説明

低真空下での低温浸炭

アセチレンを浸炭化学種として用いるステンレス鋼の低温浸炭が水素または他の随伴ガスの存在下に低真空条件下で行われる。その結果、低温浸炭時に普通は起こる煤および望ましくない熱酸化膜の形成が実質的に完全になくなる。本発明は、鉄、ニッケルおよび/またはクロム系合金から作られているワークピースをガス浸炭によって表面硬化させるためのプロセスを提供する。このプロセスにおいては、ワークピースは高い浸炭温度において浸炭ガスと接触してワークピース表面に炭素を拡散させ、それによって実質的に炭化物析出物を含まない硬化した一次表面層を形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
関連出願への相互参照
本出願は、2009年8月7日に出願された特許出願第61/232,148号に基づき、この出願に対する優先権を主張し、この出願の開示は本明細書において参照として援用される。
【背景技術】
【0002】
従来の浸炭
従来法の(高温)浸炭は、成形金属物品の表面硬度を向上させる(「肌焼きする」)ために広く用いられている工業プロセスである。代表的な商業プロセスにおいて、ワークピースは高い温度で炭素含有ガスと接触し、それによりガスの分解によって放出された炭素原子がワークピースの表面に拡散する。これらの拡散した炭素原子とワークピース中の1つ以上の金属とが反応し、それにより別個の化学化合物、すなわち炭化物が形成され、次にこれらの炭化物が別々の極めて硬い結晶性粒子としてワークピースの表面を形成する金属マトリックス中に析出することによって硬化が起こる。非特許文献1を参照すること。
【0003】
ここ数年間に、従来法の浸炭を行うための新しい方法が導入された。この方法では、非常に低い圧力で供給されるアセチレンが浸炭ガスとして用いられる。この手法について主張されている主な利点は、浸炭反応の一部として形成される副生煤の量が減ることである。特許文献1および対応する特許文献2を参照すること。事例によっては反応室へのアセチレンの流れは一定ではなくパルス化される。こうすると煤形成がさらに減ると言われているからである。
【0004】
ステンレス鋼は、大気に曝露されると直ちにこの鋼の表面に固有に形成される酸化クロムの緊密な不透過性の層のために「錆びない」。ステンレス鋼が従来法によって浸炭されると、表面硬化を担う炭化物析出物の形成によって鋼のクロム含有率が低下する。その結果、少なくともクロム炭化物析出物の直ぐ周りの区域において、鋼中のクロムがこの酸化クロム保護被膜を形成するには不十分となる。このため、ステンレス鋼が従来法の浸炭によって肌焼きされることは、鋼の耐食性が損なわれるのでまれである。
【0005】
低温浸炭
1980年代半ばに、ステンレス鋼を肌焼きするための技法が開発された。この技法では、通常約550℃(約1000°F)未満の低温においてワークピースが炭素含有ガスと接触する。これらの温度においては、浸炭時間があまり長くなければ、ガスの分解によって放出される炭素原子は通常は20〜50μの深さまでワークピース表面に拡散し、炭化物析出物は形成されない。それにもかかわらず、並み外れて硬い肌(表面層)が得られる。炭化物析出物が生成しないので鋼の耐食性は損なわれず、向上することもある。この技法は「低温浸炭」と称され、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特願平09−14019号(特許文献8)および特願平09−71853号(特許文献9)を含む複数の刊行物に記載されている。
【0006】
元の考え方は、低温浸炭においては、金属の結晶格子に対してこの格子中に拡散した炭素原子によってもたらされる応力だけによって表面硬化が起こるというものであった。しかし、最近の分析研究から、この硬化した表面層の中に単数または複数の別の相が形成され得ることが示唆される。これらの別の相の正確な性質はまだ分かっていないが、分かっていることは、これらの別の相のクロム含有率が周囲の金属マトリックスのクロム含有率と同一であるということである。この結果は、耐食性を担うクロムが金属全体にわたって一様に分布したままなので鋼の耐食性は損なわれずにすむということである。
【0007】
低温浸炭において含まれる温度はとても低いので、炭素原子は鋼の酸化クロム保護被膜を透過しない。従って、普通はステンレス鋼の低温浸炭の前に活性化ステップが行われる。活性化ステップでは、鋼の保護酸化被膜を炭素原子に対して透過性にするために、高温、例えば200から400℃においてワークピースをHF、HCl、NF、FまたはClなどのハロゲン含有ガスと接触させる。
【0008】
クリーンアップ
低温浸炭は、普通は好ましくない副生物として煤を生成する。その上、低温浸炭は、ワークピースの最も外側の表面に厚さ約20〜30nmの望ましくない多孔質の「熱」酸化膜を生成する。特願平09−71853号(特許文献9)を参照すること。その上、特に低温浸炭条件が厳しすぎるとこの熱酸化膜の下で極めて薄い金属の外表面層が少量の炭化物析出物を含むことがある。特許文献3、特許文献4および特許文献5を参照すること。ワークピースが魅力的な光沢ある金属的な外観を示すために、この煤および最も外側の熱酸化膜は除去されなければならない。従って、実際問題として、これらの望ましくない表面層(すなわち煤、熱酸化膜、およびあるなら炭化物析出物を含有する最も外側の薄い金属層)は、ワークピースが用いられる前に除去される。低温浸炭によって生成された硬化した「肌」はワークピースの表面の最初の10〜25ミクロン程度までしか達しないので、普通は、最低限の量のワークピースの金属表面、約1ミクロン程度だけが除去される。
【0009】
いずれにせよ、本開示の状況において、「実質的に炭化物析出物を含まない」または「炭化物析出物を形成しないで」作られたワークピース表面層への言及は、これらの好ましくない副生物層の下にある耐食性の炭素硬化した表面層を指す。便宜上、この耐食性の硬化した、副生物を含まない表面層は、本明細書においてワークピースの「一次」表面層と称される。
【0010】
アセチレン
参照によって開示全体が本明細書に組み込まれる特許文献10は、浸炭反応のための炭素源としてアセチレンが用いられる低温浸炭プロセスを記載している。望むなら、アセチレンの分解を促進し、プロセスを制御しやすくするために浸炭ガス中に水素(H)が含まれてもよい。同特許文献10にさらに記載されているように、浸炭のためにアセチレンを分解させると酸化クロム被膜も活性化し、それによって別個の活性化ステップが不必要になる。「大気圧未満」における浸炭は「想定され」ているが、すべての実施例が通常の圧力において実行されている。
【0011】
参照によって開示全体が同じく本明細書に組み込まれるTanakaらの特許文献11は、ステンレス鋼ワークピースが最初にフッ素含有ガスとの接触によって活性化された後、高真空すなわち1トール(133Pa(パスカル))以下の全圧におけるアセチレンとの接触によって浸炭される同様な低温浸炭プロセスを記載している。この手法について主張されている主な利点は、煤および望ましくない熱酸化膜副生物の生成が実質的に減ることである。それでも、得られる浸炭ワークピースは、依然として、使用可能な最終製品が得られる前に機械的におよび/または化学的に処理してこれらの副生物層を除去する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許第818 555号明細書
【特許文献2】米国特許第5,702,540号明細書
【特許文献3】米国特許第5,556,483号明細書
【特許文献4】米国特許第5,593,510号明細書
【特許文献5】米国特許第5,792,282号明細書
【特許文献6】米国特許第6,165,597号明細書
【特許文献7】欧州特許第0787817号明細書
【特許文献8】特開平09−268364号公報
【特許文献9】特開平09−71853号公報
