説明

体温計及び体温測定システム

【課題】 貼り付け型の体温計において、高精度な体温測定を実現する。
【解決手段】 アンテナ部114と処理部115と貼り付け部112とを備える体温計110であって、処理部115は、アンテナ部114における誘導起電力の発生に伴って起動される電源回路と、P型とN型の2種類の半導体が結合され、該2種類の半導体の結合部に電流を流した場合のバンドギャップ電圧を検出する半導体温度センサが、2個以上並列に接続された検出手段と、前記検出手段により検出されるバンドギャップ電圧を校正するための校正データを記憶する記憶手段と、前記検出されるバンドギャップ電圧を、所定のレンジのバンドギャップ電圧に切り替える切替手段と、を備え、前記電源回路の起動に伴って、前記検出手段により検出され、所定のレンジに切り替えられたバンドギャップ電圧を、前記校正データとともにアンテナ部114を介して送信することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の体温を測定する測定技術に関するものである。特に、測定レンジが切り替わり、それに応じて温度分解能を変化させ、体温の測定レンジである32〜42℃において優れた測定精度を実現する体温の測定技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、病院等では、定期的に患者の体温を測定し、測定結果の管理を行っている。一般に、体温の測定に際しては、体温計を被検者の測定部位に装着し、測定が完了するまでの一定時間、静止した状態を維持させる。また、測定が完了すると、測定者が測定結果を確認し記録するといった作業を行う。
【0003】
しかしながら、被検者が幼児や重病の患者の場合、体温計を測定部位に装着させつづけることは困難であり、正確な体温測定を行うことは容易ではない。また、測定結果を確認し記録する作業は、測定者にとって負荷が高く、測定者の手を煩わせることなく記録できることが望ましい。
【0004】
これに対して、例えば、下記特許文献1では、アンテナを備える貼り付け型の体温計が提案されている。当該特許文献1によれば、体温計がRF−IDリーダ/ライタより電力供給を受けて作動する構成となっているため、体温計に電源を搭載させる必要がなく、体温計の小型・軽量化を実現することができる。この結果、被検者の測定部位に長時間貼り付けておくことが可能となっている。
【0005】
また、測定結果は、体温計が貼り付けられた測定部位にRF−IDリーダ/ライタを近づけるだけで読み取ることができるため、測定者の確認・記録作業の負荷を大幅に軽減させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−270051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の体温計の場合、温度センサとして、サーミスタが用いられる構成となっている。一般に、サーミスタは小型・軽量かつ安価であるといった利点がある反面、温度特性が非線形であり、経年変化が生じやすく、かつ、ノイズの影響を受けやすいといった欠点がある。このため、測定精度には限界があり、より高精度な体温測定(例えば、±0.05℃程度の精度が求められる場合の体温測定)を実現するためには、高い測定精度を有する温度センサを適用することが望ましい。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、アンテナを備える貼り付け型の体温計において、高精度な体温測定を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係る体温計は以下のような構成を備える。即ち、
アンテナ部と、処理部と、該処理部を被検者の体表面に貼り付けるための貼り付け部とを備える体温計であって、
前記処理部は、
前記アンテナ部に接続され、該アンテナ部における誘導起電力の発生に伴って起動される電源回路と、
P型とN型の2種類の半導体が結合され、該2種類の半導体の結合部に電流を流した場合のバンドギャップ電圧を検出する半導体温度センサが、2個以上並列に接続された検出手段と、
前記検出手段により検出されるバンドギャップ電圧を校正するための校正データを記憶する記憶手段と、
前記検出手段により検出されるバンドギャップ電圧を、所定のレンジのバンドギャップ電圧に切り替える切替手段と、を備え、
前記電源回路の起動に伴って、前記検出手段により検出され、前記所定のレンジに切り替えられたバンドギャップ電圧を、前記校正データとともに、前記アンテナ部を介して送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アンテナを備える貼り付け型の体温計において、特に、0.01℃の温度分解能による体温測定を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態における体温計110とデータ読み取り装置101とを備える体温測定システム100の外観構成を示す図である。
【図2】アンテナ114と処理部115とを備える体温タグ113の機能構成を示す図である。
【図3】データ読み取り装置101の機能構成を示す図である。
【図4】体温測定システム100における体温測定処理の流れを示す図である。
【図5】半導体温度センサの特性を示す図である。
【図6】センサ部211の回路構成を示す図である。
【図7】回路部212の回路構成を示す図である。
【図8】過昇防止部201の回路構成を示す図である。
【図9】体温計110の製造工程を示した図である。
【図10】信号処理部304における体温データ算出処理の内容を説明するための図である。
【図11】本発明の第2の実施形態における体温計1110とデータ読み取り装置1101とを備える体温測定システム1100の外観構成を示す図である。
【図12】体温計1110の測定部1140を被検者1150の腋下に装着した様子を示す図である。
