説明

体液採取システム

本発明は、採取部位の位置、あるいは、状態による少なくとも一つの変数を検知する少なくとも一つのセンサを有し、その少なくとも一つのセンサによって検知される少なくとも一つの変数を評価して、その検知した変数の値により、体液採取システムにおける反応を引き起こす評価ユニットを有し、前記反応は、身体部分の表面を穿刺するシステムを準備する機能を果たし、採取部位の身体に開口を生成する少なくとも一つの穿刺装置を有する、身体部分から、その身体部分の表面に位置する採取部位を介して体液を採取するシステムに関する。本発明は、さらにまた、総合分析システムと、体液の採取用システムを構成する方法と、身体部分から体液を採取するシステムを制御するメニューからメニュー項目を選択する方法とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体部分から体液を採取するシステムと、その体液を分析する総合分析システムと、身体部分からの体液採取に使用する採取装置を構成する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
体液の採取は、主として、病気の診断を可能にしたり患者の代謝作用をモニタするために、その後の分析のために行われる。この種の採取は、血糖濃度を測定するため、特に糖尿病患者に対して行われる。
【0003】
従来、先行技術において、患者や病院の職員が簡単に血液を採取できる採血システムが知られている。この目的に合った器具の例として市販で入手可能な「ソフトクリックス(Softclix)」があり、米国特許第5,318,584号明細書にその動作が記載されている。この器具は、組織へのランセットの挿入の深さを設定することを可能にする。したがって、患者は、挿入の最小深さを選択することが可能であり、それにより、患者は、その後の分析用の血液の正確な量だけを採取して、患者は、その結果、皮膚を穿刺することにより生ずる痛みを最小にすることが可能である。患者は、特に浅い挿入深さの場合、それを穿刺することによって皮膚に開口を生成後、患者は、刺創から十分な血液を抽出するために、こするか、あるいは、指に圧力を加える必要がある。
【0004】
別の体液採取システムが、米国特許第5,857,983号明細書から分かる。このシステムが、採取部位に切開を生成する中空の穿刺要素と、その穿刺要素と連絡する収集チューブとを備える。いわゆるスティミュレータが、穿刺まわりの身体組織の輪を圧縮することによって穿刺部から体液の流動を誘発する。このプロセスのあいだ、穿刺要素は、移動メカニズムによって切開内に移動し、体液の採取のあいだ切開を開口し続ける。吸引メカニズムが、穿刺要素を通って収集チューブに体液を吸引する。この器具においても、穿刺要素の挿入の深さを設定することが可能である。
【0005】
米国特許第5,951,492号明細書は、別の体液採取システムに関する。それは、使用者の皮膚に穿刺部を生成するメカニズムと、穿刺部から、毛細要素を通って、毛細要素から体液を受容するテストストリップに体液を搬送するために試料採取要素とを備える。このシステムは、さらに、使用者の皮膚の表面への体液の小滴を検知する試料識別メカニズムも備える。
【0006】
米国特許第6,319,210号明細書は、体液、特に、血液または間質液を採取する別のシステムに関する。この文献は、さらに、指腹以外の採取部位に適するように意図される穿刺メカニズムを記述している。もう一度再度ここでは、スティミュレータは、体液を切開から流動させるのに使用され、そのスティミュレータは、加熱されるか、あるいは、振動されるかのいずれかである。
【0007】
国際公開第01/89383号パンフレットは、身体部分の領域の内部圧力が増大するように、身体部分が一次的方向に圧縮されて、その一次的方向に対して部分的に横断する二次的方向に部分的に移動するように圧力を変換する圧縮ユニットで、身体部分、特に指腹の領域から体液を採取するシステムを開示している。このシステムは、さらにまた、増加された内部圧力の領域における身体に開口を生成する穿刺装置、特にランセット、あるいは、カニューレを備え、その圧縮ユニットは、変形可能な材料から作られる加圧領域を有する。
【0008】
とはいえ、先行技術によるシステムは、採取の状態、特に採取の位置や、採取部位の皮膚の状態を検知することができず、それらは、体液が使用者による最小可能な操作方法により、できる限り痛みがなく、できる限り短時間で採取されることを可能にすることを確実にするために、これらの採取状態に自動的に調節することもできない。
【0009】
