説明

低温タンク

【課題】BOGの発生量を従来よりも低減する。
【解決手段】屋根から底部まで延在し、LNGをLNG船から受け入れるためのボトムフィード管4を備えたLNGタンクAであって、ボトムフィード管4は、屋根から底部まで一体として延在し、かつ、ガス層に相当する部位に自らの内部と外部との圧力差によって自動開閉するガス吸入弁5aを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LNG(Liquefied Natural Gas、液化天然ガス)やLPG(Liquefied petroleum gas、液化石油ガス)等、常温以下の低温液体を貯蔵する低温タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
上記低温タンクには、低温液体を外部から受け入れるための受入リード管が設けられている。下記特許文献1には、この受入リード管の一例として、低温タンク内を屋根から底部まで垂直に延在すると共にガス層で一旦分断された受入リード管が開示されている。上記ガス層は、低温液体が低温タンク内で気化して生成されるBOG(ボイルオフガス)からなるものである。また、上記受入リード管の分断は、低温液体をガス層で一旦圧力開放することにより、低温液体を低温タンク内に受け入れる際に受入リード管の下端が低温液体内に埋没した状態で発生し得るサイホン現象を防止するためのものである。
また、受入リード管を備えた低温タンクについては、特許文献2にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3467953号公報
【特許文献2】特許第3724073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術には、以下のような問題点がある。
(1)受入リード管をガス層で分断して低温液体をガス層で圧力開放するのでBOGの発生量が多くなり、この発生量が多いことによってBOGを処理するための設備コストが嵩む。
(2)受入リード管をガス層で分断されているので、ガス層のBOGを低温液体内にまき込んで低温タンク内の圧力を低下させるので、LNG船等の低温液体の供給元への戻りガスが低下する。
(3)受入リード管の分断部において圧力解放された低温液体が再度受入リード管内に浸入する際に反力(上向きの力)を受けるので、受入リード管を上部で支持する低温タンクの屋根に損傷を与える可能性がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、以下の点を目的とするものである。
(1)BOGの発生量を従来よりも低減する。
(2)BOGの低温液体へのまき込みをなくす。
(3)低温液体に作用する反力(上向きの力)を従来よりも低減する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の解決手段として、屋根から底部まで延在し、常温以下の低温液体を外部から受け入れるための第1の受入リード管を備えた低温タンクであって、第1の受入リード管は、屋根から底部まで一体として延在し、かつ、ガス層に相当する部位に自らの内部と外部との圧力差によって自動開閉するガス吸入弁を備える、という手段を採用する。
【0007】
第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、ガス層に相当する部位に第1の受入リード管から分岐して設けられたガス吸入管をさらに備え、ガス吸入弁は、ガス吸入管内に備えられる、という手段を採用する。
【0008】
第3の解決手段として、上記第1の解決手段において、屋根からガス層まで延在する第2の受入リード管と、第1の受入リード管と第2の受入リード管とを接続するバイパス管とをさらに備え、ガス吸入弁はバイパス管内に備えられる、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1の受入リード管内がガス層に対して負圧状態になっているときには、ガス吸入弁が自動的に開いてBOGが第1の受入リード管内に流れ込むので、サイホン現象(低温タンクから供給元への低温液体の逆流)を防止することができる。
【0010】
また、本発明によれば、第1の受入リード管内がガス層に対して正圧状態になっている状態、つまり第1の受入リード管を介して低温液体を受け入れているときには、ガス吸入弁が自動的に閉じて第1の受入リード管内とガス層とが分離されるので、低温液体が底部に確実に供給される。そして、このような低温液体の受け入れ状態において、第1の受入リード管内のLNGはガス層で圧力解放されないので、BOGの発生量を従来よりも低減させることができ、よってBOGを処理するための設備コストを従来よりも低減させることが可能となる。
【0011】
また、本発明によれば、第1の受入リード管が屋根から底部まで一体としたものであり、ガス層内で分断されていないので、ガス層のBOGを低温液体内にまき込んで低温タンク内の圧力を低下させることがなく、よって供給元への戻りガスの低下を従来よりも抑制することができる。
【0012】
