説明

低硫黄金属系清浄分散剤

【課題】腐食を殆ど示さない、低硫黄で高TBNの清浄分散剤の製造方法を提供する。
【解決手段】硫黄分が少なくTBNが高いアルキルヒドロキシベンゾエート清浄分散剤の製造方法を記載する。記載するアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物、および過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物は、硫黄分が約0.1乃至1.2質量%の範囲にあり、潤滑油組成物において有効な腐食防止性清浄分散剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用潤滑油組成物に好ましく用いられる、硫黄分が少なくてTBNが高い新規な清浄分散剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
清浄分散剤は、数十年の間、潤滑油組成物の成分として使用されている。しかし、近年、いわゆる「低SAPs」(硫黄/灰分/リン)の自動車エンジン油の基本成分として、ヒドロキシ芳香族カルボキシレート塩、特にサリチレートの使用に対する関心が高まっている。例えば、特許文献1には、アルキルサリチル酸の未硫化アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を含む低硫黄、リン及び硫酸灰分の潤滑油組成物が開示されている。
【0003】
特許文献1に教示されている未硫化アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩の外に、硫黄含有ヒドロキシ芳香族カルボキシレート組成物も知られている。
【0004】
特許文献2には、潤滑油に分散させたときに優れた清浄作用と優れた腐食防止作用の両方を示し、これにより腐食、スラッジやワニス形成、リングこう着、およびその他高負荷能で機能する潤滑油で直面する難点を防止するのに有効な単一添加剤である、アルキル又はシクロアルキルサリチレートの金属塩が開示されている。
【0005】
特許文献3には、流動点降下性と粘度指数向上性が増大したアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸塩の硫化物が開示されている。一定の油で一定の使用条件下で酸度の発生を遅らせる点で、酸化防止性の改善が特に顕著である。
【0006】
特許文献4には、アルキル置換アリール金属酸化物の硫化物が開示されている。これらアルキル化アリール金属酸化物の硫化物の特徴は、少なくとも二つの芳香核の存在にあり、金属酸化物基の酸素がアリール核に結合し、そして芳香核は、硫黄、セレンおよびテルルからなる群より選ばれた少なくとも一原子の元素により相互に連結している。化合物は、潤滑油中で酸化の有害な影響を低減する効力が増大することを示している。
【0007】
特許文献5には、アルキル化ヒドロキシ芳香族(フェノール)硫化物の金属塩が開示されている。この化合物は、アルキル置換アリール金属酸化物の縮合物であり、金属酸化物基の酸素がアリール核に直接結合し、そして少なくとも二つのアルキル置換アリール核は少なくとも一原子の硫黄により相互に連結している。
【0008】
特許文献6には、フェノールまたはサリチル酸又はその塩を、約150℃乃至200℃の温度で、カルボン酸又はその塩とポリアルキレングリコールまたはアルキレン又はポリアルキレングリコールアルキルエーテルの存在下で、硫黄およびアルカリ土類塩基と反応させることにより製造された、フェノール又はサリチル酸硫化物の塩基性金属塩が開示されている。生成物は、潤滑剤用清浄分散剤として有用である。
【0009】
特許文献7には、サリチル酸又はその塩を、約150℃乃至250℃の温度で、アルキレン又はポリアルキレングリコール又はそのモノエーテルの存在下で、硫黄およびアルカリ土類塩基と反応させることにより製造された、サリチル酸硫化物の塩基性金属塩が開示されている。生成物は、潤滑剤用清浄分散剤として有用である。
【0010】
特許文献8には、硫化フェネート、硫化サリチレート、硫化多ヒドロキシル芳香族化合物の塩、およびそれらの化学的及び物理的混合物が開示されている。
【0011】
特許文献9には、脂肪族炭化水素置換フェノールを硫化し、得られた生成物をアルカリ金属水酸化物と二酸化炭素でアルカリ金属サリチレートに変換することに特徴がある、硫化金属脂肪族炭化水素置換サリチレートが開示されている。
【0012】
特許文献10には、脂肪族炭化水素置換サリチル酸又はその金属塩をハロゲン化硫黄で硫化し、その後反応生成物を過塩基性金属サリチレートに変換することによる、硫化過塩基性金属脂肪族炭化水素置換サリチレートが開示されている。
【0013】
特許文献11には、脂肪族炭化水素置換サリチル酸を塩基性金属化合物により二酸化炭素を用いて、塩基度指数が少なくとも1.5の過塩基性金属サリチレートに変換し、その後過塩基性金属サリチレートを元素硫黄と一緒に加熱して硫化することに特徴がある、硫化過塩基性金属脂肪族炭化水素置換サリチレートが開示されている。
【0014】
【特許文献1】米国特許第6569818号明細書
【特許文献2】米国特許第2311931号明細書
【特許文献3】米国特許第2256443号明細書
【特許文献4】米国特許第2366873号明細書
【特許文献5】米国特許第2366874号明細書
【特許文献6】米国特許第3410798号明細書
【特許文献7】米国特許第3595791号明細書
【特許文献8】米国特許第6235688号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第0168111号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第0168110号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第0168880号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、上記の参照文献には、比較的高レベルの硫黄を含んでいて、低SAPS油を配合するのには望ましくないヒドロキシ芳香族カルボキシレート組成物が教示されている。燃料または潤滑油に含まれる硫黄は、往々にして腐食性である硫酸や硫酸塩に変換される。このため、低レベルの硫黄が要求されている。しかし、燃料または潤滑油で清浄分散剤の効力を落とさないで低い硫黄分レベルを達成することは、往々にして困難である。従って、有効な低硫黄清浄剤が非常に望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
此度、腐食を生じないか、僅かにしか生じない高TBNの低硫黄清浄分散剤を得ることができることを発見した。
【0017】
従って、本発明は、内燃機関用潤滑油組成物に好ましく用いられる硫黄分の少ない新規な清浄分散剤の製造方法に関する。特には、本発明は、アルキルヒドロキシベンゾエート反応生成物の硫黄分が約0.1乃至1.2質量%の範囲にあることに特徴がある、アルキルヒドロキシ安息香酸塩反応生成物の製造方法に関する。
【0018】
ある態様では、本発明は、下記の工程からなるアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩(アルカリ金属アルキルヒドロキシベンゾエート)反応生成物の製造方法に関する:
a)少なくとも一種のアルキルフェノールをアルカリ金属塩基で中和して、アルカリ金属アルキルフェネートを生成させる工程、そして
b)アルカリ金属アルキルフェネートを二酸化炭素でカルボキシル化して、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物を得る工程、
ただし、アルキルフェノール、アルキルフェネートおよびアルキルヒドロキシベンゾエートのうちの少なくとも一種を硫黄源と反応させて、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物の硫黄分を約0.1乃至1.2質量%の範囲とする工程を含み、かつ少なくとも50モル%の出発アルキルフェノールを、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物に変換することを条件とする。
【0019】
別の態様では、本発明は、下記の工程からなるアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物の製造方法に関する:
a)少なくとも一種のアルキルフェノールをアルカリ金属塩基で中和して、アルカリ金属アルキルフェネートを生成させる工程、
b)アルカリ金属アルキルフェネートを二酸化炭素でカルボキシル化して、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を得る工程、そして
c)アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を酸性にしてアルキルヒドロキシ安息香酸を生成させ、更にアルキルヒドロキシ安息香酸をモル過剰のアルカリ土類金属塩基と反応させて、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物を生成させる工程、
ただし、アルキルフェノール、アルキルフェネート、アルキルヒドロキシ安息香酸、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩およびアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩のうちの少なくとも一種を硫黄源と反応させて、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物の硫黄分を約0.1乃至1.2質量%の範囲とする工程を含み、かつ少なくとも50モル%の出発アルキルフェノールを、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物に変換することを条件とする。
【0020】
また別の態様では、本発明は、下記の工程からなる過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物の製造方法に関する:
a)少なくとも一種のアルキルフェノールをアルカリ金属塩基で中和して、アルカリ金属アルキルフェネートを生成させる工程、
b)アルカリ金属アルキルフェネートを二酸化炭素でカルボキシル化して、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を得る工程、
