説明

体内治療装置

【課題】血管等を介して行われる治療に利用される体内治療装置において、同装置の発熱部が患部近傍まで近づき得ることで、効果的な加熱治療が行われ得るものを提供すること。
【解決手段】この装置は、カテーテル11と、カテーテル11を移動可能なリード線12を備えている。このリード線12の先端部には、でんぷんからなる球状のDSM13と、コイルチップ14とが配設されている。カテーテル11が、患部に通じる血管に挿入され、リード線12が、1つずつ、カテーテル11を介して血管内へ導入されていく。ここで、DSM13は、血流に伴って末梢血管まで移動し得、同血管を閉塞する。これにより、コイルチップ14は、一体的に末梢血管まで移動し得、患部内、または 患部近傍にて配置され得ることになる。 患部内、または患部近傍のコイルチップ14により、患部へ熱が効率的に与えられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内に形成され流体が流通する流路(例えば、血管、消化管、消化腺、気管など)を介して行われる治療に利用される体内治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の日本において、死因として最も多いものは悪性新生物によるものである。従って、その効果的な治療法の開発が望まれている。悪性新生物に対しては、薬物療法、放射線療法等種々の療法が用いられている。その中の療法の一つとして、温熱療法が挙げられる。
【0003】
近年、この温熱療法の一種であって、特に肝細胞癌の治療に有効な経皮的RFA(Radiofrequency Ablation:ラジオ波焼灼術)が開発されてきている。この経皮的RFAでは、電力をラジオ波に変換する電極が患部まで挿入されて、ラジオ波が患部に照射される。このとき、患部である癌細胞が抵抗となり得るため、患部にてジュール熱が発生する。即ち、経皮的RFAでは、電力がラジオ波を介して熱に変換されて、その熱により患部が焼灼されるようになっている。
【0004】
しかしながら、この経皮的RFAによる治療対象は、径が3センチ以下の肝細胞癌に限られるため、適用範囲が比較的狭い。また、電極の挿入、及び抜去の際、組織が傷つくことで大量に出血するため、患者へのダメージが大きい。これらのように、改良されるべき問題が存在する。
【0005】
かかる問題を解決するために、例えば、以下に記載する癌の治療装置が案出されており、下記文献にて記載されている。この装置は、マイクロカテーテルと、マイクロカテーテル内に摺動可能に設けられたワイヤと、ワイヤと電気的に接続されたコイルと、を備えている。
【0006】
このマイクロカテーテルが腫瘍塊へ通じている血管内へ導入されることで、コイルが上記血管内の所定の位置にて配設される。そして、コイルがワイヤを介して通電されることで発熱する。その発熱をもって、上記所定の位置近辺の血液が加熱されるようになっている。これにより、加熱された血液が腫瘍塊に向かって流れ込むため、腫瘍塊が加熱され得る。
【0007】
しかしながら、患部である腫瘍塊の加熱にあたり、血液が介されるため、加熱による治療の効果が十分ではない。これは、発熱源(上記装置ではコイル)が患部から比較的離れていることに起因する。このように、体内に形成され流体が流通する流路を介して行われる治療に利用される体内治療装置においては、以下のような効果を奏するものが好ましい。即ち、この種の体内治療装置による治療を効果的なものとするために、発熱体等の機能部がより患部に近づき得ることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3131386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この種の体内治療装置においては、患部により近づき得ることで効果的な治療が行われ得る装置の開発が望まれていた。従って、本発明の目的は、体内に形成され流体が流通する流路を介して行われる治療に利用される、体内治療装置において、効果的な治療が行われ得るものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる体内治療装置の特徴は、可撓性を有する長尺体と、長尺体に配設されるとともに、体内に形成された流路を流れる流体の流動に伴って、流動における下流に向かって流路を移動する移動体とを備えたことにある。
【0011】
ここにおいて、「可撓性を有する長尺体」は、カテーテル、ワイヤ、リード線等であって、これらに限定されない。また、「体内に形成された流路」は、血管、消化管、消化腺、気管等における流路であって、これらに限定されない。加えて、「流体」は、液体、及び/又は気体である。
【0012】
上記構成によれば、移動体は自発的に流路を移動し得、長尺体も移動体と一体的に移動し得る。このため、移動体のサイズが流路に応じて調整されることで、細い流路であっても移動体及び長尺体が容易に流路へ導入され得る。従って、例えば、患部近傍の流路が細い場合(即ち、例えば、流路が末梢血管である場合など)であっても、移動体及び長尺体(の一部)が、患部近傍に近づき得る。また、移動体及び長尺体(の一部)を、患部内に進入させることもできる。この結果、患部近傍にて、移動体及び/又は長尺体(の一部)を患部治療のために機能させることで、効果的に治療が行われ得る。
【0013】
ここにおいて、移動体を患部治療のために機能させる場合、例えば、患部近傍の流路を閉塞するように機能させることが好適である。これにより、流路に薬液を注入する場合には、流路における閉塞部位、即ち、患部近傍にて薬液の濃度がより大きくなり得る。また、長尺体(の一部)を利用して血管中の血液を加熱する場合には、流路における閉塞部位、即ち、患部近傍にて温度がより高くなり得る。
