説明

低露点空気発生装置

【課題】低露点空気を発生する際のエネルギ消費量が小さい低露点空気発生装置を提供する。
【解決手段】低露点空気発生装置10は、水分凝縮ユニット12と、温度スイング吸着ユニット14と、低露点空気供給ユニット16を備えるとともに、接続される各ユニット間を流通する空気の流路を切り替える第一及び第二の4ポート自動流路切換機構22a、22bを有する。第一及び第二の4ポート自動流路切換機構22a、22bは、それぞれ、3つのポートを備える4つの電磁弁を組み合わせて一体化され、全体として、空気や再生用空気等の流入口又は流出口となる4ポートを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低露点空気発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
−30〜−80℃程度の低露点の空気や−80〜−120℃程度の超低露点の空気が、リチウムイオン電池製造、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ及び有機薄膜型太陽電池製造、並びにVLSIの製造等において使用されている。
【0003】
低露点空気の製造装置・供給方式としては深冷分離・調合方式、PSA(圧力スイング吸着)装置及び吸着ロータ式装置が知られている。一方、超低露点空気の製造装置としては、これらの各装置のうち、製造コストの観点から吸着ロータ式装置が好適に用いられている。
【0004】
深冷分離・調合方式は、例えば、大気を除塵した後、3.5〜5.1MPaに圧縮して、断熱膨張操作によって−191℃まで深冷して液体空気を得、これを精分留して液体窒素と液体酸素にした後、さらに、それぞれを気化させてから、窒素ガス対酸素ガスの体積比で約4対1の割合に調合して、15.2MPa(G)に再圧縮して高圧容器に充填して、超低露点で且つクリーンな擬似空気を得る方式である。
しかしながら、深冷分離・調合方式は、高価な高圧ガス製造設備を必要とするとともに二度に亘る圧縮仕事に多大なエネルギを必要とする。このため、深冷分離・調合方式は、空気の消費量が例えば5L/min未満程度の少量で済む、例えば、半導体分野においてはマスク製作工程や露光工程の製造装置等の極めて限定された場所で使用される。
【0005】
PSA装置は、吸着剤を収容した吸着容器内に処理空気を通す処理工程と、再生空気を通す再生工程とを交互に行い、圧力スイング吸着により低露点空気を得る装置である。この場合、実際には処理空気は前処理である圧縮除湿及び冷却除湿を行った後にPSA装置に流入させている。
しかしながら、PSA装置は、耐圧性能を必要とする設備であるため、設備投資額が大きいのみならず法規制により処理空気量の大きい装置の設置場所は制約を受ける。又、大気圧下の空気を圧縮するため、エネルギ消費量が莫大である。また、空気の臨界圧力3.5MPa以下で操作されるPSA装置で製造された減湿空気は液化空気の状態を経由していないため、水分が液化空気を経由したものより多く残留すると想定され、超低露点の空気とならない。特に、エネルギ消費量低減の観点から操作圧力を0.1MPa以下とすると、−30℃以下の低露点空気を得るのは困難である。
なお、PSA装置に関連して、圧力スイングと温度スイングを組み合わせたTPSA装置があるが、この装置においてもエネルギ消費量が莫大である事情はPSA装置の場合と大差ない。
【0006】
これに対して、吸着ロータ式装置は、低露点や超低露点の空気を発生することができる実用装置である。吸着ロータ式装置は、常圧下で空気を処理するため、深冷分離・調合方式やPSA(圧力スイング吸着)装置に比べて大量の空気を得ることができ、また、エネルギ消費量も比較的少なく、設備費用も安価である。
吸着ロータ式装置は、回転自在なロータ内に処理空気を通過させて、処理空気を減湿させる装置である。ロータは、吸着剤をハニカム状に形成したものが用いられる。
【0007】
例えば、連続的に減湿された空気が製造できるようにロータを3段設けた減湿装置が開示されている(特許文献1参照)。
【0008】
この減湿装置において、各段ロータは減湿区域、再生区域、パージ区域に区分されており、各区域は、それぞれ、仕切り両端面チャンバを介して、減湿用通気路、再生用通気路及びパージ用通気路に接続される。各段ロータの上流側減湿用通気路には冷却器が配置され、又、必要に応じてパージ用通気路にも冷却器が配置される。再生用通気路には加熱器が配置される。各段ロータの前後に送風機(ファン)が減湿用通気路及び再生用通気路に計6基設置される。
【0009】
減湿用通気路、再生用通気路及びパージ用通気路の各通気路への空気の配分は、各通気路に設置された多数のダンパ式自動弁の開度によって調整される。減湿用空気の流れ方向と、再生用空気及びパージ用空気の流れ方向は向流となっている。したがって、減湿区域、再生区域及びパージ区域の各区域を通過する空気には各ロータの両端面と両端面チャンバの接続箇所において圧力差や流量差による他の区域からの混入が構造上避けられない。それゆえ、ロータの端面と両端面チャンバの圧力調整及び流量調整をダンパ式自動弁によって精緻に行うだけでなく、除湿用通気路とパージ用通気路の分岐点、パージ用通気路と再生用通気路の合流点を多くの箇所に設ける必要がある。
【0010】
加えて、所定流量の所望低露点の空気を安定確実に発生させるには、多くのエネルギ損失を生じる。
まず、ダンパ式自動弁によって各通気路に送気する空気の圧力及び/又は流量の調整を行うと、必然的に圧力損失を発生させることになり、それに見合うエネルギ損失は回避できない。
また、減湿区域、再生区域、パージ区域の各々断面積と断面形状が異なる各段ロータの両端面チャンバと接続する減湿用通気路、再生用通気路及びパージ用通気路は断面積拡大と断面積縮小が存在するため、発生する圧力損失に見合うエネルギ損失も避けられない。
