説明

低用量および用量漸増を用いた、肥満の治療方法

【課題】肥満もしくは関連する摂食障害に罹患している対象を治療し、かつ/または摂食量を減少させる方法を提供すること。
【解決手段】肥満または障害を改善するのに有効であるが、MTP阻害剤の投与に付随する副作用を低減するのに十分な程度少ない初回量のMTP阻害剤を対象に投与するステップを含み、少なくとも1回段階的に漸増させた投薬量のMTP阻害剤を場合により投与し、かつ、続いて、体重維持/管理または再教育段階を場合により実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、低用量のMTP阻害剤、場合によりそれに続く用量漸増および場合によりそれに続く体重維持/管理もしくは再教育段階を用いて、肥満もしくは関連する摂食障害に対する治療、ならびに/または摂食量を減少させる治療に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満は、有病率が高まっており、かつ健康リスクを伴うため、社会の主要な健康問題である。さらに、肥満は、可動性の制限および身体的持久力の低下を通して、かつ社会的差別、学術的差別、および職業差別を通して、人間または動物のクオリティオブライフに影響を及ぼし得る。
【0003】
ミクロソームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)および/またはApoB分泌の阻害剤は、哺乳動物において食物摂食を減少させる際(欧州特許出願公開第1099438(A2)号)、腸の脂肪吸収を減少させる際(欧州特許出願公開第1099439(A2)号)、ならびに肥満および関連疾患の治療に有用である。例えば、PCT特許出願公開WO03/002533、WO2005/046644、およびWO2005/080373、ならびにUS6066653を参照されたい。
【0004】
しかし、MTPの阻害剤の使用は肝毒性などの副作用を引き起こし得ることが、WO2005/087234において報告されている。
【0005】
本発明者らは、MTP阻害剤ジルロタピド(dirlotapide)(WO03/002533において開示されている)が、従来の治療計画に従って投与された場合に嘔吐を引き起こし得ることも発見した。
【0006】
8週間の連続的な期間、apoB分泌/MTP阻害剤を投与すると、最初は体重が減少するが、3週間後には横ばい状態になることが、WO2005/097131において報告されている。apoB分泌/MTP阻害剤を持続的に投与しても、それ以上の体重の減少は起こらなかった。WO2005/097131では、間欠的な投薬計画により、体重減少が横ばいになる問題を克服できることを報告している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、効果的であるが、公知の治療法に付随する副作用を伴わない、肥満もしくは関連した摂食障害を治療し、かつ/または摂食量を減少させるための方法を開発することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、肥満もしくは関連する摂食障害に罹患している対象を治療し、かつ/または摂食量を減少させる方法であって、肥満または障害を改善するのに有効であるが、MTP阻害剤の投与に付随する副作用を低減するのに十分な程度少ない初回量のMTP阻害剤をその対象に投与することを含み、場合により、少なくとも1回段階的に漸増させた投薬量のMTP阻害剤の投与が続く方法を提供する。
【0009】
本発明はまた、肥満もしくは関連する摂食障害に罹患している対象を治療し、かつ/または摂食量を減少させる方法であって、肥満または障害を改善するのに有効であるが、MTP阻害剤の投与に付随する副作用を低減するのに十分な程度少ない初回量のMTP阻害剤をその対象に投与することを含み、場合により、少なくとも1回段階的に漸増させた投薬量のMTP阻害剤の投与が続き、および、場合により、体重維持/管理または再教育段階が続く方法も提供する。
【0010】
本発明はまた、肥満もしくは関連する摂食障害に罹患している対象を治療し、かつ/または摂食量を減少させるための医薬品の製造におけるMTP阻害剤の使用であって、MTP阻害剤の初回量が、肥満または関連する障害を改善するのに有効であるが、MTP阻害剤の投与に付随する副作用を低減するのに十分な程度少なく、場合により、少なくとも1回段階的に漸増させた投薬量のMTP阻害剤の投与が続き、および、場合により、体重維持/管理または再教育段階が続く使用も提供する。
【0011】
本発明はまた、肥満もしくは関連する摂食障害に罹患している対象を治療し、かつ/または摂食量を減少させる方法であって、初回の低用量のMTP阻害剤をその対象に投与することを含み、少なくとも1回段階的に漸増させた投薬量のMTP阻害剤の投与が続き、ここで前記初回の低用量は、肥満または障害を改善するのに有効であるが、従来の用量のMTP阻害剤の投与に付随する副作用を低減するのに十分な程度少なく、かつ前記初回の低用量は、前記漸増投薬量のMTP阻害剤の投与に付随する副作用を低減するものであり、および、場合により、体重維持/管理または再教育段階が続く方法も提供する。
【0012】
本発明はまた、肥満もしくは関連する摂食障害に罹患している対象における体重減少の速度を速める方法であって、肥満または障害を改善するのに有効であるが、MTP阻害剤の投与に付随する副作用を低減するのに十分な程度少ない初回量のMTP阻害剤をその対象に投与することを含み、場合により、少なくとも1回段階的に漸増させた投薬量のMTP阻害剤の投与が続き、および、場合により、体重維持/管理または再教育段階が続く方法も提供する。
【0013】
本発明はさらに、MTPの阻害を必要とする対象においてMTPを阻害するための方法であって、MTPを阻害するのに有効であるが、MTP阻害剤の投与に付随する副作用を低減するのに十分な程度少ない量のMTP阻害剤をその対象に投与することを含み、場合により、少なくとも1回段階的に漸増させた投薬量のMTP阻害剤の投与が続き、および、場合により、体重維持/管理または再教育段階が続く方法も提供する。
【0014】
本発明はまた、肥満もしくは関連する摂食障害に罹患している対象を治療し、かつ/または摂食量を減少させる方法であって、MTP阻害剤の投与に付随する嘔吐が軽減される用量のMTP阻害剤をその対象に投与することを含み、場合により、少なくとも1回段階的に漸増させた投薬量のMTP阻害剤の投与が続き、および、場合により、体重維持/管理または再教育段階が続く方法も提供する。
【0015】
本発明はさらに、肥満もしくは関連する摂食障害に罹患している対象を治療し、かつ/または摂食量を減少させる方法、あるいはMTPの阻害を必要とする対象においてMTPを阻害するための方法であって、肥満もしくは障害を改善するのに有効であるか、またはMTPを阻害するのに有効であるが、MTP阻害剤の投与に付随する副作用を低減するのに十分な程度少ない量のMTP阻害剤をその対象に投与することを含み、ここで前記投与は、別の抗肥満剤など少なくとも1種の追加の薬学的物質と組み合わせ、場合により、少なくとも1回段階的に漸増させた投薬量のMTP阻害剤の投与が続き、および、場合により、体重維持/管理または再教育段階が続く方法も提供する。
【0016】
また、対象の体重管理の方法であって、MTP阻害剤の投与に付随する副作用を低減するのに十分な程度少ない、体重を管理するのに有効な量のMTP阻害剤をその対象に投与することを含み、場合により、少なくとも1回段階的に漸増させた投薬量のMTP阻害剤の投与が続き、および、場合により、体重維持/管理または再教育段階が続く方法も提供される。MTP阻害剤は、単独で、または少なくとも1種の追加の薬学的物質、好ましくは抗肥満剤と組み合わせて使用することができる。
【0017】
本発明はまた、肥満もしくは関連する摂食障害に罹患している対象を治療し、かつ/または摂食量を減少させる方法であって、0.025〜0.30mg/kg/日の範囲の初回量のMTP阻害剤をその対象に投与することを含み、場合により、少なくとも1回段階的に漸増させた投薬量のMTP阻害剤の投与が続き、および、場合により、体重維持/管理または再教育段階が続く方法も提供する。
【0018】
本発明の別の態様は、肥満もしくは関連する摂食障害の治療もしくは予防において、かつ/または摂食量を減少させる際に、あるいはMTPの阻害を必要とする対象においてMTPを阻害するために、消費者が使用するための薬学的キットに関する。このキットは、(a)MTP阻害剤を含む少なくとも2セットの薬学的投薬単位、および(b)その剤形を用いて、肥満もしくは関連する摂食障害を治療もしくは予防し、かつ/または摂食量を減少させるか、あるいはMTPの阻害を必要とする対象においてMTPを阻害するための方法を説明する取扱い説明書を含む。
【0019】
本発明の別の実施形態は、(a)MTP阻害剤を含む少なくとも2セットの薬学的投薬単位を含む第1の医薬組成物、(b)肥満もしくは関連する摂食障害の治療もしくは予防のため、および/または摂食量を減少させるため、あるいはMTPの阻害を必要とする対象においてMTPを阻害するために有用な第2の化合物を含む第2の医薬組成物、ならびに(c)第1の組成物および第2の組成物を含むための容器を含む、薬学的キットに関する。
【0020】
いくつかの実施形態では、MTP阻害剤は、ジルロタピド((S)−N−{2−[ベンジル(メチル)アミノ]−2−オキソ−1−フェニルエチル}−1−メチル−5−[4’−トリフルオロメチル)[1,1’−ビフェニル]−2−カルボキサミド]−1H−インドール−2−カルボキサミド)である。
【0021】
定義
