説明

低透過性の可撓性燃料ホース

分岐した分子構造と衝撃改質剤を含むポリアミド6のバリア層と、及び/又は1〜2GPaの曲げ弾性率と、100%あるいはそれ以上の引張伸びと、を備える可撓性のホース又は管。このホースは、インナチューブのような更なる層と、アウタカバー、テキスタイル又はワイヤー強化又は他の同種のものを含んでもかまわない。エタノールやメタノールを含む燃料への透過性は非常に低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、広くは燃料に対して低透過性の可撓性燃料ホースに関し、より詳細には、特定の種類のポリアミド6のバリア層を備えるホースに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料システムコンポーネントのための厳しい排出基準に伴って、エタノールを含むアルコールを含有する自動車燃料の使用の増加により、従来の可撓性の燃料ホースの構造上の改良が必要となっている。従来の燃料ホース構造には、例えばニトリルゴム(NBR)、ニトリルゴム・塩化ビニルブレンド(NBR・PVC)、エピクロルヒドリン(ECO)などの安価な耐燃料性ゴムが使われていた。現在、アルコールを含有する燃料のための改良されたホースでは、通常1つ以上の、一般にFKM、PVDF、ETFE、FEP、EFEP、PCTFE、THV、PTFEなどで表され、以下一般にフッ素重合体と称される様々なフッ素エラストマー及び/又はフッ素樹脂が、アルコールや燃料の透過に対するバリアを提供するために使用される。燃料ホースのバリア層のための代表的な好ましい材料は、THV(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンのターポリマー)のようなフッ素重合体膜であり、その1つの例が、米国特許第5,679,425号明細書に開示されている。
【0003】
フッ素重合体のバリア・ホースが燃料ホース市場を支配する一方、多くの他の材料が将来性のあるバリア層として利用できる。平坦な樹脂膜を重なり合う円筒の層に巻くことによって、中間熱可塑性樹脂層を備えるゴム・ホースを製造する方法を対象にしている米国特許第6,945,279号明細書では、将来性のあるゴム材と熱可塑性樹脂材の広範なリストを開示している。NBRが将来性のあるゴム材として、またポリアミド6(“PA6”)が将来性のある樹脂フィルムとしてそのリストで言及される一方、米国特許第6,945,279号明細書は任意の特定の使用のための材料を選ぶための詳細なガイダンスを示していないし、その中には実施例もない。典型的な燃料ホースは、例えばポリアミド類を含む他の材料とフッ素重合体を結合した多層バリア構造が更に含まれている。しばしばポリアミド類は、燃料のための熱可塑性多層管のための有用な材料としてあげられている。
【0004】
燃料ホースにおいて、ナイロン11(すなわち、ポリアミド11)の熱可塑性フィルム層を使用した例が米国特許第6,279,615号明細書に開示されている。そこにおいて、ポリアミド(“PA”)は、比較例のゴム・ホースの内部表面の最も内側{さいないぶ}の単板層である。それにもかかわらず、米国特許第6,279,615号明細書で記述されるホースで得られる透過度は、現在のSAE(ソサエティ・オブ・オートモーティブ・エンジニアズ)の基準を満たすほど充分に低くない。米国特許第2,564,602号明細書は、ナイロンを含む可撓性の、樹脂性の、熱可塑性プラスチック材料の中間層を備えるゴム・ホースを開示する。米国特許出願公開第2007/194481 A1号明細書は、インナチューブと、ゴムのアウタカバーと、PA6を含むあらゆる種類の熱可塑性樹脂の中間バリア樹脂層を備えるゴム・ホースを開示する。しかし、燃料ホースのアプリケーションのためにはフッ素重合体が好ましく、そこでは樹脂層はプラズマ処理されている。米国特許第7,478,653号明細書は、フッ素重合体又はPA6を含むポリアミドのバリア層を備える4層のゴムの燃料ホースを開示する。
【0005】
米国特許第6,855,787号明細書は、例えばPA6などの、フッ素重合体のバリア層を含むポリアミド樹脂に基づく熱可塑性の燃料移送管を開示する。米国特許第6,491,994号明細書は、PA11又はPA12樹脂の層と、PA6と、層状のケイ酸塩が中に分散されたPA6に基づく熱可塑性の燃料移送管を開示する。米国特許第7,011,114号明細書は、ポリフェニレンサルファイド(“PPS”)のバリア層を含むポリアミド樹脂に基づく熱可塑性の燃料移送管を開示する。
【0006】
多層構造のバリアを用いた例が米国特許第5,038,833号明細書に開示されており、そこでは、主要なアプリケーションは硬質プラスチックのパイプである。冷媒ホースに熱可塑性バリア層を用いた例が米国特許第6,941,975号明細書に開示されており、そこでは、バリア層は、例えばエチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)などのビニル樹脂の層と、ポリオレフィン及び/又はポリアミド樹脂の外層を含む2又は3層を必要とする。それぞれの樹脂層は、0.025〜0.25mmの厚みを有する。米国特許第6,941,975号明細書で提供される唯一の例では、総厚み0.15mmの3層のバリアを用いており、未公表の直径のホース1cmあたりのR134冷媒の透過度は3.94x10−5g/cm/日である。米国特許第7,504,151号明細書は、PA6/66共重合体、PA11、PA12、PA6又はナノフィラを配合したPA6/12のバリア層を備える冷媒ホースを開示する。米国特許第7,478,654号明細書は、1枚の層として、例えばPA6又はその他多くの中から選ばれる熱可塑性樹脂の層を含む2層のバリアを備える冷媒バリア・ホースを開示する。
【0007】
同時係属の2007年11月9日に出願された米国特許出願第11/938,139号においても言及されており、その全内容は参照により本明細書中に組み込まれている。その出願は、非フッ化ゴムのインナチューブと、非フッ化ゴムのアウタカバーと、基本的にエチレンの含有量が30モル%未満であるEVOHから成る中間バリア層と、好ましくはバリア層とアウタカバーとの間の織物補強とを備える可撓性の燃料ホースを開示する。非フッ化ゴムの結合層は、バリアと強化との間に含まれてもかまわない。エタノールを含有する燃料及びメタノールを含有する燃料に対する透過性は非常に低い。EVOH層は、未加硫ゴムのインナチューブに押し出されてもかまわなく、未加硫ゴムのアウタカバーはその上に押し出されてもかまわない。しかし、加硫前及び加硫中に得られる未加工のホースを取扱っている間、EVOH層の剛性は、ねじれ、層間剥離及びその他の処理の問題をもたらすことがある。この剛性の結果、EVOHベースのホースは、SAEJ30R14キンク試験に失敗した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、例えばアルコールを含有する燃料の用途に好適であり、かつ非常に可撓性があり、ねじれや層間剥離が起こることなく製造容易な低透過性燃料ホースを提供するシステムと方法を対象としている。更に、本発明では、フッ化材料を必要としない、安価な燃料ホースを提供する。特に本発明は、中間PA6バリア層を備えた非フッ素系エラストマーに基づき、織物又はワイヤーのいずれかによって任意に補強された非常に低透過性のゴム燃料ホースを提供する。本発明は、非線形又は枝分かれした分子構造と、熱可塑性物質の添加又はフッ化ポリマーのバリア層のない衝撃改質剤を有するPA6のバリア層を備える低透過性燃料ホースにおいて具現化されてもかまわない。あるいは、PA6バリア層は、約2GPa以下の曲げ弾性率と、約100%以上の伸長を有していても構わない。PA6バリア層は、Technyl(登録商標)C548Bであってもよく、それはロディア・エンジニアプラスチック(Rhodia Engineering Plastics)の商標の下に販売されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態では、ゴムのインナチューブ、枝分かれした分子構造と衝撃改質剤を有するPA6を備える中間バリア層と、ゴムのアウタカバーを備える燃料ホースを対象とする。バリア層は、本質的にPA6層から構成されても構わなく、PA6層によって構成されても構わない。バリア層の厚みは、0.025〜0.76mm(1〜30ミル)の範囲とすることができ、好ましくは0.025〜0.38mm(1〜15ミル)であり、もしくは0.07〜0.18mm(3〜7ミル)であり、もしくは厚さ10ミル以下の厚みとすることができる。インナチューブとアウタカバーは、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム(HNBR)、エピクロルヒドリン・ゴム(ECO)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、ポリクロロプレンゴム(CR)、塩素化ポリエチレン(CPE)、エチレン酢酸ビニル(EVM)、又はエラストマーに混合されたニトリル・ポリ塩化ビニル(NBR・PVC)、熱可塑性エラストマー(TPE)などを備えても構わない。インナチューブと結合層は共に同じゴム組成を備えていても構わない。できれば、インナチューブも、結合層も、アウタカバーも、バリア層も、フッ素重合体から成る必要はない。テキスタイル又はワイヤー強化は、PA6バリア層、又は強化に先だってバリア層に適用される摩擦層又は結合層に直接適用されても構わない。例えばレゾルシノール、ホルムアルデヒド供与体及びシリカ(RFS)系のような接着系では、摩擦層及び/又はインナチューブ層においてPA6への接着を促進するために用いられてもかまわない。破裂強度の増大に起因する強化の必要性は、PA6バリア層によって、かなり減らされるかもしれない。
