説明

低発熱性エポキシ樹脂系コア充填剤

(i)少なくとも1個の芳香族部分又は芳香族部分に水素付加することにより誘導可能な部分を含み、かつ、芳香族アミン部分を含有しない、少なくとも1つのエポキシ樹脂、
(ii)
(a)カルボン酸無水物と、
(b)約30℃〜約100℃の融点を有し、かつ、少なくとも1個の第一級アミン基を含有する、第一アミンと、
(c)約50℃〜約180℃の融点を有し、かつ、少なくとも1個の第一級アミン基を有する、第二アミンと、を含み、第一及び第二アミンは、これらが融点において少なくとも10℃の差を有するように選択され、第一及び第二アミンはカルボン酸無水物と比較したときに少重量で含有される、エポキシド硬膜剤系、
(iii)硬化性組成物の密度を低減させることができる充填剤、並びに、所望により、
(iv)
(a)アルカリ土類金属水酸化物及びアルミニウム基水酸化物を含む群から選択される少なくとも1つの化合物と、
(b)少なくとも1つのリン含有材料と、の混合物を含む難燃性系、を含む、硬化性組成物、
更には、上記硬化性組成物を硬化させることにより入手可能な硬化済み組成物、ハニカム構造内の空隙の充填のための硬化性組成物の使用、並びに、ハニカム構造内の空隙の充填方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、本開示は、一成分系エポキシ樹脂系硬化性及び硬化済み充填剤組成物に関する。この組成物は、ハニカム構造、特に航空機、船舶及び自動車に使用されるハニカム構造のための、充填剤として特に好適である。この硬化性充填剤組成物は、難燃性を改善しており、硬化中に生じる発熱はほんのわずかである。硬化済み組成物は、高温においても良好な圧縮強度を呈する。
【背景技術】
【0002】
自動車、船舶及び航空機などの運搬乗物は、燃料消費を低減させるために、次第に低重量材料を用いて製造されるようになっている。この目的を達成するために、ハニカム構造が採用され、ますます高頻度で中実構造と置き換えられている。ハニカム構造内の空隙セルのサイズは、構造の機械的特性に影響する。サイズが大きいほど重量削減量は大きくなるが、機械的強度の喪失も大きくなる恐れがある。ハニカム構造内の空隙セルは、典型的には、少なくとも一次元又は三次元全てで、5mm〜最大10cmの範囲であり得る。より大きな空隙セルを有するハニカム構造を採用すること、並びに、機械的強度の潜在的損失を相殺する解決法を見つけることが望まれる。一方法は、ハニカム構造の空隙セルの一部又は全部を、充填剤で部分的に又は完全に充填することである。エポキシ樹脂系組成物は、この目的のために使用され得る。
【0003】
米国特許第6,635,202号(Bugg及びHayes)において、ハニカムパネルにおいて充填剤として使用できる熱発泡粉末が開示されている。熱発泡粉末は、Araldite GY260(ビスフェノールAエポキシ樹脂)、ジシアンジアミド、クロロトルロン、3,3’−ジメチル4,4,ジアミンジシクロヘキシルメタン、Expancel 551 DU(未膨張微小球)及びCabosil TS720を含有する。粉末状前駆体は、出発化合物を、エポキシ化合物の開始温度よりも低く、かつ、未膨張熱可塑性微小球の膨張が生じる温度よりも低い温度にて混合することにより、得られる。粉末はハニカム構造内に充填され、加熱され、これにより粉末を膨張させ、発泡させ、硬化させる。米国特許第6,635,202号の粉末は、垂直結合配置において容易に使用され得ず、このことは、これらの適用性を制限する。
【0004】
更に、コア充填剤として硬化性エポキシ樹脂を使用するとき、硬化反応は典型的に発熱性である。一般に、これは、エポキシ樹脂が構成要素を一緒に結合するために使用される、硬化性エポキシ樹脂配合の標準的用途において問題ではない。このような用途では、硬化性エポキシ樹脂組成物は、典型的には、接合及び結合される基材間の薄層として適用される。しかしながら、発熱反応は、例えば、ハニカム構造内で、充填剤として硬化性エポキシ樹脂を用いる場合のように、エポキシ樹脂の厚い層を硬化させると、顕著になり得る。比較的大きなサイズのセルに起因して、エポキシ樹脂組成物は、30mm超又は更には50mm超の厚さで適用されなければならない場合がある。相当量のエポキシ樹脂の発熱硬化反応により生じる熱は、エポキシ樹脂組成物に熱損傷を与え、その機械的特性に影響を及ぼす恐れがある。これはまた、ハニカム構造に、又は、ハニカム構造に取り付けた構成要素に、影響を及ぼす恐れがある。したがって、硬化反応中にほとんど発熱を生じない硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する必要がある。
【0005】
国際公開第2006/071820号では、エポキシ系充填剤組成物が開示されている。国際公開第2006/071820号は、エポキシ組成物を硬化させる際に発熱が生じるのを克服するために、アミン系硬膜剤を避けるように教示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱生成の問題を克服することに加えて、硬化性充填剤組成物はまた、室温においてだけではなく、例えば、135℃又は更には150℃などの高温においても良好な圧縮強度を有する組成物を提供するように硬化できることが所望される。
【0007】
更に、硬化性充填剤組成物は、望ましくは、ハニカム構造に容易に適用できる押し出し可能なペーストである。
【0008】
最後に、硬化性充填剤組成物は、上記特性に加えて、室温にて良好な貯蔵寿命を有することが所望される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に、
(i)少なくとも1個の芳香族部分又は芳香族部分に水素付加することにより誘導可能な環状部分を含み、かつ、芳香族アミン部分を含有しない、少なくとも1つのエポキシ樹脂、
(ii)
(a)カルボン酸無水物と、
(b)約30℃〜約100℃の融点を有し、かつ、少なくとも1個の第一級アミン基を含有する、第一アミンと、
(c)約50℃〜約180℃の融点を有し、かつ、少なくとも1個の第一級アミン基を有する、第二アミンと、を含み、第一及び第二アミンは、これらが融点において少なくとも10℃の差を有するように選択され、第一及び第二アミンはカルボン酸無水物と比較したときに少重量で含有されるものである、エポキシド硬膜剤系、
(iii)硬化性組成物の密度を低減させることができる充填剤、を含む硬化性組成物が提供される。
【0010】
(i)エポキシ樹脂とエポキシド硬膜剤系との反応生成物であって、エポキシ樹脂が、少なくとも1個の芳香族部分又は芳香族部分に水素付加することにより誘導可能な環状部分を含み、かつ、エポキシ樹脂が芳香族アミン部分を含有せず、エポキシド硬膜剤系が、
