説明

低級炭化水素の芳香族化合物化触媒ならびに低級炭化水素を原料とする芳香族化合物及び水素の製造方法

【課題】天然ガス等の低級炭化水素を用いてベンゼン、ナフタレン等の芳香族化合物と水素ガスを製造するための芳香族化触媒及びその製造方法を提供する。
【解決手段】Re又はその化合物の一種以上を必須とし、所望により、Zn、Ga、Co、Fe又はそれらの化合物の1種以上を含む触媒材料と、メタロシリケートとからなる触媒を用いる。該触媒の存在下、一酸化炭素及び/又は二酸化炭素の共存下、低級炭化水素を原料に芳香族化合物及び水素を製造する。ベンゼン、トルエン、キシレン及びナフタレン等の芳香族炭化水素と水素を効率的に製造できる。又、一酸化炭素又は二酸化炭素の共存下に反応を行うと、反応転化率が向上し、さらに経時的な生成速度の低下を抑制して長時間安定した性能が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガス等の低級炭化水素から化学工業、薬品類、プラスチック類などの化学製品の原料であるベンゼン及びナフタレン類を主成分とする芳香族化合物と高純度の水素ガスを効率的に製造し得る触媒とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物は主にナフサから製造されている。また、ナフタレン類の製造方法としては石炭などの溶剤抽出法、天然ガスやアセチレンなどのガス熱分解法などの非触媒方法が採られている。しかし、これら従来法ではベンゼン及びナフタレン類は石炭やアセチレンなどの原料に対して数パーセントしか得られず、また副生芳香族化合物や炭化水素、タールや非溶解性の炭素残留物が多く、問題点を有している。また石炭などの溶剤抽出法では多量の有機溶剤を必要とする難点もある。
またメタンやアセチレンの熱分解法による製造方法では、数%以上の変換効率でナフタレン類を製造するには1000℃以上の反応温度が必要であるにもかかわらず、ナフタレン類の収量は変換メタンあるいはアセチレンの数%以下であり、実用上問題があった。
【0003】
他に、触媒を用いたナフタレン類の製造法としては、オルトキシレン等のアルキルベンゼン類を高温で白金類担持触媒を用いて脱水素縮合化反応することによりナフタレン類を製造する方法も知られているが、ナフタレン類の変換効率は低く、また原料として用いるアルキルベンゼン類が高価であることもあって実用上問題があった。
【0004】
さらに、本発明において併産される水素ガスの製造法としては、製鉄廃ガスや石炭の部分酸化で生成する一酸化炭素を用いる水成ガス(ウォーターガスシフト)反応及び天然ガスの水蒸気改質反応による高温・高圧の反応条件下で実施される工業プロセスがある。さらに原油の熱分解法での水素製造法などがあげられるが、製造ガス中に触媒毒である硫黄や窒素酸化物等や、生成される水素中に副生物である一酸化炭素等が含まれることから、これら従来法で製造された水素ガスの場合は触媒毒の除去、精製に多大な負荷と設備を必要とする工業的問題があった。また、これら従来法による水素製造法では水素生成に伴い多量の炭酸ガスを副生排出することから地球環境の上から重大な問題がある。
【0005】
一方、低級炭化水素とりわけメタンからベンゼン等の芳香族化合物と水素とを併産する方法としては、触媒の存在下、酸素あるいは酸化剤の非存在下にメタンを反応させる方法が知られている。この際の触媒としてはZSM−5に担持されたモリブデンが有効とされている〔非特許文献1、及び該文献に引用された文献等〕。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】JOURNAL OF CATALYSIS」165頁、150−161頁(1997年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの触媒を使用した場合でも、炭素析出が多いことやメタンの転化率が低いという問題点のほかに、触媒の寿命が非常に短く実用化プロセスのための好ましい触媒性能が得られないという問題点を有している。
【0008】