c)アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を酸性にしてアルキルヒドロキシ安息香酸を生成させ、更にアルキルヒドロキシ安息香酸をアルカリ土類金属塩基と反応させて、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩を生成させる工程、そして
d)アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩をアルカリ土類金属塩基と少なくとも一種の酸性過塩基化物質とで過塩基性にして、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物を生成させる工程、
ただし、アルキルフェノール、アルキルフェネート、アルキルヒドロキシ安息香酸、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩およびアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩又はその過塩基性誘導体のうちの少なくとも一種を硫黄源と反応させて、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物の硫黄分を約0.1乃至1.2質量%の範囲とする工程を含み、かつ少なくとも50モル%の出発アルキルフェノールを、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物に変換することを条件とする。
【0021】
更に別の態様では、本発明は、上述した本発明の各方法により製造された、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物、または過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物を、主要量の潤滑粘度の基油と共に用いた潤滑油組成物に関する。
【0022】
あるいは、本発明は、上記のいずれかの方法により製造された生成物に関する。
【発明の効果】
【0023】
数ある中でも、本発明は、清浄分散剤として潤滑油組成物に用いると、内燃機関の機械部分を潤滑にする際に腐食を示さないか僅かにしか示さない、低硫黄で高TBNの清浄分散剤、すなわちアルキルヒドロキシ安息香酸塩(アルキルヒドロキシベンゾエート)反応生成物の製造方法を提供する。本発明の清浄分散剤を用いた潤滑油組成物は、そのような潤滑油組成物を用いて作動する内燃機関において腐食防止性を改善するのに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明について詳細に述べる前に、以下の用語は、特に断わらない限り下記の意味を有する
【0025】
[定義]
「アルカリ金属」は、リチウム、ナトリウムまたはカリウムを意味し、カリウムが好ましい。
【0026】
「アルカリ土類金属」は、カルシウム、バリウム、マグネシウムおよびストロンチウムを意味し、カルシウムが好ましい。
【0027】
「アルキル」は、直鎖と分枝鎖両方のアルキル基を意味する。
【0028】
「アルキルフェネート」は、アルキルフェノールの金属塩を意味する。
【0029】
「アルキルフェノール」は、1個以上のアルキル置換基を持つフェノールを意味し、アルキル置換基のうちの少なくとも一つは、フェノールに油溶性を付与するのに充分な数の炭素原子を有する。
【0030】
「アリール基」は、置換又は未置換の芳香族基であり、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基およびクメニル基である。
【0031】
「カルシウム塩基」は、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、カルシウムアルコキシド等、およびそれらの混合物を意味する。
【0032】
「炭化水素基」は、アルキル基またはアルケニル基を意味する。
【0033】
「炭化水素フェノール」は、1個以上の炭化水素置換基を持つフェノールを意味し、炭化水素置換基のうちの少なくとも一つは、フェノールに油溶性を付与するのに充分な数の炭素原子を有する。
【0034】
「石灰」は、水酸化カルシウムを意味し、消石灰としても知られている。
【0035】
「金属」は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの混合物を意味する。
【0036】
「金属塩基」は、金属水酸化物、金属酸化物、金属アルコキシド等、およびそれらの混合物を意味し、金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及びそれらの混合物からなる群より選ばれる。
【0037】
「過塩基性」は、金属塩又は錯体の程度を意味する。これらの物質は、「塩基性」、「超塩基性」、「複合体」、「金属錯体」、および「高含金属塩」等とも呼ばれている。過塩基性生成物は、金属含量が、金属および金属と反応するカルボン酸などの特定の酸性有機化合物の化学量論に従って存在する量よりも過剰であることに特徴がある、金属塩又は錯体である。
【0038】
「フェネート」は、フェノールの金属塩を意味する。
【0039】
「サリチレート」は、サリチル酸の金属塩を意味する。
【0040】
「全塩基価」又は「TBN」は、生成物1グラムを中和するのに要するKOHのミリグラムと等価な値を意味する。よって、TBNが高いほど、生成物の過塩基性が強く、結果として酸を中和できる塩基の保有が高いことを反映している。生成物のTBNは、ASTM標準D2896または同等の方法により決定することができる。
【0041】
本発明は、内燃機関用潤滑油組成物に好ましく用いられる低硫黄分のアルキルヒドロキシ安息香酸塩反応生成物の製造方法に関する。一般に、アルキルヒドロキシ安息香酸塩反応生成物の硫黄分は、本発明のアルキルヒドロキシ安息香酸塩反応生成物において約0.1乃至1.2質量%硫黄であり、より好ましくは約0.1乃至1.0質量%硫黄であり、そして最も好ましくは約0.1乃至0.5質量%硫黄である。
【0042】
[アルキルヒドロキシ安息香酸塩反応生成物]
(アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物)
第一の態様では、以下の方法により、本発明のアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物を製造することができる。
【0043】
A)アルカリ金属塩基アルキルフェネートの生成
最初の工程では、少なくとも一種のアルキルフェノールを、好適な溶媒、例えばトルエン、キシレンまたは軽質アルキルベンゼン等の脂肪族炭化水素の存在下で、アルカリ金属塩基を用いて中和する。ある態様では、溶媒は水と共沸物を形成する。別の態様では、溶媒は2−エチルヘキサノールなどのモノ−アルコールであってもよい。この場合には、カルボキシル化の前に2−エチルヘキサノールを蒸留により取り除く。
【0044】
アルキルフェノールは、98質量%までの線状アルキル基、100質量%までの分枝アルキル基、あるいは線状と分枝両方のアルキル基を含んでいてもよい。線状アルキル基が存在するとすれば、線状アルキル基は炭素原子約12〜40個を含み、好ましくは炭素原子約20〜40個、より好ましくは炭素原子約22〜30個を含むアルキルである。分枝アルキル基が存在するとすれば、炭素原子少なくとも9個を含み、好ましくは炭素原子約9〜24個、より好ましくは炭素原子約10〜18個を含むアルキルである。ある態様では、アルキルフェノールは、85質量%までの線状アルキルフェノール(好ましくは、少なくとも35質量%の線状炭化水素フェノール)を、少なくとも15質量%の分枝アルキルフェノールと混在して含む。
【0045】
少なくとも35質量%までの長い線状アルキルフェノール(炭素原子数約18〜30)を含むアルキルフェノールの使用は特に魅力がある。その理由は、長い線状アルキル鎖が潤滑油中では添加剤の混合性や溶解性を促すからである。しかし、アルキルフェノール中に比較的重質な線状アルキル基が存在することは、後者を分枝アルキルフェノールよりも反応しにくくし、よって、アルカリ土類金属塩基で中和をもたらすのに厳しい反応条件を使用する必要がある。
【0046】
分枝アルキルフェノールは、フェノールを分枝オレフィン、一般にはプロピレンから生じたオレフィンと反応させることにより得ることができる。それらは一置換異性体の混合物からなり、置換基の大多数はパラ位にあり、極く僅かにオルト位にあり、そしてメタ位には殆ど無い。それによって、フェノール機能に事実上立体障害が無いことになるので、アルキルフェノールがアルカリ土類金属塩基に対して相対的に反応しやすくなる。
【0047】
一方、線状アルキルフェノールは、フェノールを線状オレフィン、一般にはエチレンから生じたオレフィンと反応させることにより得ることができる。それらは一置換異性体の混合物からなり、線状アルキル置換基のオルト、パラ及びメタ位の割合はずっと均一に分布している。相当な立体障害のために、近接した一般に重質なアルキル置換基の存在のためにフェノール機能が利用し難くなるので、これによってアルキルフェノールがアルカリ土類金属塩基に対してずっと反応しにくくなる。勿論、パラ置換基の量を増やして、その結果アルカリ土類金属塩基に対する相対的反応性を高めるような何等かの分枝を持つアルキル置換基を、線状アルキルフェノールが含んでいてもよい。
【0048】
アルキルフェノールが脂肪族基の混合物を表すとき、本発明のアルキルヒドロキシベンゾエート反応生成物は、線状アルキル基の混合物、分枝アルキル基の混合物、または線状及び分枝アルキル基の混合物を含んでいてもよい。すなわち、アルキルフェノールは、線状脂肪族基、好ましくはアルキルの混合物であってよく、例えば、線状のC14−C16、C16−C18、C18−C20、C20−C22、C20−C24及びC20−C28アルキルおよびそれらの混合物からなる群より選ばれるアルキル基である。有利には、これら混合物は少なくとも95モル%、好ましくは98モル%のエチレンの重合から生じたアルキル基を含む。
【0049】
本発明のアルキルヒドロキシベンゾエート(安息香酸塩)反応生成物は、アルキル基の混合物を有するが、線状アルファオレフィン留分、例えばシェブロン・フィリップス・ケミカル・カンパニー(Chevron Phillips Chemical Company)よりノルマルアルファオレフィンC26−C28またはノルマルアルファオレフィンC20−C24の商品名で、ブリティッシュ・ペトロリウム(British Petroleum)社よりC20−C26オレフィンの商品名で、シェル・チミィ(Shell Chimie)社よりSHOPC20−C22の商品名で市販されているもの、あるいはこれら留分の混合物、またはこれらの会社の炭素原子数約20〜28のオレフィンから製造することができる。
【0050】