【図13】体温計1110の製造工程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
はじめに、本発明の各実施形態の概要について説明する。以下の各実施形態において説明する体温計は、温度センサとして、半導体温度センサ(P型半導体とN型半導体との結合部において、温度に比例して生じるバンドギャップ電圧を検出するセンサ)を用いることを特徴とする。
【0013】
当該半導体温度センサは、温度特性における線形性が高いうえ、経時変化に強く、かつノイズの影響を受けにくいといった特性があり、高精度な体温測定に適している。
【0014】
しかしながら、上記特許文献1において適用されたサーミスタを、単純に半導体温度センサに置き換えただけで、0.01℃という高精度な温度分解能の体温測定を実現することはできず、適用に際しては体温測定の精度に影響を及ぼす各種要因を排除することが重要となってくる。
【0015】
そこで、以下に説明する各実施形態では、アンテナを備える貼り付け型の体温計において当該半導体温度センサを含む無線タグ(RF−ID機能を備えるタグ)を適用するにあたり、体温測定の精度に影響を及ぼす各種要因を排除することで、所望の精度を実現することとした。以下、本発明の各実施形態の詳細について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の各実施形態に限定されるものではなく、種々の変形例が採用されうるものとする。
【0016】
1.体温測定システムの外観構成
図1は、本発明の第1の実施形態における、半導体温度センサを含む無線タグ(RF−ID)が配された体温計(アンテナを備える貼り付け型の体温計)110と、測定者によって携帯可能なデータ読み取り装置(携帯装置)101とを備える体温測定システム100の外観構成を示す図である。
【0017】
図1に示すように、体温計110は、表面のフィルム111と裏面のフィルム112(半透過性で、厚さは100μm程度)との間に、無線タグである体温タグ113が挟まれて固定された構成となっている。
【0018】
表面のフィルム111及び裏面のフィルム112としては、ポリエーテルウレタンやポリエステルウレタンなどのウレタン系ポリマー、ポリエーテルポリアミドブロックポリマーなどのアミド系ポリマー、ポリアクリレートなどのアクリル系ポリマー、ポリエチレンやポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系ポリマー、ポリエーテルポリエステルなどのポリエステル系ポリマーなどの材料から得ることができる。
【0019】
また、裏面のフィルム112は皮膚面への貼り付け時にムレや白化などを生じないようにするために、水蒸気透過性を有する材質から選択することが好ましく、例えばウレタン系やアミド系のフィルムを用いることが好適である。なお、表面のフィルム111、裏面のフィルム112は上記材料のうちの何れか一種からなるものであってもよいし、任意の材料からなるフィルムを複数枚積層した積層フィルムであってもよい。
【0020】
裏面のフィルム112は皮膚面に貼付した際に、違和感を生じないようにするために、その厚みを10〜100μm、好ましくは20〜40μm程度にすることがよい。また、皮膚面に貼り付けした際の皮膚追従性を良好にするためには、引張強度を100〜900kg/cm、100%モジュラスを10〜100kg/cm程度に調整することが好ましい。この範囲に調整した裏面のフィルム112を用いると、動きの大きい皮膚面に貼付した際に効果的である。
【0021】
また、上記裏面のフィルム112として、無孔フィルムだけでなく、水蒸気透過性であって非透水性である多孔性フィルムを用いることも、貼付中のムレの防止の点から効果的である。このようなフィルムの場合には、材質には特に制限はされず、公知の多孔化技術を施すことによって簡単に得ることができる。無孔性フィルムの場合にはフィルム厚が大きくなるほど水蒸気透過性は低下する傾向が顕著に現れるが、多孔性フィルムの場合には厚みに比例して水蒸気透過性の低下が顕著に現れないので有用である。
【0022】
裏面のフィルム112には、粘着剤が塗布されており、体温計110を、被検者の体表面の適所の測定部位に直接、貼り付けることができるように構成されている。粘着剤は、通常の医療用グレードとして用いられるものであればいずれを用いてもよく、例えばアクリル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、天然ゴム又は合成ゴム系粘着剤、医用高分子を主成分とする溶剤系、水系、ホットメルト系、ドライブレンド系の粘着剤があげられる。ただし放射線滅菌特に強度のガンマー線照射滅菌が必要な場合にはアクリル系粘着剤やポリウレタン系粘着剤の使用は避けた方が望ましい。これらは放射線照射による粘着力の低下を招くおそれがあるからである。
【0023】
また、裏面のフィルム112よりも表面のフィルム111の面積が大きい場合には、被検者の測定部位に貼り付けられるように貼り付け領域が残されていて、その領域には粘着剤が設けられ、この粘着剤は、通常の医療用グレードとして用いられるものであればいずれを用いてもよく、例えばアクリル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、天然ゴム又は合成ゴム系粘着剤、医用高分子を主成分とする溶剤系、水系、ホットメルト系、ドライブレンド系の粘着剤があげられる。ただし放射線滅菌特に強度のガンマー線照射滅菌が必要な場合にはアクリル系粘着剤やポリウレタン系粘着剤の使用は避けた方が望ましい。これらは放射線照射による粘着力の低下を招くおそれがあるからである。
【0024】
また、表面のフィルム111と裏面のフィルム112は、いずれも柔軟性があり、体温計110を被検者の測定部位に貼り付けた際に、測定部位の形状に沿って変形できるようになっている。このように、処理部115が測定部位に密着して固定されることにより、体温計110は、被検者の体温を正確に検出することができる。