また、各通気路と各区域に通気される空気の流量は、それぞれ相異しているだけでなく、大略、減湿区域<再生区域<パージ区域の順に増加しており、逆に区域の面積は、減湿区域>再生区域>パージ区域の順に減少しているため、各区域と各段ロータとその両端面チャンバの各通気路全体の損失は、減湿区域<再生区域<パージ区域の順に増大することになる。すなわち、減湿区域に比べて、再生区域及びパージ区域で大きな圧力損失を生じる。
【0011】
吸着ロータ式装置は、常圧下で空気を処理するため、処理空気量が例えば10〜2,500m/min程度の減湿に適している。しかしながら、2m/min以下の処理量の空気を減湿する場合、吸着ロータ径は流量に合わせて縮小可能であるが、ハニカム構造体のセル寸法の縮小化及びセルのリブやハニカム外周枠部分の肉厚の薄肉化はハニカム成形技術及びハニカム構造体の強度確保の両面から極めて困難である。
つまり、処理空気量が2m/min以下の場合、吸着ロータ径は縮小できても、ハニカム構造体のセルの寸法は処理空気量が10〜2,500m/minのときとほぼ同様である。これに回転軸の取り付け部分が占める面積を加えると、減湿用、再生用及びパージ用各通気路の有効な吸着剤断面積はロータ径の減少とともに減少する。このためか、吸着ロータ式装置では処理空気量が1m/min以下のものは実用化されていない。
【0012】
加えて、半導体製造において、低露点空気(ドライエア)乃至清浄化低露点空気(クリーンドライエア)を必要とする露光工程装置、マスク製作工程装置、レチクルストッカ、レチクルスミフポット(RSP)及び搬送キャリア(FOUP)は、狭隘な管路や空間を有するため、常圧のままでは低露点空気等を供給することが困難であるという根本的な問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−188224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
解決しようとする問題点は、従来のPSA方式乃至PTSA方式や吸着ロータ方式の低露点空気発生装置は低露点空気を発生する際のエネルギ消費量が大きい点である。また、吸着ロータ方式の低露点空気発生装置は、半導体製造における、露光工程装置、マスク製作工程装置、レチクルストッカ、レチクルスミフポット(RSP)及び搬送キャリア(FOUP)への低露点空気の供給が困難である点である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る低露点空気発生装置は、処理空気中の水分を凝縮除去する水分凝縮ユニットと、水分を凝縮除去された空気を温度スイング吸着する温度スイング吸着ユニットと、温度スイング吸着後の空気を昇圧した後、温度調整して供給する低露点空気供給ユニットを備え、
該温度スイング吸着ユニットは、処理空気の流入流路を切り替え可能に設けられる水分吸着工程用及び水分脱着工程用の2系列の吸着剤部を有するとともに、水分脱着工程用に供する吸着剤部に再生用空気を供給する再生用空気供給部を有し、
該水分凝縮ユニット、該2系列の吸着剤部、該再生用空気供給部及び該低露点空気供給ユニットの間の流路を切り替える2つの4ポート自動流路切換機構を有し、該2つの4ポート自動流路切換機構は、それぞれ、3ポートを備える4つの電磁弁を組み合わせて一体化され全体として4ポートを有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る低露点空気発生装置は、好ましくは、前記低露点空気供給ユニットが供給先に供給する圧力に昇圧する前であって温度スイング吸着後の空気の一部を再生用空気として該再生用空気供給部に供給する再生用空気供給ラインを有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る低露点空気発生装置は、好ましくは、前記低露点空気供給ユニットが供給先に供給する圧力に昇圧する前であって温度スイング吸着後の空気の一部を前記水分凝縮ユニットに循環する循環ラインを有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る低露点空気発生装置は、好ましくは、前記低露点空気供給ユニットが、供給先に供給する圧力に昇圧する前であって温度スイング吸着後の空気を貯留するレシーバータンクを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る低露点空気発生装置は、処理空気中の水分を凝縮除去する水分凝縮ユニットと、水分を凝縮除去された空気を温度スイング吸着する温度スイング吸着ユニットと、温度スイング吸着後の空気を昇圧した後、温度調整して供給する低露点空気供給ユニットを備え、温度スイング吸着ユニットは、処理空気の流入流路を切り替え可能に設けられる水分吸着工程用及び水分脱着工程用の2系列の吸着剤部を有するとともに、水分脱着工程用に供する吸着剤部に再生用空気を供給する再生用空気供給部を有し、水分凝縮ユニット、2系列の吸着剤部、再生用空気供給部及び低露点空気供給ユニットの間の流路を切り替える2つの4ポート自動流路切換機構を有し、2つの4ポート自動流路切換機構は、それぞれ、3ポートを備える4つの電磁弁を組み合わせて一体化され全体として4ポートを有するため、深冷分離・調合方式、PSA装置及び吸着ロータ式装置等の従来の装置に比べてエネルギ消費量が少なく、また、流路の切り替えに複雑な配管系や多数の切り替え弁を必要とすることなく、特に少量の処理空気の流路を良好に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本実施の形態例に係る低露点空気発生装置の概略構成を示す図である。
【図2】図2は図3中、線II−IIで破断して示す4ポート自動流路切換機構の断面図である。
【図3】図3は4ポート自動流路切換機構の平面図である。
【図4】図4は図3とは異なる態様の4ポート自動流路切換機構の平面図である。
【図5】図5は吸着ロータ式装置の場合の脱湿挙動を説明するための湿度図である。