【0010】
他の実施形態において、本発明のホースは、ここに記述されるPA6の薄い層を含む2枚以上の層、又は2〜5枚の層を備えてもかまわない。PA6層は、好ましくは0.010インチ(0.25mm)以下の厚さであってもかまわない。特定の又は所定の燃料の透過を減少させ、又は燃料成分が1平方メートルあたり1日15グラム以下となるように、PA6は十分な厚み又は効果的な厚みを備えることが好ましい。所定の燃料成分は、メタノール又はエタノールであってもかまわない。他の層は、例えば織物又はワイヤー、例えばTPEを含む異なる熱可塑性材料、ゴム又は架橋された熱可塑性物質などの熱硬化性材料のような補強であっても、又はそのような補強を含んでいてもかまわない。
【0011】
本発明はまた、ホース・アセンブリ又は上記の説明に従った燃料ホースを採用した燃料システムと、例えばクランプ、連結器、コネクタ、ニップル、管又は同種のものなどの少なくとも1つの付属品、および/又は例えばタンク、ポンプ、缶、レール又は注入器又は同種のものなどの燃料又は流体操作用の部品を対象とする。
【0012】
上記では、以下の本発明の詳細な説明をよりよく理解し得るように、本発明の特徴及び技術的な利点をかなり広く概説した。以下、本発明の特許請求の範囲の主題を形成する本発明の追加の特徴及び利点を説明する。ここで開示される概念及び特定の実施形態は、本発明の同じ目的を達成するために改変し、また他の構造を設計する基礎として容易に用いることができることを当業者によって理解されたい。このような均等構造は、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の精神及び範囲から逸脱するものではないことも当業者によって理解されたい。本発明の編成及び動作方法に関して本発明を特徴づけると考えられる新規な特徴は、さらなる目的及び利点と合わせて、以下の説明を添付の図と併せ読むとよりよく理解されよう。ただし、各図は例示及び説明のためにのみ提供されるものであり、本発明の制限を定義するためのものではないことを明確に理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
この明細書に組み込まれその一部を構成し、同一参照番号が同一構成部を指し示す添付図面は、本発明の実施形態を示し、説明とともに本発明の原理を説明するために用いられる。
【0014】
【図1】本発明に従って構成されたホースの実施形態の部分的に断片化した斜視図である。
【0015】
【図2】本発明に従って構成されたホースシステムの実施形態の概略図である。
【0016】
【図3】本発明に従って構成されたホースの他の実施形態の部分的に断片化した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照すると、ホースが例示されており、本発明の1つの実施形態に従って構成されている。ホース11は、インナチューブ12と、ポリアミド6(PA6)の中間熱可塑性バリア層14とアウタカバー16を備える。任意で、ホース11は、ホースの内のいずれかに補強層18を備えていてもかまわない。他の選択肢として、ホース11は様々な層の間に1つ以上の結合層及び/又は接着剤膜を備えていてもかまわない。図1は、結合層20の上に適用された補強層18を示す。中間層14はゴム層の1つの内部に配置することができ、これにより、ゴム層を2つの独立した層に効果的に分ける。
【0018】
中間バリア層14は、好ましくは枝分かれ分子構造、すなわち線形の重合体構造ではないPA6を備える。中間層の厚さは、0.025〜0.76mm(1〜30ミル)の範囲であってもよく、好ましくは0.025〜0.38mm(1〜15ミル)であり、又は0.05〜0.25mm(2〜10ミル)の範囲である。PA6は半結晶から高結晶のポリマーであり、アミド基の高い凝集エネルギーにより、PA6はガスに対する良好な透過バリアであると考えられている。通常、結晶化度が高いほど透過性は低くなる。しかし、高結晶化度はPA6を、低温たわみ性に劣る、もろくて堅いポリマーにする。PA6の分岐が高くなるほど、結晶角は低くなり、可撓性が高くなる。衝撃改質剤の存在も可撓性を増す。このように、先の出願は、剛性構造材料として硬いPA6の等級を用いており、及び/又は例えばフッ素重合体、ポリオレフィン、EVOHや他の同種のような他のバリア材料の更なる層を加えた薄い従来のPA6層を用いている。しかし、本発明の実施形態に従って、例えばインドレン、ガソリン、バイオディーゼル、ディーゼル、アルコール類とアルコールを含有する燃料等の様々な燃料に対して特に低透過性を有する可撓性のホースは、PA6を備える、基本的にPA6で構成されているに等しい、又はPA6から成る単一のバリア層を用いており、好ましくはPA6は枝分かれした構造と衝撃改質剤、又は約2GPa以下の曲げ弾性率と約100%以上の伸長を有する。
【0019】
PA6はまた、ポリカプロラクタム、ナイロン6、ポリカプロアミドとして様々に特定される。ここにおいて、PA6という用語は、又は「PA6を備える」という用語は、PA6と他のポリマーのポリマー混合物を含むこともできる。例えば、PA6はここにおいて、1つ以上のPA11、PA12、PA66、PA610、PA612、PA46などを備えるPA6の混合物を含むことができるがこれに限られない。そのうえ、その混合物は、ここに記述されるような衝撃改質剤又は他の添加物を含むことができる。あるいは、PA6はここにおいて、衝撃改質剤以外の他のどのブレンドポリマーも含まない実質的なPA6とすることができる。
【0020】
アミド基の前述の凝集エネルギーに関して、PA6は湿度に関連する感度を示してもよく、高湿度環境において透過性が増大をもたらす。そのような湿潤環境は、ホースを製造する間の蒸気加硫環境から、多湿の又は湿潤な気候において車両で使用される場所まで、ホースの使用期間中ほとんどどんな時にも存在する場合がある。本発明の実施形態に従って、適切な非フッ化ゴムのインナチューブとアウタカバーの使用は、PA6バリア層を湿気から十分に保護する。適切なゴム組成物は、NBR、HNBR、CSM、CR、ECO、EVM、CPE、NBR・PVC、エチレン・メチルアクリル酸・エラストマー(EAM)、アクリル又はアクリル酸・エラストマー(ACM)、又はTPE、又は同種のものに基づいてもかまわない。アルコールを含有する燃料に用いるインナチューブの好ましいゴム組成物は、NBR、NBR・PVC、ECO及び/又はHNBRに基づく。そうではあるものの、蒸気又は湿気への有害な暴露を防ぐためには、例えば加硫の間にはホースの端に密封するなどの措置をとるべきであることを理解すべきである。
【0021】
バリア層に用いるPA6の適切な等級は、枝分かれした分子構造と衝撃改質剤を含む。枝分かれした分子構造は、物質を拡散させるためのより曲がりくねった分子経路をつくるか促進することにより、透過に対する耐性を改良するとみられている。衝撃改質剤の存在は、PA6を製造し、捻じれの問題の解消に必要な可撓性の与えると考えられており、また、衝撃改質剤の存在により透過に対する耐性も向上するかもしれない。好ましくは、この発明の実施のために適切なPA6は、比較的高い粘度と比較的低いメルトフローレイトを有する。適切なPA6は、好ましくはブロー成形用であるか、押し出し用であってもかまわない。適切なPA6は、200〜240℃の、又は約220℃の、又は約222℃の融点を有し、その温度以上であれば充分であり、インナチューブとアウタカバーのゴム組成物は、通常、押し出されるか、加硫されるか、硬化する。適切なPA6は、比較的低い曲げ弾性率を持たなければならず、例えば、曲げ弾性率は約2GPa未満の範囲、又は、1〜約2GPaの範囲であってもよく、ISO178の試験方法に準じてテストしてもかまわない。適切なPA6には、比較的高い引張破断伸び又は「伸度(elongation)」がなければならない。例えば、伸度はおよそ100%以上の範囲であってもかまわず、ISO527の試験方法によってテストされてもかまわない。