【0025】
RF−ID機能を有し半導体温度センサを含む無線タグである体温タグ113は、ベースシート上にアンテナコイル(以下、単にアンテナと称す)114と処理部115とを備える。体温タグ113は、データ読み取り装置101から、アンテナ114を介して電力供給(例えば13.56MHzの周波数の電磁波による誘導起電力の発生による電力供給)を受けることで、処理部115に含まれる電源回路(不図示)に電源が供給されることで、処理部115全体が起動し、後述する半導体温度センサを含む感温部において取得されたバンドギャップ電圧データ(被検者の体温と相関する電圧データ)を、各種情報とともにデータとしてアンテナ114を介してデータ読み取り装置101に送信する。
【0026】
なお、体温タグ113を構成するアンテナ114と処理部115のうち、処理部115は、保温材(例えば、厚さ1mm程度のアルミ材)により覆われているものとする(A−A断面参照)。これにより、外気温度の影響を除去することが可能となる。
【0027】
データ読み取り装置101は、RF−IDリーダ/ライタを備えており、体温タグ113に近づけた際に、体温タグ113との間で磁気結合し、体温タグ113の処理部115に含まれる電源回路への電力供給と、体温タグ113からのデータの受信とを行う。
【0028】
このように、体温測定システム100では、体温計110が、アンテナを備える貼り付け型の体温計となっており、データ読み取り装置が有するRF−IDリーダ/ライタより電力供給を受けて作動する構成となっているため、内部に電源を搭載しておく必要がなく、小型・軽量化を実現することができる。この結果、被検者の測定部位に長時間装着しておくことが可能となる。
【0029】
また、測定結果は、所定の周波数、例えば13.56MHzの電磁波を送信するRF−IDリーダ/ライタを備えるデータ読み取り装置101を、体温計110が貼り付けられた測定部位に5〜15mm程度に近づけるだけで読み取ることができるため、測定者による測定結果の確認・記録作業の負荷を大幅に軽減させることができる。
【0030】
2.体温タグ113の機能構成
次に、体温タグ113の機能構成について説明する。図2は、アンテナ114と処理部115とを備える体温タグ113の機能構成を示す図である。
【0031】
図2において、201は過昇防止部であり、体温タグ113が体温測定の精度に影響を与える状態となった場合に、体温測定処理を中止するように制御する。ここで体温測定の精度に影響を与える状態とは、例えば、アンテナ114を介してデータ読み取り装置101より過剰な電源が供給され、体温タグ113自体が発熱(温度上昇)することで、体温測定の結果に誤差を与えるような状態をいう。なお、過昇防止部201の回路構成の詳細は、後述する。
【0032】
202は無線通信部であり、整流回路や昇圧回路等を備える。無線通信部202では、アンテナ114において生じた交流電圧を、所定の直流電圧に変換し、記憶部203及びコントロール部205に供給する。また、コントロール部205において取得された電圧データを各種情報とともに、所定形式のデータとして、アンテナ114を介してデータ読み取り装置101に送信する。
【0033】
203は記憶部であり、後述する感温部の校正データや、体温タグ113固有の識別情報等を記憶する。
【0034】
204は感温部であり、半導体温度センサを備えるセンサ部211と、センサ部211の出力を処理する回路部212とを備える。なお、センサ部211及び回路部212の回路構成の詳細は、後述する。
【0035】
205はコントロール部であり、無線通信部202及び記憶部203の動作を制御する。また、感温部204からの出力を処理し、電圧データとして無線通信部202に送信する。なお、感温部204のセンサ部211に適用される半導体温度センサにおいて、精度の高い体温測定、例えば0.01℃〜0.05℃の測定精度を実現するためには、充分な電圧が必要となるため(記憶部203やコントロール部205を作動させるのに必要な電圧よりも高い電圧(Vcc)が必要となるため)、コントロール部205には、そのための電源回路(昇圧手段)が備えられているものとする。この電源回路は、アンテナ114における誘導機電力の発生に伴って起動される。
【0036】
3.データ読み取り装置の機能構成
次に、データ読み取り装置101の機能構成について説明する。図3は、データ読み取り装置101の機能構成を示す図である。データ読み取り装置101は、電池、充電池等で構成される電源部、電源ON/OFFスイッチ、測定レンジを選択する選択スイッチ(選択手段)、体温データ読み取り開始スイッチを含む操作スイッチを備えているが、ここでは省略している。
【0037】
図3において、300はRF−IDリーダ/ライタであり、アンテナ301、無線通信部302、信号変換部303、信号処理部304とを備える。
【0038】
アンテナ301は、所定の周波数、例えば13.56MHzの周波数の電磁波を発生させて、体温タグ113のアンテナ114との間で磁気結合することで、体温タグ113の電源回路に電源を供給したり、体温タグ113よりデータを受信したりする。
【0039】
無線通信部302では、アンテナ301を介して体温タグ113に電源を供給するために、アンテナ301に印加する電圧を制御したり、アンテナ301を介して体温タグ113より受信したデータを信号変換部303に送信したりする。
【0040】
信号変換部303では、無線通信部302より送信されたデータをデジタルデータに変換し、信号処理部304に送信する。
【0041】
信号処理部304では、信号変換部303より受信したデジタルデータを処理し、体温を算出する。具体的には、受信したデジタルデータに含まれる、電圧データと校正データとに基づいて体温データを算出する。また、算出した体温データを、受信したデジタルデータに含まれる識別情報とともにコントロール部311に送信する。
