説明

低減されたレーダーシグネチャを備える風力タービン

シュラウド付き風力タービンの様々な構成要素が、レーダー吸収材で被覆される。その結果得られる風力タービンは、従来の風力タービンと比較して、より低減されたレーダーシグネチャを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年10月6日出願の米国特許仮出願番号第61/195,307号明細書の優先権を主張する。この仮出願は、参照によって全体が本願に組み込まれる。
【0002】
本開示は風力タービンに関する。具体的には、風力タービンは、従来の風力タービンと比較して、より低減されたレーダーシグネチャを有する。
【背景技術】
【0003】
従来の開放プロペラ羽根型風力タービンは一般的に、軸の周りを回転する最大150フィート以上の長さの羽根を含み、300フィートの直径を有する掃引領域を生じ、結果的に非常に大きなレーダー断面積を生じる。既存の開放羽根型の風力タービンは、風を発生させるタービンの羽根の運動または回転により、風力タービンの位置で急なまたは断続的なレーダー捕捉を引き起こすことによって、航空管制および防空の機能を低下させることがわかっている。この機能の低下は、風力タービンがレーダーアンテナのレーダー見通し線の内側、特にレーダーアンテナから5マイル以内の範囲に位置している場合に、特に強力である。整風のための風力タービン羽根の運動またはタービンアセンブリの回転は、ドップラー・レーダー・システムにとって特にやっかいな存在になり得る。
【0004】
さらに、風力タービンは、レーダー感度を低下させる高反射率によって直接的な干渉を引き起こす可能性があり、偽像(ゴースト)または陰領域(不感帯)を生じる可能性がある。整風のための大型回転羽根の運動またはタービンアセンブリの回転はまた、ドップラー・レーダー・システムにおいて誤った標的を作り出す可能性がある。
【0005】
反射レーダー信号の強度は、レーダーシステムの出力レベルのみならず、反射物がどれほど大きいか、または有効なレーダーエネルギーの反射体であるかにも依存する。この大きさまたはサイズ要因は、一般的にレーダー断面積(RCS)と称される。同じ量のレーダーエネルギーで、大きいRCSを有する物体は、比例してより低いRCSを有する物体よりもより大量のレーダーエネルギーを反射し、したがってより検出しやすい。RCSは通常、物体のレーダー反射面の面積の対数表示である、デシベル・スクエア・メーター(dBsm)の単位で表される。
【0006】
既存の開放羽根風力タービンよりも低いレーダーシグネチャを有する風力タービンを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、減少されたレーダー断面積を有する風力タービンを記載する。本開示はまた、送信されたレーダー信号の反射率を最小化するために、風力タービンにレーダー吸収材の表面被覆を塗布することによって、風力タービンのレーダーシグネチャを低減する方法も記載している。具体的には、レーダー吸収被覆は、カルボニル鉄フェライトを含有する被覆を含んでもよい。別のバージョンでは、レーダー吸収被覆は、その中に第二鉄化合物の粒子が散在している合成ポリマーマトリクスからなる、比較的薄いタイルの形状であってもよい。合成ポリマー材は、ネオプレン材料であってもよい。レーダー吸収被覆はまた、噴霧によって塗布されてもよい。
【0008】
実施形態において開示されるのは、ファン、ファンの周囲に設けられたシュラウド、およびレーダー吸収材の被覆を含む、風力タービンである。風力タービンはまた、タービン全体、タービン羽根、または羽根の一部に被覆が塗布された、三枚羽根水平軸風力タービン(HAWT)であってもよい。
【0009】
レーダー吸収被覆は、カルボニル鉄フェライト材料を含んでもよい。レーダー吸収被覆は噴霧によって塗布されてもよい。被覆はまた、少なくとも1つのタイルから形成されてもよく、タイルはその中に第二鉄化合物粒子が散在している合成ポリマーマトリクスを含む。合成ポリマーマトリクスは、ネオプレンを含んでもよい。
【0010】
レーダー吸収被覆は、シュラウドの前縁、シュラウドの外面、回転子または固定子のいずれかの少なくとも1つの羽根、エゼクタの前縁、および/またはエゼクタの外面に位置してもよい。いくつかの実施形態において、レーダー吸収被覆は、シュラウドの前縁、シュラウドの外面、エゼクタの前縁、およびエゼクタの外面に位置している。
【0011】
別の実施形態に開示されているのは、その後縁に複数のローブを有するシュラウド、シュラウド内に位置するファン、その後縁に複数のローブを有するエゼクタシュラウドであって、シュラウドの下流に位置しているエゼクタシュラウド、およびタービン上に位置しているレーダー吸収材の被覆を含む、エゼクタシュラウド風力タービンである。
