説明

体液検査用ロータ

【課題】血液の取り扱いと希釈液の取り扱いを簡便にしながら、外部への漏れをなくした、血液成分計測可能な、ロータを構成する。
【解決手段】
ロータの略中央に配置され外部から供給された血液を一時的に貯留する血液貯留部、前記血液貯留部に隣接して形成され、希釈液リザーバを収容した希釈液貯留部、前記血液貯留部と前記希釈液貯留部間を摺動する蓋部とを有し、
血液貯留部に血液を注入した後、前記蓋部を血液貯留部方向へ摺動させることで、血液貯留部を密閉すると共に、前記蓋部が、希釈液貯留部内の希釈液リザーバを破壊することで、希釈液貯留部内に希釈液を放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液検査用ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
体液成分計測において、複数の成分を連続して計測する為の構成としては、複数の試薬を配置し、個々の試薬に、定量的に検体を分注する構成を要するが、これを自動化した構成も提案されている。
例えば、分注ピペットを複数の試薬部のそれぞれに、移動注入する構成の他、遠心分離によって、血球を分離した後、希釈液との混合、定量、試薬との混合といった工程を具えた円盤状のロータによる自動血液検査装置が提案されている。
【0003】
希釈液の利用は、少量の検体で、多項目の血液成分を検査する為には有益であるが、自動化した血液分析中で保存性を考慮した構成を確保するためには、様々な工夫が必要となる。
特表平7−503794号公報には、装置に装着される際、上下の押圧力で、内部の希釈液リザーバを破壊する構成が記載されている。
【0004】
しかし、上記技術は、測定機内部に希釈液リザーバを破壊するための動力を備えねばならず、機器のコスト高につながる。また、動作部位を増やすことによるメンテナンス性も煩雑にならざるを得ず、また、大型になりやすい傾向にある。
他に使用者が、確実に使用できているかどうかの確認もあやふやであるので、全自動的な安心感は得られるが、ユーザーの使用感を低減することも考えられる。
誤って、希釈液リザーバが輸送時に動作し、破壊してしまうこともあわせて懸念される。
【0005】
【特許文献1】特表平7−503794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この様なロータの装着に連動して希釈液の放出が行われる構成は、保存性が良く、用時限定の利用形態として好ましいものの、ロータ内部で上下に摺動する摺動部を形成するため隙間の発生による外部への漏れ等を防止する策を講じなければならず、上下に生じる機構は複雑化し、コスト上昇の一因となる。
又、この様なロータへの血液の供給は、外部へ漏れないように、十分な配慮がされる必要があると共に、回転の際の飛び散り等は、当然阻止される構成が要求される。
一方、血液をロータに供給するために特殊なピペットを利用するような血液を移送する際、特殊な器具、技術を使用する構成は、回避されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑み本発明は、よりシンプルなロータでありながら、用時、所定量の希釈液の
確保を可能とする構成を提供する。本発明は、回転体の中央に血液を供給し一時的に貯留する血液貯留部及び希釈液貯留部を隣接して配置し、両貯留部間を蓋部が移動することで、血液を密閉し、希釈液をリザーバから開放する。
この蓋はさらに本ロータの輸送時に際し、希釈液リザーバが誤動作しないようにストッパとなる機構も有しており、適正使用時まで誤動作が無いように工夫されている。
具体的には、蓋部の摺動に際し、初期固定位置での蓋素材によるばね形状を作成し、このばねの反発力がある一定量以上の荷重または力に対し移動不可能なように設定した後、この力以上における荷重を使用時にかけることにより、摺動を可能にするという方法による。
ある一定上の力とはすなわち、輸送時にかかると想定される一定力を意味する。
そしてこの様な構成は、ロータの厚みを抑えて、簡素でコンパクトなサイズのロータを形成することができる。

【発明の効果】
【0008】