【0042】
コントロール部311では、無線通信部302、信号変換部303、信号処理部304の動作を制御する。また、信号処理部304から送信された体温データを、識別情報とともに記憶部312に格納したり、表示部313に表示したりする。更に、記憶部312に格納された体温データを、識別情報とともに有線通信部314を介して、他の情報処理装置(有線通信部314を介して有線接続された他の情報処理装置)に送信したりする。
【0043】
4.体温測定処理の流れ
次に、体温測定システム100における体温測定処理の流れについて説明する。図4は、体温測定システム100における体温測定処理の流れを示す図である。
【0044】
図4に示すように、データ読み取り装置101が起動した後に、データ読み取り装置101を、測定者(不図示)が被検者(不図示)の体温測定部位の適所の1つである腋下に装着された体温計110の近傍に近づけ、例えば体温データ読み取り開始スイッチ(不図示)を押すことで、所定の周波数、例えば13.56MHzの電磁波が発生し、アンテナ301とアンテナ114との磁気結合により、データ読み取り装置101から体温計110に対して電源が供給される(401)。
【0045】
電源が供給された体温計110では、処理部115が起動し、体温タグ113が体温測定の精度に影響を与える状態になっているか否かを判定する。処理部115が体温測定の精度に影響を与える状態になっていると判定された場合には、処理部115では、以降の処理は行わない。この場合、データ読み取り装置101では、電源供給を行ってから一定時間内に体温計110よりデータの送信がないと判断し、表示処理として表示部313にエラー表示を行う(421)。
【0046】
一方、体温タグ113が体温測定の精度に影響を与える状態になっていないと判定された場合には、処理部115では処理を開始する。
【0047】
具体的には、予め設定された測定レンジ(詳細は後述)に切り替えた後(412)、センサ部211内の半導体温度センサに電流を流し、バンドギャップ電圧を検出する(413)。
【0048】
更に、回路部212が当該検出されたバンドギャップ電圧を処理し(414)、コントロール部205では、電圧データを取得する(415)。
【0049】
取得された電圧データは、記憶部203に記憶された校正データ及び識別情報とともに、データ読み取り装置101に送信される(402、416)。
【0050】
データ読み取り装置101では、表示処理として体温計110より送信された電圧データ及び校正データに基づいて体温データを算出する。更に、算出された体温データを、識別情報と対応付けて記憶部312に記憶するとともに表示部313に表示する(421)。
【0051】
5.半導体温度センサの説明
次に、センサ部211に適用される一般的な半導体温度センサについて説明する。図5は、半導体温度センサの特性を示す図である。本実施形態において、センサ部211に適用される半導体温度センサは、P型半導体とN型半導体とが結合して構成され、直流電流を流した場合に温度に相関して結合部(ジャンクション)に生じる電圧(バンドギャップ電圧Vb)を検出するものである(図5の(a))。
【0052】
なお、半導体温度センサの場合、図5の(b)に示すように、バンドギャップ電圧Vbと温度とは、概ね−40℃から+150℃の広範囲において線形性を有している。また、半導体温度センサは、サーミスタと比較して、経時変化に強く、かつノイズの影響を受けにくいといった利点も有している。
【0053】
6.センサ部211の回路構成
次に、センサ部211の回路構成について説明する。図6は、図5の(a)に示す半導体温度センサを用いて構成されたセンサ部211の回路構成を示す図である。
【0054】
図6において、601は定電流回路であり、コントロール部205より供給される電源Vccに基づいて、各半導体温度センサに流す電流が均一になるように調整する。
【0055】
602は半導体温度センサであり、定電流回路601の下流側において、定電流回路601に対して直列に接続されている。なお、半導体温度センサ602は定電流回路601に対して複数個、好ましくは6〜10個、特に好ましくは8個接続されており、それぞれの半導体温度センサは、互いに並列接続される。並列接続される半導体温度センサの個数は、多いほど温度分解能に優れるが、製造コストが高くなり、一方、少ないと温度分解能が低下する。
【0056】
このように、複数の半導体温度センサを並列接続したのは、半導体温度センサの個体差の影響を排除するためである。より高精度な体温測定を実現するためには、半導体温度センサの個体差の影響も無視することはできず、センサ部211では、複数、特に好ましくは8〜10個の半導体温度センサを並列に接続し平均値をとることで、個体差の影響を排除し、0.01℃の温度分解能を得て、0.05℃以内の測定精度を得るようにしている。
【0057】
このため、センサ部211からは、各半導体温度センサより出力された電圧Vb1、Vb2、・・・Vbnの平均値Vb_avgが出力される。
【0058】
なお、各半導体温度センサに電流を流すのは1回に限られず、複数回流すように構成してもよい。その場合、センサ部211からは、電圧Vb_avgが複数回出力されることとなる。
【0059】
7.回路部212の回路構成
次に、回路部212の回路構成について説明する。図7は、回路部212の回路構成を示す図である。
【0060】
図7に示すように、回路部212は、比較・増幅器711とアナログスイッチ712とを介してA/Dコンバータ701に接続される系と、比較・増幅器721とアナログスイッチ722とを介してA/Dコンバータ701に接続される系の2系統から構成されている。
【0061】