【特許文献10】国際公開第2006/136166号
【特許文献11】米国特許第7,122,086号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Stickels,“Gas Carburizing”、第4巻、312〜324ページ,ASM Handbook,(著作権)1991,ASM International
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
要旨
本発明においても、ステンレス鋼ワークピースは真空中でのアセチレンとの接触によって低温浸炭される。しかし、本発明においては、低真空すなわち約3.5から100トール(約500から約13,000Pa(パスカル))の全反応圧が用いられる。さらに、アセチレンは約0.5から20トール(約67から約2,666Pa)の分圧に保たれる。さらに、水素(H)などの随伴ガス(companion gas)が系に含まれる。本発明によれば、この手法に従うことによって煤および熱酸化膜の生成が事実上完全になくなることが見いだされた。その結果、望まれる魅力的な光沢ある金属的な外観を有する「表面のきれいな」製品を製造するために従来必要であった後除去処理なしで、有用な浸炭最終製品を得ることができる。
【0015】
従って、本発明は、鉄、ニッケルおよび/またはクロム系合金から作られているワークピースをガス浸炭によって表面硬化させるためのプロセスを提供する。このプロセスにおいては、ワークピースは高い浸炭温度において浸炭ガスと接触してワークピース表面に炭素を拡散させ、それによって実質的に炭化物析出物を含まない硬化した一次表面層を形成させる。浸炭ガス中の浸炭化学種(specie)は不飽和炭化水素であり、浸炭ガス中の浸炭化学種の分圧は約0.5から20トール(約67から約2,666Pa)であり、浸炭ガスの全圧は約3.5から100トール(約500から約13,000Pa)であり、浸炭ガスは水素または他の随伴ガスも含有する。
【0016】
より詳しくは、本発明は、光沢ある金属的な外観を示す表面硬化された、耐食性のあるステンレス鋼ワークピースを製造するためのプロセスを提供し、ワークピース表面からの副生煤または熱酸化物の除去は必要ない。本プロセスは、炭素をワークピース表面に拡散させ、それにより実質的に炭化物析出物を含まない硬化した一次表面層を形成させるには十分であるが、副生煤または熱酸化物を少しでも形成させるには不十分な時間および温度の条件下で、ワークピースを浸炭ガスと接触させることを含む。浸炭ガスはアセチレンおよび水素を含み、浸炭ガス中のアセチレンの分圧は約0.5から20トール(約67から約2,666Pa)であり、浸炭ガスの全圧は約3.5から100トール(約500から約13,000Pa)であり、浸炭ガス中の水素対アセチレンのモル比は少なくとも2:1である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
合金
本発明は、普通はステンレス鋼に対して行われるが、他の鉄、ニッケル、コバルトおよび/またはクロム系合金から作られたワークピースに対しても用いることができる。そのような材料は周知であり、例えば上記の米国特許第5,792,282号、米国特許第6,093,303号、米国特許第6,547,888号、欧州特許第0787817号および特願平09−14019号(特開平09−268364号)に記載されている。
【0018】
重要な特定の合金は鋼であり、特に5から50、好ましくは10から40重量%のNiを含有する鋼である。好ましい合金は、10から40重量%のNiおよび10から35重量%のCrを含有する。ステンレス鋼、特にAISI300系列の鋼がより好ましい。AISI301、303、304、309、310、316、316L、317、317L、321、347、CF8M、CF3M、254SMO、A286およびAL6XNステンレス鋼が特に重要である。AISI400系列のステンレス鋼、特に合金410、合金416および合金440Cも特に重要である。
【0019】
本発明に従って低温浸炭することができる特定のニッケル系合金は、いくつか例を挙げると、合金600、合金625、合金825、合金C−22、合金C−276、合金20Cbおよび合金718を含む。
【0020】
鉄系およびニッケル系合金に加えて、本発明による低温浸炭はコバルト系合金ならびにマンガン系合金に対しても実施することができる。そのようなコバルト系合金の例はMP35NおよびBiodur CMMを含み、一方そのようなマンガン系合金の例はAISI201、AISI203EZおよびBiodur 108を含む。
【0021】
本発明による低温浸炭は、例えば合金2205、合金2507、合金2101および合金2003を含むさまざまな二重鋼、ならびに例えば合金13−8、合金15−5および合金17−4などのさまざまな時効硬化性合金に対しても実施することができる。
【0022】
本発明はオーステナイト、フェライト、マルテンサイト、二重金属(例えばオーステナイト/フェライト)等を含むがこれに限定されるものではないいかなる相構造の金属に対しても実施することができるので、本発明によって処理される金属の特定の相は重要ではない。
【0023】
浸炭反応器
最も通常には、ワークピースを浸炭反応器の中に入れ、反応器を所望の真空レベルに排気し、次に反応器の中の所望の真空レベルを維持しながら浸炭ガスを適当な流量で反応器に供給することによって浸炭が行われる。浸炭時にワークピースが実際に接触する浸炭ガスは、浸炭ガスの流量および/または反応器に供給されるその成分、ならびに反応器の内部の真空レベルを制御することによって制御される。
【0024】
ワークピースを浸炭ガスと接触させるための他の技法ももちろん用いられてよい。
【0025】
浸炭温度
従来の低温浸炭は、普通は550℃未満、普通は約450℃から525℃の反応温度において行われる。これに対して、アセチレンまたは類縁体が炭素源として用いられる改変低温浸炭プロセスは、不飽和炭化水素は活性が高いので、通常350℃から510℃のオーダーであるがより普通には350℃から450℃のより低い温度において行われてよい。
【0026】
望むなら、本発明のプロセスにおいてはこれらの浸炭温度のいずれが用いられてもよい。しかし、浸炭反応の制御がより良くなり、煤の生成が少なくなるので、上記に記載されている350℃から510℃、より普通には350℃から450℃の低温側の浸炭温度が普通には使用される。
【0027】
浸炭ガス
本発明によれば、浸炭されるワークピースは、アセチレンまたは類縁体を浸炭化学種として含有する浸炭ガスと接触する。この状況において、「浸炭化学種(carburization specieまたはcarburizing specie)」とは、分解して浸炭反応のための元素状炭素を生じる浸炭ガス中の炭素含有化合物を指す。
【0028】
アセチレンだけでなく、エチレン性不飽和を有する炭化水素、アセチレン性不飽和を有する炭化水素、および芳香族性不飽和を有する炭化水素を含む実質的に任意の他の不飽和炭化水素(「アセチレン類縁体」)が本発明において浸炭化学種として用いられてもよい。この状況において、「炭化水素」はその通常の意味、すなわち炭素および水素だけで構成され、他の元素が存在しない化合物、を有する。例えば、共役形および非共役形の両方のモノオレフィンおよびポリオレフィンを含むエチレン性不飽和炭化水素が用いられてよい。エテン(エチレン)、プロペン(プロピレン)、ブテン、およびブタジエンが良い例である。アセチレンおよびプロピン(C)などのアセチレン性不飽和炭化水素も用いられてよい。アセチレンおよびC〜Cエチレン性不飽和化合物は、低いコストおよび容易な入手可能性のため、特に重要である。これらの化合物の混合物も用いられてよい。
【0029】