本発明は、希釈液構成を具えた体液測定用のロータ構成をより簡易化するとともに、より小型化でき、製造が比較的容易になるほか、その取り扱いも、血液の供給の際の漏れを抑えながら単に蓋部をスライドさせるだけで、利用可能である等、操作が簡単になり、取り扱いが容易となる。これは、血液という特殊な、または危険な検体試料を取り扱うという意識を向上させ、作業中の血液感染などの防止を意識的に行わせる点で有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、 ロータの略中央に配置され外部から供給された血液を一時的に貯留する血液貯留部、前記血液貯留部に隣接して形成され、希釈液リザーバを収容した希釈液貯留部、前記血液貯留部と前記希釈液貯留部間を摺動する蓋部とを有し、血液貯留部に血液を注入した後、前記蓋部を血液貯留部方向へ摺動させることで、血液貯留部を密閉すると共に、前記蓋部が、希釈液貯留部内の希釈液リザーバの一部又は全部を破壊することで、希釈液貯留部内に希釈液を放出する体液検査用ロータであればよく、血液を入れ、蓋をスライドさせると、希釈液リザーバの一部又は全部が破れる、穿孔される、切られる等して破壊され、希釈液が外部へ放出される構成であれば、如何なる構成であっても良いが、好ましくは、リザーバの破壊面を、ロータ底面方向にすることで、液の浸出をロータ底面とリザーバの間隙とし、回転時、希釈液が、希釈液貯留部底面を這うようにして流路へ移動する構成が希釈液の飛び散りが無い等の点で好ましい。
【実施例1】
【0010】
次に図1、図2及び図3を参照して本発明の一実施例を説明する。
図1(a)で示す実施例のX−X’の断面図を図2に示す。
図1において、01は、基板であり、ポリエステル、PMMA、PC、PS、PET、PDMS、ガラス等の好ましくは透光性部材によって形成されている。
基板01には、血液貯留部等を形成するために凹部や連結流路、希釈液貯留部07、ガイド溝06、06’等々が形成されている。
凹状の希釈液貯留部07には、支持棚011を介して傾斜した面状流路016及び流路A017が形成されている。
血液貯留部08から延びる面状流路018は、流路B019に接続する。
【0011】
02は、摺動蓋部であり、両側に係止用突起対A024-025及び係止用突起対B024'-025'を設けたT字型の係止用支持部A023、及び係止用支持部B023'が形成されている。
係止用支持部A023、は、その両端に配置された係止用突起対A024-025の個々の突起において、左右平面方向に弾力性を備えるような状態で構成されていればよい。
係止用支持部B023’も係止用支持部A023、と同様に、その両端に配置された係止用突起対B024’-025’の個々の突起において、左右平面方向に弾力性を備えるような状態で構成されていればよい。尚、係止用突起対A024-025のそれぞれの突起024,025の形状、大きさは、異なる方が好ましい。これは、摺動蓋部02の摺動方向に対する逆止効果を生むことを可能としている。係止用突起対B024’-025’のそれぞれの突起024‘、025’も同様であり、これらと係合関係をもつ凹部についても同様に異なることが摺動用蓋部02の滑らかな摺動を得るために好ましい。
【0012】
摺動蓋部02の裏面には、図2(a)で示すように摺動蓋部02の摺動に伴って、希釈液リザーバ03を横方向に移動させる為の押圧用突起021が設けられている。
又、蓋部裏面には、押圧用突起021に対し、希釈液リザーバ03の上部を挟持するよう挟持用凸部022が形成されている。
摺動蓋部02の表面には、指で動かしやすいように、図3で示す様な複数の凹凸02Aが設けられている。
03は、希釈液リザーバであり、内部に生理食塩水等の体液希釈可能な希釈液05が封入されている。
希釈液リザーバ03は、周縁に鍔部032を形成した硬質性のカップ部材033の開口面に、鋭角状の突起の押圧により穿刺破壊される程度の強度を有するシート031が貼られている。
04は、シート部材であって、外部から基板内を光学的に計測が可能な程度に透光性を有し、ポリアクリル、PET、PC、PS、PDMS、ガラス等の透明で、硬質性のシートが両面テープを介して貼着結合されている。シート部材04は、摺動蓋部02の周囲を覆う様に基板01と貼着結合しているが、その周囲境界部分を点線で示した。
両面テープの粘着剤としては、例えば、住友スリーエム社製の4591HHや9483、日東電工社製のHJ-3160w等が好適に利用できる。
【0013】
図1で示す06は、ガイド溝であり、摺動蓋部02に設けられた係止用突起024は係止用凹部061に係止し、係止用突起025は係止用凹部063に同時に係止するような係止用の凹部が形成されている。