前者の系(第1の系)は、センサ部211より出力された電圧Vb_avgを、−40℃〜+150℃の測定レンジでA/Dコンバータ701に入力する。一方、後者の系(第2の系)は、センサ部211より出力された電圧Vb_avgを、20℃〜50℃の測定レンジでA/Dコンバータ701に出力する。
【0062】
第1の系を用いて出力するか、第2の系を用いて出力するかは(つまり、測定レンジは)、データ読み取り装置101の選択スイッチ(不図示)で、測定レンジを選択することで指示され、制御回路702からの信号に基づいてアナログスイッチ712、722を切り替えることにより制御される。より高精度、即ち0.01℃の温度分解能で、0.05℃以内の測定精度の体温測定を行う場合には、第2の系が選択されることとなる。
【0063】
A/Dコンバータ701に入力された電圧Vb_avgは、A/Dコンバータ701においてA/D変換され、デジタルデータとして制御回路702に入力される。
【0064】
制御回路702に入力されたデジタルデータは、無線通信部202に送信される。
【0065】
なお、センサ部211より電圧Vb_avgが複数回出力される場合にあっては、それぞれのデジタルデータをメモリ703に一時的に格納し、制御回路702において、メモリ703に格納された全てのデジタルデータの平均値を算出した後に、無線通信部202に送信するようにしてもよい。
【0066】
8.過昇防止部の回路構成
次に、過昇防止部201の回路構成について説明する。図8は、過昇防止部201の回路構成を示す図である。
【0067】
図8において、801及び802はスイッチであり、コントロール部205より温度上限信号が入力された場合に、処理部115内への電源の供給を停止するとともに、データ読み取り装置101へのデータの送信を停止する。
【0068】
なお、温度上限信号はコントロール部205において算出されたデジタルデータの値が、所定の値以下であった場合に、体温測定の精度に影響を与える状態になったと判断し、出力されるものとする。上述したように、RF−IDリーダ/ライタより過剰な電源が供給された場合、体温タグ113全体が発熱し、高精度な体温測定を行うことができなくなるからである。
【0069】
このように、処理部115では、体温測定の精度に影響を与える状態となった場合に、処理を停止する。これにより、データ読み取り装置101において、誤った測定結果が表示されることを回避することが可能となる。
【0070】
9.体温計110の製造工程
次に体温計110の製造工程について説明する。図9は、体温計110の製造工程を示した図である。
【0071】
図9に示すように、体温計110は、体温タグ製造工程と、校正工程と、後処理工程とに大別することができる。
【0072】
体温タグ製造工程では、アンテナ114が複数配列された帯状のベースシート901が、順次、半導体温度センサ実装装置911に搬送され、それぞれのアンテナ114に処理部115が電気的に接続される。これにより、体温タグ113が生成されることとなる。
【0073】
校正工程では、体温タグ113が複数配列されたベースシート901が、順次、恒温槽912に搬送される。恒温槽912は、予め設定された温度、例えば37℃に管理された槽である。
【0074】
恒温槽912の内部には、RF−IDリーダ/ライタ913が配置されており、各体温タグ113がRF−IDリーダ/ライタ913上を通過する際に所定の周波数、たとえば13.56MHzの電磁波により、各体温タグ113と通信を行う。
【0075】
具体的には、各体温タグ113におけるバンドギャップ電圧データを受信し、該受信したバンドギャップ電圧データを恒温槽912の温度とともに、校正データとして各体温タグ113の記憶部203に書き込む。なお、恒温槽912において、ベースシート901は充分に低速で搬送され、恒温槽912内の温度が体温タグ113に伝達され、温度が平衡状態になったうえで、RF−IDリーダ/ライタ913上を通過するように設計されているものとする。
【0076】
なお、図9の例では、恒温槽912は1つのみ配置されているが、恒温槽の数は1つに限られない。異なる温度、例えば32℃と42℃、もしくは32℃、36℃及び42℃に設定された複数の恒温槽を用意し、それぞれの温度における校正データを、各体温タグ113に書き込むように構成してもよい。
【0077】
さらに、複数の恒温槽を用意した場合にあっては、そのうちの1つの恒温槽を体温タグ113の検定用として用いるようにしてもよい。具体的には、校正データが書き込まれた体温タグ113を予め設定された温度に管理された恒温槽(検定用の恒温槽)に搬送し、体温タグ113よりバンドギャップ電圧データ及び校正データを受信する。そして、該電圧データ及び校正データに基づいて算出された温度と恒温槽の温度とを対比し、予め定められた誤差範囲にあるか否かを判定する。
【0078】
後処理工程では、校正データが書き込まれた体温タグ113が複数配列されたベースシート901が、順次、フィルム重ね合わせ装置914に搬送される。フィルム重ね合わせ装置914では、それぞれの体温タグ113の処理部115を保温材(例えば、厚さ1mm程度のアルミ材や発泡性ポリウレタン等)により覆うとともに、ベースシート901の表裏面にフィルム111、112(半透過性で、厚さは100μm程度)を接着剤で貼り合わせる。また、裏面のフィルム112には、上述した粘着剤が塗布される。
【0079】
フィルム重ね合わせ装置914においてフィルムが貼り合わされたベースシート901は、打ち抜き装置915に搬送され、体温タグ113ごとに切断されることで、体温計110が生成される。
【0080】
10.データ読み取り装置における体温データ算出処理
次に、データ読み取り装置101の信号処理部304において体温データを算出するための処理について説明する。図10は、信号処理部304において体温データを算出するための処理の内容を説明するための図である。
【0081】