異なる採取部位(たとえば指腹、あるいは、前腕)は、体液の採取のために、さらに、分析のために、異なるパラメータセットを必要とする。前腕から得られる血液の量は、きわめて少ない。さらに、必要とされる穿刺部は、指から試料を収集するときに比べてずっと深い。同時に、痛みへの総感度が低く、穿刺深さに影響を及ぼされることが少ないので、穿刺深さの正確な制御のための必要性が少ない。前腕からの血液の採取用のパラメータセットが、指腹から血液を採取するのに適用される場合、これは、きわめて深く、その結果きわめて痛い切開となる。さらなる不都合な点は、前腕の穿刺パラメータの不正確な使用により、試料容量をはるかに多くし、その結果、システムが汚染されることがあるので、衛生上問題になる。
【0010】
その上、パラメータセットは、採取部位の皮膚の状態、たとえば、皮膚の温度に適合されることがある。一般に、皮膚が暖かければ暖かいほど、血液循環がよく、それから血液を収集することが容易である。
【0011】
実質的に痛みのない体液の採取に対して、採取部位が採取システムに正確に位置しているときだけに、すなわち、十分な圧力で十分に大きな表面領域にあるときだけに、これが行われることは、さらに重要である。
【発明の開示】
【0012】
したがって、本発明の目的は、体液採取システムと方法を提供することであり、そのシステムおよび方法は、先行技術の前述の不利な点を回避して、時間の短い間隔で、使用者の最も少数の可能な操作方法で、ほぼ痛みのない体液の採取を可能にする。それらは、さらに、異なる採取部位(テストする別の部位)における体液の採取を可能にすることを意図し、採取部位の異なる状態で、システムは、採取状態に自動的に調節することを意図する。
【0013】
本発明によれば、この目的は、身体部分から、前記身体部分の表面に位置する採取部位を介して、体液を採取するシステムであって、
前記採取部位の位置または状態に従属する少なくとも一つの変数を検知する少なくとも一つのセンサと、
前記少なくとも一つのセンサによって検知された前記少なくとも一つの変数を評価し、前記体液採取システムにおいて、前記検知した変数の値に依存し、前記システムが体液採取の準備をする役割を果たす反応を引き起こす評価ユニットと、
前記採取部位の前記身体に開口を生成する少なくとも一つの穿刺装置とを備えるシステムによって達成される。
【0014】
当該体液採取システムは、単に身体に体液が流動可能な開口を生成するために用いることができる。しかしながら、このシステムはさらに体液を収集する機能を果たす他のメカニズム、特に、体液を身体開口から流動するのを誘発して、実質的にその上で分析されるテスト要素にその体液を塗布するメカニズムを備えてもよい。一般に、個人的使用者用に設計される分析システムは、流体の試料と接触後、分析物濃度の関数として信号を発する使い捨てテスト要素で作動する。血糖測定の分野において、オプティカルテスト要素が使用され、それにおいて、テスト化学薬品とのブドウ糖の反応により、電気化学テスト要素のように、変色し、それにおいて、ブドウ糖の酵素転換が、電流滴定、あるいは、電位差測定分析を可能にする。テスト要素は、それらが活動的に体液を吸収する(たとえば、毛管スリットによって)ように設計されていることが利点である。
【0015】
本発明によれば、体液採取システムは、少なくとも一つのセンサを備える、少なくとも一つのセンサは、採取部位の位置および状態に従属する少なくとも一つの変数を検知する。採取部位は、体液が採取時身体の開口を通って流動する身体部分の表面の位置である。評価ユニットは、検知した変数を評価する。たとえば、それは、この変数により、そして、必要な採取パラメータに関連して、別の変数を計算する。それは、その結果、検知した変数の値により、体液採取システムにおいて、特に、体液の採取を行う明確なパラメータセットの選択および使用により、反応をトリガし、そのシステムは、大量の使用者固有のパラメータセットを有し、それから、一つが、センサで測定される値に割当てられる。トリガされた反応の目的は、体液採取システムが、体液の採取に最適にされる構成を有することを確実にすることである。それは、穿刺装置が活性化される前に、身体部分の表面の最適な穿刺のためにシステムを準備する。先行技術において、血液試料採取装置へのセンサの使用は、たとえば、国際公開第02/101343A2号パンフレット、国際公開第02/100251号パンフレット、または国際公開第02/100254号パンフレットから知られている。とはいえ、これらのセンサは、行われる穿刺および採取処置のために装置を準備するのに使用されず、その代わりに、それらは、試料採取処置のあいだに様々なパラメータを検知して、穿刺を自動的に引き起こす。
【0016】
本発明によれば、少なくとも一つの穿刺装置は、採取部位の身体に開口を生成する機能を果たす。上述の穿刺装置は、先行技術で周知のように、ランセット、あるいは、カニューレである。ランセットは、通常、金属針を有し、それの一つの端部は、剣先に研がれている。先端から遠いランセット針の後方部分は、通常、プラスチック製のランセット本体によって囲まれている。上述のランセットは、たとえば、米国特許第3,358,689号明細書から知られている。
【0017】