(a)カルボン酸無水物と、
(b)約30℃〜約100℃の融点を有し、かつ、少なくとも1個の第一級アミン基を含有する、第一アミンと、
(c)約50℃〜約180℃の融点を有し、かつ、少なくとも1個の第一級アミン基を有する、第二アミンと、を含み、第一及び第二アミンは、これらが融点において少なくとも10℃の差を有するように選択され、第一及び第二アミンはカルボン酸無水物と比較したときに少重量で含有されるものである、反応生成物を含む硬化済み組成物も提供され、
組成物は、更に、
(ii)硬化性組成物の密度を低減させることができる充填剤、並びに、所望により、
(iii)
(a)アルカリ土類金属水酸化物及びアルミニウム基水酸化物を含む群から選択される少なくとも1つの化合物と、
(b)少なくとも1つのリン含有材料と、の混合物を含む難燃性系、を含む、硬化済み組成物も提供される。
【0011】
更なる態様では、上記のような硬化性組成物をハニカム構造に適用することと、組成物を硬化させることと、を含む、ハニカム構造のセルの充填方法が提供される。
【0012】
更に別の態様では、ハニカム構造のセルを充填するための上記硬化性組成物の使用が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態を詳細に説明するのに先立ち、本開示はその用途において以下の説明文に記載される構成の細部及び要素の配列に限定されない点は理解されるべきである。本発明には他の実施形態が可能であり、本発明は様々な方法で実施又は実行することが可能である。また、本明細書で使用される専門語及び専門用語は、説明目的のためであり、限定するものと見なされるべきではないことが理解されるべきである。「からなる」の使用とは対照的に、本願における「含む」、「含有する」、「備える」、又は「有する」及びその変化形の使用は、これらの語の後に列記される要素及びその均等物に加えて更なる要素を包含することを意味する。「a」又は「an」の使用は、「1つ以上の」を包含することを意味する。本明細書に引用されるいずれの数範囲も、その範囲の下方値から上方値の全ての値を包含することを意図する。例えば、1%〜50%の濃度範囲は、略記であり、例えば、2%、40%、10%、30%、1.5%、3.9%等の1%と50%との間の値を明示的に開示することを意図する。
【0014】
用語「固体」及び「液体」は、周囲条件(23℃、1bar(100KPa))を参照する。
【0015】
本明細書で参照される平均粒子サイズは、数平均である。実質的に球状なだけである粒子の場合には、粒子サイズは、粒子の2つの主要な(最大直交)軸の長さを加算して、それを2で除算することにより、決定される。「実質的に球状」は、1つ又は全ての主要な軸(x軸、y軸又はz軸)が完全球体を形成するのに必要とされる長さから最大50%、好ましくは最大25%外れ得ることを意味する。
【0016】
本明細書で提供される硬化性組成物は、好ましくは、押し出し可能なペーストである。上記及び下記で使用されるように、用語「押し出し可能なペースト」は、下記の試験の項目で記載されるように、少なくとも50g/分である、測定された初期押し出し速度を有する組成物を指す。より好ましくは、初期押し出し速度は、50g/分〜最大300g/分である。
【0017】
硬化性及び硬化済み組成物は、
少なくとも1つの有機エポキシド化合物、
(a)カルボン酸無水物と、
(b)下記のような第一アミンと、
(c)下記のような第二アミンと、を含むエポキシド硬膜剤系、
及び、充填剤、を含む。
【0018】
難燃性組成物を作製するために、組成物は更に、
(a)アルカリ土類金属水酸化物及びアルミニウム基水酸化物を含む群から選択される少なくとも1つの化合物と、
(b)少なくとも1つのリン含有材料と、の混合物を含む難燃性系、を含む。
【0019】
有機エポキシド:
本明細書で使用される有機エポキシドは、エポキシ樹脂である。エポキシ樹脂は、開環反応により重合可能な1個以上のオキシラン環高分子有機化合物である。エポキシ官能基により、樹脂が架橋反応を受けることができる。広くエポキシドと呼ばれるこのような材料は、脂環式又は芳香族であることができ、これは、これらが脂環式又は芳香族である1個以上の単位を有することを意味する。有用な材料は、一般に、分子1個あたり少なくとも2個の重合可能なエポキシ基、より好ましくは分子1個あたり2〜4個の重合可能なエポキシ基を有する。典型的には、エポキシ樹脂は、少なくとも1、1超、又は少なくとも2、又は約1〜4の平均エポキシ官能価を有し得る。
【0020】
エポキシ樹脂は、好ましくは、芳香族アミン部分を有さない又は本質的に有さない。本明細書で使用するとき、用語「本質的に有さない」は、例えば、出発材料中に存在する不純物に起因して、又は、製造プロセスの結果として、微量が存在し得ることを意味する。このような微量としては、組成物の合計量に基づいて、10,000ppm未満、好ましくは5,000ppm未満が挙げられる。
【0021】
排他的ではないが典型的には、エポキシ樹脂は、上記のようにエポキシ官能基を有するモノマーから誘導される繰り返し単位を含有するが、エポキシ樹脂はまた、例えば、エポキシ基、エポキシ基でコーティングされたか修飾された有機ポリマー粒子、又はエポキシ基含有ポリマーでコーティングされたかエポキシ基含有ポリマー中に分散されたか若しくはエポキシ基含有ポリマーで修飾された粒子、を含有するシリコーン系ポリマーを含む場合がある。
【0022】
様々なエポキシ樹脂の混合物も、本発明の組成物中で使用され得る。
【0023】
エポキシ樹脂は、アルキレンオキシド、アルケニルオキシド、グリシジルエステル、グリシジルエーテル、エポキシノボラック、グリシドールのアクリル酸エステルと共重合可能なビニル化合物とのコポリマー、ポリウレタンポリエポキシド及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0024】
