説明

低密度硬質強化ポリウレタンおよびその製造方法

【課題】RIM法、強化RIM法またはLFI法によるより大きい物品の製造に十分長いゲル化時間および脱型時間を有する低密度硬質強化ポリウレタンを提供する。
【解決手段】約3〜約8のヒドロキシル基官能価及び200超のヒドロキシル価を有するポリオール、触媒、界面活性剤、任意に架橋剤、任意に水、及び任意に溶存二酸化炭素を含んでなるイソシアネート反応性成分、有機ポリイソシアネート、及び任意に溶存二酸化炭素を含んでなるイソシアネート成分、並びに繊維強化材の反応生成物からなる低密度繊維強化ポリウレタンであって、溶存二酸化炭素がイソシアネート反応性成分又はイソシアネート成分の少なくとも1つに存在し、イソシアネート反応性成分及び/又はイソシアネート成分中に存在する二酸化炭素の合計量が0.3〜2.0g/lであるポリウレタン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形物品、特に複合物品の製造に適した低密度(即ち0.9g/cm未満の密度)硬質強化ポリウレタン、およびこのような低密度硬質強化ポリウレタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンのようなポリマー物質の密度を低下させる最も一般的な方法の1つに、発泡剤の使用がある。低下された密度を有するポリマーを生ずる多くの発泡剤が存在する。このような既知の発泡剤の例は、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、およびペンタンのような炭化水素を包含する。しかしながら、HCFC、HFCおよび炭化水素発泡剤は、ポリウレタンの製造コストを上げ、環境に悪影響を与え得るので、水が特に好ましい発泡剤である。
【0003】
ポリウレタンの密度は、より多量の水をポリウレタン生成反応混合物に単に添加することによって低下され得るが、このような添加水の使用は、ポリマー生成物の物理的および機械的性質に悪影響を与え得る。添加水は反応混合物中に存在するイソシアネート基と反応して追加の二酸化炭素および追加の尿素結合を生じ、それによってイソシアネート対ヒドロキシル反応プロフィールが変化する。このように変化した反応プロフィールの1つの結果が、ゲル化時間の短縮である。ある場合では、より短いゲル化時間は有利であり得るが、より大きな部品をRIM(反応射出成形)法、強化RIM法またはLFI(長繊維射出成形)法によって製造する場合には、より短いゲル化時間は問題となる。
【0004】
ポリウレタン生成反応混合物中に液体二酸化炭素を含有させることが、そのポリオール成分への溶解性および環境に対する優しさ故に、ポリウレタンフォームの密度を低下させる方法として提案されてきた。例えば、米国特許第6,458,861号明細書を参照されたい。しかしながら、液体二酸化炭素は比較的突然に気化するので、その体積は迅速に増大し、大きな空隙または気泡がポリウレタンフォーム内に生じる。
【0005】
反応成分の1つ、好ましくはポリオール成分に二酸化炭素を溶解することによるポリウレタン生成反応混合物への二酸化炭素の添加は、米国特許第6,458,861号明細書に教示されている。しかしながら、該方法で製造されたポリウレタンは、靴底用途への使用に適した軟質微孔性エラストマーであった。このような用途に対し、短すぎるゲル化時間の問題は取り上げられていない。更に、米国特許第6,458,861号明細書には、より大きなまたはより硬質なポリウレタン物品、特に繊維強化ポリウレタンの製造に関する教示はない。
【0006】
米国特許第6,887,911号明細書は、ポリウレタン生成反応混合物から製造された、より硬質な成形フォーム物品を開示している。同発明では、水、または窒素、空気および二酸化炭素のような物理的発泡剤を含む他の既知の発泡剤のいずれかを使用できる。同発明の開示成形物品は繊維材で強化できるが、このような強化は必須ではない。しかも、同発明の実施例で示された12.7mm(0.5in)プラックに対する43〜45秒の短い脱型時間は、RIM法、強化RIM法またはLFI法によるより大きい物品の製造にとって十分長くはない。
【特許文献1】米国特許第6,458,861号明細書
【特許文献2】米国特許第6,887,911号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の1つの目的は、RIM法、強化RIM法またはLFI法によるより大きい物品の製造に十分長いゲル化時間および脱型時間を有する低密度硬質強化ポリウレタンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
RIM法、強化RIM法またはLFI法によるより大きい物品の製造に十分長いゲル化時間および脱型時間を有する低密度硬質強化ポリウレタンが、ポリウレタン生成反応混合物のイソシアネート反応性成分および/またはイソシアネート成分に、0.2〜2g/lの合計量で二酸化炭素を溶解させることによって製造できることが、意外にも見出された。イソシアネート反応性成分は、3〜8の官能価および600超のヒドロキシル価を有する少なくとも1種のポリオールからなる。
