説明

体積ホログラム転写箔

【課題】箔切れ性が良好であり、被転写体に容易に転写することが可能な体積ホログラム転写箔を提供することを主目的とするものである。
【解決手段】本発明は、基材と、前記基材上に形成された体積ホログラム層と、前記体積ホログラム層上に形成された熱接着層とを有する体積ホログラム転写箔であって、前記体積ホログラム層の25℃における破断点伸度が0.5%〜15%の範囲内、120℃における破断点伸度が0.5〜30%の範囲内であり、かつ前記熱接着層の25℃における破断点伸度が0.5〜15%の範囲内であることを特徴とする体積ホログラム転写箔を提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばセキュリティー用途等に用いられる体積ホログラム転写箔に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ホログラム転写箔のほとんどが、表面の凹凸からなる表面レリーフ型ホログラムを使用しており、また、その一般的な構成としては、基材、剥離層、表面レリーフ型ホログラム層、反射性薄膜層、感熱性接着層が順次積層されている。ホログラム転写箔は、その熱転写(単に転写、ホットスタンプともいう)時に、基材以外の剥離層、ホログラム層、熱接着層等の層が加熱金型に従って切れることから、箔切れ性が良好で、確実にホログラムが被転写体に転写されることが必要である。一般的なレリーフ型のホログラム転写箔の箔切れ性は良好であり、多くの用途に使用されている。
【0003】
一方、体積ホログラムに関して使用することが可能な材料としては、銀塩材料、フォトポリマー等があり、一般的に大量生産にはドライプロセスによる製造が可能であるフォトポリマーが使用されている。しかしながら、該フォトポリマーは、ホログラムの画像を明るくするために屈折率変調値(Δn)を大きくする必要があり、膜を低粘度とし、体積ホログラムを形成する際、モノマー等を層内で移動させることから、塗膜自体の硬度が低い。したがって、箔切れ性が悪く、転写性が不安定となることから、体積ホログラムの転写箔化は極めて困難であるという問題があった。
【0004】
また、この問題を解決するため、体積ホログラムの材料自体を改良して材料硬度を向上させた場合であっても、転写性を完全に改善することは難しく、さらに塗膜硬度を上げることによって屈折率変調が十分に行うことができず、ホログラムが暗くなるという問題もあった。
【0005】
また、予め転写する部分の剥離層、ホログラム層、熱接着層等へスリットを入れ、転写時に加熱金型に沿ってスリット線から剥離させることで、箔切れ性を改良したものが知られている。しかしながら、この方法によれば、スリットを入れるためのスリット型、およびスリット工程を必要とすることから、時間とコストがかかるという問題があった。
【0006】
またさらに、本発明者等によって、ホログラム層を特定の破断点伸度を有する材料に限定した体積ホログラム転写箔を提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法においても、転写箔とした際に、熱接着層として柔軟な熱可塑性樹脂を用いることが多いことから、箔切れ性に問題がある場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−272295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のことから、箔切れ性が良好であり、被転写体に容易に転写することが可能な体積ホログラム転写箔の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基材と、前記基材上に形成された体積ホログラム層と、上記体積ホログラム層上に形成された熱接着層とを有する体積ホログラム転写箔であって、上記熱接着層が熱接着性を有する合成樹脂と、平均粒子径が上記熱接着層の膜厚より小さい微粒子とを含有することを特徴とする体積ホログラム転写箔を提供する。
【0010】
本発明によれば、上記熱接着層中に、上記微粒子を含有させることにより、上記熱接着層に脆性を付与することができ、ホログラム像の明るさを保ったまま、良好な箔切れ性を有する体積ホログラム転写箔とすることができるのである。また、上記微粒子の平均粒子径が上記範囲であることにより、上記熱接着層の平滑性、または熱接着層と体積ホログラム層および被着体との密着力を損なうことなく、良好な転写性を得ることが可能となる。