【図6】図6は本実施の形態例に係る低露点空気発生装置の好適な態様の低露点空気発生装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態(以下、本実施の形態例という。)について、図を参照して、以下に説明する。
【0022】
まず、本実施の形態例に係る低露点空気発生装置について、図1を参照して説明する。図1中、各機器間をつなぐ各線は空気ダクト及びその中の空気の流れを示し、そのうち、実線は処理空気又は低露点空気の流れを、破線は再生用空気の流れを、それぞれ示す。なお、各機器及び空気ダクトは、適宜断熱材で覆われる。これらは、図6についても同様である。
図1に示す低露点空気発生装置10は、水分凝縮ユニット12と、温度スイング吸着ユニット14と、低露点空気供給ユニット16を備える。
【0023】
低露点空気発生装置10に導入される処理空気(図1中、矢印Aで示す。)は、常温・常圧の外気を好適に用いることができる。ただし、これに限定するものではなく、例えば、供給先で使用した後の低露点空気を回収、リサイクルする循環空気であってもよい。
水分凝縮ユニット12は水分凝縮除去機構を備え、処理空気を除湿する。水分凝縮除去機構は、冷却によって空気中の水分を凝縮し、除去する機構を用いることが好ましいが、これに限らず、例えば圧縮によって空気中の水分を凝縮し、除去する等の他の機構を排除するものではない。
【0024】
温度スイング吸着ユニット14は、2系列の吸着剤部18a、18bを有する。吸着剤部18a、18bには適宜の水分吸着剤が装填される。2系列の吸着剤部18a、18bは、ひとつの系列が水分吸着工程用の吸着剤部(図1では吸着剤部18a)であり、他のひとつの系列が水分脱着工程用の吸着剤部(図1では吸着剤部18b)である。2系列の吸着剤部18a、18bは、水分吸着工程用と水分脱着工程用を切り替え可能に設けられる。
また、温度スイング吸着ユニット14は、再生用空気供給部20を有する。再生用空気供給部20に供給する空気(図1中、矢印Bで示す。)は、特に限定するものではなく、外気であってもよく、また、水分吸着工程用に供する吸着剤部18aから流出する温度スイング吸着後の空気の一部であってもよく、また、低露点空気供給ユニット16の昇圧前の温度スイング吸着後の空気の一部であってもよい。これにより、吸着剤部に吸着された水分を脱着し、再生された吸着剤部が水分吸着工程用に供される。
【0025】
低露点空気供給ユニット16は、昇圧機構と温度調整機構を備え、温度スイング吸着後の空気の圧力を供給に必要な圧力に昇圧した後、空気の温度を調整して供給先に供給する。温度調整機構は、空気を冷却する冷却機構を好適に用いることができるが、これに限らず加熱機構を用いてもよく、また、加熱及び冷却双方を必要に応じて行う加熱・冷却機構を用いてもよい。また、昇圧機構は、例えばオイルフリーコンプレッサー等の適宜の圧縮機を用いることができる。
【0026】
低露点空気発生装置10は、接続される各ユニット間を流通する空気の流路を切り替える第一及び第二の4ポート自動流路切換機構22a、22bを有する。
第一の4ポート自動流路切換機構22aは、冷却除湿ユニット12、水分吸着工程用及び水分脱着工程用の2系列の吸着剤部18a、18b並びに再生用空気供給部20の間の流路を切り替える。第二の4ポート自動流路切換機構22bは、水分吸着工程用及び水分脱着工程用の2系列の吸着剤部18a、18b、再生用空気供給部20並びに低露点空気供給ユニット16の間の流路を切り替える。
第一及び第二の4ポート自動流路切換機構22a、22bは、それぞれ、3つのポートを備える4つの電磁弁を組み合わせて一体化され、全体として、空気や再生用空気等の流入口又は流出口となる4ポートを有するものである。
第一及び第二の4ポート自動流路切換機構22a、22bの詳細は後述する。
【0027】
低露点空気発生装置10を用いた低露点空気の供給方法は、以下のとおりである。
適宜の吸引・送風機構によって処理空気が水分凝縮ユニット12に導入される。水分凝縮ユニット12に導入された処理空気は、水分凝縮除去機構として例えば適宜の冷却機構を用い、温度5℃に冷却され、例えば温度5℃の飽和水分まで除湿される。
水分を凝縮除去された空気は例えば第一の4ポート自動流路切換機構22aを介して温度スイング吸着ユニット14の吸着剤部18aに導入される。吸着剤部18aに導入された、水分を凝縮除去された空気はさらに水分を吸着・除去され、低露点又は超低露点(以下、超低露点の場合を含めて単に低露点ということがある。)となる。
低露点空気は第二の4ポート自動流路切換機構22bを介して低露点空気供給ユニット16に導入される。低露点空気供給ユニット16に導入された低露点空気は昇圧されるとともに、さらに供給先が求める温度条件に一致するように温度調整されて供給先に供給される。
再生用空気供給部20において、先に水分吸着工程用に供されて水分吸着能力が低下した吸着剤部18bは、外部空気等の再生用空気の流入によって水分が脱着され、水分吸着能力を回復(再生)する。吸着剤部18aの水分吸着能力の低下と吸着剤部18bの水分吸着能力の回復をバランスよく進行させ、所定時間経過後、第一及び第二の4ポート自動流路切換機構22a、22bが切り替えられて、吸着剤部18bが水分吸着工程用に供され、吸着剤部18aが水分脱着工程用に供される。
【0028】
ここで、4ポート自動流路切換機構22a、22bについて、4ポート自動流路切換機構22aを例にとり、図2〜図4を参照してさらに説明する。図2は、図3中、線II−IIで破断して示す4ポート自動流路切換機構22aの断面図であり、図3及び図4は、相互に異なる作動状態を説明するための4ポート自動流路切換機構22aの平面図である。
4ポート自動流路切換機構22aは、上記したように、3ポート電磁弁23a〜23d(以下、単に電磁弁という。)3個で構成される。電磁弁23a〜23dは、それぞれ駆動部25a〜25d及び筺体部27a〜27dで構成される。なお、図2〜図4において、図面表示の都合上、4つの電磁弁23a〜23dの各部及びその参照符号の一部を図示していない。
【0029】
