説明

低比重ドアウエザーストリップ

【課題】 低比重で、かつ遮音性およびドア閉じ性に優れるドアウエザーストリップを提供する。
【解決手段】 比重0.2〜0.5(低比重)の自動車用のドアウエザーストリップを、ドアのリテーナー3に取付けられる取付基部20と、取付基部20に一体成形され、ボディパネル4に弾接する中空シール部30と、取付基部20の中空シール部30より車外側Eに一体成形され、略中間高さ部分に形成された屈曲部11を挟んで上位部12と下位部13を備えた断面略くの字状で、ボディパネル4に弾接するアウターリップ部10とで構成する。また、アウターリップ部10の屈曲部11の車外側Eに溝部14を形成して、下位部13の車外側上端部に凸部15を形成し、ドア閉時において、凸部15に、車外側Eに屈曲した上位部12の車外側面を弾接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低比重(軽量)で、かつ遮音性およびドア閉じ性に優れる自動車用ウエザーストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1および図2を参照して説明する。自動車のドアには、その外周端部に沿ってドアウエザーストリップ50が取付けられ、ボディとの間のシール性を確保している。こうしたドアウエザーストリップ50は、ドアパネル2の外周端部に沿って形成されたリテーナー3に取付けられる取付基部51と、その取付基部51に一体成形されボディパネル4に弾接する中空シール部52と、同様に取付基部51に一体形成され、中空シール部52より車外側Eでボディパネル4に弾接するアウターリップ部53を備える。
【0003】
そして、ボディパネル4に弾接する中空シール部52とアウターリップ部53とによって水の室内への侵入を防止すると共に、遮音性を確保し、音の侵入および漏出を防止している。
【0004】
こうした機能を備えたドアウエザーストリップにおいて、従来のものは、その比重が、一般に0.5〜0.7に設定されているが、近年では、自動車の軽量化傾向に従い、0.2〜0.5に設定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−270332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、こうした近年における低比重のドアウエザーストリップは、その面密度が低いことから、通常比重のドアウエザーストリップと比較して、遮音性が十分ではないといった問題が発生している。
【0007】
こうした遮音性の問題を解決するには、図3に示すように、ドアウエザーストリップ50のアウターリップ部53や中空シール部52の肉厚を大きく設定する必要がある。しかし、例えば、アウターリップ部53は、単にその肉厚を大きく設定してしまうとドア閉時における反力が大きくなり、ドア閉じ性が悪くなるといった問題がある。従って、何らかの構造的な工夫が必要となる。
【0008】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、低比重(軽量)で、かつ遮音性およびドア閉じ性に優れるドアウエザーストリップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
図1および図4乃至図6を参照して説明する。請求項1に記載の低比重ドアウエザーストリップ1は、比重0.2〜0.5(低比重)の自動車用のドアウエザーストリップである。この低比重ドアウエザーストリップ1は、ドアのリテーナー3に取付けられる取付基部20と、前記取付基部20に一体成形され、ボディパネル4に弾接する中空シール部30と、前記取付基部20の前記中空シール部30より車外側Eに一体成形され、略中間高さ部分に形成された屈曲部11を挟んで上位部12と下位部13を備えた断面略くの字状で、前記ボディパネル4に弾接するアウターリップ部10とを備える。
【0010】
また、前記アウターリップ部10の屈曲部11の車外側Eに溝部14を形成して、前記下位部13の車外側上端部に凸部15を形成し、ドア閉時において、前記凸部15に、車外側Eに屈曲した前記上位部12の車外側面を弾接させるものである。
【0011】