この工程を実施するのに使用することができるアルカリ金属塩基としては、リチウム、ナトリウム又はカリウムの酸化物又は水酸化物を挙げることができる。特に水酸化カリウムが好ましい。
【0051】
この工程の目的は、水分が2000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下のアルキルフェネートを得ることにある。
【0052】
この操作は、水分を除去するのに充分に高い温度で行う。ある態様では、低い反応温度を利用するために生成物を若干の減圧下に置く。
【0053】
中和操作は、少なくとも120℃、好ましくは少なくとも130℃、より好ましくは少なくとも135℃の温度で約3時間行う。ある態様では、溶媒としてキシレンを用いるなら、130℃から155℃の間の温度で800ミリバール(8×104Pa)の絶対圧で反応を行う。
【0054】
別の態様では、溶媒として2−エチルヘキサノールを用いるなら、2−エチルヘキサノールの沸点(184℃)はキシレン(140℃)より著しく高いので、少なくとも160℃の温度で反応を行う。
【0055】
反応の水の蒸留を完全にするために、圧力を若干大気圧より低くする。好ましくは、圧力を7000Pa(70ミリバール)以下に下げる。
【0056】
充分に高い温度で操作を行い、反応器の圧力を徐々に大気圧より低くするならば、この反応過程で生じる水と共沸物を形成する溶媒を添加する必要もなく、中和反応を実施できる。この場合には、温度を200℃まで上げ、次いで圧力を徐々に大気圧より低くする。好ましくは、圧力を7000Pa(70ミリバール)以下に下げる。
【0057】
水の除去は、少なくとも2時間かけて、好ましくは少なくとも3時間かけて行う。
【0058】
使用する試薬の量は下記のモル比に対応する:
・アルカリ金属塩基:アルキルフェノールが約0.8:1乃至1.2:1、好ましくは約0.9:1乃至1.05:1。
・硫黄:アルキルフェノールが約0.03:1乃至1:1、好ましくは約0.07:1乃至0.5:1、より好ましくは約0.08:1乃至0.3:1。
・溶媒:アルキルフェノール(質量:質量)が約0.1:1乃至5:1、好ましくは約0.5:1乃至3:1。
【0059】
B)カルボキシル化
次に、前の中和工程で生じた反応媒体に二酸化炭素を単に吹き込むことにより、合成したアルキルフェネートをカルボキシル化するが、これは、出発アルキルフェノールの少なくとも50モル%、好ましくは70モル%、より好ましくは80モル%、そして最も好ましくは90モル%が、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物に変換されるまで(電位差定量によりサリチル酸として測定)、約120℃から180℃の間の温度で、ほぼ大気圧より上で5×105Pa(5バール)までの範囲の圧力で、約2乃至8時間の間続ける。生成するアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩の如何なる脱カルボキシルも避けるために、加圧下で行わなければならない。
【0060】
カリウム塩を用いる一変形では、温度は約125℃から165℃の間にあることが好ましく、より好ましくは約130℃から155℃の間であり、そして圧力はほぼ大気圧乃至10バール(10×105Pa)であり、好ましくはほぼ大気圧乃至3.5バールである。
【0061】
ナトリウム塩を用いる一変形では、温度は低い傾向にあり、好ましくは約110℃乃至155℃であり、最も好ましくは約120℃乃至140℃であり、そして圧力は約1バール乃至20バールであり、好ましくは約3.5バール乃至15バールである。
【0062】
カルボキシル化は通常、炭化水素またはアルキレート、例えばベンゼン、トルエンおよびキシレン等のような溶媒に希釈して実施する。この場合に、溶媒:ヒドロキシベンゾエートの質量比は約0.1:1乃至5:1であり、好ましくは約0.4:1乃至3:1である。
【0063】
一変形では、溶媒を使用しない。この場合には、物質の粘性が高くなり過ぎるのを避けるために希釈油の存在下でカルボキシル化を行う。
【0064】
希釈油:ヒドロキシベンゾエート(ヒドロキシ安息香酸塩)の質量比は、約0.1:1乃至2:1であり、好ましくは約0.2:1乃至1:1であり、より好ましくは約0.2:1乃至0.5:1である。
【0065】
アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物において、硫黄分を約0.1乃至1.2質量%、好ましくは約0.1乃至1.0質量%、より好ましくは約0.1乃至0.5質量%の範囲で達成するには、アルキルフェノール、アルキルフェネートおよびアルキルヒドロキシ安息香酸塩のうちの少なくとも一種を、元素硫黄、もしくは塩化硫黄(S2Cl2)、二塩化硫黄(SCl2)または塩化チオニル(SOCl2)のようなハロゲン化硫黄など、充分な量の硫黄を容易に与える硫黄源と反応させる。好ましくは、硫黄源は元素硫黄である。低硫化アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物の生成は、アルキルフェノール、アルキルフェネートおよびアルキルヒドロキシ安息香酸塩のうちの少なくとも一種を、例えば元素硫黄と、約150℃乃至230℃の温度で約0.5乃至4時間、好ましくは約180℃乃至210℃で約1乃至3時間反応させることで得られる。
【0066】
本発明のアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物は、TBNが約50乃至250であることが好ましく、より好ましくは約70乃至200、最も好ましくは約100乃至150である。
【0067】
(アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物)
第二の態様では、上記A及びB工程で合成したアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を更に、以下に記載するC工程に従って、モル過剰のアルカリ土類金属塩基と反応させて、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物を生成させる。
【0068】
C)酸性化
この工程の目的は、溶媒に希釈したアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を酸性にしてアルキルヒドロキシ安息香酸とすることにある。アルキルヒドロキシ安息香酸より強い酸であれば如何なるものでも利用することが可能である。通常は、塩酸水溶液または硫酸水溶液を利用する。
【0069】
酸性化工程は、少なくとも5H+当量%、好ましくは10H+当量%、より好ましくは20H+当量%のヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)に対して、H+当量過剰の酸を用いて行う。
【0070】
ある態様では、硫酸を使用する。硫酸を約5%乃至50%、好ましくは約10%乃至30%に希釈する。ヒドロキシ安息香酸塩(サリチル酸塩)に対して使用する硫酸の量は、ヒドロキシ安息香酸塩モル当りで硫酸少なくとも0.525モル、好ましくは0.55モル、より好ましくは0.6モルである。
【0071】
任意の好適な混合装置で撹拌しながら、ほぼ室温乃至120℃、好ましくは約50℃乃至80℃の温度で、約15分乃至300分、好ましくは約60分乃至180分の間、酸性化反応を実施する。
【0072】
良好な相分離を可能にするために、水性相が分離する前にこの期間の終了時点で撹拌を止める。
【0073】
アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物において、硫黄分を約0.1乃至1.2質量%、好ましくは約0.1乃至1.0質量%、より好ましくは約0.1乃至0.5質量%の範囲で達成するには、アルキルフェノール、アルキルフェネート、アルキルヒドロキシ安息香酸およびアルキルヒドロキシベンゾエートのうちの少なくとも一種を、第一の態様で前述したような硫黄源と反応させる。
【0074】
本発明のアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物は、TBNが約50乃至250であることが好ましく、より好ましくは約70乃至200、最も好ましくは約100乃至150である。
【0075】
(過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物)
第三の態様では、上記AからCまでの工程で合成したアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩を更に、以下に記載するD工程に従って、少なくとも一種の酸性過塩基化物質を用いて過塩基性にして、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物を生成させる。
【0076】
D)過塩基化
アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物の過塩基化を当該分野の熟練者に知られている任意の方法により実施して、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物を生成させることができる。一般に過塩基化反応は、反応器に希釈油、芳香族溶媒およびアルコールを存在させて実施する。この反応混合物を撹拌しながら、また温度を約20℃から80℃の間に維持しながら、アルカリ土類金属および二酸化炭素など少なくとも一種の酸性過塩基化物質を反応に加える。
【0077】
過塩基化の程度は、反応混合物に添加するアルカリ土類金属、二酸化炭素など少なくとも一種の酸性過塩基化物質および反応体の量、並びに炭酸塩化過程で使用する反応条件によって制御することができる。
【0078】
使用する試薬(メタノール、キシレン、消石灰およびCO2)の比は、下記の質量比に対応する:
・キシレン:消石灰が約2:1乃至7:1、好ましくは約2:1乃至4:1。
・メタノール:消石灰が約0.25:1乃至3:1、好ましくは約0.4:1乃至1.2:1。
・二酸化炭素:消石灰が約0.5:1乃至1.3:1、好ましくは約0.7:1乃至1.0:1。
【0079】
次に、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物を、アルカリ土類金属塩基で過塩基性にして、本発明の過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物を生成させる。バリウム、カルシウム、マグネシウムおよびストロンチウムなどのアルカリ土類金属が好ましい。水酸化又は酸化カルシウムが好ましい。
【0080】
石灰は、スラリーとして添加することが好ましい、すなわち石灰、メタノール、キシレンおよびCO2の予備混合物として、約20℃から65℃の間の温度で1時間乃至4時間かけて導入する。
