説明

低周波振動検出装置

【課題】光の周波数変化を用いて地震などの低周波振動を検出することが可能な装置を提供する。
【解決手段】光ファイバに形成された周回部を、弾性体2に取り付けておく。この状態で、光ファイバにコヒーレント光を入力する。低周波振動が発生すると、弾性体2が揺動し、光ファイバの周回部が変形する。周回部を通過した光の、光としての周波数変化を検出することにより、周回部における変位速度又は変位を検出することができる。弾性体2を、第1弾性部材21と第2弾性部材22とから構成することもできる。この場合、それぞれの弾性部材21及び22に、周回部を取り付けておく。すると、低周波振動の測定精度を向上させることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを通過する光の波長変化を用いて、地震等の低周波振動を検出することができる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、光ファイバを用いた振動測定装置が記載されている。この装置においては、光ファイバを湾曲させることで、この光ファイバに湾曲部を形成している。この装置においては、湾曲部を被測定部位に取り付けた後、光ファイバの入力端にコヒーレント光を入力する。光ファイバへの入力光は、湾曲部を通って光ファイバの出力端から出力される。湾曲部を通る光の周波数(光としての周波数)は、湾曲部に加わる振動に対応して変化する。より詳しくは、この文献によれば、湾曲部の法線方向における光ファイバの変位速度が、光の周波数変化量に比例する。
【0003】
そこで、入力光と出力光との間の周波数変化量(あるいは波長変化量)を検出することにより、湾曲部に加えられた振動(変位速度又はその積分値としての変位量)を測定することができる。この方法によれば、微少な振動を、広い帯域にわたって、精度良く測定することができるという利点がある。また、この方法では、湾曲部の長さを長くすることにより、振動計測におけるS/N比を向上させることもできる。湾曲部の長さを長くする方法としては、例えば、光ファイバを複数回周回させることが考えられる。
【特許文献1】WO2003/2956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような原理を用いた振動計測の応用として、地震などの低周波振動を検出することが考えられる。しかしながら、この場合には、以下の問題がある。
【0005】
一般に、低周波振動、例えば地震は、空間周波数が非常に低い(つまり波長が長い)という特性がある。例えば、地震が発生した場合、ある限られた範囲(例えば数メートル四方の範囲)では、地盤全体が、上下方向あるいは水平方向に振動する。
【0006】
一方、前記した湾曲部を用いた振動計測方法においては、湾曲部が地盤と一緒に全体として変位してしまうと、地盤の振動検出が困難になる。これは、この計測方法では、湾曲部の局部的な変位を検出しているからであると考えられる。
【0007】
この問題を避けるため、非常に大きな湾曲部を形成することも考えられるが、実際の設置や保守を考えると、これは現実的ではない。
【0008】
このため、地震検出においては、光の周波数変化を用いた振動検出が難しいという問題があった。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものである。本発明は、光の周波数変化を用いて、地震などの低周波振動を検出することが可能な装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る低周波振動検出装置は、振動センサと、弾性体と、支持体とを備えている。前記振動センサは、光ファイバと、検出部とを備えている。前記光ファイバは、入力端と、周回部と、出力端とを備えている。前記入力端には、コヒーレントな光が入力される構成となっている。前記周回部は、前記入力端と前記出力端との間に配置されている。かつ、前記周回部は、前記光ファイバを周回することで構成されている。さらに、前記周回部には、前記入力端から入力された光が通過するように構成されている。前記出力端からは、前記周回部を通過した前記光が出力される構成となっている。
【0011】
前記検出部は、前記入力端に入力された光と、前記出力端から出力された光との間における、光としての周波数変化を検出することにより、前記周回部における変位速度又は変位を検出する構成となっている。ここで、変位は、変位速度の積分値として取得することができる。
【0012】
前記弾性体は、板状に形成されている。前記弾性体の表面には、前記周回部の軸線方向における一端側が取り付けられている。