この浸炭化学種だけでなく、本発明のプロセスにおいて用いられる浸炭ガスは、随伴ガスも含む。この状況において、「随伴ガス(companion gas)」は、浸炭反応において出会う反応条件下で酸素と容易に反応し、さらに不飽和炭化水素でないいかなるガスも意味すると理解される。安価であり、容易に入手可能なので水素(H)が好ましい。天然ガス、プロパン、他のC〜Cアルカン、および他の飽和炭化水素も低温浸炭に含まれる高温において酸素と容易に反応するのでこの目的に適していると考えられる。他方、窒素および他の不活性ガスはこれらの条件下で酸素と反応しないのでこの目的に適していない。さらに、アセチレンおよび他の不飽和炭化水素は、活性な浸炭化学種として機能するので、本開示の意味の範囲内の「随伴ガス」ではない。
【0030】
本発明のプロセスにおいて用いられる浸炭ガスは、浸炭化学種および随伴ガスに加えて従来の技法に従ってさらに他の成分も含んでよい。従って、例えば、浸炭ガスは、窒素、アルゴンおよび類似物などの適当な不活性な希釈ガスを含んでよい。他のガスも用いられてよいが、顕著な量の酸素、窒素、ホウ素および/またはいずれかの他の非不活性元素(炭素および水素以外)を含む化合物を用いることを避けてそのような元素をワークピースに導入することを避けることが望ましい。
【0031】
真空条件
本発明によれば、アセチレンまたは類縁体を浸炭化学種として用いる低温浸炭は、随伴ガスも含有する浸炭ガスを用いて低真空条件下で行われる。この状況において「低真空」は約3.5から100トール(約500から約13,000Pa)の系の全圧を意味すると理解される。本発明によれば、ステンレス鋼の低温浸炭がこのように実行されると、従来法の低温浸炭において普通は起こる副生煤および好ましくない熱酸化膜の形成を実質的に完全になくすことができることが見いだされた。従って、本発明によれば望まれる魅力的な光沢ある金属的な外観を有する低温浸炭ステンレス鋼仕上がり製品を製造することが可能であり、清浄化ステップも、これらの望ましくない副生物を除去するために普通行われるステップもない。
【0032】
上記に示されているように、Tanakaらの米国特許第7,122,086号は、高真空において、すなわち1トール(約133Pa(パスカル))以下の全圧においてアセチレンとの接触によりステンレス鋼を低温浸炭することを記載している。この手法は副生煤および熱酸化膜の形成を減らすが、十分な量のこれらの好ましくない副生物が残り、浸炭されたワークピースは依然として最終製品が得られる前に機械的におよび/または化学的に清浄化される必要がある。いかなる理論にも束縛されたくはないが、少なくとも部分的にこの結果はワークピースのいわゆる「ベイルビー」層、すなわち研摩、機械加工または他の表面破壊性の製造技法の間にその結晶構造の配向乱れによって鋼の最も外側の表面に形成される最大約2.5ミクロンの厚さの非晶質層、に見いだされる汚染物質に起因すると考えられる。破砕粒子構造だけでなくベイルビー層も、酸素、水分、潤滑剤等を含む鋼の製造時に取り込まれる汚染物質を含むことが知られている。本発明のこの局面によれば、これらの汚染物質、特に水および酸素は、従来法の低温浸炭における熱酸化膜副生物の形成にあずかることができると考えられる。
【0033】
従って、本発明によれば、浸炭は、顕著により高い全圧(Tanakaの場合の最大値が1トールに対し、最小値が約3.5トール)を含む「低真空」条件下で、相当量の水素または他の随伴ガスの存在下で行われる。その結果、この随伴ガスと分解するアセチレンとの組み合わせによって作り出されるより強い還元条件のために、これらの汚染物質、特に水および酸素が、熱酸化膜副生物の形成を促進することが妨げられると考えられる。いずれにせよ、本発明によれば、(1)浸炭ガスの全圧が約3.5から100トール(約500から約13,000Pa)であり、(2)浸炭ガス中のアセチレンまたは類縁体の分圧が約0.5から20トール(約67から約2,666Pa)であり、そして(3)浸炭ガス中に相当量の随伴ガスが含まれていれば、副生煤および熱酸化膜の形成は事実上完全になくなることが見いだされた。
【0034】
浸炭ガスの最小全圧が少なくとも約3〜4トール(約500Pa)である理由は、これより有意に低い圧力は望ましくない熱酸化物層副生物の形成を促進するからである。
【0035】
浸炭ガスの最大全圧が約100トール(13,000Pa)である理由は、これより有意に高い圧力も望ましくない熱酸化物層副生物の形成を促進するからである。この点について、商業的に実用的な価格で入手可能な実質的にすべての産業用ガスは、少なくともあるレベルの酸素および水分汚染物質を含有している。浸炭ガスの全圧が約100トール(13,000Pa)を超え始めると、本発明のプロセスにおいて用いられるガス中の水分および/または酸素汚染物質からの望ましくない熱酸化物層副生物の形成が顕著になり始める。従って、本発明のプロセスにおいて用いられる浸炭ガスの全圧は、これらの水分および/または酸素汚染物質からのこの望ましくない副生物の形成を最小にするために望ましくは約100トール(約13,000Pa)以下に保たれる。
【0036】
浸炭ガス中のアセチレンまたは類縁体の最小分圧が約0.5トール(約67Pa)である理由は、これより有意に低い分圧は本発明の系において用いられる「低真空」条件下で不十分な浸炭を提供するからである。
【0037】
最後に、浸炭ガス中のアセチレンまたは類縁体の最大分圧が約20トール(約2,666Pa)である理由は、これより有意に高い分圧は過剰な煤の形成を促進するからである。
【0038】
従って、一般的に言うと、本発明のプロセスにおいて用いられる浸炭ガスの全圧は、普通は約3.5から100トール(約500から約13,000Pa)である。4から75トール(約533から約10,000Pa)、4.5から50トール(約600から約6,666Pa)、5から25トール(約666から約3,333Pa)、5.5から15トール(約733から約2,000Pa)のオーダーの全圧が望ましく、6から9トール(約80から約1,200Pa)のオーダーの全圧でさえ望ましい。同様に、浸炭ガス中のアセチレンまたは類縁体の分圧は、普通は約0.5から20トール(約67から約2,666Pa)である。0.6から15トール(約80から約2,000Pa)、0.7から10トール(約93から約1,333Pa)、0.8から5トール(約107から約666Pa)、および0.9から2.1トール(約120から約280Pa)のオーダーの分圧がより重要である。これは、アセチレンまたは他の浸炭化学種の濃度が一般に浸炭ガス全体を基準として約≦50体積%、≦40体積%、≦35体積%であり、あるいは≦30体積%でさえあり、3から50体積%、4から45体積%、7から40体積%のオーダーの濃度がより普通であり、10から35体積%のオーダーの濃度でさえより普通であることを意味する。全圧が約5から25トール(約666から約3,333Pa)であり、または6から9トール(約80から約1,200Pa)でさえあり、浸炭化学種の濃度が約7から40体積%であり、または約10から35体積%でさえある系がもっと重要である。
【0039】
上記に示されているように、本発明のプロセスにおいて用いられる浸炭ガスは、顕著な量の随伴ガス、好ましくは水素Hを含有する。上記にさらに示されているように、この随伴ガスの機能はワークピースが出会う還元条件を随伴ガスのない場合より強くすることであり、少なくとも本発明のプロセスが上記に記載されている低真空条件下で実行されると、系の中に既にあるアセチレンと組み合わされたこの随伴ガスの存在によって、望ましくない熱酸化物副生物膜の形成が事実上完全になくなることが見いだされた。従って、本発明の浸炭ガス中に含まれる水素または他の随伴ガスの量は、この機能を達成するのに十分であるべきである。
【0040】
実際問題として、これは、浸炭ガスの残り全体、すなわちアセチレンまたは類縁体で構成されない浸炭ガスのすべてが普通は水素または他の随伴ガスで構成されていることを意味する。これは、本発明のプロセスに含まれる比較的低い全反応圧3.5から100トール(約500から約13,000Pa)において、この残りの全量が比較的小さいからである。従って、窒素または他の不活性ガスを系に導入しても実経済的な利点は実際には得られない。
