説明

低帯域幅通信チャネルを介して航空機間でレーダ情報を交換するためのシステムおよび方法

【課題】航空機の乗組員が悪天候および/または他の航空機などの潜在的に危険な物体に応答するためのより多くの時間を有するように、航空機の気象レーダの範囲を有効に拡大する。
【解決手段】航空機間で気象レーダ情報を通信するシステムおよび方法は、低帯域幅通信トランシーバ306を使用して航空機間で気象情報を通信する。例示的な実施形態は、遠隔航空機120搭載の気象レーダシステム310から気象情報を受信し、受信された気象情報を、少なくとも1つの表示装置322上に表示可能な気象レーダ画像情報へと処理し、気象レーダ画像情報を縮小サイズのデータセットへと処理し、低帯域幅通信チャネルを介して装備航空機104に縮小サイズデータセットを通信し、低帯域幅通信チャネルが、遠隔航空機搭載の低帯域幅通信トランシーバによって生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
航空機気象レーダは、解析されたレーダ反射に基づいて、危険な気象の情報を表示する。検出された危険気象情報に対応するレーダ反射情報は、航空機が横断している地理的領域を示す平面図を一般に使用して、表示装置上で航空機乗組員に提示される、一部のレーダシステムは任意選択で、航空機機首方位に沿ってなど、航空機に対する選択された方位角に沿って、垂直スライス図に対応する危険気象情報の選択部分を提示するように構成されてよい。こうした垂直スライスは、選択された垂直スライスに沿って位置するいずれかの危険気象の、航空機からの高度および相対的距離を表示する。
【0002】
しかし、気象レーダは、制限された有効範囲を有する。レーダ範囲は、地形および航空機の高度によって制限されることがある。たとえば、カンザス州上の巡航高度の航空機は、地球の曲率、および放射されたレーダ信号の出力信号強度に基づいて約555.6km(300海里)の有効レーダ範囲を有することができる。搭載レーダのこの有効範囲は、レーダ水平線と呼ばれることもある。コロラド州では、気象レーダ有効範囲は、山脈が放射されたレーダ信号を遮断するとき、著しく減少する。航空機が離陸中または着陸中のとき、航空機の高度が低いことにより、(航空機が巡航高度にあるときと比べて)地球水平線が航空機に比較的接近しているので、レーダ範囲が制限されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,667,710号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、気象レーダは、気象レーダの範囲を超えた気象および/または関心の対象を乗組員に示さない。たとえば、航空機は、巡航高度の間、比較的速い速度で移動していることがある。気象レーダの有効範囲が航空機から数百マイルであっても、航空機は、その距離を比較的短時間に横断する。したがって、航空機の乗組員が悪天候および/または他の航空機などの潜在的に危険な物体に応答するためのより多くの時間を有するように、航空機の気象レーダの範囲を有効に拡大することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
航空機間で気象レーダ情報を通信するシステムおよび方法が開示される。例示的な一実施形態は、検出された気象に基づいて気象情報を生成する、第1の航空機に搭載された気象レーダシステムと、搭載気象レーダシステムに結合されており、気象情報を処理して縮小サイズのデータセットにする搭載処理システムと、搭載処理システムに結合された搭載低帯域幅通信トランシーバとを有し、搭載低帯域幅通信トランシーバが、縮小サイズデータセットを第2の航空機搭載の遠隔低帯域幅通信トランシーバに送信する。
【0006】
さらなる態様によれば、例示的な一実施形態は、遠隔航空機に搭載された気象レーダシステムから気象情報を受信し、受信された気象情報を処理して、少なくとも表示装置上に表示可能な気象レーダ画像情報にし、気象レーダ画像情報を処理して、縮小サイズのデータセットにし、縮小サイズデータセットを低帯域幅通信チャネルを介して装備航空機に通信し、低帯域幅通信チャネルが、遠隔航空機に搭載された低い帯域幅通信トランシーバによって生成される。
【0007】
好ましい代替の実施形態について、以下の図面を参照して下記に詳細に述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】その一部が装備航空機の搭載気象レーダの有効範囲外にある、複数のストームセルを有する空間領域を通る装備航空機の計画飛行経路の一部を示す透視図である。