【0013】
前記支持体は、前記弾性体の縁部を支持しており、かつ、この状態において、前記弾性体の中央部近傍は、前記支持体に対して揺動可能となっている。
【0014】
この装置によれば、地震などの低周波振動が発生して支持体が振動すると、支持体に対して弾性体が振動し、変形する。この弾性体における振動により、周回部が変形する。すると、周回部を通過する光の周波数が変化する。この周波数の変化を検出することにより、低周波振動を検出することができる。
【0015】
なお、ここで低周波振動とは、波長が比較的に長い振動を意味している。ただし、特定の波長域の振動を意図的に除外するものではなく、原理的には、様々な波長の振動に対応することが可能である。
【0016】
請求項2に係る低周波振動検出装置は、請求項1に記載のものにおいて、前記周回部の一端側を、前記弾性体の表面のほぼ中央に配置している構成となっている。
【0017】
請求項3に係る低周波振動検出装置は、請求項1又は2に記載のものにおいて、前記弾性体が、第1弾性部材と、第2弾性部材とを備えている。前記第1弾性部材と第2弾性部材とは、それぞれ、板状に形成されている。前記第1弾性部材の縁部と、前記第2弾性部材の縁部とは、それぞれ、前記支持体によって支持されている。前記第1弾性部材の中央部近傍と、前記第2弾性部材の中央部近傍とは、前記支持体に対して揺動可能となっている。また、この装置では、前記周回部が、第1周回部と、第2周回部とを備えている。前記第1周回部の軸線方向における一端側は、前記第1弾性部材の表面に取り付けられている。前記第2周回部の軸線方向における一端側は、前記第2弾性部材の表面に取り付けられている。
【0018】
二つの弾性部材にそれぞれ周回部を取り付けることにより、実質的には、光ファイバの巻き数を増加させることができる。これにより、低周波振動測定におけるS/N比を向上させることができる。また、一つの周回部における巻き数を低く抑えることができるので、周回部の柔軟性を保つことができる。すると、低周波振動検出の精度を向上させることが容易となる。
【0019】
請求項4に係る低周波振動検出装置は、請求項3に記載のものにおいて、前記第1弾性部材と前記第2弾性部材とが、互いにほぼ平行な状態に配置されている構成となっている。
【0020】
このようにすると、第1弾性部材と第2弾性部材の振動方向がほぼ等しくなるので、特定の方向における振動への感度が向上する。
【0021】
請求項5に係る低周波振動検出装置は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のものにおいて、さらに支柱を備えている。この支柱は、前記支持体に支持されている。かつ、前記支柱は、前記支持体によって、前記支柱の径方向への移動が阻止された構成となっている。前記支柱は、弾性体を貫通して挿通させられている。前記弾性体は、前記支柱の軸線方向に沿って揺動する構成となっている。
【0022】
このようにすると、弾性体の振動方向を支柱により制約することができるので、特定の方向における振動の感度が向上する。したがって、振動の方向を特定することが容易となる。
【0023】
請求項6に係る低周波振動検出装置は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のものにおいて、前記低周波振動が地震であるものとなっている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、光の周波数変化を用いて、地震などの低周波振動を検出することが可能な装置を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る低周波振動検出装置の実施の形態として、地震検出装置を、添付の図面を参照して説明する。この地震検出装置は、振動センサ1(図1参照)と、弾性体2(図2参照)と、支持体3(図1参照)と、支柱4(図2参照)とを備えている。
【0026】
振動センサ1は、光ファイバ8と、検出部9とを備えている(図1及び図3参照)。
【0027】
光ファイバ8は、入力端81と、周回部82(図3参照)と、出力端83とを備えている。
【0028】
入力端81には、検出部9から、コヒーレントな光が入力される構成となっている。ここで、コヒーレントな光とは、振動の計測に必要な程度に位相が揃っている光をいう。このようなコヒーレントな光は、一般にはレーザを用いて供給される。
【0029】
周回部82は、入力端81と出力端83との間に配置されている。周回部82は、光ファイバ8を周回することで構成されている。さらに、周回部82には、入力端81から入力された光が通過するように構成されている。
