説明

低温液体設備

【課題】低温タンクの建造コスト及び低温液体設備の運用コストを低減する。
【解決手段】屋外に設けられ、低温液体を貯蔵する低温タンク1と、該低温タンク1の屋根上に配設される太陽電池パネル5とを具備する。この太陽電池パネルで発生した電力により、低温液体が気化して発生したBOGガスを圧縮するBOG圧縮機4を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温液体設備に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、LNG(液化天然ガス)タンクやLPG(液化石油ガス)タンク等の低温タンクでは、内容物であるLNGやLPG等の低温液体を貯蔵するために、ポリウレタンフォーム(PUF)やパーライト(Perlite)を用いた保冷構造を有している。しかしながら、この保冷構造をもってしても内容物の気化を完全に防ぐことができないため、低温タンク内で内容物が気化して発生したBOG(ボイルオフガス)を専用の圧縮機(BOG圧縮機)で圧縮して高圧化あるいは再液化している。例えば下記特許文献1には、このような低温タンクやBOG圧縮機の詳細が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−286211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記ポリウレタンフォームやパーライト等の保冷材は、極めて高価であり、また使用量も多いので、低温タンクの建造コストの主要部分を占めている。また、BOG圧縮機は商用電力によって駆動されるが、このBOG圧縮機の電力消費は、低温タンクが設けられるLNG基地やLPG基地等の低温液体設備の運用者にとって大きな負担になっている。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、低温タンクの建造コスト及び低温液体設備の運用コストの低減を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の解決手段として、屋外に設けられ、低温液体を貯蔵する低温タンクと、該低温タンクの屋根上に配設される太陽電池パネルとを具備する、という手段を採用する。
【0007】
第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、太陽電池パネルは、低温タンクの屋根への散水を阻害しないように屋根と隙間を設けて配設されている、という手段を採用する。
【0008】
第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、太陽電池パネルで発生した電力によって、低温タンクで低温液体が気化して発生したBOGガスを圧縮するBOG圧縮機をさらに備える、という手段を採用する。
【0009】
第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれかの解決手段において、太陽電池パネルで発生した電力を一時的に蓄電する蓄電設備をさらに備える、という手段を採用する。
【0010】
第5の解決手段として、上記第1〜第4のいずれかの解決手段において、低温液体は、液化天然ガスあるいは液化石油ガスである、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、太陽電池パネルが低温タンクの屋根上に配設されるので、太陽電池パネルが低温タンクの屋根に照射される太陽光を遮断すると共に当該太陽光によって発電する。
したがって、本発明によれば、太陽光に起因する低温タンクへの入熱を太陽電池パネルによって軽減することが可能なので、低温タンクの屋根内に設ける保冷材の量を従来よりも削減することが可能であり、結果として低温タンクの建造コストを従来よりも低減することができる。