【0041】
上記の国際公開第2006/136166号は、そのアセチレン系浸炭ガス中に水素(H)だけでなく窒素(N)も含んでよいことを示している。しかし、同号に記載されている浸炭プロセスは、大気圧またはその近くで行われる。そのような比較的高い圧力においては、高価な水素の消費を減らすためだけでなく浸炭反応を制御しやすくし、煤生成を減らすために顕著な量の窒素を浸炭ガスに含むことは妥当である。
【0042】
しかし、本発明のプロセスは、はるかに低い全圧、約100トール(約13,000Pa)以下において行われる。これらのはるかに低い圧力においては、水素消費の費用はあまり重要ではなくなる。さらに、このはるかに低い圧力のせいでもともと少量しか存在しないアセチレンおよび水素のために、当然、反応の制御が簡単になる。さらに、望ましくない煤の生成がもともと少ない。実際の結果は、コストを減らし、反応制御を助け、煤生成を減らすために系の中に窒素または他の不活性ガスを含むことは、実際には不必要であるということである。従って、本発明のプロセスを行う最も実際的な方法は、浸炭ガスの残り全体、すなわちアセチレンまたは類縁体で構成されていない浸炭ガスのすべてを水素(H)または他の随伴ガスにすることである。他方、望むなら、十分な水素または他の随伴ガスが系の中に残って上記に記載されているその機能を実現する、すなわち熱酸化物副生物層の形成を遅らせる限り、系の中に窒素または他の不活性ガスを含んでもよい。
【0043】
実際問題として、これは、浸炭ガス中の水素または他の随伴ガスの量が普通はアセチレンまたは類縁体の量の少なくとも約2倍であることを意味する。言い換えると、アセチレンまたは類縁体に対する水素または他の随伴ガスの分圧の比は、普通は少なくとも約2である。≧4、≧5、≧7、≧10、≧15、≧20、≧25、≧50の分圧比が想定され、≧100の分圧比さえ想定される。
【0044】
活性化
上記に示されているように、ステンレス鋼が低温浸炭され得る前に、普通はその緊密な酸化クロム保護被膜を炭素原子に対して透過性にするように処理される。通常、これは高温、例えば200から400℃において、通常大気圧またはそれに近い圧力において、ワークピースとハロゲン含有ガス、例えばHF、HCl、NF、FまたはClを含む活性化ガスとの接触によって実行される。もっとも簡便には、活性化と浸炭との間にワークピースを反応器から取り出すこともワークピースを他の方法で大気に曝露することもなく、浸炭と同じ反応器の中で活性化が実行される。こうするとHClなどのより安価かつ取り扱いやすい塩素系化合物を用いることができるからである。本発明のプロセスによって低温浸炭されるステンレス鋼ワークピースを活性化するためにこれらの従来法の手法のどれが用いられてもよい。
【0045】
本発明の別の実施形態によれば、活性化と浸炭との間にワークピースを反応器から取り出すこともワークピースを他の方法で大気に曝露させることもなく浸炭と同じ反応器の中というだけでなく、浸炭反応に含まれるものと同様な体制の条件下で、すなわち事実上同じ「低」真空下で、事実上同じ温度で、浸炭ステップにおいて用いられている同じ随伴ガスの存在下で活性化が実行される。この手法の利点は、化学的に活性なガス、すなわち活性化ステップにおける活性化ガス、浸炭ステップにおける浸炭化学種(望むなら随伴ガスも可能)の流れだけを変化させることで、反応器の内部の温度および全圧を事実上同じに保つことができるために、プロセス全体にわたる制御が大いに容易になることである。これが、今度は、活性化と浸炭との間で切り替えることが必要になるガスの流れの変化の大きさを顕著に小さくし、このことは系の制御全体をより容易にする。この制御の容易さは、下記でさらに考察されているようにワークピースが活性化と浸炭との交互サイクルに付される本発明の特定の追加の実施形態において、特に有利である。
【0046】
この実施形態において、活性化と浸炭との両方における反応温度は、普通は実質的に同じに保たれる。なぜなら、これが最も簡便だからである。例えば350℃から450℃または510℃にもなるこれらの温度は、低温浸炭のための従来法の活性化において普通に出会う温度(200℃から400℃)より高いが、それでも、下記にさらに考察されているように特に活性化ガスがいくぶん希釈されるなら効果的である。活性化と浸炭とのために異なる温度を用いてもよいが、そうしても特に利点はない。異なる温度が用いられるなら、差は、普通は約100℃、50℃、25℃または10℃以下である。
【0047】
反応圧力については、望むなら大気圧、大気圧未満の圧力、および大気圧超の圧力を含むいずれの圧力において活性化が実行されてもよい。しかし、この実施形態によれば、活性化は、好ましくは浸炭ステップにおいて用いられる「低真空」またはそれに近い圧力、すなわち3.5から100トール(約500から約13,000Pa)、4から75トール(約533から約10,000Pa)、4.5から50トール(約600から約6,666Pa)、5から25トール(約666から約3,333Pa)、5.5から15トール(約733から約2,000Pa)において行われ、または6から9トール(約80から約1,200Pa)においてさえ行われる。
【0048】
2つの異なる手法が代表的である。圧力についての第1の手法においては、反応全圧は実質的に同じに保たれ、随伴ガス(および、あるなら系中の不活性ガス)の流量を変化させて化学的に活性なガスのさまざまな流量を考慮する。この点について、浸炭ガス中のアセチレンまたは他の浸炭化学種の濃度は、普通は活性化ガス混合物中の活性化ガスの濃度よりいくぶんか高い。従って、この手法が用いられるなら、活性化から浸炭へ切り替わるとき随伴ガスの流量を減らして化学的に活性なガスの流れの増加分と相殺させる。反対に、浸炭から活性化へ切り替えるとき随伴ガスの流量を増加させて化学的に活性なガスの流れの減少分と相殺させる。
【0049】
この手法においては活性化と浸炭との両方において反応圧力は実質的に同じに保たれるが、圧力が変化してもよい。異なる圧力が用いられるなら、これらの圧力の間の差は、普通は約20トール、15トール、10トール以下であり、5トール以下でさえある。
【0050】
圧力についての第2の手法においては、随伴ガスの流量は同じに保たれ、全圧を変化させて反応器に供給されるガスの全量の変化に適応させる。上記に示されているように、浸炭ガス中のアセチレンまたは他の浸炭化学種の濃度は、普通は活性化ガス混合物中の活性化ガスの濃度よりいくぶんか高い。従って、この手法が用いられるなら、反応室の内部の全絶対圧は、浸炭の間にはこの手順の間に反応器に供給されるガスの全量が大きくなるので相対的に高くなり、活性化の間にはこの手順の間に反応器に供給されるガスの全量が小さくなるので相対的に低くなる。
【0051】
この手法においては、反応圧力の変化は、反応器への全ガス流量の変化に正比例する。例えば、活性化から浸炭へ切り替わるとき反応器に供給されるガスの全量の流量が10%増加すると、定常状態に達した後の反応器内の絶対圧も10%増加する。しかし、望むなら、反応圧のこの変化の大きさは変えてもよい。変えることが望ましければ、この定常状態圧から±20%、±15%、±10%変えてよく、±5%変えてもよい。
【0052】
望むなら、上記の2つの圧力手法のハイブリッドも用いられてよい。すなわち、活性化から浸炭へ、および浸炭から活性化へ切り替わるとき、反応圧が一定のままである範囲で随伴ガス全体の流量が変化してもよい。このハイブリッド手法は、はるかに大きな反応槽が用いられる商業運転においてより便利であり得る。なぜなら、この手法は、圧力制御に必要な精度を低くするからである。反応器の内部の圧力が第1の圧力手法および第2の圧力手法によって確立されるであろう定常状態圧の間に保たれる限り、本発明のこの実施形態の利点が実体化される。