【0030】
より具体的には、本実施形態における周回部82は、第1周回部821と、第2周回部822とを備えている(図3参照)。第1周回部821及び第2周回部822は、前記したように、光ファイバ8を周回することによって形成されている。また、これら第1周回部821及び第2周回部822は、いずれも、入力端81から入力された光が通過する構成となっている。また、本実施形態では、第1周回部821及び第2周回部822は、一本の光ファイバを周回させることによって形成されているので、上流側にある一方の周回部を通過した光は、それよりも下流側にある他方の周回部を通過することになる。
【0031】
第1周回部821及び第2周回部822における、光ファイバ8の巻き数は、特に制約されないが、例えば、50〜150巻き程度とすることができる。巻き数が多いほど、信号のS/N比を向上させることができる。ただし、これらの周回部は、振動を検出するために、ある程度の柔軟性が必要である。このため、必要な柔軟性を得られる範囲の巻き数あるいは巻き状態とされる。必要な柔軟性を得られるのであれば、軸方向に積層させながら巻くことも可能である。特に、本実施形態では、周回部の軸線に平行な方向への力に対して柔軟であることが好ましい。
【0032】
また、第1周回部821及び第2周回部822の軸心近傍には、貫通された開口部821a及び822aが形成されている。このような開口部は、例えば心棒(図示せず)を中心として光ファイバを周回させることで容易に形成可能である。
【0033】
出力端83からは、周回部82(すなわち第1周回部821及び第2周回部822)を通過した光が出力される構成となっている。
【0034】
検出部9は、入力端81に入力された光と、出力端83から出力された光との間における、光としての周波数変化を検出することにより、周回部82における変位速度又は変位を検出する構成となっている。より詳しくは、周回部82を通過した光における周波数変化量は、周回部82における光ファイバの法線方向における変位速度に比例する(前記した特許文献1参照)。変位速度の積分値として変位を算出することもできる。
【0035】
前記した点以外における振動センサの構成は、前記した特許文献1に記載の技術と同様でよいので、振動センサについては、これ以上詳細な説明は省略する。
【0036】
弾性体2は、板状に形成されている(図4及び図5参照)。また、弾性体2の表面には、周回部82の軸線方向における一端側が取り付けられている。
【0037】
より具体的には、弾性体2は、第1弾性部材21と、第2弾性部材22とを備えている。これらの第1弾性部材21と第2弾性部材22とは、それぞれ、円板状に形成されている。なお、これらの弾性部材は、基本的に同じ構成なので、図4及び図5では、第1弾性部材21のみを示している。
【0038】
第1弾性部材21の周縁部と、第2弾性部材22の周縁部とは、それぞれ、支持体3によって支持されている。支持体3の詳しい構成は後述する。
【0039】
支持体3に支持された状態においては、第1弾性部材21の中央部近傍と、第2弾性部材22の中央部近傍とは、支持体3に対して揺動可能となっている。つまり、支持体3が振動を受けると、第1弾性部材21の中央部及び第2弾性部材22の中央部と支持体3とは、相対的に移動する(揺動する)ことができるようになっている。したがって、第1・第2弾性部材21・22の材質としては、弾性を有するものが望ましく、例えば、リン青銅板を用いることができる。このほかにも、例えば樹脂や硬質ゴムを用いることが可能である。ただし、高い耐久性や耐候性を有する材質であることが好ましい。
【0040】
また、第1弾性部材21の周縁部と、第2弾性部材22の周縁部とには、光ファイバ8を通過させるための切り欠き211及び221が形成されている。
【0041】
さらに、第1弾性部材21の中央と、第2弾性部材22の中央とには、後述する支柱4の支柱本体41を挿通させるための挿通孔212及び222が形成されている。
【0042】
第1弾性部材21の表面のほぼ中央には、第1周回部821の軸線方向における一端側の端面が取り付けられている(図4における二点鎖線参照)。第1周回部821を取り付けるための手段としては、接着剤や粘着シートなど、各種のものを使用可能である。ただし、第1周回部821は、「第1弾性部材21が撓んだ場合に、その撓みと共に第1周回部821が変形できる程度」に、第1弾性部材21に対して確実に取り付けられていることが望ましい。一般には、第1周回部821の端面全体を第1弾性部材21に取り付けることが好ましい。