ランセットの場合、ランセットは、穿刺後組織から完全に除去されることが好ましく、そのために、体液が流動する穿刺部位にアクセス可能である。カニューレの場合、カニューレは、この深さから体液を搬送するために、挿入の最大深さにとどまるか、あるいは、別の方法として、それは、ここから流体を収集するために皮膚の表面まで引き戻される。さらに、一部分のみ、カニューレを引き戻すことが可能であり、そのために、穿刺チャンネルは、部分的に解放されるが、カニューレは、皮膚内にとどまる。この方法において、一方では、流体は、露出された穿刺チャンネルから流動することがよく、他方では、身体の表面にカニューレを位置決めする必要がない。
【0018】
本発明の体液採取システムに含まれるセンサは、温度、電気抵抗、導電率、電流の強さ、電圧、位置、傾斜角、圧力、加速、および光学変数のうち、少なくとも一つの変数を検知するセンサであることが好ましい。
【0019】
温度測定に関して、ポジティブ、あるいは、ネガティブ温度係数を有する電気抵抗材料の温度依存性は使用され、たとえば、温度センサは、接触サーモメータとして設計される。とはいえ、接触することなく、採取部位の領域の身体部分から発する赤外線を測定するセンサが、考えられる。たとえば、測定部位は、その周囲に対して暖める放射線感度可能な要素の上にイメージされる。この小さな温度差は、熱要素によって測定される。
【0020】
電気抵抗を測定するセンサおよび導電率を測定するセンサが、たとえば、ホイートストン・ブリッジに接続される電極を備える。
【0021】
電流の強さ、あるいは、電圧を測定するセンサが、電流計に、あるいは、電圧計に接続される電極を含むことが可能である。
【0022】
位置または傾斜角を検知するセンサが、たとえば、水銀スイッチでよい。
【0023】
圧力センサによる圧力測定は、膜変形により、あるいは、力センサによって、直接達成される。周知のタイプの圧力センサは、たとえば、厚いフィルム、あるいは、半導体圧力センサ、または、圧電センサである。
【0024】
先行技術で周知の加速センサは、とりわけ、ホール効果センサ、圧電センサ、あるいは、容量性シリコン加速センサを含有するホール加速センサである。
【0025】
光学変数を検知するセンサは、異なる変数のための、たとえば、反射された電磁放射線を測定するファイバ光学センサを含むあらゆるタイプの光学変数用に設計されるセンサを含む。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、センサは、前記身体部分の表面の採取部位の前記皮膚温度を検知する温度センサである。好結果の血液試料採取のための重要なパラメータが、皮膚温度である。一般に、皮膚が温かければ暖かいほど、血液循環がよく、血液を収集することが容易である。逆に言えば、血液試料採取は、きわめて低い皮膚温度ではきわめて困難である。このことは、たとえば、皮膚が冷たすぎる場合、器具が加温を放射するように、採取部位近くの温度をチェックすることが好都合であることを意味する。その上、穿刺深さおよび採取処置の期間などの採取;パラメータは、実際の皮膚温度に適用されることが可能である。皮膚温度を検知する温度センサは、採取部位にできる限り近接して温度を検知すべきである。
【0027】
本発明のさらなる実施形態において、センサは、前記身体部分の表面の採取部位の皮膚の電気抵抗または導電率を検知するセンサである。皮膚の抵抗、あるいは、導電率を検知することによって、たとえば、体液が採取される身体部分と体液採取システムとのあいだに十分な接触があるかどうか、あるいは、たとえば、使用者は、穿刺処置と血液試料採取処置とのあいだに指を離して移動したかどうかを決定することが可能である。皮膚抵抗、あるいは、導電率を測定することによって、体液採取システムは、使用者が指に、あるいは、他の身体部分に器具を使用しているかどうかを決定することが可能であり、適切なパラメータを選択することが可能であることがさらに考えられる。
【0028】
本発明の別の好ましい実施形態において、センサは、前記採取部位との接触時、前記システムの位置または傾斜角を検知する位置センサまたは傾斜角センサである。位置または傾斜角を検知するセンサは、使用者が器具を保持している方法を自動的に識別するのに使用されることが可能であり、このことから、意図される採取部位(たとえば、指腹、耳朶、あるいは、前腕)を推論することが可能である。前腕からの体液の採取の場合、測定システムは、極度に少ない試料容量に対処することになる。この場合、器具の好ましい方向付けが、一つであり、試料は、この方法において最善の収率が達成されるので、重力の方向に収集される(自動血液適用(ABA-Automatic Blood Application))。重力の方向への指腹からの採取の場合、試料量が多すぎるので器具を汚染する恐れがある。結果として、指腹からの体液の採取の場合、器具の好ましい方向付けは、重力に反する。それゆえに、器具の位置または傾斜角から、意図した採取部位に関する結論を出す。
【0029】
