説明

低騒音自動車の警報装置

【課題】低騒音自動車のホイールに取付けて、該ホイールが低速回転時にだけ騒音を出して、歩行者へ自動車が近づいたことを知らせる、機械的な簡単な構造で、安価な警報装置を提供する。
【解決手段】低騒音自動車のホイール3の中心部に中央取付け部が位置するようにホイール3を固定する複数個のホイールボルト5に螺合されるホイールナット6で固定的に取付けられた固定側取付け具7と、固定側取付け具7の中央取付け部に固定具で、中央部が前記ホイール3のほぼ中心部に位置するように固定された薄筒状の回転筒14、この回転筒14内に収納され、かつ該回転筒14が低速回転の場合にはスライド移動して騒音を出し、高速回転の場合には遠心力の作用でスライド移動することができない騒音発生重り15とからなる低速騒音発生具11とで低騒音自動車の警報装置を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気自動車やハイブリット自動車、燃料電池自動車等の低騒音自動車に使用される低騒音自動車の警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低騒音自動車で歩道のない道路を走行する場合、低騒音であるため、歩行者が自動車が近づいたことを察知することができず、クラクションを鳴らして自動車の存在を知らせたり、自動車の速度に基づいて外部にスピーカで音響を発生する音響発生装置を使用することが考えられている。
【0003】
しかしながら、前者のクラクションによる自動車の存在を知らせる方法では歩行者を驚かせたり、周辺地域の騒音になるという欠点があり、後者のスピーカを用いた音響発生装置はセンサ、音響信号発生部やスピーカを用いるため、構造が複雑でコスト高になるとともに、電気回路を用いるため故障しやすいという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−136831
【特許文献2】特開平7−209424
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、低騒音自動車のホイールに取付けることにより、該ホイールが低速回転時にだけ騒音を出して、歩道のない道路の走行時に、歩行者へ自動車が近づいたことを知らせることができる、機械的な構造で、構造が簡単で、故障しづらく、部品点数も少なく、安価に設置することができる低騒音自動車の警報装置を提供することを目的としている。
【0006】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
【0007】
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は電気自動車やハイブリット自動車等の低騒音自動車のホイールを固定する複数個のホイールボルトに螺合されるホイールナットの内の1個のホイールナットと一体形成された固定側取付け具あるいは、該ホイールの中心部に中央取付け部が位置するようにホイールを固定する複数個のホイールボルトに螺合されるホイールナットで固定的に取付けられた固定側取付け具と、このホイールナットと一体形成された固定側取付け具あるいは、固定側取付け具の中央取付け部に固定具で中央部が前記ホイールのほぼ中心部に位置するように固定された薄筒状の回転筒、この回転筒内に収納され、かつ該回転筒が低速回転の場合にはスライド移動して騒音を出し、高速回転の場合には遠心力の作用でスライド移動することができない騒音発生重りとからなる低速騒音発生具とで低騒音自動車の警報装置を構成している。
【発明の効果】
【0009】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1によって、低騒音自動車のホイールの回転が低速回転の場合、回転筒内の騒音発生重りが、該回転筒内をスライド移動して騒音を発生させることができる。
したがって、歩道のない道路の走行時に、前記騒音によって自動車が近づいていることを知らせることができる。
このため、従来のクラクションやスピーカで音を出して警報するものと比べ、歩行者や周辺地域を驚かすことなく、やさしく歩行者に知らせることができる。
(2)前記(1)によって、低騒音自動車のホイールの回転が高速の場合、遠心力によって騒音発生重りがスライド移動することなく、回転筒を一体となって回転するため騒音の発生がなく、故障したりすることなく使用することができる。
(3)前記(1)によって、低騒音自動車のホイールに固定側取付け具を介して低速騒音発生具を取付けるだけでよいので、容易に、誰でもが設置することができる。