【0043】
第2弾性部材22の表面のほぼ中央には、第1弾性部材21の場合と同様に、第2周回部822の軸線方向における一端側が取り付けられている。両者の取り付け状態は、第1弾性部材21の場合と同様でよいので、これ以上の詳細についての説明は省略する。
【0044】
第1弾性部材21と第2弾性部材22とは、支持体3により支持された状態において、互いにほぼ平行な状態に配置されている(図2参照)。
【0045】
支持体3は、この実施形態では、台座31と、中間部材32と、蓋部33とを主要な構成として備えている(図2参照)。
【0046】
台座31は、円筒状に形成された側部311と、側部311の底面をふさぐ底部312とを備えており、上面が開口された形状となっている(図2及び図6〜8参照)。つまり、台座31は、全体として、有底の円筒状に形成されている。第1弾性部材21の縁部は、台座31の側部311の上端に当接された状態で、ボルト313(図2参照)により台座31に固定されている。
【0047】
また、本実施形態では、ボルト313と台座31との間に、押さえリング51(図9及び図10参照)が介在されている。押さえリング51にも、光ファイバ8を挿通させるための溝511が形成されている。
【0048】
さらに、本実施形態の台座31では、光ファイバを上下方向に挿通させるための溝314(図6及び図8参照)が形成されている。
【0049】
また、台座31の底部312の上面には、後述する支柱4の支柱本体41を保持するための保持部315が形成されている。保持部315は、上面が開口された凹部となっている。
【0050】
台座31の側部311の上部には、中間部材32を台座31に接続するための接続部316が形成されている。接続部316の外周面には雄ねじが形成されている。
【0051】
中間部材32は、全体として、ほぼ円筒状に形成されている(図11及び図12参照)。第2弾性部材22の縁部は、中間部材32の上面に当接された状態で、ボルト321(図2参照)により、中間部材32に固定されている。また、ボルト321と中間部材32との間には、光ファイバ挿通用の溝521を有する押さえリング52(図9及び図10参照)が介在されている(図2参照)。さらに、中間部材32にも、光ファイバ8を上下方向に通過させるための溝323が形成されている(図11及び図12参照)。
【0052】
中間部材32の内面には、前記した台座31の接続部316に形成された雄ねじが螺合される雌ねじが形成されている。また、中間部材32の上部には、蓋部33を中間部材32に接続するための接続部324が形成されている。接続部324の外周面には雄ねじが形成されている。
【0053】
蓋部33は、円筒状に形成された側部331と、この側部331の上面をふさぐ上面部332とを備えている(図13及び図14参照)。これにより、蓋部33は、全体として、上面が閉鎖された円筒状に形成されている。
【0054】
側部331の内面には、前記した中間部材32の接続部324に形成された雄ねじが螺合される雌ねじが形成されている。
【0055】
上面部332には、光ファイバ8を挿通させるための貫通孔333が形成されている。また、上面部332には、後述する支柱4の支柱本体41を保持するための保持部334が形成されている。
【0056】
支柱4は、この実施形態では、支柱本体41と、スペーサ42と、固定用ナット43と、おもり44とを備えている(図2及び図14〜20参照)。
【0057】
支柱本体41は、断面円形の棒状に形成されている(図14及び図15参照)。支柱本体41の下端は、支持体3の台座31に形成された保持部315の内部に収納されている(図2参照)。同様に、支柱本体41の上端は、蓋部33の保持部334の内部に収納されている(図2参照)。この状態では、支柱本体41は、それぞれの保持部315及334により保持されて、脱落しないようになっている。つまり、支柱本体41は、支持体3によって支持されたものとなっている。さらに、支柱本体41は、支持体3によって、支柱本体41の径方向(図2において前後又は左右方向)への移動が阻止された構成となっている。ただし、支柱本体41は、保持部315及び334において軸方向に形成された遊び(間隙)のために、軸方向に沿って、所定のストロークで上下動が可能となっている。
【0058】
支柱本体41は、第1弾性部材21及び第2弾性部材22を貫通して挿通させられている(図2参照)。後述するように、第1弾性部材21及び第2弾性部材22は、支柱本体41に固定されている。この構成により、第1弾性部材21及び第2弾性部材22が揺動すると、支柱本体41が上下動できるようになっている。