【0009】
本発明は、0.9g/cm未満、好ましくは0.5g/cm未満の密度を有する硬質強化ポリウレタンに関する。該ポリウレタンは、微孔性の硬質または半硬質フォームであり得る。本発明のポリウレタンは、既知の高圧RIM法、強化RIM法またはLFI法のいずれかによって製造され得る。
【0010】
本発明はまた、良好な表面特性を有する大きな部品を製造するのに十分長いゲル化時間を有する本発明の低密度硬質強化ポリウレタンの製造に特に有用な、ポリウレタン生成配合物に関する。熱金型(即ち、約68.3〜約79.4℃(155〜175°F)の温度に加熱された金型)における本発明のポリウレタン生成配合物のゲル化時間は、概して30秒〜約2分である。本発明の配合物の脱型時間(一般にゲル化時間の3倍)は、熱金型では概して約90秒〜6分の範囲である。
【0011】
本発明はまた、低密度ポリウレタン、特に強化成形ポリウレタンの製造方法を対象とする。該方法では、二酸化炭素をイソシアネート反応性成分に0.2〜2g/lの量で溶解させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で使用する場合、用語「ポリウレタン」は、反復単位間に主にウレタン(-NH-CO-O-)結合を含む構造を有するポリマーを意味する。ウレタン結合に加えて少量(即ち5%未満)のアロファネート、ビウレット、カルボジイミド、オキサゾリニル、イソシアヌレート、ウレトジオン、尿素および他の結合を含んでいてもよい。
【0013】
ポリウレタンは、イソシアネート成分とイソシアネート反応性成分との反応によって製造される。加えて、種々の添加剤および加工助剤、例えば、界面活性剤、触媒、安定剤、顔料、充填材などが存在し得る。適当な添加剤および加工助剤は、ポリウレタン化学の当業者によく知られている。発泡剤も存在してよい。水は、最も一般的に使用されている発泡剤の1つであり、本発明の方法において特に好ましい。
【0014】
本発明のポリウレタン生成「配合物」または「組成物」に使用されるイソシアネート成分は、既知のジイソシアネート、ポリイソシアネート、変性イソシアネート、イソシアネート末端プレポリマーおよびそれらの組合せのいずれかであり得る。容易に入手でき、ポリウレタンの製造およびポリウレタンの製造に使用されるプレポリマーの調製にしばしば使用されるイソシアネートの例は以下を包含する:トルエンジイソシアネート(TDI)、TDI異性体および異性体混合物のいずれか、特に2,4-トルエンジイソシアネート(2,4-TDI);メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、MDI異性体および異性体混合物のいずれか、特に4,4'-メチレンジフェニルジイソシアネート(4,4'-MDI);ポリマーMDI;ウレタン、尿素、アロファネート、特にカルボジイミド基のような基を含む変性イソシアネート。他の既知のイソシアネートのいずれも使用でき、イソシアネート混合物も包含される。MDIおよびポリマーMDIが特に好ましい。ポリマーMDIが最も好ましい。
【0015】
2〜8、好ましくは3〜6の官能価、および60超、好ましくは約200〜約1,200、最も好ましくは約600〜約1,050のヒドロキシル価を有する既知のイソシアネート反応性成分のいずれかを、本発明に従ったポリウレタンを製造するために使用できる。このようなイソシアネート反応性成分の例は以下を包含する:ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびハイブリッドポリエーテル−ポリエステルポリオール、ポリヒドロキシポリカーボネート、ポリヒドロキシポリアセタール、ポリヒドロキシポリアクリレート、ポリヒドロキシポリエステルアミドおよびポリヒドロキシポリチオエーテル。ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびポリヒドロキシポリカーボネートが好ましい。ポリエーテルポリオールが最も好ましい。
【0016】
適当なポリエステルポリオールは、多価アルコールと多塩基性カルボン酸との反応生成物を含む。ポリカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族および/または複素環式であってよく、例えばハロゲン原子によって、置換されていてもよく、および/または不飽和であってもよい。
【0017】
本発明の方法において使用するのに適したポリエーテルポリオールは、反応性水素原子を有する1種以上の出発化合物と、アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、テトラヒドロフラン、エピクロロヒドリンまたはこれらアルキレンオキシドの混合物との反応によって既知の方法で得られたポリエーテルポリオールを含む。反応性水素原子を有する適当な出発化合物は以下を包含する:多価アルコール;1,2,6-ヘキサントリオール;1,2,4-ブタントリオール;トリメチロールエタン;ペンタエリスリトール;マンニトール;ソルビトール;メチルグリコシド;スクロース;フェノール;イソノニルフェノール;レゾルシノール;ヒドロキノン;および1,1,1-または1,1,2-トリス-(ヒドロキシルフェニル)-エタン。