好ましくは、エポキシ樹脂は、グリシジル、ジグリシジル又はポリグリシジルエーテル型の部分を含有する。このようなエポキシ樹脂は、例えば、ヒドロキシル官能基(例えば、二価若しくは多価フェノール、又はポリオールを含む脂肪族アルコールであるが、これらに限定されない)とエピクロロヒドリン官能基との反応により得ることができる。本明細書において言及するとき、二価フェノールは、芳香環に結合している少なくとも2つのヒドロキシ基(「芳香族」ヒドロキシ基とも呼ばれる)を含有するフェノール、又は少なくとも2つのヒドロキシ基が芳香環に結合している場合のフェノールである。これは、ヒドロキシル基が、ポリフェノールの同じ環に、又は各ポリフェノールの異なる環に結合できることを意味する。したがって、用語「二価フェノール」は、2つの「芳香族」ヒドロキシ基を含有するフェノール又はポリフェノールに限定されるものではなく、多価フェノール、すなわち、2つ超の「芳香族」ヒドロキシ基を含有する化合物も包含する。有用な二価フェノールの例としては、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、及びp,p’−ジヒドロキシジベンジル、p,p’−ジヒドロキシフェニルスルホン、p,p’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシフェニルスルホン、p,p’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−1,1−ジナフチルメタンなどのポリフェノール、並びにジヒドロキシジフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルエチルメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルメチルプロピルメタン、ジヒドロキシジフェニルエチルフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルプロピレンフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルブチルフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルトリルエタン、ジヒドロキシジフェニルトリルメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルジシクロヘキシルメタン、及びジヒドロキシジフェニルシクロヘキサンの2,2’、2,3’、2,4’、3,3’、3,4’及び4,4’異性体が挙げられる。
【0025】
好ましいエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールFが挙げられるがこれらに限定されない一価、二価又は多価フェノール(これらのフェノールの繰り返し単位を含むポリマーを包含する)のグリシジルエーテル又はポリグリシジルエーテルを含有する又はこれらからなるエポキシ樹脂が挙げられる。好ましいエポキシ樹脂としては、エポキシノボラックが挙げられる。エポキシノボラックは、一価、二価若しくは多価フェノール(アルキル置換(例えば、クレゾール)又は未置換であり得る)とアルデヒド(例えば、ホルムアルデヒドなど)との縮合生成物と、エポキシ基導入剤(例えば、エピクロロヒドリンなど)と、の反応生成物である。典型的なエポキシノボラックは、グリシジルエーテル基を含有し、かつ、更にビスフェノールFから又はフェノールとアルデヒドとの別の反応生成物から誘導される繰り返し単位を含む、ポリマーである。フェノールは、一価、二価又は三価であってもよく、未置換又はアルキル置換であってもよい。
【0026】
上記芳香族エポキシ樹脂に代えて、又はそれに加えて、それらの完全に又は部分的に水素付加されている誘導体(すなわち、対応する脂環式化合物)を用いてもよい。
【0027】
エポキシ樹脂は室温で液体又は固体であり得る。典型的には、エポキシ樹脂は、20℃にて約400mPa.sから、50℃にて約40,000mPa.sまでの粘度を有し得る。好ましくは、樹脂は、20℃にて少なくとも8,000mPa.sから、50℃にて最大5,000mPa.sの粘度を有する。
【0028】
エポキシ樹脂は、好ましくは、−NH又は−NH官能基を含有しない。
【0029】
より好ましくは、エポキシ樹脂は、好ましくは、例えば、アミノフェノールから誘導される単位などの、芳香族アミン部分を含有しない。
【0030】
市販のエポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Speciality Chemicals GmbH(Rosbach,Germany)から商品名EPON 828、EPON 830若しくはEPON 1001で、又は、Dow Chemical Co.から商品名D.E.R−331若しくはD.E.R−332で入手可能);ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(例えば、Dainippon Ink and Chemicals,Inc.から入手可能なEPICLON 830、又は、Dow Chemical Co.(Schwalbach/Ts.,Germany)からのD.E.R.−354);ジグリシジルエポキシ官能基を含有するシリコーン樹脂;難燃性エポキシ樹脂(例えば、DER 580、Dow Chemical Co.から入手可能な臭化ビスフェノール型エポキシ樹脂)が挙げられる;他のビスフェノール系エポキシ樹脂は、商品名EPIKOTE(Hexion Speciality Chemicals,Rosbach,Germany)又はEPILOX(Leuna Epilox GmbH,Leuna,Germany)から市販されている。エポキシノボラックは、例えば、D.E.N 431(平均エポキシ官能価2.8、並びに、51.7℃にて1100〜1700mPa.sの粘度を有するノボラック樹脂)、D.E.N.425(平均エポキシ官能価2.5、並びに、25℃にて9500〜12500mPa.sの粘度を有するノボラック樹脂)、D.E.N.438(平均エポキシ官能価3.6及び51.7℃にて3100〜4000mPa.sの粘度を有するノボラック樹脂)など、Dow Chemical Co.(Schwalbach/Ts.,Germany)から商品名D.E.N.で入手可能である。
【0031】
典型的には、本明細書で提供される組成物は、10〜70重量パーセント、好ましくは15〜60重量パーセント、より好ましくは15〜55重量パーセント、特に好ましくは15〜50重量パーセントの1つ以上のエポキシ樹脂を含む。
【0032】
エポキシ硬膜剤系:
本組成物は、エポキシ硬膜剤の系を更に含有する。エポキシド硬膜剤は、エポキシドのオキシラン環と反応して架橋を生じさせる化合物である。エポキシド硬膜剤は、硬化剤及び促進剤としても当該技術分野において既知である。当該技術分野において、用語「硬化剤」は、多くの場合、架橋剤を作用させるために主に使用されるエポキシド硬膜剤を示し、すなわち、硬膜系中に主成分として(すなわち、多量に)存在する。用語「促進剤」は、当該技術分野において、エポキシドを架橋することもできるが、硬化剤よりも少量で存在し、その結果、架橋ネットワークが促進剤から誘導される単位に比較して硬化剤から誘導される単位を主に含有する化合物について使用されてきた。当該技術分野において既知の典型的な促進剤としては、三フッ化ホウ素アミン錯体又は三塩化ホウ素アミン錯体、イミダゾール、イミダゾール誘導体、イミダゾール様化合物及びこれらに類するものが挙げられる。具体例としては、例えば、2−(2−(2メチルイミダゾリル)−エチル)−4,6−ジアミノ−s−トリアジンが挙げられる。