【0081】
過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物において、硫黄分を約0.1乃至1.2質量%、好ましくは約0.1乃至1.0質量%、より好ましくは約0.1乃至0.5質量%の範囲とするには、アルキルフェノール、アルキルフェネート、アルキルヒドロキシ安息香酸およびアルキルヒドロキシベンゾエート又はその過塩基性誘導体のうちの少なくとも一種を、第一の態様で前述したような硫黄源と反応させる。
【0082】
任意に、溶媒や粗沈降物を除去するために、上述した工程の各々で予備蒸留、遠心分離および蒸留を利用してもよい。110℃から134℃の間で加熱することにより、水、メタノールおよび一部のキシレンを除去してもよい。この後で、遠心分離により未反応石灰を除去してもよい。最後に、ASTM D93に記載されているペンスキー・マルテンス密閉カップ(PMCC)試験機で決定して少なくとも約160℃の引火点に達するように、減圧下で加熱することによりキシレンを除去してもよい。
【0083】
本発明の過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩は、TBNが約20乃至500であることが好ましく、より好ましくは約100乃至400、最も好ましくは約150乃至300である。
【0084】
[潤滑油組成物]
本発明は、本発明のアルキルヒドロキシ安息香酸塩(ベンゾエート)反応生成物を含む潤滑油組成物にも関する。
【0085】
本発明の潤滑油組成物は、主要量の潤滑粘度の基油と、下記の工程からなる方法により得られた少量のアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物とを含有していてもよい:
a)少なくとも一種のアルキルフェノールをアルカリ金属塩基で中和して、アルカリ金属アルキルフェネートを生成させる工程、そして
b)アルカリ金属アルキルフェネートを二酸化炭素でカルボキシル化して、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物を得る工程、
ただし、アルキルフェノール、アルキルフェネートおよびアルキルヒドロキシベンゾエートのうちの少なくとも一種を硫黄源と反応させて、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物の硫黄分を約0.1乃至1.2質量%の範囲とする工程を含み、かつ少なくとも50モル%の出発アルキルフェノールを、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物に変換することを条件とする。
【0086】
また、本発明の潤滑油組成物は、主要量の潤滑粘度の基油と、下記の工程からなる方法により得られた少量のアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物とを含有していてもよい:
a)少なくとも一種のアルキルフェノールをアルカリ金属塩基で中和して、アルカリ金属アルキルフェネートを生成させる工程、
b)アルカリ金属アルキルフェネートを二酸化炭素でカルボキシル化して、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を得る工程、そして
c)アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を酸性にしてアルキルヒドロキシ安息香酸を生成させ、更にアルキルヒドロキシ安息香酸をモル過剰のアルカリ土類金属塩基と反応させて、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物を生成させる工程、
ただし、アルキルフェノール、アルキルフェネート、アルキルヒドロキシ安息香酸、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩およびアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩のうちの少なくとも一種を硫黄源と反応させて、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物の硫黄分を約0.1乃至1.2質量%の範囲とする工程を含み、かつ少なくとも50モル%の出発アルキルフェノールを、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物に変換することを条件とする。
【0087】
さらに、本発明の潤滑油組成物は、主要量の潤滑粘度の基油と、下記の工程からなる方法により得られた少量の過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物とを含有していてもよい:
a)少なくとも一種のアルキルフェノールをアルカリ金属塩基で中和して、アルカリ金属アルキルフェネートを生成させる工程、
b)アルカリ金属アルキルフェネートを二酸化炭素でカルボキシル化して、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を得る工程、
c)アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を酸性にしてアルキルヒドロキシ安息香酸を生成させ、更にアルキルヒドロキシ安息香酸をアルカリ土類金属塩基と反応させて、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩を生成させる工程、そして
d)アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩をアルカリ土類金属塩基と少なくとも一種の酸性過塩基化物質とで過塩基性にして、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物を生成させる工程、
ただし、アルキルフェノール、アルキルフェネート、アルキルヒドロキシ安息香酸、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩およびアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩又はその過塩基性誘導体のうちの少なくとも一種を硫黄源と反応させて、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物の硫黄分を約0.1乃至1.2質量%の範囲とする工程を含み、かつ少なくとも50モル%の出発アルキルフェノールを、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物に変換することを条件とする。
【0088】
[潤滑粘度の基油]
基油は、本明細書で使用されるとき、単独の製造者により同一の仕様に(供給源や製造者の所在地に依存しないで)製造され、同じ製造者の仕様を満たし、そして独自の処方、製造物確認番号またはその両方によって識別される潤滑剤成分である、基材油または基材油のブレンドと定義される。蒸留、溶剤精製、水素処理、オリゴマー化、エステル化および再精製を含むが、それらに限定されない各種の異なる方法を使用して基材油を製造することができる。再精製基材油には、製造、汚染もしくは以前の使用によって混入した物質が実質的に含まれない。本発明の基油は、任意の天然または合成の潤滑基油留分であってよく、特には、動粘度が摂氏100度(℃)で約4センチストークス(cSt)乃至約20cStのものである。炭化水素合成油としては例えば、エチレンの重合から製造された油、ポリアルファオレフィン又はPAO、あるいは一酸化炭素ガスと水素ガスを用いてフィッシャー・トロプシュ法などの炭化水素合成法により製造された油を挙げることができる。好ましい基油は、重質留分を含む場合でもその量が僅かである、例えば約100℃粘度が約20cStかそれ以上の潤滑油留分を殆ど含むことのない油である。基油として使用される油は、所望とするグレードのエンジン油、例えばSAE粘度グレードが0W、0W−20、0W−30、0W−40、0W−50、0W−60、5W、5W−20、5W−30、5W−40、5W−50、5W−60、10W、10W−20、10W−30、10W−40、10W−50、15W、15W−20、15W−30または15W−40の潤滑油組成物となるように、所望の最終用途および調合済油の添加剤に応じて選択され、あるいはブレンドされる。
【0089】
基油は、天然の潤滑油、合成の潤滑油またはそれらの混合物から誘導することができる。好適な基油としては、合成ろうおよび粗ろうの異性化により得られた基材油、並びに粗原料の芳香族及び極性成分を(溶剤抽出というよりはむしろ)水素化分解して生成した水素化分解基材油を挙げることができる。好適な基油としては、API公報1509、第14版、補遺I、1998年12月に規定されている全API分類I、II、III、IV及びVに含まれるものが挙げられる。第1表に、I、II及びIII種基油の飽和度レベルおよび粘度指数を列挙する。IV種基油はポリアルファオレフィン(PAO)である。V種基油には、I、II、III又はIV種に含まれなかったその他全ての基油が含まれる。III種基油が好ましい。
【0090】
第 1 表
I、II、III、IV及びV種基材油の飽和度、硫黄及び粘度指数
─────────────────────────────────────
種類 飽和度(ASTM 粘度指数(ASTM D4294、
D2007で決定) ASTM D4297又は
硫黄(ASTM ASTM D3120で決定)
D2270で決定)
─────────────────────────────────────
I 飽和度90%未満及び/又は 80以上、120未満
硫黄0.03%より上
II 飽和度90%以上及び 80以上、120未満
硫黄0.03%以下
III 飽和度90%以上及び 120以上
硫黄0.03%以下
─────────────────────────────────────
IV 全てのポリアルファオレフィン(PAOs)
─────────────────────────────────────
V I、II、III又はIV種に含まれないその他の全て
─────────────────────────────────────
【0091】
天然の潤滑油としては、動物油、植物油(例えば、ナタネ油、ヒマシ油およびラード油)、石油、鉱油、および石炭または頁岩から誘導された油を挙げることができる。
【0092】
