説明

低熱膨張率高強度ハニカム・セメントおよびその製造方法

セラミック・ハニカム本体の外周面上に外部層を形成するため、または上記ハニカム本体内に栓を施すため等の、上記ハニカム本体とともに用いるのに適したセメント混合物である。このセメント混合物は、焼成された場合に、低い熱膨張係数および高い強度を示すことが好ましい。このセメント混合物は、未焼成ハニカム本体に施され、この未焼成ハニカム本体と同時に焼成されることができ、または、既に焼成されているハニカム本体に施され、次いで焼成されることができる。上記セメント混合物は、タルク、カオリン、アルミナ、シリカ、および水酸化アルミニウムを含む無機成分のうちの複数を含み、このセメント混合物は、無機成分の重量%で、18.0%以下のシリカおよび17.0%以上の水酸化アルミニウムを含む。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の表示】
【0001】
本願は、「低熱膨張率高強度ハニカム・セメントおよびその製造方法」と題して2007年10月31日付けで提出された米国仮特許出願第61/001,268号、および「低熱膨張率高強度ハニカム・セメントおよびその製造方法」と題して2007年11月13日付けで提出された米国仮特許出願第61/002,805号の優先権を主張した出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は、概して、ハニカム本体の外周面上に外皮層を形成するため、または上記ハニカム本体内に栓を形成するため等の、セラミック・ハニカム本体に用いるのに好適なセメントに関するものである。
【背景技術】
【0003】
炭化水素ガス、ガソリンまたはディーゼル燃料等の炭化水素燃料を用いる内燃機関システムから排出される排気ガスは、深刻な大気汚染の原因となり得る。これらの排気ガスに含まれる多くの汚染物の中に、炭化水素および酸素含有化合物があり、後者は窒素酸化物(NOx)および一酸化炭素(CO)を含む。自動車産業においては、長年に亘って自動車エンジンシステムからのガス状廃棄物の量の削減を試みて来た。ハニカム構造体が導入された。ハニカム本体が押出し成形された後に、ハニカム本体の外周面に対して、「人造外皮」または「後付け外皮」と呼ばれる外部層を施すことができた。このような外皮すなわち外部層はハニカム本体と共に押出し成形されるのではなく、ハニカム本体が押出し成形された後に塗布されるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乾燥またはキュアするのに低温のみを必要とするが、乾燥またはキュア後に900℃を超える温度に曝された場合に軟化および弱体化し始める公知の乾燥機でキュアされる塗膜から形成される外皮を有するハニカム構造体の触媒付け後には、外皮のひび割れ、分離、および剥離等の欠陥が観察されている。
【0005】
公知の塗膜は主バッチ成分として、製造時にスクラップまたは不良品として認定された基体、またはフィルタ、またはマトリクスを製粉することによって生成されたコージェライト粉末を有する。製造時における再使用コージェライト(粉末)に対する要求および基体およびフィルタに対する要求が高まるのが原因で、フィルタ・スクラップレベルが低下するにつれて、コージェライト粉末の不足、したがって商品価格の高騰が発生するのが予想される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示されているのは、ハニカム本体の外周面上に外部層を形成するため、またはハニカム本体の内部に栓を形成するため等の、セラミック・ハニカム本体とともに用いるのに適したセメント混合物、または封止用混合物である。上記セメント混合物は、焼成されたときに、低い熱膨張係数および高い強度を示すことが好ましい。上記セメント混合物は、未焼成ハニカム本体に施すことができる(そして未焼成体と同時に焼成される)か、あるいは既に焼成された(セラミック)ハニカム本体に施され、次いで焼成されることができる。上記セメント混合物は、タルク、カオリン、アルミナ、シリカ、および水酸化アルミニウムを含む複数の無機成分を含むことが好ましく、その場合に、上記混合物は、無機成分の重量%において、18.0%以下のシリカと、17.0%以上の水酸化アルミニウムを含んでいる。