【図2】航空機の搭載気象レーダの有効範囲の概念的気象レーダ表示、および遠隔航空機の気象レーダの有効範囲の気象レーダ表示を示す図である。
【図3】装備航空機の航空電子機器システムで実装された気象レーダ情報通信システムの例示的な一実施形態のブロック図である。
【図4】装備航空機の搭載気象レーダシステムに基づく、複数のストームセルを通る計画飛行経路の気象レーダ表示、および遠隔航空機の気象レーダシステムから受信された情報を提示する表示画像の図である。
【図5】通信された気象情報を伴う低帯域幅通信信号を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
気象レーダ情報通信システム100の実施形態は、搭載レーダによって検出されたレーダ情報を処理し、低帯域幅通信チャネルを使用して他の航空機にレーダ情報を通信する。たとえば、HF(高周波)、VHF(超短波)およびUHF(極超短波)無線システムは、航空機間、航空機対地上、および/または地上対航空機の通信を提供するために比較的低い帯域幅チャネルを使用する。気象レーダ通信情報通信システム100の実施形態は、こうした低帯域幅チャネルを使用して、処理されたレーダ情報を通信する。
【0010】
図1は、複数のストームセル108、110、112を有する空間領域106を通る装備航空機104の計画飛行経路102の一部の透視図であり、この複数のストームセルの一部は、装備航空機の搭載気象レーダの有効範囲外にある。用語「気象」は一般に、それだけに限らないが、装備航空機104が遭遇し得るストームセル、乱気流領域、雲、降水、雹、雪、ウインドシア、氷結条件など、気象レーダが検出可能な任意のタイプの気象現象を指す。
【0011】
この例では、ストームセル108、110は、装備航空機の搭載気象レーダの有効範囲114内にある。しかし、遠隔のストームセル112は、装備航空機の搭載気象レーダの有効範囲114の外にある。したがって、装備航空機104は、ストームセル112を検出することができない。
【0012】
ストームセル112は、様々な理由により、装備航空機の搭載気象レーダの有効範囲114の外にあり得る。たとえば、装備航空機104は、離陸中であることがあり、したがって、比較的低い高度にあり得る。あるいは、ストームセル112の検出を妨げている介在する山脈116が存在することがある。あるいは、ストームセル112は、装備航空機104の正面の遥か向こうにあるので、単に検出できないことがある。
【0013】
ここで、図示された空間領域106bは、範囲118として示された、装備航空機104の気象レーダの有効範囲114の外に位置する。しかし、遠隔航空機120は、ストームセル112の比較的近くにある。したがって、ストームセル112は、遠隔航空機120の気象レーダによって検出可能である。気象レーダ情報通信システム100の実施形態は、遠隔航空機120の搭載レーダによって検出されたレーダ情報を処理し、低帯域幅通信チャネルを使用して装備航空機104にレーダ情報を通信する。したがって、装備航空機104は、ストームセル112を乗組員に示すレーダ表示を生成することができる。
【0014】
図2は、航空機の搭載気象レーダの有効範囲の概念的な気象レーダ表示202、および遠隔航空機の気象レーダの有効範囲の気象レーダ表示204である。気象レーダ表示202、204は、それぞれ航空機104、120の気象レーダの範囲内で検出された気象の平面図である。図1に類似して、図2の図形記号の参照符号は、図1のストームセル108、110、112の参照符号に対応する。
【0015】
提示された気象レーダ表示202、204は、2次元(2D)データベースに基づくことができ、このデータベースは、情報(たとえば航空機104、120の現在位置に対する範囲および方位値に基づくビンを使用して)レーダ反射情報で埋められる。他の実施形態では、提示された気象レーダ表示202、204は、3次元(3D)データベースに基づくことができ、このデータベースは、(たとえば航空機104、120の現在位置に対する範囲、方位角、および海抜高度に基づく3Dビンまたはボクセルを使用して)レーダ反射情報で埋められる。3D気象レーダシステムの例示的な実施形態は、本願の譲受人に譲渡された、2002年2月19日に出願された米国特許第6,667,710号、Cornell他に従って実装される。同特許の全体を、参照により本明細書に組み込む。
【0016】
一部の実施形態は、レーダ反射情報に相関するビットマップデータセットを生成することができる。したがって、特定のデータビンまたはボクセルは単に、表示された色、フィルパターンまたはシェーディングに対応するビットマップデータを記憶する。
【0017】