【0011】
上記発明においては、上記熱接着層の膜厚が1μm〜11μmの範囲内であり、かつ上記微粒子の平均粒子径が0.05μm〜10μmであることが好ましい。上記微粒子の平均粒子径が、上記範囲内より小さい場合には、熱接着層に脆性を付与することが困難となるからであり、また上記範囲より大きい場合には、分散性が悪く、熱接着層の平滑性が損なわれ、ホログラム像に悪影響を及ぼす可能性があるからである。
【0012】
また、上記発明においては、上記微粒子が、熱架橋性基および光架橋性基を有しないものとすることができる。上記微粒子が、上記架橋性を有しないことによって、体積ホログラムの転写の際の応力によって、上記微粒子と上記合成樹脂との間にクラックが生じやすく、熱接着層により大きな脆性を付与することが可能となるからである。
【0013】
またさらに、上記発明においては、上記体積ホログラム層の25℃における破断点伸度が0.5%〜15%の範囲内、120℃における破断点伸度が0.5%〜30%の範囲内であり、かつ上記熱接着層の25℃における破断点伸度が0.5%〜15%の範囲内であり、上記体積ホログラム層の各温度における破断点伸度は、幅5mm〜10mmの範囲内、長さ20mm〜50mmの範囲内、かつ、厚さ20μm〜100μmの範囲内である試験片を用いて、引っ張り速度2mm/minで測定されたものであり、上記熱接着層の25℃における破断点伸度は、幅25mm、長さ50mm、かつ、厚さ20μmの試験片を用いて、引っ張り速度2mm/minで測定するJIS−K−7127に準じた測定方法で測定されたものであることが好ましい。上記熱接着層の破断点伸度を、ホログラム層の上記破断点伸度と同等、またはそれ以下にすることで、ホログラム像の明るさを保ったまま、良好な箔切れ性を持たせて、被転写体へ容易に転写することのできる転写性が改善された体積ホログラム転写箔とすることができるからである。
【0014】
また、上記発明においては、上記微粒子が、熱可塑性を有し、かつガラス転移温度が120℃以上の有機微粒子であってもよい。これにより、熱接着層を箔切れ性の良好な層とすることができるからである。
【0015】
また、上記微粒子が、樹脂ビーズ顔料であってもよい。これにより、意匠性に優れた背景を有する体積ホログラム転写箔とすることが可能となるからである。
【0016】
またさらに、上記微粒子が、蛍光性微粒子であってもよい。これにより、体積ホログラム層に紫外線を照射した際に、熱接着層を発光させることが可能となり、特異な背面を有するホログラム層を形成することが可能となるからである。
【0017】
また、本発明は上記基材と、上記体積ホログラム層との間に剥離層を有するものであってもよい。これにより、良好な箔切れ性と、良好な剥離性とを有する体積ホログラム転写箔とすることができるからである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、熱接着層の破断点伸度を、ホログラム層の上記破断点伸度と同等、またはそれ以下にすることで、ホログラム像の明るさを保ったまま、良好な箔切れ性を持たせて、被転写体へ容易に転写することのできる転写性が改善された体積ホログラム転写箔が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の体積ホログラム転写箔の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の体積ホログラム転写箔の他の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の体積ホログラム転写箔の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の体積ホログラム転写箔の転写の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の体積ホログラム転写箔の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、体積ホログラム転写箔に関するものである。以下、詳しく説明する。本発明の体積ホログラム転写箔は、2つの態様がある。第1の態様としては、基材と、上記基材上に形成された体積ホログラム層と、上記体積ホログラム層上に形成された熱接着層とを有する体積ホログラム転写箔であって、上記体積ホログラム層の25℃における破断点伸度が0.5%〜15%の範囲内、120℃における破断点伸度が0.5%〜30%の範囲内であり、かつ上記熱接着層の25℃における破断点伸度が0.5%〜15%の範囲内であるものであり、第2の態様としては、基材と、上記基材上に形成された体積ホログラム層と、上記体積ホログラム層上に形成された熱接着層とを有する体積ホログラム転写箔であって、上記熱接着層が熱接着性を有する合成樹脂と、平均粒子径が上記熱接着層の膜厚より小さい微粒子とを含有するものである。