本発明の別の実施形態において、センサは、前記システムの加圧領域により前記身体部分の表面の採取部位に加えられる圧力を検知する圧力センサである。穿刺装置によって身体に作られる開口から体液を“しぼり出す”ために、先行技術(たとえば、国際公開第01/89383号パンフレット)の多数のシステムは、採取部位の領域の内部圧力が増大される圧縮ユニットを備える。使用者は、任意に変形可能な圧縮ユニットに採取部位の身体部分を押圧する。使用者は、皮膚開口の形成のあいだ、そして、任意に、さらに、体液の収集のあいだ、身体部分をこのプレスオン状態のままにしておく。圧力センサは、皮膚の領域が圧縮ユニットに押圧されている圧力は、体液を収集するのに十分であるかどうかをチェックすることが可能であり、そして、適切な場合、それは、採取の必要とされる期間を決定、あるいは、十分な試料容量の収集を確実にするために他の計測を行うことが可能である。体液の採取用のシステムが穿刺装置のために皮膚に開口を生成するだけに使用される場合、圧力センサは、使用者が器具の加圧領域に身体部分を押圧して、その結果、穿刺装置を活性化するための準備を表示しているかどうかをチェックすることが可能である。とはいえ、国際公開第02/100254号パンフレットに開示される圧力センサと対照的に、本発明の圧力センサは、穿刺を自動的に引き起こすようにだけでなく、身体部分の表面の最適な穿刺のためにシステムを準備、あるいは、適用するのに使用される。
【0030】
本発明の別の好ましい実施形態において、センサは、前記システムの加圧領域と前記身体部分の表面に位置する前記採取部位の距離を検知する誘導センサ、光学センサ、または容量近接センサである。システムの加圧領域は、上述のような圧縮ユニットを充当する場合、システムが体液の採取のあいだ身体部分の表面に押圧される領域である。近接センサは、身体部分が加圧領域に、あるいは、それから少し離れて位置しているかどうかを検知するように、その結果、穿刺装置を発射するか、あるいは、ブロックするかのいずれかに意図される。
【0031】
本発明の体液採取システムの評価ユニットは、好ましくは、前記少なくとも一つのセンサによって検知された前記少なくとも一つの変数を評価し、前記少なくとも一つの検知した変数の値により、
前記少なくとも一つの穿刺装置をブロックまたは発射する
前記身体に開口の生成に選択される前記穿刺装置の穿刺深さを設定する
前記体液採取システムの加圧領域の幾何学的形状を設定する
前記体液採取システムの加圧領域の、前記線刺装置が身体部分の表面に貫通することができる開口の断面を設定する
前記体液採取システムが有する少なくとも二つの加圧領域の一つを選択する
前記体液採取システムに含まれる少なくとも二つの穿刺装置の一つを選択する
前記採取処置の期間を設定する
表示装置にテキストを表示する
前記体液の分析装置によって使用される評価パラメータを表示または設定する
のうち少なくとも一つの反応を引き起こす。
【0032】
穿刺装置の発射(release)あるいは、ブロック(block)は、たとえば、圧力センサ、近接センサ、抵抗センサ、あるいは、導電率センサによって測定される変数が、身体部分の採取部位が穿刺に適する位置に位置しているか、あるいは、位置していないかを、たとえば、圧縮ユニットに十分な圧力、あるいは、不十分な圧力で押圧されているかを表示するときに、好都合である。穿刺装置の発射の場合、システムは、穿刺装置の活性化の準備ができている。穿刺は、次に、好ましくは使用者による手動でトリガされることができる。皮膚温度が、定義した温度以下であり、皮膚の血液循環が血液を収集するのに不適切と思われることを皮膚温度センサが検知する場合、穿刺装置のブロックはさらに行われる。
【0033】
身体に開口を生成するのに選択される穿刺装置の穿刺深さは、上述のセンサの一つによって検知される変数に基づき設定されることが可能である。選択される穿刺深さは、使用者の痛みおよび瘢痕を実質的に回避するためにできる限り浅くする。設定は、0.5mmと2mmの穿刺深さのあいだの範囲であることが好ましい。たとえば、温度センサ、位置センサ、傾斜角センサ、抵抗センサ、あるいは、導電率センサで検知される変数が、穿刺部位(たとえば、指、腕、耳朶)を表示する場合、穿刺深さは、この採取部位の状態に適合されるように、そして、流体の所望の容量が、したがって、収集されるように設定されることが可能である。これにより、その結果、複数の試料採取部位の自動血液試料採取を可能にする。
【0034】
体液採取システムの加圧領域の幾何学的形状も設定されることが可能である。この場合、幾何学的形状は、採取部位の状態に適合される。体液採取システムの加圧領域の開口の断面は、設定されることが好ましく、その開口を通して穿刺装置は、身体部分の表面に貫通することが可能である。たとえば、穿刺装置が、円形開口を通って身体の表面にガイドされる円錐形状の加圧領域の場合、円形開口の直径は変わる。直径の適切な選択により、円錐形状の加圧領域は、体液の採取のあいだ、身体部分、特に指腹または前腕にきちんとフィットする。開口の直径の変形は、たとえば、アイリス絞りにしたがう。加圧領域の幾何学的形状は、身体部分のためのサポートとして作用する二つの平行ロッド間の間隔を調整することを含む。