信号処理部304では、基準となる半導体温度センサにおける、バンドギャップ電圧データと体温データとの対応関係を示すグラフ(関数)を、校正データに基づいて補正した後に、受信したバンドギャップ電圧データを代入することにより、体温データを導出する。
【0082】
図10(a)は、1種類の温度に対応する1種類の校正データを受信した場合における補正処理を示す図である。図10(a)に示すように、1種類の温度に対応する1種類の校正データを受信した場合には、基準となる半導体温度センサにおける、バンドギャップ電圧データと体温データとの対応関係のオフセット値を調整する。具体的には、グラフ1001を全体として矢印方向に平行移動させ、グラフ1002を得る。
【0083】
信号処理部304では、体温計110より受信した電圧データを、当該平行移動後のグラフ1002に代入することで、体温データを導出する。
【0084】
図10(b)は、2種類の温度に対応する2種類の校正データを受信した場合における補正処理を示す図である。図10(b)に示すように、2種類の温度に対応する2種類の校正データを受信した場合には、当該2点を通る直線1011を算出し、これを半導体温度センサにおけるバンドギャップ電圧データと体温データとの対応関係を示すグラフとする。
【0085】
信号処理部304では、体温計110より受信したバンドギャップ電圧データを、当該算出された直線に代入することで、体温データを導出する。
【0086】
図10(c)は、3種類以上の温度に対応する3種類以上の校正データを受信した場合における補正処理を示す図である。図10(c)に示すように、3種類以上の温度に対応する3種類以上の校正データを受信した場合には、当該3点以上の点に基づいて、最小2乗法により回帰直線1021を算出し、これを半導体温度センサにおけるバンドギャップ電圧データと体温データとの対応関係を示すグラフとする。
【0087】
信号処理部304では、体温計110より受信したバンドギャップ電圧データを、当該算出された回帰直線1021に代入することで、体温データを算出する。
【0088】
以上の説明から明らかなように、本実施形態における体温計では、アンテナを備える貼り付け型の体温計として、半導体温度センサを適用する構成とした。
【0089】
また、半導体温度センサの適用にあたり、
・外気温度の影響を除去するために、処理部を保温材で覆う構成とした。
・半導体温度センサの個体差の影響を排除するため、センサ部において、複数の半導体温度センサを並列に接続する構成とした。
・測定誤差を排除するため、1回の体温測定に際して、センサ部に対して複数回電流を流し、その平均値を出力する構成とした。
・体温タグの個体差の影響を排除するため、体温タグ内の記憶部に体温タグごとに校正データを記憶しておき、データ読み取り装置により電圧データを送信する際に、合わせて校正データを送信する構成とした。
・体温タグの発熱により測定に誤差が生じる恐れがある場合には、過昇防止部が体温測定を中止し、誤った測定結果がデータ読み取り装置に表示されることがないように構成した。
【0090】
この結果、特に、人体の体温測定の一般的な測定レンジである32〜42℃において0.01℃の温度分解能を得ることで、測定精度が0.05℃以内の高精度な体温測定を実現することが可能となった。
【0091】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、アンテナ内に処理部を配する構成としたが、本発明はこれに限られず、アンテナから延設された導線を介して、アンテナに処理部を接続するように構成してもよい。以下、本実施形態における体温測定システムについて説明する。なお、簡略化のため、説明は、主に上記第1の実施形態との相違点について行うものとする。
【0092】
1.体温測定システムの外観構成
図11は、本発明の第2の実施形態における、半導体温度センサを含む無線タグ(RF−ID)が配された体温計(アンテナを備える貼り付け型の体温計)1110と、測定者によって携帯可能なデータ読み取り装置(携帯装置)1101とを備える体温測定システム1100の外観構成を示す図である。
【0093】
図11に示すように、体温計1110は、機能的に3つの部位に区分することができる。第1の部位はアンテナ1114を備えるアンテナ部1120であり、第2の部位はアンテナ1114と処理部1116とを電気的に接続する導線1115が配された延設部1130であり、第3の部位は、処理部1116を備える体温測定部1140である。
【0094】
アンテナ1114は、上記第1の実施形態において説明したアンテナ114と同一の構成、機能を有している。処理部1116は、第1の実施形態における処理部115と同一の構成、機能を有している。体温測定部1140は、第1の実施形態における処理部115と同一の構成、機能を有している。データ読み取り装置(携帯装置)1101もまた、第1の実施形態において説明したデータ読み取り装置101と同一の構成、機能を有している。
【0095】
アンテナ部1120を構成するアンテナ1114と、延設部1130を構成する導線1115と、体温測定部1140を構成する処理部1116とは、体温タグとしてベースシート上に一体的に構成されており、表面のフィルム1111と裏面のフィルム1112(半透過性で、厚さは100μm程度)との間に、固定されている。なお、以下では、ベースシート上に一体的に構成されたアンテナ1114と導線1115と処理部1116とを総称して体温タグ1113と称することとする。
【0096】
表面のフィルム1111及び裏面のフィルム1112のうちアンテナ部1120と延設部1130を構成するフィルム1112bは、ポリエーテルウレタンやポリエステルウレタンなどのウレタン系ポリマー、ポリエーテルポリアミドブロックポリマーなどのアミド系ポリマー、ポリアクリレートなどのアクリル系ポリマー、ポリエチレンやポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系ポリマー、ポリエーテルポリエステルなどのポリエステル系ポリマーなどの材料から得ることができる。