また、本発明によれば、太陽電池パネルが発電するので、この電力量の分だけ低温液体設備における商用電力の電力消費量を従来よりも低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るLNG基地(低温液体設備)の要部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るLNG基地(低温液体設備)において、太陽電池パネルの配設状態を示すLNGタンク1の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係るLNG基地(低温液体設備)は、図1に示すように、LNGタンク1、払出ポンプ2、気化器3、BOG圧縮機4、太陽電池パネル5、散水ノズル6及び蓄電装置7によって構成されている。LNG基地は、周知のように、LNG船から陸揚げされたLNG(液化天然ガス:低温液体)を受け入れて貯蔵すると共に、LNGを気化させることによってNG(天然ガス)を生成して火力発電所に燃料として供給したり、又は/及び都市ガスとして都市に供給する。
【0014】
LNGタンク1は、LNG船から陸揚げされたLNGを貯蔵する低温タンクである。このLNGタンク1には、地上式タンクと地下式タンクとがある。地上式タンクは地上に二重殻構造物として建造されるものであり、一方、地下式タンクは、地面を掘削した掘削穴内に二重殻構造物として建造されるものである。二重殻構造物としてのLNGタンク1には、外槽(外殻)がコンクリート製躯体として構築され、内槽(内殻)がステンレス製のメンブレンとして構築される。
【0015】
このような外槽と内槽との間には、内容物(貯蔵物)であるLNGを保冷するために保冷材が充填されている。この保冷材としては、地上式タンクの場合にはパーライト(Perlite)が一般的に使用され、地下式タンクの場合にはポリウレタンフォーム(PUF)が一般的に使用されている。また、地下式タンクには、屋根が地上に露出するタイプのものと屋根が地下に埋没するタイプとがあるが、本実形態におけるLNGタンク1は、太陽電池パネル5を備える関係で、地上式タンク又は屋根が地上に露出するタイプの地下式タンクである。
【0016】
また、LNGタンク1は、LNG基地の規模に応じて単数あるいは複数が設けられる。このようなLNGタンク1内では、LNGが外部からの入熱によって気化することによりBOG(ボイルオフガス)が発生する。つまり、このBOGは、不可避的に発生するNG(天然ガス)である。
【0017】
払出ポンプ2は、LNGタンク1からLNGを払い出すためのポンプである。なお、図1では、払出ポンプ2がLNGタンク1の外側に模式的に描かれているが、実際の払出ポンプ2は、LNGタンク1内のLNGに沈下する状態に設けられており、LNGを汲み上げて気化器3に供給する。なお、払出ポンプ2と気化器3との間には、必要に応じて昇圧用のセカンダリポンプが設けられる。
【0018】
気化器3は、上記払出ポンプ2によってLNGタンク1から供給されたLNGを海水を用いて気化させるものである。このような気化器3は、LNG基地の規模に応じて単数あるいは複数が設けられる。気化器3によってLNGから生成された天然ガス(NG)は、供給配管を介して火力発電所等の需要者に供給される。
【0019】
BOG圧縮機4は、上記LNGタンク1内で発生したBOGを圧縮する圧縮機である。このBOG圧縮機4は、図1に示すように、太陽電池パネル5又は蓄電装置7から給電される電力を用いてBOGを圧縮する。圧縮機にはレシプロ型(往復動方式)のもの又はターボ型(遠心方式)のものがあるが、BOG圧縮機4は何れの方式のものでも良い。このようなBOG圧縮機4で圧縮されたBOG(高圧BOG)は、上記供給配管内を流れる天然ガスに合流して需要者に供給される。
【0020】
太陽電池パネル5は、図1に示すように、上記LNGタンク1においてドーム形状のの屋根に配設され、太陽光の光りエネルギを電力に変換するものである。すなわち、太陽電池パネル5は、LNGタンク1の屋根に降り注ぐ太陽光に基づいて発電し、当該発電に基づく電力をBOG圧縮機4あるいは/及び蓄電装置7に給電する。
【0021】
また、この太陽電池パネル5は、図1に示すように、LNGタンク1の屋根から一定の隙間を空けた状態で設けられている。この隙間は、散水ノズル6によってLNGタンク1の屋根に散水される水(防衛水)の流下を阻害しないための配慮である。このような散水ノズル6による散水は、LNG基地の近隣で火災が発生した際に、当該火災による輻射熱からLNGタンク1を守るためのものである。
【0022】