【0053】
この実施形態において用いられる活性化ガスは、望むなら「ニート」すなわちいかなる他のガスも存在させずに用いられてよい。しかし、それは、普通は上記に記載されているように浸炭ステップにおいて用いられる同じ随伴ガス(および、あるなら不活性ガス)と組み合わされる。なぜなら、これが最も簡便だからである。しかし、浸炭の場合と同じように、含まれる低い圧力のために、系に不活性ガスを含んでも実経済上の利点も技術上の利点もなく、従って不活性ガスは普通は用いられない。
【0054】
いずれにせよ、随伴ガス(および、あるなら不活性ガス)が活性化ガスと組み合わされるとき、活性化ガス混合物、すなわち活性化ガスと随伴ガスとの混合物の中にいかなる適当な濃度の活性化ガスが含まれてもよい。特定の実施形態において用いられる特定の濃度は、望まれる活性化条件の厳しさ、活性化手順に割り当てられた時間、随伴ガスの流量の点における活性化ステップと浸炭ステップとの間の望まれる類似性などを含む複数の因子に依存し、定型的な実験によって容易に決定することができる。活性化ガス混合物中の活性化ガスの濃度は、0.1体積%から30体積%、0.5体積%から10体積%が一般的であり、1体積%から5体積%も一般的である。
【0055】
活性化ガスのパルス化
本発明のさらに別の特徴によれば、反応器への活性化ガスの供給はパルス化される。言い換えれば、この活性化ガスの流量は活性化ステップの間に高い値と低い値(ゼロを含む)との間でパルス化される。この手法は活性化時間を標準技法と比較してさらに短くすることを可能にすると考えられる。
【0056】
活性化ガスのパルス化は、さまざまな異なる方法で実行されてよい。例えば、活性化ガスが「ニート」すなわち希釈剤なしで用いられる場合、活性化ガスは反応器への活性化ガスの流量を高い値と低い値との間で繰り返し変化させることによってパルス化されてよい。さらに、望むなら、これらの高い値と低い値とのレベルが活性化手順の途中で増加または減少してワークピースが出会う活性化条件の厳しさの対応する増加または減少を実現してよい。同じように、望むなら、各パルスの持続期間、各パルスの頻度、または両方が活性化手順の途中で増加または減少してワークピースが出会う活性化条件の厳しさの対応する増加または減少を実現してよい。
【0057】
活性化ガスが上記で考察されているように随伴ガスおよび任意選択の不活性ガスと組み合わされる状況においても同じ手法が用いられてよい。例えば、活性化ガス混合物中の活性化ガスの濃度が高い値と低い値との間でパルス化されてよく、および/または反応器に供給される活性化ガスの流量が高い値と低い値との間で変化してよい。同様に、望むなら、各パルスの大きさ、頻度および/または持続期間を活性化手順の途中で変化させることによって活性化条件の厳しさが増加または減少してよい。
【0058】
浸炭ポテンシャルの変化
同じく参照によって開示が全体として本明細書に組み込まれる本発明者らの以前の米国特許第6,547,888号において、発明者らはステンレス鋼ワークピースが出会う浸炭ポテンシャルが浸炭反応の途中で変化する改変低温浸炭プロセスを記載している。この変化が適切に行われるという前提で、発明者らは従来技法と比べ浸炭反応全体がより速く実行され、煤の生成が減り、または両方が得られることを見いだした。
【0059】
同号に記載されているように、浸炭ポテンシャルのこれらの変化は、(1)浸炭温度を下げること、(2)浸炭ガス中の浸炭化学種の濃度を下げること、(3)ワークピースを高い温度に保ったままで浸炭プロセスを中断すること、および(4)(3)と同じように浸炭プロセスを中断するが、この中断の間にハロゲン含有ガスとの接触によってワークピースも再活性化させることを含む。
【0060】
本発明の別の特徴によれば、発明者らの以前の米国特許第6,547,888号に記載されている技術を本明細書に記載されている本発明の低温浸炭プロセスに適用することによって浸炭プロセス全体においてさらなる改善を実現することができることを見いだした。詳しくは、これらの2つの技術を組み合わせることによって浸炭反応を完了させるのに要する時間全体のなお一層の短縮、浸炭反応の間に生成する煤の量のなお一層の低減、または両方を実現することができることを見いだした。
【0061】
発明者らの‘888号特許に記載されているように、手法(1)すなわち反応温度を下げることによる浸炭ポテンシャルの変化は、浸炭の早期段階において普通は該当するであろう反応温度より高い反応温度を用い、続いて後期段階においてより低い反応温度を用いることを想定している。同様に、手法(2)すなわち浸炭ガス中の浸炭化学種の濃度を減らすことによる浸炭ポテンシャルの変化は、浸炭の早期段階において普通は該当するであろう濃度より高い浸炭化学種の濃度を用い、続いて後期段階においてより低い濃度を用いることを想定している。「正常な」技法からのこの同じ変化がこの実施形態においても採用される。詳しくは、この実施形態は、最初に適当な組の「ベースライン」浸炭条件を決定し、浸炭反応全体の間にこれらの条件が一定に保たれて本発明のプロセスが実行されることによって行われてよい。次に、これらのベースライン浸炭条件を指針として用いて浸炭温度の下げ方、浸炭ガス中の浸炭化学種の濃度の下げ方、または両方を決定することができる。これは、定型的な実験によって容易に実行されてよい。
【0062】
同様に、‘888号特許の手法(3)(すなわちワークピースを高い温度に保ったままで浸炭を中断することによる浸炭ポテンシャルの変化)を本発明の技術にどのように当てはめるか、および‘888号特許の手法(4)(すなわち浸炭の中断の間にワークピースをハロゲン含有ガスと接触させることによる浸炭ポテンシャルの変化)をどのように本発明の技術に当てはめるかも、上記に記載されているような方法で決定されたベースラインの組の活性化条件とベースラインの組の浸炭条件とを用いる定型的な実験によって容易に決定されてよい。
【0063】
従って、例えば、本発明のプロセスによってAISI316ステンレス鋼ワークピースを低温浸炭するために用いることができる一定の活性化および反応条件のベースラインの組は、4立方フィート(約113リットル)の内部体積を有する浸炭反応器の中で350℃から450℃、および6から8トールの圧力において水素ガス中1体積%の塩化水素を含む5リットル/分の活性化ガス混合物との1/4から1時間の接触によってワークピースを活性化させ、続いて同じ反応器の中で350℃から450℃の温度、および6から8トールの圧力において10%から35%のアセチレンおよび残りの水素を含む浸炭ガスとの15から30時間の接触によってワークピースを浸炭することを含む。
【0064】
このベースラインを指針として、浸炭反応の間に浸炭条件が変化する‘888号特許の技術は、以下の例示的な改変形のいずれかによって実体化されてよい。
【0065】
(a)ベースラインと同じであるが、ワークピースの活性化が上記に記載されている方法と同じように行われる予備浸炭ステップによって中断される。
【0066】
(b)ベースラインまたは(a)と同じであるが、主浸炭ステップ(すなわち活性化の後)が勾配のついたアセチレン含有率、すなわち連続的に減少する、例えば20体積%から35体積%で始まり、次に浸炭の終りまでに10体積%に減るアセチレン含有率を用いて行われる。
【0067】
(c)ベースラインまたは(a)と同じであるが、浸炭が浸炭ガスのパルス流を用いて行われ、各パルスは例えば上記に記載されているアセチレン富化浸炭ガスの1分間の流れとそれに続く100%水素ガスの14分間の流れとを含む(この点について、本明細書に記載されている浸炭ガスのパルス流は、‘888号特許の手法(3)すなわちワークピースを高い温度に保ったままで浸炭を中断することによる浸炭ポテンシャルの変化の別の例にすぎないことが理解される)。
【0068】