気象レーダ表示202、204上に表示された画像は、検出された気象のサイズおよび相対位置を定義する、色付きの領域として一般に示されたピクチャ情報を備える。色は、強度および/または気象タイプなど、気象の様々な属性を示す。一部の実施形態では、気象レーダ表示202、204は、気象の高度に関する情報を与えるために、指定された放射状構造に沿って気象情報の垂直スライスを表示するように構成されてよい。
【0018】
遠隔航空機120からの気象レーダ情報は、低帯域幅通信チャネル信号206を介して装備航空機104に通信される。さらに、状況によっては、装備航空機104からのローカル気象レーダ情報が、低帯域幅通信チャネル信号206を介して遠隔航空機120に通信される。一部の実施形態では、(それだけに限らないがピクセル情報など、)気象レーダ表示202、204上の画像に対応する情報が通信される。他の実施形態では、気象レーダ表示202、204上の画像を生成するために使用された情報が通信される。
【0019】
さらに、送信側航空機の現在位置が、通信される遠隔気象レーダ情報と共に含まれる。一部の実施形態は、遠隔レーダ情報が収集された時間、および/または送信側航空機の機首方向を含む。さらに、送信側航空機に対する、検出された遠隔気象の相対方向を識別する方位情報が含まれる。
【0020】
気象レーダ情報通信システム100の実施形態は、受信側航空機(ここでは装備航空機104)の知られている位置を、送信側航空機(ここでは遠隔航空機120)の位置と相関させる。したがって、受信された遠隔気象レーダ情報の相対的位置が決定され、次いで、受信側航空機の気象レーダの範囲を有効に拡大するために、受信側航空機(ここでは装備航空機104)のローカル気象レーダの範囲に追加される。
【0021】
別法として、またはさらに、遠隔気象情報は、検出された遠隔気象の位置(緯度、経度および/または海抜)が決定されて、次いで、通信される気象情報に含められるように処理されてよい。したがって、気象レーダ情報通信システム100の実施形態は、関心領域(搭載気象レーダシステム310の有効範囲114の外の空間領域106bなど)内の気象情報を選択することができる。
【0022】
図3は、装備航空機104の航空電子機器システム302で実装された気象レーダ情報通信システム100の例示的な一実施形態のブロック図である。遠隔航空機120が、同様に装備されている。航空電子機器システム302は、全地球測位システム(GPS:global positioning system)304と、トランシーバ306と、慣性測定装置(IMU:inertial measurement unit)308と、気象レーダシステム310と、処理システム312と、表示システム314と、メモリ316と、乗組員インターフェース318とを含む。気象レーダシステム310は、レーダ信号を放射し、レーダ反射を受信するように動作可能なアンテナ320を含む。表示システム314は、適切な表示装置322を含む。一部の実施形態では、表示装置322は、電子飛行バッグにあることも、ARINC 453表示装置にあることもある。航空電子機器システム302は、上記コンポーネントのすべてを含むとは限らないことがあり、かつ/あるいは本明細書に示されず、または述べられていない他のコンポーネントおよび/またはシステムを含むことがあることが理解されよう。
【0023】
上述のコンポーネントは、例示的な実施形態では、通信バス324によって通信可能に共に結合される。航空電子機器システム302の代替実施形態では、上述のコンポーネントは、異なるやり方で互いに通信可能に結合されてよい。たとえば、上述のコンポーネントのうちの1つまたは複数は、処理システム312に直接結合されてもよいし、中間コンポーネント(図示せず)を介して処理システム312に結合されてもよい。
【0024】
気象レーダシステム310は、それだけに限らないが、航空機104から比較的遠く離れて位置する気象を検出するように動作可能な気象レーダなど、任意の適切なレーダシステムであってよい。アンテナ320は、レーダパルスを放射し、レーダ反射を受信する。レーダ反射は、放射されたレーダパルスが当たっている物体から反射されたエネルギーである。アンテナ320は、レーダシステム310が航空機104の近くの関心領域で気象、より具体的には乱気流を検出できるように、往復運動で、上下方向に、かつ/または関心のある他の方向に掃引される。気象レーダ情報通信システム100の実施形態は、航海用レーダなど、レーダの他のタイプおよび/または応用例で実装されてよい。
【0025】
GPS 304は、装備航空機104の現在位置を決定する。IMU 308もまた、装備航空機104の現在位置を決定し、またはその現在位置の決定を補うために使用されてよい。