太陽電池パネル5は、このような散水ノズル6による防衛水の散水に対する阻害物とならないように、図1に示すように散水ノズル6の高さよりも若干高い位置、かつ、図2に示すようにLNGタンク1の屋根の略全域に亘って配設されている。より具体的には、太陽電池パネル5は、LNGタンク1の屋根上に固定された枠体と、当該枠体の上面に敷き詰められる多数の太陽電池ユニットとから構成される。なお、LNGタンク1の屋根には、散水ノズル6の他にも、メンテナンス時に使用されるマンホール等の屋根上構造物が設けられているが、太陽電池パネル5は、このような屋根上構造物を回避しつつ、屋根の極力広い領域に上記枠体を固定することにより、より広い領域に太陽電池ユニットを敷設するように配設される。
【0023】
このような太陽電池パネル5が発電した電力は、主にBOG圧縮機4に給電されてBOGを圧縮するための動力源として消費されるが、BOG圧縮機4で消費される分を除いた余剰電力は、蓄電装置7によって蓄電される。
【0024】
散水ノズル6は、図1、図2に示すように、LNGタンク1の屋根の中央部に設けられ、LNGタンク1の半径方向に水(防衛水)を散水するものである。すなわち、この散水ノズル6は、図示しない散水ポンプから供給された海水や工業用水をLNGタンク1の屋根表面に散水する。
【0025】
蓄電装置7は、太陽電池パネル5が発電した電力の一部、つまり上記余剰電力を蓄電すると共に蓄電した余剰電力をBOG圧縮機4に給電する装置である。この蓄電装置7は、例えば各種の蓄電池又は/及びフライホイール式蓄電装置である。なお、フライホイール式蓄電装置は、電力を慣性質量が比較的大きいフライホイールの運動エネルギに変換して蓄電するものである。
【0026】
このような蓄電装置7は、例えば太陽電池パネル5が発電している晴天の日中には余剰電力を専ら蓄電し、太陽電池パネル5が発電を停止する夜間や電力量が大幅に低下する雨天や曇天時には自らが蓄電した余剰電力をBOG圧縮機4に給電してBOGの圧縮を継続させる。すなわち、BOG圧縮機4は、太陽電池パネル5又は蓄電装置7から給電されることにより、昼夜を問わずBOGを圧縮することができる。
【0027】
次に、このように構成されたLNG基地の動作について詳しく説明する。
LNG基地は、季節や時間等に応じて供給量が変動するものの、需要者の要求に応じて昼夜を問わず連続稼働して天然ガスの供給を行う。
【0028】
すなわち、払出ポンプ2は常時稼働でLNGタンク1からLNGを払い出して気化器3に供給し、当該気化器3は、LNGを海水との熱交換によって気化させて天然ガスとして供給配管に送出する。BOG圧縮機4は、このような払出ポンプ2及び気化器3と並行して、LNGタンク1から排出されるBOGを圧縮して供給配管に送出する。
【0029】
ここで、払出ポンプ2及び気化器3の動力源は商用電力であるが、BOG圧縮機4の動力源は、上述したように太陽電池パネル5の電力又は太陽電池パネル5が発電して蓄電装置7に蓄電された電力である。つまり、晴天の日中では、太陽光が太陽電池パネル5に直接照射されるので、太陽電池パネル5は、定格電力あるいは当該定格電力以上の電力を発電し、この電力によってBOG圧縮機4が稼働する。また、太陽電池パネル5の定格電力は、BOG圧縮機4の定格消費電力を遥かに上回るので余剰電力が発生する。この余剰電力は、蓄電装置7に順次蓄電される。
【0030】
例えば、標準的な仕様のLNGタンクでは、2000m程度の屋根上面積を太陽電池パネルの設置面積として確保することができる。一方、現在入手し得る太陽電池パネルの発電能力は約4kWh/mなので、標準的な仕様のLNGタンクでは、約8000kWhの電力を太陽電池パネルで発電することが可能である。これに対して標準的な仕様のBOG圧縮機の消費電力は約4000kWhなので、太陽電池パネルで発電することが可能な電力(約8000kWh)の約半分が余剰電力となる。
【0031】
また、夜間においては、太陽光がLNGタンク1の屋根に降り注がないので、太陽光に起因するLNGタンク1への入熱量は大幅に日中よりも減少する。したがって、LNGタンク1内におけるBOG発生量も大幅に減少するので、BOG圧縮機4の消費電力も大幅に減少する。したがって、夜間おけるBOG圧縮機4の消費電力を蓄電装置7に蓄電した電力(余剰電力)で十分に賄うことができる。本LNG基地によれば、このようにBOG圧縮機4の消費電力を太陽電池パネル5の電力で賄うので、LNG基地の運用コストを大幅に低減することが可能である。
なお、雨天や曇天が続く等の原因により夜間おけるBOG圧縮機4の消費電力を蓄電装置7の電力で賄うことができない事態が発生した場合には、商用電力によって不足分を補えば良い。
【0032】
