問題となる200Hzより低い周波数域の騒音を効果的に吸収する低周波吸音材に適用できる。特に63Hz周波数帯〜125Hz周波数帯の周波数域においても吸音率ピークを有し、かつ所望のピーク値(垂直入射吸音率0.8以上)となる低周波吸音材に有用である。さらに、第1質量部の音源側にも多孔質体層を積層することで、63Hz周波数帯〜125Hz周波数帯の低周波数域に加え、低周波数域から5000Hzの高周波数域まで広帯域に亘って所望の吸音率となる低周波吸音材を実現できる。
【符号の説明】
【0183】
100,200,300,400,500,600,700 低周波吸音材
101 第1質量部
102,202 第2質量部
110,210 質量層
120,320,320A,520 第1多孔質体層
130 剛壁
202a,320a,320b 凹凸構造
510 第2多孔質体層
511 高密度層
512 低密度層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜状の第1質量部と、
音源と反対側の、前記第1質量部の背面側に積層され、多孔質体又は弾性体からなる第2質量部と、
から構成される質量層と、
前記音源と反対側の、前記第2質量部の背面側に積層される第1多孔質体層と、を備え、
前記質量層は、前記第1質量部と前記第2質量部の面密度の合計が、2.0乃至10.0kg/mである低周波吸音材。
【請求項2】
前記第1質量部は、金属膜とゴム膜の積層体、金属膜、樹脂膜、又はゴム膜のいずれかである請求項1記載の低周波吸音材。
【請求項3】
前記金属膜は、アルミ箔であり、厚さが0.01〜0.2mmの材料により形成される、請求項2記載の低周波吸音材。
【請求項4】
前記樹脂膜及び前記ゴム膜は、ヤング率が0.2×10(N/m)乃至5×10(N/m)の材料により形成される、請求項2記載の低周波吸音材。
【請求項5】
前記第2質量部は、ヤング率が1×10(N/m)乃至1×10(N/m)の材料により形成される多孔質体又は弾性体からなる、請求項1記載の低周波吸音材。
【請求項6】
前記第1質量部と前記第2質量部は、接着剤又は自己融着により一体化される請求項1記載の低周波吸音材。
【請求項7】
前記第1多孔質体層は、減衰率が、0.05乃至0.25である、請求項1記載の低周波吸音材。
【請求項8】
前記第2質量部は、前記背面側表面が凹凸構造を有する、請求項1記載の低周波吸音材。
【請求項9】
前記第1多孔質体層は、前記背面側表面又は前記音源側表面が凹凸構造を有する請求項1記載の低周波吸音材。
【請求項10】
前記第1質量部の前記音源側に、前記音源側に向かって密度が減少する第2多孔質体層をさらに積層する、請求項1記載の低周波吸音材。
【請求項11】
前記第2多孔質体層は、密度が異なる複数の層を備え、前記複数の層は、前記音源側に向かって密度が順次小さくなるように配置される、請求項10記載の低周波吸音材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−53434(P2012−53434A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274686(P2010−274686)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(306013119)昭和電線デバイステクノロジー株式会社 (118)
【Fターム(参考)】