【0018】
本発明のイソシアネート反応性成分は、少なくとも3のヒドロキシル基官能価および少なくとも60のヒドロキシル価を有するポリオールを含み得るが、本発明のポリウレタンを製造するために好ましく使用されるイソシアネート反応性成分は以下を包含する:(a)約3の官能価および約1,035〜約1,065のヒドロキシル価を有する、少なくとも1種のポリオール、好ましくは少なくとも1種の、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールまたはハイブリッドポリエーテル−ポリエステルポリオール、並びに(b)約4の官能価および約600〜650、最も好ましくは約630のヒドロキシル価を有する、少なくとも1種のポリオール、好ましくは少なくとも1種の、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールまたはハイブリッドポリエーテル−ポリエステルポリオール。加えて、600超のヒドロキシル価および約3〜約8、好ましくは約3〜約4の官能価を有する混合官能性出発物質から調製されたポリオールを場合により使用できる。適当なポリエーテルポリオール出発物質は以下を包含する:グリセリン、糖およびアミン。本発明のイソシアネート反応性成分に含まれる少なくとも1種のポリオールが、エチレンジアミンのようなアミン開始(芳香族または脂肪族)ポリオールを含むことが好ましい。最も好適には、イソシアネート反応性成分に含まれるポリオールの少なくとも50重量%が、アミン開始ポリエーテルポリオールである。
【0019】
3〜8の官能価および少なくとも60のヒドロキシル価を有する所望のポリオールに加えて、3未満の官能価または60未満のヒドロキシル価を有する、ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールのような他の既知のイソシアネート反応性物質もイソシアネート反応性成分に含まれ得るが、含まれる場合は、イソシアネート反応性成分の総重量に基づいて10重量%未満、好ましくは5重量%未満の量で使用されるべきである。
【0020】
本発明のイソシアネート反応性成分は、一般に、連鎖延長剤、界面活性剤および触媒も含む。適当な連鎖延長剤、界面活性剤および触媒は、当業者に知られている。
【0021】
イソシアネート反応性基を有する連鎖延長剤、他の添加剤または加工助剤を考慮しない、ポリオール成分の全平均当量は、一般に、約30〜約3,000Da、好ましくは約30〜約300Da、より好ましくは約30〜約200Daの範囲である。平均理論官能価は一般に、2〜8、より好ましくは3〜5である。
【0022】
ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテル−ポリエステルハイブリッドポリオールに加えて、「ポリマーポリオール」もイソシアネート反応性成分に含まれ得る。ポリマーポリオールは分散ポリマー粒子を含むポリオールである。多くのポリマーポリオールが理論的に可能であり、多種のものが市販されているが、最も好ましいポリマーポリオールは、しばしば不飽和「マクロマー」ポリオールを用いて、ベースポリオールにおける不飽和分子のイン・サイチュー重合によって調製されたポリオールである。この不飽和モノマーは、最も一般的にはアクリロニトリルおよびスチレンであり、アクリロニトリル/スチレンコポリマー粒子は、ポリマーポリオールの総重量に基づいて10〜60重量%、より好ましくは20〜50重量%、最も好ましくは30〜45重量%の量で、好ましくは安定して分散される。このようなポリマーポリオールは市販されている。例えば、43%のポリアクリロニトリル/ポリスチレン固体を含むポリマーポリオールARCOL(登録商標)E850は、Bayer MaterialScienceから入手可能である。Bayer MaterialScienceから市販されているポリオールMultranol 9151のような、尿素粒子が分散されているポリマーポリオールも、本発明のイソシアネート反応性成分での使用に特に適している。イソシアネート反応性成分に含まれる場合、ジオール/トリオール比を計算する目的のために、ポリマーポリオールをトリオールとして扱う。
【0023】
ポリマーポリオールがイソシアネート反応性成分に含まれる場合、連鎖延長剤を使用しないことが可能であり、連鎖延長剤をイソシアネート反応性成分から除外することができる。使用する場合、ポリマーポリオールは一般に、イソシアネート反応性成分中に、ポリウレタンの総重量に基づいて20重量%未満の量で含まれる。しかしながら、生成物の特性に悪影響を与えなければ、高濃度のポリマーポリオールを使用してもよい。
【0024】