また、本LNG基地によれば、LNGタンク1の屋根の極力広い領域を蔽うように太陽電池パネル5を配設するので、太陽の位置が変化しても太陽電池パネル5の何れかの部位に太陽光が照射される状態を実現することができる。したがって、本LNG基地によれば、太陽の位置変化に起因する発電電力の変動を抑制することができる。
【0033】
さらに、本LNG基地では、LNGタンク1の屋根の広範囲な領域に太陽電池パネル5が設けられているので、日中における太陽光を太陽電池パネル5が遮って、LNGタンク1の屋根への直接照射量を大幅に低減することができる。すなわち、日中においても、太陽光に起因するLNGタンク1への入熱量が太陽電池パネル5を設けない場合(従来の場合)よりも大幅に減少するので、日中におけるLNGタンク1内におけるBOG発生量も大幅に減少し、この結果として日中におけるBOG圧縮機4の消費電力も従来よりも大幅に減少する。したがって、本LNG基地によれば、LNGタンク1の屋根に設ける保冷材の使用量を従来よりも削減することができる。
【0034】
また、太陽光に起因するLNGタンク1への入熱は、鉛直姿勢で設けれれているLNGタンク1の側壁に比べて略水平姿勢で設けられているLNGタンク1の屋根からのものが圧倒的に大きい。すなわち、本LNG基地によれば、LNGタンク1の屋根に設ける保冷材に加えて、LNGタンク1の側壁に設けられる保冷材をも削減することが可能であり、よってLNGタンク1における保冷材の使用量を全体的かつ大幅に削減することが可能である。
【0035】
つまり、LNGタンク1が地上式タンクの場合には、パーライト(Perlite)の使用量を全体的かつ大幅に削減することが可能であり、LNGタンク1が地下式タンクの場合には、ポリウレタンフォーム(PUF)の使用量を全体的かつ大幅に削減することが可能である。したがって、本LNG基地によれば、このように保冷材の使用量を大幅に削減することができるので、LNGタンク1の建造コストを大幅に低減することが可能である。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、本発明をLNG基地に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。低温タンクを備える低温液体設備には、LNG基地の他に低温液体としての液化石油ガス(LPG)を貯留するLPG基地等があるので、本発明は、各種の低温タンクを備える各種の低温液体設備に適用可能である。
【0037】
(2)上記実施形態では、LNGタンク1の屋根を全体的に蔽うように太陽電池パネル5を配設したが、本発明はこれに限定されない。例えば、太陽電池パネル5を局所的に複数カ所に分散させて設けても良い。
【符号の説明】
【0038】
1…LNGタンク、2…払出ポンプ、3…気化器、4…BOG圧縮機、5…太陽電池パネル、6…散水ノズル、7…蓄電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設けられ、低温液体を貯蔵する低温タンクと、
該低温タンクの屋根上に配設される太陽電池パネルと
を具備することをことを特徴とする低温液体設備。
【請求項2】
太陽電池パネルは、低温タンクの屋根への散水を阻害しないように屋根と隙間を設けて配設されていることを特徴とする請求項1記載の低温液体設備。
【請求項3】
太陽電池パネルで発生した電力によって、低温タンクで低温液体が気化して発生したBOGガスを圧縮するBOG圧縮機をさらに備えることを特徴とする請求項1または2記載の低温液体設備。
【請求項4】
太陽電池パネルで発生した電力を一時的に蓄電する蓄電設備をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の低温液体設備。
【請求項5】
低温液体は、液化天然ガスあるいは液化石油ガスであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の低温液体設備。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−252563(P2011−252563A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127926(P2010−127926)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】