合成油としては、炭化水素油およびハロ置換炭化水素油、例えば重合及び共重合オレフィン、アルキルベンゼン、ポリフェニル、アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化ジフェニルスルフィド、並びにそれらの誘導体、それらの類似物および同族体等を挙げることができる。また、合成潤滑油としては、アルキレンオキシド重合体、真の共重合体、共重合体、および末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化等によって変性したそれらの誘導体も挙げることができる。合成潤滑油の別の好適な部類には、ジカルボン酸と各種アルコールのエステルが含まれる。また、合成油として使用できるエステルとしては、C5−C12のモノカルボン酸とポリオールとポリオールエーテルから製造されたものも挙げられる。トリアルキルリン酸エステル油、例えばトリ−n−ブチルホスフェートおよびトリ−イソ−ブチルホスフェートで例示されるものも、基油として使用するのに適している。
【0093】
ケイ素系の油(例えば、ポリアルキル、ポリアリール、ポリアルコキシ又はポリアリールオキシ−シロキサン油及びシリケート油)は、合成潤滑油の別の有用なグループを形成する。その他の合成潤滑油としては、リン含有酸の液体エステル、高分子量テトラヒドロフラン、およびポリアルファオレフィン等が挙げられる。
【0094】
基油は、未精製、精製、再精製の油、またはそれらの混合物から誘導してもよい。未精製油は、天然原料または合成原料(例えば、石炭、頁岩またはタール・サンド・ビチューメン)から直接、それ以上の精製や処理無しに得られる。未精製油の例としては、レトルト操作により直接得られた頁岩油、蒸留により直接得られた石油、またはエステル化処理により直接得られたエステル油が挙げられ、次いで各々それ以上の処理無しに使用することができる。精製油は、一以上の特性を改善するために一以上の精製工程で処理されていることを除いては、未精製油と同じである。好適な精製技術としては、蒸留、水素化分解、水素化処理、脱ろう、溶剤抽出、酸又は塩基抽出、ろ過、およびパーコレートが挙げられ、それらは全て当該分野の熟練者には知られている。再精製油は、使用済の油を精製油を得るために用いたのと同様の方法で処理することにより得られる。これらの再精製油は、再生又は再処理油としても知られていて、しばしば使用された添加剤や油分解生成物の除去を目的とする技術により更に処理される。
【0095】
ろうの水素異性化から誘導された基油も、単独で、あるいは前記天然及び/又は合成基油と組み合わせて使用することができる。
【0096】
そのようなろう異性体油は、天然又は合成ろうまたはそれらの混合物を、水素異性化触媒上で水素異性化することにより製造される。
【0097】
本発明の潤滑油組成物には主要量の基油を使用することが好ましい。主要量の基油とは、本明細書で定義するとき、潤滑油組成物の40質量%かそれ以上を占める。好ましい基油の量は、潤滑油組成物の約40質量%乃至約97質量%を占め、好ましくは約50質量%より多く約97質量%まで、より好ましくは約60質量%乃至約97質量%、そして最も好ましくは約80質量%乃至約95質量%を占める。(質量%は、本明細書で使用するとき、特に明記しない限り潤滑油の質量%を意味する。)
【0098】
潤滑油組成物中の本発明のアルキルヒドロキシベンゾエート反応生成物の量は、潤滑粘度の基油に比べて少量である。一般に、潤滑油組成物の全質量に基づき約1乃至15質量%の量であり、好ましくは約2乃至12質量%、より好ましくは約3乃至8質量%の量である。
【0099】
本発明に従う潤滑油組成物のTBNは、約5乃至80であり、好ましくは約10乃至70であり、より好ましくは約15乃至50である。
【0100】
[その他の添加剤]
以下の添加剤成分は、本発明の潤滑油添加剤と組み合わせて好ましく用いることができる成分の例である。これら添加剤の例は、本発明を説明するために記されるのであって本発明を限定するものではない。
【0101】
(A)無灰分散剤:アルケニルコハク酸イミド、他の有機化合物で変性したアルケニルコハク酸イミド、およびホウ酸で変性したアルケニルコハク酸イミド、アルケニルコハク酸エステル。
【0102】
(B)酸化防止剤:
1)フェノール型(フェノール系)酸化防止剤:4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−t−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンジル)スルフィド、およびビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)。
2)ジフェニルアミン型酸化防止剤:アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、およびアルキル化α−ナフチルアミン。
3)その他の型:金属ジチオカルバメート(例えば、亜鉛ジチオカルバメート)、およびメチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)。
【0103】
(C)さび止め添加剤(さび止め剤):
1)非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエート。
2)その他の化合物:ステアリン酸およびその他の脂肪酸、ジカルボン酸、金属石鹸、脂肪酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステル。
【0104】
(D)抗乳化剤:アルキルフェノールと酸化エチレンの付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンソルビタンエステル。
【0105】
(E)極圧剤(EP剤):ジアルキルジチオリン酸亜鉛(Zn−DTP、第一級アルキル型及び第二級アルキル型)、硫化油、硫化ジフェニル、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、ヨウ化ベンジル、フルオロアルキルポリシロキサン、およびナフテン酸鉛。
【0106】
(F)摩擦緩和剤:脂肪アルコール、脂肪酸、アミン、ホウ酸化エステル、およびその他のエステル。
【0107】
(G)多機能添加剤:硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンオルガノリンジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン−モリブデン錯化合物、および硫黄含有モリブデン錯化合物。
【0108】
(H)粘度指数向上剤:ポリメタクリレート型重合体、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、水和スチレン−イソプレン共重合体、ポリイソブチレン、および分散型粘度指数向上剤。
【0109】
(I)流動点降下剤:ポリメチルメタクリレート。
【0110】
(K)消泡剤:アルキルメタクリレート重合体、およびジメチルシリコーン重合体。
【実施例】
【0111】
本発明について以下の実施例により更に説明するが、これら実施例は特に有利な方法の態様を示すものである。なお、実施例は本発明を説明するために記すのであって、それによって本発明を限定するものではない。本発明は、添付した特許請求の範囲の真意および範囲から逸脱することなく、当該分野の熟練者によってなされうる各種の変更や置換を包含するものである。
【0112】
特に明記しない限り、パーセントは全て質量%である。
【0113】
[実施例1]過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩の製造
A)中和/硫化
4リットル反応器に、線状ノルマルアルファオレフィンの混合物(C20−C28アルファオレフィン、シェブロン・フィリップス・ケミカル・カンパニー(CPC)製)から合成した分子量が430のアルキルフェノール1500gを、約20℃乃至60℃で撹拌しながら加えた。これに、キシレン750g、および水で希釈した高純度KOH195.3g(溶液452.1gを得るために)、ロドルシル(Rhodorsil)47V300消泡剤(ロジア(Rhodia)社より市販されている)0.2g、および硫黄16.4gを加えた。
【0114】
次に、反応器を約2時間かけて更に145℃まで加熱し、次いで徐々に大気圧(絶対圧1013ミリバール−1×105Pa)を絶対圧800ミリバール(8×104Pa)まで下げた。これらの条件で還流を3時間維持し、そして減圧を窒素で解除して圧力を大気圧まで下げた。反応器を1時間かけて約200℃まで加熱し、これらの条件で90分間保持した。30%のキシレンを含むカリウムアルキルフェネートが得られ、窒素中で保管した。
【0115】
B)カルボキシル化
上記のA中和/硫化工程で得られたカリウムアルキルフェネート1100gを加圧反応器に移した。次いで、反応器をCO2で約4bar(4×105Pa)(絶対圧)に加圧し、これらの条件で約4時間維持した。この期間の最後に、CO2抜きをして反応器が大気圧に達するようにした。CO241gを加え、混合物を更に反応させて、硫黄分が約0.33質量%の低硫化カリウムアルキルヒドロキシベンゾエート反応生成物が生じた。
【0116】
C)酸性化/中和
低硫化カリウムアルキルヒドロキシベンゾエートを30モル%過剰の硫酸水溶液と下記のように反応させて、硫化アルキルヒドロキシ安息香酸に変換した:
充填量の計算:
・カルボキシレート:1100g(30%のキシレンを含む)
カリウム塩770g(カリウム1.5モル)
・必要な硫酸の量
98×1.504/2=73.7g
硫酸の純度が95%で30%過剰を利用するとき:硫酸100.8gを充填する。
【0117】
10%に希釈した硫酸溶液1008gを得るために、95%の硫酸100.8gおよび水907.2gを6リットル反応器に入れ、250rpmで撹拌しながら50℃に加熱した。上記B工程の低硫化カリウムアルキルヒドロキシベンゾエートおよびキシレン(970g)を30分かけて充填した。キシレンは相分離に役立った。反応器を継続して撹拌しながら60℃乃至65℃に加熱して2時間維持した。
【0118】
この期間の最後に撹拌は止めたが、反応器を60℃乃至65℃で2時間維持して相分離が起こるようにした。相分離したら直ちに、水と硫酸カリウムを含む下方の水性相をデカントした。
【0119】
低硫化アルキルヒドロキシ安息香酸とキシレンを含む上方の有機相を、次の工程のために集めた。低硫化アルキルヒドロキシ安息香酸の濃度をmgKOH/gの当量として測定した。
【0120】
D)過塩基化
低硫化アルキルヒドロキシ安息香酸を含む上方の有機相1479gを撹拌しながら10分かけて反応器に充填した。次に、メタノール(159g)と石灰(159g)とキシレン(228g)のスラリーを導入した。発熱反応のために温度が約20℃から28℃に上がった。
【0121】
一旦スラリーを添加したなら、反応器を30分かけて40℃に加熱し、そしてギ酸(5.4g):酢酸(5.4g)の混合物を添加して反応器の内容物と反応させた。5分経過後に、反応器を30分かけて30℃まで冷却した。反応により、アルキルヒドロキシ安息香酸カルシウム塩反応生成物が生じた。