【0026】
ユーザインターフェース318は、装備航空機104の乗組員から入力を受信する。したがって、乗組員は任意選択で、気象レーダシステム310によって検出されたレーダ情報だけを見ることを決定してもよいし、他の遠隔航空機によって受信されたレーダ情報を見ることを選択してもよいし、両方を見ることを選択してもよい。
【0027】
トランシーバ306は、低帯域幅、長範囲の通信装置である。一部の実施形態では、トランシーバ306は、音声通信に使用される。たとえば、装備航空機104の乗組員は、遠隔航空機120の乗組員と話すことができる。一部の状況では、乗組員間の議論の後、レーダ情報が送信され得る。したがって、送信側航空機(ここでは装備航空機104)の乗組員は、受信側航空機(ここでは遠隔航空機120)への気象レーダ情報の送信を引き起こすために、ユーザインターフェース318を介して適切なコマンドを入力してよい。状況によっては、気象レーダ情報が、航空機間で交換されてよい。一部の実施形態では、気象レーダ情報が、航空機間で自動的に交換される。さらに、気象情報が、地上局から受信され、そこに送信されてよい。
【0028】
こうした長距離の低帯域幅トランシーバ306は、UHFおよびVHFおよび/またはUF周波数を使用して通信することができる。したがって、低帯域幅トランシーバは、HF(高周波)無線システム、VHF(超短波)無線システム、および/またはUHF(極超短波)無線システムの一部であってよい。
【0029】
たとえば、例示的なVHFデータリンクシステムは、31.5キロビット/秒(Kbps)の帯域幅を有し、740.8km(400海里)以上の空対空の範囲である。別の例示的なトランシーバ306は、1090MHzモードS拡張スキッタ(1090 ES)データリンクであり、このデータリンクは、航空機ベースの送信機では最大(1)メガビット/秒(Mbps)が可能であり、最大370.4km(200海里)の範囲である。したがって、低帯域幅通信システムは、約1Mbps以下のチャネル容量を有する。一部の実施形態では、低帯域幅システムは、装備航空機104の乗組員、他の航空機の乗組員、および/または航空管制官など地上の人々の間の音声通信をサポートする。
【0030】
したがって、トランシーバ306の帯域幅容量は、トランシーバ306によって使用される周波数に応じて約数十キロビット/秒で測定される。したがって、トランシーバ306上では生の気象レーダ情報を転送できるほど十分な帯域幅容量を使用できない。さらに、トランシーバ306上では気象レーダ画像情報を転送できるほど十分な帯域幅容量を使用できない場合が多い。したがって、気象レーダ情報通信システム100の実施形態は、気象レーダ情報および/または気象レーダ画像情報を処理し、またはパラメータ化して、遠隔気象レーダ情報の縮小データセットにし、この縮小データセットは、トランシーバ306から使用可能な比較的低い帯域幅容量を使用して転送することができる。さらに、縮小データセットを通信することによって、音声通信など、他の目的にトランシーバ306を使用することが可能となる。縮小データセットは、以前に送られた縮小データセットを更新するために使用されるリフレッシュを含むこともできる。
【0031】
気象レーダ情報通信システム100の例示的な実施形態は、連携して動作する複数のモジュールを備える。モジュールは、レーダ情報処理モジュール326、飛行計画処理モジュール328、オプションの垂直表示処理モジュール330、オプションの乱気流強度処理モジュール332、および気象情報表示モジュール334と識別される。モジュール326、328、330、332、334は、メモリ316に常駐し、処理システム312によって取り出され、実行される。他の実施形態では、モジュール326、328、330、332、334は、共通モジュールとして一緒に実装されてもよいし、他のモジュールに統合されてもよいし、他のメモリ(図示せず)常駐してもよい。
【0032】
例示的な実施形態では、気象情報データベース336は、メモリ316に記憶され、この気象情報データベース336は、一部の実施形態では、3次元(3D)気象情報を含んでよい。さらに、気象情報データベース336は、他のデータベースと共に実装されてもよいし、バッファなどの様々なフォーマットで実装されてもよいし、かつ/または別のメモリで実装されてもよい。
【0033】
レーダ情報処理モジュール326は、レーダシステム310のアンテナ320によって検出されたレーダ反射を処理する。様々なタイプの気象およびその関連属性が、レーダ情報処理モジュール326によって決定される。決定されたローカル気象情報は、気象情報データベース336内の対応するビン(2D)またはボクセル304(3D)内に保存される。