まず、電磁弁23a〜23dの構造及び作用について説明する。
駆動部25a〜25dは、コイルフレーム40a〜40dの中に、コイル30a〜30d、固定コア31a〜31d、移動コア(可動鉄片)29a〜29d、上下動する移動コア29a〜29dをガイドするパイプ57a〜57d及び永久磁石33a〜33dを有する。コイル30a〜30dは上部コイル30a〜30d及び下部コイル30a〜30dで構成される。移動コア29a〜29dの下端には例えばセラミックファイバーペーパーからなる薄板状断熱材11が設けられる。
移動コア29a〜29dが挿通する駆動部25a〜25d及び筺体部27a〜27dの連通部(図2中、矢印X1で示す。)は、適宜のシール構造でシールされる。移動コア29a〜29dの下部には両端が連通部X1に下垂して設けられるスプリングホルダー38a〜38d及び移動コア29a〜29dに巻回されるスプリング19a〜19dが設けられる。移動コア29a〜29dの下端に弁体41a〜41dが設けられる。
弁体41a〜41dは、上部弁体41a〜41d及び下部弁体41a〜41dに二分割され、中心部に取り付けるスプリング19a〜19d、スプリングホルダー38a〜38d及び移動コア29a〜29d下部を除く上部弁体41a〜41dは球体の一部を薄く切り取った形状の成形加工体であり、下部弁体41a〜41dも中心部に取り付けるキャップ42a〜42d、移動コア29a〜29dを下部弁体41a〜41dに固定する固定ナット51を除いた形状は上部弁体41a〜41dと同様である。上部弁体41a〜41d及び下部弁体41a〜41dは、薄板状断熱材11を挟んで一体的に組み立てられる。下部弁体41a〜41dの外周部分には、弁座39a〜39dに線接触でシールする突起状シール体48が設けられる。
筺体部27a〜27dは、断熱材49で覆われ、例えば直方体状に形成される。筺体部27a〜27dは、それぞれ上室35a〜35d及び下室37a〜37dの2室で構成される。筺体部27a〜27dは、上室35a〜35d及び下室37a〜37dの連通部(図2中、矢印X2で示す。)に弁座39a〜39dが設けられる。
【0030】
電磁弁23a〜23dの上部コイル30a〜30dに通電すると、固定コア31a〜31dに発生する電磁力によって移動コア29a〜29dが下動し、弁体41a〜41dが弁座39a〜39dを閉止することで、上室35a〜35dと下室37a〜37dの間の流体の流通が遮断される。一方、下部コイル30a〜30dに通電すると、固定コア31a〜31dに発生する電磁力によって移動コア29a〜29dが上動し、弁体41a〜41dが弁座39a〜39dから離れることで、上室35a〜35dと下室37a〜37dの間が連通される。上動する移動コア29a〜29dは、凸状の頂部端面が固定コア31a〜31dの凹状の下端面に当接して停止する。停止した移動コア29a〜29dは永久磁石33a〜33dによって保持される。
移動コア29a〜29d下動時、弁体41a〜41dが弁座39a〜39dを閉塞するとともに、さらに下部弁体41a〜41dの突起状シール体48が弁座39a〜39dの上面に当接することにより、上室35a〜35dと下室37a〜37dの間のより確実な遮断が可能となる。これにより、上室35a〜35d及び下室37a〜37dにそれぞれ流入する、温度及び水分量が相違する空気、例えば低露点空気と再生用空気の混入が遮断でき、また高温側から低温側への熱移動を最小に抑制できる。
電磁弁23a〜23dは電動弁に比べて速い応答速度でON−OFF動作する。また、電磁弁23a〜23dはバタフライ弁等の仕切り弁に比べて高いシール性を有する。
【0031】
つぎに、上記した4つの電磁弁23a〜23dを備える4ポート自動流路切換機構22aの構造及び作用について説明する。
電磁弁23a〜23dの筺体部27a〜27dには、上室35a〜35d及び下室37a〜37dに、それぞれ合計3つの流体の出入り口となるポート部43a〜43d、45a〜45d、47a〜47dが設けられる。これらの各ポート部43a〜43d、45a〜45d、47a〜47dは、4つの電磁弁23a〜23dを組み合わせて一体化したときに図3及び図4に示すような接続構造となるように、それぞれの電磁弁23a〜23dごとに異なる室及び壁位置に設けられる。
すなわち、電磁弁23aについては、2つのポート部43a、45aは筺体部27aの下室37aの直交する壁位置に設けられ、ポート部47aは上室35aのポート部43aと斜め上方の対向する壁位置に設けられる。ポート部43aは4ポート自動流路切換機構22aのひとつの開放端(流出・流入口)となる。電磁弁23bについては、下室37bの下室37aと向き合う壁位置にポート部43bが設けられポート部45aと接続されるとともに、上室35bの直交する壁位置にポート部45b、47bが設けられる。ポート部45bは4ポート自動流路切換機構22aの他のひとつの開放端となる。電磁弁23cについては、上室35cの上室35bと向き合う壁位置にポート部43cが設けられポート部47bと接続されるとともに、下室37cの直交する壁位置にポート部45c、47cが設けられる。ポート部45cは4ポート自動流路切換機構22aの他のひとつの開放端となる。電磁弁23dについては、下室37dの下室37cと向き合う壁位置にポート部43dが設けられポート部47cと接続されるとともに、上室35dの上室35aと対向する壁位置及びこれと直行する位置に、それぞれポート部45d、47dが設けられる。ポート部45dはポート部47aと接続される。ポート部47dは4ポート自動流路切換機構22aの他のひとつの開放端となる。
【0032】
図3は、4ポート自動流路切換機構22aの電磁弁23a、23cを開とし、電磁弁23b、23dを閉とした状態を示す。なお、4ポート自動流路切換機構22aの作用の理解の便宜のために、図3及び図4において、各ポート部について上室に配置されるものに2F、下室に配置されるものに1Fの符号をそれぞれ付し、また、各電磁弁について開の状態のものにO、閉の状態のものにSの符号をそれぞれ付す。ちなみに、図1及びその他の例の説明図において、4ポート自動流路切換機構22aの4つの電磁弁について、開の状態のものを○、閉の状態のものを●で示す。