【0035】
体液採取システムの別の可能な反応は、少なくとも一つのセンサによって検知される少なくとも一つの変数から、採取位置に関する結果が引出される場合、少なくとも二つの加圧領域の一つの選択である。たとえば、システムは、スライド上の異なる加圧領域の自動変位を引き起こすことが可能であり、それによって、採取部位に適用される選択した加圧領域は、体液採取システムが選択した加圧領域を使用する準備ができている位置に駆動される。
【0036】
体液採取システムに含まれる少なくとも二つの穿刺装置の一つの選択もさらに可能である。したがって、選択した採取部位(たとえば、指、腕)に、そして、選択した採取部位の状態(たとえば、温度)に理想的に適する穿刺装置を選択して、使用することが可能である。
【0037】
本発明の体液採取システムの別の可能な反応は、システムが穿刺するだけでなく、たとえば、身体開口から血液を押圧するか、あるいは、カニューレによってそれを収集することによって、血液を収集することにも使用される場合、採取処置の期間の設定である。採取処置の期間は、体液の十分な容量を収集するように、使用者が身体部分をシステムに、特に加圧領域に適用されるままに意図される時間である。分析に理想的な体液の容量を収集する最適な期間は、たとえば、皮膚の温度に、採取位置に、特にそこの皮膚の厚さに、そして、穿刺深さに左右される。
【0038】
その上、テキストが、少なくとも一つのセンサによって検知される少なくとも一つの変数に基づきシステムの表示装置に表示されることが可能である。このテキストは、たとえば、体液の採取の状態が好ましくない、あるいは、不適切である場合、たとえば、採取部位の皮膚が冷たすぎる場合、あるいは、身体部分が均等に、あるいは、加圧領域に十分な圧力で位置していない場合、あるいは、体液採取システムが作動エラーを有する場合、採取処置を続けるのに備えて使用者を暖める加温を含むことが可能である。たとえば、使用者がシステムに必要とされる情報を入力するように要求されるように、センサで検知される変数に基づき、採取部位の位置、あるいは、状態に関する明白な結果が引出されない場合、使用者メニューを表示することがさらに考えられる。
【0039】
その上、検知した変数に基づき、体液を分析する装置によって使用される評価パラメータを表示、あるいは、設定することが可能である。その結果、たとえば、異なる採取部位(たとえば、指腹または前腕)で採取される体液の異なる組成物は、分析において考慮に入れられる。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、前記体液の採取時に、前記採取部位の領域の前記内部圧力を増大する圧縮ユニットを備える。これは、たとえば、国際公開第01/89383号パンフレットから知られているような圧縮ユニットである。この圧縮ユニットを使用することによって、穿刺部位から血液を絞り出すいわゆる搾取法運動は、簡単で、使用者に便利な方法で手本にされることが可能である。圧縮ユニットは、先行技術の他のプレスオン装置での場合よりも大量の体液を分配するだけでないプレスオンおよび採取処置は、さらに、患者にとってずっと便利である。このことは、第一に、圧縮ユニットが身体部分に、特に指にきちんとフィットするという事実による。加えて、とはいえ、圧縮ユニットにより、きわめて浅い穿刺深さでさえ、十分な量の体液が収集されることが可能であるという事実もある。本発明の別のきわめて重要な利点は、変形可能な材料から作られる加圧領域に圧縮ユニットを使用することによって、異なる形状の身体部分から確実に、かつ、便利に体液を採取することが可能であることである。特に、それゆえ、体液は、異なるサイズの指から容易に、確実に採取されることが可能である。加えて、変形な可能な材料によって、プレスオンされる身体部分の形状の差(指の先対指の側面)を補正することが可能である。このように、毛細血管血液は、特に、利点として、指腹から収集されることが可能である。加えて、他の身体部分、たとえば、腕から、血液、あるいは、間質液を採取することも可能である。圧縮ユニットは、身体部分の圧縮が一次的接触圧力の方向で行われるだけでなく、接触圧力も、圧縮が一次的接触圧力を横断する力成分で行われるように少なくとも部分的に転換されるという効果を有する。流体が採取される身体部分の領域は、このように、横方向に圧縮される。圧縮ユニットによって、身体部分の領域の内部圧力は増大される。増大した内部圧力のこの領域は、圧力が作動する領域に近接し、それは、加圧領域によって囲まれる。穿刺装置は、増大した内部圧力の領域の皮膚を穿刺することが可能であり、体液は、ここから採取されることが可能である。圧縮ユニットは、変形可能な材料から作られる加圧領域を含む。上述の材料は、一方では、使用者にずっと便利な採取処置を行い、他方では、それは、さらに、異なる形状の、あるいは、異なるサイズの身体部分への容易な適合を行う。加圧領域のための材料の例示は、エラストマー、ゴムなどの変形可能なプラスチックである。とはいえ、本発明の体液採取システムにおいて、体液を収集するとき、採取部位の領域の内部圧力を増大する他の圧縮ユニットも考えられる。