【0022】
PA6の好ましい等級は、Technyl(登録商標)C548Bであってもよく、それはロディア・エンジニアプラスチックの商標の下に販売されている。他の適切な等級としてロディアで販売されているTechnyl(登録商標) C536XTとC442を含んでもかまわない。例として、他の適切な等級は、BASFの商標の下で販売されているCapron(登録商標)8259、ハネウェル(Honeywell)の商標の下で売られるAegis(商品名)PL220HS、クラリアント(Clariant)の商号の下で販売されているRenol6253を含んでもかまわないがこれに限定されない。表1は、PA6の1つ以上の適切な等級の一部の特性の一覧表である。
【0023】
【表1】

【0024】
PA6の有用な等級は、1つ以上の衝撃改質剤を有していてもかまわない。ポリアミドのための衝撃改質剤は、室温においてエラストマーの又はゴムのような天然及び合成のポリマー物質を含み、ASTM D882に従って評価されるように、500MPa未満の弾性の引張係数を更に有していてもかまわない。衝撃改質剤は、例えば、(エチレン及び/又はプロピレン)/α−オレフィン共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)共重合体、アイオノマーポリマー、芳香族ビニル化合物/複合ジエン化合物ブロック共重合体、又はポリアミドエラストマーをであってもかまわない。これらの材料は、単独又は混合して用いてもかまわない。
【0025】
上記の(エチレン及び/又はプロピレン)/α−オレフィン共重合体は、少なくとも3つの炭素原子を有するα−オレフィンを有するエチレン及び/又はプロピレンの共重合によって得られるポリマーである。少なくとも3つの炭素原子を有するα−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、1−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、又は12−エチル−1−テトラデセン、又はそれらの組合せであってもかまわない。
【0026】
更に、例えば1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロブタジエン、メチレンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、又は2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン等の非共役ジエンのポリエンは、例えば架橋部位を提供するために、第3のモノマーとして共重合されてもかまわない。
【0027】
上記の(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンと、α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステルモノマーを共重合することによって得られるポリマーである。α,β−不飽和カルボン酸モノマーは、アクリル酸又はメタクリル酸であってもよく、α,β−不飽和カルボン酸エステルモノマーは、そのような不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、又はデシルエステルであってもよく、又はその混合物であってもかまわない。
【0028】
上記のアイオノマーポリマーは、少なくとも金属イオンの中和によってイオン化されたα,β−不飽和カルボン酸を備えたオレフィンの共重合体のカルボキシル基をいくつか備える。オレフィンとしては、エチレンは好ましく使用され、α,β−不飽和カルボン酸として、アクリル酸又はメタクリル酸が好ましく使用される。しかしながら、それらは、ここで例示されたものに限定されず、不飽和カルボン酸エステルモノマーは、そこに共重合されていてもかまわない。更に、例えばLi、Na、K、Mg、Ca、Sr又はBaなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属に加えて、金属イオンは、例えば、Al、Sn、Sb、Ti、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn又はCdであってもかまわない。
【0029】
更に、芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物のブロック共重合体は、芳香族ビニル化合ポリマーブロック/共役ジエン化合物のポリマーブロックを備え、そしてブロック共重合体は、少なくとも1つの芳香族ビニル化合物ポリマーブロックと少なくとも1つの共役ジエン化合物ポリマーブロックを有し、使用される。更に、そのようなブロック共重合体において、共役ジエン化合物ポリマーブロックの不飽和結合は、水素化されてもかまわない。
【0030】
芳香族ビニル化合物ポリマーブロックは、主に芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から成るポリマーブロックである。このような場合には、芳香族ビニル化合物は、例えば、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン又は4−(フェニルブチル)スチレンであってもかまわない。芳香族ビニル化合物ポリマーブロックは、より多くの種類の上記のモノマーのうちの1つでできている構造単位を有していてもよい。更に、芳香族ビニル化合物ポリマーブロックは、必要な場合には、他の不飽和モノマーの少量で作られた構造単位を有していてもよい。
【0031】
共役ジエン化合物ポリマーブロックは、1つ以上の種類の共役ジエン化合物、例えば1,3−ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン及び1,6−ヘキサジエンなどで形成されるポリマーブロックである。水素化された芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物のブロック共重合体において、共役ジエン化合物ポリマーブロックのいくつかの又は全ての不飽和結合は、水素化されて飽和結合になる。ここにおいて、主に共役ジエンから成るポリマーブロックの分散は、ランダムであるか、テーパーであるか、部分的にブロックであるか、その任意の組合せであってもかまわない。
【0032】
芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物のブロック共重合体又はその水素化物の分子構造は、直線状であるか、分岐しているか、放射線状であるいか、あるいはその任意の組合せであってもかまわない。その中で、本発明では、芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物のブロック共重合体、及び/又はその水素化物として、少なくとも1つの芳香族ビニル化合物ポリマーブロックと1つの共役ジエン化合物ポリマーブロックが直線状に結合された1つのジブロック共重合体、3つのポリマーブロックが芳香族ビニル化合物ポリマーブロック/共役ジエン化合物ポリマーブロック/芳香族ビニル化合物ポリマーブロックの順に直線状に結合したトリブロック共重合体、そしてその水素化物は、好んで使用される。特に、例えば非水素化又は水素化スチレン/ブタジエン共重合体、非水素化又は水素化スチレン/イソプレン共重合体、非水素化又は水素化スチレン/イソプレン/スチレン共重合体、非水素化又は水素化スチレン/ブタジエン/スチレン共重合体、又は非水素化又は水素化スチレン/(イソプレン/ブタジエン)/スチレン共重合体をあげてもかまわない。
【0033】