【0012】
レーダー吸収被覆は、シュラウドおよび/またはエゼクタシュラウド上に位置することができる。
【0013】
同様に開示されているのは、ファンアセンブリを包囲するシュラウドを有する風力タービンを提供するステップ、およびレーダー吸収材の被覆を風力タービンに塗布するステップを含む、風力タービンのレーダーシグネチャを低減する方法である。
【0014】
被覆は、その中に第二鉄化合物の粒子が散在している合成ポリマーマトリクスからなるタイルを風力タービンの表面に積層することによって、または風力タービンの表面上に被覆を噴霧することによって、塗布されることが可能である。
【0015】
実施形態において同様に開示されているのは、ナセルおよび羽根、ならびにタービン上に位置するレーダー吸収材の被覆を含む、水平軸風力タービンである。レーダー吸収材の被覆は、タービンの羽根上、またはナセル上に位置してもよい。
【0016】
本開示のこれらおよびその他の非限定的な特徴および特性は、以下においてさらに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
下記は図面の簡単な説明であり、これらは本明細書の開示を説明する目的のために示されるのであって、本開示を限定する目的ではない。
【0018】
【図1】マスト上に実装された風力タービンの一実施形態の側面図および斜視図である。
【0019】
【図2】ミキサーローブを採用する風力タービンの別の実施形態の側面図および斜視である。
【0020】
【図3】ミキサーローブおよびエゼクタを最小する風力タービンの別の実施形態の側面図および斜視図である。
【0021】
【図4A】その下流縁上にミキサーローブを有するエゼクタを備える風力タービンの斜視図である。
【0022】
【図4B】図4Aの風力タービンの分解図である。
【0023】
【図5】三枚羽根車を採用する風力タービンの別の実施形態の前面図および斜視図である。
【0024】
【図6A】いずれのタービンも同じ発電能力を有する、開放羽根を有する従来の風力タービンと本開示のシュラウド付き風力タービンとのレーダー断面積を比較する前面図である。
【0025】
【図6B】図6Aに記載される、従来の風力タービンおよび本開示のシュラウド付き風力タービンの側面図である。
【0026】
【図7】開放羽根風力タービンに当たって反射するレーダー波を示す側面図である。
【0027】
【図8】本開示のシュラウド付き風力タービンに当たって反射するレーダー波を示す側面図である。
【0028】
【図9】その一部が拡大されてレーダー吸収被覆を示している、本開示の風力タービンの一実施形態の断面図である。
【0029】
【図10】従来の1.5MW開放羽根風力タービンを含む、様々な物体のレーダー断面積を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
添付図面を参照することにより、本明細書に開示されているプロセスおよび装置のさらに完全な理解を得ることができる。これらの図面は、既存の技術および/または本開発の実証の利便性および容易性に基づく単なる模式図であり、したがって、そのアセンブリまたは構成要素の相対的なサイズおよび寸法を指示するように意図されるものではない。
【0031】
明確さのため、以下の記述において特定の用語が使用されるが、これらの用語は、図中の説明のために選択された実施形態の特定の構造のみを指すように意図されており、本開示の範囲を定義または限定するように意図されるものではない。図面および以下の記述において、類似の数字記号が類似の機能の構成要素を指すことを、理解されたい。
【0032】
概して、本開示は、低減されたレーダーシグネチャを有する風力タービンを含む。低減されたレーダーシグネチャは、減少した羽根径、外部稼働部品の欠如、および風力タービン上のレーダーエネルギー吸収面の使用を含む、いくつかの要因による。
【0033】
図1を参照すると、風力タービン100の第一の実施形態が、側面図および斜視図において示されている。
【0034】
タービン100は、シュラウド102によって包囲されたファンを含む。ファンは通常、羽根が軸に取り付けられて回転することが可能ないずれのアセンブリでもよく、羽根を回転させる風からの電力またはエネルギーの発生を可能にする。ここで図解されるように、ファンは回転子−固定子アセンブリである。固定子106は複数の羽根または翼107を有しており、固定子106の下流側すぐ隣に位置する多翼型回転子(図示せず)を超えて下流方向に延在するシュラウドによって包囲されている。タービン100は、支持基盤の上方に所望の距離でマスト101上に支持されており、支持基盤は、船舶などの大型船上の建造物または構造体の表面、または地表面であってもよい。所望により、マスト101は、マストの軸の周りでタービン100を自由に回転させることができるように構成されることが可能である。