【0097】
また、裏面のフィルム1112のうち、体温測定部1140を構成するフィルム1112aは皮膚面への貼り付け時にムレや白化などを生じないようにするために、水蒸気透過性を有する材質から選択することが好ましく、例えばウレタン系やアミド系のフィルムを用いることが好適である。なお、表面のフィルム1111、裏面のフィルム1112bは上記材料のうちの何れか一種からなるものであってもよいし、任意の材料からなるフィルムを複数枚積層した積層フィルムであってもよい。
【0098】
裏面のフィルム1112aは皮膚面に貼付した際に、違和感を生じないようにするために、その厚みを10〜100μm、好ましくは20〜40μm程度にすることがよい。また、皮膚面に貼り付けした際の皮膚追従性を良好にするためには、引張強度を100〜900kg/cm、100%モジュラスを10〜100kg/cm程度に調整することが好ましい。この範囲に調整した裏面のフィルム1112aを用いると、動きの大きい皮膚面に貼付した際に効果的である。また、上記裏面のフィルム1112aとして、無孔フィルムだけでなく、水蒸気透過性であって非透水性である多孔性フィルムを用いることも、貼付中のムレの防止の点から効果的である。このようなフィルムの場合には、材質には特に制限はされず、公知の多孔化技術を施すことによって簡単に得ることができる。無孔性フィルムの場合にはフィルム厚が大きくなるほど水蒸気透過性は低下する傾向が顕著に現れるが、多孔性フィルムの場合には厚みに比例して水蒸気透過性の低下が顕著に現れないので有用である。
【0099】
裏面のフィルム1112aには、粘着剤が塗布されており、体温計1110を、被検者の体表面の適所の測定部位に直接、貼り付けることができるように構成されている。粘着剤は、通常の医療用グレードとして用いられるものであればいずれを用いてもよく、例えばアクリル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、天然ゴム又は合成ゴム系粘着剤、医用高分子を主成分とする溶剤系、水系、ホットメルト系、ドライブレンド系の粘着剤があげられる。ただし放射線滅菌特に強度のガンマー線照射滅菌が必要な場合にはアクリル系粘着剤やポリウレタン系粘着剤の使用は避けた方が望ましい。これらは放射線照射による粘着力の低下を招くおそれがあるからである。
【0100】
また、表面のフィルム1111と裏面のフィルム1112aは、いずれも柔軟性があり、体温計1110を被検者の測定部位に貼り付けた際に、測定部位の形状に沿って変形できるようになっている。このように、処理部1116が測定部位に密着して固定されることにより、体温計1110は、被検者の体温を正確に検出することができる。
【0101】
なお、体温タグ1113を構成するアンテナ1114と導線1115と処理部1116のうち、処理部1116は、保温材(例えば、厚さ1mm程度のアルミ材)により覆われているものとする。これにより、外気温度(環境温)の影響を除去することができる。
【0102】
一方、データ読み取り装置1101は、RF−IDリーダ/ライタを備えており、体温タグ113に近づけた際に、例えば体温データ読み取り開始スイッチ(不図示)を押すことで、所定の周波数、例えば13.56MHzの電磁波が発生し、体温タグ1113との間で磁気結合し、体温タグ1113の処理部115に含まれる電源回路への電力供給と、体温タグ1113からのデータの受信とを行う。
【0103】
2.体温測定システムにおける体温測定方法
次に、体温測定システム1100における体温測定方法について説明する。図12は、体温計1110の体温測定部1140を被検者1150の体温測定部位の適所の1つである腋下に装着した様子を示している。本実施形態における体温計1110では、体温測定部1140とアンテナ部1120とが、延設部1130を介して接続された構成となっているため、体温測定部1140が被検者1150の腋下に装着された状態においても、アンテナ部1120を、被検者1150の腋下から離れた位置に配置させることができる。
【0104】
このため、測定者1160がデータ読み取り装置1101を近づけた際に、例えば体温データ読取り開始スイッチ(不図示)を押すことで、所定の周波数、例えば13.56MHzの電磁波が発生させて体温タグ1113との間で簡単かつ確実に磁気結合させることができる。つまり、アンテナを備える貼り付け型の体温計の場合に生じうる読み取りエラーの問題を未然に防ぐことが可能となる。
【0105】
3.体温計1110の製造工程
次に体温計1110の製造工程について説明する。図13は、体温計1110の製造工程を示した図である。なお、体温計1110の製造工程は、体温タグ1113の形状が異なること以外は、図9と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0106】
以上の説明から明らかなように、本実施形態によれば、特に人体の体温測定の一般的な測定レンジである32〜42℃において0.01℃の温度分解能を得ることで、測定精度が0.05℃以内の高精度な体温測定を実現することが可能となるとともに、アンテナを備える貼り付け型の体温計から、確実にデータを読み取ることが可能となった。
【0107】
[第3の実施形態]
上記第2の実施形態では、アンテナ部1120と延設部1130と体温測定部1140とを同一平面上に配する形状としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、アンテナ部1120と延設部1130とを、体温測定部1140に対して垂直に配する形状としてもよい。
【0108】
