説明

低温麦搗精ライン

【課題】 搬送装置による搬送時の発熱を抑制させることに着目し、簡単な構造でありながら被加工麦を効率よく冷却し、搗精によって得られた麦の香りや味の低下防止、及び変質防止ができるようにした低温麦搗精ラインの提供。
【解決手段】 搬送装置を介して一連に連結配置された複数台の麦搗精機を備えている麦搗精ラインであって、搬送装置で搬送されている被加工麦を冷却するための冷却装置3aが設けられている。搬送装置がスクリューコンベア21を備え、このスクリューコンベアの内部に冷風を送気することで被加工麦を冷風で直接冷却させるようにした。スクリューコンベア21の内部に冷風を送気することで被加工麦を冷風で直接冷却させるようにした直接冷風供給装置3aと、外管21aを冷風で冷却して被加工麦を間接冷却させるようにした間接冷風供給装置3bが備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大麦やはだか麦を被加工麦とし、この被加工麦を複数台の麦搗精機に順次に通過させることで精麦していく麦搗精ラインに係り、特に、搬送途中での被加工麦の冷却技術に関する。
【背景技術】
【0002】
麦の搗精に際しては、その麦搗精ラインの最終段階では搗精時の摩擦や搬送時の摩擦によって被加工麦が熱を持ち、夏季では60℃〜70℃になり、冬季でも47℃から50℃にもなってしまう。
この結果、搗精によって得られた麦は、その香りや味が低下したり、蛋白質や澱粉質が変質をきたしてしまうことがあるといった問題がある。
なお、麦は、40℃を越えると、上記のように蛋白質や澱粉質が変質をきたすとされているため、40℃以下に抑えるのが望ましい。
【0003】
このような熱による問題を解決するために、従来、搗精室内に強制的に冷気を送って搗精室内を冷却し、発熱を抑制させるようにした搗精室冷却装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記した従来の搗精室冷却装置は、搗精室内に冷気を送るものであるため、搗精室内での発熱を抑制させることができるが、被加工穀物を搗精機に搬送させる搬送途中で冷却させることはできない。
【特許文献1】特許公開2001−321683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、麦搗精ラインでは、複数台の麦搗精機が搬送装置を介して一連に連結配置されており、本発明では、この搬送装置による搬送時の発熱を抑制させることに着目し、簡単な構造でありながら被加工麦を効率よく冷却し、搗精によって得られた麦の香りや味の低下防止、及び変質防止ができるようにした低温麦搗精ラインを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明(請求項1)の低温麦搗精ラインは、
搬送装置を介して一連に連結配置された複数台の麦搗精機を備えている麦搗精ラインであって、前記搬送装置で搬送されている被加工麦を冷却するための冷却装置が設けられている構成とした。
【0007】
又、本発明(請求項2)の低温麦搗精ラインは、
請求項1記載の麦搗精ラインにおいて、搬送装置がスクリューコンベア又はリボンコンベア又はネオコンベア又はバトルコンベアを備え、このスクリューコンベアの内部に冷風を送気することで被加工麦を冷風で直接冷却させるように構成した。
【0008】
又、本発明(請求項3)の低温麦搗精ラインは、
請求項1又は2記載の麦搗精ラインにおいて、搬送装置がスクリューコンベア又はリボンコンベア又はネオコンベア又はバトルコンベアを備え、このスクリューコンベアの外管を囲むようにジャケットが形成され、このジャケットの内部に冷風を送気することで、外管を冷却して被加工麦を冷風で間接冷却させるように構成した。
【0009】
又、本発明(請求項4)の低温麦搗精ラインは、
請求項1〜3のいずれかに記載の麦搗精ラインにおいて、複数台の麦搗精機のうちの始端麦搗精機に接続する麦供給タンクを備え、この麦供給タンクの内部に冷風を送気することで被加工麦を冷風で直接冷却させるように構成した。
【0010】
又、本発明(請求項5)の低温麦搗精ラインは、
請求項1〜4のいずれかに記載の麦搗精ラインにおいて、複数台の麦搗精機のうちの始端麦搗精機に麦供給管を介して接続する麦供給タンクを備え、前記麦供給管は上下方向に延長した螺旋管に形成され、この螺旋管の下部から上部に向けて管内部に冷風を送気することで被加工麦を冷風で直接冷却させるように構成した。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、麦搗精ラインにおいて、搬送装置で搬送されている途中の被加工麦を冷却させることができる。
従って、搗精によって得られた麦の香りや味の低下防止、及び変質防止ができる。
【0012】
この場合、搬送装置にスクリューコンベアを用いて、その内部に冷風を送気させると(請求項2)、搬送途中でありながら被加工麦を冷風で直接冷却できるため、簡単な構造でありながら被加工麦を効率よく冷却することができる。
【0013】
又、スクリューコンベアの外管を囲むようにジャケットを形成して、その内部に冷風を送気させることでも(請求項3)、外管を冷却させるという間接冷却ではあるが、被加工麦を冷却させることができる。