【0007】
ここに開示されているセメント混合物は、好ましくは1000℃を超える、より好ましくは1200℃を超える、さらに好ましくは1300℃を超える、いくつかの実施の形態においては1380℃を超える、そして別の実施の形態においては1400℃以上に熱せられる。
【0008】
本発明のさらなる特徴および効果は、下記の詳細な説明に記載されており、その一部は、図面のみでなく下記の詳細な説明、請求項を含む記載内容から、または記載通りに本発明を実施することによって、当業者には直ちに明らかになるであろう。
【0009】
上述の概略説明および後述の本発明の実施の形態の詳細説明は、請求項に記載された本発明の性質および特徴を理解するための概観または骨組みの提供を目的とするものである。添付図面は、本発明のさらなる理解を提供するために備えられたものであって、本明細書に組み入れられ、かつその一部を構成するものである。図面は、本発明の種々の実施の形態および態様を示し、記述内容とともに本発明の原理および動作の説明に資するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、ここに開示されたセメント混合物が施され得るハニカム本体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に示された実施例および態様を参照して、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
ここで用いられている「セラミック先駆体成分」とは、無機バッチ材料(例えば、MgO,Al,SiO等)を含み、それらのうちの少なくとも或るものは、バインダ、溶剤、滑剤等とともに焼成することにより、コージェライト等の望ましいセラミック相を形成するものを意味する。
【0013】
図1は、軸線方向を明示する長手方向の軸線A1および軸線方向の長さLを有するハニカム本体12を備えたハニカム構造体10を示す。ハニカム本体12は、外壁15によって囲まれた多数の交差する薄い多孔質の壁14からなるマトリクスを備えており、図示のハニカム本体12においては、円形断面構造を備えている。したがって、ハニカム本体12は、「マトリクス」とも呼ばれる。多数の壁14は、互いに交差しかつ第1端面18と反対側の第2端面20との間に延びて、ハニカム構造体10の両端面18,20間に延びかつ両端面18,20において開口する多数の隣接する中空通路すなわちセルチャンネル22を形成している。したがって各セルチャンネル22は、端面18における第1チャンネル端と、端面20における第2チャンネル端とを有する。
【0014】
本発明の一つの態様はハニカム物品に関し、この物品は、多数のセルを画成する多数の交差する壁からなる未焼成ハニカム・マトリクスを備え、このマトリクスは、第1のセラミック先駆体要素と、このマトリクスの外表面上に配置された後付け外皮とを備え、後付け外皮は、第2のセラミック先駆体要素を備える。上記未焼成ハニカム・マトリクスは押出し成形された構造体であり、上記後付け外皮は、上記マトリクスと一体に押出し成形されたものではない。
【0015】
本発明の別の態様はセラミック・ハニカム物品の製造方法に関し、この方法は、多数のセルを画成する交差するセラミック壁からなる未焼成のセラミック形成用マトリクスを提供し、このマトリクスの外表面上に後付けのセラミック形成用外皮を塗布し、上記マトリクスおよび上記外皮を同時に焼成してセラミック・ハニカム物品を形成する諸ステップを含む。上記未焼成のセラミック形成用マトリクスは押出し成形された構造体であり、上記後付けのセラミック形成用外皮はマトリクスと一体に押出し成形されたものではない。
【0016】