(4)請求項2も前記(1)〜(3)と同様な効果が得られるとともに、低速騒音発生具をホイールカバーで覆っているので、安全で、ホイールが見苦しくなるのを阻止することができる。
(5)請求項3も前記(1)〜(3)と同様な効果が得られるとともに、低速騒音発生具の自動車への取付けをバランスよく取付けることができ、自動車の車輪への悪影響を防止することができる。
(6)請求項4も前記(1)〜(3)と同様な効果が得られるとともに、騒音発生重りが4個所での衝突となり、騒音発生間隔を短くできる。
【0010】
また、騒音発生重りの形状により、回転筒の壁面に水分が付着したとしても、騒音発生重りが回転筒の壁面に密着して移動しなくなるのを確実に防止することができる。
(7)請求項5も前記(1)〜(3)と同様な効果が得られるとともに、回転筒の周壁部材の材質によって騒音の音色をかえることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を実施するための第1の形態の使用状態の説明図。
【図2】本発明を実施するための第1の形態の正面図。
【図3】本発明を実施するための第1の形態の固定側取付け具の説明図。
【図4】本発明を実施するための第1の形態の低速騒音発生具の正面図。
【図5】本発明を実施するための第1の形態の低速騒音発生具の側面図。
【図6】図4の6−6線に沿う断面図。
【図7】本発明を実施するための第1の形態の低速走行時の騒音発生状態の説明図。
【図8】本発明を実施するための第1の形態の高速走行時の説明図。
【図9】本発明を実施するための第2の形態の使用状態の説明図。
【図10】図9の10−10線に沿う拡大断面図。
【図11】図10の11−11線に沿う断面図。
【図12】本発明を実施するための第2の形態の可動側取付け具の説明図。
【図13】本発明を実施するための第2の形態のホイールカバー本体の背面図。
【図14】ホイールカバー本体に可動側取付け具を取付けた状態の説明図。
【図15】本発明を実施するための第3の形態の使用状態の説明図。
【図16】本発明を実施するための第3の形態の正面図。
【図17】本発明を実施するための第3の形態の固定側取付け具の説明図。
【図18】本発明を実施するための第4の形態の使用状態の正面図。
【図19】図18の19−19線に沿う断面図。
【図20】本発明を実施するための第4の形態の騒音発生重りの説明図。
【図21】本発明を実施するための第4の形態の回転筒の正面図。
【図22】本発明を実施するための第4の形態の回転筒の側面図。
【図23】本発明を実施するための第4の形態の一方の側壁板を外した状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0013】
図1ないし図8に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は電気自動車、ハイブリット自動車、燃料電池自動車等の低騒音自動車2に使用される本発明の低騒音自動車の警報装置で、この低騒音自動車の警報装置1は前記低騒音自動車2のホイール3の中心部に中央部4が位置する、該ホイール3を固定するホイールボルト5、5、5、5、5に螺合されるホイールナット6、6、6、6、6で固定される固定側取付け具7と、この固定側取付け具7の中央部4にボルト8、ナット9を用いた固定具10で固定された低速騒音発生具11とで構成されている。
【0014】
前記低速騒音発生具11は前記固定具10で両端部が突出するように前記固定側取付け具7に固定された、前記ホイール3のホイールナット6、6間に位置する薄筒状で開口部12が閉塞板13で閉塞された回転筒14と、この回転筒14内に収納され、かつ該回転筒14が低速回転の場合にはスライド移動して騒音を出し、高速回転の場合には遠心力の作用でスライド移動できない騒音発生重り15と、前記回転筒14の上端部14aと前記騒音発生重り15を設けた下端部14bとの重量バランスをほぼ均等にできるように固定されたバランス重り16および、軽量化を図るための複数個の透孔17とからなるバランス調整手段18とで構成されている。ここで「薄筒状」とは、回転筒14が長方形状の断面であることをいう。
【0015】
上記構成の低騒音自動車の警報装置1は、低騒音自動車2が低速で走行するとホイール3に固定された低速騒音発生具11が低速で回転するため、回転筒14内の騒音発生重り15は上下にスライド移動して、上下端部と衝突して騒音を発生する。
【0016】