【0122】
一旦反応器の温度が30℃に冷えたら、CO246.6gを0.34g/分の流速で137分かけて導入した。温度が約25℃から40℃まで上がった。反応により、硫黄分が約0.30質量%の過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸カルシウム塩反応生成物が生じた。この段階で粗沈降物のパーセント(1.2容量%)を、ASTM D2273法に従って測定した。
【0123】
E)予備蒸留、遠心分離及び最終蒸留
反応器内に含まれた混合物を、110分かけて段階的に65℃から128℃の間の温度にした。この操作によって、メタノール、水および一部のキシレンを取り除いた。一旦128℃に達したら、硫黄が0.03%以下のII種希釈油(161g)を加えた。次いで、粗沈降物を測定した。低硫化過塩基性カルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート反応生成物中の粗沈降物の量は、1.2容量%であった。反応混合物を遠心分離にかけて粗沈降物を取り除き、次いで204℃、50ミリバール絶対圧(50×102Pa)で10分間蒸留して残りのキシレンを取り除いた。
【0124】
第2表に充填量を記し、第3表に分析結果を示す。
【0125】
[実施例2]
中和工程で幾分多い量の硫黄:16.4gの代わりに37gを添加したこと以外は、実施例1と同様にした。
【0126】
第2表に充填量を記し、第3表に分析結果を示す。
【0127】
[比較例A]
中和工程ではるかに多量の硫黄:16.4の代わりに56.2gを添加したこと以外は、実施例1と同様にした。
【0128】
第2表に充填量を記し、第3表に分析結果を示す。
【0129】
[比較例B]
硫黄を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にした。
【0130】
第2表に充填量を記し、第3表に分析結果を示す。
【0131】
アルキルヒドロキシ安息香酸塩反応生成物の腐食性について、ASTM D130に明記されているカッパー・ストリップ・コロージョン・テストにて評価を行った。原油の石油は硫黄化合物を含有しているが、殆どは精製過程で取り除かれる。しかし、石油製品に残存している硫黄化合物のうちには、種々の金属に腐食作用を起こすものがあるが、この腐食性は必ずしも全硫黄分に直接関係するとは限らない。残存硫黄化合物の化学的タイプによって影響は違ってくる。カッパー・ストリップ・コロージョン・テストは、石油製品の相対腐食度を評価するように設計されている。この試験では、磨いた銅片を、特定の容量の試験対象試料に浸漬して、試験対象物質の部類に特有な温度と時間条件で加熱する。加熱期間の最後に、銅片を取り出して洗浄し、そして色及び変色のレベルを、下記にまとめたASTMカッパー・ストリップ・コロージョン標準と比較して査定する。
【0132】
ASTM D130−04:カッパー・ストリップ分類
分類 表示 説明1
磨きたて
銅片2
1 僅かに変色 a)薄いだいだい色、磨きたての銅片と殆ど同じ色
b)濃いだいだい色
2 中程度に変色 a)赤紫色
b)薄紫色
c)赤紫色の上に紫がかった青色又は銀色又は両方などの多色
模様
d)銀色
e)黄銅色又は金色
3 濃く変色 a)黄銅色銅片上に深紅色の模様
b)赤と緑を伴った多色模様(孔雀模様)、灰色無し
4 腐食 a)生地が見える程度の光沢のある緑がかった黒色、濃い灰色
又は茶色
b)光沢のある黒色又は漆黒色
1:ASTMカッパー・ストリップ・コロージョン標準は、このように説明された特徴を持つ彩色された銅片複製物である。
2:磨きたて銅片は、単に適正に磨いた銅片の試験実施前の外観の指標としてセットに含まれ、全く非腐食性の試料であっても試験後にこの外観を再現することは不可能である。
【0133】
(性能結果)
示差走査熱量計。
TAインスツルメンツ社より提供された装置DSC2920。
【0134】
(この試験の主目的)
無硫黄物質と比較してこの生成物の酸化性を決定する。
【0135】
(方法の説明)
下記により、酸化性を評価した:
・恒温の「示差熱量計」を190℃にする。
・試験対象の試料を含むアルミニウム皿をプローブの上に置く。
・試料の酸化は、プローブで検出される温度の急速な上昇で特徴づけられる。
・結果は、酸化のために温度が上昇する前の試料が同温である時間(分で表示)により決定する。
【0136】
数値(分で表示)が高いほど、生成物の酸化に対する抵抗が大きい。
【0137】
────────────────────
実施例2 比較例B
────────────────────
時間(分) 46.4 21
────────────────────
【0138】
多少の硫黄の導入によって酸化性が改善された。
【0139】
【表1】

【0140】
【表2】

【0141】
【表3】

【0142】
(分析試験)
A)アルキルフェノールの中和
%変換アルキルフェノール
最初の工程では、A工程の最後に得られた生成物を隔膜により透析する:フェネート塩は隔膜の内側に留まるので、溶媒を取り除いた後にそれを計量する(M1)。
キシレンと未反応アルキルフェノールは隔膜を透過するので、キシレンと利用した溶媒を蒸発により除去して質量M2を得る。
%変換= M1 ×100
M1+M2
【0143】
B)カルボキシル化:
B工程の最後に得られた生成物を塩酸で酸性にし、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウムで滴定する。
3つの変曲点が観察される:
−最初の2つの変曲点(V1、V2)は、ヒドロキシ安息香酸、ジカルボン酸および硫化安息香酸に対応している。
−三番目の変曲点V3は、アルキルフェノール+アルキルフェネートに対応している。
V1、V2、V3を生成物のmgKOH/gで表す。
【0144】
C)酸性化工程の上相:
生成物が既に硫酸で酸性にされているので、塩酸で酸性にしないこと以外は上記のような方法により、ヒドロキシ安息香酸のレベルを決定する。
透析による組成
方法は次の通りである:
1)最終物質の透析
・「残留物」(石灰化部分)は、隔膜の内側に留まる。
・透析液:非石灰化部分(未反応アルキルフェノールと希釈油)は、隔膜を透過する。
2)残留物の分析
残留物は、炭酸カルシウム、Caフェネート、硫化Caフェネート、Caヒドロキシベンゾエートおよび硫化Caヒドロキシベンゾエートを含んでいた。溶媒の除去後、残留物を計量する。酸性にした後、フェネートとヒドロキシベンゾエートの量を電位差測定法により決定する。
炭酸カルシウムの決定。既知量の最終生成物を酸性にすると、有機相はヒドロキシ安息香酸、アルキルフェノールおよびその硫化誘導体を含んでいる。(この有機相の)溶媒を除去した後、差から炭酸カルシウムの量を得る:出発試料の質量から、溶媒の除去後のこの有機相の質量を差し引き、そして補正する。
3)透析液の分析
希釈油とアルキルフェネートをシリカカラムに通してアルキルフェノールと希釈油を分離する。質量の差からアルキルフェノールの量を決定する。
【0145】
第3表に示した結果は、本発明の実施例1及び2が硫黄の質量%が低く、比較例Aよりも沈降物及び銅腐食レベルの顕著な減少を示すことを明らかにしている。低硫黄であっても(実施例2)、無硫黄(比較例B)と比べて抗酸化性も改善されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程からなるアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物の製造方法:
a)少なくとも一種のアルキルフェノールをアルカリ金属塩基で中和して、アルカリ金属アルキルフェネートを生成させる工程、そして
b)上記アルカリ金属アルキルフェネートを二酸化炭素でカルボキシル化して、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物を得る工程、
ただし、アルキルフェノール、アルキルフェネートおよびアルキルヒドロキシベンゾエートのうちの少なくとも一種を硫黄源と反応させて、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物の硫黄分を約0.1乃至1.2質量%の範囲とする工程を含み、かつ少なくとも50モル%の出発アルキルフェノールを、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物に変換することを条件とする。
【請求項2】
アルキルフェノールのアルキル基が、線状又は分枝アルキル基または線状及び分枝アルキル基の混合物である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子数約12〜40の線状アルキル基である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子数約20〜40の線状アルキル基である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子数約22〜30の線状アルキル基である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子数が少なくとも9の分枝アルキル基である請求項2に記載の方法。
【請求項7】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子数約9〜24の分枝アルキル基である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子数約10〜18の分枝アルキル基である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
アルキルフェノールのアルキル基が、線状及び分枝アルキル基の混合物である請求項2に記載の方法。
【請求項10】
アルキルフェノールのアルキル基が、85質量%までの線状アルキルフェノールを、少なくとも15質量%の分枝アルキルフェノールと混在して含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アルキルフェノールのアルキル基が、線状のC14−C16、C16−C18、C18−C20、C20−C22、C20−C24及びC20−C28アルキル、およびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項2に記載の方法。
【請求項12】
アルカリ金属がナトリウムまたはカリウムである請求項1に記載の方法。
【請求項13】
アルカリ金属がカリウムである請求項12に記載の方法。
【請求項14】