【0059】
また、支柱本体41の外表面には、固定用ナット43を螺合させるための雄ねじが形成されている。
【0060】
スペーサ42は、ほぼ円筒状に形成されており(図17〜19参照)。支柱本体41の外側に嵌め合わせられている(図2参照)。また、スペーサ42の下端面は、第1弾性部材21の上面に当接し、スペーサ42の上端面は、第2弾性部材22の下面に当接している。これにより、スペーサ42は、第1弾性部材21と第2弾性部材22との間隔を一定に保持している。
【0061】
固定用ナット43は、支柱本体41の雄ねじに螺合されており、これによって、第1弾性部材21と第2弾性部材22とを、スペーサ42の方向に押し付けている。つまり、固定用ナット43は、第1弾性部材21と第2弾性部材22とを支柱本体41に固定している。
【0062】
おもり44は、円筒状に形成されている(図19及び図20参照)。おもり44の内周面には、支柱41に螺合される雌ねじが形成されている。おもり44は、支柱本体41の外側に螺合されて取り付けられており、支柱本体41と一緒に移動するようになっている。
【0063】
(地震検出装置の動作)
つぎに、本実施形態に係る地震検出装置の動作について説明する。本実施形態の地震検出装置の使用に際しては、支持体3を、地震検出に適した箇所に配置する。地震検出に適した箇所とは、一般には、地中である。しかしながら、それに限らず、地震を伝搬できる物体(建造物など)の表面に取り付けることも可能である。また、地表に支持体3を取り付けることも可能である。
【0064】
ついで、光ファイバ8の入力端81からコヒーレント光を入力する。すると、この光は、第1周回部821及び第2周回部822を、光ファイバ1の周回に従って周回しながら通過する。その後、この光は、光ファイバ8の出力端83から出力される。
【0065】
この状態で、地震が発生すると、地盤や建造物等の介在物を介して、支持体3に振動が伝達される。すると、支持体3に支持されている第1弾性部材21と第2弾性部材22とが、支柱本体41の軸線方向に沿って、支持体3と共に揺動する。ここで、本実施形態では、これらの弾性部材21及び22の周縁部は、支持体3に固定されており、弾性部材21及び22の中央部近傍は、上下に揺動できる構成になっている。すると、弾性部材21及び22の中央部近傍は、支持体3と一緒に振動するのではなく、それ自体の慣性のために、支持体3とは異なった位相で振動する。このため、弾性部材21及び22は、その厚さ方向において、比較的高い空間周波数での変形を生じる。つまり、弾性部材21及び22は、局部的に、その厚さ方向に曲げられることになる。
【0066】
すると、これらの弾性部材21及び22に取り付けられた第1周回部821及び第2周回部にも、局部的な変形を生じる。すると、これらの周回部を通過する光の周波数(あるいは波長)は、周回部における局部的な変位の速度に対応して変化する(特許文献1参照)。この周波数(あるいは波長)の変化を検出部9で検出することにより、地震を計測することができる。また、変位速度の積分値として変位、微分値として加速度を算出することも可能である。
【0067】
この計測においては、光の周波数変動を用いているので、光ファイバを通過する光の強度変化を用いた振動センサを用いる場合に比べて、微少な振動を精度良く計測することができるという利点がある。また、ピエゾ素子を用いた振動センサに比較すると、本実施形態の装置によれば、広帯域での高精度の振動計測が可能になるという利点がある。
【0068】
さらに、地震検出装置としてピエゾ素子を用いた場合には、ピエゾ素子からの出力が原理的に電圧値であるために、雷による外乱の影響を受けてS/N比が劣化しやすいという問題がある。これに対して、本実施形態の装置によれば、原理的に、振動検出を光により検出できるので、雷による外乱の影響を受けにくく、高い測定精度を得ることができるという利点がある。例えば、高深度の地中に支持体3を埋設した場合には、そこからの出力を得るために、長い光ファイバを用いることがある。この場合であっても、本実施形態の装置によれば、検出のために光を用いているので、雷が発生しても、ノイズが混入しにくく、測定精度が劣化しにくいという利点がある。
【0069】
また、本実施形態の装置では、第1弾性部材21に第1周回部821を取り付け、第2弾性部材22に第2周回部822を取り付けており、これら二つの周回部で地震を検出する構成としている。一般に、周回部における巻き数が多いほど、変位速度に対応した周波数の変化量Δfが大きくなり、S/N比が向上する。この装置では、二つの周回部が連結されているために、結果的には、一つの周回部における巻き数を増加させたことと等価になり、S/N比を向上させることができる。