【0041】
本発明の体液採取システムにおいて、前記少なくとも一つのセンサは、前記体液採取システムの加圧領域に配置されることが好ましい。加圧領域は、この場合、採取部位に近接するか、あるいは、採取部位を囲み、そのために、センサで検知される変数は、採取部位の位置および状態に関する結果をできるが切り精密にするために、採取部位にできる限り近接して検知される。
【0042】
本発明は、さらにまた、身体部分から体液を採取するシステムと、前記体液の少なくとも一つの特性を分析する装置とを備える総合分析システムに関する。総合分析システムが、採取部位を穿刺して、さらに、体液を収集、かつ、分析するのに使用される場合、高度な自動化があることが利点である。総合分析システムは、使用者側に少量の操作だけを必要とすることが利点である。たとえば、使用者は、加圧領域において圧縮ユニットを押圧するだけであり、分析結果の出力を含むその後の工程すべては、自動的に処理されることが可能である。体液の少なくとも一つの特性を分析する装置は、先行技術で周知である。市販されている装置の例として、アメリカ合衆国、インディアナポリスのロッシュ ディアグノスティクス コーポレーション(Roche Diagnostics Corporation)からアキュチェックプラス(Accu-chek-Plus(登録商標))やアキュチェックアドバンテージ(Accu-chek-Advantage(登録商標))という名称の血糖値分析システムが市場で入手できる。
【0043】
本発明の体液採取システムは、好ましくは指腹または前腕から、血液または間質液を採取するのに使用されることが好ましい。本発明の総合分析システムは、血液または間質液を採取し、前記血液または間質液中のブドウ糖含量を分析するのに使用されることが好ましい。
【0044】
本発明の別の主題は、身体部分から採取部位を介して体液を採取する体液採取システムを構成する方法であって、
A)前記採取部位の位置および状態に従属する少なくとも一つの変数を測定する工程と、
B)前記体液採取システムにおいて、前記測定した変数の値に依存しかつ体液の採取に影響を及ぼす設定を選択する工程とを備える方法である。
【0045】
採取部位の位置および状態に左右される少なくとも一つの変数を測定することによって、かつ、体液の採取に影響を及ぼす設定の結果として生ずる選択によって、体液採取システムは、皮膚が穿刺される前に、採取状態(たとえば、皮膚温度、身体部分の形状、皮膚の厚さ、身体部分の接触圧力)に自動的に、最適に適合されることが可能である。
【0046】
本発明の方法において、温度、電気抵抗、導電率、電流の強さ、電圧、位置、傾斜角、圧力、加速、および光学変数のうち、少なくとも一つの変数が測定されることが好ましい。
【0047】
本発明の方法において、
前記少なくとも一つの穿刺装置をブロックまたは発射し、
前記身体に開口の生成に選択される前記穿刺装置の穿刺深さを設定し、
前記体液採取システムの加圧領域の幾何学的形状を設定し、
前記体液採取システムの加圧領域の、前記線刺装置が身体部分の表面に貫通することができる開口の断面を設定し、
前記体液採取システムが有する少なくとも二つの加圧領域の一つを選択し、
前記体液採取システムに含まれる少なくとも二つの穿刺装置の一つを選択し、
前記採取処置の期間を設定し、
表示装置にテキストを表示し、
前記体液の分析装置によって使用される評価パラメータを表示または設定する
設定のうち少なくとも一つの設定が、前記測定した変数の値の関数として選択されることが好ましい。
【0048】
測定した変数および測定した変数の値の関数としての設定に関して、本発明の体液採取システムに関して上記に行われる供述は、同様に、本発明の方法にも適用する。
【0049】
前記測定した変数の値は、GPSまたはラジオクロック情報を用いて記憶媒体に格納されることも考えられる。したがって、たとえば、測定した値が、位置座標およびクロックタイムと共に格納されることが可能であり、そのために、この情報は、その後の時間に呼び出されることが可能であり、たとえば、統計的評価として使用されることが可能である。
【0050】
本発明の別の主題は、身体部分から体液を採取するシステムを制御するシステムにおけるメニュー項目の選択方法であって、
i)温度、電気抵抗、導電率、電流の強さ、電圧、位置、傾斜角、圧力、加速、および光学変数のうち、少なくとも一つの変数を測定する工程と、
ii)前記測定した変数の値の関数として前記メニュー項目を選択する工程とを備える。
【0051】