本発明は斯かる従来技術の実状と問題点に鑑み、天然ガス等のメタンを主成分とする低級炭化水素を用いて有用な化学原料であるベンゼン、ナフタレン等の芳香族化合物と水素ガスとを高転化率で高選択率の触媒性能をもって同時に製造することができ、しかも長時間にわたり安定な触媒能を示すメタン等の低級炭化水素の直接改質法触媒並びにそれを用いた芳香族化合物と水素の製造法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を達成するために、鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の低級炭化水素の芳香族化合物化触媒のうち第1の発明は、一酸化炭素及び/又は二酸化炭素の共存下でメタンを含む低級炭化水素の反応に用いる触媒であって、レニウムまたはその化合物で構成される群から選択される一種以上を含む触媒材料と、該触媒材料を担持するメタロシリケートとを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の低級炭化水素の芳香族化合物化触媒のうち第2の発明は、前記第1の本発明において、前記触媒材料に、亜鉛、Ga、Co、鉄またはそれらの化合物で構成される群から選択される1種以上を含むことを特徴とする。
【0011】
第3の発明の低級炭化水素の芳香族化合物化触媒は、第1または第2の発明において、前記メタロシリケートが多孔質体であることを特徴とする。
【0012】
第4の発明の低級炭化水素の芳香族化合物化触媒は、第1〜第3の発明のいずれかにおいて、前記メタロシリケートがケイ酸アルミニウムであることを特徴とする。
【0013】
さらに、第5の発明の低級炭化水素を原料とする芳香族化合物及び水素の製造方法は、第1〜第4の発明のいずれかに記載の触媒の存在下で、一酸化炭素及び/又は二酸化炭素の共存下でメタンを含む低級炭化水素を反応させて芳香族炭化物を主成分とする芳香族化合物と水素とを製造することを特徴とする。
【0014】
第6の発明の低級炭化水素を原料とする芳香族化合物及び水素の製造方法は、第5の発明において、前記一酸化炭素及び/又は二酸化炭素の添加量が、反応に供給する全原料ガスにおける容量%として0.01〜30%の範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上の結果から、本発明によれば、レニウムまたはその化合物で構成される群から選択される一種以上と、所望により選択される亜鉛、Ga、Co、鉄またはそれらの化合物で構成される群から選択される1種以上とを含む触媒の存在下で、メタンを含む低級炭化水素を芳香族化反応させるので、該反応に付して高付加価値製品であるベンゼン、トルエン、キシレン及びナフタレン等の芳香族炭化水素及び水素を効率的に製造することができる。
また、この反応を一酸化炭素又は二酸化炭素の共存下に行うことにより、低級炭化水素の反応転化率を向上させることができ、さらにベンゼン等の芳香族化合物及び水素の生成速度の低下を効果的に抑制することができ、長時間に亘って安定した触媒能を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、後述する触媒(触媒材料+担体)の存在下、メタンを含む低級炭化水素を反応させて芳香族炭化水素を主成分とする芳香族化合物及び水素を製造する技術分野に適用される。
ここで、本発明で原料として用いられる低級炭化水素としては、重量%で少なくとも50%、好ましくは、少なくとも70%のメタンを含有する天然ガス等を示すことができる。メタン含有量がこの範囲であれば、その他に炭素数が2〜6の飽和及び不飽和炭化水素が含まれていても差し支えない。これらの炭化水素の例としては、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、n−ブタン、イソブタン、n−ブチン及びイソブテン等が例示できる。
【0017】
本発明の触媒では担体としてメタロシリケートを用いる。このメタロシリケートとしては多数の細孔を有する多孔質体が望ましい。例えばアルミノシリケートの場合、種々の組成から成るシリカ及びアルミナからなる多孔質担体であるモレキュラーシーブ5A(UTA)、フォジャサイト(NaY)及びNaX、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−22、ZSM−48、β−HZSMやリン酸を主成分とするALPO−5、SAPO−5、VPI−5やMCM−22等の多孔質担体で4〜8Åのミクロ細孔やチャンネルを有するゼオライト担体を例示することができる。さらには、シリカを主成分とし一部アルミナを成分として含むメゾ細孔(10〜100Å)の筒状細孔(チャンネル)で特徴づけられるFSM−16やMCM−41などのメゾ細孔多孔質担体をシリコンアルコキサイド等を用いたCVD法によりメゾ細孔径を4〜8Åに調整した修飾メゾ細孔材などを例示できる。メタロシリケートとしてはアルミノシリケートやフェロシリケートの他に、シリカ及びチタニアから成るチタノシリケート等の多孔質担体であり細孔径が4〜8Åであるものを用いることが出来る。