【0014】
又、麦供給タンクの内部に冷風を送気させると(請求項4)、麦搗精機に通す手前から既に被加工麦を冷風で直接冷却できるため、被加工麦を効率よく冷却することができる。
【0015】
又、麦供給管としての螺旋管の下部から上部に向けて管内部に冷風を送気させると(請求項5)、麦供給管の途中で被加工麦を冷風で直接冷却できるし、螺旋管であるため、その高さを低くしてコンパクトに形成しながら被加工麦の搬送距離を長くして冷却距離を長くとることができ、しかも下部から上部に向けて冷風を送気させるため、被加工麦を効率よく冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明の低温麦搗精ラインの実施例を示す斜視図、図2は冷却装置を備えた搬送装置としてのスクリューコンベアの断面図、図3は冷却装置を備えた麦供給タンクの断面図、図4は冷却装置を備えた麦供給管としてのフレキシブル螺旋管の正面図である。
【0017】
本実施例の低温麦搗精ラインは、複数台の麦搗精機1が搬送装置を介して一連に連結配置されている。なお、図面では、4台の麦搗精機1を示しているが、実際には、18台の麦搗精機が配設されている。ただ、この麦搗精機の台数は、複数台であれば、その具体的な台数は限定されない。
【0018】
前記各麦搗精機1,1の間には搬送装置が設けられている。
この搬送装置は、麦搗精機1の排出口に接続させた昇降機20と、この昇降機20の排出口に接続させたスクリューコンベア21と、このスクリューコンベア21の途中に設けた排出口に上端を接続させると共に下端を麦搗精機1の投入口に接続させた投入管22を備えている。
従って、麦搗精機1で搗精された被加工麦は、昇降機20によってスクリューコンベア21に搬送され、このスクリューコンベア21から投入管22を介して次の麦搗精機1に投入されるもので、この動作を各麦搗精機1において繰り返すことで、被加工麦を順次に麦搗精機1に通過させて徐々に搗精(精麦)していくことができる。
【0019】
前記スクリューコンベア21は、図2に示すように、断面略U字状の外管21aの内部にスクリュー21bが嵌め込まれたもので、このスクリューコンベア21に冷却装置が設けられている。
なお、図中21cは外管の両側方及び下方を囲むように設けた保護管であるが、この保護管21cは必ずしも設ける必要はない。
【0020】
前記冷却装置は、スクリューコンベア21の内部に冷風を送気することで被加工麦を冷風で直接冷却させるようにした直接冷風供給装置3aと、外管21aを冷風で冷却して被加工麦を間接冷却させるようにした間接冷風供給装置3bを備えている。
【0021】
直接冷風供給装置3aは、スクリューコンベア21の外管21aの上面に通気孔30を形成し、この通気孔30に冷風供給ダクト31を接続させて、冷凍サイクル(図示省略)に通して冷却させた冷風を冷風供給ダクト31から通気孔30を通してスクリューコンベア21の内部に送気させ、被加工麦を直接冷却させるようになっている。
なお、スクリューコンベア21の内部に送気された冷風は、スクリュー21bの回転及び麦搗精機1からの吸込みによってスクリューコンベア21の内部を流動していき、一部は麦搗精機1の内部にまで流入して、ここでも被加工麦を冷却することができる。
【0022】
間接冷風供給装置3bは、前記保護管21cの両側方及び下方を囲むようにジャケット35が形成され、このジャケット35内において前記保護管21cの両側面及び底面に開口部36を形成させ、かつジャケット35の一方の側面に冷風供給ダクト37を接続させると共に、ジャケット35の他方の側面に冷風排気ダクト38を接続させている。
そして、冷凍サイクル(図示省略)に通して冷却させた冷風を冷風供給ダクト37からジャケット35の内部に送気させて、冷風排気ダクト38から排気させるようになっている。
【0023】
このように冷風をジャケット35の内部に送気させるため、この冷風により保護管21cの開口部36を通して外管21aを冷却させ、スクリューコンベア21内の被加工麦を間接冷却させることができる。
なお、冷風排気ダクト38から排気された冷風を再び冷凍サイクルに通して循環させることで、冷風の熱交換効率を高めるようにしている。
又、前記各冷風ダクト31,37,38及びジャケット35の外面を断熱材39で被覆させている。
【0024】
前記複数台の麦搗精機1のうちの始端麦搗精機1aには、麦供給管4を介して麦供給タンク5が接続されている。
【0025】
前記麦供給タンク5は、搗精工程の前工程である原料切込、原料精選、比重選別、石抜き等の工程を経た原料麦(被加工麦)を受け入るためのもので、図3に示すように、その上面中央部に供給用のスクリューコンベア50に接続する原料麦の投入口51が形成され、その底部に排出用のスクリューコンベア52に接続する原料麦の排出口53が形成されている。
【0026】
この麦供給タンクにも冷却装置7が設けられている。
この冷却装置7は、被加工麦を冷風で直接冷却させるようにした直接冷風供給装置であり、麦供給タンク5の上面に冷風供給ダクト70を接続させると共に、前記投入口51を挟んだ反対側の上面に排気孔71を形成して、冷凍サイクル(図示省略)に通して冷却させた冷風を冷風供給ダクト70から麦供給タンク5の内部に送気させて、排気孔71から排気させるようになっている。