一つの態様において、ハニカム本体のためのセメント混合物がここに開示され、このセメント混合物は、タルク、カオリン、アルミナ、シリカ、および水酸化アルミニウムのうちの複数の無機成分を含み、この混合物は、18.0%以下のシリカと、17.0%以上の水酸化アルミニウムとを含む。パーセンテージは無機成分の重量%である。上記セメント混合物は焼成により、セラミック材料からなる円形断面形状の密実な棒で測定した場合に、700psi (4.826MPa)を超える、好ましくは900psi (6.206MPa)を超える、さらに好ましくは1000psi (6.895MPa)を超える、さらに好ましくは1200psi (8.274MPa)を超える、実施の形態によっては1500psi (10.343MPa)を超える破壊係数を有するセラミック材料を形成するのが好ましい。上記セメント混合物は、焼成直後の冷却時の800℃において15×10−7/℃未満の、より好ましくは14×10−7/℃未満の、さらに好ましくは13×10−7/℃未満の、さらにもっと好ましくは10×10−7/℃未満の、さらにもっと好ましくは9×10−7/℃未満の、実施の形態によっては8×10−7/℃未満の熱膨張係数を有するセラミック材料を形成するのが好ましい。いくつかの実施の形態においては、上記混合物が、無機成分の重量%において、10.0%と18.0%との間のシリカを含み、別の実施の形態においては、上記混合物が、無機成分の重量%において、11.0%と17.0%との間のシリカを含む。いくつかの実施の形態においては、上記混合物が、無機成分の重量%において、17.0%と25.0%との間の水酸化アルミニウムを含み、別の実施の形態においては、上記混合物が、無機成分の重量%において、18.0%と21.0%との間の水酸化アルミニウムを含む。いくつかの実施の形態においては、上記混合物が、無機成分の重量%において、10.0%と15.0%との間のカオリンを含み、別の実施の形態においては、上記混合物が、無機成分の重量%において、10.0%と14.0%との間のカオリンを含む。いくつかの実施の形態においては、上記混合物が、無機成分の重量%において、20.0%と45.0%との間のタルクを含み、別の実施の形態においては、上記混合物が、無機成分の重量%において、30.0%と45.0%との間のタルクを含む。いくつかの実施の形態においては、上記混合物が、無機成分の重量%において、10.0%と25.0%との間のタアルミナを含み、別の実施の形態においては、上記混合物が、無機成分の重量%において、15.0%と20.0%との間のアルミナを含む。いくつかの実施の形態においては、上記混合物が有機バインダをさらに含み、いくつかの実施の形態においては、上記混合物が、無機成分に加えて5重量%未満の有機バインダを含み、別の実施の形態においては、上記混合物が、無機成分の重量%において2重量%未満の有機バインダを含む。上記混合物がさらに液状ビヒクルを含んでいるのが好ましく、上記混合物がペーストとして施されるのがさらに好ましい。いくつかの実施の形態においては、上記混合物が焼成されたセラミック粒子を含んでいないことが好ましい。
【0017】
別の態様において、ハニカム本体のためのセメント混合物がここに開示され、このセメント混合物は、タルク、カオリン、アルミナ、シリカ、および水酸化アルミニウムのうちの複数の無機成分を含み、この混合物は、無機成分の重量%において、18.0%以下のシリカ、17.0%以上の水酸化アルミニウム、10.0重量%と15.0重量%との間のカオリン、20.0重量%と45.0重量%との間のタルク、および10.0重量%と25.0重量%との間のアルミナを含む。上記セメント混合物は焼成されているうちに、セラミック材料からなる円形断面形状の密実な棒で測定した場合に、700psi (4.826MPa)を超える、好ましくは900psi (6.206MPa)を超える、さらに好ましくは1000psi (6.895MPa)を超える、さらに好ましくは1200psi (8.274MPa)を超える、実施の形態によっては1500psi (10.343MPa)を超える破壊係数を有するセラミック材料を形成するのが好ましい。上記セメント混合物は、焼成直後の冷却時の800℃において15×10−7/℃未満の、より好ましくは14×10−7/℃未満の、さらに好ましくは13×10−7/℃未満の、さらにもっと好ましくは10×10−7/℃未満の、さらにもっと好ましくは9×10−7/℃未満の、実施の形態によっては8×10−7/℃未満の熱膨張係数を有するセラミック材料を形成するのが好ましい。いくつかの実施の形態においては、上記混合物が、無機成分の重量%において、10.0%と18.0%との間のシリカを含み、別の実施の形態においては、上記混合物が、無機成分の重量%において、11.0%と17.0%との間のシリカを含む。