上記のポリアミドエラストマーは、主にハードセグメントとしてのポリアミドを形成するユニットとポリエーテルユニット、又はソフトセグメントとしてのジカルボン酸を有するポリエーテルの重縮合によって形成されたポリエーテルエステルユニットを備える。それは、例えば、ポリエーテルエステルアミドエラストマー又はポリエーテルアミドエラストマーであってもかまわない。そのようなハードセグメントとしてのポリアミドを形成するユニットは、例えば、少なくとも三員環を有するラクタム、アミノカルボン酸、又はジカルボン酸とジアミンでできているナイロン塩であってもかまわない。少なくとも三員環を有するラクタムは、例えば、ε−カプロラクタム又はラウロラクタムであってもかまわない。アミノカルボン酸は、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカ酸、又は12−アミノドデカン酸であってもかまわない。
【0034】
ナイロン塩を構成するジカルボン酸として、C2−36ジカルボン酸が通常使用される。具体的には、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、又は2,2,4−トリメチルアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸、例えば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、又は例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸又はキシレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸であってもかまわない。更に、C36ジカルボン酸として、二量体脂肪酸があげられる。二量体脂肪酸は重合により得られた重合された脂肪酸であり、例えばC8−24飽和の、エチレン系不飽和の、アセチレン系不飽和の、天然の又は合成の塩基性脂肪酸である。
【0035】
ナイロン塩を構成するジアミンとして、C2−36ジアミンが通常使用される。具体的には、例えば、エチレンジアミン、トリメチルジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、又は2,2,4/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、例えば1,3/1,4−シクロヘキサンジメチルアミン又はビス(4,4’−アミノシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン、又は例えばキシリレンジアミンのような芳香族のジアミンであってもかまわない。更に、C36ジアミンとして、アミノ酸に変わる二量体脂肪酸のカルボキシル基を有する二量体アミンがあげられる。
【0036】
更に、ソフトセグメントとしてのポリエーテルユニットは、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコールテトラヒドロフラン、又は複数のそのようなポリエーテルを形成するモノマーを用いて作られた共重合体であってもかまわない。
【0037】
ポリエーテルエステルアミドエラストマーは、上記のジカルボン酸を導入することによってつくられる末端カルボキシル基を有する上記のポリエーテルと上記のポリアミドを形成するユニットを備えるポリアミドエラストマーである。更に、ポリエーテルアミドエラストマーは、上記のポリエーテルの末端の水酸基をアミノ基及び/又はカルボキシル基に置換することによって得られるポリエーテルユニットと、カルボキシル基及び/又はアミノ末端グループを有するポリアミドを形成するユニットとのポリアミドエラストマーである。
【0038】
更に、上記の(エチレン及び/又はプロピレン)/α−オレフィン共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)共重合体、アイオノマーポリマー、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体は、衝撃改質剤として用いられ、好ましくはカルボン酸及び/又はその誘導体によって修飾されたポリマーの形で使用される。
【0039】
修飾のために使用されるカルボン酸及び/又はその誘導体として、例えばカルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩基、カルボン酸イミド基、カルボン酸アミド基、又はエポキシ基があげられる。そのような官能基を含む化合物の例として、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、メタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドシス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸及びこれらのカルボン酸の金属塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、エンドビシクロ−[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、及びシトラコン酸グリシジルが含まれる。
【0040】
耐衝撃性改質されたPA6を用いることにより、得られたホースは優れた可撓性と耐よじれ性を有する。衝撃改質剤の量は1〜25重量%であってもよく、好ましくは3〜10%であり、ポリアミド化合物の全重量に基づく。衝撃改質剤の量が25%を超える場合には、材料の強度は減少する傾向があるかもしれない。
【0041】
このように、ポリアミドに用いる衝撃改質剤は、エラストマー又はゴム状ポリマーであり、カルボン酸及び酸無水物から選ばれる官能基とグラフト化していることが好ましい。共重合体における酸無水物の官能基のグラフト化は、通常、無水マレイン酸の存在下における共重合によって得られる。
【0042】
衝撃改質剤として使われるゴム状ポリマーは、交互に又は付加的に、ASTM D−638に対する引張係数が約40,000MPa未満であると定義され、通常25,000未満であり、好ましくは20,000未満である。それは、ランダム共重合体又はブロック共重合体であってもかまわない。有用なゴム状ポリマーは反応性モノマーで作られてもよく、その反応性モノマーはポリマー鎖又は分岐の一部となるか又はポリマーにグラフト化され得る。これらの反応性モノマーは、ジエン又はカルボン酸又はそれらの誘導体、例えばエステル類又は無水物であってもかまわない。これらのゴム状ポリマーとして、ブタジエンポリマー、ブタジエン/スチレンの共重合体、イソプレン、クロロプレン、アクリロニトリル/ブタジエンの共重合体、イソブチレン、イソブチレンブタジエンの共重合体、又はエチレン/プロピレン(EPR)の共重合体、エチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)の共重合体があげられる。有用なゴム状ポリマーとして、芳香族ビニルモノマー、オレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらの誘導体、エチレンプロピレンジエンモノマーとこれらの金属塩類があげられる。有用なゴム状ポリマーについては、米国特許第4,315,086号明細書及び第4,174,358号明細書に記載されており、その関連部分は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0043】
本発明を実施するための好ましい衝撃改質剤はグラフト化した共重合体であり、その共重合体はエチレンの共重合体とエチレン以外のα−オレフィンの共重合体であり、そのエチレンの共重合体にグラフト化して、カルボン酸又はカルボン酸無水物の官能性を有する。エチレンとα−オレフィンは、好ましくはエチレンと、3〜8個の炭素原子を含むα−オレフィンから選ばれるα−オレフィンの共重合体であり、好ましくは3〜6個の炭素原子を含む。共重合体中の好ましいα−オレフィンモノマーは、プロピレンである。他のα−オレフィン、例えば1−ブテン、1−ペンテンと1−ヘキセンなどは、プロピレンの代わりに又はプロピレンに加えて共重合体に使われてもかまわない。本発明の実施の好ましい方法の1つとして、無水マレイン酸グラフトエチレンプロピレンゴムと無水マレイン酸グラフトエチレンプロピレンジエンゴムを用いることがあげられる。
【0044】
あるいは、衝撃改質剤は、無水マレイン酸グラフトエチレンプロピレンゴム、無水マレイン酸グラフトエチレンプロピレンジエンゴム、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、及び無水マレイン酸グラフトポリプロピレンからなる群から選ばれてもかまわない。
【0045】