硫黄源が、元素硫黄およびハロゲン化硫黄からなる群より選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項15】
硫黄源が元素硫黄である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物の硫黄分が、約0.1乃至1.0質量%の範囲にある請求項1に記載の方法。
【請求項17】
アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物の硫黄分が、約0.1乃至0.5質量%の範囲にある請求項16に記載の方法。
【請求項18】
下記の工程からなるアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物の製造方法:
a)少なくとも一種のアルキルフェノールをアルカリ金属塩基で中和して、アルカリ金属アルキルフェネートを生成させる工程、
b)アルカリ金属アルキルフェネートを二酸化炭素でカルボキシル化して、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を得る工程、そして
c)アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を酸性にしてアルキルヒドロキシ安息香酸を生成させ、更にアルキルヒドロキシ安息香酸をモル過剰のアルカリ土類金属塩基と反応させて、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物を生成させる工程、
ただし、アルキルフェノール、アルキルフェネート、アルキルヒドロキシ安息香酸、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩およびアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩のうちの少なくとも一種を硫黄源と反応させて、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物の硫黄分を約0.1乃至1.2質量%の範囲とする工程を含み、かつ少なくとも50モル%の出発アルキルフェノールを、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物に変換することを条件とする。
【請求項19】
アルキルフェノールのアルキル基が、線状又は分枝アルキル基または線状及び分枝アルキル基の混合物である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子数約12〜40の線状アルキル基である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子数約20〜40の線状アルキル基である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子数約22〜30の線状アルキル基である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子数が少なくとも9の分枝アルキル基である請求項18に記載の方法。
【請求項24】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子数約9〜24の分枝アルキル基である請求項23に記載の方法。
【請求項25】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子数約10〜18の分枝アルキル基である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
アルキルフェノールのアルキル基が、線状及び分枝アルキル基の混合物である請求項20に記載の方法。
【請求項27】
アルキルフェノールが、85質量%までの線状アルキルフェノールを、少なくとも15質量%の分枝アルキルフェノールと混在して含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
アルキルフェノールのアルキル基が、線状のC14−C16、C16−C18、C18−C20、C20−C22、C20−C24及びC20−C28アルキル、およびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項19に記載の方法。
【請求項29】
アルカリ金属がナトリウムまたはカリウムである請求項18に記載の方法。
【請求項30】
アルカリ金属がカリウムである請求項29に記載の方法。
【請求項31】
アルカリ土類金属がカルシウムまたはマグネシウムである請求項18に記載の方法。
【請求項32】
アルカリ土類金属がカルシウムである請求項31に記載の方法。
【請求項33】
硫黄源が、元素硫黄およびハロゲン化硫黄からなる群より選ばれる請求項18に記載の方法。
【請求項34】
硫黄源が元素硫黄である請求項33に記載の方法。
【請求項35】
アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物の硫黄分が、約0.1乃至1.0質量%の範囲にある請求項18に記載の方法。
【請求項36】
アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物の硫黄分が、約0.1乃至0.5質量%の範囲にある請求項35に記載の方法。
【請求項37】
下記の工程からなる過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物の製造方法:
a)少なくとも一種のアルキルフェノールをアルカリ金属塩基で中和して、アルカリ金属アルキルフェネートを生成させる工程、
b)アルカリ金属アルキルフェネートを二酸化炭素でカルボキシル化して、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を得る工程、
c)アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を酸性にしてアルキルヒドロキシ安息香酸を生成させ、更にアルキルヒドロキシ安息香酸をアルカリ土類金属塩基と反応させて、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩を生成させる工程、そして
d)アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩をアルカリ土類金属塩基と少なくとも一種の酸性過塩基化物質とで過塩基性にして、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物を生成させる工程、
ただし、アルキルフェノール、アルキルフェネート、アルキルヒドロキシ安息香酸、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩およびアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩又はその過塩基性誘導体のうちの少なくとも一種を硫黄源と反応させて、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物の硫黄分を約0.1乃至1.2質量%の範囲とする工程を含み、かつ少なくとも50モル%の出発アルキルフェノールを、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物に変換することを条件とする。
【請求項38】
アルキルフェノールのアルキル基が、線状又は分枝アルキル基または線状及び分枝アルキル基の混合物である請求項37に記載の方法。
【請求項39】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子数約12〜40の線状アルキル基である請求項38に記載の方法。
【請求項40】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子数約20〜40の線状アルキル基である請求項37に記載の方法。
【請求項41】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子数約22〜30の線状アルキル基である請求項38に記載の方法。
【請求項42】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子数が少なくとも9の分枝アルキル基である請求項38に記載の方法。
【請求項43】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子数約9〜24の分枝アルキル基である請求項42に記載の方法。
【請求項44】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子数約10〜18の分枝アルキル基である請求項43に記載の方法。
【請求項45】
アルキルフェノールのアルキル基が、線状及び分枝アルキルの混合物である請求項38に記載の方法。
【請求項46】
アルキルフェノールが、85質量%までの線状アルキルフェノールを、少なくとも15質量%の分枝アルキルフェノールと混在して含む請求項45に記載の方法。
【請求項47】
アルキルフェノールのアルキル基が、線状のC14−C16、C16−C18、C18−C20、C20−C22、C20−C24及びC20−C28アルキル、およびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項46に記載の方法。
【請求項48】
アルカリ金属がナトリウムまたはカリウムである請求項37に記載の方法。
【請求項49】
アルカリ金属がカリウムである請求項48に記載の方法。
【請求項50】
アルカリ土類金属がカルシウムまたはマグネシウムである請求項37に記載の方法。
【請求項51】
アルカリ土類金属がカルシウムである請求項50に記載の方法。
【請求項52】
硫黄源が、元素硫黄およびハロゲン化硫黄からなる群より選ばれる請求項37に記載の方法。
【請求項53】
硫黄源が元素硫黄である請求項52に記載の方法。
【請求項54】
過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物の硫黄分が、約0.1乃至1.0質量%の範囲にある請求項37に記載の方法。
【請求項55】
過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物の硫黄分が、約0.1乃至0.5質量%の範囲にある請求項54に記載の方法。
【請求項56】
TBNが約20乃至500である請求項37に記載の方法。
【請求項57】
TBNが約100乃至400である請求項54に記載の方法。
【請求項58】
TBNが約150乃至300である請求項57に記載の方法。
【請求項59】