(d)(c)と同じであるが、浸炭ガス中のアセチレンの濃度が、例えば各アセチレン富化パルスの長さを浸炭の早期段階における持続期間1分から浸炭の後期段階における持続期間20秒に減らすことによって、パルス化と下方勾配化との両方に付される。
【0069】
(e)(c)と同じであるが、浸炭ガス中のアセチレンの濃度がパルス化と下方勾配化との両方に付され、アセチレン濃度の下方勾配化は、例えばパルスの間の時間を浸炭の早期段階における14分から浸炭の後期段階における29分に増加させることによってパルスの頻度を減らすことによって実現される。
【0070】
(f)(c)と同じであるが、浸炭ガス中のアセチレンの濃度がパルス化と下方勾配化との両方に付され、アセチレン濃度の下方勾配化は、同じ持続期間のパルスを用いるが継続するパルス中のアセチレンの濃度を低下させること、例えば浸炭ガス中のアセチレン濃度を浸炭の早期段階における約20%から35%から浸炭の後期段階における10%に減らすことによって実現される。
【0071】
(g)ベースラインまたは(a)と同じであるが、主浸炭ステップ(すなわち活性化の後)が勾配のついた温度、すなわち低下する、例えば510℃における30分間で始まり、120分間で450℃に低下し、続いて浸炭ステップの残りの間にさらに380℃に低下する浸炭温度を用いて行われる。
【0072】
(h)ベースラインまたは(a)と同じであるが、浸炭が(c)における浸炭ガスのパルス流を用いて行われ、浸炭温度が(g)におけるように下方勾配化される。
【0073】
(i)(h)と同じであるが、浸炭ガス中のアセチレンの濃度も(e)におけるように、すなわちパルスの頻度を減少させることによって、例えばパルスの間の時間を浸炭の早期段階における14分から浸炭の後期段階における29分に増加させることによって下方勾配化される。
【0074】
(j)(h)と同じであるが、浸炭ガス中のアセチレンの濃度も(f)におけるように、すなわち各パルスに用いられている浸炭ガス中のアセチレン濃度を浸炭の早期段階における約20%から35%から浸炭の後期段階における10%に低下させることによって下方勾配化される。
【実施例】
【0075】
本発明をより詳しく記載するために、以下の実施例が提供される。
【0076】
実施例1
4立方フィート(約113リットル)の内部体積を有する浸炭反応器の中に、清浄化して有機残留物を除去した後のAISI316ステンレス鋼ワークピースを入れた。次に、反応器の内部温度を450℃に上げ、排気して6トールの水素圧にした。次に、反応器の内部温度を450℃、および反応器の内部圧力を6トールに保ったままでH中に1体積%のHClガスを含む活性化ガスを約5リットル/分の流量で反応器に連続的に供給することによってワークピースを活性化した。
【0077】
1/4時間後、ワークピースを反応器から取り出すこともワークピースを他の方法で大気に曝露することもなく、反応器の内部温度を450℃、および反応器の内部圧力を6トールに保ったままで反応器への活性化ガスの流れを終了し、水素(H)中に20体積%のアセチレンを含む浸炭ガスの5リットル/分の流れに換えた。
【0078】
これらの条件を実質的に一定に1時間保ち、その時点でワークピースを反応器から取り出すこともワークピースを他の方法で大気に曝露することもなく上記の活性化ステップと浸炭ステップとを繰り返した。すなわち、ワークピースを1時間浸炭した後、1回目の浸炭ステップを終了し、そして2回目の活性化ステップに換えた。これは、アセチレンの流れを終了し、新しいHClの流れを開始し、ワークピースが1回目と実質的に同じ2回目の活性化ステップ、すなわち実質的に同じ時間、実質的に同じ温度、および実質的に同じ活性化ガスに付されるように水素の流れを増加させることによって実行した。
【0079】
1時間後、2回目の活性化ステップを終了し、そして再びワークピースを反応器から取り出すこともワークピースを他の方法で大気に曝露することもなく、2回目の、主浸炭ステップを開始した。これは、HClの流れを終了し、アセチレンの新しい流れを開始し、ワークピースが第1の浸炭ステップと同じ温度、圧力および浸炭ガス組成の条件に曝露されるように水素の流れを減らすことによって実行した。
【0080】
次に、発明者らの以前の米国特許第6,347,888号のままであれば該当するであろうより浸炭反応全体を速く進ませることを目的として、2回目の主浸炭ステップを開始した約3時間後を始点として、浸炭ガスの浸炭ポテンシャルを浸炭の早期段階におけるより高い値から浸炭の後期段階におけるより低い値に減らした。これは、2回目の浸炭ステップを開始した3時間後を始点として、浸炭ガス中のアセチレンの濃度を段階的な増分で20体積%から15体積%に、次に第2の浸炭ステップを開始した5時間後を始点として、先と同じく15体積%から10体積%に減らすことによって実行した。浸炭をこれらの条件(450℃、6トールの全圧、浸炭ガス中のアセチレン濃度10体積%、残りは水素)下でさらに9時間続け、その後、浸炭は完了した。
【0081】
この時点(2回目の主浸炭ステップが開始された14時間後)において、浸炭反応器へのアセチレンの流れを終了し、一方、水素の流量はワークピースがほぼ室温に冷却されるまで6トールの圧力で継続された。反応器から取り出した後、こうして得られたワークピースを調べ、実質的に炭化物析出物を含まず、約700〜800ビッカースの表面近傍硬度を示すほぼ16〜18μの深さの硬化した表面(すなわち肌)を有することを見いだした。目視検査により、ワークピースは、低温浸炭の結果として普通は形成する表面付着性の煤および熱酸化物被覆物を実質に含まない、明るい光沢ある金属表面を示し、それによっていかなる後処理清浄化の必要もないことが明らかにされた。
【0082】
実施例2
2回目の主浸炭ステップにおいて浸炭反応器にパルス化したアセチレンの流れを供給したことを除いて実施例1を繰り返した。始めは20体積%アセチレン/80体積%水素を含む5リットル/分の浸炭ガスを15分毎に1パルスの頻度の1分間のパルスで浸炭反応器に供給した。各パルスの間に14分間の間隔があり、その間に反応器に供給された浸炭ガスは5リットル/分の100%水素であった。
【0083】
2回目の主浸炭ステップを開始した1時間後、各パルスの持続期間を60秒から40秒に減らし、一方、パルスの頻度を同じに保つために各間隔の持続期間を20秒増やした。次に、2回目の浸炭ステップを開始した3時間後、再び各パルスの持続期間を40秒から20秒に減らし、一方、パルスの頻度を同じに保つために各間隔の持続期間をさらに20秒増やした。この2回目の変化の後、浸炭をさらに11時間半(2回目の、主浸炭ステップ後、合計14時間半)継続し、その後、浸炭は完了した。
【0084】
次に、ワークピースを冷却し、反応器から取り出し、上記の実施例1と同じように調べた。こうして得られた低温浸炭ワークピースは、実質的に炭化物析出物を含まず、約650〜750ビッカースの表面近傍硬度を示すほぼ15〜17μの深さの硬化した表面(すなわち肌)を有することを見いだした。目視検査により、このワークピースも実質的に表面付着性の煤および黄色がかった熱酸化物を含まず、後処理清浄化を必要としない明るい光沢ある金属表面を示すことが明らかにされた。
【0085】
実施例3
(a)両方の活性化ステップにおいて反応器への活性化ガスの流量は約12リットル/分であり、
(b)1回目の浸炭ステップにおいて用いられた浸炭ガスはH中10体積%のアセチレンで構成され、
(c)2回目の浸炭ステップを13.5時間継続し、2回目の浸炭ステップ全体においてH中10体積%のアセチレンで構成された浸炭ガスを用いた
ことを除いて実施例1を繰り返した。
【0086】
得られた浸炭ワークピースの分析により、実質的に炭化物析出物を含まず、約800〜900ビッカースの表面近傍硬度を示すほぼ18〜20μの深さの硬化した表面(すなわち肌)が明らかにされた。目視検査により、ワークピースは低温浸炭の結果として普通は形成する種類の熱酸化物被覆物を示さないが、一部の表面区域は薄い付着性の煤の層を有することが明らかにされた。