ポリアミド6バリア層の透過性を減らすために、ラメラナノフィラー(lamellar nanofiller)を熱可塑性マトリックスに加えることができる。そのような透過性の縮小は、ラメラナノフィラーによってもたらされる「ねじれ」の効果に起因する。これは、連続する層中に配置される障害のため、気体又は液体が非常に長い経路を進まなければならないためである。理論モデルでは、アスペクト比、つまり長さ/厚さの比が増加するにつれてバリアの効果がより顕著になると考えられている。今日最も広く研究されるラメラナノフィラーは、スメクタイトタイプの粘土、主にモンモリロナイトである。使用の困難は、まず第1に個々のラメラを多少広く分離すること、すなわち剥離と、ポリマーにおける分布にある。剥離を助けるために、「インターカレーション」の技術を使ってもかまわない。インターカレーションは有機陽イオンで結晶を膨張させることによって行われ、有機陽イオンは通常第4級アンモニウムカチオンであり、これによりラメラの負電荷が相殺される。これらの結晶性アルミノケイ酸塩は、それらが熱可塑性マトリックスにおいて剥離されるときは、単一の層(lamellar)の形態で存在し、そのアスペクト比は500以上の値に到達してもかまわない。
【0046】
本発明のポリアミド6は、例えば米国特許出願公開第2007/00182159 A1号明細書に開示されているように、剥離していない状態のナノ層状化合物(nanometriclamellar compound)は、ジルコニウム、チタニウム、セリウム及び/又はリン酸ケイ素に基づく粒子を利用してもよく、その関連部分は参照することにより本明細書に組み込まれる。そのようにPA6においては、液体や気体に対する優れたバリア特性、及び/又は機械的特性、例えば優れた係数/衝撃の妥協や、及び/又はそれが高温で処理され、使用されることを可能にする温度安定性を示す。ジルコニウム、チタニウム、セリウム及び/又はリン酸ケイ素に基づく粒子は、PA6組成物中に存在し、そのような粒子の少なくとも50%は、100以下のアスペクト比を示すナノ層状化合物の形態であってもかまわない。
【0047】
「ナノ層状化合物」という用語は、数nmオーダーの厚さを示すいくつかのラメラの堆積を意味すると解される。本発明に係るナノ層状化合物は、インターカレートしていないか、あるいは膨張剤とも呼ばれる挿入剤によってインターカレートされることができる。「アスペクト比」という用語は、最大径の比率を意味すると解され、通常は、ナノ層状化合物の厚さに対する長さである。好ましくは、ナノ層状化合物粒子は50以下のアスペクト比であり、10以下であることがより好ましく、特に5以下であることが好ましい。好ましくは、ナノ層状化合物粒子は、1以上のアスペクト比を示す。
【0048】
「ナノ化合物」という用語は、1μm未満の大きさの化合物であると解される。通常、使用するナノ層状化合物の粒子は、長さ50〜900nmであり、好ましくは100〜600nmであり、幅は100〜500nmであり、厚さは50〜200nmである(長さは最長寸法を示す)。ナノ層状化合物の様々な大きさは、透過電子顕微鏡法(TEM)又は走査電子顕微鏡法(SEM)によって測定することができる。通常、ナノ層状化合物の層間距離は0.5〜1.5nmであり、好ましくは0.7〜1.0nmである。この層間距離は、例えばX線回折のような、結晶学的な分析技術によって測定することができる。
【0049】
有利には、粒子の数の50%は100以下のアスペクト比を示すナノ層状化合物の形状である。他の粒子は、具体的には単一の層の形状の粒子であり、例えばナノ層状化合物の剥離によって得られる。好ましくは、少なくとも粒子の数の80%は、100以下のアスペクト比を示すナノ層状化合物の形状である。より好ましくは、粒子の数の約100%は、100以下のアスペクト比を示すナノ層状化合物の形状である。
【0050】
粒子は、PA6熱可塑性マトリックスにおいて任意にアグリゲート及び/又はアグロメレートの形状に凝集してもかまわない。これらのアグリゲート及び/又はアグロメレートは特に1ミクロンを超える大きさを示してもかまわない。
【0051】
本発明のPA6のための、ジルコニウム、チタニウム、セリウム及び/又はリン酸ケイ素に基づく、例えば一水化または二水化物等の水和したナノ層状化合物の粒子が使われてもかまわない。例えば、化学式Zr(HPOで表されるZrP、又は定式Zr(HPCU)(HPO)で表されるγZrP等のリン酸ジルコニウムが使用されてもかまわない。さらに、熱可塑性マトリックス中へ導入する前に、ジルコニウム、チタニウム、セリウム及び/又はリン酸ケイ素に基づく粒子を有機化合物、例えば3−アミノプロピルトリエトキシシランのようなアミノシラン化合物、又は例えばペンチルアミンのようなアルキルアミン化合物によって処理することも可能である。
【0052】
本発明に係るPA6バリア層の組成は、組成物の全重量に対するナノ層状化合物の粒子の重量が0.01〜30%であり、好ましくは重量は10%以下であり、より好ましくは重量は0.1〜10%であり、より好ましくは重量は0.1〜5%であり、特に重量は0.3〜3%以下であり、とりわけ重量は1〜3%である。
【0053】
PA6の組成は、更に単一の層を得るために互いに完全に層を分離するように、粒子の層間にインターカレートする挿入剤及び/又は粒子の層を剥離可能な剥離剤を任意で含んでいてもかまわない。これらの粒子は、ジルコニウム、チタニウム、セリウム及び/又はリン酸ケイ素に基づくナノ層状化合物又は他のタイプの化合物、例えば、モンモリロナイト、ラポナイト、ルセンチル又はサポナイト、層状シリカ、層状水酸化物、針状のリン酸塩、ハイドロタルサイト、アパタイト及びゼオライトのポリマー等のスメクタイト型の天然の又は合成のクレーであってもかまわない。挿入剤及び/又は剥離剤は、NaOH、KOH、LiOH、NH、n−ブチルアミンのようなモノアミン、ヘキサメチレンジアミン又は2−メチルペンタメチレンジアミンのようなジアミン、アミノカプロン酸及びアミノウンデカン酸のようなアミノ酸、トリエタノールアミンのようなアミノアルコールよりなる群から選択してもかまわない。
【0054】
一般に、管12は、例えばエラストマー又は樹脂のような1つ以上の可撓性材料の1つ以上の層を含んでもかまわない。したがって、チューブの内表面材料は、ホース内で予想される流体と環境条件に耐えるように選ばれてもかまわない。本発明の実施形態によれば、インナチューブは単一の非フッ素ゴム配合物である。インナチューブのゴム配合は、ECO、NBR、NBR−PVCブレンド、HNBR、TPE等に基づいてもかまわないし、ゴム配合の既知の方法に従って定められてもかまわない。ゴム配合物は、例えばNBRの高及び低アクリロニトリルグレードとPVCを混合したエラストマーの混合物を含んでもかまわない。管のゴム組成物は、有利には、例えばレゾルシノール、ホルムアルデヒド供与体およびシリカのような、又はこれと同等な反応性樹脂システム等の接着促進剤を含んでもかまわない。この接着促進剤は、一般的に「RFS」接着系と呼ばれており、その例はTh. Kempermann, et al., "Manual for the Rubber Industry," 2d Ed., Bayer AG, Leverkusen, Germany, pp 372 & 512-535 (1991)に開示されており、それは参照することにより本明細書に組み込まれる。この「RFS」システムの主な目的は、管12とPA6バリア層14との間の密着性を高めることである。
【0055】
一般に、結合層20はPA6とカバー層及び/又はテキスタイル又はワイヤ強化材間の結合を容易にするために使用されることがある。結合層は、ECO、NBR、NBRPVC、HNBR、TPEまたは同種の他のものに基づくゴム組成であってもかまわない。結合層の主な目的は、接着を提供するか又は促進することであり、特にカバーが「RFS」システムのような接着促進剤を有さない場合及び/又はそのままでは充分にPA6層に付着しない場合に重要である。インナチューブ及び結合層の両方は、同じゴム組成物を用いてもかまわない。結合層の組成物は、例えば上述されたRFSシステムのような、任意の適切な接着促進剤又は接着システムをも含んでいてもかまわない。結合層は、摩擦層とも呼ばれてもかまわない。結合層は、接着剤塗工でもあり得る。
【0056】
通常、カバー16は、遭遇する外部環境に耐えるように1つ以上の適切な可撓性のゴム又は樹脂材で作られていてもかまわない。本発明の実施形態によると、アウタカバーは、単一の非フッ素ゴム配合物である。アウタカバーのゴム配合物は、HNBR、CSM、CR、ECO、EVM、ACM、EAM、NBRPVC又はCPEなどに基づいてもよく、ゴム配合の既知の方法に従った他の材料によって配合されていてもかまわない。管12とカバー16は、同じ材料組成であってもよく、又は異なる組成であってもかまわない。カバーはオゾン耐性を有していることが好ましい。