更にガイド溝06には、摺動蓋部02がスライドした後の係止用突起024と025が係止するための係止用凹部062と064が形成されている。
ガイド溝06’も、ガイド溝06と同様の構成を有し、摺動蓋部02に設けられた係止用突起024’と係止用凹部061’及び係止用突起025’と係止用凹部063’が係合し、スライド後の摺動用蓋部02においては、係止用突起024’と係止用凹部062’及び係止用突起025’と係止用凹部064’がそれぞれ係合する。
【0014】
希釈液貯留部の底部には図2で示すように穿刺用突起012、支持用突起013及び、使用前の希釈液リザーバを支持する為の支持棚011が形成されている。
側壁014で囲まれた血液保持槽015は、基板上に必要量貯留可能な容積を有する様に凹状に形成され、血液保持槽015については、血液貯留部内に収まるように、側壁014が形成されており、2重構造になっている。
08は、血液貯留部であり、内部に側壁を有し、上部先端は、中心方向へテーパが設けられている。
血液貯留部08は、血液を供給するには十分な面積の開口がされており、特に血液供給器具を選ぶ必要が無く、汎用のピペットが十分に利用できる形状となっている
【0015】
次に動作を図1,図2を参照して説明する。
図1(a)、図2(a)において、生体皮膚から採取した血液を血液保持槽015にピペット類などを使って注入する。その際、おおよそ、血液保持槽015から溢れない程度の血液を供給する。
血液保持槽015に供給された血液BSは、その貯留槽表面において、側壁014の頂天部の鋭角化による表面張力の増強で、保持力が増しており、溢れ難い状態が形成され、たとえ溢れても、側壁014と、血液貯留部側面との隙間(1mm〜3mm)により溢れた血液が保持され、外部へ漏れないような構成となっている。
血液の供給が終了した後、図1(b)で示すように摺動蓋部02を、血液保持槽015方向へ、スライドさせる。
【0016】
スライドは、摺動用蓋部02に加えられた摺動力により係止用突起対A024-025と係止用凹部061、063との係合及び係止用突起対B024’-025’と係止用凹部061’、063’との係合が解除されたことで生じる。
摺動前、希釈液リザーバ03は、その上部が図2(a)で示す押圧用突起021と挟持用凸部022に挟まれ、希釈液リザーバの下部の縁部が、支持棚011に、希釈液リザーバの鍔部032が支持用突起013にそれぞれ置かれることで、位置的に固定されている。
摺動時、押圧用突起021の側面傾斜部は希釈液リザーバ03の上部033を蓋の摺動方向に押す。
希釈液リザーバ03は、押圧用突起021により押圧されることで、移動すると共に、支持棚011に置かれた希釈液リザーバ鍔部も移動し、支持棚011から外れ図2(b)の様に、鍔部が希釈液貯留部の底部に落ち、希釈液貯留部07の側壁に接触する。
【0017】
更に摺動蓋部02が移動すると、押圧用突起021は、更に希釈液リザーバ03の上部と、接触し、次第に希釈液リザーバ03を下方向に押圧していく。
この下方向への押圧により、希釈液リザーバ03の下部のシート031は、穿刺用突起012に接触穿刺し、更に支持用突起013も、シート031を破り、希釈液リザーバ03の下部を、希釈液貯留部07の底面に押しつける。
それぞれの係止が解除された後、溝06,06’を蓋部の係止用突起対が移動した結果、溝06,06’の側面によって内側方向へ歪曲していた係止用支持体023の係止用突起対024と025は、係止用凹部062,064と、図1(b)で示すように係止した状態となる。
【0018】
この状態は、血液保持槽015を摺動用蓋02が覆う様にして密閉し、血液の外部への飛び散り等を防ぐ状態を形成する。
希釈液リザーバ03のシート031が破れているため、内部の希釈液05は、外部に滲出するが、基板01が中心点Oを中心に回転しているため、遠心力が希釈液に働き、図2(c)で示すように基板の表面を這うように希釈液KSが移動する。血液BTも同様に、面状流路018を這うように移動する。
尚、押圧用突起021に押された希釈液リザーバ03は、その内側に、穿刺用突起012と、支持用突起013が入り込み、それぞれの突起が希釈液リザーバ03内部の対向する側面に接触する。又、希釈液リザーバ03の鍔部は、希釈液貯留部07の側壁で形成されるストッパに当たることにより、押圧用突起021の傾斜部分には、希釈液リザーバ03の頭部縁部と接触する部分で、希釈液リザーバ03を下方向へ押し下げる力を発生させるため、希釈液リザーバ03は、希釈液貯留部07の内部で固定される。