このように冷風を麦供給タンク5の内部に送気させるため、この冷風により麦供給タンク5内の被加工麦を直接冷却させることができる。
【0027】
前記麦供給管4は、図4に示すように、断熱ケーシング40の内部に配管され、被加工麦を上から下に流下させて搬送させるように、上下方向に延長したフレキシブル螺旋管41に形成されている。
このフレキシブル螺旋管41にも冷却装置8が設けられている。この冷却装置8は、被加工麦を冷風で直接冷却させるようにした直接冷風供給装置であり、フレキシブル螺旋管41の下部に冷風供給口80が形成され、フレキシブル螺旋管41の上部に冷風排気口81が形成されて、フレキシブル螺旋管41の下部から上部に向けて管内部に冷風を送気するようになっている。
【0028】
又、断熱ケーシング40の内部に冷風を供給させて、この冷風によりフレキシブル螺旋管41を冷却させ、内部の被加工麦を間接冷却させるようになっている。この場合、フレキシブル螺旋管41の全長又は部分的に多数のフィン42を設けることで、冷却効率を向上させている。
【0029】
なお、図示した実施例では、フレキシブル螺旋管41を1条巻きにしているが、2条巻き、3条巻きにすることができる。
又、フレキシブル螺旋管の内面に多数の小突起を形成しておくと、このフレキシブル螺旋管の内部を流下する被加工麦が小突起に衝突して跳ね散らばるため、冷風が被加工麦に満遍なく当り、効率よく冷却させることができる。
又、このような冷却装置8を備えたフレキシブル螺旋管41を前記搬送装置の投入管22の全部又は一部に適用することも可能である。
【0030】
本実施例では、被加工麦を40℃以下に抑制させるように、冷風の温度及び流速を設定しており、春夏秋冬、気温に応じて変化させることになるが、概ね10℃〜20℃の低温で、0.5m/sec〜1.5m/sec程度の流速で供給するようにしている。
【0031】
又、実施例では、スクリューコンベアを備えた搬送装置を例にとったが、リボンコンベア又はネオコンベア又はバトルコンベアを備えた搬送装置に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の麦搗精ラインの実施例を示す斜視図。
【図2】冷却装置を備えたスクリューコンベアの断面図。
【図3】冷却装置を備えた麦供給タンクの断面図。
【図4】冷却装置を備えたフレキシブル螺旋管の正面図。
【符号の説明】
【0033】
1 麦搗精機
1a 始端麦搗精機
20 昇降機
21 スクリューコンベア
21a 外管
21b スクリュー
21c 保護管
22 投入管
3a 直接冷風供給装置
3b 間接冷風供給装置
30 通気孔
31 冷風供給ダクト
35 ジャケット
36 開口部
37 冷風供給ダクト
38 冷風排気ダクト
39 断熱材
4 麦供給管
40 断熱ケーシング
41 フレキシブル螺旋管
42 フィン
5 麦供給タンク
50 スクリューコンベア
51 投入口
52 スクリューコンベア
53 排出口
7 冷却装置
70 冷風供給ダクト
71 排気孔
8 冷却装置
80 冷風供給口
81 冷風排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置を介して一連に連結配置された複数台の麦搗精機を備えている麦搗精ラインであって、前記搬送装置で搬送されている被加工麦を冷却するための冷却装置が設けられていることを特徴とする低温麦搗精ライン。
【請求項2】
搬送装置がスクリューコンベア又はリボンコンベア又はネオコンベア又はバトルコンベアを備え、このコンベアの内部に冷風を送気することで被加工麦を冷風で直接冷却させるようにした請求項1記載の低温麦搗精ライン。
【請求項3】
搬送装置がスクリューコンベア又はリボンコンベア又はネオコンベア又はバトルコンベアを備え、このコンベアの外管を囲むようにジャケットが形成され、このジャケットの内部に冷風を送気することで、外管を冷却して被加工麦を冷風で間接冷却させるようにした請求項1又は2記載の低温麦搗精ライン。
【請求項4】
複数台の麦搗精機のうちの始端麦搗精機に接続する麦供給タンクを備え、この麦供給タンクの内部に冷風を送気することで被加工麦を冷風で直接冷却させるようにした請求項1〜3のいずれかに記載の低温麦搗精ライン。
【請求項5】
複数台の麦搗精機のうちの始端麦搗精機に麦供給管を介して接続する麦供給タンクを備え、前記麦供給管は上下方向に延長した螺旋管に形成され、この螺旋管の下部から上部に向けて管内部に冷風を送気することで被加工麦を冷風で直接冷却させるようにした請求項1〜4のいずれかに記載の低温麦搗精ライン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−38064(P2007−38064A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222805(P2005−222805)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(505290519)森山産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】