【0057】
インナチューブ及び結合層として好ましい材料は、ECOに基づいたゴム組成である。適切なECOは、エピクロルヒドリンホモポリマー、又はエチレンオキシドとエピクロルヒドリンの共重合体を含む。好ましいECOの等級は、エピクロロヒドリンの一般的な脱塩素化の硬化部位に加えて、硫黄加硫又は過酸化物加硫可能なジエンの硬化部位を提供するアリルグリシジルエーテル (GECO)を含むターポリマーである。第2に、ジエンの硬化部位が、透過の減少と、酸性ガス耐性の向上に寄与している可能性がある。
【0058】
好ましい実施形態では、フッ素重合体成分を含まない一方、極めて厳しい適用又は極めて厳しい透過又は環境要件にあわせて、ホース構造物の1つ以上の層で、又は結合層としてフッ素重合体が有利に含まれていてもかまわないことを理解する必要がある。
【0059】
図1に示すように、又は上述したように、ホースは補強部材18を備えていてもよい。補強は、中間層14上に直接適用することができ、それによって、少なくとも補強の一部は中間層と接することがでる。好ましくは、結合層20は、最初に中間層14に適用される。それから、補強部材18が結合層20に適用される。アウタカバー16は実質的に補強部材18を囲む又は貫通し、また少なくとも中間層の一部に接触するか又は結合層20に接触してもかまわない。アウタカバーは、有利にはテキスタイルやワイヤー補強及び/又はPA6中間層に接着するように定めたゴム組成物であってもよい。例えば、アウタカバーは、RFSの接着促進システムとして、シリカ充填剤とレゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂及び/又はフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を有するCSM又はCMのエラストマーであってもかまわない。好ましい配置は、PA6バリア層の上又は結合層上に、螺旋状の、編まれた又は編み込んだテキスタイル又はワイヤーの層を適用することである。螺旋構造では、例えば、スパイラル層は2つの層を含んでもよく、それぞれの層は、ホースの縦軸に対して、しかし螺旋方向とは反対の方向に対して、いわゆるロック・アングルや約54°のニュートラル・アングルで、又はその近辺で適用される。しかし、ホースは螺旋構造に限らない。テキスタイル又はワイヤー層は、編まれたか、編みあげられたか、包まれたか、織られたか、不織布であってもかまわない。ECOチューブ、PA6バリア、及びCSMカバーの組み合わせが用いられたテキスタイル繊維又は糸により、得られるホースの破裂圧力の評価が著しく増加することが見出されている。従って、本発明のホースの実施形態では補強用繊維の必要は減らされるかもしれない。例えば、ナイロン、ポリエステル(PET)やアラミド等の多くの有用な補強用繊維は、ホースの層の間の十分な接合を得るために接着処理又は別の結合層の恩恵を受けてもかまわない。有用な補強材は、ポリエステル、アラミド、ポリアミドまたはナイロン、レーヨン、ビニロン、ポリビニルアルコール(PVA)、金属ワイヤー、などが挙げられる。
【0060】
ホース11は、成形、包装、及び/又は押し出し等の方法によって形成されてもかまわない。例えば、インナチューブが押し出され、その後、PA6の中間層はインナチューブの上に押し出されてもかまわない。その後、結合層は押し出されるか、又は中間層に適用されてもかまわない。好ましくは、PA6のバリア層は、重複や継ぎ目なく連続的にインナチューブの上にPA6の筒状の層を押出すことによりホース内に配置される。テキスタイルやワイヤー補強は、その後、中間層の上に螺旋状にされるか、編まれるか、包まれるか編み込まれてもかまわず、又は結合層は編物補強前に適用されてもかまわない。それから、カバーストックが適用されてもかまわない。または、層はマンドレル上に構築されてもかまわない。最後に、アセンブリは、例えば、オーブン又はスチーム加硫機、又は包装され、及び/又は当業者に利用できる他の方法にしたがって、マンドレル上で、熱や放射線によって硬化又は加硫される。好ましくは、硬化はPA6層の溶融温度以下の温度で行われる。
【0061】
ホースの構成の1つの例が図1に示される。本発明を実施する際に、各種の他の構成も利用できることを理解すべきである。例えば、ホースは、流体抵抗、耐環境性、物理的特性などの特定の目的のためのプラスチックやエラストマー組成物を含む更なる内層、外層、又は中間層を有していてもよい。別の例として、必要に応じて又は所望により、更なるテキスタイルや金属強化、ジャケット、カバー等を利用してもかまわない。圧壊抵抗のために、螺旋状のワイヤーがホースの壁に組み込まれたり、ホースの内側に用いられてもかまわない。織物補強は、接着剤、摩擦又は薄い層などで処理されてもかまわない。
【0062】
バリア層をチューブのように押し出す代わりに、バリア層のフィルム又はテープをインナチューブに巻きつけて、重なった部分を溶解又は融解することによって連続的なバリア層を形成してもかまわない。湾曲したホースは、同様にPA6バリア材料で作ることができる。例えば、2段階のプロセスで、未硬化のホースが湾曲したマンドレルの上に配置されるか、又はホースがその後湾曲した形状を保持するように、加硫のための金型に配置されてもかまわない。同様に、他の公知の成形技術を利用することができる。
【0063】
実施例において、燃料ホースは、ホース・アセンブリ、又は燃料ライン・アセンブリ、又は流体移送システムの部品であってもよい。流体移送システムは、一般的に、ホースと、1つ以上のホースの端部において、1つ以上のクランプ、連結器、コネクタ、チューブ、ノズル、及び/又は管継手、流体処理装置等を備える。一例として、図2は、本発明のホースの実施形態を採用したホースシステムの概略図である。特に、図2は、典型的な自動車の燃料システムを表す。図を参照する。 図2を参照すると、燃料タンク31、燃料ポンプ33、サージタンク又は容器38と燃料ポンプ39は、本発明の実施形態で提供される1つ以上の燃料ホース部35及び36によって接続されてもかまわない。燃料リターン・ライン34は、さらに本発明のホース部を含んでもかまわない。ホース35、36及び34は、本発明の実施形態を採用した低圧の構造のものであってもかまわない。本発明の実施形態によれば、中圧又は高圧ホース部37は、燃料噴射装置を有する燃料レール32及び燃圧調整器40に燃料ポンプ39を接続するために使用されてもかまわない。本発明のホースを利用した燃料システムは、自動車の車両システムに限定されず、しかし、燃料サプライチェーン全体にわたる燃料移送システム、海洋用途、航空等の燃料システム、又は非常に低透過性の可撓性ホースが望ましいその他どんな用途を含んでもかまわないことを理解すべきである。例えば、本発明のホースは、例えば酸素、水素又は二酸化炭素を含むガス、液化又は気体のプロパン又は天然ガス、他の燃料、及び冷媒等を含む他の流体を、最小限の透過損失で移送するために役立つ場合もある。
【0064】
次のフィルム及びホース試験に基づくいくつかの例は、本発明の利点を説明するのに役立つ。フィルム試験は、本発明に係る耐衝撃性改質のPA6の2つのフィルムを用いて、つまり、Rhodia社のTechnyl(登録商標)のC548Bを使用した実施例1とC536XTを使用した実施例2を用いて行われた。そして技術に照らした2つの他のフィルムの比較のために、比較例2ではTHV(3M社のダイニオン(Dyneon)社製THV 500G)を使用し、比較例3ではEVOH(クラレ株式会社及びEVAL・カンパニー・オブ・アメリカ社製、EVAL M100B)を使用した。試験では、各材料の0.13mm(5ミル)フィルムを使用し、トウィング−アルバート(Thwing−Albert)透過カップを用い、CE10(ASTM 燃料C(Fuel C)と10%エタノールとの混合物)と共に60℃ の条件下で行った。
【0065】