肥満および過体重は、一般に、ヒトのボディマス指数(BMI)によって定義され、この指数は総体脂肪量と相関関係があり、かつ、ある種の疾患のリスクの指標として役立つ。BMIは、体重(キログラム)を身長(平方メートル)で割って算出される(kg/m)。過体重は、BMIが25〜29.9kg/mと典型的には定義され、肥満は、BMIが30kg/m以上と典型的には定義される。イヌおよびネコの肥満は、通常、ボディコンディションスコア(BCS)によって定義される。9ポイントスケール(Purina)において、肥満は8ポイント以上であり、過体重は6ポイント以上であり、または、5ポイントスケール(Hill’s)において、肥満は5ポイント以上であり、過体重は4ポイント以上である。9ポイントのPurinaスケールは、Laflamme、DP.Body Condition Scoring and Weight Maintenance.Proc.N.Am.Vet.Conf.1月16日〜21日、1993年、オーランド、フロリダ州、290〜291頁、およびLaflamme DP、Kealy RD.Schmidt、DA.Estimation of Body Fat by Body Composition Score.J.Vet.Int.Med.1994.8巻、154頁においてさらに考察されている。
【0022】
上記および下記に含まれる肥満の治療に関する言及は、過体重の対象の治療も含むとみなされるべきである。
【0023】
「薬学的に許容できる」という語句は、その物質または組成物が、製剤を構成する他の成分および/またはそれで治療される哺乳動物と、化学的に、かつ/または毒物学的に適合しなければならないことを示す。
【0024】
「治療有効量」という語句は、(i)特定の疾患、状態、もしくは障害を治療もしくは予防するか、(ii)特定の疾患、状態、もしくは障害の1種もしくは複数種の症状を弱めるか、改善するか、もしくは無くすか、または(iii)本明細書において説明する特定の疾患、状態、もしくは障害の1種もしくは複数種の症状の発現を防ぐか、もしくは遅らせる(例えば、食物摂取もしくは摂食に対する欲求を低減させる)、化合物の量を意味する。
【0025】
「対象」または「動物」という用語は、ヒト、ならびに、哺乳動物(例えば、伴侶動物、動物園の動物、および食料源の動物)およびトリを含めて、恒常性機序を有する動物界の他の温血メンバーすべてを意味する。伴侶動物のいくつかの例は、イヌ科種(例えばイヌ)、ネコ科種(例えばネコ)、およびウマ科種(例えばウマ)すべてであり、食料源動物のいくつかの例は、ブタ、雌ウシ、ヒツジ、家禽などである。好ましくは、動物は哺乳動物である。好ましくは、哺乳動物は、ヒト、伴侶動物、または食料源動物である。より好ましくは、動物は、ヒトであるか、またはイヌ科動物もしくはネコ科動物(例えば、ネコもしくはイヌ)である。例えば、動物はイヌ科動物(例えばイヌ)である。
【0026】
「治療すること(treating)」、「治療する(treat)」、または「治療(treatment)」という用語は、予防的治療、すなわち予防(prophylactic)治療、および姑息的治療の双方を包含する。
【0027】
本発明の実施に際して、MTP阻害剤は、好ましくは、腸で作用するMTP阻害剤であり、かつこれらは、好ましくは、腸に選択的である。本発明において、「選択性」という用語は、ある化合物の第1のアッセイ法における効果が、同じ化合物の第2のアッセイ法における効果と比べてより大きいことを意味する。本発明の上記の実施形態において、第1のアッセイ法は、その化合物が腸の脂肪吸収を阻害する能力に関し、第2のアッセイ法は、その化合物が血清トリグリセリドを減少させる能力に関する。好ましい実施形態では、化合物が腸の脂肪吸収を阻害する能力が、腸脂肪吸収アッセイ法におけるその化合物のED25によって測定され、その結果、その化合物の効果が大きいほど、より低い絶対(数)値のED25が観察される。他の好ましい実施形態では、化合物が血清トリグリセリドを減少させる能力が、血清トリグリセリドアッセイ法におけるその化合物のED25によって測定される。この場合もやはり、血清トリグリセリド減少アッセイ法における化合物の効果が大きいほど、より低い絶対(数)値のED25が観察される。腸の脂肪吸収を阻害する際の化合物の有効性を測定することができるか、または血清トリグリセリドを減少させる際の化合物の有効性を測定することができる任意のアッセイ法が、本発明に含まれることを理解すべきである。適切なアッセイ法の例は、PCT公開WO03/002533に記載されている。
【0028】
腸選択性は、腸管中での阻害剤の溶解性および/もしくは剤形からの阻害剤の放出を制御することによって、または消化管中の脂質(脂肪)を増加させること、すなわち食物と共に投与し、かつ食物中の食餌性脂肪を増加させることによって、実現することができる。腸選択性を高めるための別の方法は、MTP阻害剤の不活性型への急速な代謝とすることができ、これは理論的には肝臓への暴露を減少させると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
出願者らは、従来の治療計画によるMTP阻害剤の投与に付随する副作用の有意な減少が、初回に低用量のMTP阻害剤を投与し、続いて、漸増用量を場合により投与することによって実現できることを発見した。出願者らは、特にジルロタピドの場合に、初回用量の減少が、抗肥満剤としてのMTP阻害剤の総合的有効性に対する影響をほとんど有さないか、またはまったく有さず、かつ耐性プロファイルを改善させることを発見した。初回に低用量を使用し、続いて、さらなる漸増用量を場合によるが好ましくは投与すると、嘔吐、下痢、嗜眠(lethargy)、および食欲低下/食欲不振の発生率および重症度が低下し、かつ許容範囲になり、また、治療を中断する患者の数が減少し、すなわち患者のコンプライアンスが向上する。出願者らは、初回に低用量を使用し、続いて、さらなる漸増用量を投与すると、抗肥満剤としてのMTP阻害剤の最適な有効性がもたらされることも発見した。
【0030】
ヒトにおける体重減少の多くの研究の結果と同様に、減量プログラムの完了時に食餌性のエネルギー摂取量に対する制限を解除した後、イヌの体重が回復することも一般に観察された。食餌制限に依存した減量研究において、体重を回復する傾向は、食物体積の管理を通じて、かつ個々のイヌの維持要求量に合致させ、それによって体重を安定させるようにカロリー摂取量を調整することによって、回避するか、または最小限に抑えることができる。飼主が、本発明による体重減少段階の後にどれだけ多くの量を彼らのイヌに給餌するかを「学習する」ため、薬物を中断する前に体重を安定させて、体重減少段階の最後に達成された減量を維持するように、用量を減少させたMTP阻害剤を用いた処置期間を設計した。出願者らは、このような体重維持/管理または再訓練段階を組み込むことが著しく好結果であることを発見した。したがって、体重維持/管理または再訓練段階を組み込むことが好ましい。
【0031】
本発明において使用するためのMTP阻害剤は、当技術分野において公知である。適切なMTP阻害剤としては、米国特許第4453913号、同第4473425号、同第4491589号、同第4540458号、同第4962115号、同第5057525号、同第5137896号、同第5286647号、同第5521186号、同第5595872号、同第5646162号、同第5684014号、同第5693650号、同第5712279号、同第5714494号、同第5721279号、同第5739135号、同第5747505号、同第5750783号、同第5760246号、同第5789197号、同第5811429号、同第5827875号、同第5837733号、同第5849751号、同第5883099号、同第5883109号、同第5885983号、同第5892114号、同第5919795号、同第5922718号、同第5925646号、同第5929075号、同第5929091号、同第5935984号、同第5952498号、同第5962440号、同第5965577号、同第5968950号、同第5998623号、同第6025378号、同第6034098号、同第6034115号、同第6051229号、同第6051387号、同第6051693号、同第6057339号、同第6066650号、同第6066653号、同第6114341号、同第6121283号、同第6191157号、同第6194424号、同第6197798号、同第6197972号、同第6200971号、同第6235730号、同第6235770号、同第6245775号、同第6255330号、同第6265431号、同第6281228号、同第6288234号、同第6329360号、同第6342245号、同第6369075号、同第6417362号、同第6451802号、同第6479503号、同第6492365号、同第6583144号、同第6617325号、同第6713489号、同第6720351号、同第6774236号、同第6777414号、および同第6878724号、
米国特許出願公開第2002/028940号、同第2002/032238号、同第2002/055635号、同第2002/132806号、同第2002/147209号、同第2003/149073号、同第2003/073836号、同第2003/105093号、同第2003/114442号、同第2003/0162788号、同第2003/166590号、同第2003/166637号、同第2003/181714号、同第2004/009988号、同第2004/014971号、同第2004/024215号、同第2004/034028号、同第2004/044008号、同第2004/058903号、同第2004/102490号、同第2004/157866号、および同第2005/234099号、