【0018】
ただし、本発明で用いるメタロシリケートにはミクロ及びメゾ細孔が5.5±1Åの範囲のものが好ましく、さらに表面積が200〜1000m/gであるものがより好ましい。上記の細孔の大きさは、芳香族化合物の分子の大きさとほぼ同じであり、これに起因して上記範囲の細孔径を有するメタロシリケートを担体として用いた触媒において特異な活性を示すものと思われる。
また、例えばアルミノシリケートの場合のシリカとアルミナの含有比としては、通常入手し得る多孔質担体のシリカ/アルミナ比=1〜8000のものを用いることができるが、本発明の低級炭化水素の芳香族化反応を、実用的な低級炭化水素の転化率及び芳香族化合物への選択率で実施するためには、シリカ/アルミナ比は10〜100であることが好ましい。
【0019】
次に本発明の触媒では触媒材料としては、レニウムまたはその化合物で構成される群から選択される一種以上を必須の材料とする。
本発明の触媒では、触媒材料が上記した群から選択される一種以上の材料でのみ構成されるものであってもよいが、他の触媒材料を含むものであってもよい。
その一つとして、亜鉛、Ga、Co、鉄またはそれらの化合物で構成される群から選択される1種以上を示すことができる。
他の一つとして、クロム、タングステン、モリブデンまたはそれらの化合物で構成される群から選択される1種以上を示すことができる。
さらに他の一つとして、希土類金属またはその化合物で構成される群から選択される1種以上を示すことができる。
上記した各群(レニウムまたはその化合物による群は除く)からは、任意に触媒材料を選択することが可能であり、複数の群から触媒材料を選択するものであってもよい。
【0020】
これら触媒材料は、メタロシリケートに担持させる際に、前駆体として用意することができる。前駆体の例としては、塩化物、臭化物等のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の鉱酸塩、炭酸塩、酢酸塩、蓚酸塩等のカルボン酸塩や金属カルボニル錯体やシクロペンタジエニル錯体等の有機金属塩等を例示することができる。
特に、レニウムの前駆体の例としては、レニウムカルボニル化合物(Re(CO)10、Re(CO)、(CRe(CO)、CHReO)酸の他に、塩化物、臭化物等のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の鉱酸塩、炭酸塩、酢酸塩、蓚酸塩等のカルボン酸塩等が例示できる。
また、前駆体としては複合錯塩や複合酸化物を用いることもできる。
【0021】
本発明の触媒は、これらの前駆体をメタロシリケートに担持することにより得ることができる。
本発明としては、上記触媒材料をメタロシリケートに担持させる際の担持量に特に制限はないが、各群毎に、全触媒重量に基づいて質量比で、0.001〜50%、好ましくは0.01〜40%が良好な担持量範囲である。
なお、複数の群から触媒材料を選択する場合は、触媒材料の担持量の合計は、全触媒重量に基づいて0.002〜50%、好ましくは0.02〜40%の範囲が望ましい。なお、上記担持量範囲は、触媒材料に前駆体を用いる場合には前駆体としての担持量を示す。
【0022】
上記触媒材料をメタロシリケートに担持させる方法としては、前述した金属の前駆体の水溶液あるいはアルコール等の有機溶媒の溶液としてメタロシリケートに含浸担持させるか、あるいはイオン変換方法により担持させた後、不活性ガスあるいは酸素ガス中で加熱処理する方法がある。この方法の一例をより具体的に説明すると、まず最初に、例えばメタロシリケート担体に硝酸レニウム水溶液を含浸担持させ、さらに乾燥して溶媒を適当量除いた後、窒素含有酸素気流中又は純酸素気流中で250〜800℃、好ましくは350〜600℃で加熱処理してレニウムを担持したメタロシリケート触媒を製造することができる。