本発明のポリウレタンはその硬度故に、長繊維射出成形法での使用に特に適している。
【0025】
強化材もポリウレタン生成反応混合物に含まれる。該強化材は、好ましくは繊維状である。適当な繊維は、約10〜約100mm、好ましくは約12.5〜約25mmの平均長さを有する。適当な繊維材は以下を包含する:ガラス繊維;炭素繊維;セラミック繊維;天然繊維、例えば、亜麻、ジュートおよびサイザル;合成繊維、例えば、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維およびポリウレタン繊維。繊維材は一般に、イソシアネート反応性成分の総重量に基づいて約10〜約60重量%、好ましくは約20〜約50重量%、最も好ましくは約25〜約40重量%の量で含まれる。
【0026】
本発明のポリウレタン組成物に添加され得る添加剤は、当業者に知られており、界面活性剤、充填材、染料、顔料、紫外線安定剤、酸化安定剤、触媒などを含む。
【0027】
適当な充填材は以下を包含する:ヒュームドシリカまたは沈降シリカ、石英粉、珪藻土、沈降炭酸カルシウムまたは重質炭酸カルシウム、アルミナ三水和物および二酸化チタン。
【0028】
非常に微細な気泡の安定性を維持するのに適した界面活性剤を一般に使用する。適当な市販界面活性剤の例は以下を包含する:Dabco(登録商標)SC5980、Air Products Co. から入手可能なシリコーン界面活性剤;Dabco DC-5258、Air Products Co. から入手可能なシリコーン界面活性剤;Dabco DC-5982、Air Products Co. から入手可能な変性ポリエーテルポリシロキサン;NIAX L1000およびNIAX L-5614、GE Siliconesから入手可能なシリコーン界面活性剤;Tegostab B8870、Goldschmidtから市販されている界面活性剤;Tegostab B8905、Goldschmidtから市販されている変性ポリエーテルポリシロキサン;Tegostab B8315、Goldschmidtから市販されている変性ポリエーテルポリシロキサン;およびIrgastab PUR 68、Ciba Specialty Chemicals Corporation から市販されているエステルおよびベンゾフラノンの混合物。当業者に既知の他の界面活性剤のいずれも適当である。
【0029】
常套のポリウレタン触媒(即ちイソシアネートとポリオールの反応を促進する触媒)、およびイソシアネート/水反応を促進する触媒を使用してよい。これらのポリウレタン触媒は一般に、イソシアネート反応性成分中に、イソシアネート反応性成分中のポリオールの総重量に基づいて約0〜約5重量部、好ましくは約0.02〜約1重量部の量で含まれる。
【0030】
本発明のポリウレタン生成成分は一般に、約90〜約140、好ましくは約100〜約120、最も好ましくは約105のイソシアネート指数で調製される。
【0031】
本発明のポリウレタンは、二酸化炭素で発泡される。二酸化炭素の一部は、加圧下、イソシアネート成分またはイソシアネート反応性成分の少なくとも1つに溶解された気体として存在する。気体二酸化炭素は、イソシアネート成分およびイソシアネート反応性成分のいずれかまたは両方に溶解され得る。好ましくは、気体二酸化炭素はイソシアネート反応性成分に溶解される。二酸化炭素の残余は、ポリウレタン生成反応時、イソシアネート反応性成分中に存在する水とイソシアネートとの反応によって生ずる。反応成分の一方または両方に溶解する気体二酸化炭素の量は、一般に、約0.2〜約2.0g/l、好ましくは約0.5〜約1.2g/lである。イソシアネート反応性成分中に含まれる水の量は、一般に、約0〜約1重量%、好ましくは約0〜約0.25重量%である。
【0032】
多すぎる水がイソシアネート反応性成分中に存在または添加される場合、ゲル化時間が短縮され、開放金型における作業時間も短縮される。
【0033】
反応成分に溶解される気体二酸化炭素は、適度な圧力(即ち、約1〜約7barの圧力)で導入される。この圧力を、空気または窒素を用い、タンクにおいて維持する。所望の二酸化炭素濃度を維持するために、十分な二酸化炭素を液相に直接拡散チューブを介して導入する。二酸化炭素を発泡装置の各成分貯蔵タンクに導入し、必要な程度まで溶解するために十分な時間をとる。溶解量は、膜検出器による拡散の相対速度を含む、いずれかの常套技術によって測定できる。溶解量は、0.2〜2.0g/l、好ましくは0.4〜2.0g/l、より好ましくは約0.5〜約1.2g/lの範囲であり得る。溶存二酸化炭素の量が増えるほど、成分密度は低下する。二酸化炭素は、好都合には、所望量の二酸化炭素を溶解するのに十分な時間、約3.4bar(50lb/in)の圧力で貯蔵タンクに供給され得る。特に記載のない限り、溶存二酸化炭素量は、イソシアネート成分およびイソシアネート反応性成分の量に基づいたg/lでの平均濃度である。
【0034】
他の既知の発泡剤、例えば、HFC、HCFC、およびペンタンのような炭化水素のいずれかを少量(例えば全発泡剤組成物の20%未満)使用してもよいが、これら既知の発泡剤の使用は好ましくない。