図1および図7乃至図9を参照して説明する。請求項2に記載の低比重ドアウエザーストリップ1は、比重0.2〜0.5(低比重)の自動車用のドアウエザーストリップである。この低比重ドアウエザーストリップ1は、ドアのリテーナー3に取付けられる取付基部20と、前記取付基部20に一体成形され、ボディパネル4に弾接する中空シール部30と、前記取付基部20の前記中空シール部30より車外側Eに一体成形され、略中間高さ部分に形成された屈曲部11を挟んで上位部12と下位部13を備えた断面略くの字状で、前記ボディパネル4に弾接するアウターリップ部10とを備える。
【0012】
また、前記アウターリップ部10の屈曲部11の車外側Eに溝部14および該溝部14に連続して前記下位部13に食い込む凹部16を形成することによって、前記下位部13の車外側上端部にリップ状であるリップ状凸部15aを設けている。そして、ドア閉時において、前記リップ状凸部15aに、車外側Eに屈曲した前記上位部12の車外側面を弾接させるものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の低比重ドアウエザーストリップ1は、その比重が0.2〜0.5であり、それまでのドアウエザーストリップの比重(0.5〜0.7)と比較して小さいので、当該ドアウエザーストリップ1およびそれが取付けられる自動車の軽量化を図ることができる。
【0014】
また、アウターリップ部10の屈曲部11の車外側Eに溝部14を形成することによって下位部13の車外側上端部に凸部15を形成し、ドア閉時に、その凸部15に、車外側Eに屈曲した上位部12の車外側面を弾接させるので、優れた遮音性とドア閉じ性を得ることができる。
【0015】
すなわち、ドア閉時に、凸部15に上位部12の車外側面が弾接するので、溝部14がその弾接によってほぼ潰された状態となり、これにより、溝部14の形成によって肉薄であった屈曲部11が肉厚となる。その結果、屈曲部11を含むアウターリップ部10の全体が、略無垢状で肉厚の壁体構造を形成することになるので、音の侵入および漏出を効果的に防止することができる。
【0016】
また、ドア閉時に、アウターリップ部10は、溝部14の形成によって肉薄とされた屈曲部11を支点として容易に弾性変形することができるので、アウターリップ部10がボディパネル4から受ける反力が小さい。これにより、優れたドア閉じ性を発揮することができる。
【0017】
請求項2に記載の低比重ドアウエザーストリップ1は、請求項1に記載の発明と同様に、その軽量化を図ることができると共に、優れた遮音性とドア閉じ性を発揮することができる。
【0018】
また、アウターリップ部10の屈曲部11の車外側Eに溝部14およびその溝部14に連続して下位部13に食い込む凹部16を形成して、下位部13の車外側上端部にリップ状凸部15aを形成し、ドア閉時に、リップ状凸部15aを、車外側Eに屈曲した上位部12の車外側面に弾接させるので、アウターリップ部10が受ける反力をより小さくすることができる。リップ状凸部15aはリップ状であるため、弾性変形し易いからである。これにより、ドア閉じ性をさらに向上させることができる。
【0019】
また、ボディパネル4とドアパネル2との間に建て付けのバラツキが発生した場合でも、リップ状凸部15aはリップ状であり弾性変形し易いので、建て付けのバラツキに柔軟に対応して、優れた遮音性とドア閉じ性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ドアウエザーストリップを取付けた自動車を示す側面図である。
【図2】従来例に係るドアウエザーストリップを示すもので、図1のX−X線断面図である。
【図3】他の従来例に係るドアウエザーストリップを示すもので、図1のX−X線断面図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係るドアウエザーストリップを示すもので、図1のX−X線断面図である(ドア開時の状態)。
【図5】本発明の第一実施形態に係るドアウエザーストリップを示すもので、図1のX−X線断面図である(ドア閉時の状態)。
【図6】本発明の第一実施形態に係るドアウエザーストリップを示す断面構成図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係るドアウエザーストリップを示すもので、図1のX−X線断面図である(ドア開時の状態)。
【図8】本発明の第二実施形態に係るドアウエザーストリップを示すもので、図1のX−X線断面図である(ドア閉時の状態)。