いくつかの実施の形態においては、上記混合物が、無機成分の重量%において、17.0%と25.0%との間の水酸化アルミニウムを含み、別の実施の形態においては、上記混合物が、無機成分の重量%において、18.0%と21.0%との間の水酸化アルミニウムを含む。いくつかの実施の形態においては、上記混合物が、無機成分の重量%において、10.0%と14.0%との間のカオリンを含む。いくつかの実施の形態においては、上記混合物が、無機成分の重量%において、30.0%と45.0%との間のタルクを含む。いくつかの実施の形態においては、上記混合物が、無機成分の重量%において、15.0%と20.0%との間のアルミナを含む。いくつかの実施の形態においては、上記混合物が有機バインダをさらに含み、いくつかの実施の形態においては、上記混合物が、無機成分に加えて5重量%未満の有機バインダを含み、別の実施の形態においては、上記混合物が、無機成分の重量%において2重量%未満の有機バインダを含む。上記混合物はさらに液状ビヒクルを含んでいるのが好ましく、上記混合物がペーストとして施されるのがさらに好ましい。いくつかの実施の形態においては、上記混合物が焼成されたセラミック粒子を含んでいないことが好ましい。
【0018】
別の態様において、ハニカム構造体の製造方法がここに開示され、この方法は、ハニカム本体の外表面にセメント混合物を塗布して、セメント混合物からなる外部層をハニカム本体上に形成し、この場合、上記セメント混合物は、タルク、カオリン、アルミナ、シリカ、および水酸化アルミニウムを含む無機成分のうちの複数を含み、記セメント混合物は、無機成分の重量%で、18.0%以下のシリカおよび17.0%以上の水酸化アルミニウムを含み、次いで、上記外部層を備えた上記ハニカム本体を、上記外部層内に第1のセラミック材料を形成させるのに十分な時間および一種または複数種の温度における第1の焼成環境に曝すことを含む。いくつかの実施の形態においては、上記ハニカム本体がセラミック形成成分からなり、これらの実施の形態のうちの或るものは、上記温度に曝すステップ中に、上記ハニカム本体内に第2のセラミック材料が形成される。いくつかの実施の形態においては、上記ハニカム本体はセラミック材料からなる。上記セメント混合物は、焼成されているうちに、セラミック材料からなる円形断面形状の密実な棒で測定した場合に、700psi (4.826MPa)を超える、好ましくは900psi (6.206MPa)を超える、さらに好ましくは1000psi (6.895MPa)を超える、さらに好ましくは1200psi (8.274MPa)を超える、実施の形態によっては1500psi (10.343MPa)を超える破壊係数を有するセラミック材料を形成するのが好ましい。上記セメント混合物は、焼成直後の冷却時の800℃において15×10−7/℃未満の、より好ましくは14×10−7/℃未満の、さらに好ましくは13×10−7/℃未満の、さらにもっと好ましくは10×10−7/℃未満の、さらにもっと好ましくは9×10−7/℃未満の、実施の形態によっては8×10−7/℃未満の熱膨張係数を有するセラミック材料を形成するのが好ましい。上記セメント混合物は、好ましくは1000℃を超える、より好ましくは1200℃を超える、さらに好ましくは1300℃を超える、かついくつかの実施の形態においては1380℃を超える、そして別の実施の形態においては1400℃以上の温度に熱せられる。
【0019】
さらに別の態様において、ハニカム構造体の製造方法がここに開示されており、この方法は、多数のセルを画成する交差する壁からなるハニカム本体を提供し、少なくとも一つのセル中にセメント混合物を挿入し、その場合、上記セメント混合物は、タルク、カオリン、アルミナ、シリカ、および水酸化アルミニウムを含む無機成分のうちの複数を含み、上記混合物は、無機成分の重量%で、18.0%以下のシリカおよび17.0%以上の水酸化アルミニウムを含み、次いで、上記ハニカム本体および上記挿入されたセメント混合物を、上記セメント混合物からなる第1のセラミック材料が生成しかつ少なくとも一つのセルを封止するのに十分な時間および一種または複数種の温度における第1の焼成環境に曝し、これにより、上記少なくとも一つのセルに施栓する。