【0014】
上記本発明にかかる体内治療装置においては、カテーテルが備えられ、長尺体が、カテーテルのルーメン内を長手方向に移動可能であり、且つ、少なくとも1つの導線を長手方向に沿うように備えたリード線であり、リード線が備える導線に電力を供給する電力供給機構と、電熱変換機構のうち少なくとも一部がリード線に配設されるとともに、導線と電気的に接続されており、電力供給機構により供給された電力を熱に変換する電熱変換機構と、が備えられ、移動体は、リード線に配設されるとともに、血管、消化管、又は消化腺の内部を流れる液体の流動に伴って、流動における下流に向かって血管、消化管、又は消化腺の内部を移動するように構成されると好適である。
【0015】
ここにおいて、「電熱変換機構」は、電力を熱に直接的に変換するものであってもよいし、電磁波を介して電力を熱に間接的に変換するものであってもよい。即ち、電熱変換機構は、例えば、電気抵抗体、電極、コイル等であり、これらに限られない。
【0016】
上記構成によれば、カテーテルが血管、消化管、又は消化腺の一部に挿入されることで、移動体及び長尺体を、カテーテルを介してその管内へ移動させることができる。そして、移動体は自発的に血管内等の流路を移動し得る。従って、患部近傍の血管、消化管、又は消化腺が細い場合であっても、リード線に配設された電熱変換機構が患部近傍に近づき得る。この結果、治療としての患部への加熱が効果的に行われ得る。
【0017】
なお、長尺体としてのリード線を、カテーテル(のルーメン)の先端部まで移動させるにあたり、生理食塩水の圧入を利用してもよい。即ち、カテーテル(のルーメン)の後端部より、生理食塩水を注入する機構が備えられていてもよい。その機構としては、例えば、カテーテルの後端部に吐出口が接続されるシリンジポンプ等が挙げられる。これにより、生理食塩水のルーメン内における流動に伴って、移動体及び長尺体がルーメン先端に向かって移動し得る。
【0018】
また、例えば、長尺体としてのリード線が、導線を2つ備えるように構成され、電力供給機構が、リード線が備える各導線に電力をそれぞれ供給するように構成され、電熱変換機構が、電熱変換機構の全部がリード線に配設されるとともに、2つの導線と電気的に接続されるように構成されてもよい。
【0019】
また、例えば、長尺体としてのリード線が、導線を1つ備えるように構成され、電熱変換機構が、血管、消化管、及び消化腺の外部に位置する電極である外部電極と、外部電極と電気的に接続された導線である外部電極導線と、電熱変換機構の一部としてリード線に配設されるとともに、血管、消化管、又は消化腺の内部に位置する内部電極とを備え、外部電極と、内部電極とを介して電力供給機構により供給された電力を熱に変換するように構成され、電力供給機構が、リード線が備える前記導線に加え、外部電極導線にも電力を供給するように構成されてもよい。
【0020】
この場合、例えば、リード線が、金属ワイヤと、その側面を絶縁材料で被覆する被覆部とから構成され、導線が、金属ワイヤと一体的に構成され、内部電極が、上記被覆部から露呈した上記金属ワイヤの一部分となるように構成されてもよい。即ち、リード線の一部と、内部電極とが一体的に構成される。これにより、リード線と、導線と、内部電極とが別体にて構成される場合に比して、リード線(リード線に配設された機構を含む)の径をより小さくすることができる。
【0021】
上記本発明にかかる体内治療装置においては、移動体が、液体に可溶な材料にて構成されると好適である。
【0022】
移動体が流路を移動していくと、微小な開口面積を持つ部位にて閉塞し得る。流路が閉塞した状態にある期間が、長時間継続することは好ましくない。例えば、移動体による血管の閉塞が長時間継続すると、その閉塞部位よりも下流の細胞に壊死が発生するおそれがある。従って、移動体においては、液体に溶解することで流路の閉塞が解除され得ると好ましい。上記構成は、かかる知見に基づくものである。上記構成によれば、移動体により流路が一旦閉塞されるとともに、その後流路の閉塞が解除され得る。
【0023】
また、液体に可溶な移動体の材料が、温度が高いほどより溶解速度が大きくなるように構成され、且つ、上記電熱変換機構及び上記電力供給機構が備えられている場合、以下のように移動体の溶解を制御してもよい。即ち、移動体により流路が一旦閉塞された後、電熱変換機構からの発熱により移動体を積極的に溶解させることができる。従って、移動体により流路が一旦閉塞された後、上記電力供給機構の制御により上記発熱を調整することで、閉塞の解除に要する時間を制御することができる。換言すれば、上記解除に要する時間を操作者の所望の時間と一致させることができる。
【0024】
上記本発明にかかる体内治療装置においては、電力供給機構が、電熱変換機構にてラジオ波が発生するように電力を供給するよう構成され、電熱変換機構が、電力供給機構により供給される電力を、ラジオ波を介して熱に変換するように構成され、移動体が、血管の内部を流れる血液の流動に伴って、流動における下流に向かって血管の内部を移動するとともに、血液に可溶な材料であるでんぷんにて構成されると好適である。
【0025】
これによれば、患部としての肝細胞癌を効果的に治療することができる。即ち、カテーテルが肝臓の腫瘍塊に通じる血管系へ導入されることで、移動体及びリード線は、上記腫瘍塊に通じる末梢血管まで移動し得る。また、電熱変換機構も、移動体と一体的に移動し得る。これにより、電熱変換機構が、上記腫瘍塊の近傍に配置され得る。従って、効率よく上記腫瘍塊が加熱され得る。
【0026】