PCT特許公報WO96/262205、WO98/016526、WO98/031366、WO99/55313、WO00/005201、WO01/000183、WO01/000184、WO01/000189、WO01/005767、WO01/012601、WO01/014355、WO01/021604、WO01/053260、WO01/074817、WO01/077077、WO02/014276、WO02/014277、WO02/081460、WO02/083658、WO04/017969、およびWO05/080373、ならびに
日本特許公報JP2002−212179(14212179)およびJP2002−220345(14220345)において開示されている化合物が挙げられる。
【0032】
apo−B/MTP阻害剤の総説については、Williams,S.J.およびJ.D.Best、Expert Opin Ther Patents、13巻(4号)、479〜488頁(2003年)を参照されたい。活性なMTP阻害剤を同定するのに使用され得る方法については、例えば、Chang,G.ら、「Microsomal triglyceride transfer protein(MTP)inhibitors: Discovery of clinically active inhibitors using high−throughput screening and parallel synthesis paradigms」、Current Opinion in Drug Discovery & Development、5巻(4号)、562〜570頁(2002年)を参照されたい。上記の特許、特許出願、および参考文献はすべて、参照により本明細書に組み入れられる。
【0033】
本発明において使用するための、腸で作用する好ましいMTP阻害剤としては、米国特許第6720351号において記載されている方法を用いてどちらも調製することができる、ジルロタピド((S)−N−{2−[ベンジル(メチル)アミノ]−2−オキソ−1−フェニルエチル}−1−メチル−5−[4’−トリフルオロメチル)[1,1’−ビフェニル]−2−カルボキサミド]−1H−インドール−2−カルボキサミド)および1−メチル−5−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−1H−インドール−2−カルボン酸(カルバモイル−フェニル−メチル)−アミド;米国特許出願公開第2005/0234099号において記載されているようにしていずれも調製することができる、(S)−2−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸(ペンチルカルバモイル−フェニル−メチル)−アミド、(S)−2−[(4’−tert−ブチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸{[(4−フルオロ−ベンジル)−メチル−カルバモイル]−フェニル−メチル}−アミド、(S)−2−[(4’−tert−ブチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸[(4−フルオロ−ベンジルカルバモイル)−フェニル−メチル]−アミド、および(S)−2−[(4’−イソプロポキシ−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸{[(4−フルオロ−ベンジル)−メチル−カルバモイル]−フェニル−メチル}−アミド;米国特許第5521186号および同第5929075号に記載されているようにして調製することができる、(−)−4−[4−[4−[4−[[(2S,4R)−2−(4−クロロフェニル)−2−[[(4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)スルファニル]メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル]メトキシ]フェニル]ピペラジン−1−イル]フェニル]−2−(1R)−1−メチルプロピル]−2,4−ジヒドロ−3H−1,2,4−トリアゾール−3−オン(ミトラタピド(Mitratapide)またはR103757としても公知である);米国特許第6265431号に記載されているようにして調製することができる、インプリタピド(BAY 13−9952);ならびに以下の構造
【0034】
【化1】

を有し、かつ米国特許第6878724号に記載されているようにして調製することができるR256918が挙げられる。最も好ましいのは、ジルロタピド、ミトラタピド、(S)−2−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸(ペンチルカルバモイル−フェニル−メチル)−アミド、(S)−2−[(4’−tert−ブチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸{[(4−フルオロ−ベンジル)−メチル−カルバモイル]−フェニル−メチル}−アミド、(S)−2−[(4’−tert−ブチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸[(4−フルオロ−ベンジルカルバモイル)−フェニル−メチル]−アミド、(S)−2−[(4’−イソプロポキシ−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸{[(4−フルオロ−ベンジル)−メチル−カルバモイル]−フェニル−メチル}−アミド、またはR256918である。
【0035】
好ましい実施形態では、本発明の方法において使用するためのMTP阻害剤は、化合物ジルロタピドである。
【0036】
いくつかの実施形態では、これらの方法は、少なくとも1種の追加の薬学的物質の投与をさらに含む。適切な追加の薬学的物質としては、カンナビノイド−1(CB−1)アンタゴニスト(リモナバントなど)、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ−1(11β−HSD1型)阻害剤、ペプチドYY(PYY)およびPYYアゴニスト(PYY3−36またはその類似体もしくは誘導体など)、MCR−4アゴニスト、コレシストキニン−A(CCK−A)アゴニスト、モノアミン再取込み阻害剤(シブトラミンなど)、交感神経様作動薬、βアドレナリン作動性受容体アゴニスト、ドーパミン受容体アゴニスト(ブロモクリプチンなど)、メラニン細胞刺激ホルモン受容体類似体、5HT2c受容体アゴニスト、メラニン濃縮ホルモンアンタゴニスト、レプチン(OBタンパク質)、レプチン類似体、レプチン受容体アゴニスト、ガラニンアンタゴニスト、リパーゼ阻害剤(テトラヒドロリプスタチン、すなわちオルリスタットなど)、食欲抑制物質(ボンベシンアゴニストなど)、神経ペプチドY受容体アンタゴニスト(例えば、NPY Y5受容体アンタゴニスト)、サイロミメティック物質、デヒドロエピアンドロステロンまたはその類似体、糖質コルチコイド受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、オレキシン受容体アンタゴニスト、グルカゴン様ペプチド−1受容体アゴニスト、毛様体神経栄養因子(Regeneron Pharmaceuticals,Inc.、タリータウン、ニューヨーク州およびProcter & Gamble Company、シンシナティ、オハイオ州から入手可能なAxokine(商標)など)、ヒトアグーチ関連タンパク質(AGRP)阻害剤、グレリン受容体アンタゴニスト、ヒスタミン3受容体アンタゴニストまたはインバースアゴニスト、ニューロメディンU受容体アゴニストなど他の抗肥満剤が挙げられる。
【0037】
他の適切な薬学的物質としては、HMG CoA還元酵素阻害剤、コレステロール吸収阻害剤、エゼチミド(ezetimide)、スクアレン合成酵素阻害剤、フィブラート、胆汁酸吸着剤、スタチン、プロブコールおよび誘導体、ナイアシン、ナイアシン誘導体、PPARαアゴニスト、PPARγアゴニスト、チアゾリジンジオン、ならびにコレステロールエステル転送タンパク質(CETP)阻害剤を含む、脂質修飾化合物が挙げられる。
【0038】
他の適切な追加の薬学的物質としては、LDL−コレステロール低下剤、トリグリセリド低下剤、HMG−CoA還元酵素阻害剤、HMG−CoA合成酵素阻害剤、HMG−CoA還元酵素遺伝子発現の阻害剤、スクアレン合成酵素阻害剤、スクアリン(squaline)エポキシダーゼ阻害剤、スクアリンシクラーゼ阻害剤、スクアリンのエポキシダーゼ/シクラーゼ阻害剤の組合せ、コレステロール合成阻害剤、Zetia(商標)(エゼチミブ)などのコレステロール吸収阻害剤、CETP阻害剤、PPAR調節物質、またはフィブラート、イオン交換樹脂、抗酸化剤、ACAT阻害剤、もしくは胆汁酸吸着剤などの他のコレステロール低下剤が挙げられる。本発明の組合せ態様の実施に際して有用な他の薬学的物質としては、胆汁酸再吸収阻害剤、回腸胆汁酸輸送体阻害剤、ACC阻害剤、血圧降下薬(Norvasc(登録商標)など)、利尿剤、ニンニクエキス製剤、胆汁酸吸着剤、抗生物質、抗糖尿病薬、およびアスピリンなどの抗炎症剤、または好ましくは、セレコキシブ(米国特許第5466823号)、バルデコキシブ(米国特許第5633272号、パレコキシブ(米国特許第5932598号)、デラコキシブ(CAS RN 169590−41−4)、ロフェコキシブ(CAS RN 162011−90−7)、エトリコキシブ(CAS RN 202409−33−4)、ルミラコキシブ(CAS RN 220991−20−8)、もしくはカルプロフェン(CAS RN 53716−49−7)など、シクロオキシゲナーゼ−1(Cox−1)を阻害するよりも強くシクロオキシゲナーゼ−2(Cox−2)を阻害する抗炎症剤が挙げられる。