このように、使用者は、キーを押圧することなく、これらの変数の一つの感覚的な検知可能な影響によって体液採取システムを制御するメニューから選択を行うことができる。評価した変数を測定するために、本発明の方法の工程A)の測定に使用されるセンサは、同様に、体液採取システムを構成するのに使用されることが可能である。体液採取システムを制御するメニューからメニュー項目を選択する本発明の方法において、傾斜角、位置、あるいは加速は、たとえば、傾斜角センサ、位置センサ、あるいは加速センサを用いて測定することが可能である。使用者は、傾斜角、あるいは、位置決めを選択することが可能であり、使用者が、メニューの明確なメニュー項目に順番に割り当てられる明確な値を測定した変数に与えるように、明確な方向に体液を採取するためにシステムを加速することが可能である。このように、使用者は、迅速に、かつ、都合よく、メニューから選択を行うことが可能である。これにより、たとえば、高効率の総合分析システムを生成することを可能にする。
【0052】
本発明は、図面を参照として以下により詳細に説明されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
図1は、円錐形状の加圧領域1とその中心に配された円形開口2を示す。体液採取のあいだ、加圧領域1は、開口2を囲み円錐形状の加圧領域1の頂部フェースに配置されるリング形状部分3により、対応する身体部分を押圧する。穿刺装置(図示せず)が、身体表面の方へ向って開口2(図面の平面に直交する)を通ってガイドされる。図1に示される本発明の好ましい実施形態において、リング形状部分3は、採取処置の間身体の表面に位置して、採取部位を同心に囲むセンサ4を含む。採取部位の位置および状態に従属する少なくとも一つの変数を検知するセンサがあり、本発明の体液採取システムに、あるいは、上述のシステムを構成する本発明の方法における測定に使用されることが可能である。たとえば、センサ4は、温度、電気抵抗、導電率、電流の強さ、あるいは、電圧を測定するのに使用されることが可能な電極である。これらは、それらが、採取処置のあいだに繰返し生じる圧力負荷を効果的に処理することが可能なように、円錐形状の加圧領域1のらせん状組成に配置される。このようなセンサ4を有する加圧領域1は、たとえば、センサ4を成形ツールにはめ込み、流し込んだプラスチックで封入することにより製造することができる。センサの成形ツールにはめ込まれる面にはプラスチックがないため、加圧領域1のリング形状部分3の頂部フェース上のユーザーがこれらのセンサに自由にアクセスすることが可能である。センサの材料として好ましい材料は、その用途による。たとえばPT100を温度の測定に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本明細書に含まれるセンサによる体液採取システムの加圧領域の概略図である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体部分から、前記身体部分の表面に位置する採取部位を介して、体液を採取するシステムであって、
前記採取部位の位置または状態に従属する少なくとも一つの変数を検知する少なくとも一つのセンサと、
前記少なくとも一つのセンサによって検知された前記少なくとも一つの変数を評価し、前記体液採取システムにおいて、前記検知した変数の値に依存し、前記システムが体液採取の準備をする役割を果たす反応を引き起こす評価ユニットと、
前記採取部位の前記身体に開口を生成する少なくとも一つの穿刺装置と
を備えてなるシステム。
【請求項2】
前記センサが、温度、電気抵抗、導電率、電流の強さ、電圧、位置、傾斜角、圧力、加速、および光学変数のうち、少なくとも一つの変数を検知するセンサであることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記センサが、前記身体部分の表面の採取部位の前記皮膚温度を検知する温度センサであることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記センサが、前記身体部分の表面の採取部位の皮膚の電気抵抗または導電率を検知するセンサであることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記センサが、前記採取部位との接触時、前記システムの位置または傾斜角を検知する位置センサまたは傾斜角センサであることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記センサが、前記システムの加圧領域により前記身体部分の表面の採取部位に加えられる圧力を検知する圧力センサであることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記センサが、前記システムの加圧領域と前記身体部分の表面に位置する前記採取部位の距離を検知する誘導センサ、光学センサ、または容量近接センサであることを特徴とする請求項1または6記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも一つの穿刺装置をブロックまたは発射し、