また、複合酸化物や複合錯塩を用いて触媒を得る場合にも同様の担持方法や、加熱処理方法によって複合酸化物塩や複合錯塩からなる触媒を得ることができる。
【0023】
本発明で用いられる(1)レニウム及び/又はその化合物(以下、第一成分という)、(2)亜鉛、ガリウム、鉄、コバルト及びそれらの化合物からなる群から所望により選ばれた少なくとも一種類(以下、第二成分という)、及び(3)担体からなる低級炭化水素の芳香族化触媒は、以下の各方法で製造することができる。
即ち、(1)メタロシリケートに第一成分を担持した後、所望により選択した第二成分を順次担持させる。(2)メタロシリケートに第一成分および所望により選択した第二成分を適宜の順序で担持させせる。(3)メタロシリケートに各成分を同時に担持させる。これらの方法の中では、先ず、第一成分をメタロシリケートに担持させるのが好ましい。その後は、順次各成分を担持させてもよく、また複数の成分を同時に担持させても良い。
これは触媒として特に重要な作用を果たす第一成分を最初に担持することによって、第一成分がメタロシリケートに確実に担持されることになり、触媒の耐久性が向上するためと考えられる。
【0024】
上記により得られる本発明の触媒は、粉末状又はペレット状及びその他の形状のいずれの形状であってもよく、形状が特に限定されるものではない。
また、本発明で用いる触媒は、芳香族化合物を生成する誘導期を短縮するため、水素ガスやヒドラジン、金属水素化合物、例えばBH、NaH、AlH等による前処理を含む触媒活性化過程を施してもよい。
【0025】
本発明の低級炭化水素を原料とする芳香族化合物及び水素の製造方法では、上記した触媒の存在下で前述した低級炭化水素を原料として反応を起こさせる。
この際には、一酸化炭素及び二酸化炭素から選ばれた一種又は二種のガスの共存下に反応を行う。一酸化炭素及び/又は二酸化炭素の共存下に反応を行うことにより、低級炭化水素の反応転化率を向上させ、さらにベンゼンおよび水素の生成速度が著しく低下するのを抑制することができる。
なお、一酸化炭素や二酸化炭素は、それぞれ単独で添加しても両者を混合して添加しても差し支えない。
一酸化炭素及び/又は二酸化炭素の添加量は、反応系に供給する原料ガスにおける容量%として0.01〜30%、好ましくは0.1〜25%の範囲である。これは、この範囲よりも添加量が少ないとその効果が小さく、また、この範囲より添加量が多いと反応器の容積効率が悪くなるためである。
【0026】
また、本発明の低級炭化水素の変換反応は、通常は回分式あるいは流通式の反応形式で実施されるが、固定床、移動床又は流動化床等の流通式反応形式で実施することが好ましい。
反応は、メタン等の低級炭化水素原料を、一酸化炭素及び/又は二酸化炭素の存在下で300〜800℃、好ましくは450〜775℃の温度で触媒と接触させることによって行うのが望ましい。
また、反応は、0.1〜10気圧、好ましくは1〜7気圧で好適に実施される。重量時間空間速度(WHSV)は0.1〜10であり、好ましくは0.5〜5.0である。
反応生成物から回収される未反応原料及び反応に添加される一酸化炭素又は二酸化炭素は、芳香族化反応に再循環させることができる。
【0027】
上記反応により、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素を主成分とする芳香族化合物が得られる。なお、得られる芳香族化合物の種別や化合物の比率は原料によっても異なり、一律に規定されるものではない。また、この反応に伴って高純度の水素が得られる。
上記した芳香族化合物と水素とは、いずれか一方を有効に利用してもよく、両方を有効利用しても良く、本発明としては利用方法が限定されるものではない。
また、その利用分野も特に限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
なお、この実施例で用いているメタン転化率、炭化水素選択率、炭化水素の分布及び水素生成速度は以下のように定義した。
メタン転化率(%)=〔(原料メタンモル数−未反応のメタンモル数)/原料メタンモル数〕×100
炭化水素選択率(%)=〔生成した全炭化水素のメタン換算モル数/(原料メタンモル数−未反応のメタンモル数)〕×100