他方、移動体が肝臓の腫瘍塊近傍の血管にて閉塞し得ることで、上述したように、薬液濃度の増大、加熱温度の上昇が達成され得る。加えて、移動体による血管の閉塞が発生しても、閉塞後徐々に移動体が溶解し得るため、閉塞部位よりも下流の細胞に壊死が発生することが抑制され得る。
【0027】
上記本発明にかかる体内治療装置においては、リード線が複数備えられ、電力供給機構が、複数のリード線がそれぞれ備える導線に電力をそれぞれ供給するように構成され、電熱変換機構、及び移動体が、複数のリード線にそれぞれ配設されるように構成されると好適である。
【0028】
これによれば、複数の電熱変換機構が、患部近傍にそれぞれ配置され得る。従って、より高温、且つ、効果的に患部が加熱され得る。従って、より効果的に患部の治療がなされ得る。
【0029】
この場合、例えば、複数のリード線のうちの1つのリード線である第1リード線に配設された1つの移動体である第1移動体が、流動に伴って移動可能となるよう、第1リード線のみを流動における下流に向けて移動させるとともに、第1移動体の流動に伴う移動が開始した時点よりも後の時点にて、第1リード線とは別の1つのリード線である第2リード線に配設された1つの移動体である第2移動体が、流動に伴って移動可能となるよう、第2リード線のみを流動における下流に向けて移動させるように、複数のリード線の移動を制御する制御機構を備えるとより好適である。
【0030】
これによれば、例えば、枝分かれした流路において、第1移動体がその流路の1つを閉塞し得る。即ち、閉塞された流路以外の流路において、液体の流動を継続させることができる。このため、第2移動体は、第1移動体により閉塞された流路以外の流路へ、優先的に移動し得る。以上のことから、複数のリード線にそれぞれ配設された電熱変換機構が、患部近傍にまんべんなくそれぞれ配置され得る(後述する図4、及び図5を参照)。この結果、更により効果的に患部の治療がなされ得る。
【0031】
更にこの場合、移動体が、液体に可溶な材料にて構成され、制御機構が、第1移動体が流動に伴って移動可能となるよう、第1リード線のみを流動における下流に向けて移動させるとともに、第1移動体の流動に伴う移動が開始した時点よりも後の時点であって、第1移動体の溶解が完了する時点よりも前の時点にて、第2移動体が流動に伴って移動可能となるよう、第2リード線のみを流動における下流に向けて移動させるように、複数のリード線の移動を制御するよう構成されるとより好適である。
【0032】
第1移動体の溶解が完了した後には、第1移動体により閉塞されていた流路にて、再び
流動が開始される。このため、仮に、第1移動体の溶解が完了した後に、第2移動体が移動可能とされると、第2移動体は第1移動体により閉塞されていた流路と同じ流路へ移動するおそれがある。従って、複数の電熱変換機構を、確実にまんべんなく患部近傍に配置するためには、第1移動体の溶解が完了する前の時点で第2移動体が移動可能とされるのが好ましい。上記構成は、かかる知見に基づくものである。上記構成によれば、電熱変換機構が、確実にまんべんなく患部近傍に配置され得る。
【0033】
また、上記本発明にかかる体内治療装置においては、以下の制御方法を採用してもよい。即ち、複数のリード線のうちの1つのリード線である第1リード線に配設された1つの移動体である第1移動体が、流動に伴って移動可能となるよう、第1リード線のみを流動における下流に向けて移動させるように体内治療装置を制御する第1ステップと、第1移動体の流動に伴う移動が開始した時点よりも後の時点にて、第1リード線とは別の1つのリード線である第2リード線に配設された1つの移動体である第2移動体が、流動に伴って移動可能となるよう、第2リード線のみを流動における下流に向けて移動させるように体内治療装置を制御する第2ステップと、を備えた体内治療装置の制御方法が採用されてもよい。
【0034】
更にこの場合、移動体が、液体に可溶な材料にて構成され、第2ステップは、第1移動体の流動に伴う移動が開始した時点よりも後の時点であって、第1移動体の溶解が完了する時点よりも前の時点にて、第2移動体が流動に伴って移動可能となるよう、第2リード線のみを流動における下流に向けて移動させるように体内治療装置を制御するよう構成されると好適である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる体内治療装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示したリード線の1つにおける詳細図である。
【図3】図1に示した体内治療装置の作動を示したフローチャートである。
【図4】肝臓(肝細胞癌)へ通じる血管系統に、図1に示した体内治療装置を適用した場合における体内治療装置の作動を段階的に示す図である。
【図5】患部が肝細胞癌である場合に、図1に示した体内治療装置が適用されたときの模式図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかる体内治療装置の概略構成を示す図である。
【図7】図6に示したリード線の1つにおける詳細図である。
【符号の説明】
【0036】
10 体内治療装置
11 カテーテル
12 リード線(長尺体)
12c 導線
13 DSM(移動体)
14 コイルチップ(電力変換機構)
15 加熱用電源(電力供給機構)
16 リード線導入機構
17 シリンジポンプ(制御機構の一部)
18 コントローラ(制御機構の一部)
19a 内部電極(電熱変換機構の一部)
19b 外部電極(電熱変換機構の一部)
19c 外部電極用導線