下記の工程からなる方法により製造された生成物:
a)少なくとも一種のアルキルフェノールをアルカリ金属塩基で中和して、アルカリ金属アルキルフェネートを生成させる工程、そして
b)アルカリ金属アルキルフェネートを二酸化炭素でカルボキシル化して、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物を得る工程、
ただし、アルキルフェノール、アルキルフェネートおよびアルキルヒドロキシベンゾエートのうちの少なくとも一種を硫黄源と反応させて、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物の硫黄分を約0.1乃至1.2質量%の範囲とする工程を含み、かつ少なくとも50モル%の出発アルキルフェノールを、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物に変換することを条件とする。
【請求項60】
下記の工程からなる方法により製造された生成物:
a)少なくとも一種のアルキルフェノールをアルカリ金属塩基で中和して、アルカリ金属アルキルフェネートを生成させる工程、
b)アルカリ金属アルキルフェネートを二酸化炭素でカルボキシル化して、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を得る工程、そして
c)アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を酸性にしてアルキルヒドロキシ安息香酸を生成させ、更にアルキルヒドロキシ安息香酸をモル過剰のアルカリ土類金属塩基と反応させて、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物を生成させる工程、
ただし、アルキルフェノール、アルキルフェネート、アルキルヒドロキシ安息香酸、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩およびアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩のうちの少なくとも一種を硫黄源と反応させて、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物の硫黄分を約0.1乃至1.2質量%の範囲とする工程を含み、かつ少なくとも50モル%の出発アルキルフェノールを、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物に変換することを条件とする。
【請求項61】
下記の工程からなる方法により製造された生成物:
a)少なくとも一種のアルキルフェノールをアルカリ金属塩基で中和して、アルカリ金属アルキルフェネートを生成させる工程、
b)アルカリ金属アルキルフェネートを二酸化炭素でカルボキシル化して、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を得る工程、
c)アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を酸性にしてアルキルヒドロキシ安息香酸を生成させ、更にアルキルヒドロキシ安息香酸をアルカリ土類金属塩基と反応させて、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩を生成させる工程、そして
d)アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩をアルカリ土類金属塩基と少なくとも一種の酸性過塩基化物質とで過塩基性にして、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物を生成させる工程、
ただし、アルキルフェノール、アルキルフェネート、アルキルヒドロキシ安息香酸、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩およびアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩又はその過塩基性誘導体のうちの少なくとも一種を硫黄源と反応させて、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物の硫黄分を約0.1乃至1.2質量%の範囲とする工程を含み、かつ少なくとも50モル%の出発アルキルフェノールを、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物に変換することを条件とする。
【請求項62】
下記の成分を含む潤滑油組成物:
a)主要量の潤滑粘度の基油、および
b)少量の、下記の工程からなる方法により得られたアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物:
i)少なくとも一種のアルキルフェノールをアルカリ金属塩基で中和して、アルカリ金属アルキルフェネートを生成させる工程、そして
ii)アルカリ金属アルキルフェネートを二酸化炭素でカルボキシル化して、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物を得る工程、
ただし、アルキルフェノール、アルキルフェネートおよびアルキルヒドロキシベンゾエートのうちの少なくとも一種を硫黄源と反応させて、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物の硫黄分を約0.1乃至1.2質量%の範囲とする工程を含み、かつ少なくとも50モル%の出発アルキルフェノールを、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩反応生成物に変換することを条件とする。
【請求項63】
下記の成分を含む潤滑油組成物:
a)主要量の潤滑粘度の基油、および
b)少量の、下記の工程からなる方法により得られたアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物:
i)少なくとも一種のアルキルフェノールをアルカリ金属塩基で中和して、アルカリ金属アルキルフェネートを生成させる工程、
ii)アルカリ金属アルキルフェネートを二酸化炭素でカルボキシル化して、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を得る工程、そして
iii)アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を酸性にしてアルキルヒドロキシ安息香酸を生成させ、更にアルキルヒドロキシ安息香酸をアルカリ土類金属塩基と反応させて、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物を生成させる工程、
ただし、アルキルフェノール、アルキルフェネート、アルキルヒドロキシ安息香酸、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩およびアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩のうちの少なくとも一種を硫黄源と反応させて、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物の硫黄分を約0.1乃至1.2質量%の範囲とする工程を含み、かつ少なくとも50モル%の出発アルキルフェノールを、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物に変換することを条件とする。
【請求項64】
下記の成分を含む潤滑油組成物:
a)主要量の潤滑粘度の基油、および
b)少量の、下記の工程からなる方法により得られた過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物:
i)少なくとも一種のアルキルフェノールをアルカリ金属塩基で中和して、アルカリ金属アルキルフェネートを生成させる工程、
ii)アルカリ金属アルキルフェネートを二酸化炭素でカルボキシル化して、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を得る工程、
iii)アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を酸性にしてアルキルヒドロキシ安息香酸を生成させ、更にアルキルヒドロキシ安息香酸をアルカリ土類金属塩基と反応させて、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩を生成させる工程、そして
iv)アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩をアルカリ土類金属塩基と少なくとも一種の酸性過塩基化物質とで過塩基性にして、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物を生成させる工程、
ただし、アルキルフェノール、アルキルフェネート、アルキルヒドロキシ安息香酸、アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩およびアルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩又はその過塩基性誘導体のうちの少なくとも一種を硫黄源と反応させて、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物の硫黄分を約0.1乃至1.2質量%の範囲とする工程を含み、かつ少なくとも50モル%の出発アルキルフェノールを、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸アルカリ土類金属塩反応生成物に変換することを条件とする。
【請求項65】
内燃機関の腐食防止性を改善する方法であって、請求項62に記載の潤滑油組成物を用いて内燃機関を作動させることからなる方法。
【請求項66】
内燃機関の腐食防止性を改善する方法であって、請求項63に記載の潤滑油組成物を用いて内燃機関を作動させることからなる方法。
【請求項67】
内燃機関の腐食防止性を改善する方法であって、請求項64に記載の潤滑油組成物を用いて内燃機関を作動させることからなる方法。

【公開番号】特開2007−39457(P2007−39457A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207005(P2006−207005)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【出願人】(598066514)シェブロン・オロナイト・エス.アー. (20)
【Fターム(参考)】