【0019】
図2(c)で示すように希釈液貯留部07の希釈液KSと、血液保持槽015の血液BTは、ロータの回転により外周方向の、面状流路016及び面状流路018方向へそれぞれ這うようにして移動していき、最終的に試薬反応槽に定量的に到達するが、そこまでの経路の具体的な一例を図3に点線で示し説明する。図3は、シート部材04が基板01上を覆っているため、基板01上の流路、血球分離部、等は点線で示している。
【0020】
図3は、血液に遠心分離を行い、血球を分離して血漿成分を抽出、希釈液と混合した後、複数の試薬槽へ供給して試薬と発色反応を行い、外部より吸光度の測定、測色を行う一体的に実装したロータタイプの血液検査ユニットの正面図である。
図3において、018は、面状流路であり、血液保持槽015の一面を形成するものであって、後段の流路B019と接続する。
面状流路018は、傾斜をもって形成された湾曲状の面導通路であって、遠心力によりその面状の部分を血液が這うように移動するような状態を形成している。
11は、血液分配路であり、複数の血球分離部へ血液を供給する為の部分であり、流路B019を入力として接続する。
12は、血球分離部であり、血液分配路11と接続し、回転により血球と血漿の比重の相違を利用して分離を行う。
13は、流路Cであり、中心方向に屈曲部が形成されており、血球分離部12と、混合部14を接続する。
14は、混合部であり、血液と希釈液の混合を行うための部分であって、 両者が注入された後、変則的又は一定の回転によって混合を行う。
【0021】
15は、流路Eであり、混合部14と、分配流路16とを接続する。
16は、分配流路であり、外周方向に毛管束流路20を介した試薬反応槽19が形成されている。
17は、希釈液定量部であり、希釈液をその容積量によって定量するための部分であって、混合槽14と、中心方向に屈曲部を形成した流路D18により接続されている。
19は、試薬反応槽であり、円柱状の凹部で形成され、内部に希釈血液成分と接触し、発色反応を起こす試薬が、収容されている。
20は定量流路であり、より口径の小さい流路が1乃至複数本設けられており、試薬反応槽へ、供給する希釈血液成分の定量化を図るためのものである。
C1,C2は、測定器本体に、図1で示すロータを装着させる際の、装着口であり、表裏を貫通している。
【0022】
次に図1、図2及び図3で示した実施例の動作を説明する。
血液保持槽015に血液を注入する。注入は、スポイト、ピペット等で側壁014の頂上まで行われる。
血液が血液保持槽015内に注入された後、摺動用蓋部02を指先でスライドさせる。
上述した図1の動作により、摺動用蓋部02が摺動すると、希釈液リザーバ03から希釈液05が希釈液貯留部07内に滲出する。
基板01を測定器に装着口を介して装着した後、基板01を回転させる。
血液は、遠心力により流路B019を経て、図3で示す血液分配路11で分配されながら、血球分離部12で、遠心力により血球が分離除去され、血漿成分が、流路C 13を介して混合部14へ供給される。
希釈液リザーバ03から放出した希釈液は、流路017を介して図3で示す希釈液定量部17へ供給され、定量化された後、流路D18を介して混合部14へ供給される。
混合部14では、ロータの回転方向を変えることで、希釈液と血漿が混合され、混合血漿が形成される。
【0023】
混合が十分された後、混合血漿は、流路E15を介して分配流路16へ供給される。
分配流路16へ供給された混合液は、個々の定量流路20に毛管力によって充填される。
充填後、回転数を上げることで遠心力を増加させ、試薬反応槽19へ、定量混合液を供給する。
試薬反応槽19では、内部で試薬と混合液が反応して発色する。この発色値を吸光度等の間接的手法によって、計測し、体液成分を測定する。
【0024】
次に他の実施例について図4を参照して詳細に説明する。
図4で示す実施例は、図2で示す実施例と、摺動蓋部の形状及び希釈液リザーバの形状について相違する以外は、同一の構成である。
202は、摺動用蓋部であり、裏面に、希釈液リザーバ205の凸部204が収容される程度の凹部203が形成されている。