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明による体内治療装置の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0038】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態にかかる体内治療装置10の概略構成を示す図である。この体内治療装置10は、カテーテル11と、3つのリード線12と、DSM(Degradable Starch Microspheres)13と、コイルチップ14と、加熱用電源15と、リード線導入機構16と、生理食塩水を圧入するシリンジポンプ17と、コントローラ18とを備えている。
【0039】
カテーテル11は、円筒形状を呈している。その管内通路として、開口断面が円形であるルーメン11aを備えている。各リード線12は、鋼素材にてそれぞれ構成されており、その側面は、絶縁素材にてそれぞれ被覆されている。また、各リード線12は、可撓性をそれぞれ有しおり、ルーメン11a内を長手方向にそれぞれ摺動可能となっている。
【0040】
DSM13は、球状の「でんぷん」からなる微粒子であり、各リード線12の先端にそれぞれ備えられている。コイルチップ14は、各リード線12の先端部分であって、各DSM13よりも後端側の部位にそれぞれ備えられている。即ち、コイルチップ14が電熱変換機構に対応し、電熱変換機構の全部がリード線12に配設されている。
【0041】
加熱用電源15は、各リード線12とその後端にて電気的に接続されている。リード線導入機構16は、カテーテル11とその後端にて接続されている。
【0042】
また、リード線導入機構16は、その内部に通路16aと、通路16bとを備えている。通路16aの一方側の開口端16a1は、シリンジポンプ17の先端部(吐出口17a)と接続されている。通路16aの他方側の開口端16a2は、ルーメン11aの後端と接続されている。これにより、シリンジポンプ17内の生理食塩水が、通路16aを介してルーメン11aの先端部へ向けて流入し得るようになっている。
【0043】
通路16bの一方側の開口端16b1は、各リード線12をその先端から挿入可能、且つ、液体が開口端16b1からリード線導入機構16外へ漏れ出さないように構成されている。通路16bの他方側の開口端16b2は、上記開口端16a2と一体的に構成されるとともに、ルーメン11aの後端と接続されている。これにより、各リード線12の先端部(即ち、DSM13)が通路16bにそれぞれ挿入された場合に、各リード線12が、上記流入する生理食塩水の流動に伴って通路16bを介してルーメン11aへそれぞれ導入され得るようになっている。図1に示す状態は、3つのリード線12がすべてルーメン11aに導入された状態である。
【0044】
シリンジポンプ17は、中空円筒と、中空円筒の先端部に備えられその空間と連通する液体の吐出口17aと、その空間に嵌合可能かつ円筒軸方向に中空円筒と相対移動可能に構成されたピストンと、ピストンを中空円筒に対して相対移動させるアクチュエータ17bとを備えた、周知の液送ポンプである。このシリンジポンプ17の円筒内に生理食塩水が封入可能となっている。上述したように、シリンジポンプ17の吐出口17aは、通路16aの一方側の開口端16a1と連通している。このため、封入されている生理食塩水は、シリンジポンプ17よりルーメン11aの先端部へ向かって圧送可能となっている。
【0045】
コントローラ18は、加熱用電源15と、シリンジポンプ17のアクチュエータ17bと電気的に接続されている。また、コントローラ18は、スイッチ等からなる操作指令部(図示せず)からの操作信号に基づいて、加熱用電源15と、シリンジポンプ17のアクチュエータ17bとに作動指示するようになっている。このコントローラ18からの作動指示により、シリンジポンプ17のピストンの相対移動距離および相対移動速度が調整されるようになっている。換言すれば、生理食塩水の圧入における圧力、流量等が調整され得るようになっている。上記シリンジポンプ17と、コントローラ18とが、制御機構に対応する。
【0046】
図2は、図1に示したリード線12の1つにおける詳細図である。リード線12の先端部12aは、先細り形状を呈している。その先端部12aには、半径がRであるDSM13が、リード線12と同軸的に配設されている。これにより、リード線12とDSM13との間に半径方向にて凹部12bが構成される。このため、DSM13の、リード線12後端側の半球部13aにおける表面が大きく露呈するようになっている。従って、半球部13aにて、後端から先端への方向にかけて流れる流体の流れを受けやすくなっており、流体の運動エネルギがDSM13の運動エネルギに効率よく変換され得る。
【0047】
また、リード線12の、DSM13の配置位置よりも後端側の一部には、半径がrであるコイルチップ14が配設されている。ここにおいて、DSM13、及びコイルチップ14は、それぞれの半径が「R>r」の関係を満たすようになっている。このコイルチップ14は、電流が通じることによってラジオ波領域の電磁波が発生するようになっている。リード線12の内部には、電気伝導性を有する2つの導線12cが、リード線12の長手方向に沿うようにそれぞれ備えられている。各導線12cの一端は、コイルチップ14の端部14aと電気的にそれぞれ接続されており、各導線12cの他端は、加熱用電源15と電気的にそれぞれ接続されている。なお、導線12cの側面、及びコイルチップ14の素線の側面は、絶縁素材にて被覆されている。これにより、コイルチップ14が血液等の電解質中に位置する場合であっても、ショートすることなく効率的に電磁波が発生し得るとともに、生体組織への損傷が抑制され得る。また、リード線12に対しても互いに電気的に絶縁され得る。
【0048】