【0035】
ポリウレタン生成反応を行う容器または室に空気および窒素のような気体を含むことも、本発明の範囲である。このような気体の使用は、ヘッドスペースにおける二酸化炭素の濃度を制御するのに特に有利である。ヘッドスペースの空気または窒素は、圧力を維持し、必要に応じ二酸化炭素の導入を促進し、溶液に溶解する二酸化炭素量の制御を可能にする。多すぎる二酸化炭素が導入される場合、混合物は二酸化炭素によって過飽和になり、適当な二酸化炭素が維持されている場合に得られる微細気泡構造ではなく、一部に大きな気泡が生じる。
【0036】
2つ以上の反応体流れ、一般には1つのイソシアネート反応性成分流れおよび1つのイソシアネート成分流れを、低圧または高圧ミキシングヘッドにおける混合を含む、成形ポリウレタン物品の製造に適した方法によって配合できる。本発明を実施する場合、イソシアネート反応性成分流れおよび/またはイソシアネート成分流れが既に溶存二酸化炭素を含むことが必要である。ミキシングヘッドまたは泡立て器(例えばOakesミキサー)でしか二酸化炭素を添加しなければ、許容可能な物品は得られないであろう。
【0037】
本発明の方法は、材料の反応性を変更することなく低密度硬質ポリウレタンフォームを製造できるので、特に有利である。ガラス40重量%で0.5g/cm程度の低い密度を有する低密度ガラス強化組成物が製造され、大きな空隙または気泡のない微細気泡構造を有するポリウレタンフォームが得られる。
【0038】
本発明のポリウレタン生成反応混合物は、既知のRIM法、構造RIM法および長繊維射出成形法のいずれかによって、このような方法に有用であることが知られている充填材または繊維のいずれかを用いて製造され得る。長繊維射出成形法が特に好ましい方法である。このような長繊維射出成形法のための装置および製造パラメーターは、例えば米国特許公開第2004/0135280号公報に開示されている。繊維含有反応混合物を、金型に注入または他の方法で入れることができる。その後、金型の内容物を硬化できる。本発明の強化ポリウレタンは、開放金型または密閉金型を用いて製造できる。
【0039】
LFI法では、開放金型は、ガラス繊維ストランドをロービングから切り、ポリウレタン反応混合物を配合する、ミキシングヘッドから充填される。ガラス繊維の体積および長さはミキシングヘッドで調節できる。この方法は、マットまたはプレフォームより低コストのガラス繊維ロービングを用いる。該ガラスロービングは、好ましくは、ガラスチョッパーを備えたミキシングヘッドに供給される。ミキシングヘッドが金型の上に配置され、ミキシングヘッドの内容物が開放金型に分配される場合、ミキシングヘッドは、同時に、ポリウレタン反応混合物を分配し、ガラスロービングを細断する。ミキシングヘッドの内容物を金型内に分配した後、金型を閉じ、反応混合物を硬化させ、複合物品を金型から取り出す。金型は一般に、約48.9〜約87.8℃(約120〜190°F)の温度で維持される。ミキシングヘッドの内容物を金型に分配するのに要する時間は、通常10〜60秒である。金型は一般に、ガラス繊維強化層を硬化させるために、約1.5〜約6分間、閉じたままにしておく。
【0040】
適当な金型は、スチール、アルミニウムまたはニッケルから製造され得る。その改善されたシール性および生成物トリミング工程の簡素化の故に、喰切り刃を有する金型が特に好ましい。
【0041】
金型温度は、バリヤーコートに適用される強化層の適当な硬化にとって重要である。適当な金型温度は一般に、約60〜約90℃、好ましくは約70〜約80℃の範囲である。
離型剤は一般に、複合物品の良好な脱型を確実にするために使用される。
【0042】
本発明を一般的に記載したが、本発明の更なる理解は、限定を意図するのではなく説明だけの目的で本明細書に示す特定の実施例を参照することによって得られる。
【実施例】
【0043】
本発明の繊維強化ポリウレタン組成物の製造に有用な物質は以下を包含する。
ポリオールA:Multranol 4050の商品名でBayer MaterialScience LLCから市販されている約630mg KOH/gのヒドロキシル価を有するアミンベース四官能性ポリエーテルポリオール。
ポリオールB:Multranol 4063の商品名でBayer MaterialScience LLCから市販されている約460mg KOH/gのヒドロキシル価を有するアミン開始ポリエーテル四官能性ポリオール。
ポリオールC:Multranol 9138の商品名でBayer MaterialScience LLCから市販されている約700mg KOH/gのヒドロキシル価を有するアミン開始ポリエーテルトリオール。
ポリオールD:Multranol 9158の商品名でBayer MaterialScienceから市販されている約470mg KOH/gのヒドロキシル価を有するエチレン変性ポリプロピレンオキシドベーストリオール。