【0087】
実施例4
ワークピースがAL6XNの名称でAllegheny Ludlum Corporationから入手可能なNi 25.5/23.5重量%、Mo 7/6重量%、N 0.25/0.18重量%、残りがFeで構成される高度合金化ステンレス鋼である合金6MO(UNS N08367)から作られたことを除いて実施例3を繰返した。得られた浸炭ワークピースの分析により、実質的に炭化物析出物を含まず、約900〜1000ビッカースの表面近傍硬度を示すほぼ12〜14μの深さの硬化した表面(すなわち肌)が明らかにされた。目視検査により、ワークピースは低温浸炭の結果として普通は形成する表面付着性の煤および熱酸化物被覆物を実質的に含まない、明るい光沢ある金属表面を示し、それによっていかなる後処理清浄化の必要もないことが明らかにされた。
【0088】
実施例5
活性化ガスがN中1体積%のHClで構成されたことを除いて実施例3を繰り返した。この実施例においては活性化ガス中の随伴ガスとしてNを用いた。なぜならこの手法が特に、未消費Hを燃焼させるためのアフターバーナーを通して流出活性化ガスを処理する必要をなくすことによって流出活性化ガスのより容易な処理を可能にするからである。得られた浸炭ワークピースの分析により、実質的に炭化物析出物を含まず、約800〜900ビッカースの表面近傍硬度を示すほぼ14〜16μの深さの硬化した表面(すなわち肌)が明らかにされた。目視検査により、得られたワークピースは低温浸炭の結果として普通は形成する種類の熱酸化物被覆物を示さないが、一部の表面区域が薄い付着性の煤の層を有することが明らかにされた。
【0089】
実施例6
活性化ガスがN中1体積%のHClで構成されたことを除いて実施例4を繰り返した。得られた浸炭ワークピースの分析により、実質的に炭化物析出物を含まず、約700〜800ビッカースの表面近傍硬度を示すほぼ10〜14μの深さの硬化した表面(すなわち肌)が明らかにされた。目視検査により、ワークピースが低温浸炭の結果として普通は形成する表面付着性の煤および熱酸化物被覆物を実質的に含まない、明るい光沢ある金属表面を示し、それによっていかなる後処理清浄化の必要もないことが明らかにされた。
【0090】
本発明のほんの少数の実施形態だけが上記に記載されたが、本発明の技術思想および範囲から逸脱することなく多くの改変が施され得ることが理解されるべきである。すべてのそのような改変は、以下の特許請求の範囲だけによって限定される本発明の範囲内に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄、ニッケルまたはクロム系合金から作られたワークピースをガス浸炭によって、表面硬化させるためのプロセスであって、前記ワークピースが高い浸炭温度において浸炭ガスと接触して炭素を前記ワークピース表面に拡散させ、それにより実質的に炭化物析出物を含まない硬化した一次表面層を形成させ、
(1)前記浸炭ガスは、不飽和炭化水素を含む浸炭化学種を含有し、
(2)前記浸炭ガス中の前記浸炭化学種の分圧は、約0.5から20トール(約67から約2,666Pa)であり、
(3)前記浸炭ガスの全圧は、約3.5から100トール(約500から約13,000Pa)であり、
(4)前記浸炭ガスは随伴ガスも含有し、前記随伴ガスは前記高い浸炭温度および全圧下で酸素と反応するが不飽和炭化水素ではないガスを含む
プロセス。
【請求項2】
ワークピースはステンレス鋼から作られ、そしてさらに前記浸炭ガス中の前記随伴ガスの分圧は、前記浸炭化学種の前記分圧の少なくとも2倍である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記浸炭ガスは、アセチレンおよび水素を含む、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記浸炭ガスは、実質的に不活性ガスを含まない、前記請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記浸炭ガスの前記全圧は約5〜25トール(約666から約3,333Pa)であり、そして前記浸炭ガス中の浸炭化学種の濃度は約7〜40体積%である、前記請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記浸炭ガスの前記全圧は約6〜9トール(80〜1,200Pa)であり、そして前記浸炭ガス中の浸炭化学種の前記濃度は約10〜35体積%である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記浸炭ガスの浸炭ポテンシャルが浸炭反応の途中で変化する、前記請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
浸炭は浸炭反応器中で行われ、そしてさらに前記浸炭ポテンシャルは前記浸炭反応器への浸炭化学種の流量をパルス化することによって変化させられる、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記浸炭ガスの前記浸炭ポテンシャルは、(1)前記反応温度を浸炭の早期段階におけるより高い反応温度から浸炭の後期段階におけるより低い反応温度に下げることによって、および(2)前記浸炭ガス中の浸炭化学種の前記濃度を浸炭の早期段階におけるより高い濃度から浸炭の後期段階におけるより低い濃度に下げることによって、の少なくとも1つによって変化させられる、請求項7に記載のプロセス、
【請求項10】
前記浸炭ガスの前記浸炭ポテンシャルは、(3)前記浸炭反応器への浸炭化学種の前記流れを中断すること、および(4)前記浸炭反応器への浸炭化学種の流れを中断すること、およびさらにこの中断の間に前記ワークピースをハロゲン含有ガスと接触させること、の少なくとも1つによって変化させられる、請求項7に記載のプロセス。
【請求項11】
前記ワークピースは活性化ガスとの接触によって活性化され、活性化および浸炭は、活性化ステップと浸炭ステップとの間で前記ワークピースを前記反応器から取り出すことまたは前記ワークピースを他の方法で大気に曝露することなく、同じ反応器の中で実行される、前記請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記ワークピースは、活性化圧力および高い活性化温度における前記活性化ガスと前記随伴ガスとの混合物を含む活性化ガス混合物との接触によって活性化され、前記活性化温度と浸炭温度との差は100℃以下であり、そしてさらに前記活性化圧力と浸炭圧力との差は20トール以下である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記活性化温度と浸炭温度との差は50℃以下であり、そしてさらに前記活性化圧力と浸炭圧力との差は10トール以下である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
活性化の間の前記反応器中の前記活性化ガス混合物の絶対圧と、浸炭の間の前記反応器中の前記浸炭ガスの絶対圧との差は±10%以内である、請求項11から13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
ステンレス鋼から作られたワークピースが浸炭反応器の中で、水素ガス中0.1体積%から20体積%の塩化水素の混合物を含む活性化ガスを前記反応器中に流入させ、そして350℃から510℃、および3.5から100トールの圧力において前記ワークピースと1/4から4時間接触させることによって活性化され、その後、前記ワークピースを前記浸炭反応器から取り出すことなく、前記ワークピースは主浸炭ステップにおいて浸炭される、前記請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