炭化水素の分布(%)=〔着目する炭化水素のメタン換算モル数/生成した全炭化水素のメタン換算モル数〕×100
水素生成速度=触媒1gあたり、1秒間に生成した水素のnmol数
ベンゼン生成速度=触媒1gあたり、1秒間に生成したベンゼンのnmol数
【0029】
(実施例1)
触媒材料の前駆体としてパラレニウム酸アンモニウム塩1.20gを10mlの蒸留水に溶解し、これにメタロシリケート担体であるHZSM−5(シリカ/アルミナ比=40、表面積870m/g、細孔径=5.4×5.6Å)の粉末12gを加え、充分に攪拌しながら回転式減圧エバポレーターを用いて蒸発乾固して、パラレニウム酸アンモニウムのHZSM−5担持体を得た。これを石英製反応管(1.2cm径、長さ30cm、V字タイプ)に充填後、純酸素ガス流下(40ml/分、1気圧)、400℃で2時間焼成して薄草色粉末として、全触媒重量に基づいて質量比で6%のレニウムをHZSM−5に担持した触媒(以下、Re(6%)/HZSM−5と略記する)を得た。
【0030】
また、触媒の製造時に、上記パラレニウム酸アンモニウム塩1.20gに、Zn(NO、GaCl、FeClまたはCoClを前駆体としてそれぞれ加えて10mlの蒸留水に溶解し、上記と同様の方法によって全触媒重量に基づいて質量比で6%のレニウムと1%のZn、Ga、Fe、Coを含有する触媒を得た。さらに、GaClをパラレニウム酸アンモニウム塩に加えた前駆体を用いるものでは、担体として、MCM−22(細孔径5.5Å)またはHZSM−11(5.1×5.5Å)を用い、上記と同様の方法によって触媒を得た。
【0031】
上記各触媒0.3gを固定床流通式反応装置の石英製反応管(内径8mm)に充填し、反応温度750℃、3気圧で、メタンに対し2%炭酸ガスを添加した反応ガスを26ml/minの流量で供給しメタンの芳香族化反応によるベンゼン及び水素の生成反応活性を調べた。反応後200分後経過後の結果を表1に示した。
【0032】
表1から明らかなように、Reを必須として含む本発明の触媒は、低級炭化水素原料であるメタンからベンゼンおよびナフタレンが高い生成速度で得られており、芳香族化合物化に優れている。また、これに伴って水素が高い生成速度で製造されており、水素の製造能力においても優れている。
【0033】
【表1】

【0034】
(実施例2)
触媒材料の前駆体としてパラレニウム酸アンモニウム塩1.20gを10mlの蒸留水に溶解し、これにメタロシリケート担体であるHZSM−5(シリカ/アルミナ比=46、表面積800m/g、細孔径=5.4×5.6Å)の粉末12gを加え、充分に攪拌しながら回転式減圧エバポレーターを用いて蒸発乾固して、パラレニウム酸アンモニウムのHZSM−5担持体を得た。これを石英製反応管(1.2cm径、長さ30cm、V字タイプ)に充填後、純酸素ガス流下(40ml/分、1気圧)、400℃で4時間焼成して薄草色粉末として、全触媒重量に基づいて質量比で6%のレニウムをHZSM−5に担持した触媒(以下、Re(6%)/HZSM−5と略記する)を得た。
該触媒0.3gを固定床流通式反応装置の石英製反応管(内径8mm)に充填し、反応温度750℃、3気圧で原料ガスとしてメタンガスに一酸化炭素を所定量添加したガスを26ml/minの流量で供給し、メタンの芳香族化反応を行った。
反応管流出物中には未反応のメタンの他に、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、炭素数2〜5の炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、アントラセン等が存在していた。反応開始後、所定時間経過後の結果を表2に示した。
【0035】
(比較例1)
また、メタンガス中に一酸化炭素を添加しない以外は、実施例2と同様の方法でメタンの芳香族化反応を行った。反応開始後、100分経過後、400分経過後、1440分経過後の結果を同じく表2に示した。
【0036】
表2から明らかなように、一酸化炭素の共存下に反応を行うことにより、低級炭化水素の反応転化率が大幅に向上している。また、一酸化炭素を含まない原料では、経時的に芳香族化合物及び水素の生成速度が著しく低下しているが、一酸化炭素の共存下で反応を行うものではこの低下が抑制されており、長時間、安定した性能が得られている。
【0037】
【表2】