【0035】
図2を参照すると、風力タービン200の別の実施形態が、側面図および斜視図において示されている。タービン200は、その後または下流縁が、タービンから排出される空気とシュラウド202の外面上を流れる空気との混合をもたらすためのローブ208を備えて構成される、シュラウド202によって包囲された多翼固定子204を有する。回転子(図示せず)は、固定子204の下流側すぐ隣に設けられている。タービンアセンブリ200は、同様にマスト201上に支持されている。
【0036】
図3を参照すると、風力タービン300の別の実施形態が、側面図および斜視図において示されている。タービン300は、その下流縁に形成されたミキサーローブ308を有するシュラウド302によって包囲された固定子306を有する。タービン300は、固定子翼306および回転子を通るさらなる自由流空気の更なる混合をもたらすためのローブ308を備えるシュラウドを包囲する、エゼクタ304をさらに含む。図3のタービン300は同様に、シュラウド302に接続されたマスト301上に支持されている。
【0037】
図4Aは、エゼクタシュラウド風力タービン(MEWT)としても知られている形状の、本開示の風力タービンの別の実施形態である。MEWTは、同じ面積を有するタービンでその他の現在のタイプの風力タービンよりも多くの電力が抽出されるように風力タービンの効率を改善するために、シュラウド付き羽根車、プロペラ、または回転子/固定子を使用する、新しいタイプの風力タービンである。MEWTは、最も一般的なタイプの風力タービンである水平軸風力タービン(HAWT)よりも大きい面積から空気を引き込むことによって、これを達成する。
【0038】
風力タービンは論理的には、最大値がベッツ限界として知られる、内部を通る風のポテンシャルエネルギーの最大59.3%を捉えることが可能である。風力タービンによって捉えられるエネルギーの量は、タービンの効率と称されることもできる。MEWTはベッツ限界を超える可能性がある。
【0039】
図4Aを参照すると、タービン400は、ミキサーシュラウド402の吸気末端に位置するファンを含む。ファンは通常、羽根が軸に取り付けられて回転することが可能ないずれのアセンブリでも翼、羽根を回転させる風からの電力またはエネルギーの発生を可能にする。ここで図解されるように、ファンは回転子−固定子アセンブリである。固定子406はシュラウド402と係合し、回転子(図示せず)は回転子/発電機(図示せず)と係合する。固定子406は、回転子に到達する前に空気を回転させる、固定羽根407を有する。回転子の羽根がその後回転して、発電機内で電力を発生させる。シュラウド402は、輪状翼を含み、または言い換えるとほぼ円筒形であって翼状の形状を有しており、翼はシュラウド内(すなわちシュラウドの内側)で比較的低圧を、シュラウドの外側(すなわちシュラウドの外面)では比較的高圧を、発生させるように構成されている。ファンおよび回転子/発電機は、シュラウド内に収容されている。シュラウド402は、ミキサーローブ408も有してもよい。ミキサーローブは通常、空気が排出されるシュラウドの排出末端を、その外周の周りでおおむねギザギザの形状にする。言い換えると、ローブ408は、シュラウドの後縁に沿って位置する。
【0040】
タービン400は、シュラウドと係合するエゼクタシュラウド404も含んでもよい。エゼクタシュラウドは、輪状翼を有し、または言い換えるとほぼ円筒形であって翼状の形状を有しており、翼はエゼクタシュラウド内(すなわちミキサーシュラウド402とエゼクタシュラウド404の間の環状領域)において比較的高圧を、エゼクタ404の外側では比較的低圧を、発生させるように構成されている。エゼクタはミキサーローブ410も有してもよく、その場合にはエゼクタはミキサー・エゼクタ・シュラウドと称される。ミキサーローブは通常、空気が排出されるエゼクタの排気末端を、その外周の周りでおおむねギザギザの形状にする。言い換えると、ミキサーローブは、エゼクタ404の後縁に沿って位置する。
【0041】
エゼクタシュラウド404は、ミキサーシュラウド402よりも大きい直径を有している。シュラウド402はエゼクタシュラウド404と係合する、言い換えると、ミキサーシュラウドの排気末端はエゼクタシュラウドの吸気末端内に適合し、またはエゼクタシュラウドの吸気末端はミキサーシュラウドの排気末端を包囲する。ミキサーシュラウド402およびエゼクタシュラウド404は、両者の間を空気が流れることができるようなサイズになっている。別の言い方をすると、エゼクタシュラウド404は、シュラウド402の周りに同心円状に設けられ、シュラウド402の下流にある。ファン、ミキサーシュラウド402、およびエゼクタシュラウド404は全て、共通の軸を共有する。