【0070】
ここで、仮に、一つの周回部における巻き数を単純に増加させた場合には、周回部の直径が大きくなる。すると、支持体3が大型化し、支持体3を埋設するためのボーリング穴も大きくなる。これは、設置作業の繁雑化や高コスト化につながるという問題がある。これに対して、本実施形態の装置では、一つの周回部における巻き数を少なく押さえることができるので、このような問題を軽減できる。
【0071】
また、一つの周回部における巻き数を増加させるために、光ファイバを軸線方向に積層しながら周回することも考えられる。しかしながら、この場合には、周回部の剛性が上がり、周回部の変形に要する力が上昇する。このような周回部を弾性体2に取り付けると、弾性体2が、支持体3と同期して一緒に振動する傾向が強くなり、その結果、地震測定の感度が低下するおそれがある。換言すれば、周回部の剛性が高くなると、弾性体2による空間周波数の変換動作が妨げられるおそれがあるということである。
【0072】
一方、本実施形態によれば、二つの弾性部材にそれぞれ周回部を取り付けているので、一つの周回部の剛性を引く押さえつつ、周回部全体としての巻き数を実質的に増加させることができる。これにより、地震測定の感度を向上させることができるという利点がある。もちろん、必要に応じて、弾性部材及びそれに取り付ける周回部の数を増加させることも可能である。
【0073】
また、本実施形態では、支柱4を設けているので、第1弾性部材21及び第2弾性部材22の変形方向を、支柱本体41の軸線方向に沿う方向に制限することができる。したがって、検出された地震の振動方向を検出できるという利点がある。また、本実施形態のように構成された複数の支持体3を、支柱本体41の軸線方向が交差するように配置すれば、2次元方向や3次元方向での振動解析も可能である。
【0074】
なお、本発明に係る低周波振動検出装置は、前記した実施の形態に係る地震検出装置に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0075】
例えば、前記実施形態では、二つの周回部を用いているが、用途によっては、図21に示すように、一つの周回部のみを用いることも可能である。この場合には、一つの弾性体2に一つの周回部82を取り付ければよい。
【0076】
また、前記実施形態では、弾性体の一方の面に周回部を取り付けているが、他方の面に取り付けてもよく、さらには両面に取り付けることも可能である。
【0077】
また、光ファイバに入力された光の経路としては、第1周回部821と第2周回部822のうち、どちらを先に通過しても良い。
【0078】
さらに、前記した実施形態においては、一本の光ファイバを周回させることで周回部を形成している。もちろん、光ファイバとしては、物理的に複数本の光ファイバをコネクタなどの接続手段で接続したものでもよいし、途中で分岐や結合が存在していてもよい。
【0079】
また、前記実施形態では、低周波振動検出装置の一例として、地震検出装置を説明したが、地震以外の振動を検出することも可能である。例えば、光ファイバの周回部を有する支持体を、ビルやダムなどの構造物に取り付けることにより、これらの構造物における振動を計測することができる。この場合は、構造物における低周波の振動を計測するために特に好適である。構造物における低周波振動の要因としては、地震以外にも、通行車両によるもの、機械の稼働によるものなど、種々のものが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施形態に係る地震検出装置の概略的な説明図である。
【図2】図1の地震検出装置における要部の断面図である。
【図3】振動センサについての説明図である。
【図4】弾性体の平面図である。
【図5】図4の正面図である。
【図6】支持体に用いられる台座の平面図である。
【図7】図6の断面図である。
【図8】図6のa−a'線に沿う拡大断面図である。
【図9】押さえリングの平面図である。
【図10】図9の断面図である。
【図11】支持体に用いられる中間部材の平面図である。
【図12】図11の断面図である。
【図13】支持体に用いられる蓋部の平面図である。
【図14】図13のA−A'線に沿う断面図である。
【図15】支柱に用いられる支柱本体の正面図である。
【図16】図15の底面図である。
【図17】支柱に用いられるスペーサの正面図である。
【図18】図17の側面図である。
【図19】図17の底面図である。
【図20】支柱に用いられるおもりの正面図である。