【0038】
(実施例3)
この実施例では、実施例2における原料ガス中への一酸化炭素の添加を二酸化炭素の添加に変えた以外は、実施例2と同様の方法でメタンの芳香族化反応を行った。反応開始後、420分経過後および2000分経過後の結果を表3に示した。
この表3から明らかなように、二酸化炭素の共存下で反応を行う場合にも、実施例2と同様に反応転化率の大幅な向上、生成速度の経時的な低下が抑制されている。
なお、これら実施例では、一酸化炭素の共存下または二酸化炭素の共存下でのみ評価を行ったが、一酸化炭素と二酸化炭素がともに共存する環境においても同様の効果が得られることが確認されている。
【0039】
【表3】

【0040】
(実施例4)
この実施例では、実施例2において用いたHZSM−5を他の多孔質担体に変更した以外は、実施例2と同様の製造方法により触媒を製造した。
なお、多孔質担体としてL−ゼオライト、ZSM−12(6Å)、フェリオライト、β−HZSM−5(5.5×6.5Å)、ZSM−11(5.1×5.5Å)、SAPO−5(8Å)及びMCM−22(5.5〜4.0Å)を用いた。 上記の各触媒0.3gを実施例2と同様に、固定床流通式反応装置の石英製反応管(内径8mm)に充填し、反応温度750℃、3気圧で原料ガスとしてメタンガスに二酸化炭素を体積比で2%を添加した反応ガスを7.5ml/minの流量で供給し、メタンの転化率、生成された炭化水素中のベンゼンの選択率、ベンゼンの生成速度〔(nmole/g−Cat/sec)反応開始後2時間後〕及び水素生成速度〔(nmole/g−Cat/sec)]を測定した。その結果は表4に示した。
表4に示すように、メタルシリケートからなるいずれの多孔質担体を用いる場合にも、芳香族化合物化が確実になされており、これに付随して水素が効率的に生成されている。
【0041】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化炭素及び/又は二酸化炭素の共存下でメタンを含む低級炭化水素の反応に用いる触媒であって、レニウムまたはその化合物で構成される群から選択される一種以上を含む触媒材料と、該触媒材料を担持するメタロシリケートとを有することを特徴とする低級炭化水素の芳香族化合物化触媒。
【請求項2】
前記触媒材料として、亜鉛、Ga、Co、鉄またはそれらの化合物で構成される群から選択される1種以上を含むことを特徴とする請求項1記載の低級炭化水素の芳香族化合物化触媒。
【請求項3】
前記メタロシリケートが多孔質体であることを特徴とする請求項1または2に記載の低級炭化水素の芳香族化合物化触媒。
【請求項4】
前記メタロシリケートがケイ酸アルミニウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の低級炭化水素の芳香族化合物化触媒。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の触媒の存在下、一酸化炭素及び/又は二酸化炭素の共存下でメタンを含む低級炭化水素を反応させて芳香族炭化物を主成分とする芳香族化合物と水素とを製造することを特徴とする低級炭化水素を原料とする芳香族化合物及び水素の製造方法。
【請求項6】
前記一酸化炭素及び/又は二酸化炭素の添加量が、反応に供給する全原料ガスにおける容量%として0.01〜30%の範囲であることを特徴とする請求項5記載の低級炭化水素を原料とする芳香族化合物及び水素の製造方法。


【公開番号】特開2010−260051(P2010−260051A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152001(P2010−152001)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【分割の表示】特願2000−160615(P2000−160615)の分割
【原出願日】平成12年5月30日(2000.5.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成11年12月1日 株式会社広信社発行の「表面 第37巻第12号」に発表
【出願人】(597039939)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】