【0042】
ミキサーローブ408、410は、高度な流れの混合および制御を可能にする。MEWTでは、空気流路がエゼクタシュラウド内への高エネルギー空気を提供するので、ミキサーシュラウドおよびエゼクタシュラウド404は、航空機産業で使用される類似の形状とは異なる。ミキサーシュラウドはエゼクタシュラウド内に(回転子によってエネルギーが抽出された後の)低エネルギー空気を提供し、高エネルギー空気は外向きに低エネルギー空気を包囲し、送気し、これと混合する。
【0043】
回転子/発電機は、風が回転子を駆動するときに電気を発生させるために採用されてもよい。タービン上の発電機はまた、風が回転子を駆動するのに不十分なときに、ファンを駆動してタービン400の内部に空気を取り込んで通すためのモータとして使用されてもよい。
【0044】
図4Bを参照すると、風力タービン400が分解図で示されている。回転子411は、羽根413の外側末端に接続されたリング412によって包囲された複数の放射状羽根413を有する。ミキサーシュラウド402の混合ローブ408は通常、気流がミキサーシュラウド402とエゼクタシュラウド404との間の空間を流れることができるように、エゼクタシュラウド404の前方末端内に適合する。
【0045】
図5を参照すると、風力タービン500の別の実施形態が、前面図および斜視図において示されている。タービン500は、自由流からのエネルギーの効率良い抽出のための、空気力学的に構成された羽根を有する羽根車518を含む。羽根車518は、その後縁に設けられた下流混合ローブ508を有するミキサーシュラウド502によって包囲されている。ローブ508は、その下流または後部外周の周りに設けられた混合ローブ510を有するエゼクタシュラウド504によって包囲されている。図5の風力タービン500は、回転子/発電機520および羽根車518を支持するために、シュラウド502を通じて延在してもよい、適切なマスト501上に支持される。
【0046】
図6Aは、いずれのタービンも同じ発電能力を有する、開放羽根を有する従来の風力タービン(左側)と本開示のシュラウド付き風力タービン(右側)とのレーダー断面積を比較する前面図である。従来技術による開放羽根風力タービン650は、マスト601上に実装され、羽根620が回転する際に直径605の掃引領域を有して、結果的には破線の輪郭で示されるレーダー断面積となる。対照的に、本開示の風力タービン600は、はるかに小さい直径603の掃引領域を有し、その結果、より小さいレーダー断面積となる。
【0047】
図6Bは、いずれのタービンも同じ発電能力を有する、開放羽根を有する従来のタービン(左側)と本開示のシュラウド付き風力タービン(右側)とのレーダー断面積を比較する側面図である。ここでも、開放羽根620を備える従来の風力タービン650は、直径605の掃引領域に基づくレーダー断面積を有し、マスト601上に実装されてナセル612内に位置する発電機を駆動する。シュラウド付き風力タービン600は、より小さい直径603の掃引領域を有する。固定子、ミキサーシュラウド602、およびエゼクタシュラウド604は、シュラウド付き風力タービンの羽根がレーダーによって「見られる」のを防止する。
【0048】
図7は、マスト713上に実装されて開放羽根736を有する、従来の風力タービン700の側面図である。入射レーダー波734は実践で示され、羽根736に当たる。反射波732は破線で示されている。反射エネルギーまたは波732はまた、レーダー源に戻ってくる前に、入射波734がタービン羽根736によって、次にタービン塔713、そして再び羽根736によって反射されるときに生じる、「マルチバウンス」として知られる第二のより弱い戻りを引き起こしてもよい。
【0049】
図8は、本開示のシュラウド付き風力タービン800の側面図である。タービン800も、マスト802上に実装されている。入射レーダー波810は実践で示されており、タービン800に接触すると、破線で示される反射波812を生じる。風力タービンのシュラウドおよびエゼクタは、図7の従来型タービンのマルチバウンスを解消する。さらに、シュラウド付き風力タービン800の羽根(図示せず)はより小さいので、反射波812ははるかに小さく、その結果、低減されたレーダーシグネチャとなる。
【0050】