フィルム試験と同じ厚さの同じフィルム材は、60℃で、ASTM 燃料C、CE10及びCM15(燃料Cと15%メタノールの混合物)を含む様々な試験燃料を用いて行われるホース透過試験のためにホースに組み込まれた。ホースの透過性は、いくつかの燃料タイプの流体を用いて、SAEJ30第9節の貯留法を用いて、ただし60℃の昇温状態で測定された。この方法では、ホースの端部を密封するために金属製のプラグを持つ閉じた容器からの定置用燃料を使用する。毎週、燃料がホースから容器に流れ出され、これにより新鮮な燃料がホースに戻ってくる。実験時間は、10日間の透過測定を加えた1000時間の間行われた。この方法は、スクリーン構造物のための便利な方法として、また燃料透過試験の好ましい基準であるSAEJ1737の透過測定条件を概算するために用いられた。SAEJ1737の方法は、制御された圧力下で循環する高温燃料又は蒸気を含むことに留意されたい。ホースの例はまた、40℃でインドレニン燃料を用いたSAEJ1737の手順でテストされた。
【0066】
上述し、また表2に示されるように、好ましいPA6のメルトフローレイトは比較的低い、すなわち、粘性は比較的高い。ホースの加工、特にバリア層の押し出しは、ブレーカー・プレートのないかなり大きなダイ(ギャップと直径の両方)を用いて、280〜315℃(550〜600°F)の推奨される最高バレル温度で、高せん断速度で、またバリア層の厚さを減らすためにドラウン・ダウン・アプローチを使用して行われた。これらの条件は、高粘度材料の押し出しを何の問題もなく行うことを可能にした。特に、押し出しギャップは約1.5mm(1/16インチ)であり、また、ドロー・ダウン比はホース・サイズに応じて19〜64%だった。
【0067】
【表2】

【0068】
フィルムとホースの両方の透過の結果が表3に示される。各試験が報告するように、PA6材料はTHV又はEVOHよりもずっと良い成績(より低い透過率)だった。さらに、C548B PA6材料は、これまで形成されたホースの全てのサイズ(内径3/16"、1/4"、5/16"、3/8"及び1/2")において、処理中にねじれの問題を示さなかった。バリアとしてC548B PA6材料を利用する燃料ホースは、SAE J30R7及びR14のねじれ耐性試験(kink resistance test)に合格したが、一方で、EVOHバリアホースはそれらの試験は落第した。C548B PA6材料は、競合材料の透過抵抗だけでなく、現在の政府の基準の多くの要件を上回っている。
【0069】
【表3】

【0070】
実施例のホースは、6mm(1/4インチ)の内径と、1.0mm(40ミル)の厚さのRFS接着促進システムを含むECO(GECO)ゴム・インナチューブと、0.13mm(5ミル)の厚さの中間バリア層と、チューブとして、ただし0.5mm(20ミル)の厚さの同じECOゴムの結合層と、PETの螺旋状に巻いた2層糸補強と、1.0mm(40ミル)の厚さのCSMゴムのアウタカバーとで構成された本発明の実施例に従っていることに注意する必要がある。比較例3は、1mm の厚さのNBRチューブと、0.13mmの厚さのTHVバリアと、0.5mm厚さのNBR結合層と、ナイロン補強、及び1.25mmの厚さのCSMカバーを備える。比較例3は、燃料ホース用のSAE J30R11又はR12の透過要件を満たすようにデザインされた。比較例4は、バリア層としてのEVOH(EVAL M100B)を備える係属中の米国特許出願第11/938,139号明細書に基づいているが、他の構成は、補強がナイロンであり、カバーが1.25mmの厚さである以外は、実施例1と同様である。
【0071】
表3に示された透過試験の結果は、本発明の実施例のホースが、不透過性において、比較例のホースを超えて劇的に改善していることを示している。一般的な観察によると、本発明のホースは、様々な燃料に対する透過性において、最良の比較例のホースに比べると約2〜10倍低い値を示すように見える。
【0072】
本発明における透過速度は、海洋用途におけるSAE J30又はSAE J1527のような様々な燃料ホース基準と同様に、さらに上記の背景部分で言及した特許のうちのいくつかと比較されるかもしれない。例えば、循環しない閉じた容器において、SAE J30 R6、R7、R8及びR9は室温で試験されるバリア層のない従来のゴム・ホースに適用される。R9は、燃料Cに対する透過性が15g/m/日以下であることを必要とする。R6、R7及びR8は、燃料Cに対する透過性は、それぞれ、600g/m/日以下、550g/m/日以下及び200g/m/日以下である。SAE J1527 Class 1〜15では、燃料CE10に対する透過性が15g/m/日以下であることを必要とする。SAE J31R11及びR12は、それぞれ40℃と60℃におけるSAE J1737に従って試験される低透過性ホースに適用され、それぞれ14.5kPa(2.1psi)及び0.2MPa(29psi)の圧力下において、循環する環境で、カテゴリーA(最も厳しい評価)としてCM15(燃料Cよりはるかに攻撃的な試験燃料)に対する透過性が25g/m/日以下であることを必要とする。単独で室温から40℃への温度増加は、1つには増加した拡散率により、また1つには閉じた容器における燃料の蒸気圧により、単独で約10倍だけ透過性を増加させると予想される。本発明の定置燃料テストは60℃の温度で実施され、その温度では、その他の全ての要因を一定にした場合において、40℃でテストされるよりも約20倍透過性が増加すると予想される。R11テスト条件における圧力は、おそらく高温度における閉じた容器の蒸気圧とそれほど変わらない。しかしながら、R12テストにおける循環及び圧力の影響は、40℃における定置試験の約20倍程度、透過性を増加させると推定されるかもしれない。このように、本発明のホースは、60℃において、定置CM15燃料に対して約0.5g/m/日の透過性を有し、R11基準によって必要とされる値より約1000倍良い(25x20/0.5)と推定され、楽にR12基準を満たす。このように、本発明のホースは、よく、アルコール含有燃料に関連する増加した不透過性の要求の処理に充分に適している。
【0073】
0.2MPa(29psi)圧力のインドレンを備えた40℃におけるSAE J1737に従った実際の試験は、本発明のホースの実施例上及び比較のフッ素重合体のバリア・ホースにおいて実施された。本発明のホースは、0.9g/m/日の透過度を示した。比較例のフッ素重合体のバリア・ホースは、8g/m/日の透過度を示した。このように、本発明のホースは、SAEJ1737に従ってテストした場合に、40℃において2g/m/日未満の、又は60℃において40g/m/日未満の、またはSAE J30第9節に従ってテストした場合には、60℃において20g/m/日未満のCM15又はCE10燃料に対する透過性を与える。
【0074】
他のバリアとの比較のために、米国特許出願公開第2003/87053号明細書の積層バリアは、室温において1.6g/m/日のCE10燃料に対する透過性を示した。上述したように、温度を室温から60℃まで上げることは、透過性を200倍増加させると予想されている。このように、本発明のホースの例は、米国特許公開第2003/87053号明細書の積層体よりも約100倍性能がよい。
【0075】
90℃での冷媒134Aに対して3.94×10−5g/m/日の透過性を示している米国特許第6,941,975号明細書に開示されているホースとの比較は、ホースの直径又は1cmの長さあたりの面積の情報なしではできない。それにもかかわらず、本発明のホースは、少なくとも透過性においてそのホースに匹敵すると考えられており、その一方で、本発明のホースは多層のバリアを用いずに低い透過性を有利に達成する。このように、本発明の実施形態におけるホースは、冷媒の用途においても有用である可能性がある。
【0076】
ホースの実施例は、破裂圧力についてもテストされた。典型的な燃料ホースの適用は、一般に0.7 MPa(100psi) 未満の作動圧力を必要とする。典型的な螺旋状ナイロン補強では、ゴム・ホースは、一般に約1.7〜2.4MPa(250〜350psi)の破壊圧力を示す。PA6の0.13mm(5ミル)の層の追加により、PET補強した本発明の実施例1のホースは、約4.1MPa(600psi)の破裂圧力を示し、予想よりやや高い。このように、補強の必要は本発明のホースにおいては減少し、又は作動圧力は著しく増加した。
【0077】
低温における柔軟性試験が本発明のホースにおいて行われた。本発明の実施例1の燃料ホースは、SAE J30R14低温柔軟性基準、耐キンク性及び透過要件を満たした。
【0078】
本発明の実施形態の調査の過程で、特に従来のNBR又はHNBR又はECO型の燃料ホースでは、バイオディーゼル燃料は、石油由来のディーゼル又は従来のディーゼルに比べて予想外により攻撃的な透過を有し、結果として、特にCSM、CR又はEPDMカバーのようなアウタカバーは失敗することがわかった。上記の実施例1や実施例2のような本発明のホースでは、この問題を解決することがわかっている。さらに、比較例のバリアもまた、バイオディーゼルによるこの問題を解決するだろうと考えられた。このように、他の発明や実施形態は、バイオディーゼルの透過の問題を解決するための多層のバイオディーゼル燃料ホースにおいて、ここに記載されているようなバリア層を使用することである。