【0039】
他の適切な追加の薬学的物質としては、血漿コレステロールレベルを低下させる役割を果たす、天然の物質が挙げられる。これらの天然の材料は一般に機能性食物と呼ばれ、例えば、ニンニクエキス、フーディア(Hoodia)植物エキス、およびナイアシンが挙げられる。
【0040】
追加の薬学的物質の投薬量は、一般に、治療される対象の健康状態、所望の治療の程度、もしあれば、併用療法の性質および種類、ならびに治療頻度および所望の効果の性質を含めて、いくつかの因子に依存する。一般に、追加の薬学的物質の投薬量範囲は、個体の体重1キログラム当たり1日当たり約0.001mg〜約100mg、好ましくは個体の体重1キログラム当たり1日当たり約0.1mg〜約10mgの範囲にある。しかし、治療される対象の年齢および体重、意図される投与経路、投与される個々の抗肥満剤などに応じて、一般的な投薬量範囲にいくらかの変動が必要とされる場合もある。個々の患者に対する投薬量範囲および最適な投薬量の決定もまた、本発明の開示の利益を受ける当業者の能力の十分に範囲内である。
【0041】
いくつかの実施形態では、MTP阻害剤は、漸増投薬量で投与する。いくつかの実施形態では、漸増投薬量は、少なくとも初回の第1の用量レベルおよび第2の用量レベルを含む。いくつかの実施形態では、漸増投薬量は、少なくとも第1の用量レベル、第2の用量レベル、および第3の用量レベルを含む。いくつかの実施形態では、漸増投薬量は、第4の用量レベルをさらに含む。いくつかの実施形態では、漸増投薬量は、少なくとも第1の用量レベル、第2の用量レベル、第3の用量レベル、第4の用量レベル、および第5の用量レベルを含む。いくつかの実施形態では、第6の用量レベルおよびそれ以上の用量レベルが企図される。
【0042】
元の用量レベルから10%、20%、25%、50%、100%、または300%増加させて、次の用量レベルを作り出してよい。元の用量レベルから100%増加させる場合、次の用量レベルは元の用量レベルの2倍である。元の用量レベルから300%増加させる場合、次の用量レベルは元の用量レベルの4倍である。いくつかの実施形態では、元の用量レベルから25%、50%または100%増加させる。好ましくは、元の用量レベルから、50%または100%、例えば100%、増加させる。
【0043】
好ましくは、第1の用量レベルは、0.025〜0.30mg/kg/日の範囲、例えば、約0.05mg/kg/日または0.10mg/kg/日、好ましくは約0.05mg/kg/日など0.025〜0.10mg/kg/日の範囲である。
【0044】
好ましくは、第2の用量レベルは、第1の用量レベルより100%多く、例えば、0.05〜0.6mg/kg/日の範囲であるか、または例えば、約0.10mg/kg/日もしくは0.2mg/kg/日、好ましくは約0.10mg/kg/日など0.05〜0.2mg/kg/日の範囲である。
【0045】
好ましくは、第3の用量レベルは、第2の用量レベルより100%多く、例えば、0.10〜1.2mg/kg/日の範囲であるか、または例えば、0.10〜0.4mg/kg/日の範囲、例えば、約0.2mg/kg/日もしくは0.4mg/kg/日、好ましくは約0.2mg/kg/日である。
【0046】
好ましくは、第4の用量レベルは、第3の用量レベルより50%多く、例えば、0.15〜0.9mg/kg/日の範囲であるか、または例えば、0.15〜0.6mg/kg/日の範囲、例えば、約0.3mg/kg/日もしくは0.6mg/kg/日、好ましくは約0.3mg/kg/日である。
【0047】
好ましくは、第4の用量レベルから、その後50%増加させて、第5、第6、およびそれに続く用量レベルを作り出す。
【0048】
MTP阻害剤がジルロタピドである場合、好ましくは、第1の用量レベルは、0.025〜0.10mg/kg/日の範囲、例えば約0.05mg/kg/日または0.10mg/kg/日、好ましくは約0.05mg/kg/日である。好ましくは、第2の用量レベルは第1の用量レベルより100%多く、例えば、0.05〜0.2mg/kg/日の範囲、例えば約0.10mg/kg/日または0.2mg/kg/日、好ましくは約0.10mg/kg/日である。好ましくは、第3の用量レベルは第2の用量レベルより100%多く、例えば、0.10〜0.4mg/kg/日の範囲、例えば約0.2mg/kg/日または0.4mg/kg/日、好ましくは約0.2mg/kg/日である。好ましくは、第4の用量レベルは第3の用量レベルより50%多く、例えば、0.15〜0.6mg/kg/日の範囲、例えば約0.3mg/kg/日または0.6mg/kg/日、好ましくは約0.3mg/kg/日である。好ましくは、第4の用量レベルから、その後50%増加させて、第5、第6、およびそれに続く用量レベルを作り出す。いくつかの実施形態では、各用量レベルは、対象に約1〜4週間投与され、例えば、これらの用量レベルは、1週間後、2週間後、または毎月、増加させてよい。例えば、第1の用量レベル、例えば、0.05mg/kg/日を約14日間投与してよく、次いで第2の用量レベル、例えば0.01mg/kg/日を約14日間投与してよく、次いで第3の用量レベル、例えば0.2mg/kg/日を約1カ月間投与してよく、その後の用量は、例えば1カ月間隔で増加させてよい。
【0049】
例えば、MTP阻害剤がジルロタピドであり、かつ対象がイヌである場合、初回用量は0.05mg/kg/日でよい。2週間の治療後、初回用量を2倍して、2週間、0.10mg/kg/日にしてよい。この初期の4週間の治療に続いて、イヌの体重を毎月計量してよく、かつ、以下のガイドラインに従って用量調整を毎月実施してよい。各月の治療の最後に、体重減少率を決定する。その前の毎月の計量からの体重減少が、1カ月当たりで体重の3%(1日当たりで体重の0.1%に相当する)より多いか、またはそれに等しかった場合、用量は同じで維持してよい。その前の毎月の計量からの体重減少が、1カ月当たりで体重の3%より少なかった場合、用量は、イヌのその時点の体重に対して調整せずに、増加させてよい。条件的な増加が最初に必要とされる際、用量は100%増加させてよい(2倍にしてよい)。その後の必要とされる条件的増加においては、用量は、50%から製品1mg/1kg(その時点の体重)の最大用量まで増加させてよい。これらの調整は、治療の開始時に目標とした体重に達するまで、継続してよい。
【0050】
その前の月の計量からの体重減少が、1カ月当たりで12%以上であった場合、用量を25%減少させてよい。
【0051】
体重減少治療の6カ月後に平均で約18〜20%の体重減少を予想することができる。
【0052】
初期の「体重減少」段階は、数カ月、例えば約4カ月間(すなわち約16週間)〜6カ月間、もしくは例えば約112日間〜196日間続いてよいか、または目標の体重減少が実現されるまで続いてよいか、または特定のボディコンディションスコア(BCS)に到達するまで、例えばBCSが5に到達するまで、続いてよい。
【0053】
体重維持/管理または再教育段階は、数カ月間、例えば約3カ月間(すなわち約12週間)、または例えば84日間、続いてよい。再教育段階の間、患者の体重が体重維持/管理再教育段階の開始時から、それぞれ過剰に(例えば5%超)減少または増加している場合には、用量を例えば50%減少させてもよく、または例えば100%増加させてもよい。
【0054】
上述したように、所望の体重に達したときに、体重維持/管理または再教育段階を開始することができる。体重維持/管理または再教育段階の間、必要とされる食物摂取および身体活動の最低なレベルが確立されるべきである。所望の体重で体重を安定させるために必要とされる食物摂取および身体活動が確立されるまで、MTP阻害剤の投与は、体重維持/管理または再教育段階の間、継続されるべきである。
【0055】
例えば、MTP阻害剤がジルロタピドであり、かつ対象がイヌである場合、体重維持/管理または再教育段階の間の用量調整は、以下の通りでよい:
第1の用量調整
イヌが体重減少段階の最終月に1週間当たり1%より多いか、またはそれに等しい体重を失っていた場合、用量を50%減少させるべきである。
イヌが0%〜1%を失っていた場合、用量は引き続き同じにすべきである。
イヌの体重が増加していた場合、用量を50%増加させるべきである。
その後の用量調整
その後の数カ月間、一定の体重を維持するために、用量を25%増加または減少させるべきである。
イヌの体重が、体重減少段階の最後の時点で−5%〜+5%の範囲内である場合、用量は未変更のままとすべきである。
イヌが5%超の体重を失っていた場合には、用量を25%減少させるべきである。
イヌが5%超の体重を獲得していた場合には、用量を25%増加させるべきである。イヌのその時点での体重に基づいて、日用量1mg/kgを超過すべきではない。
【0056】
薬物を中断する場合、提供される食物の1日量および身体活動は、体重維持/管理または再教育段階の間に確立されたように継続するべきである。
【0057】
いくつかの実施形態では、追加の薬学的に活性な作用物質は、従来の治療計画に従って投与する。いくつかの実施形態では、追加の薬学的に活性な作用物質は、漸増投薬量で投与する。
【0058】
本明細書において使用される場合、「MTP阻害剤の投与に付随する副作用を低減する」という用語または同様の用語は、従来の治療計画、例えば、より多い初回用量で用量を増加させずにMTP阻害剤を投与した結果として生じる1種または複数種の望まれない副作用の改善または排除を意味する。このような副作用には、嘔吐(吐くこと)、下痢、嗜眠、食欲不振および食欲低下、例えば嘔吐(吐くこと)、下痢および嗜眠が挙げられ、特に嘔吐が含まれる。
【0059】