また、上記第1の実施形態では、アンテナ部1120と延設部1130と体温測定部1140とを左右対称に配置する形状としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、アンテナ部1120と延設部1130とを、体温測定部1140に対して非対称に配置する形状としてもよい。
【0109】
また、いずれの場合も、体温測定部1140は、貼り付けられる被検者の測定部位に適した形状・大きさであることが望ましい。更に、体温測定部1140が被検者の測定部位に貼り付けられた状態で、アンテナ部1120が、データ読み取り装置1101との間で確実に磁気結合できる位置に配置されるように、延設部1130及びアンテナ部1120の形状・大きさが決定されることが望ましい。
【0110】
[第4の実施形態]
上記第1の実施形態では、コントロール部205において算出されたデジタルデータの値が所定の値以下であった場合に、体温測定の精度に影響を与える状態になったと判断し、過昇防止部201のスイッチをOFFすることで、処理部115による処理を停止する構成としたが、本発明はこれに限定されない。
【0111】
例えば、アンテナ114を介して供給された電源電圧が所定の電圧値以上になった場合には、処理部115が、測定精度に影響を与える状態になったと判断し、強制的にスイッチをOFFするように構成してもよい。
【0112】
また、上記第1の実施形態では、センサ部211において並列接続した半導体温度センサの数について具体的に言及しなかったが、例えば、8個程度の半導体温度センサを並列接続することが望ましい。並列接続する半導体温度センサの数が少ないと、個体差の影響が大きくなり測定精度が低下する一方で、半導体温度センサの数が多すぎると、発熱による誤差の影響が大きくなるからである。
【0113】
また、上記第1の実施形態では、体温計110からデータ読み取り装置101に対して、電圧データと校正データと識別情報とを送信する構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、測定レンジを切り替えた場合には、切り替えた後の測定レンジに関する情報を送信するように構成してもよい。この場合、データ読み取り装置101では、受信した測定レンジに関する情報も考慮して、体温データを算出することとなる。
【0114】
また、測定レンジの切り替えを、データ読み取り装置101からの指示に基づいて行うように構成してもよい。この場合、データ読み取り装置101では、指示した測定レンジを考慮して、体温データを算出することとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ部と、処理部と、該処理部を被検者の体表面に貼り付けるための貼り付け部とを備える体温計であって、
前記処理部は、
前記アンテナ部に接続され、該アンテナ部における誘導起電力の発生に伴って起動される電源回路と、
P型とN型の2種類の半導体が結合され、該2種類の半導体の結合部に電流を流した場合のバンドギャップ電圧を検出する半導体温度センサが、2個以上並列に接続された検出手段と、
前記検出手段により検出されるバンドギャップ電圧を校正するための校正データを記憶する記憶手段と、
前記検出手段により検出されるバンドギャップ電圧を、所定のレンジのバンドギャップ電圧に切り替える切替手段と、を備え、
前記電源回路の起動に伴って、前記検出手段により検出され、前記所定のレンジに切り替えられたバンドギャップ電圧を、前記校正データとともに、前記アンテナ部を介して送信することを特徴とする体温計。
【請求項2】
前記検出手段は、前記半導体温度センサを複数備え、前記各半導体温度センサの結合部におけるバンドギャップ電圧の平均値を検出することを特徴とする請求項1に記載の体温計。
【請求項3】
前記検出手段は、前記各半導体温度センサの結合部に複数回電流を流した場合のそれぞれのバンドギャップ電圧の平均値を検出することを特徴とする請求項1に記載の体温計。
【請求項4】
前記検出手段は、前記アンテナ部において発生した誘導起電力を昇圧させる昇圧手段を更に備え、
前記昇圧手段により昇圧された電圧に基づいて、前記各半導体温度センサの結合部に電流を流すよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の体温計。
【請求項5】
前記処理部は、前記アンテナ部における誘導起電力の発生に伴って温度上昇があった場合に、前記電源回路の起動に伴う処理を停止させる停止手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の体温計。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の体温計と、該体温計と磁気結合する携帯装置とを備える体温測定システムであって、
前記携帯装置は、
前記所定のレンジに切り替えるよう前記体温計に指示する指示手段と、
前記指示した所定のレンジと、前記アンテナ部を介して送信された校正データとに基づいて、バンドギャップ電圧と温度との対応関係を示す関数を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された関数に、前記アンテナ部を介して送信されたバンドギャップ電圧を代入することにより、前記被検者の体温データを導出する導出手段と
前記導出された体温データを格納する格納手段と
を備えることを特徴とする体温測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−197245(P2010−197245A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43079(P2009−43079)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(509055471)オーエスエレクトロニクス株式会社 (2)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】