【0021】
ここで、本発明の体積ホログラム転写箔としては、上記どちらの態様においても、例えば図1に示すように、基材1と、その基材1上に形成された体積ホログラム層2と、その体積ホログラム層2上に形成された熱接着層3(ヒートシール層ともいう。)とを有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば図2に示すように、基材1と、その基材1上に形成された体積ホログラム層2とその体積ホログラム層2上に形成されたプライマー層4と、そのプライマー層4上に形成された熱接着層3とを有するものであってもよい。またさらに例えば図3に示すように、基材1と体積ホログラム層2との間に剥離層5を有するものであってもよい。体積ホログラム層と基材との間に剥離層を設けると、熱転写時に基材と体積ホログラム層との剥離性が安定することから好ましい。また、上記剥離層と体積ホログラム層との密着性を向上させるために、さらにプライマー層を間に設けてもよい。
【0022】
また、上記どちらの態様においても、本発明の体積ホログラム転写箔を用いて転写を行う場合、例えば図4に示すように、ホログラムを付与しようとする被転写体6の表面に、本発明のホログラム転写箔を該転写箔の熱接着層3が接するように重ね合わせ、ホログラムを付与しようとする部分の転写箔の基材1側からスタンパ(転写型)7で加熱、加圧して、所望部分の熱接着層3を溶融接着させる。その後、転写箔を剥離することにより、体積ホログラム層2および熱接着層3が破断して、所望部分の転写層のみが転写され、被転写物表面にホログラムを付与することができる。この際、体積ホログラム層2および熱接着層3が容易に破断することが重要でり、本発明では破断のしやすさを破断点伸度で表す。
【0023】
本発明によれば、どちらの態様においても、箔切れ性の良好な体積ホログラム転箔とすることができる。以下、それぞれの態様についてわけて説明する。
【0024】
1.第1の態様
まず、本発明の体積ホログラム転写箔の第1の態様について説明する。本発明の体積ホログラム転写箔の第1の態様は、基材と、上記基材上に形成された体積ホログラム層と、上記体積ホログラム層上に形成された熱接着層とを有する体積ホログラム転写箔であって、上記体積ホログラム層の25℃および120℃における破断点伸度が所定の範囲内であり、かつ上記熱接着層の25℃における破断点伸度が所定の範囲内であるものである。
【0025】
ここで、従来の体積ホログラム転写箔は、体積ホログラム層として柔軟性を有する材料を用いなければならず、また、鮮明なホログラム像を得るために、ホログラム層の層厚を大きくする必要があったことから、箔切れ性が悪く、転写性が非常に不安定であった。そこで、体積ホログラム層の材料自体を改良して材料硬度を向上させることは可能であるが、塗膜硬度を上げすぎると、ホログラム像の明るさが低下し、ホログラム像の明るさを保ったまま転写性を改善するのは困難であった。また、本出願人は、ホログラム層を特定の破断点伸度を有する材料に限定した体積ホログラム転写箔を特開2000−272295号公報で開示している。しかしながら、熱接着層に柔軟な熱可塑性樹脂が用いられることから、体積ホログラム転写箔全体としては、箔切れ性が十分でない場合があり、被転写体への転写性の向上が望まれていた。
【0026】
そこで、本発明者等は、特開2000−272295号公報の開示発明をさらに研究した結果、体積ホログラム層に加えて、熱接着層の破断点伸度を限定することで、箔切れ性が改良されて、被転写体への転写性が向上することを見出し、本発明に至った。箔切れ性の基準として、機械強度の1つである破断点伸度を用いた。
【0027】
ここで、上記体積ホログラム層の25℃および120℃における破断点伸度として具体的には、25℃における破断点伸度が0.5%〜15%の範囲内、中でも1%〜10%の範囲内であることが好ましく、また120℃における破断点伸度が0.5%〜30%の範囲内、中でも1%〜20%の範囲内であることが好ましい。この範囲を外れる場合には、箔切れ性が不十分となり、ホログラムの転写が困難となるからである。