本発明はまた、肥満もしくは関連する摂食障害の治療もしくは予防において、かつ/または摂食量を減少させる際に消費者が使用するための、あるいはMTPの阻害を必要とする対象においてMTPを阻害するための、薬学的キットにも関する。いくつかの実施形態では、このキットは、(a)第1の用量レベルが0.025〜0.30mg/kg/日の範囲、例えば、約0.05mg/kg/日または0.10mg/kg/日、好ましくは約0.05mg/kg/日など0.025〜0.10mg/kg/日の範囲であり、かつ、第2の用量レベルが、0.05〜0.6mg/kg/日の範囲であるか、または例えば、約0.10mg/kg/日もしくは0.2mg/kg/日、好ましくは約0.10mg/kg/日など0.05〜0.2mg/kg/日の範囲である、MTP阻害剤を含む少なくとも2セットの薬学的投薬単位、および(b)使用するための取扱い説明書を含む。
【0060】
本発明の治療方法によれば、MTP阻害剤および任意の追加の薬学的物質(本明細書において「組合せ」と呼ばれる)は、好ましくは医薬組成物の形態で、そのような治療を必要とする対象に投与する。本発明の組合せ態様では、MTP阻害剤および他の薬学的物質(例えば、別の抗肥満剤)は、別々に投与しても、双方を含む医薬組成物中で投与してもよい。MTP阻害剤および他の任意の薬学的物質の組合せを一緒に投与する場合、そのような投与は逐次的でも、同時でもよい。薬物の組合せの同時投与が、一般に好ましい。逐次投与の場合、これらの作用物質は、任意の順序で投与してよい。このような投与は経口であることが一般に好ましい。このような投与は経口かつ同時であることが特に好ましい。MTP阻害剤および追加の薬学的物質を逐次的に投与する場合、それぞれの投与は同じ方法によっても、異なる方法によってもよい。
【0061】
本発明の方法によれば、MTP阻害剤または組合せは、好ましくは医薬組成物の形態で投与する。これらの作用物質の投与は、任意の従来の経口、直腸、経皮、非経口(例えば、静脈内、筋肉内、もしくは皮下)、槽内、腟内、腹腔内、局所用の剤形(例えば、散剤、軟膏剤、クリーム剤、スプレー、もしくはローション剤)、口腔内または鼻用の剤形(例えば、スプレー、滴剤、もしくは吸入剤)で、別々または一緒でよい。
【0062】
MTP阻害剤または組合せは、単独で投与することができるが、一般に、当技術分野において公知であり、かつ意図される投与経路および標準的な薬学的実践に関して選択される、1種または複数種の適切な薬学的賦形剤、補助剤、希釈剤、または担体と混合して投与する。MTP阻害剤または組合せは、治療ニーズに対応した所望の投与経路および放出プロファイルの特異性に応じて、即時放出型、遅延放出型、調節放出型、持続放出型、間欠的放出型、または制御放出型の剤形を提供するように製剤化することができる。
【0063】
医薬組成物は、一般に組成物の約1%〜約75%、80%、85%、90%、またはさらには95%(重量に基づく)の範囲、通常、約1%、2%または3%〜約50%、60%、または70%の範囲、より頻繁には約1%、2%、または3%〜約25%、30%、または35%など50%未満の範囲の量のMTP阻害剤または組合せを含む。
【0064】
特定の量の活性化合物を含む様々な医薬組成物を調製する方法は、当業者には公知である。例えば、Remington:The Practice of Pharmacy、Lippincott WilliamsおよびWilkins、ボルチモア、メリーランド州、第20版、2000年を参照されたい。
【0065】
適切な製剤の例は、例えば、WO03/002533、WO2005/046644、およびWO2005/080373においてさらに説明されている。
【0066】
経口投与用の液体剤形としては、薬学的に許容できる乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられる。MTP阻害剤または組合せに加えて、液体剤形は、水もしくは他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジンアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(例えば、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ種子油など)、Miglyol(登録商標)(CONDEA Vista Co.クランフォード、ニュージャージー州から入手可能)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビトールの脂肪酸エステル、またはこれらの物質の混合物など当技術分野において一般に使用される不活性な希釈剤を含んでよい。
【0067】
このような不活性な希釈剤の他に、組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味料、矯味剤、ならびに着香料などの賦形剤も含んでよい。
【0068】
MTP阻害剤または組合せの経口用液体形態には、活性化合物が完全に溶解された液剤が含まれる。溶媒の例としては、経口投与に適した薬学的に先例のある溶媒すべて、特に、本発明の化合物が良好な溶解性を示すもの、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、食用油、ならびにグリセリルベースの系およびグリセリドベースの系が挙げられる。グリセリルベースの系およびグリセリドベースの系としては、例えば、以下の商標付きの製品(および対応するジェネリック医薬品)を挙げることができる。すなわち、Captex(商標)355EP(Abitec(コロンバス、オハイオ州)社製のグリセリルトリカプリラート/カプラート)、Crodamol(商標)GTC/C(Croda(コウィックホール(Cowick Hall)、イギリス)社製の中鎖トリグリセリド)またはLabrafac(商標)CC(Gattefosse社製の中鎖トリグリセリド)、Captex(商標)500P(Abitec社製の三酢酸グリセリル、すなわちトリアセチン)、Capmul(商標)MCM(Abitec社製の中鎖モノジグリセリドおよび中鎖ジグリセリド)、Migyol(商標)812(Condea(クランフォード、ニュージャージー州)社製のカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)、Migyol(商標)829(Condea社製のカプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリド)、Migyol(商標)840(Condea社製のプロピレングリコールジカプリラート/ジカプラート)、Labrafil(商標)M1944CS(Gattefosse社製のオレオイルマクロゴール−6グリセリド)、Peceol(商標)(Gattefosse社製のグリセリルモノオレアート)、ならびにMaisine(商標)35−1(Gattefosse社製のグリセリルモノオレアート)である。特に興味深いのは、中鎖(約C〜C10)トリグリセリド油である。これらの溶媒は、しばしば、組成物の大部分、すなわち約50%超、通常約80%超、例えば約95%または99%を占める。補助剤および添加剤もまた、主として風味マスキング剤、風味剤(palatability)および矯味剤、抗酸化剤、安定化剤、テクスチャーおよび粘度の改質剤、ならびに可溶化剤として、これらの溶媒と共に含まれてよい。
【0069】
懸濁剤は、MTP阻害剤または組合せに加えて、懸濁化剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、ならびにトラガカントゴム、またはこれらの物質の混合物などの担体をさらに含んでよい。
【0070】
便宜的には、非ヒト動物に投与する場合、治療的投薬量の化合物が毎日の水供給と共に摂取されるように、MTP阻害剤(または組合せ)を飲料水中に入れることができる。化合物は、好ましくは、(水溶性の塩の水溶液など)液状の水溶性濃縮物の形態で、直接測定して飲料水中に入れることができる。
【0071】
便宜的には、MTP阻害剤(または組合せ)は、それ自体を飼料に直接追加しても、または動物飼料の補給物の形態で追加してもよい。
【0072】
本発明は、いくつかの有利な獣医学的特徴を有する。赤身を増やし、かつ/またはペット動物から不必要な脂肪を取り除きたいと望むペットの飼主または獣医師のために、本発明は、これを達成することができる手段を提供する。家禽、ウシ、およびブタの飼育者の場合、本発明の方法を利用することにより、食肉業界においてより高い販売価格で売れる、より脂肪の少ない動物を得られる。
【0073】
本発明の実施形態を以下の実施例によって例示する。しかし、本発明の実施形態は、それらの他の変形が、当業者に公知であるか、または本開示に照らして明らかになるように、これらの実施例の特定の詳細に限定されないことが理解されるべきである。
【実施例1】
【0074】
配合:1mL当たりの組成−ジルロタピド:5mg
最大1mLの中鎖トリグリセリド油