上記のように構成された体内治療装置10においては、加熱用電源15からの電力が、2つの導線12cを介してコイルチップ14へ供給され得る。これにより、電力のラジオ波を介した熱への変換が達成され得る。また、上記電力は、加熱用電源15に接続されたコントローラ18により調整可能となっている。従って、ラジオ波の強度(即ち、変換される熱量)も、コントローラ18によって調整され得るようになっている。
【0049】
(実際の作動)
以下、上述のように構成された体内治療装置10における実際の作動について、図3のフローチャート、及び図4を参照しながら説明していく。
【0050】
図3は、体内治療装置10の作動を示したフローチャートである。図4は、体内に形成された流路としての血管(本例では、肝臓(肝細胞癌)へ通じる血管系統)に、本実施形態にかかる体内治療装置10を適用した場合における体内治療装置10の作動を段階的に示す図である。本例では、作動の一例として、体内治療装置10が肝細胞癌の加熱に適用されるものとする。
【0051】
体内治療装置10の操作を実行する場合、図3のフローチャートにおけるステップ300から操作が開始され、続くステップ305にてカテーテル11の挿入が実行される。即ち、体内治療装置10のうちカテーテル11のみが、体外から肝動脈20へ向けて挿入される(図4を参照)。
【0052】
次に、ステップ310にて、1つのリード線12がリード線導入機構16内にセットされる。より具体的には、1つのリード線12は、その先端部(DSM13)が通路16aと通路16bとの一体形成部位に位置するように挿入される。
【0053】
次いで、ステップ315にて、シリンジポンプ17内の生理食塩水の圧入が開始される。より具体的には、シリンジの移動速度、及び移動量があらかじめ設定された指令値と一致するように、コントローラ18よりアクチュエータ17bに圧入指示が送出され始める。
【0054】
生理食塩水の圧入により、図4(A)に示すように、DSM13及びリード線12が先端へ向かってルーメン11a内を移動する。そして、圧入により移動するDSM13は、ルーメン11a内から外へ露出する。その後、DSM13は、血管内の血流に同伴されて、肝動脈20よりも径が細い第1の末梢血管21へ自発的に移動していく。
【0055】
続いて、ステップ320にて、コントローラ18内に内蔵されているタイマ(図示せず)がスタートする。
【0056】
他方、ステップ320にてタイマがスタートした直後、ステップ325にてタイマスタートから所定時間が経過したか否かが判定される。以下、上記「所定時間」について説明する。「所定時間」は、別途測定される血圧、DSM13の質量、DSM13の粒子径等の、血管内におけるDSM13の流速を支配するパラメタと、DSM13を移動させる距離とから決定される時間である。具体的には、上記パラメタと、上記距離と、上記距離を移動するために必要な時間との関係を規定するテーブルを予め実験等により作成しておき、上記パラメタと、上記距離とを引数として利用することで上記所定時間が決定される。
【0057】
例えば、上記距離を、ステップ310にてリード線12がリード線導入機構16内にセットされている場合におけるDSM13の先端から、DSM13にて閉塞させたい血管部位まで通じる流路に相当する距離とすることができる。これにより、上記所定時間が、生理食塩水の圧入開始時点から、DSM13が血管を閉塞させる時点までの期間に相当する時間となり得る。より具体的には、所定期間は、5.0秒に設定されている。所定時間は、肝臓癌の栄養血管まで到達させる場合には、この時間に設定されることが好適である。
【0058】
このように、DSM13が血管を閉塞したか否かを判定するにあたり、本例では、所定時間の算出により血管の閉塞を推定している。これに代えて、実際に操作者の視認により血管の閉塞を確認するようにしてもよい。具体的には、リード線12の導入毎に、血管造影剤を閉塞させようとしている血管に注入していくと好適である。これによれば、血管の閉塞開始と同時に、閉塞部位よりも下流の血管が造影されなくなる。従って、DSM13により、血管の閉塞が何時、どの血管のどの部位にて行われたのが視認され得る。このような確認手法によっても、血管が閉塞されたか否かが判定され得る。
【0059】
ステップ325にて「No」と判定されると、所定時間が経過したか否かが判定され、「Yes」と判定されると、ステップ330に進んでリード線12の導入本数が「3」であるか否かが判定されるようになる。上述のように所定時間が設定されることで、ステップ325にて「Yes」と判定される時点は、はじめに導入されたリード線12のDSM13が、末梢血管21を閉塞する時点と一致し得る。換言すれば、ステップ325にて「Yes」と判定されたとき、1つ目のDSM13による末梢血管21の閉塞が開始されることになる。
【0060】
現時点では、リード線12の導入本数は「1」である。従って、ステップ330にて「No」と判定され、ステップ310に進んで2つ目のリード線12がリード線導入機構16内にセットされる。次いで、1つ目のリード線12と同様、ステップ315にて、シリンジポンプ17内の生理食塩水の圧入が開始される。
【0061】
生理食塩水の圧入により、図4(B)に示すように、DSM13及びリード線12が先端へ向かってルーメン11a内を移動する。そして、移動するDSM13は、ルーメン11a内から外へ露出する。このとき、1つ目のDSM13により、末梢血管21が閉塞されている。従って、2つ目のDSM13は、血管内の血流に同伴されて、第1の末梢血管21とは別の第2の末梢血管22へ自発的に移動していく。
【0062】
続いて、ステップ320にてタイマが再度スタートし、ステップ325にてタイマスタートから所定時間が経過したか否かが再度判定される。ステップ325にて「Yes」と判定されると、ステップ330に進んでリード線12の導入本数が「3」であるか否かが再度判定されるようになる。また、ステップ325にて「Yes」と判定されたとき、2つ目のDSM13による末梢血管22の閉塞が開始されることになる。