【0034】
気象情報表示モジュール334は、気象情報データベース336に記憶された気象情報にアクセスし、ローカル気象情報の図式的提示に対応する表示可能画像を構築する。さらに、縮小サイズのデータセット内の遠隔気象情報は、遠隔気象の表示可能な画像を生成するために使用される。遠隔気象の画像は、ローカル気象の画像と組み合わされる。ローカル気象情報の表示可能な画像は、表示システム314に通信され、気象レーダ表示202(図2)として表示装置322上に提示される。表示可能な画像は、一部の実施形態では、ビットマップデータの形である。
【0035】
オプションの飛行計画処理モジュール328は、飛行計画情報を処理する。飛行計画は、乗組員によって事前定義され、かつ/または入力されてよい。事前定義された飛行計画は一般に、一連の中間地点に基づく複数の計画飛行経路セグメントを備える。計画飛行経路セグメントは、直線であっても、曲線であってもよい。飛行計画情報は、中間地点の位置および/または飛行経路セグメントを定義する地理的な位置情報、ならびに計画高度情報を含む。飛行計画情報は任意選択で、高度下限、高度上限、および/あるいは除外領域またはゾーンなど、様々な限度を含み得る。一部の実施形態では、飛行計画は、乗組員の入力に基づいて、GPS 304および/またはIMU 308によって提供された航空機104の現在位置に基づいて、かつ/あるいはトランシーバ306によって受信された命令または情報に基づいて飛行中に動的に調整されてよい。したがって、飛行計画は、乗組員にとって関心のある装備航空機104の気象レーダシステム310の検出範囲外の空間領域を決定するために使用されてよい。次いで、決定された空間領域が、遠隔航空機から受信されたレーダ情報フィルタリングし、そうでない場合は選択するために使用される。
【0036】
任意選択の乱気流強度処理モジュール332はさらに、検出された乱気流の乱気流強度情報および乱気流領域の位置を決定するために気象レーダ反射情報を処理する。乱気流強度情報および位置情報は、気象情報データベース336に保存される。乱気流情報は、気象情報として送信されてよい。
【0037】
オプションの垂直表示処理モジュール330は、事前定義または選択された垂直面またはスライスに沿って気象情報を取り出す。取り出された気象情報は、気象情報表示モジュール334に通信され、この気象情報表示モジュール334は、垂直スライスに対応する画像を準備し、次いで、この画像は、表示装置322上に表示される。
【0038】
図4は、装備航空機の搭載気象レーダシステム310、および遠隔航空機の気象レーダシステム310から受信された情報に基づいて、複数のストームセル108、110、112を通る計画飛行経路102の気象レーダ表示402を提示する表示画像である。図1に類似して、図4の図形記号の参照符号は、図1のストームセル108、110、112の参照符号に対応する。
【0039】
装備航空機104内の気象レーダ表示402は、搭載気象レーダシステム310(図3)によって検出されたストームセル108、110、112の表示を含む。搭載気象レーダシステム310は、その最大範囲114まで、ローカル気象を検出する。ローカル気象レーダ情報は、検出されたローカル気象に基づいて生成される。
【0040】
最大範囲114を超えて、気象レーダ表示402は、遠隔航空機120の気象レーダシステム310によって検出されたストームセル112を表示する。したがって、範囲118として示された、範囲114の外の遠隔気象情報が、装備航空機104の乗組員に示され得る。
【0041】
図5は、通信される気象情報を含む低帯域幅通信信号206を概念的に示している。様々なときに、低帯域幅通信信号206は、(遠隔航空機120によって検出された気象に対応する)縮小サイズのデータセット502を含むことになる。他のときには、他の通信504が、低帯域幅通信信号206内に含まれ得る。たとえば、通信504は、航空機104、120の乗組員間の会話に対応する音声情報を含んでよい。低帯域幅通信信号206は、双方向通信(音声会話など)をサポートすることが理解されよう。したがって、装備航空機104は任意選択で、その気象レーダシステム310によって検出された(縮小サイズデータセットの形の)気象レーダ情報を遠隔航空機104に返すことができる。
【0042】
さらに、地上局506は、低帯域幅通信信号508が気象レーダ情報に対応する縮小サイズのデータセットを伴って遠隔航空機120から受信され得るように、トランシーバ306、または互換性のある別のトランシーバを備えてよい。(あるいは、信号206、508は、装備航空機104と地上局506の両方で受信された同じ信号であってよいことが理解されよう。)