このため、歩道のない道路の歩行時には低速騒音発生具11の騒音によって、歩行者に自動車が近づいたことを知らせることができる。
【0017】
また、歩道のある道路での高速走行時には、ホイール3に固定された低速騒音発生具11も高速で回転するため、回転筒14内の騒音発生重り15は遠心力の作用によって、回転筒14の先端部と一体になって回転するため、騒音が発生しない。
【0018】
なお、ホイール3には低速騒音発生具11を覆うホイールカバー19を取付けることにより低速騒音発生具11がむき出しになるのを防止することができる。
【0019】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図9ないし図23に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0020】
図9ないし図14に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、低速騒音発生具11の固定具10Aに軸受20を介して回転可能に取付けられた偏心状態の円板状の可動側取付け板21、この可動側取付け板21の外周部に形成された複数個の係止片挿入凹部22、この係止片挿入凹部22の端部にそれぞれ形成された係止部23および、前記可動側取付け板21に取付けられた操作レバー24とからなる可動側取付け具25と、この可動側取付け具25に前記ホイール3との間に隙間26を有し、前記ホイール3の中心部に中央部が位置するように取付けられる内壁面27に前記可動側取付け板21の収納凹部28が形成され、前記係止片挿入凹部22より挿入され回動されることにより、前記係止片23と係止する複数個の係止片29とを備える円盤状のホイールカバー本体30と、このホイールカバー本体30の前記可動側取付け具25の可動側取付け板21の偏心による重量バランスで、常時ホイール3の後方側に位置する部位に形成された先端部が外方へ突出する気流ノーズ31とからなるホイールカバー19Aを用いた点で、このように構成されたホイールカバー19Aを用いた低騒音自動車の警報装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られるとともに、ホイールカバー19Aが自動車の走行時でも静止状態を保つので、公告、宣伝等のスペースとして使用することができる。
【0021】
図15ないし図17に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、複数個のホイールナット6の内の1個のホイールナット6の頭部に低速騒音発生具11をボルト8Aを用いた固定具10Bで固定するための固定側取付け具7Aを一体形成した点で、このような固定側取付け具7Aを用いて構成した低騒音自動車の警報装置1Bにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0022】
なお、前記固定側取付け具7Aはホイールナット6の頭部に一体形成された固定側取付け具本体7aと、この固定側取付け具本体7aに形成された低速騒音発生具11を固定するボルト8Aが螺合されるねじ孔32とで構成されている。
【0023】
図18ないし図23に示す本発明を実施するための第4の形態において、前記本発明を実施するための第3の形態と主に異なる点は、中央部が厚肉で外周部が薄肉となる円リング状の騒音発生重り15Aを用いるとともに、該騒音発生重り15Aが菱形形状に移動できる騒音発生重り移動空間33を有するように菱形形状のステンレス、アルミニウム、ジュラルミン等の両側壁板34、34と、この両側壁板34、34の外周部間を覆う騒音発生重り15Aの衝突で発生する音色を設定することができる鉄、アルミニウム、ベークライト、焼結合金等の音色設定材料で形成された菱形輪郭形状の筒状の周壁部材35と、該周壁部材35の遊端部側に形成された、遠心力が作用した場合の騒音発生重り15Aの係合凹部36と、前記筒状の周壁部材35の中間部35a、35aで連続的に騒音発生重り15Aと接触するのを防止し、騒音を発生させるためのV字状の凹部37、37とで構成された回転筒14Aを用いた点で、このような騒音発生重り15Aと回転筒14Aを用いて構成した低騒音自動車の警報装置1Cにしても、前記本発明を実施するための第3の形態と同様な作用効果が得られるとともに、騒音発生重り15Aが回転筒14Aの両側壁板34、34に付着した水分で付着して、移動しなくなるのを効率よく阻止することができ、かつ回転筒14Aの一回転で、4個の騒音を発生させることができる。
【0024】