ドイツ、スペイン、フランス、およびイギリス出身の研究者36名のもとで、獣医学的患畜の多施設試験を実施して、過体重の成犬(ボディコンディションスコア(BCS)が5より大きい)の過剰な体重の治療における、市販のジルロタピド製剤の3通りの異なる投薬計画の現場での有効性および安全性を、プラセボと比較して評価した(より詳細な内容については、参照により本明細書に組み入れられる、J.GOSSELLIN、J.MCKELVIE、J.SHERINGTON、J.A.WREN、J.S.EAGLESON、T.G.ROWANおよびS.J.SUNDERLAND(2007年);An evaluation of dirlotapide to reduce body weight of client−owned dogs in two placebo−controlled clinical studies in Europe;Journal of Veterinary Pharmacology and Therapeutics、30巻(補遺1)、73〜80頁を参照されたい)。この論文が、最終的に選択された投薬計画を記載しているのに対し、下記の試験は、様々な投薬計画を考察することに留意して頂きたい)。患畜を、2:1の比率でジルロタピド処置またはプラセボ処置のいずれかにランダムに割り当てた。また、それらを、登録日に応じて3種の投薬計画のうち1種に割り当てた。登録時の来診日、および開始時から試験終了時(最後は308日目に来診)まで約28日毎に、各イヌを身体検査し、計量し、かつ身体状態を評価した。各患犬について、試験期間を次の3つの連続した段階に分けた:0日目から1回目の予定された来診日(患犬のBCSが5に達するか、または遅くとも196日目の来診)までの「体重減少段階」、それに続く、体重を安定させることを狙いとする84日間の「再教育段階」、次いでそれに続く、患犬がいかなる治療も受けない28日間の「処置後段階」。体重減少段階および再教育段階の間、研究者が処方し、かつ飼主によって食事時に投与する1日1回のジルロタピドまたはプラセボで、患犬を処置した。試験開始時から1回目の定められた調整時まで投与するための、開始時の日用量が、3種の順次試験した投薬計画における唯一の違いであり、すなわち0.2mg/kg(治療計画1)、0.1mg/kg(治療計画2)、および2週間後に2倍にして0.1mg/kg(最初の体重に基づく)とする0.05mg/kg(治療計画3)であった。体重減少段階中の各来診日に、体重減少率を評価し、体重減少が不十分(その前の調整から1週間当たり1%未満)な場合、用量を(一般には100%)増加させなければならなかった。再教育段階の間、患犬の体重が再教育段階の開始時から、それぞれ過剰に(5%超)減少または増加している場合には、用量を50%減少させるか、または100%増加させた。用量は、食物摂取が極度に減少した場合、または薬剤関連有害事象が疑われる(Suspected Adverse Drug Events(SADE))場合、試験期間中の任意の時点で(一般には50%)減少させてもよい。投与される用量は、1mg/kg(その時点の体重)の許容された最大値に制限された。
【0075】
合計255匹の動物(プラセボ84匹およびジルロタピド171匹)を試験に登録した(投薬計画1、2、および3に、それぞれ71匹、98匹、および86匹)。プラセボと比較すると、ジルロタピド処置により、治療計画1、2、および3の体重減少段階に、それぞれ0.90%、0.66%、および0.76%の有意な(P≦0.0002)平均週間体重減少が認められ、また、7カ月(28週)の体重減少治療後には各治療計画間で同程度の平均体重減少合計が認められた(治療計画1、2、および3において、それぞれ20.3%、18.6%、および20.9%)。一部の動物において、ジルロタピド処置は、望ましくない消化器臨床徴候(嘔吐および下痢)、ならびに嗜眠および食欲低下/食欲不振を引き起こしたが、10カ月の試験期間中のその発生率は、開始用量を0.2mg/kgから0.05mg/kgまで減らすことによって実質的に減少した。試験期間全体を通して、望ましくない臨床徴候が原因で中止した動物の数は、第1の治療計画における31.9%から第3の投薬計画における10.5%まで減少した。試験中に少なくとも1回嘔吐した動物の比率は、第1の治療計画から最後の治療計画までに、72%から42%まで減少した。したがって、第3の投薬計画(開始用量0.05mg/kg)は、他の治療計画と同じ有効性を実現するが、改善された耐性プロファイルをもたらすため、最適な治療計画と思われる。3種の投薬計画において、平均用量は、体重減少段階を通して着実かつ同様に増加し、個々の動物間でかなりのばらつきがあった。第3の投薬計画における体重減少段階の168日目までに、ジルロタピドの投薬量は平均して0.53mg/kg(最初の体重に基づく)(開始時から約10倍増加)であり、0.10mg/kg〜0.93mg/kg(最初の体重に基づく)の範囲であった。
【0076】
開始用量0.05mg/kgで、処置の2週間後に2倍で投与したジルロタピドは、他の投薬計画と同じくらい有効であり、28週間の体重減少治療後に20.9%の体重減少をもたらし、かつ、12週間の治療後に体重減少が5%未満であったのは、母集団の10.5%に過ぎなかった。後者の投薬計画も、他の治療計画と同様に安全であったが、耐性がより高く、嘔吐、下痢、嗜眠、および食欲低下/食欲不振の発生率および重症度は低下し、かつ許容範囲になった(治療の最初の28日間を過ぎての各徴候に関する毎月の発生率は、処置した患犬の約10%以下であった)。また、治療を中断する患犬の数も減少した(処置した母集団の10.5%のみ)。
【0077】
表1は、試験開始から体重減少段階の予定された各来診日における合計体重変化率の要約を提供し、表2は、体重減少段階の予定された各来診日における、mL/kgおよびmg/kgで処方された用量の要約を提供し、また、図1は、体重減少段階の間に投薬計画および処置による望ましくない作用として特定された最も頻度の高い臨床徴候の発生率の要約を提供する。
【実施例2】
【0078】
配合:1mL当たりの組成−ジルロタピド:5mg
最大1mLの中鎖トリグリセリド油
ジルロタピドを、北アメリカにおける2つの多施設臨床試験におけるイヌの肥満の管理において評価した(より詳細な内容については、参照により本明細書に組み入れられる、J.A.WREN、A.A.RAMUDO、S.L.CAMPBELL、V.L.KING、J.S.EAGLESON、J.GOSSELLIN、S.J.SUNDERLAND(2007);Efficacy and safety of dirlotapide in the management of obese dogs evaluated in two placebo−controlled,masked clinical studies in North America;Journal of Veterinary Pharmacology and Therapeutics 30(補遺1)、81〜89頁を参照されたい)。様々な品種の合計335匹の肥満イヌを、2:1の比率でジルロタピド群またはプラセボ群に無作為化した。ジルロタピドを、初回用量0.05mg/kgで毎日1回イヌに経口投与し、14日後に0.1mg/kg(試験B)または0.2mg/kg(試験A)まで増加させ、次いで28日間隔で、個々の体重減少に応じて調整した。イヌを検査および計量し、かつボディコンディションスコア(BCS)を28日毎に記録した。試験Aは、3つの連続的な段階、すなわち体重減少段階(16週、0日〜112日)、体重管理段階(12週)、および処置後段階(8週)を含んだ。試験Bは、体重減少段階のみを含んだ。
【0079】
試験物質
ジルロタピド(Slentrol(商標);Pfizer Animal Health、ニューヨーク、ニューヨーク州、米国)を、5mgジルロタピド/mLを含む油ビヒクルを含む市販の製剤として投与した。対照のイヌには、食物グレードのトウモロコシ油を与えられた。処置は、外観および包装によって識別することは不可能であった。用量は、等体積の各処置を提供するように、最初の体重に基づいて計算し、かつ、その後1カ月間隔で、体重減少応答に基づいて個別に用量体積を調整した。
【0080】
動物
試験に登録されたイヌは成犬(12月齢以上)の雄および雌であり、無傷であり、かつ去勢されていた。登録されたイヌは、ボディコンディションスコア(BCS)が8以上の肥満でなければならなかった。
【0081】
手順
最初の処置前の7日以内に、各イヌを検査および計量し、かつ血液試料および尿試料を採取して、登録への適性を判定した。併用薬を含む、動物の情報および病歴を記録し、かつBCSを評価した。各イヌに対する試験期間は、0日目、すなわち参加する動物のジルロタピドまたはプラセボのいずれかによる処置を始めた日に開始した。処置は、飼主が自宅で実施した。
【0082】
試験Aは、3つの連続的な段階、すなわち0日目から112日目までの最初の体重減少段階(16週)、それに続く体重管理段階(12週)および処置後段階(8週)を含んだ。この最後の段階の間、処置中止後の体重をモニターした。管理段階の間、患犬は、体重減少段階の最後に達成した体重の±5%を維持するように調整した用量のジルロタピドまたはプラセボによる処置を継続して受けた。体重減少段階の最後(112日目)に十分に体重が減少していなかった(最小値は1週間当たり0.5%、段階全体を通して8%に等しい)イヌは、試験を終了し、管理段階には移行しなかった。試験Bは、16週間(112日目まで)の体重減少段階のみからなった。イヌを計量し、BCSを評価する検査のための来診は、各試験を通して28日間隔で実施した。体重減少段階の最後に、飼主は、彼らのイヌの身体活動レベルが処置期間を通して変化していたかを評価することを依頼された。
【0083】
処置前の試料に加えて、各試験段階の最後および試験完了時(試験Aの処置後段階の最後および試験Bの体重減少段階の最後)にも、血液試料を採取した。定石の血液学的数値、ならびに主要器官機能の評価および脂質測定値(高比重リポタンパク質、コレステロール、およびトリグリセリドの濃度)を含む血清化学に関して、試料を分析した。
【0084】
用量調整
すべてのイヌに、初回用量0.05mg/kgのジクロタピドまたは等価な0.01mL/kgのプラセボを与えた。最初の14日間の後、最初の体重に基づき、自動的に0.1mg/kg(試験B)(ラベルの推奨に従う)または0.2mg/kg(試験A)まで用量を増加させた。試験前および試験中、スケールは0.1kgまで正確に較正し、かつ較正を確認した後に各動物を計量した。その後、目標体重変化率に対して各評価来診日の個々の体重変化率を比較することによって、用量体積の調整を決定した。