気象レーダ情報通信システム100の実施形態は、気象レーダ情報を縮小サイズのデータセット502へと処理するための1つまたは複数の技術を使用することができ、この縮小サイズデータセット502は、低帯域幅通信チャネルを介して通信される。
【0043】
例示的な低帯域幅通信信号は、レーダ強度情報を比較的小さい縮小サイズのデータセット502に変換することによって生成される。たとえば、レーダ強度情報は、2Dまたは3Dの縮小サイズデータセット502の複数のビンまたはボクセルについてのビットマップ情報を生成するために使用されてよい。ビットマップ情報は、レーダ反射強度の特定の値または値域を識別する事前定義された色に対応する小さい2進数であってよい。したがって、レーダ反射強度情報は、特定の各ビンまたはボクセルについて、比較的小さいビット数に変換され、次いで、縮小サイズのデータセット502へと組み立てられる。
【0044】
通信される縮小サイズのデータセット502は、遠隔航空機120によって検出された気象の位置が決定できるように十分な位置情報を含む。たとえば、それだけに限らないが、ビン位置情報、遠隔航空機120の現在位置(地理的位置、および任意選択で機首方向、速度および/または高度情報)、ならびに方位情報(レーダ反射が収集されたときの遠隔航空機120のアンテナ320の向きに対応する)は、縮小サイズデータセット502と共に、あるいはその中に含まれる。
【0045】
装備航空機104は、縮小サイズデータセット502のうちの1つを受信すると、その現在位置を遠隔航空機120の位置情報に相関させる。遠隔航空機の位置、および縮小サイズデータセット502内に含まれた情報の相対的位置が分かると、遠隔航空機120によって検出された気象の位置が決定される。
【0046】
さらに、または別法として、1つまたは複数の他の処理技術が使用されてよい。たとえば、ランレングス符号化は、縮小サイズデータセット502で通信される情報量をさらに縮小するために使用されてもよい。たとえば、気象レーダ表示202、204上に黒い領域として示された、遠隔航空機の気象レーダシステム310によってスキャンされた大きい空間領域が気象を含まない場合、気象が検出されない空間領域を識別するためにランレングス符号化が使用され得る。同様に、遠隔航空機の気象レーダシステム310によってスキャンされた空間領域は、特に厳しい気象の存在を示すことができ、それは、気象レーダ表示202、204上に赤またはマゼンタの領域として示され得る。ランレングス符号化は、厳しい気象を伴う空間領域を識別するために使用されてよい。
【0047】
さらに、または別法として、空間領域(3D気象)または面積(2D気象)が、体積または面積幾何学を使用して定義され得る。2D気象情報では、(レーダ強度によって定義された)特定のタイプの気象を有する面積は、その面積の角点(corner point)によって境界が定められ得る。別の例として、領域の境界は、ベクトルとして指定されてよい。他の実施形態は、気象を定義するために、ベクトルグラフィックスを使用することができる。たとえば、それだけに限らないが、大きい矩形の面積は、4つの点の位置によって定義されてもよいし、2つの点の位置、および(矩形の2つの境界を定義する)2つのベクトルによって定義され得る。3D気象情報では、特定のタイプの気象を有する体積は、角点の位置および/またはベクトルによって定義され得る。気象の2D面積または3D体積を定義する任意の適切な幾何学が使用されてよい。
【0048】
さらに、または別法として、縮小サイズのデータセット502で通信される情報量をさらに減少させるために、指定された閾値より大きいレーダ値、指定された閾値より小さい値、あるいは1つまたは複数の閾値範囲内にある値を有する気象情報を選択することが使用され得る。遠隔航空機の気象レーダシステム310によってスキャンされた大きい空間領域が気象を含まない場合、この情報は、通信される縮小サイズデータセット502内に含まれない。たとえば、それに限らないが、大きい関心の対象である可能性が低い、非常に軽い降水が検出される場合、(閾値より小さいレーダ反射強度を有する)この情報は、通信される縮小サイズデータセット502内に含まれない。
【0049】
さらに、気象レーダシステムは一般に、レーダ反射強度に基づいてレーダ反射情報を分類する。たとえば、中程度に厳しい気象は、第1の色(黄色など)で表示されてよく、厳しい気象は、第2の色(赤など)で表示されてよい。気象レーダ情報通信システム100の一部の実施形態は、縮小サイズのデータセット502を構築するとき、それぞれ異なるカテゴリのレーダ反射強度を使用する。たとえば、中程度に厳しい気象、および厳しい気象は、縮小サイズデータセット502内で、単一のタイプの気候と分類され得る。