ポリオールE:Multranol 4035の商品名でBayer MaterialScienceから市販されている約380mg KOH/gのヒドロキシル価を有するエチレンオキシド変性ポリプロピレンオキシドベーストリオール。
ポリオールF:Multranol 9171の商品名でBayer MaterialScienceから市販されている約340mg KOH/gのヒドロキシル価を有するポリプロピレンオキシドベースヘキソール。
【0044】
ポリオールG:ARCOL PPG425の商品名でBayer MaterialScienceから市販されている約264mg KOH/gのヒドロキシル価を有するポリプロピレンオキシドベースジオール。
ポリオールH:ARCOL PPG LG-650の商品名でBayer MaterialScienceから市販されている約655mg KOH/gのヒドロキシル価を有するポリプロピレンオキシドベーストリオール。
ポリオールI:Multranol 9133の商品名でBayer MaterialScienceから市販されている約1,050mg KOH/gのヒドロキシル価を有するポリプロピレンオキシドベーストリオール。
ポリオールJ:Multranol 8114の商品名でBayer MaterialScienceから市販されている約395mg KOH/gのヒドロキシル価を有するアミン開始ポリエーテルテトロール。
ポリオールK:Multranol 8120の商品名でBayer MaterialScienceから市販されている約360mg KOH/gのヒドロキシル価を有するアミン開始ポリエーテルテトロール。
ポリオールL:Multranol 8108の商品名でBayer MaterialScienceから市販されている約875mg KOH/gのヒドロキシル価を有するポリプロピレンオキシドベーストリオール。
【0045】
EG:エチレングリコール。
DEG:ジエチレングリコール。
PU−1748:トール油およびN,N'-ジメチル-1,3-ジアミンプロパンのアミドの第四アンモニウム塩。
MRA:Loxiol G-71Sの商品名でHenkelから市販されている離型剤。
触媒A:NIAX C-177の商品名でGEから市販されている触媒。
触媒B:NIAX A-107の商品名でGEから市販されている触媒。
触媒C:Dabco T12の商品名でAir Productsから市販されているスズ触媒。
触媒D:Dabco EGの商品名でAir Productsから市販されているアミン触媒。
界面活性剤A:DC5982の商品名でAir Productsから市販されているシリコーン界面活性剤。
界面活性剤B:L1000の商品名でGEから市販されているシリコーン界面活性剤。
界面活性剤C:B8870の商品名でGoldschmidtから市販されているシリコーン界面活性剤。
界面活性剤D:DC 198の商品名でAir Productsから市販されている界面活性剤。
【0046】
イソシアネートA:Mondur 645Aの商品名でBayer MaterialScience LLCから市販されている、31%のNCO含有量および25℃で160mPa・sの粘度を有するジフェニルメタンジイソシアネートベース芳香族ポリマーイソシアネート。
イソシアネートB:Bayfit 753X-Aの商品名でBayer MaterialScienceから市販されている、32%のNCO含有量および25℃で40mPa・sの粘度を有するジフェニルメタンジイソシアネートベース芳香族イソシアネート末端ポリマーイソシアネート。
イソシアネートC:Mondur PFの商品名で市販されている、23%のNCO含有量および25℃で750mPa・sの粘度を有するジフェニルメタンジイソシアネートベース芳香族イソシアネート末端プレポリマー。
イソシアネートD:Mondur MA 2300の商品名でBayer MaterialScienceから市販されている、23%のNCO含有量および25℃で550mPa・sの粘度を有するジフェニルメタンジイソシアネートベース変性イソシアネート末端芳香族イソシアネート。
ガラス:ME1020の商品名でOwens Corningから入手可能な連続ガラスロービング。
【0047】
実施例1〜15
上記手順に従った複合物品の製造に有用であり得る組成物を、以下の表1〜4に示す。これらの実施例は、本発明の方法に適当な様々に異なった特定ポリウレタン生成組成物を説明するために示す。異なったイソシアネートまたはイソシアネート混合物を各表で使用する。表1〜4の各々に記載された量は、ポリウレタン生成混合物の総重量に基づいた重量%として示されているガラス含有率を除いて、重量部である。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
実施例16〜20
これらの実施例は、「代表的な」ポリウレタン生成混合物から製造された硬質ポリウレタン組成物の密度、ゲル化時間および強度特性に対する、溶存二酸化炭素量の影響を説明するために示す。