【0085】
試験A
体重減少段階中の毎月の各来診日に、1回目の調整で用量体積を50%増加させ、その後、その前の来診以降の体重減少が1週間当たり1%未満である場合は25%増加させた。1回目の予定された体重管理来診の間に、イヌの体重がその前の来診以降に増えていた場合は用量体積を50%増加させ、また、直前の来診以降の1週間の体重減少が1%以上である場合は、用量体積を50%減少させた。その後の来診日には、管理段階の開始時からの体重の増加または減少が、それぞれ5%より多い場合は、用量体積を25%増加または減少させた。用量体積は、体重管理段階の間に1回、50%増加させることしかできなかった。
【0086】
試験B
体重減少段階中の毎月の各来診日に、1回目の調整で用量体積を100%増加させ、また、その前の来診以降の体重減少が1週間当たり0.7%未満である場合は次の調整で50%増加させた。
【0087】
結果
合計335匹のイヌを2つの試験に登録した。224匹をジルロタピド処置群に割り当て、111匹をプラセボ処置群に割り当てた。登録し、処置したイヌのうち、ジルロタピドで処置したイヌ185匹およびプラセボで処置したイヌ101匹が試験を完了した。合計で、ジルロタピドで処置したイヌ16匹およびプラセボで処置したイヌ9匹が、飼主がプロトコールに従わず、かつ不正確な投薬を行ったため、除外された。多種多様の品種が登録された。双方の試験において最も一般的であったのは、ラブラドルレトリーバー(登録されたイヌの17.4〜24.7%)であり、続いて、ゴールデンレトリーバー(8.9〜9.1%)、ビーグル(7.8%)、およびダックスフント(5.4〜7.8%)であった。いずれかの試験において登録されたイヌの少なくとも5%を占める他の品種は、アメリカンコッカースパニエル、ジャーマンシェパード、ロットワイラー、シェトランドシープドッグ、およびパグであった。
【0088】
食餌
全般的に、イヌには、タイプ(例えば、様々なブランドおよび風味)、乾物比率(乾燥、半湿性、および湿性)、脂肪含有量、およびタンパク質含有量の点で、広範囲の市販の食餌を与えた。試験Aでは、ジルロタピドで処置したイヌの90.4%およびプラセボを与えたイヌの95.7%には乾燥食物のみを給餌し、残りのイヌすべてには、乾燥食物および缶詰食物の混合物を与えた。試験Aにおいてジルロタピドおよびプラセボで処置した動物のうち、それぞれ37%および9%には、いくつかの市販の食餌の組合せが提供されたのに対し、他のイヌには、試験中一貫して、単一の市販の食餌を与えた。
【0089】
試験中の有害な経験
処置に関係した死亡は試験中に起こらなかった。胃腸の機能不全に関連した1種または複数種の臨床徴候(嘔吐、下痢、食欲低下、および嗜眠)が、7カ月の処置の間に、処置したイヌおよび対照のイヌの双方において頻繁に観察された(例えば、1回または複数回の嘔吐が、ジルロタピドで処置したイヌの最大48.1%およびプラセボで処置したイヌの最大20.6%において観察された)。これらの発生により、一部の飼主は試験への参加を中断することを選択した(試験B(ラベルの投薬計画)における、ジルロタピドを与えたイヌの5.9%およびプラセボを与えたイヌの1.1%、ならびに試験Aにおける、ジルロタピドで処置したイヌの14.8%)。これらの臨床徴候の発生率は、一般に、プラセボを与えたイヌよりも、ジルロタピドを与えたイヌにおいて高かったが、試験Aのプラセボで処置したイヌの大半は、ジルロタピドで処置したイヌより3カ月短い治療を受けたため、解釈は混乱している。試験Aの体重減少段階(112日目まで)を通して、嘔吐は、ジルロタピドで処置したイヌの44%およびプラセボで処置したイヌの26%で記録されたのに対し、下痢は、プラセボ群の17%と比較して、ジルロタピド処置群では13%で発生した。飼主は、処置におそらくは無関係であるものを含めて、試験中の観察結果すべてを報告するように促された。一般に、これらの臨床徴候、特に嘔吐は、いずれの処置の場合も最初の月に、より頻繁に発生した。その期間後、発生率は、用量増加直後の数日間を除いて、残りの処置期間の間に低下した。試験において処置を続けているものを含む、罹患したイヌはすべて、1日または2日で、かつ、大半は、用量の変化もいかなる医学的介入も伴わずに、無事に回復した。
【0090】
体重減少段階
112日目までの、ジルロタピドによる0日目からの平均累積体重減少率は、プラセボの場合より有意に大きかった。すなわち、試験Aにおいては14.0%対3.0%(P=0.0001)であり、試験Bにおいては11.8%対3.9%(P=0.0001)であった(表3、図2)。少なくとも13%の体重(変形関節炎に罹患しているイヌにおいて健康利益に関連付けられている量)を首尾良く減量したイヌの比率もまた、ジルロタピドの場合の方が、プラセボの場合より有意に多かった。すなわち、試験Aにおいては50.0%対5.6%(P=0.0314)であり、試験Bにおいては39.1%対5.3%(P=0.0002)であった。どちらの試験においても、体重減少の速度(図3)は、一般に、ジルロタピドで処置された動物の場合、処置の最初の1カ月間が最も速く、また、用量の増加と並行するその後の月は、速度は維持された。
【0091】
管理段階(試験Aのみ)
試験Aにおいて、ジルロタピドで処置したイヌの平均体重減少は、管理段階で減速したが、イヌは引き続き体重を失っていた(112日までの1週当たり0.7〜1%と比べて、112日目〜196日目では1週当たり0.25〜0.67%)。また、体重減少段階の最後の時点(112日目)での体重の累積的減少率14%は、管理段階の最後(196日目)までにさらに5.3%増加したが(図2および図3)、体重減少の大半は、1週間を基準として体重が0.5%減っていなかったイヌを除外した後の管理段階の最初の1カ月の間に起こり(3.0%)、次いで、管理段階の次の2カ月において、その後の用量減少と共に安定した。最終月までに、体重減少は、月間中0.9%で比較的安定していた(図3)。プラセボで処置したイヌの大半は、有効性が不十分であったため(1週間の体重減少が0.5%未満)、112日後に除外され、また、管理段階を通じてプラセボ処置を続けた4匹のイヌは、体重減少段階の最後までに著しい体重減少を示しているものであった。これらの4匹のイヌは、体重管理の最後までに12.3%の平均累積体重減少を示した。
【0092】
処置後段階(試験Aのみ)
処置後段階の間、わずかな体重増加があり、1カ月目および2カ月目の間の1週当たりの平均体重増加率はそれぞれ0.48%および0.24%であった。また、試験完了までに、1週間の体重変化速度の傾向は0に近づき、体重管理が比較的安定と思われることが示唆された(図3)。処置後段階の間、先にジルロタピドで処置したイヌは、処置後1カ月目の間は平均体重増加率1.8%を示したが、処置後2カ月目の間は体重を維持した。(0.8%増加)。0日目から処置後段階の最後までの平均体重減少率は16.7%であった(図2)。プラセボで処置された4匹のイヌは、処置を中断した場合、体重を失い続けて、処置後1カ月までの体重減少は最大14.0%に達した。
【0093】
投薬
試験Aの場合、用量は、ジルロタピドで処置したイヌの77%およびプラセボで処置したイヌの64%の口の中に直接投与した。残りの動物には、動物用の食物に少量を入れることによって投薬した。体重減少段階の間、ジルロタピドの用量は、すべてのイヌに対して、0.05mg/kgから平均用量0.33mg/kg(範囲は0.14〜0.52mg/kg)(試験A)および0.26mg/kg(範囲は0.11〜0.53mg/kg)(試験B)まで増加させた(表4)。いずれの試験の場合も、112日の体重減少の間の用量範囲は、0.045〜0.53mg/kgであった。試験Aの管理段階の間、ジルロタピド用量は、最終の平均用量0.26mg/kgまで減少させた(用量は様々であり、範囲は0.07〜0.54mg/kgであった)。
【0094】
考察
ジルロタピドは、食餌制限の不在下で肥満イヌの体重減少を生じさせるのに一貫して効果的であることが判明した。体重減少段階の完了時、ジルロタピドを与えたイヌは、プラセボを与えたイヌよりも有意に(P=0.0001)多く体重を失っていた(試験Aおよび試験Bにおいて112日目までにそれぞれ14.0%および11.8%)。さらに、試験Aにおいては、0日目からの平均体重減少率は、196日目までに19.3%であり、処置後段階の最後の時点で16.7%であった。さらに、112日間にわたって、少なくとも体重の13%の体重減少は、プラセボを与えたイヌによってよりも、有意に多くのジルロタピドで処置したイヌによって達成された(39.1〜50.0%対5.3〜5.6%)。変形性股関節炎に続発する後肢跛行に罹患した過体重のイヌにおいて、少なくとも11〜12%の減量は、臨床徴候を実質的に改善させた。ジルロタピドを与えたイヌの50%超が、4カ月の体重減少段階の間に(少なくとも1種のカテゴリーの)BCSの改善を示した。
【0095】