【0033】
本明細書では、硬膜剤と促進剤の間に差異は全く作らない。
【0034】
本発明による硬化性組成物としては、以下のエポキシ硬膜剤が挙げられる:1つ以上のカルボン酸無水物、第一アミン及び第二アミン、ここで、第一アミンは約30℃〜最大180℃の融点を有するアミンであり、第二アミンは約40℃〜最大約190℃の融点を有するアミンである。好ましくは、第一及び第二アミンは、これらが融点において少なくとも10℃の差を有するように選択される。無水物、第一アミン及び第二アミンは全て、架橋反応方法により樹脂のエポキシド基と反応することができる。エポキシ硬膜剤系の個々の構成成分は、下記に詳細に記載される。
【0035】
無水物:
カルボン酸無水物は、エポキシ樹脂系硬化性組成物の分野で既知の硬膜剤である。典型的なカルボン酸無水物としては、例えば、テトラヒドロキシフタル酸無水物又はノルボルネンフタル酸無水物などのフタル酸無水物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
エポキシ樹脂に対する無水物の量は、これらがほぼ等しい当量を有するように、すなわち、反応性無水物基と反応性エポキシ基とのモル量が約1:1であるように、又は約0.8:1〜約1:0.8であるように選択される。
【0037】
第一アミン:
エポキシ硬膜剤系中で使用される第一アミンは、約30℃〜最大約100℃、好ましくは約40℃〜最大約90℃、より好ましくは約60℃〜約80℃の融点を有するアミンである。第一アミンは好ましくは脂肪族アミンであり、つまり、これらは芳香族残基を含有しない。第一アミンは、好ましくは少なくとも1個の第一級アミン残基(すなわち、−NH残基)を含有する。第一アミンは、直鎖又は分枝鎖、環状又は非環状であってもよい。
【0038】
第一アミンは、次の一般構造の直鎖又は分枝鎖アミンであってもよい:
【0039】
【化1】

【0040】
式中、
残基R、R及びRは、互いに独立して、水素、又は炭化水素(アルキルなど)、又はアルコキシ、又はポリオキシアルキル残基を表し得る。Rは、炭化水素、アルキルエーテル又はポリエーテルアルキル残基を表す。より好ましくは、Rは、ポリエーテルアルキル残基である。好ましくは、残基R、R、及びRは、アミンが少なくとも1又は2個の一級アミン基を含有するように選択される。
【0041】
nは、整数を表す。
【0042】
好適なポリエーテルアミンとしては、ポリプロピレンオキシド又はポリエチレンオキシドから誘導され得るものが挙げられる。
【0043】
残基及び整数は、アミンが上記のような範囲内の融点を有するように選択される。上記のような第一アミンは、例えば、Huntsman ChemicalsからのJEFFAMINEシリーズ内で、又は、AirproductsからのANCAMINEシリーズ内で、市販されている。
【0044】
第二アミン:
第二アミンは、約50℃〜最大約180℃、好ましくは約70℃〜最大約150℃未満、より好ましくは約80℃超〜約129℃未満の融点を有するアミンである。第二アミンは、第一アミンと同一又は異なる化学型のものであってもよい。好ましくは、第二アミンは、脂肪族、より好ましくは脂環式である(これは、これらが脂肪族又は脂環式部分を含有するが、芳香族部分を含有しないことを意味する)。脂環式アミンは、本明細書で使用するとき、アミンが1個又は1個超の脂環式残基を含有することを意味する。脂環式アミンは好ましくは第一級アミンであり、少なくとも1個の第一級アミン基を含有する。脂環式アミンの典型例としては、1個又は2個以上の環残基(例えば、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロペンチル残基又はこれらの組み合わせなど)を含有する第一級アミンが挙げられる。
【0045】
本明細書で提供されるように、本組成物は、典型的には、組成物全体の約10〜約40重量%の硬膜剤を含み得る。典型的には、第二アミンは、第一アミンに対して、等量で又は過剰で、使用される。典型的には、第一及び第二アミンは、例えば、硬膜剤系中で使用される無水物の合計量の、又は、組成物中で使用される硬膜剤の合計量の、0.5〜20重量%、又は1〜12重量%などで、無水物と比較して少量で使用される。
【0046】
第一及び第二アミンは、これらが融点において少なくとも10℃の差を有するように選択される。
【0047】
硬膜系は、好ましくは、前駆体が、これを120℃〜180℃の温度にかけることにより硬化できるように選択される。
【0048】
本発明者らにより、加工特性間の良好なバランス(例えば、好ましくはペースト様稠度)、23℃及び135℃における圧縮強度として測定されるような周囲温度及び高温における機械的強度、硬化時に放出される低い発熱、並びに、5日後の押し出し速度により測定されるような室温における長い貯蔵寿命が、上記エポキシ樹脂及び硬膜剤系により得ることができることが判明した。これらの成分の1つ以上を換えると、上記特性に有意な影響が生じ得る。
【0049】
上記組成物をより難燃性にするために、本組成物は、以下に記載のような難燃性系を更に含み得る。
【0050】
上記組成物をより軽量にするために、本組成物は、以下に記載のような充填剤を更に含み得る。
【0051】
充填剤:
本組成物は、組成物の密度を低減させることができる充填剤を更に含んでもよい。本明細書で使用するとき、「組成物の密度を低減させることができる」は、充填剤が、充填剤なしの組成物よりも低い密度を有することを意味する。典型的には、本組成物は、15〜60重量パーセントのこのような充填剤を含み得る。前駆体の密度を低減させることができる充填剤としては、低密度無機充填剤(すなわち、0.1〜0.5g/cmの密度を有する充填剤)、低密度有機充填剤(すなわち、0.01〜0.30g/cmの密度を有する充填剤)を挙げることができるが、低密度無機充填剤が有機充填剤よりも好ましく、それは、後者が圧縮強度に負の影響を及ぼす傾向を有するからである。有機充填剤と無機充填剤の組み合わせを使用してもよいが、無機低密度充填剤は、好ましくは、有機充填剤よりも過剰に使用される。
【0052】
低密度無機充填剤は、好ましくは、無機粒子、無機微小球、特に中空無機微小球から選択される。微小球は、例えば、ガラス、シリカ、セラミック(ゾル−ゲル法によるものなど)又はジルコニアなどの様々な材料から選択され得る。