実施例16〜20の各々において、0.4〜1.4g/lで変化する溶存二酸化炭素量の二酸化炭素は、代表的なポリウレタン生成混合物のポリオール成分中に溶解させた。次いで、該混合物を約61cm×約61cm(24in×24in)寸法のスチール製金型に注いだ。製造されたポリウレタン組成物の特性を表5に示す。
【0053】
【表5】

【0054】
樹脂に0.2〜0.5%の水を添加することによって複合物品の密度の更なる低下を試みた場合、ゲル化時間は32秒から28〜25秒まで短縮され、得られた生成物は低い表面特性を有した。
【0055】
本発明を十分に記載してきたが、ここに記載した本発明の意図または範囲から外れることなく、多くの変更および修飾がなされることは、当業者には明らかであろう。請求の範囲で使用する場合、特に記載のない限り、用語「a」および「an」は「1つ以上」を意味する。用語「主な」および「大部分」は、場合によって重量またはモルに基づいて、50%を超えることを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)a)約3〜約8のヒドロキシル基官能価および200超のヒドロキシル価を有するポリオール、
b)触媒、
c)界面活性剤、
d)任意に架橋剤、
e)任意に水、および
f)任意に溶存二酸化炭素
を含んでなるイソシアネート反応性成分、
(2)a)有機ポリイソシアネート、および
b)任意に溶存二酸化炭素
を含んでなるイソシアネート成分、並びに
(3)a)繊維強化材
の反応生成物からなる低密度繊維強化ポリウレタンであって、溶存二酸化炭素がイソシアネート反応性成分またはイソシアネート成分の少なくとも1つに存在し、イソシアネート反応性成分および/またはイソシアネート成分中に存在する二酸化炭素の合計量が0.3〜2.0g/lであるポリウレタン。
【請求項2】
約3〜約8のヒドロキシル基官能価および200超のヒドロキシル価を有する2種以上のポリオールがイソシアネート反応性成分の成分a)として存在する、請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項3】
三官能性ポリオールと四官能性ポリオールの組合せをイソシアネート反応性成分の成分a)として使用する、請求項2に記載のポリウレタン。
【請求項4】
三官能性ポリオールがトリオールとテトロールの総重量に基づいて少なくとも約50重量%の量で存在する、請求項3に記載のポリウレタン。
【請求項5】
水がイソシアネート反応性成分中に存在する請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項6】
イソシアネート反応性成分が約3〜約4のヒドロキシル基官能価を有する少なくとも1種のポリオールを含む、請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項7】
架橋剤がイソシアネート反応性成分中に存在する請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項8】
イソシアネート反応性成分が200〜600の平均ヒドロキシル価を有する少なくとも1種のポリオールを含み、架橋剤が存在する、請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項9】
イソシアネート反応性成分が600〜1,200のヒドロキシル価を有する少なくとも1種のポリオールを含む、請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項10】
イソシアネート反応性成分がポリエーテルトリオールおよびポリエーテルテトロールの混合物を含む、請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項11】
イソシアネート反応性成分がポリエステルポリオールである少なくとも1種のポリオールを含む、請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項12】
イソシアネート反応性成分が混合出発物質から調製された少なくとも1種のポリエーテルポリオールを含む、請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項13】
イソシアネート反応性成分および/またはイソシアネート成分中に含まれる溶存二酸化炭素の合計量が0.2〜2.0g/lである、請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項14】
イソシアネート反応性成分が、3未満の官能価を有するポリオールをポリオールの総重量に基づいて50重量%までの量で含む、請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項15】
繊維強化材がガラス繊維である請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項16】
ガラス繊維が12.5〜100mmの平均長さを有する請求項15に記載のポリウレタン。
【請求項17】