【0050】
さらに、または別法として、JPEG(Joint Photographic Experts Group:ジョイントフォトグラフィックエキスパートグループ)、GIF(Graphics Interchange Format:グラフィックスインターチェンジフォーマット)および/またはMPEG(Moving Picture Experts Group:ムービングピクチャエキスパートグループ)データ圧縮技法が、縮小サイズデータセット502を圧縮するために使用されてよい。実施形態は、現在知られている、または後に開発される任意の適切な画像圧縮技法を使用することができる。
【0051】
さらに、または別法として、気象データの変化が通信されてよい。たとえば、縮小サイズデータセット502aは最初、遠隔航空機120によって検出されたすべての気象の画像を構築するのに十分な詳細な縮小サイズデータセット502を含むことができる。装備航空機104および遠隔航空機120は、連続的または周期的に互いに通信していると仮定すると、後に通信される第2の縮小サイズデータセット502bは、検出された気象の変化を含むことができる。したがって、縮小サイズデータセット502b内の情報量は、縮小サイズデータセット502a内の情報量に比べてかなり縮小され得る。例示的な一実施形態では、JPEG(ジョイントフォトグラフィックエキスパートグループ)、GIF(グラフィックスインターチェンジフォーマット)、および/またはMPEG(ムービングピクチャエキスパートグループ)データ圧縮技法が、時間に関連した連続的な縮小サイズデータセット502を圧縮するために使用される。したがって、元の縮小サイズデータセット502aは、連続的に受信される縮小サイズデータセット502b、502cによって「リフレッシュ」される。
【0052】
さらに、通信される縮小サイズデータセット502b、502cの「リフレッシュ率」は、変化することがある。たとえば、気象が変化しておらず、または緩やかに変化している場合は、縮小サイズデータセット502b、502cの通信間の時間は、増加することがある。気象が急速に変化している場合は、縮小サイズデータセット502b、502cの通信間の時間は、減少することがある。
【0053】
さらに、または別法として、縮小サイズのデータセット502内の情報量をさらに減少させるために、フラクタル圧縮技法が使用され得る。したがって、レーダ画像データは、フラクタルに変換され、より厳密には幾何学的図形へと、「フラクタル符号」と呼ばれる数学的データへと変換され、このフラクタル符号は、符号化された画像を再作成するために使用される。
【0054】
さらに、または別法として、縮小サイズのデータセット502内の情報は、特定のタイプの気象に関係し得る。気象レーダシステム310は、対流気象、乱気流、雹、雷および/または氷結条件を識別するように動作可能であってよい。たとえば、縮小サイズデータセット502aは、対流気象情報を含み得る。第2の縮小サイズデータセット502bは、乱気流情報を含み得るなどである。特定のどんな縮小サイズデータセット502もが単一のタイプの気象についての情報を含むので、縮小サイズデータセット502内で通信される情報量は減少する。さらに、関心のある情報だけが通信され得る。たとえば、装備航空機104は、遠隔航空機120からの乱気流情報の受信には関心があるが、他のタイプの気象状況の受信には関心がないことがある。したがって、縮小サイズデータセット502内で通信される情報量は、関心のない情報を取り除くことによって減少する。
【0055】
さらに、または別法として、縮小サイズのデータセット502内の情報は、特定の気象高度に関係し得る。気象レーダシステム310は、気象高度を識別するように動作可能であってよい。したがって、選択された高度の、あるいは選択された高度範囲内の気象が、縮小サイズのデータセット502内に含まれ得る。選択された高度または高度範囲より上および/または下の検出された気象は、縮小サイズデータセット502から除外されてよい。
【0056】
一部の実施形態では、装備航空機104は、遠隔航空機120に問合せ信号を送る。問合せ信号の受信に応答して、遠隔航空機120は、1つまたは複数の縮小サイズデータセット502を送信する。他の実施形態では、遠隔航空機120は、1つまたは複数の縮小サイズデータセット502を連続的または周期的に自動送信する。
【0057】
一部の実施形態では、遠隔航空機の乗組員は、通信される関心のある情報を選択する。たとえば、遠隔航空機の乗組員は、選択された気象に基づいて縮小サイズのデータセット502が生成されるように、厳しい気象を選択し、厳しくない気象を省いてよい。縮小サイズデータセット502内に含まれる気象を選択するために、任意の適切な選択手段が使用されてよい。