【0028】
また、上記熱接着層の25℃における破断点伸度は、0.5%〜15%の範囲内、中でも1%〜10%の範囲内であることが好ましい。上記体積ホログラム層および上記熱接着層の破断点伸度をそれぞれ、上記範囲内とすることにより、体積ホログラム転写箔の箔切れ性を良好なものとすることができるのである。上記体積ホログラム層または上記熱接着層のどちらか一方では効果が不十分であるといえる。
【0029】
なお、上記体積ホログラム層の破断点伸度は、下記の測定機器、測定条件を用い、応力(Stress)−伸度(Strain)曲線(S−S曲線)を自記録させ、この曲線から求めた破断点伸度である。
【0030】
測定サンプル(試験片)は、基材上に測定を目的とする材料を塗布し、必要に応じて乾燥又は処理をした後に、基材から剥がした幅5mm〜10mm、長さ20mm〜50mmのフィルム状試験片とする。該試験片の厚さは、取扱いやすさの点から20μm〜100μmの範囲内とするのがよい。なお、基材表面を離型処理しておくと、フィルム状試験片の剥離が容易である。
【0031】
(25℃および120℃の破断点伸度の測定)
・測定機器:INSTRON万能試験機5500(INSTRON社製 商品名)
・引張り速度:2mm/min
また、上記熱接着層の破断点伸度の測定方法は、熱接着剤を、表面離型処理PET上に乾燥後20μmの膜厚に塗布し、JIS−K−7127に準じた下記測定方法で破断点伸度を測定した。
【0032】
(測定方法)
・測定機器:INSTRON万能試験機(INSTRON社製 商品名)
・引張り速度:2mm/min
・雰囲気:25℃
・測定サンプル:幅25mm×長さ50mm
また、体積ホログラムの転写箔の熱転写性の評価は、体積ホログラム転写箔から表面離型処理PETフィルムを剥がし、ポリ塩化ビニール製のカードへ温度140℃、圧力3MPa、0.8秒の条件で熱転写して、箔切れ性、バリの発生等の被転写物への転写性を観察したものである。
【0033】
以下、本態様の体積ホログラム転写箔の各構成について、それぞれ説明する。
【0034】
(1)熱接着層
まず、本態様の体積ホログラム転写箔に用いられる熱接着層について説明する。本態様に用いられる熱接着層は、上述したように、25℃における破断点伸度が0.5%〜15%の範囲内となるものであり、後述する体積ホログラム層と被転写物との接着をすることが可能な層であれば、特に限定されるものではない。
【0035】
ここで、本態様において、熱接着層の破断点伸度を上記範囲内とする方法として、例えば熱接着性を有する合成樹脂中に微粒子を含有させる方法が挙げられる。熱接着層中に微粒子を含有させることによって、熱接着層に脆性を付与することができ、これにより、上記熱接着層の破断点伸度を上記範囲内とすることができるのである。
【0036】
本態様に用いられる微粒子の平均粒子径は、0.05μm〜10μm、中でも0.05μm〜6μmであることが好ましい。上記微粒子の平均粒子径が、上記範囲内より小さい場合には、熱接着層に脆性を付与することが困難となるからであり、また上記範囲より大きい場合には、分散性が悪く、熱接着層の平滑性が損なわれ、ホログラム像に悪影響を及ぼす可能性があるからである。
【0037】
ここで、本態様における平均粒子径は、レーザー法によって測定された値である。レーザー法として具体的には、微粒子を溶媒に分散させて、その分散溶媒にレーザー光線を照射し、その微粒子により散乱された光を解析することにより得られるものである。本態様においては、特にリーズ&ノースラップ(Leeds & Northrup)社製粒度分析計 マイクロトラックUPA Model−9230を使用して算出した値である。
【0038】
また、このような微粒子の含有量としては、熱接着層を構成する合成樹脂100質量部に対して10質量部〜500質量部、中でも20質量部〜200質量部であることが好ましい。上記微粒子の含有量が、上記範囲内より少ない場合には、箔切れ性が悪く、また上記範囲内より多い場合には、分散性が悪く、脆性にムラが生じて、熱接着層の箔切れ性が不安定となるからである。またさらに、被接着体との接着力の低下が起こる可能性もあるからである。また、微粒子の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば球状、直方状、板状、燐片状、針状、中空体等であってもよい。
【0039】