【0063】
現時点では、リード線12の導入本数は「2」である。従って、ステップ330にて「No」と再度判定され、ステップ310に進んで3つ目のリード線12がリード線導入機構16内にセットされる。次いで、1つ目及び2つ目のリード線12と同様、ステップ315にて、シリンジポンプ17内の生理食塩水の圧入が開始される。
【0064】
生理食塩水の圧入により、図4(C)に示すように、DSM13及びリード線12が先端へ向かってルーメン11a内を移動する。そして、移動するDSM13は、ルーメン11a内から外へ露出する。このとき、1つ目、及び2つ目の各DSM13により、末梢血管21、及び末梢血管22がそれぞれ閉塞されている。従って、3つ目のDSM13は、血管内の血流に同伴されて、第1、及び第2の末梢血管21、22とは別の第3の末梢血管23へ自発的に移動していく。
【0065】
続いて、ステップ320、ステップ325の処理が順に実行され、ステップ330の判定が行われる。また、ステップ325にて「Yes」と判定されたとき、3つ目のDSM13による末梢血管23の閉塞が開始されることになる。
【0066】
他方、図4(D)に示すように、3つ目のDSM13による末梢血管23の閉塞が開始してからある程度時間が経過した後、末梢血管21を閉塞していた1つ目のDSM13は血液に溶解して消滅する。その後、2つ目、3つ目のDSM13も順番に溶解して消滅していく。このように、DSM13が順番に溶解して消滅するよう、DSM13は、以下のように調整されている。即ち、最後に導入された(本実施形態では3つ目の)DSM13が閉塞を開始するまで、他のすべての(本実施形態では1つ目、及び2つ目の)DSM13が消滅しないよう、DSM13の粒子径が設計・調整されている。
【0067】
また、DSM13は、末梢血管を閉塞した時点からおよそ30分で消滅するように設計されている。末梢血管は、一旦閉塞された後、再び血流が許可されるため、閉塞部位よりも下流の細胞が壊死することが抑制され得る。
【0068】
現時点では、リード線12の導入本数は「3」である。従って、ステップ330にて「Yes」と判定され、続くステップ335にて、患部の加熱が実行される。より具体的には、コントローラ18より加熱用電源15に、設定された電力、期間にて電力供給をするよう指示送出される。即ち、加熱用電源15から、3つのリード線12に内蔵された各導線12cを介して、3つのコイルチップ14に電力が供給される。そして、3つのコイルチップ14からラジオ波がそれぞれ発生する。
【0069】
このとき、各コイルチップ14は、末梢血管21、22、23のそれぞれに保持・配置されている。従って、患部の周りに配設された各コイルチップ14から、ラジオ波がそれぞれ発生し、そのラジオ波が患部に向けられて照射されることになる。従って、患部がラジオ波照射における抵抗となり得、ラジオ波が熱に変換される。この結果、効率的に患部が加熱され得る。
【0070】
また、この加熱により、残溶していたDSM13が完全に溶解・消滅し得る。従って、確実に、閉塞後における血流が許可され得る。この結果、血管における閉塞部位よりも下流の部位において、壊死が発生することが抑制され得る。加熱の態様としては、確実な患部加熱を達成するために、患部の大きさに応じて加熱時間、加熱度合いを調整してもよいし、他方、DSM13の完全な溶解を達成するために、所望の閉塞時間や、DSM13の大きさに応じて加熱時間、加熱度合いを調整してもよい。具体的には、閉塞開始時からDSM13が溶解して消滅するまでの時間を短くしたい場合には、加熱時間、及び/又は加熱度合をより長く、大きくすることが好ましい。このように調整されることで、DSM13による閉塞時間が制御され得、所望の閉塞時間を得ることができる。
【0071】
図5は、患部が肝細胞癌である場合に、本実施形態の体内治療装置10が適用されたときの模式図である。上述のように作動することで、3つのDSM13が、肝動脈を経て肝細胞癌近傍の複数の末梢血管に1つずつ移動し得る。この3つのDSM13の移動に伴って、3つのリード線12及びコイルチップ14も末梢血管ごとに移動し得る。即ち、コイルチップ14が、肝細胞癌の周りにまんべんなく配置され得る。従って、3つのコイルチップ14から肝細胞癌へ向けてラジオ波が照射され、肝細胞癌が局所的、且つ、効率的に加熱され得る。
【0072】
なお、抗癌剤を封入するリザーバが備えられ、上記体内治療装置10を用いた操作と、肝細胞癌の栄養血管への注入を併用するとより効果的である。具体的には、カテーテル11内にルーメン11aとは別のルーメンが備えられ、そのルーメンが抗癌剤を封入するリザーバと連通するように構成されると好適である。これによれば、加熱による作用と、抗癌剤による作用とが効果的に併用され得、患部における抗癌剤の感受性を大きくすることができる。この結果、より効果的に治療が行われ得る。
【0073】
また、リード線12、及びコイルチップ14を患部近傍に常時保持させておいてもよい。これによれば、長い期間継続して患部を加熱することができる。従って、より確実に肝細胞癌を加熱することが出来る。
【0074】
以上説明したように、本発明にかかる体内治療装置の第1実施形態によれば、DSM13は、血流に伴って自発的に血管内を移動し得、リード線12及びコイルチップ14も、DSM13と一体的に移動し得る。このDSM13のサイズは、血管に応じて調整されている。従って、末梢血管21、22、23のような細い血管であっても、DSM13及びコイルチップ14が容易に末梢血管へ導入され得る。従って、DSM13及びコイルチップ14が、患部である肝細胞癌近傍に近づき得る。この結果、患部近傍にて、コイルチップ14からの肝細胞癌近傍へ向けたラジオ波照射が行われるため、効果的に治療がなされ得る。