【図9】本発明の第二実施形態に係るドアウエザーストリップを示す断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の係る低比重ドアウエザーストリップ1の第一実施形態を、図1および図4乃至図6に示す。これは、比重0.2〜0.5の低比重の自動車用ドアウエザーストリップであり、取付基部20、中空シール部30、アウターリップ部10、および背面リップ40を備える。
【0022】
取付基部20は、ドアの外周端部に沿って設けられた断面略U字状のリテーナー3に嵌入状態で取付けられる。中空シール部30は、取付基部20に一体成形された中空形状であり、ドア閉時に、その上端部がボディパネル4に弾接して、その部分をシールする。
【0023】
アウターリップ部10は、取付基部20の中空シール部30より車外側Eに一体成形され、そのほぼ中間高さ部分に形成された屈曲部11を挟んで上位部12と下位部13を備えた断面略くの字状である。このアウターリップ部10の上端部は、ドア閉時に、ボディパネル4に弾接し、その部分をシールする。
【0024】
また、このアウターリップ部10には、その屈曲部11の車外側Eに形成された溝部14により、下位部13の車外側上端部に凸部15が形成されている。そして、ドア閉時、この凸部15に、ドアパネル2に弾接して車外側Eに屈曲した上位部12の車外側面を弾接させている。
【0025】
なお、背面リップ40は、アウターリップ部10の車外側下端部から、車外側斜め上方に突設されており、ドアパネル2の内面に弾接して、その部分のシール性を確保している。
【0026】
こうした構成の本実施形態に係る低比重ドアウエザーストリップ1は、その比重が0.2〜0.5であるので、通常のドアウエザーストリップの比重(0.5〜0.7)と比較して小さい。従って、当該ドアウエザーストリップ1およびそれが取付けられる自動車の軽量化を図ることができる。
【0027】
また、ドア閉時に、凸部15に、上位部12の車外側面を弾接させるので、溝部14がその弾接によってほぼ潰された状態となり、これにより、溝部14の形成によって肉薄であった屈曲部11が肉厚のような状態となる。その結果、屈曲部11を含むアウターリップ部10の全体が略無垢状で肉厚の壁体構造を形成することになるので、音の侵入および漏出を効果的に防止して、遮音性を高めることができる。
【0028】
さらに、ドア閉時において、アウターリップ部10は、溝部14の形成によって肉薄とされた屈曲部11を支点として容易に弾性変形することができる。これにより、ドア閉時においてアウターリップ部10がボディパネル4から受ける反力が小さく、よって、適度な力で容易にドアを閉じることができる。
【0029】
本発明に係る低比重ドアウエザーストリップ1の第二実施形態を、図1および図7乃至図9に示す。このドアウエザーストリップ1の特徴は、アウターリップ部10の屈曲部11の車外側Eに溝部14と、その溝部14に連続して下位部13に、その車外側面と略平行に、かつその基端側(取付基部20の側)に向かって食い込む凹部16を形成して、下位部13の車外側上端部に、リップ状であるリップ状凸部15aを形成し、ドア閉時に、このリップ状凸部15aに、ボディパネル4に弾接して車外側Eに屈曲した上位部12の車外側面を弾接させたことである。
【0030】
このリップ状凸部15aは、第一実施形態における凸部15より長尺状であるため、ドア閉時に、アウターリップが受ける反力をより小さくすることができる。従って、ドア閉じ性をさらに高めることができる。
【0031】
また、ボディパネル4とドアパネル2との間に建て付けのバラツキが発生した場合でも、リップ状凸部15aにボディパネル4が確実に弾接することができる。すなわち、バラツキの発生により、例えば、ドアパネル2とボディパネル4との間隔Dが所定寸法より小さい場合、リップ状凸部15aは長尺状であるため大きく弾性変形することができる。これにより、建て付けのバラツキに効果的に対応して、優れた遮音性とドア閉じ性を発揮することができる。
【0032】
なお、上記第一実施形態および第二実施形態においては、中空シール部30を、室内側Gに位置するインナー壁部31、それより車外側Eに位置するアウター壁32、および両者の先端部同士を連結する連結壁部33で構成し、インナー壁部31とアウター壁部32を、連結壁部33より肉厚の厚肉部Fに設定している(図6および図9の斜線部分参照)。これにより、遮音性をさらに高めている。また、インナーへ基部31とアウター壁部32の根元部分に、それぞれくびれ部Wを形成している。厚肉部Fを取付基部20側に形成し、くびれ部Wを形成することによって、中空シール部30を容易に弾性変形させることができるので、ドア閉じ性を向上させることができる。