【0058】
さらに、補足的な情報が、縮小サイズのデータセット502内に含まれてよい。補足的な情報の例には、それだけに限らないが、風、気温、湿度、気圧、氷結条件、および/または遠隔航空機120によって検出された可視性が含まれる。
【0059】
独占的な財産または特権が請求されている本発明の諸実施形態は、下記のように定義される。
【符号の説明】
【0060】
100 気象レーダ情報通信システム
102 計画飛行経路
104 装備航空機
106 空間領域
106b 空間領域
108 ストームセル
110 ストームセル
112 ストームセル
114 範囲
116 山脈
118 範囲
120 遠隔航空機
202 気象レーダ表示
204 気象レーダ表示
206 低帯域幅通信チャネル信号/低帯域幅通信信号
402 気象レーダ表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約1メガビット/秒以下の容量で定義された低帯域幅通信チャネルを使用して航空機間で気象情報を通信するための方法であって、
遠隔航空機(120)搭載の気象レーダシステム(310)から気象情報を受信するステップと、
前記受信された気象情報を、少なくとも1つの表示装置(322)上に表示可能な気象レーダ画像情報へと処理するステップと、
前記気象レーダ画像情報を縮小サイズのデータセットへと処理するステップと、
前記低帯域幅通信チャネルを介して装備航空機(104)に前記縮小サイズデータセットを通信するステップとを備え、
前記低帯域幅通信チャネルは、前記遠隔航空機(120)搭載の低帯域幅通信トランシーバ(306)によって生成され、
前記低帯域幅通信チャネルは、前記装備航空機(104)の乗組員と前記遠隔航空機(120)の乗組員との間の音声通信用に構成される、
方法。
【請求項2】
前記受信ステップ、前記処理ステップおよび前記通信ステップは、
前記遠隔航空機(120)搭載の前記気象レーダシステム(310)から第1の気象情報を最初に受信するステップと、
前記受信された第1の気象情報を前記表示装置(322)上に表示可能な第1の気象レーダ画像情報へと処理するステップと、
前記第1の気象レーダ画像情報を第1の縮小サイズデータセットへと処理するステップと、
前記第1の縮小サイズデータセットを前記装備航空機(104)に通信するステップと、
前記遠隔航空機(120)搭載の前記気象レーダシステム(310)から第2の気象情報を後に受信するステップと、
前記受信された第2の気象情報を、前記表示装置(322)上に表示可能な第2の気象レーダ画像情報へと処理するステップと、
JPEG(ジョイントフォトグラフィックエキスパートグループ)、GIF(グラフィックスインターチェンジフォーマット)、およびMPEG(ムービングピクチャエキスパートグループ)データ圧縮のうちの少なくとも1つを使用して前記第1気象レーダ画像情報を第2の縮小サイズデータセットへと処理するステップと、前記第2の縮小サイズデータセットは、前記第1の気象情報と前記第2の気象情報の間の変化に対応し、
前記第2の縮小サイズデータセットを前記装備航空機(104)に通信するステップと、
を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記気象レーダ画像情報を前記縮小サイズデータセットへと処理するステップは、
関心のある第1のタイプの気象を選択するステップと、
前記選択された第1のタイプの気象に対応する第1の気象情報を選択するステップと、
前記選択された第1の気象情報を第1の縮小サイズデータセットへと処理するステップと、
関心のある第2のタイプの気象を選択するステップと、
前記選択された第2のタイプの気象に対応する第2の気象情報を選択するステップと、
前記選択された第2の気象情報を第2の縮小サイズデータセットへと処理するステップと、
前記第1の縮小サイズデータセットを前記装備航空機(104)に通信するステップと、
後に前記第2の縮小サイズデータセットを前記装備航空機(104)に通信するステップと、
を備える、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−279034(P2010−279034A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−118355(P2010−118355)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】