希釈液リザーバ205は、摺動蓋による押圧によっても変形しない程度の硬質性部材よりなるが、凸部204もリザーバ205と一体的に形成されていることが好ましい。
その他の構成は、図2と同様の構成であり、説明は省略した。
【0025】
次に、図4で示す実施例の動作について説明する。
図4(a)で示すように摺動用蓋202を血液保持槽015方向へ移動させると、摺動用蓋部202の凹部203の内面が、凸部204を血液保持槽015方向へ移動させ、支持棚011に載せられていた希釈液リザーバ03の縁部が支持棚011から外れ、図4(b)で示すように傾く。
更に、摺動用蓋202が移動することで、摺動用蓋202の底面が希釈液リザーバの凸部204を上部から下方向へ押す状態となり、シート031は、穿刺用突起012及び支持用突起013により穿刺破壊される。
そして、摺動用蓋202の底面は、希釈液リザーバ205の凸部204を押すような状態となり、図4(c)で示すような係止関係が形成されることで、図2で示した実施例よりも希釈液リザーバを強く固定する。
但し、固定されても、希釈液貯留部07と、希釈液リザーバ03の底面のわずかな隙間から、希釈液が流れ出ていき、遠心力によって、希釈液は、希釈液定量部へ這うように移動する。従って、希釈液リザーバ03の鍔部には、希釈液の外部への滲出を促すため、外方向に向かう凹凸が形成されていても良い。
【0026】
次に遠心力によって、希釈液を放出する構成を具えた他の実施例について図5を参照して詳細に説明する。
301は、摺動蓋部であり、図1で示す構成と同様のものが例示される。302は、カバー部であり、比較的薄いプラスチックシートが好適に使用され、外部から光学的に成分計測をする場合は、一部又は全部に透光性を有することがこのましい。
摺動蓋部301の両側面には、他の実施例と同様、係止用支持部310が形成されている。 303は、基板であり、他の実施例と同様、硬質性プラスチック材が利用される。
基板303に、凹状の溝、槽を設けることで、血球分離室、各種流路等を設ける。
304は、開口部であり、カバー部302に設けられ、直下には、血液貯留部305が形成される。
305は、血液貯留部であり、外部から供給された血液を一時的に貯留するための場所で、図2、図3の実施例と同様の形状構成を有する。
306は、リザーバであり、希釈液収容部306Kに対し、下方向に、鋭角状の穿刺具によって、刺通破壊可能な膜313が希釈液収容部内を密閉するように縁部を均一に接合することで、内部に希釈液を保存可能に収容している。
リザーバ306の一部側面は、下方向に突出し、リザーバ306を摺動及び回動させる際用いられる支持部306Sを有する
307は、穿刺具であり、硬質性を有するプラスチック、金属、木等で構成されるが、基板と同じ材料により、一体的に形成された鋭角体であってもよい。
308は、摺動蓋部301を摺動させ、係止させる際の、ガイド溝である。
309は、リザーバ306を摺動させ、回動させるために用いられるガイド用凸部であり、リザーバの側面に設けられた凸部312に移動路を確定させ、リザーバ306の移動を安定化させるためのものである。
314は、ストッパであり、逆Y字状の部材、弾力性を備えている部分は、板バネ機能を有し。上部を押圧凸部とすることで、上下に弾力性を有する様な構成としている。
【0027】
次に動作について説明する。
使用前、図5(a)で示すように摺動蓋部301は、リザーバ306側に固定配置されている。固定は、図1(a)で示すように、摺動係止部310がガイド溝308上で係止した状態により形成されている。
摺動蓋部301により、ストッパ314は、下方向に押圧されるため、内部のリザーバ306を下方向へ押圧し、固定する。
使用時、体液Bを開口部304から貯留部305へピペット等で供給する。
摺動蓋部301を摺動させ、図5(b)で示すように開口部304に蓋をしたような状態を形成する。
ストッパ314は、摺動蓋部301の押圧力から開放されるため、リザーバ306は、ガイド用凸部309上を摺動可能状態になる。
基板303を、回転装置に装着し、中心軸Oを中心に回転させる。
リザーバ306は、遠心力により、外方向に移動しようとし、ガイド用凸部314の縁を、リザーバ306に設けた凸部312が移動することで図5(b)の矢印方向に摺動する。
リザーバ306が、ガイド用凸部309の端まで到達すると、リザーバ306の支持部306Sは、基板303に設けた段差311に衝突し、その部分を中心に回動しようとする。