下室37aのポート部43aから流入した流体は、電磁弁23aが開であるため、上室35aに流入し、ポート部47a、45dを介して電磁弁23dの上室35dに流入する。なお、電磁弁23bは閉の状態であるため、下室37aと下室37bがポート部45a、43bを介して連通状態であっても、下室37bの流体と上室35bの流体は完全に遮断され、両室の流体が混合することはない。電磁弁23dの上室35dに流入した流体は、電磁弁23dが閉であるため、上室35dのポート部27dから流出する。
一方、電磁弁23bの上室35bのポート部45bから流入した流体は、電磁弁23bが閉であるため、上室35bのポート部47b及び上室35cのポート部43cを介して電磁弁23cの上室35cに流入する。上室35cに流入した流体は、電磁弁23cが開であるため、下室37cに流入し、ポート部45cから流体が流出する。なお、電磁弁23dは閉の状態であるため、下室37cと下室37dがポート部47c、43dを介して連通状態であっても、下室37dの流体と上室35dの流体は完全に遮断され、両室の流体が混合することはない。
一方、図4に示すように、4ポート自動流路切換機構22aの電磁弁23a、23cを閉とし、電磁弁23b、23dを開とすると、電磁弁23aのポート部43aから流入する流体は電磁弁23bのポート部45bから流出し、電磁弁23dのポート部47dから流入する流体は電磁弁23cのポート部45cから流出し、両流体は4ポート自動流路切換機構22aの内部で混合を生じることがない。
【0033】
以上説明したように、4つの電磁弁23a〜23dを組み合わせて一体化した4ポート自動流路切換機構22a、22bは、吸着工程ラインと脱着工程ラインの2流路を切り替えて同時処理できる。
ちなみに、吸着剤部18aが水分吸着工程用に供される図1と対照して説明すると、図3に示す4ポート自動流路切換機構22aにおいて、水分凝縮ユニット12から流出する処理空気は、図3中、ポート部43aから4ポート自動流路切換機構22aに流入し、図3中、ポート部47dから流出し、吸着剤部18aに流入する。一方、吸着剤部18bから流出する再生用空気の排ガスは、図3中、ポート部45bから4ポート自動流路切換機構22aに流入し、ポート部45cから流出して外部に放出され、又は例えば熱源として再生用空気供給部20に流入する。
吸着剤部が切り替えられて、吸着剤部18bが水分吸着工程用に供される場合、図4に示す4ポート自動流路切換機構22aにおいて、水分凝縮ユニット12から流出する処理空気は、図4中、ポート部43aから4ポート自動流路切換機構22aに流入し、ポート部45bから流出し、吸着剤部18bに流入する。一方、吸着剤部18aから流出する再生用空気の排ガスは、図4中、47dから4ポート自動流路切換機構22aに流入し、ポート部45cから流出して外部に放出され、又は例えば熱源として再生用空気供給部20に流入する。
4ポート自動流路切換機構22a、22bは、速い応答速度で流路切り替え動作し、また4ポート自動流路切換機構22a、22b内部での異種流体の混合を防ぐ高いシール性を有する。
【0034】
以上説明した本実施の形態例の低露点空気発生装置10は、低露点空気を温度スイング吸着ユニット14によって得るため、処理空気を過度に昇圧する必要がなく、低露点空気を発生する際のエネルギ消費量が少ない。また、水分凝縮ユニット12及び低露点空気供給ユニット16を備えるため、温度スイング吸着ユニット14の水分吸着負荷が軽減され、さらには、温度スイング吸着ユニット14とは独立して水分凝縮ユニット12及び低露点空気供給ユニット16によって空気の水分量や温度を調節することができるため、容易かつ確実に所望の低露点空気を得ることができる。
また、吸着ロータ式装置の場合、図5の吸着ロータ式装置の場合の脱湿挙動を説明するための湿度図に示すように、処理空気は理想的には等エンタルピ過程で推移し、例えば、比エンタルピがi1である流入口の点aから等エンタルピ線上を点bに向かって実線で表した曲線上を変化し、目標露点である絶対湿度xとなるはずである。しかし、実際には、吸着ロータの再生区域から減湿区域への顕熱移動が発生するため、流出口の比エンタルピがi2である点cに向かって破線で表した曲線上を変化し、絶対湿度はx2(>x)となる。すなわち、処理後の空気の目標露点が上昇し、露点の制御が煩雑となる不具合がある。これに対して、本実施の形態例に係る低露点空気発生装置10は、減湿区域及び再生区域に相当する2系列の吸着剤部18a、18bの間に顕熱移動は生じないため、処理空気を等エンタルピ過程で推移させることができ、低露点空気の露点の制御が容易である。
また、低露点空気発生装置10は、電磁弁からなる2つの4ポート自動流路切換機構22a、22bを用いるため、例えば、2方弁等を多数組み合わせて切り替え操作を行う場合に比べて、複雑な配管系を必要とすることなく、あるいは、4ポートを備えた1つのバルブ内に設けた1つの板状弁の動作により切り替え操作を行う場合に比べて、シール不足によるバルブ内での異種流体相互の汚染をより確実に防止することができ、また、迅速、確実に流体の流路を切り替えることができ、装置の立ち上り調整や供給空気の条件変更操作に長時間を要することがない。低露点空気発生装置10は、特に、例えば2m/min以下の小流量の低露点空気を発生する装置として好適である。
【0035】
ここで、本実施の形態例に係る低露点空気発生装置10の好適な態様について、図6を参照して装置の構成及び作用を説明する。
【0036】
図6に示す低露点空気発生装置10aは、水分凝縮ユニット12aと、温度スイング吸着ユニット14aと、低露点空気供給ユニット16aを備える。なお、図6中、矢印1は処理空気取り入れ口を、矢印2は供給先(ユースポイント)へ供給する低露点空気供給口を、矢印3は後述する温度の高い空気の排出口を、それぞれ示す。
【0037】