【0033】
また、上記二つの実施形態においては、アウターリップ部10の下位部13の肉厚T2を上位部12の肉厚T1より大きく設定している(図6、図9参照)。これにより、ドア閉時に、ボディパネル4に弾接した上位部12を、より容易に弾性変形し易くすると共に、その上位部12を、それより肉厚であり剛性に優れる下位部13によって安定姿勢で支持することができる。その結果、ドア閉時におけるアウターリップ部10の全体を、一つの塊状(無垢状)の壁体構造とすることができ、これにより、極めて優れた遮音性を発揮することができる。
【0034】
さらに、このドア閉時に、アウターリップ部10の下位部13が、上位部12に押圧されて車外側Eへ移動して背面リップ40に弾接し、これにより、アウターリップ部10と背面リップ40とで一つの大きな塊状(無垢状)の壁体構造を構成する。その結果、遮音性をさらに高めることができる。
【0035】
また、上記二つの実施形態においては、アウターリップ部10を断面略くの字状に設定し(図4、図7参照)、ドア閉時において、その上位部12がボディパネル4に弾接することによって、下位部13に対してほぼ直角に折り曲がるように設定し、十分な弾性変形量を確保している(図5、図8参照)。従って、建て付けのバラツキにより、ドアパネル2とボディパネル4との間隔Dが設定寸法より大きくなった場合でも、上位部12をボディパネル4に確実に弾接させることができる。これにより、建て付けのバラツキに左右されない遮音性を得ることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 ドアウエザーストリップ
2 ドアパネル
3 リテーナー
4 ボディパネル
10 アウターリップ部
11 屈曲部
12 上位部
13 下位部
14 溝部
15 凸部
15a リップ状凸部
16 凹部
20 取付基部
30 中空シール部
31 インナー壁部
32 アウター壁部
33 連結壁部
40 背面リップ
50 ドアウエザーストリップ
51 取付基部
52 中空シール部
53 アウターリップ部
D ボディパネルとドアパネルとの間隔
E 車外側
F 厚肉部
G 室内側
T1 上位部の肉厚
T2 下位部の肉厚
W くびれ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重0.2〜0.5の低比重の自動車用ドアウエザーストリップであって、ドアのリテーナー(3)に取付けられる取付基部(20)と、前記取付基部に一体成形され、ボディパネル(4)に弾接する中空シール部(30)と、前記取付基部の前記中空シール部より車外側(E)に一体成形され、略中間高さ部分に形成された屈曲部(11)を挟んで上位部(12)と下位部(13)を備えた断面略くの字状で、前記ボディパネルに弾接するアウターリップ部(10)とを備え、 前記アウターリップ部の屈曲部の車外側に溝部(14)を形成して、前記下位部の車外側上端部に凸部(15)を形成し、ドア閉時において、前記凸部に、車外側に屈曲した前記上位部の車外側面を弾接させることを特徴とする低比重ドアウエザーストリップ。
【請求項2】
比重0.2〜0.5の低比重の自動車用ドアウエザーストリップであって、ドアのリテーナー(3)に取付けられる取付基部(20)と、前記取付基部に一体成形され、ボディパネル(4)に弾接する中空シール部(30)と、前記取付基部の前記中空シール部より車外側(E)に一体成形され、略中間高さ部分に形成された屈曲部(11)を挟んで上位部(12)と下位部(13)を備えた断面略くの字状で、前記ボディパネルに弾接するアウターリップ部(10)とを備え、 前記アウターリップ部の屈曲部の車外側に溝部(14)および該溝部に連続して前記下位部に食い込む凹部(16)を形成して、前記下位部の車外側上端部にリップ状凸部を設け、ドア閉時において、前記リップ状凸部に、車外側に屈曲した前記上位部の車外側面を弾接させることを特徴とする低比重ドアウエザーストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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