上記セメント混合物は、好ましくは1000℃を超える、より好ましくは1200℃を超える、さらに好ましくは1300℃を超える、かついくつかの実施の形態においては1380℃を超える、そして別の実施の形態においては1400℃以上の温度に熱せられる。いくつかの実施の形態において、上記ハニカム本体はセラミック材料からなる。上記セメント混合物は、焼成されているうちに、セラミック材料からなる円形断面形状の密実な棒で測定した場合に、700psi (4.826MPa)を超える、好ましくは900psi (6.206MPa)を超える、さらに好ましくは1000psi (6.895MPa)を超える、さらに好ましくは1200psi (8.274MPa)を超える、実施の形態によっては1500psi (10.343MPa)を超える破壊係数を有するセラミック材料を形成するのが好ましい。上記セメント混合物は、焼成直後の冷却時の800℃において15×10−7/℃未満の、より好ましくは14×10−7/℃未満の、さらに好ましくは13×10−7/℃未満の、さらにもっと好ましくは10×10−7/℃未満の、さらにもっと好ましくは9×10−7/℃未満の、実施の形態によっては8×10−7/℃未満の熱膨張係数を有するセラミック材料を形成するのが好ましい。
【0020】
さらに別の実施の形態においては、外部層を有するセラミック・ハニカム・マトリクスを備えたハニカム構造体がここに開示され、この場合、上記外部層は、セラミック材料からなる円形断面形状の密実な棒で測定した場合に、700psi (4.826MPa)を超える破壊係数を有し、かつ冷却時の800℃において15×10−7/℃未満の熱膨張係数を有する。
【0021】
別の態様において、多数のセルを画成する多数の壁と、これらのセルの少なくとも一部に配置された栓とを有するセラミック・ハニカム・マトリクスを備えたハニカム構造体がここに開示され、この場合、上記栓は、セラミック材料からなる円形断面形状の密実な棒で測定した場合に、700psi (4.826MPa)を超える破壊係数を有し、かつ冷却時の800℃において15×10−7/℃未満の熱膨張係数を有する。
【実施例】
【0022】
本発明は、下記の実施例によってさらに明らかになるであろう。
【0023】
タルク、クレイ、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、および随意的にコージェライト粉末が、メチルセルロース・バインダ(1重量%)および水(45重量%)と混合されてペーストが生成された。このペーストは未焼成〈生の〉ディーゼルフィルタ・ハニカム・マトリクスに施され、マトリクスと共に約1400℃で焼成され、200℃と300℃との間、および1000℃で温度保持がなされた。表1は、6種類のセメント混合物の配合一覧表である。表2は、上記セメント混合物から形成された対応する焼成済みセラミックの結晶相、焼成収縮率、曲げ強度(psiでの破壊係数として)、熱膨張係数(冷却時の800℃において、単位は×10−7/℃)および耐熱衝撃パラメータの一覧表である。
【0024】
表2は、バッチの無機化合物の比率の調整によって、焼成されたセラミック塗膜の強度が増大されることを示している。セメントまたは封止剤は約1400℃で焼成され、膨脹計による1000℃までのテストが、崩れも粘性流れも生じないことを明らかにしたので、上記セメントの特性は少なくとも1000℃において安定であった。表2の実施例に示されているように、セメントの焼成後に形成されたセラミックの主相はコージェライトであり、副相はスピネル、ムライトおよび/またはサファーリンを含んでいた。
【0025】
例えば、実施例1のセメント混合物から形成された外部〈外皮〉層の剥離強度は、乾燥機でキュアされ、かつ「か焼」された従来の塗膜の剥離強度の約2倍を上回るほど高く、場合によっては約10倍も高いことが判明している。
【表1】

【表2】

【0026】