【0075】
また、3つのリード線12が時間差をおいて1つずつ導入される。これにより、患部付近の枝分かれした血管において、1つ目のDSM13がその血管の1つを閉塞し得る。即ち、閉塞された血管以外の流路において、血流を継続させることができる。このため、2つ目のDSM13は、1つ目のDSM13により閉塞された血管以外の血管へ優先的に移動し得、その血管を閉塞し得る。そして、3つ目のDSM13は、1つ目及び2つ目のDSM13により閉塞された血管以外の血管へ優先的に移動し得、その血管を閉塞し得る。以上のことから、3つのリード線12にそれぞれ配設されたコイルチップ14が、患部近傍にまんべんなくそれぞれ配置され得る(図4、及び図5を参照)。この結果、局所的、且つ、効果的に患部である肝細胞癌への加熱がなされ得る。加えて、DSM13による血管の閉塞が発生しても、閉塞後徐々にDSM13が溶解し得るため、閉塞部位よりも下流の細胞に壊死が発生することが抑制され得る。
【0076】
(第2実施形態)
次に、本発明による体内治療装置の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、以下の点においてのみ上記第1実施形態と異なる。第1に、第2実施形態が備えるリード線12は、導線、電極として機能するようになっている。即ち、リード線12は、1つの導線を一体的に備えている。また、上記第1実施形態が備えるコイルチップ14に代えて、第2実施形態が備えるリード線12は、内部電極19aを一体的に備えている。第2に、パッチ状の外部電極19bと、外部電極19bと加熱用電源15とを電気的に接続する外部電極導線19cが新たに備えられている。
【0077】
図6は、本発明の第2実施形態にかかる体内治療装置10の概略構成を示す図である。この図6は図1に対応するものである。図7は、リード線12の1つにおける詳細図であり、図2に対応するものである。以下、図6、及び図7を参照しつつ、第2実施形態の上記第1実施形態と異なる点のみについて説明する。
【0078】
図6に示すように、内部電極19aは、各リード線12の先端部分であって、各DSM13よりも後端側の部位にそれぞれ備えられている。この内部電極19aは、リード線12の一部分である。また、リード線12は、導線としても機能するようになっている。即ち、内部電極19aは、リード線12の一部であるため、加熱用電源15と電気的に接続されていることになる。他方、外部電極19bは、パッチ部19b1を有しており、電気伝導性を有する外部電極導線19cにて加熱用電源と電気的に接続されている。内部電極19a、及び外部電極19bは、加熱用電源15からの電力が供給された場合、電極を介して患部が加熱され得るようになっている。
【0079】
図7に示すように、より具体的には、各リード線12は、リード線12を絶縁する被覆部の一部から、長手方向に2〜3cmの範囲にて側面が露呈するようそれぞれ構成されている。この露呈する部分が内部電極19aとして機能するようになっている。また、内部電極19aよりも後端側であって、被覆されている鋼材料部分は、導線として機能するようになっている。なお、この露呈部分(即ち、内部電極19aの表面積)は、外部電極19bのパッチ部19b1の面積に比して十分に小さいものとなっている。
【0080】
次に、第2実施形態の作動について説明する。第2実施形態においては、外部電極19bが、体外の表皮であって、且つ、患部に比較的近い部位に配設される。そして、上記第1実施形態における作動と同様にリード線12が1つずつ患部へ向けて導入されていく。即ち、第2実施形態にかかる体内治療装置10を肝細胞癌の治療に適用すると、内部電極19aは、第1実施形態におけるコイルチップ14と同様、DSM13と一体的に患部近傍まで血管を経て移動し得る。
【0081】
3つの内部電極19aが、患部(例えば、肝細胞癌)の周りに配置されたと判定された後、両電極19a、19bに電力が供給される。ここにおいて、内部電極19aの表面積は、外部電極19bのパッチ部よりも十分に小さい。即ち、この面積差に応じて、内部電極19aの電熱線密度がより大きいものとなり得る。このため、内部電極19aからジュール熱により患部が加熱され得る。従って、これによっても、第1実施形態が奏する効果と同様、効果的に治療がなされ得る。また、内部電極19a、及び導線が、リード線12と一体的に形成されているため、リード線12全体として、径を小さくすることができる。この結果、DSM13を、より円滑に末梢血管まで移動させることができる。
【0082】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記各実施形態においては、体内治療装置10が、肝細胞癌の治療に適用されているが、これに代えて、他の臓器に形成された腫瘍の治療などに適用されてもよい。即ち、カテーテル11が、肝臓に通ずる血管に挿入されるのに代えて、例えば、肝臓以外の患部に通ずる血管、消化管、消化腺、又は気管に挿入されてもよい。
【0083】
また、上記各実施形態においては、リード線12が3つ備えられているが、これに代えて、リード線12の本数が「2」であってもよいし、「4」以上であってもよい。また、例えば、患部の大きさ(例えば、腫瘍の径の大きさ)が大きいほど、リード線12の本数が大きくされると好適である。
【0084】
また、上記各実施形態においては、リード線12のルーメン11a内での移動に際し、生理食塩水の圧入が用いられているが、これに代えて、アクチュエータによるリード線12の送出が用いられてもよい。具体的には、リード線導入機構16に、リード線12を長手方向に移動させる回転体等からなるアクチュエータが内蔵されてもよい。