前記身体に開口の生成に選択される前記穿刺装置の穿刺深さを設定し、
前記体液採取システムの加圧領域の幾何学的形状を設定し、
前記体液採取システムの加圧領域の、前記線刺装置が身体部分の表面に貫通することができる開口の断面を設定し、
前記体液採取システムが有する少なくとも二つの加圧領域の一つを選択し、
前記体液採取システムに含まれる少なくとも二つの穿刺装置の一つを選択し、
前記採取処置の期間を設定し、
表示装置にテキストを表示し、かつ
前記体液の分析装置によって使用される評価パラメータを表示または設定する
反応のうち、前記少なくとも一つのセンサによって検知された少なくとも一つの変数を評価し、少なくとも一つの検知した変数の値に依存する、少なくとも一つの反応を引き起こす評価ユニットを備えてなる
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載のシステム。
【請求項9】
前記身体部分が、指腹または前腕であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載のシステム。
【請求項10】
前記体液の採取時に、前記採取部位の領域の前記内部圧力を増大する圧縮ユニットを備えることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも一つのセンサが、前記体液採取システムの加圧領域に配置されることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載のシステム。
【請求項12】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11記載の身体部分から体液を採取するシステムと、体液の少なくとも一つの特性を分析する装置とを備えてなる総合分析システム。
【請求項13】
血液または間質液を採取する請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11記載のシステムの用途。
【請求項14】
血液または間質液を採取し、前記血液または間質液中のブドウ糖含量を分析する請求項12記載の総合分析システムの用途。
【請求項15】
身体部分から採取部位を介して体液を採取する体液採取システムを構成する方法であって、
A)前記採取部位の位置および状態に従属する少なくとも一つの変数を測定する工程と、
B)前記体液採取システムにおいて、前記測定した変数の値に依存しかつ体液の採取に影響を及ぼす設定を選択する工程と
を含んでなる方法。
【請求項16】
温度、電気抵抗、導電率、電流の強さ、電圧、位置、傾斜角、圧力、加速、および光学変数のうち、少なくとも一つの変数が測定されることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも一つの穿刺装置をブロックまたは発射し、
前記身体に開口の生成に選択される前記穿刺装置の穿刺深さを設定し、
前記体液採取システムの加圧領域の幾何学的形状を設定し、
前記体液採取システムの加圧領域の、前記線刺装置が身体部分の表面に貫通することができる開口の断面を設定し、
前記体液採取システムが有する少なくとも二つの加圧領域の一つを選択し、
前記体液採取システムに含まれる少なくとも二つの穿刺装置の一つを選択し、
前記採取処置の期間を設定し、
表示装置にテキストを表示し、
前記体液の分析装置によって使用される評価パラメータを表示または設定する
設定のうち、少なくとも一つの設定が、前記測定した変数の値の関数として選択されることを特徴とする請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
前記測定した変数の値が、GPSまたはラジオクロック情報を用いて記憶媒体に格納されることを特徴とする請求項15、16または17記載の方法。
【請求項19】
身体部分から体液を採取するシステムを制御するシステムにおけるメニュー項目の選択方法であって、
i)温度、電気抵抗、導電率、電流の強さ、電圧、位置、傾斜角、圧力、加速、および光学変数のうち、少なくとも一つの変数を測定する工程と、
ii)前記測定した変数の値の関数として前記メニュー項目を選択する工程と
を含む選択方法。

【公表番号】特表2009−513177(P2009−513177A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519824(P2006−519824)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007409
【国際公開番号】WO2005/013824
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】