【0079】
本発明の概念は、フッ素重合体インナチューブ及び/又はアウタカバーを備えるホースに中間のPA6バリア層を組込むことにより、有利に利用されることが理解されるべきである。コストは現在のエラストマー価格で非フルオロエラストマーホースよりも著しく高いが、透過速度は優れているはずである。
【0080】
PA6は、例えば25℃、40℃又は60℃等の温度におけるSAE J1737に従って試験された場合に、1日に1平方メートル当たり15グラム以下の特定の又は所定の燃料又は燃料組成に対する透過の減少を提供するために、充分な厚さ又は有効な厚さであることが好ましい。PA6はここで言及された特定のグレードのうちの1つであることが好ましく、又はここに記載されたような一連の特性を備えていることが好ましく、Rhodiaエンジニアリング・プラスチックの商標の下で販売されているTechnyl(登録商標)C 548Bであることが最も好ましい。
【0081】
他の実施形態では、本発明のホースはここに記述されるPA6の薄層等の2以上の層を備えてもかまわないし、2〜5層であることが好ましい。PA6層は、好ましくは0.010インチ(0.25mm)までの厚さであってもかまわない。PA6は、1日に1平方メートル当たり15グラム以下の特定の又は所定の燃料又は燃料成分の透過の減少を提供するために、充分な厚さ、又は有効な厚さであることが好ましい。所定の燃料成分は、例えばバイオ燃料又はフレックス燃料等の燃料で使用されたように、メタノール又はエタノール又は脂肪酸誘導体であってもかまわない。所定の燃料は、インドレン、ガソリン、バイオディーゼル、ディーゼル、アルコール及びアルコール含む燃料等の中から選択され、これに限られない。他の層は、テキスタイル又はワイヤー等の補強、例えばTPE等を含む異なる熱可塑性材料、ゴム又は架橋結合された熱可塑性物質等のような熱硬化性材料であるか、これらを含んでもかまわないが、これに限定されない。このように、本発明の実施形態は、例えば2、3層又はそれ以上の層を有する無強化ホースと、4、5層又はそれ以上の層を有する強化ホースを含むがこれに限定されるものではない。図3は、PA6の薄層142と、ゴム又はプラスチックのような他の材料の第2の層144を含むホース又は管140の形状の上記の2層を備えた実施形態を示している。図1は、以前に検討した5層の実施形態を説明する。
【0082】
本発明の1つ以上の実施形態に従った本発明で得られるホースは、燃料配管、燃料ホース、燃料蒸気ホース、燃料又は油のためのベントホース、エアコンホース、プロパン又はLPホース、カーブポンプホース(curb pump hose)、大きな内径の給油口用ホース又は管、船舶用燃料ホース、燃料噴射ホース、又はその種の他のもの、ディーゼル、バイオディーゼル及び他の油状燃料、又は上記のいずれかの混合物を有利に使用できるがこれに限定されるものではない。
【0083】
本発明及びその利点が詳細に説明されてきたが、当然、様々な変更、置換及び代替が、特許請求の範囲で定義される本発明の精神及び適用範囲を逸脱することなく行われ得る。更に、本願の範囲は明細書に記載されたプロセス、機械、製造法、物質の組成、手段、方法、及び工程からなる特定の実施形態に限定されるものではない。ここで説明した実施形態と実質上同じ機能を演じ、あるいは実質上同じ結果をもたらす、既存のあるいは後に開発されるプロセス、機械、製造法、物質の組成、手段、方法、及び工程を本発明に従って利用できることは、当業者ならば本発明の開示から容易に理解できる。従って、添付の特許請求の範囲は、それらの範囲にそのようなプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法又は工程を含むように意図される。ここに開示された発明は、ここに明示されない任意の要素がない状態で適切に実施されてもかまわない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐した分子構造と衝撃改質剤を有するポリアミド6を備えるバリア層を備える可撓性ホース。
【請求項2】
高分子組成に基づく第2の層を更に備える請求項1に記載の可撓性ホース。
【請求項3】
エラストマーのインナチューブ層と、
エラストマーのアウタカバー層を更に備え、
前記バリア層は前記チューブと前記カバーとの間の中間層である請求項1に記載の可撓性ホース。
【請求項4】
前記ゴム層と前記高分子組成は、フッ素重合体組成ではない請求項2又は3に記載の可撓性ホース。
【請求項5】
前記バリア層は、継ぎ目のない、チューブ状の層である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の可撓性ホース。
【請求項6】
前記バリア層と他の層との間に、エラストマーの結合層を更に備える請求項2乃至5のいずれか1項に記載の可撓性ホース。
【請求項7】
前記ポリアミド6は、曲げ弾性率が1〜2GPaである請求項1乃至6のいずれか1項に記載の可撓性ホース。
【請求項8】
前記ポリアミド6は、破断点引っ張り伸びが約100%以上である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の可撓性ホース。
【請求項9】
前記バリア層の肉厚は、 0.025 mm〜0.76 mmの範囲である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の可撓性ホース。
【請求項10】
前記ポリアミド6は、ナノ層状化合物である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の可撓性ホース。
【請求項11】
前記ポリアミド6は、Technyl(登録商標)C 548Bとして販売されているグレードである請求項1乃至9のいずれか一項に記載の可撓性ホース。
【請求項12】
テキスタイル、ファイバー又はワイヤーを含む補強を更に備え、前記補強は、前記結合層と前記エラストマー層との間に存在する請求項6に記載の可撓性ホース。
【請求項13】
燃料に対する透過性が15g/m/日未満である請求項1乃至12のいずれか一項に記載の可撓性ホース。
【請求項14】
CM15又はCE10燃料に対する透過性が、SAE J1737に従ってテストしたときには、40℃において2g/m/日以下又は60℃において40g/m/日以下であり、SAEJ30第9節に従ってテストしたときは、60℃において20g/m/日以下である請求項1乃至13のいずれか一項に記載の可撓性ホース。
【請求項15】
前記インナチューブのゴム組成は、NBR、HNBR及びECOから成る1群から選ばれる少なくとも1つを含み、前述のアウタカバー組成が、NBR・PVC、HNBR、CR、CSM、ECO、CPE及びEVMから成る1群から選ばれる少なくとも1つを含む請求項3に記載の可撓性ホース。
【請求項16】
少なくとも、前記インナチューブ及び前記アウタカバーは、エピクロルヒドリン・エラストマーを含み、前記補強はポリエステル繊維を含む請求項3に記載の可撓性ホース。
【請求項17】
フッ素重合体ではないゴムのインナチューブと、
フッ素重合体ではないゴムのアウタカバーと、
曲げ弾性率が約1〜約2GPaであり、破断点引っ張り伸びが約100%以上であるポリアミド6から本質的に成る中間のバリア層と、
前記バリア層と前記アウタカバーとの間に配置された織物補強を備えるホース。
【請求項18】
少なくとも所定の長さの前記クレームのいずれか1に係るホースと、
少なくとも1つのフィッティング、クランプ又は液体取扱い装置を備えるホースシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−528997(P2012−528997A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513931(P2012−513931)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/001595
【国際公開番号】WO2010/141073
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(504005091)ザ ゲイツ コーポレイション (103)
【Fターム(参考)】