さらに、本発明によれば、第1の受入リード管が屋根から底部まで一体としたものであり、ガス層内で分断されていないので、第1の受入リード管に作用する反力(上向きの力)を大幅に抑制することが可能であり、よってこの反力に起因する屋根の損傷の可能性を大幅に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係るLNGタンクAの全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るLNGタンクAの要部構成を示す拡大図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るLNGタンクBの全体構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
最初に、第1実施形態について説明する。図1に示すように、本第1実施形態に係るLNGタンクAは、タンク躯体1、屋根2、受入管3、ボトムフィード管4(第1の受入リード管)、ガス吸入管5、吐出部6、トップフィード管7(第2の受入リード管)、邪魔板8、及びバルブ9A、9Bを備えている。このLNGタンクAは、海岸近傍の施設であるLNG基地内に複数設置されており、LNG船から低温液体であるLNG(Liquefied Natural Gas、液化天然ガス)を受け入れて貯留する低温タンクである。
【0015】
タンク躯体1は、地中あるいは地上に構築され、かつ、機密性及び断熱性に優れた有底円筒形状の構造物である。このタンク躯体1は、その直径及び高さが数十メートルにも及ぶLNG専用の巨大な容器である。屋根2は、上記タンク躯体1の上部を覆うように当該タンク躯体1上に設けられ、かつ、機密性及び断熱性に優れた構造物である。このようなタンク躯体1や屋根2の詳細構造については、多くの文献に記載されているので詳細説明を割愛するが、タンク躯体1及び屋根2は、機密性及び断熱性を確保するために断熱材層を含む複数層から構成されている。
【0016】
このようなタンク躯体1及び屋根2によって形成されるLNGタンクAの内部空間はLNGの貯留空間であるが、LNGの液面は、タンク躯体1の所定高さに設定されている。このようなLNGの貯留空間には、LNGが存在する下層(液槽)とLNGが気化することによって生成されるBOG(ボイルオフガス)が充満する上層(ガス層)とが形成される。
【0017】
受入管3は、船着場に設けられてLNG船に接続される陸揚設備から上記屋根2の直上まで敷設された配管であり、LNG船から送り出されたLNGをLNGタンクAの直上まで導く。この受入管3の先端には、図示するようにボトムフィード管4とトップフィード管7とが接続されている。ボトムフィード管4は、上記屋根2を貫通してタンク躯体1の底部まで垂直に設けられた配管である。このボトムフィード管4には、タンク躯体1の底部に位置する先端部にLNGを吐出するための吐出部6が設けられていると共に、上記ガス層に相当する部位にはガス吸入管5が分岐状に接続されている。
【0018】
ガス吸入管5は、図示するように先端が下方を向いたL字形状の短管である。また、図2に示すように、ガス吸入管5において水平に延在する部位の内部には、ガス吸入弁5aが設けられている。ガス吸入弁5aは、ボトムフィード管4の内部圧力とボトムフィード管4の外部圧力(ガス層の圧力)との圧力差によって自動開閉する逆止弁である。すなわち、このガス吸入弁5aは、ボトムフィード管4の内部圧力がガス層の圧力に対して負圧状態になると、開状態となってボトムフィード管4の内部とガス層とを連通させ、一方、ボトムフィード管4の内部圧力がガス層の圧力に対して正圧状態になると、閉状態となってボトムフィード管4の内部とガス層とを隔離する。
【0019】
吐出部6は、図1に示すように、ボトムフィード管4に直交するように水平姿勢で設けられた直管であり、両端部にLNGを吐出するための開口が形成されている。この吐出部6は通常液層内に位置するものである。すなわち、このように構成されたボトムフィード管4は、LNG船から陸揚げされたLNGをLNGタンクA内の液層に供給するためのものである。
【0020】
トップフィード管7は、上記屋根2を貫通してタンク躯体1内に垂直に設けられた配管である。このトップフィード管7は、LNGを吐出する先端部がガス層内に位置するように設けられている。邪魔板8は、図示するようにトップフィード管7の先端部の直下に水平状態から傾斜させた姿勢で支持された平板であり、上記先端部から吐出したLNGを受けるためのものである。このように構成されたトップフィード管7は、LNG船から陸揚げされたLNGをLNGタンクA内のガス層に供給するためのものである。
【0021】
なお、バルブ9Aはボトムフィード管4の上部に、またバルブ9Bはトップフィード管7の上部にそれぞれ設けられた開閉弁である。これらバルブ9A、9Bは、択一的に開閉され、LNG船から陸揚げされたLNGを液層あるいはガス層の何れかに供給するためのものである。
【0022】
このように構成されたLNGタンクAでは、LNG船から陸揚げされたLNGを液層に供給する場合、バルブ9Aが開状態かつバルブ9Bが閉状態とされる。すなわち、この場合には、ボトムフィード管4を用いてLNG船からLNGを受け入れる。この場合において、例えば受け入れ開始時のように、ボトムフィード管4内にLNGが流れていないためにボトムフィード管4内がガス層に対して負圧状態になっているときには、ガス吸入弁5aが自動的に開いてBOGがボトムフィード管4内に流れ込むのでサイホン現象(LNGタンクAからLNG船へのLNGの逆流)を防止することができる。