【0053】
充填剤は、好ましくは、これらがその圧縮強度を犠牲にすることなく硬化済み組成物の有利な密度を可能にするように選択される。中空無機微小球は、0.5g/cm未満、より好ましくは0.12〜0.42g/cmの密度を呈する。充填剤は、典型的には500μm、又は10〜100μmの平均粒子サイズを有し得る。
【0054】
好ましい中空無機微小球としては、例えば、3M Companyから商品名Glass bubbles D32又はScotchlite D32/4500で市販されているガラス微小球が挙げられる。
【0055】
未膨張有機中空微小球充填剤は、例えば、Akzo Nobelから商品名「Expancel(登録商標)」で入手可能である。未膨張有機中空微小球は、場合によっては、膨張性有機マイクロバルーンとも呼ばれ、例えば、Lehmann and Voss(Hamburg,Germany)からも商品名Micropearlで入手可能である。予備膨張された有機中空微小球は、例えば、Lehmann & Voss(Hamburg,Germany)から商品名Dualiteで市販されている。
【0056】
硬化性組成物に使用される充填剤の濃度及び性質は、好ましくは、硬化済み組成物の密度が1g/cm未満、より好ましくは0.9g/cm未満、最も好ましくは0.5〜0.8g/cmであるように選択される。
【0057】
難燃性系:
本発明の前駆体及び硬化済み組成物は、(1)アルカリ土類金属水酸化物及びアルミニウム基水酸化物を含む群から選択される少なくとも1つの化合物と、(2)少なくとも1つのリン含有材料と、の混合物を含む難燃性系を更に含んでもよい。
【0058】
前駆体及び硬化済み組成物は、典型的には、組成物全体の5〜50重量パーセント、好ましくは10〜50重量パーセントで、上記(1)及び(2)の難燃性系を含む。
【0059】
アルカリ土類金属水酸化物及びアルミニウム基水酸化物を含む群(1)の化合物は、多くの場合、煙抑制剤と呼ばれる。特に好ましい化合物としては、アルミニウム三水和物(=酸化アルミニウム三水和物、場合によってはアルミニウム水酸化物とも呼ばれる)及び水酸化マグネシウムが挙げられる。
【0060】
リン含有材料(2)は、例えば、赤リン元素、メラミンリン酸塩、ジメラミンリン酸塩、メラミンピロリン酸塩及び無機ホスフィン酸塩(例えば、ホスフィン酸アルミニウムなど)を含む群から選択され得る。赤リン元素及び無機ホスフィン酸塩が好ましい。
【0061】
難燃性系はまた、メタほう酸バリウム、メタほう酸カルシウム、メタほう酸亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選択されるものなどの所望によるホウ素含有材料を含んでもよい。これらの材料は、前駆体の量に関して最大25重量パーセント提供され得る。
【0062】
本発明の組成物は、更なる成分、補助剤を含んでもよく、これらは、レオロジー特性又は機械的特性を更に調節するために、組成物の外観を適応させるために使用され得、あるいは、組成物の早発分解を防止するのを助け得る。これらの更なる材料としては、例えば、上記のもの以外の充填剤、チキソトロープ剤、反応性希釈剤、色素、酸化防止剤、接着促進剤及びこれらに類するものが挙げられる。
【0063】
反応性希釈剤及びチキソトロープ剤は、接着剤組成物の流動特性を制御するために添加してもよい。
【0064】
チキソトロープ剤は、典型的には、50nm未満の粒径を有する微粒子物質である。好ましいチキソトロープ剤としては、ヒュームドシリカが挙げられる。チキソトロープ剤は、Cabot(Schwalbach im Taunus,Germany)から商品名Cab−O−Silで、又はDegussa Evonik GmbH(Frankfurt,Germany)から商品名Aerosilで市販されている。
【0065】
反応性希釈剤は、典型的には、モノマー状エポキシ含有分子である。好ましくは、反応性希釈剤は、飽和又は不飽和の環状骨格を有する。好ましい反応性末端エーテル部分としては、グリシジルエーテルが挙げられる。好適な希釈剤の例としては、レゾルシノールのジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0066】
更なる材料としては、湿潤剤が挙げられ、これは好ましくはチタン酸塩、シラン、ジルコン酸塩、ジルコアルミネート、リン酸エステル及びこれらの混合物からなる群から選択される。湿潤剤は、組成物の混合性及び加工性を改善し、また、組成物の制御性を向上させることができる。特に有用な湿潤剤は、Coatex(Genay,France)からCoatex DO−UP6Lとして市販されている。1つ以上の湿潤剤を含む湿潤剤構成要素の濃度は、典型的には、6重量パーセント未満、より好ましくは5重量パーセント以下である。
【0067】
顔料としては、酸化第二鉄、れんが粉、カーボンブラック、酸化チタンなどを含む無機又は有機顔料を挙げることができる。
【0068】
本組成物は、強靭化剤を更に含んでもよい。強靭化剤は、強靭化剤を含有せず(このような比較研究における量の差は、エポキシ樹脂により構成される)、他の方法で同一処理した同組成物に比べて、硬化済みエポキシ樹脂の強靱性を高めることができる、エポキシ樹脂以外のポリマーである。典型的な強靭化剤としては、例えば、コア−シェルポリマー又は液体ブタジエン−ニトリルゴムが挙げられる。
【0069】
本発明の硬化性組成物は、多くの技術により容易に調製することができる。例えば、様々な成分を周囲条件下で、Mogul混合器などの好適な混合容器に添加してもよい。容器は好ましくは、調製中の成分の反応を防止するために、並びに、製造時に生じるあらゆる熱の除去を促進するために、冷却される。好ましくは硬化性組成物(本明細書では「前駆体」とも呼ばれる)は、35℃未満の温度にて混合される。更に、ゆっくりとした混合速度が、一般に、混合器内での熱蓄積を防止するのを助けるために、使用される。成分が均一な混合物を形成するまで混合を継続し、その後、前駆体を混合器から取り出す。
【0070】
前駆体は、押し出し機又はポンプを供給する装置などの従来の適用装置により適用することができる。本発明の前駆体は好ましくは一成分系組成物であり、すなわち、これらは、硬膜剤組成物が組成物の使用までエポキシから分離して維持される二成分系組成物と比較して、既に硬膜剤成分を含んでいる。本発明の一成分系前駆体は、好ましくは、室温にて良好な貯蔵寿命を呈する。一成分系組成物は反応性系を含有し、それゆえに、好ましくは貯蔵期間にわたって低温にて保持される。本明細書で示す「室温における良好な貯蔵寿命」は、(組成物の調製から、又は、−73℃に保持しておいた後で室温(20℃)に到達した時間から)組成物が増粘して押し出しがより困難又は不可能になるまでの時間を測定することにより決定することができる。ゆっくりした増粘速度も許容可能である。組成物は、室温にて5日にわたる貯蔵後の押し出し速度(下記の方法に従って測定される)が60g/分を超える場合、室温にて良好な貯蔵寿命を有すると考えられる。