本態様に用いられる微粒子(フィラー)として、有機微粒子及び/または無機微粒子、すなわち、有機微粒子、無機微粒子、有機物と無機物との混合物、または無機物の周囲に有機物をコーティングしたもの等を用いることができる。
【0040】
無機微粒子としては、例えば炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、シリカ、ガラス、珪藻土、雲母粉、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン等が適用できる。
【0041】
また有機微粒子としては、ガラス転移点温度が120℃以上の熱可塑性樹脂であることが好ましく、例えばWAX、ポリエチレン、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、メタアクリル系樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリスチレン、スチレン及び/又はα−メチルスチレンと他の単量体(例えば無水マレイン酸、フェニルマレイミド、メタクリル酸メチル、ブタジエン、アクリロニトリル等)との共重合体(例えばAS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、耐熱ABS樹脂等)等の微粒子が適用できる。これにより、熱接着層の箔切れを良好なものとすることができるからである。また、有機微粒子を用いた場合には、熱接着層を構成する合成樹脂との屈折率が比較的近いことから、熱接着層に透明性を持たせることができる。また、無機顔料を取り込んだ材料を用いることによって、着色することもできる。さらに、無機微粒子と比較して粒子表面の官能基を制御することで容易に熱接着層の脆性を改善できる。
【0042】
ここで、上記微粒子として、蛍光微粒子や樹脂ビーズ顔料も用いることが可能である。このような蛍光微粒子や樹脂ビーズ顔料を用いることにより、体積ホログラムを転写した際、背面が着色されたホログラムとすることができ、さらに蛍光微粒子を添加した場合においては、紫外線の照射により蛍光発光させることが可能となることから、偽造防止効果も向上する。
【0043】
このような蛍光微粒子としては、例えば酸化亜鉛(ZnO)と酸化珪素(SiO)と二酸化マンガン(MnO)との混合物からガス中蒸発法を用いた超微粒子、蛍光を発する金属(Zn、Mg、Cd、Gd、Y、In、Si、Al、ランタノイド系等)を含む有機金属化合物を塗布焼成して有機成分を分解除去した微粒子金属等が適用できる。
【0044】
具体的には、蛍光微粒子を溶媒へ分散した蛍光微粒子分散体を用いる。例えば、日本蛍光(株)社製のルミコールNKW2102(グリーン)、同2103(レッド)、同2108(ブルー)等がある。またシンロイヒ(株)社製のSW−12(グリーン)、SW−13(レッド)、SW−18(ブルー)等がある。このような蛍光微粒子を用いると、紫外線を照射した際に、熱接着層が蛍光発光して、特異な背面を有するホログラム像が得られ、またその発光の有無で偽造品かを判定できることから、偽造防止性が向上できる。
【0045】
また、樹脂ビーズ顔料としては、顔料の微粉末を合成樹脂中に分散したものを粒状に成形したものとすることができる。ビーズ顔料の材質として、例えばFe、TiO、CaCO、キナクリドン顔料等の顔料の微粉末を用い、該微粉末表面をポリウレタン、アクリル、エポキシ、ポリエステル、ナイロン、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂等の弾力性のある樹脂、またはこれに、必要に応じて可塑剤、安定剤、界面活性剤等を加えたもので覆ったもの、あるいは該顔料微粉末を該弾力性樹脂中に分散させたものが挙げられる。また、ビーズ顔料の色は、所望に応じて任意に選択すればよく、例えば、無色透明なビーズ顔料を用いたパール調、2色以上のビーズ顔料を組み合わせた多色等とすることもできる。
【0046】