ヒトにおける体重減少の多くの研究の結果と同様に、減量プログラムの完了時に食餌性のエネルギー摂取量に対する制限を解除した後、イヌの体重が回復することも一般に観察された。食餌制限に依存した減量研究において、体重を回復する傾向は、食物体積の管理を通じて、かつ個々のイヌの維持要求量に合致させ、それによって体重を安定させるようにカロリー摂取量を調整することによって、回避するか、または最小限に抑えることができる。飼主が、本発明の試験においてどれだけ多くの量を彼らのイヌに給餌するかを「学習する」ため、薬物を中断する前に体重を安定させて、体重減少段階の最後に達成された減量を維持するように、用量を減少させたジルロタピドを用いた処置期間を設計した。管理段階中の平均体重減少は継続したが、管理の1カ月目の間に記録された平均体重減少は、処置に対して十分な体重減少応答を示さなかったイヌ(すなわち、16週目までに最初の体重の8%未満しか失わなかった、ジルロタピドで処置したイヌ)の除外により人為現象的な影響を受けた。管理の3カ月目までに、平均投薬量を0.33mg/kgから0.26mg/kgまで減少させ、体重は比較的安定であり、平均減少率は約1%で、これは許容される±5%の体重変化率の十分に範囲内であった。したがって、管理技術は大成功であり、また、処置後2カ月目に、最小限の体重回復しか観察されなかった。試験Aのジルロタピドの場合の処置後段階の間の平均体重増加は、処置後1カ月目の方が、2カ月目よりも多かった(それぞれ1.8%および0.8%の増加)。処置後1カ月目の最後の体重測定により、飼主は、体重が増えたイヌに提供する食物をさらに調整することが可能になった。このことから、新たな給餌および運動の計画が継続される限り、いくらかの体重増加は起こるものの、ジルロタピドを与えたイヌにおける0日目からの平均体重減少率16.7%が、それ以上の体重増加を最低限に抑えつつ、はるかに長い期間にわたって維持される可能性が高いことが暗示される。ジルロタピド処置の間には脂肪カロリーの約10%が大便中に排泄され得るため、ジルロタピドを中止する場合、体重を安定させた量の食物の給餌は、イヌのカロリー必要量を若干多めに見積もってよい可能性もあり、このことは、ジルロタピド中止後に獣医の監督を継続することの重要性を示す。
【0096】
本発明の試験において、ジルロタピドは臨床使用において安全であることが判明した。しかし、いくらかの嘔吐、下痢、嗜眠、および食欲不振は、どちらの処置のイヌにおいても記録され、かつその頻度はジルロタピドで処置したイヌの方が多かった。すべての処置段階において、低い発生率の嘔吐および嗜眠が観察されたが、これらの観察結果、特に嘔吐および食欲低下は、通常、最初の1カ月の間に最もよく起こり、かつ、処置の継続と共に減少する傾向があった。ジルロタピド処置の継続にもかかわらず、大半の臨床徴候は回復したが、これらの影響は、イヌが薬物に順応することができるように、より低用量で処置を開始することによって低減させ得ることを発見した。したがって、これらの試験において、ジルロタピドの用量は少ない初回用量0.05mg/kgで開始し、続いて、各イヌの体重減少を実現するのに最適な用量に達するまで徐々に増加させ、次いで体重減少を維持するように調整した。さらに、試験Bでは、(試験Aでは0.2mg/kgまで増加させたのと対照的に)ラベルの推奨に従って最初の漸増は0.1mg/kgまでとし、これにより、嘔吐がさらに最小限に抑えられることが判明した。処置期間を通して、記録された平均用量の標準偏差の幅は広く、かつ用量体積の範囲も大きかったことから、体重減少の速度に影響を及ぼし得る個体の食餌、運動レベル、または代謝の差異に対する個別の用量調節および補正が必要であることが裏付けられた。したがって、本発明の試験の間、体重減少を維持するためにジルロタピドの用量を調整し、この投薬戦略は好結果であることが判明した。
【0097】
表3は、双方の試験における、112日間の体重減少の間の、ジルロタピドまたはプラセボで処置したイヌの平均体重変化率(および95%信頼区間(CI))の要約を提供する。表4は、双方の試験における、各段階の最後にイヌに投与されたジルロタピドおよびプラセボの平均用量の要約を提供する。図2は試験Aおよび試験Bの間にジルロタピドまたはプラセボで処置したイヌについて、0日目から予定された各来診日まで測定した、平均累積体重変化率の要約を提供する。また、図3は、試験Aおよび試験Bの間にジルロタピドまたはプラセボで処置したイヌについて、予定された各来診日に測定した、その前の来診日からの平均週間体重変化率の要約を提供する。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
【表3】

【0101】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】過体重の成犬(ボディコンディションスコア(BCS)が5より大きい)の過剰な体重の治療において、市販のジルロタピド製剤の3通りの異なる投薬計画の現場での有効性および安全性を評価するための試験の体重減少段階の間に、投薬計画および処置による望ましくない作用として特定された最も頻度の高い臨床徴候の発生率の要約を、プラセボと比較して提供する(実施例1)図である。
【図2】実施例2の試験Aおよび試験Bの実施中に、ジルロタピドまたはプラセボで処置したイヌについて、0日目から予定された各来診日まで測定した、平均累積体重変化率の要約を提供する図である。
【図3】実施例2の試験Aおよび試験Bの実施中に、ジルロタピドまたはプラセボで処置したイヌについて、予定された各来診日に測定した、その前の来診日からの平均週間体重変化率の要約を提供する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥満もしくは関連する摂食障害に罹患している対象を治療し、かつ/または摂食量を減少させる方法であって、肥満または障害を改善するのに有効であるが、MTP阻害剤の投与に付随する副作用を低減するのに十分な程度少ない初回量のMTP阻害剤を前記対象に投与することを含み、場合により、少なくとも1回段階的に漸増させた投薬量のMTP阻害剤の投与が続き、および、場合により、体重維持/管理または再教育段階が続く方法。
【請求項2】
初回投与の後に、少なくとも1回段階的に漸増させた投薬量のMTP阻害剤を投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
続いて、体重維持/管理または再教育段階を実施する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
投与するMTP阻害剤の初回量が、0.025〜0.30mg/kg/日の範囲である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
投与するMTP阻害剤の初回量が、約0.05mg/kg/日である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記漸増用量が、少なくとも第1の用量レベルおよび第2の用量レベルを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第2の用量レベルが、前記第1の用量レベルより100%多い、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の用量レベルが約0.10mg/kg/日である、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記漸増用量が、第3の用量レベルをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記第3の用量レベルが、前記第2の用量レベルより100%多い、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記漸増用量が、第4の用量レベルをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第4の用量レベルが、前記第3の用量レベルより50%多い、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の用量レベルが約0.05mg/kg/日であり、前記第2の用量レベルが約0.10mg/kg/日であり、かつ前記第3の用量レベルが約0.20mg/kg/日である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
MTP阻害剤の投与に付随する副作用には、嘔吐、下痢、嗜眠、食欲不振、および食欲低下が含まれる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記MTP阻害剤が、
ジルロタピド、
ミトラタピド、
(S)−2−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸(ペンチルカルバモイル−フェニル−メチル)−アミド、
(S)−2−[(4’−tert−ブチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸{[(4−フルオロ−ベンジル)−メチル−カルバモイル]−フェニル−メチル}−アミド、
(S)−2−[(4’−tert−ブチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸[(4−フルオロ−ベンジルカルバモイル)−フェニル−メチル]−アミド、
(S)−2−[(4’−イソプロポキシ−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸{[(4−フルオロ−ベンジル)−メチル−カルバモイル]−フェニル−メチル}−アミド、あるいは
【化1】

または薬学的に許容できるその塩、水和物、もしくは溶媒和物からなる群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−150370(P2008−150370A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−318836(P2007−318836)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(597014501)ファイザー・リミテッド (107)
【氏名又は名称原語表記】Pfizer Limited
【住所又は居所原語表記】Ramsgate Road, Sandwich, Kent, England
【Fターム(参考)】