【0071】
硬化性組成物は、例えば、金属(例えば、Al、Al合金、チタン若しくはステンレス鋼)又は他の基材(例えば、ガラス、ホウ素、炭素、Kevlar繊維、エポキシ、フェノール、シアン酸エステル及びポリエステルマトリックスなど)などの様々な基材に適用することができる。
【0072】
硬化性組成物は、例えば、薄いコーティングとして適用してもよいが、好ましくは、例えば、船舶又は航空機に使用される複合床パネル又は壁の構築のための充填されたハニカムパネルのような嵩高物品の調製のために使用され得る。
【0073】
前駆体組成物は、引き続いて、好ましくは熱硬化により、硬化する。硬化条件は、特定の用途に依存して、様々に変えることができる。硬化温度は、典型的には80〜180℃、好ましくは175℃で選択され、硬化時間は典型的には15〜180分、好ましくは2時間になる。好ましくは、組成物は120分の硬化時間にわたって175℃にて硬化させることができる。
【0074】
硬化は、本明細書に記載の機械的特性について組成物を試験することにより、判定することができる。
【0075】
硬化性エポキシ系組成物は、良好な加工性を呈するように、並びに、有利な初期粘度(例えば、初期押し出し速度に関して評価される)及び経時的な粘度増加の低さ(例えば、下記方法に記載のように、初期押し出し速度及びそれぞれ3日後又は5日後の押し出し速度に関して評価される)の両方を呈するように、調製することができる。
【0076】
硬化時に低発熱性を呈する硬化性エポキシ系組成物を調製することができる(例えば、下記の方法に従って硬化反応時の最大発熱ピークに関して評価される)。組成物は、発熱度が60℃未満、好ましくは55℃未満である場合、低発熱性を有すると考えられる。
【0077】
有利な機械的特性(例えば、圧縮強度に関して評価される)を呈する対応する硬化性前駆体組成物を硬化させることにより得ることができるエポキシ系組成物を調製することができる。特に、硬化済み組成物は、室温にて良好な圧縮強度を有するが、高温においても有する。
【0078】
前駆体組成物は、硬化時に望ましい化学及び機械的特性が得られるような量で、上述の成分を含有する。
【0079】
上述の成分を用いることにより、以下の特性のうち1つ以上又は全てを有する硬化性組成物を調製することができる:
a)下記の方法の項目で記載されるように測定されるとき、50g/分〜約300g/分の初期押し出し速度を有する硬化性組成物;
b)下記の方法の項目で記載されるように測定されるとき、室温にて3日にわたる貯蔵後に約50g/分〜最大約200g/分、並びに、室温にて5日にわたる貯蔵後に約50g/分〜最大約150g/分の初期押し出し速度を有する硬化性組成物;
c)下記の方法の項目で記載されるように測定されるとき、60℃未満の発熱ピークを有する硬化性組成物;
d)硬化時に135℃にて少なくとも25MPaの圧縮強度を有する硬化性組成物;
e)硬化時に150℃にて少なくとも20MPaの圧縮強度を有する硬化性組成物;
f)硬化時に23℃にて少なくとも60MPaの圧縮強度を有する硬化性組成物;
g)a)及びb)、又は、a)、b)及びc)、又は、a)、b)、c)及びd)、又は、a)、b)、c)、d)及びe)、又は、a)、b)、c)、d)、e)、f)及びg)の特性を有する硬化性組成物。
【0080】
加えて、下記のように測定されるときに、硬化時に200mm未満の燃焼長さ、15秒未満の残炎時間、12秒の垂直式ブンゼンバーナーにて5秒未満の残炎滴下を呈する、上記に記載のような難燃性系を更に含有する硬化性組成物を調製することができる。
【0081】
加えて、下記方法に従って測定されるときに、硬化時に150mm未満の燃焼長さ、15秒未満の残炎時間、60秒の垂直式ブンゼンバーナーにて3秒未満の残炎滴下を呈する、上記に記載のような難燃性系を更に含有する硬化性組成物を調製することができる。
【0082】
加えて、下記に記載の方法に従って測定されるとき、200未満の光学煙密度を呈する、上記に記載のような難燃性系を更に含有する硬化性組成物を調製することができる。
【0083】
本発明の硬化性前駆体及び硬化済み組成物は、特に、航空機における充填剤又は結合材として有用であるが、それは、これらが容易に適用可能であり、軽量であり、加圧及び非加圧領域の界面にて使用されるときに遭遇する力に耐えることができる難燃性材料であるからである。
【0084】
硬化性組成物は、その低発熱性及び機械的強度のため、ハニカム構造用の充填剤として特に有用である。
【0085】
特に好ましい前駆体組成物は、約10〜70重量%の有機エポキシド、約1〜55重量%のエポキシド硬膜剤系、約5〜50重量%の難燃性系、及び、約10〜60重量%の組成物の重量を低減させることができる充填剤を含み、ここで、重量百分率は、組成物の合計量に基づき、重量百分率の合計量は100%となる。
【0086】
本発明は、下記の実施例により更に例示される。その前に、前駆体及び硬化済みエポキシ系組成物を特徴付けるために使用されるいくつかの試験方法が記載される。特に指定しない限り、百分率は、各々、前駆体又は硬化済みエポキシ系組成物の質量についての重量百分率である。上記及び下記で、前駆体又は硬化済み組成物の全成分の質量百分率は、各々、各場合において合計で100重量パーセントになる。
【0087】
押し出し速度
低密度エポキシ系組成物の前駆体の加工性は、以下の手順を用いて標準装置を通して押し出すことにより、室温(23℃)にて評価した。圧縮空気駆動式アプリケーションピストル(SEMCO(East Kilbride,U.K)から入手可能)に、150mL使い捨てカートリッジ及び6.35mmの開口を有するノズルを取り付けた。使い捨てカートリッジに前駆体を充填し、5bar(500kPa)の空気圧を印加することにより、低密度エポキシ組成物を押し出した。押し出し速度は、60秒間押し出された量を測定することにより、決定した。
【0088】
測定は、前駆体が調製された直後に行われた(初期押し出し速度)。各前駆体は3回評価され、結果を平均化した。
【0089】
前駆体を23(±2)℃の温度及び50%の相対湿度にて3日(又は各々5日)維持した後に、更なる測定を行った。下記に提供される試験結果は、3つの測定値の平均である。