シュラウド付き風力タービンの利点の1つは、従来の開放羽根付き風力タービンよりも効率がよいことである。具体的には、ミキサーエゼクタを備えるシュラウド付きタービン(MEWT)は、59.3%のベッツ限界を超える効率を提供することができる。このため、シュラウド付き風力タービンは開放羽根風力タービンよりもはるかに小さい回転子径を有することができるが、それでもなお同じ量の風力エネルギーを抽出することができる。このため、長尺の回転子羽根が取り除かれるので、エゼクタシュラウド風力タービン(MEWT)は、建造物の上部に、または地面により近く、実装されることが可能である。
【0051】
図9は、シュラウド付き風力タービン1000の断面図である。タービン1000は、固定子1006に設けられた羽根1008および多翼型回転子1012を有している。ミキサーシュラウド1002は、固定子1006および回転子1012を包囲し、その下流側外周の周りに設けられたミキサーローブ1016の輪を有している。ミキサーシュラウド1002は、やはりその下流側外周の周りに設けられた複数のミキサーローブ1018を有する環状流線型エゼクタシュラウド1004が、その下流側周辺および付近に設けられている。
【0052】
拡大された図9の囲み部分を参照すると、エゼクタシュラウド1004の上流または前縁の一部には、レーダー吸収材の被覆1014が設けられている。材料1014は、入射または送信されるレーダー波1010を吸収するようになっており、これはその後、図9のらせん形矢印として図示される、材料中の熱として、放散する。
【0053】
レーダー吸収被覆1014は、カルボニル鉄フェライトなどの、カルボニル鉄化合物を含んでもよい。被覆は、噴霧として塗布されるかまたはポリマーマトリクスに組み込まれ、その後積層タイルとして風力タービン上に塗布されてもよい。いくつかの実施形態において、積層タイルは、その中に第二鉄化合物の粒子が散在している、ネオプレンなどの、合成ポリマーマトリクスで形成されてもよい。レーダー吸収被覆は、たとえばシュラウドの前縁および/または外面、エゼクタの前縁および/または外面、固定子の羽根、回転子の羽根、および/またはマストを含む、風力タービンのいずれかまたは全ての部分に塗布されてもよい。これらの部分のいかなる所望の組合せも、レーダー吸収被覆で覆われることが可能である。
【0054】
動作中、レーダー波が被覆1014に遭遇すると、被覆の金属元素無いに磁界を形成する。この磁界は交番極性を有し、レーダーエネルギーの大部分を熱に変換することによってレーダー信号のエネルギーを放散する。結果的に生じる熱は、タービン自体によって発生する風/気流の冷却効果の観点からは重要であるとは見込まれないものの、冷却機構もまた、本開示の範囲に含まれると考えられる。たとえば、シュラウドおよび/またはエゼクタは、レーダー吸収被覆上に、水などの分注液のための噴霧機構を含んでもよい。
【0055】
従来の風力タービンは、長さ約150フィートなどの、大型はねを使用することが認識されるべきである。このような羽根は、羽根の外側の高速における風荷重および非常に高い遠心力の下で、撓みおよび曲げに曝される。その結果、そのような羽根に対するレーダー吸収被覆の接着を保持することは、難しい。対照的に、シュラウド付き風力タービンのミキサーシュラウドおよびエゼクタシュラウドは、より小さく、実質的に硬質で固定された物質でもあるので、このような被覆の塗布をより容易にする。しかし、レーダー吸収被覆は、適切な表面処理が施されてカルボニル鉄フェライトをHAWTに接着させる適切なポリマーを有する、HAWTに塗布されてもよい。被覆は、タービン全体、タービンのナセルまたは本体、タービン羽根の前面、タービン羽根の前縁、回転子、またはそれらのいずれかの組合せに、塗布されることが可能である。
【0056】
図10は、1.5MW風力タービンを含む、様々な物体のレーダー断面積を示す。
【0057】
本開示のシステムおよび方法は、例示的実施形態を参照して記載されてきた。明らかに、変更および変形が、上記の詳細な説明を読んで理解した者によって想起されるであろう。例示的実施形態は、添付の特許請求の範囲またはその均等物の範囲内にある限りにおいて、そのような変更および変形の全てを含むと解釈されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンと、
ファンの周囲に設けられたシュラウドと、
レーダー吸収材の被覆と、
を含む、風力タービン。
【請求項2】
レーダー吸収被覆がカルボニル鉄フェライト材料を含む、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項3】