水分凝縮ユニット12aは、処理空気の上流側から順に、除塵フィルタ24、送風機26、凝縮器28及び加熱器55を備え、これらの機器は空気ダクトによって接続される。
【0038】
除塵フィルタ24は、例えばHEPAフィルタであり、処理空気中の塵埃を除去する。
送風機26は、回転数制御方式の例えばターボ型送風機であり、処理空気を吸引し、例えば2〜5kPa程度の必要流動圧に昇圧するとともに例えば0.5〜1.5m/min程度の範囲内の所定流量に調整する。
凝縮器28は、冷凍機ユニットの冷媒蒸発器である。図示しない電子膨張弁によって冷媒蒸発圧力を操作して、処理空気を処理空気の露点と4.0℃の間の所定の温度に制御する。例えば、温度21℃、関係湿度50%の処理空気を凝縮器28に流入させた場合、露点は10.4℃であるから、処理空気を10.4℃と4.0℃の間の温度、例えば5.0℃に制御する。処理空気の温度を4.0℃以下にすると、処理空気が凝縮器28の伝熱管群中を貫流する間に、処理空気の水分が霜乃至氷となり、伝熱管に着霜乃至結氷して伝熱管群を閉塞して凝縮器28の連続安定稼動を妨げるため、4.0℃が水分凝縮温度下限となる。
なお、吸着剤18a、18bに流入させる処理空気は、例えば、目標露点−70℃の空気を得ようとする場合、例えば凝縮器28の出口に高分解能(高感度、高精度)温湿度センサを設け、その電気信号で冷凍機ユニットの作動を制御して、例えば5.00±0.10〜0.01℃に、又、例えば加熱器55の出口に高分解能(高感度、高精度)センサを設け、その電気信号で加熱器55の作動を制御して、例えば7.00±0.10〜0.01℃に温度調整することができる。
加熱器55は、例えばフィン付タイプの加熱器である。凝縮器13を流出した処理空気中には不可避的にミストが含まれるため、加熱器55を通過する処理空気を例えば7.00±0.10〜0.01℃に加熱することでミストを消滅することができる。
【0039】
水分凝縮ユニット12aと温度スイング吸着ユニット14aを接続する空気ダクトの分岐点に第一の4ポート自動流路切換機構22aを備え、運転条件にしたがって、空気の流路が切り替えられる。図6では、第一の4ポート自動流路切換機構22aによって、水分凝縮ユニット12aから温度スイング吸着ユニット14aの後述する吸着剤部18aへの流路が開とされ、水分凝縮ユニット12aから後述する吸着剤部18bへの流路は閉とされる。
【0040】
温度スイング吸着ユニット14aは、2系列の吸着剤部18a、18bと、再生用空気供給部20aを備え、これらの機器は空気ダクトによって接続される。
【0041】
吸着剤部18a、18bは、例えば合成ゼオライト、天然ゼオライト、シリカゲル又はアルミナ等を主成分として含む吸着剤を装着したものである。吸着剤は、例えばハニカム状、コルゲート状又はプリーツ状に加工したものが好ましい。
水分が凝縮除去された処理空気は、水分吸着工程用に供される吸着剤部18aに導入され、処理空気中の水分が吸着剤によって吸着、除去される。これにより、低露点空気が得られる。なお、水分吸着工程用に供される吸着剤部18aでは、実質的に断熱操作され、等エンタルピ過程が生起する。
【0042】
なお、温度スイング吸着ユニット14aは、吸着剤を多層に設け、例えば、合成ゼオライト、天然ゼオライト等の吸着剤が装填される層と、チタン、ケイ素及び/又はジルコニウム又はバナジウムからなる二元系乃至三元系複合酸化物である固体酸性物質が装填される層と、疎水性ゼオライト又は活性炭装填される層で構成してもよい。
処理空気として取入れる空気中には、環境大気や人体や産業活動に伴って生起する薬剤使用に由来する塩基性、有機性、酸性の極めて多種類の分子状汚染物質がppm〜ppbのオーダで混在している。したがって、ドライクリーンルーム、ドライクリーンブース、ドライクリーンミニエンバイロメントあるいはドライであってクリーンな雰囲気を必要とする製造装置内の作業空間には、分子状汚染物質が除去されており、且つ所定の低露点まで減湿された空気の大量供給が要請される。例えばリチウムイオン電池、有機薄膜型太陽電池等の製造ラインにおいては、ドライな雰囲気において塩基性の有機性溶媒を使用する精密塗布工程が存在するから、低露点且つ高純度に調整した大量の空気を供給する必要がある。
合成ゼオライト、天然ゼオライト等からなる吸着剤によって、処理空気中に含まれる、大きな分圧を有する水分が吸着、除去される。また、さらに、処理空気中に含まれる分子状汚染物質のうち、塩基性成分が固体酸性物質からなる吸着剤によって、及び有機性又は酸性成分が疎水性ゼオライト又は活性炭からなる吸着剤によって吸着、除去される。なお、分子状汚染物質のうちの塩基性成分としてはアンモニア、アミン類等が、有機性成分としてはトルエン、シンナ類等が、酸性成分としてはNO、SO、有機酸類等が、それぞれ挙げられる。
従来、処理空気のこれら分子状汚染物質の捕集・除去はケミカルフィルタ(化学吸着フィルタ)によってなされている。ケミカルフィルタは布状フィルタ材に酸性薬剤、塩基性薬剤を含浸させたものや繊維状フィルタ材にイオン交換基を付加したものや布状フィルタ材にプリーツをつけて袋状に縫製してその袋の中にイオン交換樹脂あるいは活性炭を充填したものである。しかしながら、ケミカルフィルタには使用時間に限界があり、新品との交換作業が不可避であるため、ケミカルフィルタを交換するために、低露点空気発生装置の稼動を停止することが必要であり、また、このとき、%オーダに近い水分を含有する周囲環境の空気が低露点空気発生装置の内部に進入する可能性がある。さらにまた、ケミカルフィルタは本来付着水分を大量に保有していることに加えて、使用段階で酸と塩基の中和反応で水分が生成し水分発生源になる。これに対し、上記のように吸着剤を多層に設けることにより、ケミカルフィルタを用いることにより生じうる上記の問題を生じるおそれがない。
温度スイング吸着ユニット14aは、切り替え可能に設けられる2系列の吸着剤部をそれぞれ直列に複数段有する構成としてもよい。これにより、吸着剤部18a、18bに導入される冷却された低露点空気はさらに後段の吸着剤部を通過してより低露点となる。