ガラス繊維がイソシアネート成分とイソシアネート反応性成分の総重量に基づいて15〜55重量%の量で存在する、請求項15に記載のポリウレタン。
【請求項18】
(1)a)約3〜約8のヒドロキシル基官能価および200超のヒドロキシル価を有するポリオール、
b)触媒、
c)界面活性剤、
d)任意に架橋剤、
e)任意に水、および
f)任意に溶存二酸化炭素
を含んでなるイソシアネート反応性成分、
(2)a)有機ポリイソシアネート、および
b)任意に溶存二酸化炭素
を含んでなるイソシアネート成分、並びに
(3)a)(1)と(2)の総重量に基づいて5〜50重量%のガラス繊維
の反応生成物からなる、1.1〜0.4g/cmの密度を有するガラス強化ポリウレタン組成物であって、溶存二酸化炭素がイソシアネート反応性成分またはイソシアネート成分の少なくとも1つに存在し、イソシアネート反応性成分および/またはイソシアネート成分中に存在する二酸化炭素の合計量が0.3〜2.0g/lである組成物。
【請求項19】
ガラス繊維が12.5〜100mmの長さを有する請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
(1)a)約3〜約8のヒドロキシル基官能価および200超のヒドロキシル価を有するポリオール、
b)触媒、
c)界面活性剤、
d)任意に架橋剤、
e)任意に水、および
f)任意に溶存二酸化炭素
を含んでなるイソシアネート反応性成分、
(2)a)有機ポリイソシアネート、および
b)任意に溶存二酸化炭素
を含んでなるイソシアネート成分、並びに
(3)a)繊維強化材
からなる低密度繊維強化ポリウレタンを製造するための配合物であって、溶存二酸化炭素がイソシアネート反応性成分またはイソシアネート成分の少なくとも1つに存在し、イソシアネート反応性成分および/またはイソシアネート成分中に存在する二酸化炭素の合計量が0.3〜2.0g/lである配合物。
【請求項21】
約3〜約8のヒドロキシル基官能価および200超のヒドロキシル価を有する2種以上のポリオールがイソシアネート反応性成分の成分a)として存在する、請求項20に記載の配合物。
【請求項22】
三官能性ポリオールと四官能性ポリオールの組合せをイソシアネート反応性成分の成分a)として使用する、請求項21に記載の配合物。
【請求項23】
三官能性ポリオールがトリオールとテトロールの総重量に基づいて少なくとも約50重量%の量で存在する、請求項22に記載の配合物。
【請求項24】
水がイソシアネート反応性成分中に存在する請求項20に記載の配合物。
【請求項25】
イソシアネート反応性成分が約3〜約4のヒドロキシル基官能価を有する少なくとも1種のポリオールを含む、請求項20に記載の配合物。
【請求項26】
架橋剤がイソシアネート反応性成分中に存在する請求項20に記載の配合物。
【請求項27】
イソシアネート反応性成分が200〜600の平均ヒドロキシル価を有する少なくとも1種のポリオールを含み、架橋剤が存在する、請求項20に記載の配合物。
【請求項28】
イソシアネート反応性成分が600〜1,200のヒドロキシル価を有する少なくとも1種のポリオールを含む、請求項20に記載の配合物。
【請求項29】
イソシアネート反応性成分がポリエーテルトリオールおよびポリエーテルテトロールの混合物を含む、請求項20に記載の配合物。
【請求項30】
イソシアネート反応性成分がポリエステルポリオールである少なくとも1種のポリオールを含む、請求項20に記載の配合物。
【請求項31】
イソシアネート反応性成分が混合出発物質から調製された少なくとも1種のポリエーテルポリオールを含む、請求項20に記載の配合物。
【請求項32】
イソシアネート反応性成分および/またはイソシアネート成分中に含まれる溶存二酸化炭素の合計量が0.2〜2.0g/lである、請求項20に記載の配合物。
【請求項33】
イソシアネート反応性成分が、3未満の官能価を有するポリオールをポリオールの総重量に基づいて50重量%までの量で含む、請求項20に記載の配合物。
【請求項34】
繊維強化材がガラス繊維である請求項20に記載の配合物。
【請求項35】
ガラス繊維が12.5〜100mmの平均長さを有する請求項34に記載の配合物。
【請求項36】
ガラス繊維がイソシアネート成分とイソシアネート反応性成分の総重量に基づいて15〜55重量%の量で存在する、請求項34に記載の配合物。

【公開番号】特開2008−56928(P2008−56928A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223616(P2007−223616)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(503349707)バイエル・マテリアルサイエンス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (178)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience LLC
【Fターム(参考)】