また、回転筒14Aの筒状の周壁部材35に用いる材料を選択することにより、発生する騒音の音色をかえることができる。
【0025】
なお、騒音発生重り15Aが両側壁板34、34に付着した水分で付着するのを防止するために、騒音発生重り15Aを中央部より外周部が薄肉となる円リング状に形成したものを用いたが、中央部より外周部が薄肉となる円形状や、両側面に複数個の突起を形成した円板形状の騒音発生重りを用いてもよい。
【0026】
また、騒音発生重り15Aの材質、形状、数はホイールの低速回転時には騒音を発生し、ホイールの高速回転時には遠心力で回転筒の遊端部に係止されて騒音を発生しないものであれば、どんな材質、形状、数のものを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は低騒音自動車の低速走行時に、歩行者に警報音を出す低騒音自動車の警報装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0028】
1、1A、1B、1C:低騒音自動車の警報装置、
2:低騒音自動車、 3:ホイール、
4:中央部、 5:ホイールボルト、
6:ホイールナット、 7、7A:固定側取付け具、
7a:固定側取付け具本体、 8、8A:ボルト、
9:ナット、 10、10A、10B:固定具、
11:低速騒音発生具、 12:開口部、
13:閉塞板、 14、14A:回転筒、
15、15A:騒音発生重り、 16:バランス重り、
17:透孔、 18:バランス調整手段、
19、19A:ホイールカバー、 20:軸受、
21:可動側取付け板、 22:係止片挿入凹部、
23:係止部、 24:操作レバー、
25:可動側取付け具、 26:隙間、
27:内壁面、 28:収納凹部、
29:係止片、 30:ホイールカバー本体、
31:気流ノーズ、 32:ねじ孔、
33:騒音発生重り移動空間、 34:側壁板、
35:筒状の周壁部材、 36:係合凹部、
37:凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車やハイブリット自動車等の低騒音自動車のホイールを固定する複数個のホイールボルトに螺合されるホイールナットの内の1個のホイールナットと一体形成された固定側取付け具あるいは、該ホイールの中心部に中央取付け部が位置するようにホイールを固定する複数個のホイールボルトに螺合されるホイールナットで固定的に取付けられた固定側取付け具と、このホイールナットと一体形成された固定側取付け具あるいは、固定側取付け具の中央取付け部に固定具で中央部が前記ホイールのほぼ中心部に位置するように固定された薄筒状の回転筒、この回転筒内に収納され、かつ該回転筒が低速回転の場合にはスライド移動して騒音を出し、高速回転の場合には遠心力の作用でスライド移動することができない騒音発生重りとからなる低速騒音発生具とを備えることを特徴とする低騒音自動車の警報装置。
【請求項2】
低速騒音発生具はホイールあるいは回転筒をホイールに固定する固定具に回転可能に取付けられたホイールカバーで覆われていることを特徴とする請求項1記載の低騒音自動車の警報装置。
【請求項3】
低速騒音発生具は回転筒の固定具の中心位置を中心に、上下部がほぼ同一の重さとなるように設定されていることを特徴とする請求項1記載の低騒音自動車の警報装置。
【請求項4】
低速騒音発生具は騒音発生重りが菱形形状に移動できる騒音発生重り移動空間を有する回転筒と、この回転筒内を移動する該回転筒の移動空間を形成する外壁面に密着を防止できる中央部の厚さよりも外周部の厚さが薄い円形状、あるいは円リング状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の低騒音自動車の警報装置。
【請求項5】
低速騒音発生具の回転筒は両側壁板と、この両側壁板の外周部間を覆う騒音発生重りの衝突で発生する騒音の音色を設定する鉄、アルミニウム、ベークライト、焼結合金等の音色設定材料で形成された筒状の周壁部材とで構成されていることを特徴とする請求項1記載の低騒音自動車の警報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−20665(P2011−20665A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219421(P2009−219421)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(591246023)
【出願人】(506066629)
【Fターム(参考)】