【図21】図20の底面図である。
【図22】変形例における振動センサの説明図である。
【符号の説明】
【0081】
1 振動センサ
2 弾性体
3 支持体
31 台座
315 台座における保持部
32 中間部材
33 蓋部
334 蓋部における保持部
4 支柱
41 支柱本体
42 スペーサ
43 固定用ナット
44 おもり
51・52 押さえリング
8 光ファイバ
81 入力端
82 周回部
821 第1周回部
822 第2周回部
83 出力端
9 検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動センサと、弾性体と、支持体とを備えており、
前記振動センサは、光ファイバと、検出部とを備えており、
前記光ファイバは、入力端と、周回部と、出力端とを備えており、
前記入力端には、コヒーレントな光が入力される構成となっており、
前記周回部は、前記入力端と前記出力端との間に配置されており、
かつ、前記周回部は、前記光ファイバを周回することで構成されており、
さらに、前記周回部には、前記入力端から入力された光が通過するように構成されており、
前記出力端からは、前記周回部を通過した前記光が出力される構成となっており、
前記検出部は、前記入力端に入力された光と、前記出力端から出力された光との間における、光としての周波数変化を検出することにより、前記周回部における変位速度又は変位を検出する構成となっており、
前記弾性体は、板状に形成されており、
前記弾性体の表面には、前記周回部の軸線方向における一端側が取り付けられており、
前記支持体は、前記弾性体の縁部を支持しており、かつ、この状態において、前記弾性体の中央部近傍は、前記支持体に対して揺動可能となっている
ことを特徴とする低周波振動検出装置。
【請求項2】
前記周回部の一端側は、前記弾性体の表面のほぼ中央に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の低周波振動検出装置。
【請求項3】
前記弾性体は、第1弾性部材と、第2弾性部材とを備えており、
前記第1弾性部材と第2弾性部材とは、それぞれ、板状に形成されており、
前記第1弾性部材の縁部と、前記第2弾性部材の縁部とは、それぞれ、前記支持体によって支持されており、
前記第1弾性部材の中央部近傍と、前記第2弾性部材の中央部近傍とは、前記支持体に対して揺動可能となっており、
前記周回部は、第1周回部と、第2周回部とを備えており、
前記第1周回部の軸線方向における一端側は、前記第1弾性部材の表面に取り付けられており、
前記第2周回部の軸線方向における一端側は、前記第2弾性部材の表面に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の低周波振動検出装置。
【請求項4】
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材とは、互いにほぼ平行な状態に配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の低周波振動検出装置。
【請求項5】
さらに支柱を備えており、
前記支柱は、前記支持体に支持されており、
かつ、前記支柱は、前記支持体によって、前記支柱の径方向への移動が阻止された構成となっており、
前記支柱は、弾性体を貫通して挿通させられており、
前記弾性体は、前記支柱の軸線方向に沿って揺動する構成となっている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の低周波振動検出装置。
【請求項6】
前記低周波振動とは地震である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の低周波振動検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−249468(P2008−249468A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90804(P2007−90804)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(504066081)株式会社レーザック (11)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(501254955)川崎地質株式会社 (11)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)
【Fターム(参考)】