水素ガス中0.5体積%から10体積%の塩化水素の混合物を含む活性化ガスが前記反応器中に流入させられ、そして350℃から450℃、および5から25トールの圧力において前記ワークピースと接触させられ、その後、7%から40%のアセチレンと残りの水素とを含む浸炭ガスを前記反応器に流入させ、それにより前記ワークピースと350℃から450℃の温度および5から25トールの圧力において接触させることによって、前記ワークピースを前記浸炭用反応器から取り出すことなく、前記ワークピースは主浸炭ステップにおいて浸炭される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
水素ガス中0.1体積%から5体積%の塩化水素の混合物を含む活性化ガスが前記反応器中に流入させられ、そして350℃から450℃、および6トールから9トールの圧力において前記ワークピースと接触させられ、その後、10%から35%のアセチレンと残りの水素とを含む浸炭ガスを前記反応器に流入させ、それにより前記ワークピースと6から9トールの圧力で接触させることによって、前記ワークピースを前記浸炭反応器から取り出すことなく、前記ワークピースは主浸炭ステップにおいて浸炭される、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記反応器への活性化ガスの流れは中断され、この中断の間に、前記ワークピースは予備浸炭ステップに付され、前記予備浸炭ステップにおいて、前記ワークピースが10%から35%のアセチレンと残りの水素とを含む浸炭ガスと350℃から450℃の温度および6から9トールの圧力において1/4から1時間接触させられ、その後、前記ワークピースの活性化が再開される、請求項15から17のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記ワークピースの活性化が完了した後、前記ワークピースは主浸炭ステップにおいて浸炭され、前記主浸炭ステップにおいて前記ワークピースは浸炭ガスと接触させられ、前記浸炭ガスのアセチレン含有率が約20体積%から35体積%の初期値から約10体積%の最終値に減る、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
(a)前記浸炭反応器への前記活性化ガスの塩化水素含有率および(b)前記浸炭反応器への前記浸炭ガスの前記アセチレン含有率の少なくとも1つの流量はパルス化される、請求項15から19のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記主浸炭ステップの間に前記浸炭反応器に供給される前記浸炭ガスの前記アセチレン含有率はパルス化され、そしてさらに前記浸炭ガスの前記浸炭ポテンシャルは、
・これらのパルスの頻度を減らすこと、
・これらのパルスの持続期間を減らすこと、
・これらのパルスの間に前記反応器に供給される前記浸炭ガス中の前記浸炭化学種の濃度を減らすこと、または
・それらの組み合わせ
によって前記主浸炭ステップの間に減らされる、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記活性化ステップの間の前記反応器への活性化ガスの前記流れはパルス化され、そしてさらに前記活性化処理の強さは
・これらのパルスの頻度を減らすこと、
・これらのパルスの持続期間を減らすこと、
・これらのパルスの間に前記反応器に供給される前記活性化ガス混合物中の前記活性化ガスの前記濃度を減らすこと、または
・それらの組み合わせ
によって前記活性化処理の間に減らされる、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
浸炭反応器の中で浸炭が行われ、
前記浸炭ガスの浸炭ポテンシャルは、(1)前記浸炭温度を下げること、(2)前記浸炭ガス中の浸炭化学種の濃度を下げること、(3)前記ワークピースを高い温度に保ったままで浸炭プロセスを中断すること、および(4)前記ワークピースを高い温度に保ったままで前記浸炭プロセスを中断し、さらにこの中断の間に前記ワークピースをハロゲン含有ガスとの接触によって再活性化させること、の少なくとも1つによって浸炭反応の途中で変化させられ、そしてさらに
前記浸炭ポテンシャルは、前記浸炭反応器に供給される前記浸炭化学種の流量をパルス化することによってさらに変化させられる
請求項1に記載のプロセス。
【請求項23】
光沢ある金属的な外観を示す表面硬化した耐食性のステンレス鋼ワークピースを前記ワークピース表面からの副生煤または熱酸化物の除去を必要とせずに製造するためのプロセスであって、炭素を前記ワークピース表面に拡散させ、それによって実質的に炭化物析出物を含まない硬化した一次表面層を形成させるには十分であるが、副生煤または熱酸化物を少しでも形成させるには不十分である時間および温度の条件下で前記ワークピースを浸炭ガスと接触させることを含み、
(1)前記浸炭ガスは、アセチレンおよび水素を含み、
(2)前記浸炭ガス中のアセチレンの分圧は、約0.5から20トール(約67から約2,666Pa)であり、そして
(3)前記浸炭ガスの全圧は、約3.5から100トール(約500から約13,000Pa)である
プロセス。
【請求項24】
前記浸炭ガス中の水素対アセチレンのモル比は、少なくとも2:1である、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記ワークピースと前記浸炭ガスとの接触に先立ち、前記ワークピースは、水素とハロゲン含有ガスとの混合物を含む活性化ガスと接触させられる、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記ワークピースは、前記活性化ガスおよび前記浸炭ガスとの接触の間に前記ワークピースを露出させて大気と接触させることなく、同じ浸炭反応器の中で前記活性化ガスおよび前記浸炭ガスと接触させられる、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
(a)前記活性化ガスおよび(b)前記浸炭ガス中の前記アセチレンの少なくとも1つの前記浸炭反応器への流量がパルス化される、請求項26に記載のプロセス。
【請求項27】
前記浸炭反応器への前記浸炭ガスのアセチレン含有率がパルス化される、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記パルスの持続期間と前記パルスの頻度との少なくとも1つは、前記浸炭ガスの浸炭ポテンシャルが浸炭反応の途中で減るように、浸炭の早期段階におけるより高い値から浸炭の後期段階における相対的により低い値に減らされる、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
前記浸炭ガスの浸炭ポテンシャルは、(1)浸炭温度を低くすること、(2)前記浸炭ガス中の浸炭化学種の濃度を低くすること、(3)前記ワークピースを高い温度に維持したままで浸炭プロセスを中断すること、および(4)前記ワークピースを高い温度に維持したままで前記浸炭プロセスを中断し、さらにこの中断の間に前記ワークピースをハロゲン含有ガスとの接触によって再活性化すること、の少なくとも1つによって浸炭反応の途中で変化させられる、請求項23に記載のプロセス。

【公表番号】特表2013−501852(P2013−501852A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523940(P2012−523940)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/044510
【国際公開番号】WO2011/017495
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(500120266)スウエイジロク・カンパニー (30)
【Fターム(参考)】