【0090】
圧縮強度
12.5mm(高さ)×12.5mm(幅)×25mm(長さ)の寸法を有し、1つの主要な側面が開口している、剥離コーティングされた成形型の中に、約200gの前駆体を流し込んだ。成形型を強制空気炉内に配置し、2つの硬化サイクルを含む硬化プログラムにかけた。第一硬化サイクルについては、3℃/分の加熱速度を用いて、炉温を23℃から125℃に上げた。次に、温度を1時間にわたって125℃に維持し、次に温度を45分かけて23℃に冷却した。
【0091】
第二硬化サイクルについては、3℃/分の加熱速度を用いて、炉温を23℃から175℃に上げた。次に、温度を1時間にわたって175℃に維持し、次に温度を45分かけて23℃に冷却した。
【0092】
全ての試験片は、加熱能力を備えるZwick Model Z030引張試験機(Zwick GmbH & CO.(Ulm,Germany))を使用することにより、0.5mm/分の速度で、それらの25mmの軸腺に沿って圧縮した。
【0093】
23℃(室温)、80℃、120℃及び135℃にて、圧縮強度を測定した。80℃、120℃及び135℃における試験の前に、少なくとも30分にわたって、加熱した機器の中で、試験片を前条件付けした。
【0094】
これらの試料を、エポキシ組成物について測定した。結果を平均し、MPa単位で記録した。
【0095】
光学煙密度
3〜5mmの厚さを有するシートを、アルミニウムの離型処理された成形型内に組成物を注入し、圧縮強度試験について前述したのと同じ23℃〜125℃の硬化サイクルを用いて、空気強制炉内で硬化させた。次に、3mm×75mm×75mmの寸法を有する試料をこの大きなシートから切り出した。一方の側の表面を紙やすりで研磨して、露出した樹脂が組成物全体の代表であるかを確かめた。
【0096】
NBS煙密度チャンバ(NBS=米国国立標準局(National Bureau of Standards))を使用して、煙密度チャンバを測定した。この試験方法は、JAR/FAR Part 25,amdt.25〜66,Appendix F,Part V(JAR/FAR=欧州合同航空公団(JointAviation Requirements)/米国連邦航空局(Federal Aviation Regulations))に詳細が記載されている;Airbus Directive ABD 0031,「Fireworthiness Requirements,Pressurised Section of Fuselage」,Issue D,Sept.2002,section 5.4「smoke−density」も参照されたい。エポキシ系組成物の試料を特定の寸法のガスフレーム上に配置した。炉内の空気スペースを通しての垂直構成の光透過により、チャンバ内に発生した煙を測定した。
【0097】
各エポキシ系組成物について3個の試料を試験し、結果を平均した。
【0098】
垂直燃焼試験
Airbus Directive ABD 0031(2002年9月発行)に従って、垂直燃焼試験を行った。アルミニウム成形型内にて硬化させた3mm×400mm×400mmパネルから3mm×75mm×300mmの寸法を有する3個の試験試料を切り出した。エポキシ組成物をSEMCOカートリッジの成形型の中に押し出した。この成形型を空気強制炉に入れ、3℃/分の加熱速度で125℃にして60分にわたって硬化させた。次に、試料を可燃性チャンバにおいて、12秒及び60秒の垂直燃焼試験にかけて試験した。燃焼長さをmm単位で記録した。各エポキシ系組成物について3個の試料を試験し、結果を平均した。
【0099】
発熱度
100mmの直径及び35mmの高さを有するステンレス鋼丸底カップの中に、100gの前駆体組成物を充填した。電気熱電対を前駆体の中心に配置した。次に、前駆体を強制空気炉の中に配置し、炉温を2℃/分の加熱速度を用いて23℃から175℃へ上げる硬化サイクルを実行することにより、前駆体を硬化させた。次に、温度を1時間にわたって175℃に維持した。炉熱から、前駆体組成物中の熱電対により記録された最大熱、すなわち、熱電対に記録された最大温度−175℃、を減算することにより、ピーク発熱を計算した。
【0100】
動的機械熱分析(DMTA)
DMTA試験には、Rheometric Scientific Inc.(Piscataway,NJ 08854,USA)により市販されているDMTA Vレオメーターを使用した。試験試料の調製のために、2個のシリコーン剥離ライナーの間に約0.3mmの厚さに前駆体をコーティングし、2〜5℃/分の加熱速度にて23℃から175℃への硬化サイクルを用いて空気強制炉内で硬化させた。次に、エポキシ系組成物を完全に硬化させるために、温度を1時間にわたって175℃に維持した。175℃で1時間にわたっての硬化が終了した後、硬化済みエポキシ系組成物を45分にわたって23℃に冷却した。
【0101】
次に、5mm×10mmの寸法を有する試験試料を切り出し、ガラス転移温度(Tg)の評価のためにDMTA試験にかけた。DMTA設定は、以下の通りである:
【0102】
【表1】

【0103】
密度
対応する前駆体を成形型に流し込み、先述の試験方法の「圧縮強度」に記載した通りの温度プログラムを使用して、強制空気炉内で硬化させることによって、エポキシ系組成物の試料を調製した。エポキシ系組成物の硬化済み試料を成形型から取り外し、それらの正確な寸法を記録した。各試料の重量を量り、密度を算出して、1cmあたりのグラムを記録した。
【0104】
【表2】

【実施例】
【0105】
実施例1及び比較実施例1〜6
各場合において下の表1に列挙した化合物を、Linden GmbH(Germany)市販の2.0リットル機械的モーグル型混合器にて、組み合わせることにより、エポキシ系組成物を調製した。表1では、全ての濃度は、重量パーセントとして与えられる。
【0106】
水冷却を使用して、混合プロセスの間、35℃未満の温度に維持した。第一工程では、エポキシ樹脂をカプセル化赤リン、アルミニウム三水和物及びほう酸亜鉛と20〜40rpmで約20分にわたって、均質なブレンドが達成されるまで、混合した。次に、硬膜剤系を添加し、その後、更に15分にわたって混合した。次に、中空ガラス微小球を中で撹拌し、続いて20分にわたって混合した。
【0107】
最終工程として、100mbar(10kPa)の真空を5分にわたって適用することにより、均質ブレンドを脱気した。前駆体配合物を−18℃にて貯蔵した。
【0108】
これらを上記の試験方法の項目の副項目「圧縮強度」に記載のように、23℃から125℃への硬化サイクルにかけることにより、前駆体を硬化させた。
【0109】