したがって、本明細書に開示されているセメント混合物および方法は、別個のキュアリング・ステップ(セラミック・ハニカム上に施すことを要する例えば外皮または栓、したがって、外皮または栓のために別個のキュアリング・ステップが必要になる)を除外するために役立ち、外皮または栓の材料に添加されるコージェライト粉末等のセラミック粉末の必要性を低減するのに役立ち、したがって、従来の乾燥機でキュアされたおよび再焼成された塗膜に比較して原材料のコストを低減するのに役立つことができる。ここに開示されているセメント混合物は、ハニカム本体に施された場合に、機械的〈曲げ〉強度を高め、結合性および接着性を高め、触媒付け時および最終使用時の特性の一貫性を改善し、かつ高温に置ける信頼性の向上に資することができる。
【0027】
本発明の精神および範囲から離れることなしに、種々の変形および変更が可能なことは、当業者には明らかであろう。したがって本発明は、添付の請求項およびそれらの均等物の範囲内で行なわれた本発明の変形および変更をカバーすることを意図するものである。
【符号の説明】
【0028】
10 ハニカム構造体
12 ハニカム本体
14 多孔質の壁
15 外皮
18 ハニカム構造体の第1端面
20 ハニカム構造体の第2端面
22 セルチャンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム本体のためのセメント混合物であって、
タルク、カオリン、アルミナ、シリカ、および水酸化アルミニウムを含む無機成分のうちの複数を含み、無機成分の重量%で、18.0%以下のシリカおよび17.0%以上の水酸化アルミニウムを含むことを特徴とするセメント混合物。
【請求項2】
前記混合物は、焼成されたセラミック粒子を含んでいないことを特徴とする請求項1記載のセメント混合物。
【請求項3】
ハニカム本体のためのセメント混合物であって、
タルク、カオリン、アルミナ、シリカ、および水酸化アルミニウムを含む無機成分のうちの複数を含み、無機成分の重量%で、18.0%以下のシリカ、17.0%以上の水酸化アルミニウム、10.0%と15.0%との間のカオリン、20.0%と45.0%との間のタルク、および10.0%と25.0%との間のアルミナを含むことを特徴とするセメント混合物。
【請求項4】
ハニカム構造体の製造方法であって、
ハニカム本体の外表面上にセメント混合物を塗布して、該ハニカム本体上に前記セメント混合物からなる外部層を形成するステップであって、前記セメント混合物は、タルク、カオリン、アルミナ、シリカ、および水酸化アルミニウムを含む無機成分のうちの複数を含み、前記セメント混合物は、無機成分の重量%で、18.0%以下のシリカおよび17.0%以上の水酸化アルミニウムを含むものであるステップ、次いで、
前記外部層を備えた前記ハニカム本体を、前記外部層内に第1のセラミック材料を形成させるのに十分な時間および一種または複数種の温度における第1の焼成環境に曝すステップを含むことを特徴とする、ハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
ハニカム構造体の製造方法であって、
多数のセルを画成する交差する壁を備えたハニカム本体を提供するステップ、
少なくとも一つのセル中にセメント混合物を挿入するステップであって、前記セメント混合物は、タルク、カオリン、アルミナ、シリカ、および水酸化アルミニウムを含む無機成分のうちの複数を含み、前記セメント混合物は、無機成分の重量%で、18.0%以下のシリカおよび17.0%以上の水酸化アルミニウムを含むものであるステップ、次いで、
前記ハニカム本体および前記挿入されたセメント混合物を、前記セメント混合物からなる第1のセラミック材料が生成しかつ少なくとも一つのセルを封止するのに十分な時間および一種または複数種の温度における第1の焼成環境に曝し、これにより、前記少なくとも一つのセルに施栓するステップを含むことを特徴とする、ハニカム構造体の製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−502097(P2011−502097A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532031(P2010−532031)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/012193
【国際公開番号】WO2009/058246
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】