【0085】
加えて、上記各実施形態においては、移動体としてDSM13が用いられているが、これに代えて、SAP(Super Absorption Polymer)が用いられてもよい。この場合、SAPが球状に形成されると好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する長尺体と、
前記長尺体に配設されるとともに、体内に形成された流路を流れる流体の流動に伴って、前記流動における下流に向かって前記流路を移動する移動体と、
を備えた体内治療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の体内治療装置であって、
カテーテルを備え、
前記長尺体は、
前記カテーテルのルーメン内を長手方向に移動可能であり、且つ、少なくとも1つの導線を前記長手方向に沿うように備えたリード線であり、
前記リード線が備える導線に電力を供給する電力供給機構と、
機構のうち少なくとも一部が前記リード線に配設されるとともに、前記導線と電気的に接続されており、前記電力供給機構により供給された電力を熱に変換する電熱変換機構と、
を備え、
前記移動体は、
前記リード線に配設されるとともに、血管、消化管、又は消化腺の内部を流れる液体の流動に伴って、前記流動における下流に向かって前記血管、前記消化管、又は前記消化腺の内部を移動するように構成された体内治療装置。
【請求項3】
請求項2に記載の体内治療装置において、
前記長尺体としての前記リード線は、
前記導線を2つ備えるように構成され、
前記電力供給機構は、
前記リード線が備える前記各導線に電力をそれぞれ供給するように構成され、
前記電熱変換機構は、
前記電熱変換機構の全部が前記リード線に配設されるとともに、2つの前記導線と電気的に接続されるように構成された体内治療装置。
【請求項4】
請求項2に記載の体内治療装置において、
前記長尺体としての前記リード線は、
前記導線を1つ備えるように構成され、
前記電熱変換機構は、
前記血管、前記消化管、及び前記消化腺の外部に位置する電極である外部電極と、
前記外部電極と電気的に接続された導線である外部電極導線と、
前記電熱変換機構の一部として前記リード線に配設されるとともに、前記血管、前記消化管、又は前記消化腺の内部に位置する内部電極とを備え、
前記外部電極と、前記内部電極とを介して前記電力供給機構により供給された電力を熱に変換するように構成され、
前記電力供給機構は、
前記リード線が備える前記導線に加え、前記外部電極導線にも電力を供給するように構成された体内治療装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の体内治療装置において、
前記移動体は、
液体に可溶な材料にて構成された体内治療装置。
【請求項6】
請求項2乃至請求項4の何れか一項に記載の体内治療装置において、
前記電力供給機構は、
前記電熱変換機構にてラジオ波が発生するように電力を供給するよう構成され、
前記電熱変換機構は、
前記電力供給機構により供給される電力を、前記ラジオ波を介して前記熱に変換するように構成され、
前記移動体は、
前記血管の内部を流れる血液の流動に伴って、前記流動における下流に向かって前記血管の内部を移動するとともに、前記血液に可溶な材料であるでんぷんにて構成された体内治療装置。
【請求項7】
請求項2乃至請求項6の何れか一項に記載の体内治療装置において、
前記リード線が複数備えられ、
前記電力供給機構は、
前記複数のリード線がそれぞれ備える前記導線に電力をそれぞれ供給するように構成され、
前記電熱変換機構、及び前記移動体は、
前記複数のリード線にそれぞれ配設されるように構成された体内治療装置。
【請求項8】
請求項7に記載の体内治療装置であって、
前記複数のリード線のうちの1つの前記リード線である第1リード線に配設された1つの前記移動体である第1移動体が、前記流動に伴って移動可能となるよう、前記第1リード線のみを前記流動における下流に向けて移動させるとともに、
前記第1移動体の前記流動に伴う移動が開始した時点よりも後の時点にて、前記第1リード線とは別の1つの前記リード線である第2リード線に配設された1つの前記移動体である第2移動体が、前記流動に伴って移動可能となるよう、前記第2リード線のみを前記流動における下流に向けて移動させるように、前記複数のリード線の移動を制御する制御機構を備えた体内治療装置。
【請求項9】
請求項8に記載の体内治療装置において、
前記移動体は、
液体に可溶な材料にて構成され、
前記制御機構は、
前記第1移動体が前記流動に伴って移動可能となるよう、前記第1リード線のみを前記流動における下流に向けて移動させるとともに、
前記第1移動体の前記流動に伴う移動が開始した時点よりも後の時点であって、前記第1移動体の溶解が完了する時点よりも前の時点にて、前記第2移動体が前記流動に伴って移動可能となるよう、前記第2リード線のみを前記流動における下流に向けて移動させるように、前記複数のリード線の移動を制御するよう構成された体内治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−274012(P2010−274012A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131658(P2009−131658)
【出願日】平成21年5月31日(2009.5.31)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【Fターム(参考)】