ガイド用凸部309の端まできた状態で、リザーバ306が回動自在となっていることから、図5(c)で示すようにリザーバ306は、段差311を中心に回動する。この回動により、膜313は、穿刺部314によって、穿刺破壊され、希釈液Kは、外部へ流出しKA、各定量部へ、遠心力などにより移動する。
血液Bも、同様に外部へ流出しBA、定量室等へ移動する。
以上の動作によれば、希釈液リザーバは、遠心力のみで破壊され、流出移動可能状態となる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、血液検査時における血液及び希釈液の取り扱いが簡便で、しかも、希釈液は予め収容しておけば良い等、一つの装置で、簡単な作業で、体液成分計測を、行うことを可能とし、だれでもが取り扱える簡易な、血液、希釈液供給構成を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例を示す図。
【図2】本発明の一実施例を説明するための図。
【図3】本発明の一実施例を説明するための図。
【図4】本発明の他の実施例を説明するための図。
【図5】本発明の他の実施例を示す図。
【符号の説明】
【0030】
01 基板
02 摺動蓋部
03 希釈液リザーバ
04 シート部材
05 希釈液
06、06’ 摺動用溝
07 希釈液貯留部
08 血液貯留部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの略中央に配置され、希釈液リザーバを収容した希釈液貯留部と、前記希釈液貯留部の上部に配置され、摺動する蓋部とを有し、前記希釈リザーバの希釈液開放部が下側を向いている容器を、前記蓋部を摺動させることで、希釈液リザーバを破壊する体液検査用ロータ。
【請求項2】
ロータの略中央に配置され、希釈液リザーバを収容した希釈液貯留部と、前記希釈リザーバの希釈液開放部が下側を向いている容器を有し、前記容器が遠心力によりロータ略中央から遠心方向外側に向かって移動することにより、希釈液リザーバを破壊する体液検査用ロータ。
【請求項3】
ロータの略中央に配置され外部から供給された血液を一時的に貯留する血液貯留部、前記血液貯留部に隣接して形成され、希釈液リザーバを収容した希釈液貯留部、前記血液貯留部と前記希釈液貯留部間を摺動する蓋部とを有し、
血液貯留部に血液を注入した後、前記蓋部を血液貯留部方向へ摺動させることで、希釈液リザーバを破壊する体液検査用ロータ。
【請求項4】
前記希釈液貯留部は、前記希釈液リザーバの一部を破壊する為の穿刺用突起、及び前記穿刺用突起に接触しない程度の高さで前記希釈液リザーバの縁部を一時的に置いて保持することが可能な据置部を有し、前記蓋部の裏面には、前記蓋部が摺動する際、前記希釈液リザーバを摺動方向へ移動させる為の移動用凸部と、前記移動用凸部により前記希釈液リザーバが、移動により前記据置部から外れて、前記穿刺用突起に接触した際、前記穿刺用突起が前記希釈液リザーバを穿刺破壊する様な力を加える為の加圧用突起を具えている請求項1及び3に記載の体液検査用ロータ。
【請求項5】
前記希釈液リザーバには、前記蓋部に設けられた凹部に嵌るような凸部が設けられており、前記蓋部の摺動時に、前記希釈液リザーバが、凸部に加えられる力により移動して、前記据置部から外れ、前記穿刺用突起に前記希釈液リザーバが接触すると共に、前記凸部は、凹部からも外れながら、蓋部の底面方向により、希釈液リザーバと穿刺用突起方向へ押圧して希釈液リザーバを穿刺破壊し、希釈液を外部へ放出する請求項1及び3に記載の体液検査用ロータ。
【請求項6】
希釈液貯留部、血液貯留部と、次への処理部は、勾配を設けた移動領域が形成されている請求項1に記載の体液検査用ロータ。
【請求項7】
摺動する蓋が、血液または、希釈液の漏洩を防ぐような機構を伴った、請求項1及び3に記載の体液検査用ロータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−343206(P2006−343206A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168885(P2005−168885)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000126757)株式会社アドバンス (60)
【Fターム(参考)】