比較実施例C6の配合物を除いて、全ての前駆体配合物は、滑らかかつ均一な一貫性を有するペーストであった。比較実施例C6の配合物は、押し出すことができず、発熱度のみ測定した。
【0110】
未硬化前駆体の押し出し速度及び圧縮強度、硬化済みエポキシ系組成物の光学煙密度、垂直燃焼試験及びDMTA測定を、試験方法の項目に先述したように、行った。これらの測定の結果を表2及び3に要約する。
【0111】
【表3】

【0112】
【表4】

【0113】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物であって、
(i)少なくとも1個の芳香族部分又は芳香族部分に水素付加することにより誘導可能な環状部分を含み、かつ、芳香族アミン部分を含有しない、少なくとも1つのエポキシ樹脂、
(ii)
(a)カルボン酸無水物と、
(b)約30℃〜約100℃の融点を有し、かつ、少なくとも1個の第一級アミン基を含有する、第一アミンと、
(c)約50℃〜約180℃の融点を有し、かつ、少なくとも1個の第一級アミン基を有する、第二アミンと、を含むエポキシド硬膜剤系であって、前記第一及び第二アミンは、これらが融点において少なくとも10℃の差を有するように選択され、前記第一及び第二アミンは前記カルボン酸無水物と比較したときに少重量で含有されるものである、エポキシド硬膜剤系、
(iii)前記硬化性組成物の密度を低減させることができる充填剤、並びに、所望により、
(iv)
(a)アルカリ土類金属水酸化物及びアルミニウム基水酸化物を含む群から選択される少なくとも1つの化合物と、
(b)少なくとも1つのリン含有材料と、の混合物を含む難燃性系、を含む、硬化性組成物。
【請求項2】
6.35mmの直径を有する円形開口を通して、25℃の温度及び5bar(500kPa)の圧力にて60秒にわたって押し出されたときに、約50g/分〜約300g/分の初期押し出し速度を有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
6.35mmの直径を有する円形開口を通して、25℃の温度及び5bar(500kPa)の圧力にて60秒にわたって押し出されたときに、約50g/分〜約300g/分の初期押し出し速度、並びに、調製の3日後及び5日後に約50g/分〜約300g/分の押し出し速度を有する、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
60℃未満の発熱度を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
60℃未満の発熱度、並びに、23℃にて少なくとも60MPa、135℃にて少なくとも35MPa及び150℃にて少なくとも20MPaの、硬化後の圧縮強度を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記有機エポキシドが本質的にハロゲンを含まない、請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂が、未置換又はアルキル置換であってもよい一価、二価又は三価フェノールから誘導される繰り返し単位を含有し、並びに、グリシジルエーテル部分を更に含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂がノボラック樹脂である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記組成物の重量を低減させることができる充填剤が、無機中空粒子を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
10〜70重量%の前記エポキシ樹脂、1〜55重量%の前記エポキシド硬膜剤系、及び、10〜60重量%の前記組成物の重量を低減させることができる充填剤、及び、存在する場合には、5〜50重量%の前記難燃性系を含有し、ここで、重量百分率は、前記組成物の合計量に基づき、重量百分率の合計量は100%となる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
硬化済み組成物であって、
(i)エポキシ樹脂とエポキシド硬膜剤系との反応生成物であって、前記エポキシ樹脂が、少なくとも1個の芳香族部分又は芳香族部分に水素付加することにより誘導可能な環状部分を含み、かつ、前記エポキシ樹脂が芳香族アミン部分を含有せず、前記エポキシド硬膜剤系が、
(a)カルボン酸無水物と、
(b)約30℃〜約100℃の融点を有し、かつ、少なくとも1個の第一級アミン基を含有する、第一アミンと、
(c)約50℃〜約180℃の融点を有し、かつ、少なくとも1個の第一級アミン基を有する、第二アミンと、を含み、前記第一及び第二アミンは、これらが融点において少なくとも10℃の差を有するように選択され、前記第一及び第二アミンは前記カルボン酸無水物と比較したときに少重量で含有されるものである、反応生成物を含み、
前記組成物は、更に、
(ii)前記硬化性組成物の密度を低減させることができる充填剤、並びに、所望により、
(iii)
(a)アルカリ土類金属水酸化物及びアルミニウム基水酸化物を含む群から選択される少なくとも1つの化合物と、
(b)少なくとも1つのリン含有材料と、の混合物を含む難燃性系、を含む、硬化済み組成物。
【請求項12】
23℃にて少なくとも60MPa、135℃にて少なくとも35MPa及び150℃にて少なくとも20MPaの圧縮強度を有する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
0.9g/cm未満の密度を有する、請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
ハニカム構造のセルの充填方法であって、
請求項1〜10のいずれか一項に記載の硬化性組成物を前記ハニカム構造に適用することと、
前記組成物を硬化させることと、を含む、方法。
【請求項15】
ハニカム構造のセルを充填するための請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2012−522113(P2012−522113A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503527(P2012−503527)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/028778
【国際公開番号】WO2010/117669
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】