【0043】
吸着剤部18aから流出する低露点空気は吸着剤部18aと低露点空気供給ユニット16aを接続する空気ダクトに設けられる第二の4ポート自動流路切換機構22bを介して低露点空気供給ユニット16aに導入される。なお、吸着剤部18a、18bの流出口には例えばガラスファイバ、金属ファイバ等の無機質ファイバを用いて作成される耐熱除塵フィルタを適宜設置することができる。
【0044】
低露点空気供給ユニット16aは、低露点空気の上流側から順に、除塵フィルタ53及び送風機44を備え、これらの機器は空気ダクトによって接続される。また、加熱器46の下流側に、さらに、レシーバータンク60、圧縮機62、冷却器46及びアキュムレータータンク64を備える。
【0045】
低露点空気供給ユニット16aの、除塵フィルタ53は例えば布状フィルタ材、繊維状フィルタ材、袋状フィルタ材に撥水処理を施した除塵フィルタ24と同様構造のフィルタが適用でき、除塵フィルタ24で除去しきれなかった塵埃や、除塵フィルタ24以降の工程で発生しうる異物を除去する。
なお、除塵フィルタ24を構成するフィルタ材は通常水分を吸着保有する材質であるため、所定の低露点の空気が供給可能となるまでに長時間を要することになる。それゆえ、低露点吸着材ユニット16aに設置される除塵フィルタ53のフィルタ材は撥水性のものを用い、短時間で所定低露点空気の供給を可能とする。
塵埃を除去された低露点空気は、送風機44によって例えば0.5〜3kPaまで昇圧される。送風機44は所定の昇圧能力を有する限り適宜の方式のものを用いることができる。
なお、除塵フィルタ53の設置位置は送風機44の上流側に限定されるものではなく、冷却器46の上流側もしくは下流側に設置することができる。また、送風機44の上流側に冷却器46を設けてもよい。
【0046】
送風機44で昇圧された低露点空気はレシーバータンク60に貯留される。レシーバータンク60の容量は、例えば処理空気の処理流量が0.5〜1.5m/min程度の場合において例えば0.5〜1.5m程度とすることができ、これにより、供給先の使用量の変動を吸収することができる。送風機44で昇圧されている分、レシーバータンク60の容量は小さくすることができる。又、吸着剤部18aを出た低露点空気は例えばPSA処理後の低露点空気に比べて極低圧(例えば大気圧)であり、これを送風機44で適度に昇圧したものであるため、レシーバータンク60の耐圧性を大きくする必要がない。
レシーバータンク60に貯留される低露点空気の一部を再生用空気供給部20aの再生用空気として用い、後述する送風機32に供給する。これにより、供給先の使用量の変動によって、発生する低露点空気が余る場合に、外部に放出し、又はより大容量のレシーバータンクを設けて貯留する等を行うことなく、余った低露点空気を有効に利用することができる。低露点空気は、再生用空気として好適である。また、低露点空気の一部を送風機26の流入側に供給し、処理空気として循環使用してもよい。
レシーバータンク60に貯留される低露点空気は、例えばオイルフリーコンプレッサー等の圧縮機62により、供給先で求められる圧力である、例えば0.3〜0.7MPa(G)まで昇圧される。圧縮後の低露点空気は前述した冷却器28と同様の構造の冷却器46で温度調節され、さらに、アキュムレータータンク64に貯留された後、供給先に供給される。なお、図6中、参照符号66は、アキュムレータータンク64から再生用空気への圧抜きラインを示す。
これにより、供給先の使用量の変動があっても、低露点空気を安定した圧力及び温度で供給することができる。このとき、温度センサや露点センサを用い、低露点空気の温度及び露点を把握するとともに、温度センサからの電気信号により冷却器46を制御し、低露点空気の温度を調節してもよい。
温度及び圧力を調整された低露点空気は矢印2で示す供給先、例えばドライルームに供給される。
【0047】
再生用空気供給部20aは、レシーバータンク60に貯留される低露点空気の一部が再生用空気として導入される上流側から順に、送風機32、冷却器52、予熱器34及び加熱器36を備え、これらの機器は空気ダクトによって接続される。
【0048】
再生用空気は送風機32によって昇圧され、予熱器34に供給される。
予熱器34は、例えば多管式熱交換器や積層型熱交換器で構成される。予熱器34には、吸着剤部18bから排出される例えば120〜200℃程度の温度の高い空気が第一の4ポート自動流路切換機構22aを介して導入され、この温度の高い空気によって、例えば常温の再生用空気が、間接的に、例えば100〜150℃の温度まで予熱される。なお、図6中、矢印3は、先に説明したように、温度の高い空気の排出口を示す。
予熱された再生用空気は加熱器36に導入され、例えばオイルヒータ等の適宜の加熱源によって例えば170〜250℃の温度に加熱される。
加熱器36を流出する、加熱された再生用空気は、第二の4ポート自動流路切換機構22bを介して吸着剤部18bに導入される。吸着剤部18bの水分を吸着した吸着剤は再生用空気によって脱着され、再生される。
再生した吸着剤部18bは、低温、低湿度の低露点空気を使用した再生用空気で冷却され、吸着処理工程用に供される。このとき、再生用空気をさらに冷却器52で冷却した後、予熱器34及び加熱器36をバイパスして吸着剤部18bに導入する。
上記の再生用空気の加熱と冷却の切り替えは2ポート電磁弁21で行われる。このため、再生用空気の加熱と冷却の切り替えを迅速に短時間で行うことができる。
【0049】
再生用空気はppbオーダ以下の濃度の微量の分子状汚染物質を含むが、再生用空気は高温に加熱して水分の脱離に用いるから、分子状汚染物質の吸着平衡分圧は常温時の吸着平衡分圧より格段に低く、このため、分子状汚染物質が吸着剤部18bを汚染するおそれは小さい。又、例えば供給空気と再生空気の流量比が1:1のとき、200〜250℃に加熱することによって熱膨張する再生用空気の体積流量は常温の供給空気のそれの1.6〜1.8倍となり、吸着した分子状汚染物質及び水分の脱離に必要な熱エネルギが再生用空気に与えられ、また、吸着剤中を流れる再生用空気は充分な流速をもつことができる。