【0023】
一方、受け入れが開始されてボトムフィード管4内にLNGが流れている状態では、ボトムフィード管4内がガス層に対して正圧状態になるので、ガス吸入弁5aは自動的に閉じてボトムフィード管4内とガス層とを分断する。この状態において、ボトムフィード管4がガス層内で分断されてなく、ボトムフィード管4内のLNGはガス層で圧力解放されないので、BOGの発生量を従来よりも低減させることができる。したがって、BOGを処理するための設備コストを従来よりも低減させることが可能となる。
【0024】
また、ボトムフィード管4がガス層内で分断されてないので、ガス層のBOGをLNG内にまき込んでLNGタンクA内の圧力を低下させることがない。したがって、LNG船への戻りガスの低下を従来よりも抑制することができる。
さらに、ボトムフィード管4がガス層内で分断されてないので、ボトムフィード管4に作用する反力(上向きの力)を大幅に抑制することが可能であり、よってこの反力に起因する屋根2の損傷の可能性を大幅に抑制することができる。
【0025】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態について説明するが、以下の記載では、上述した第1実施形態に係るLNGタンクAと同一の構成要素には同一符合を付し、再度の説明を省略する。
【0026】
図3に示すように、本第2実施形態に係るLNGタンクBは、タンク躯体1、屋根2、受入管3、ボトムフィード管4、吐出部6、トップフィード管7、邪魔板8バルブ9A、9B及びバイパス管10を備えている。このLNGタンクBは、海岸近傍の施設であるLNG基地内に複数設置されており、LNG船からLNG(低温液体)を受け入れて貯留する低温タンクである。
【0027】
このようなLNGタンクBは、トップフィード管7をガス吸入管5の代替えとして使用すべく、ボトムフィード管4の上部とトップフィード管7の上部とをバイパス管10で相互接続すると共に、当該バイパス管10の途中部位にバルブ9Cを設けたものである。
【0028】
上記バルブ9Cは、ガス吸入弁5aの代替えとなる逆止弁であり、ボトムフィード管4内がトップフィード管7内に対して負圧になると、開状態となってBOGをボトムフィード管4内に取り込む一方、ボトムフィード管4内がトップフィード管7内に対して正圧になると、閉状態となってボトムフィード管4内とガス層とを遮断する。また、このようなバイパス管10及びバルブ9Cは、図示するように、LNGタンクBの外側、つまりLNGの貯留空間外に設けられている。
【0029】
このようなLNGタンクBは、上述した第1実施形態のLNGタンクAと全く同様な作用効果を奏すると共に、バイパス管10及びバルブ9Cが貯留空間外に設けられているので、メンテナンスが容易である。すなわち、第1実施形態のLNGタンクAでは、貯留空間内にガス吸入管5及びガス吸入弁5aが設けられているので、メンテナンスを行う場合、タンク内のLNG、BOGを完全に空気と置換しなければならず、メンテナンス性が悪い。
【0030】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
上記各実施形態では、LNGを貯留するLNGタンクA、Bについて説明したが、本発明はこれに限定されない。低温タンクには、LPG(Liquefied petroleum gas、液化石油ガス)やエチレン等の低温液体を貯留するものがある。本発明は、LNG、LPG及びエチレン等の各種低温液体を貯留するタンクに適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
A、B…LNGタンク、1…タンク躯体、2…屋根、3…受入管、4…ボトムフィード管(第1の受入リード管)、5…ガス吸入管、5a…ガス吸入弁、6…吐出部、7…トップフィード管(第2の受入リード管)、8…邪魔板、9A〜9C…バルブ、10…バイパス管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根から底部まで延在し、常温以下の低温液体を外部から受け入れるための第1の受入リード管を備えた低温タンクであって、
第1の受入リード管は、屋根から底部まで一体として延在し、かつ、ガス層に相当する部位に自らの内部と外部との圧力差によって自動開閉するガス吸入弁を備えることを特徴とする低温タンク。
【請求項2】
ガス層に相当する部位に第1の受入リード管から分岐して設けられたガス吸入管をさらに備え、
ガス吸入弁は、ガス吸入管内に備えられることを特徴とする請求項1記載の低温タンク。
【請求項3】
屋根からガス層まで延在する第2の受入リード管と、
第1の受入リード管と第2の受入リード管とを接続するバイパス管とをさらに備え、
ガス吸入弁は、バイパス管内に備えられることを特徴とする請求項1記載の低温タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−261489(P2010−261489A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111583(P2009−111583)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】