レーダー吸収被覆が少なくとも1つのタイルから形成され、タイルはその中に第二鉄化合物粒子が散在している合成ポリマーマトリクスを含む、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項4】
合成ポリマーマトリクスがネオプレンを含む、請求項3に記載の風力タービン。
【請求項5】
レーダー吸収被覆がシュラウドの前縁上に位置する、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項6】
レーダー吸収被覆がシュラウドの外面上に位置する、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項7】
ファンが回転子−固定子アセンブリであって、レーダー吸収被覆が固定子の少なくとも1つの羽根上に位置する、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項8】
ファンが回転子−固定子アセンブリであって、レーダー吸収被覆が回転子の少なくとも1つの羽根上に位置する、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項9】
シュラウドの下流に位置するエゼクタをさらに含み、レーダー吸収被覆がエゼクタの前縁上に位置する、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項10】
シュラウドの下流に位置するエゼクタをさらに含み、レーダー吸収被覆がエゼクタの外面上に位置する、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項11】
シュラウドの下流に位置するエゼクタをさらに含み、レーダー吸収被覆がシュラウドの前縁、シュラウドの外面、エゼクタの前縁、およびエゼクタの外面上に位置する、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項12】
その後縁上に複数のローブを有するシュラウドと、
シュラウド内に位置するファンと、
その後縁上に複数のローブを有するエゼクタシュラウドであって、シュラウドの下流に位置しているエゼクタシュラウドと、
タービン上に位置しているレーダー吸収材の被覆と、
を含む、エゼクタシュラウド風力タービン。
【請求項13】
レーダー吸収被覆がカルボニル鉄フェライト材料を含む、請求項12に記載の風力タービン。
【請求項14】
レーダー吸収被覆が少なくとも1つのタイルから形成され、タイルはその中に第二鉄化合物粒子が散在している合成ポリマーマトリクスを含む、請求項12に記載の風力タービン。
【請求項15】
レーダー吸収被覆がシュラウド上に位置する、請求項12に記載の風力タービン。
【請求項16】
レーダー吸収被覆がエゼクタシュラウド上に位置する、請求項12に記載の風力タービン。
【請求項17】
レーダー吸収被覆がシュラウドおよびエゼクタシュラウド上に位置する、請求項12に記載の風力タービン。
【請求項18】
風力タービンのレーダーシグネチャを低減する方法において、
ファンアセンブリを包囲するシュラウドを有する風力タービンを提供するステップと、
レーダー吸収材の被覆を風力タービンに塗布するステップと、
を含む方法。
【請求項19】
塗布ステップが、その中に第二鉄化合物粒子が散在している合成ポリマーマトリクスからなるタイルを風力タービンの表面に積層するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
塗布ステップが、風力タービンの表面上に被覆を噴霧するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
ナセルおよび羽根、ならびにタービン上に位置するレーダー吸収材の被覆を含む、水平軸風力タービン。
【請求項22】
レーダー吸収材の被覆がタービンの羽根上に位置する、請求項21に記載のタービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−508339(P2012−508339A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530296(P2011−530296)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/059647
【国際公開番号】WO2010/042480
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511061497)フロデザイン ウィンド タービン コーポレーション (3)
【氏名又は名称原語表記】FLODESIGN WIND TURBINE CORPORATION
【Fターム(参考)】