なお、例えば、温度センサを用いて再生用空気の温度を把握するとともに、温度センサSからの電気信号で加熱器36を制御し、加熱器36を流出する再生用空気の温度を調節してもよい。
【0050】
温度スイング吸着ユニット14a及び低露点空気供給ユニット16aを構成する空気ダクト及び各機器は、低露点空気が接触する金属表面を水分が付着し難い表面加工、例えばフッ素樹脂コーティング加工しておくと、機器内面、各ダクトの内面に吸着する水分を格段に減少させることができて好ましい。
【0051】
前記したように、半導体製造における露光工程装置、マスク製作工程装置、レチクルストッカ、レチクルスミフポット(RSP)及び搬送キャリア(FOUP)への供給に従来のPSA方式乃至PTSA方式や吸着ロータ方式の低露点空気発生装置を用いる場合、大量のエネルギを消費する。これに対して、低露点空気発生装置10aは、常温・常圧の空気を、第一の4ポート自動流路切換機構22a及び第二の4ポート自動流路切換機構22bを介して温度スイング吸着処理した後、除塵フィルタ53を流下して送風機44で昇圧してレシーバタンク60に送入し、レシーバタンク60から供給先が必要とする空気量だけ圧縮機62を用いて供給左記が必要とする圧力まで昇圧し、さらに冷却器46で温度調整を行い、アキュムレータ64に送入した後、供給するようにしたため、安価でエネルギ消費量の少ない低露点空気等を供給することができる。
【0052】
以上説明した低露点空気発生装置10aによれば、低露点空気発生装置10の作用効果をより好適に得ることができる。また、特に、圧縮機62による昇圧前の温度スイング吸着後の空気の一部を再生用空気として再生用空気供給部に供給する再生用空気供給ラインを有するため、供給先の使用量の変動によって、発生する低露点空気が余剰となる場合に、余剰の低露点空気を外部に放出し、又はより大容量のレシーバータンクを設けて貯留する等を行うことなく、有効に利用することができる。
なお、余剰の低露点空気を再生用空気として再生用空気供給部に供給するかわりに、水分凝縮ユニットに循環する循環ラインを設け、例えば、送風機26に供給してもよい。これにより、余剰の低露点空気をより有効に利用することができる。この場合、吸着剤部を出る低露点空気の一部を再生用空気として再生用空気供給部に供給すると、好適である。
【符号の説明】
【0053】
10、10a 低露点空気発生装置
11 薄板状断熱材
12、12a 水分凝縮ユニット
14、14a 温度スイング吸着ユニット
16、16a 低露点空気供給ユニット
18a、18b 吸着剤部
19a〜19d スプリング
20、20a 再生用空気供給部
21 2ポート電磁弁
22a 第一の4ポート自動流路切換機構
22b 第二の4ポート自動流路切換機構
23a〜23d 3ポート電磁弁
24、53 除塵フィルタ
25a〜25d 駆動部
26、32、44 送風機
27a〜27d 筺体部
28 凝縮器
29a〜29d 移動コア
30a〜30d コイル
30a〜30d 上部コイル
30a〜30d 下部コイル
31a〜31d 固定コア
33a〜33d 永久磁石
34 予熱器
35a〜35d 上室
36、55 加熱器
37a〜37d 下室
38a〜38d スプリングホルダ
39a〜39d 弁座
40a〜40d コイルフレーム
41a〜41d 弁体
41a〜41d 上部弁体
41a〜41d 下部弁体
42a〜42d キャップ
43a〜43d、45a〜45d、47a〜47d ポート部
46、52 冷却器
48 突起状シール体
49 断熱材
51 固定ナット
57a〜57d パイプ
60 レシーバータンク
62 圧縮機
64 アキュムレータータンク
66 圧抜きライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理空気中の水分を凝縮除去する水分凝縮ユニットと、水分を凝縮除去された空気を温度スイング吸着する温度スイング吸着ユニットと、温度スイング吸着後の空気を昇圧した後、温度調整して供給する低露点空気供給ユニットを備え、
該温度スイング吸着ユニットは、処理空気の流入流路を切り替え可能に設けられる水分吸着工程用及び水分脱着工程用の2系列の吸着剤部を有するとともに、水分脱着工程用に供する吸着剤部に再生用空気を供給する再生用空気供給部を有し、
該水分凝縮ユニット、該2系列の吸着剤部、該再生用空気供給部及び該低露点空気供給ユニットの間の流路を切り替える2つの4ポート自動流路切換機構を有し、該2つの4ポート自動流路切換機構は、それぞれ、3ポートを備える4つの電磁弁を組み合わせて一体化され全体として4ポートを有することを特徴とする低露点空気発生装置。
【請求項2】
前記低露点空気供給ユニットが供給先に供給する圧力に昇圧する前であって温度スイング吸着後の空気の一部を再生用空気として該再生用空気供給部に供給する再生用空気供給ラインを有することを特徴とする請求項1記載の低露点空気発生装置。
【請求項3】
前記低露点空気供給ユニットが供給先に供給する圧力に昇圧する前であって温度スイング吸着後の空気の一部を前記水分凝縮ユニットに循環する循環ラインを有することを特徴とする請求項1記載の低露点空気発生装置。
【請求項4】
前記低露点空気供給ユニットが、供給先に供給する圧力に昇圧する前であって温度スイング吸着後の空気を貯留するレシーバータンクを有することを特徴とする請求項2又は3記載の低露点空気発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−96165(P2012−96165A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245783(P2010−245783)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(594185097)伸和コントロールズ株式会社 (13)
【Fターム(参考)】