また、本態様の熱接着層に用いられる合成樹脂としては、後述する体積ホログラム層と、被転写体とを接着することが可能な合成樹脂であれば、特にその種類等は限定されるものではなく、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−イソブチルアクリレート共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニルおよびその共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂、アクリル系・メタクリル系などの(メタ)アクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリメチルメタクリレート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニル系樹脂、マレイン酸樹脂、アルキッド樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミン・アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)等の熱可塑性樹脂を用いることができる。好ましくは、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)からなり、酢酸ビニル含量が25%以上であり、180℃以下の温度でヒートシールが可能な組成物である。さらにまた、必要に応じて、分散剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤等の添加剤を適宜加えてもよい。帯電防止剤としては、非イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤等や、ポリアミドやアクリル酸誘導体等が適用できる。また、熱接着層は着色されていてもよい。
【0047】
本態様に用いられる熱接着層は、上記熱接着性を有する合成樹脂と、上記微粒子とを、溶媒へ分散または溶解させて、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、コンマコート、バーコート、ワイヤーバーコート、ロッドコート、キスコート、ナイフコート、ダイコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート等のコーティング法で塗布し、乾燥および/または硬化させて形成される。
【0048】
このような熱接着層の膜厚は、体積ホログラム転写箔の種類や、被転写体の種類等により、適宜選択されるものであるが、通常1μm〜11μm程度、好ましくは1μm〜6μm程度とされる。上記範囲未満の厚さでは、被転写体との接着が十分でなく、この範囲を超える厚さは、箔切れ性が悪く、また、転写する際の加熱温度を高めなければならないからである。
【0049】
(2)体積ホログラム層
次に、本態様に用いられる体積ホログラム層について説明する。本態様に用いられる体積ホログラム層は、体積ホログラム像が形成可能な層であり、上述したように、25℃における破断点伸度が0.5%〜15%の範囲内、120℃における破断点伸度が0.5%〜30%の範囲内であるものであれば、特に限定されるものではない。
【0050】
一般的に、体積ホログラム層を形成する材料としては、銀塩材料、重クロム酸ゼラチン乳剤、光重合性樹脂、光架橋性樹脂等の公知の体積ホログラム記録材料が挙げられるが、本態様の体積ホログラム層を形成するホログラム形成用感光材料としては、生産の効率上、下記の(i)、(ii)の感光材料が好適に用いられる。このような各材料について、以下それぞれ説明する。
【0051】
(i)バインダ樹脂、光重合可能な化合物、光重合開始剤および増感色素からなる感光材料
まず、上記感光材料について各材料ごとに説明する。
【0052】
(バインダ樹脂)
この感光材料におけるバインダ樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、またはその部分加水分解物、ポリ酢酸ビニルまたはその加水分解物、アクリル酸、アクリル酸エステル等の共重合可能なモノマー群の少なくとも1つを重合成分とする共重合体など、又はそれらの混合物や、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリビニルアルコールの部分アセタール化物であるポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等、またはそれらの混合物等が挙げられる。ここで、体積ホログラム層を形成する際には、記録されたホログラムを安定化するために、加熱してモノマーを移動させる工程がある。このためには、バインダ樹脂は、ガラス転移温度が比較的低く、モノマー移動が容易に移動できるものであることが好ましい。
【0053】
(光重合可能な化合物)
また、感光材料に含有される光重合可能な化合物としては、後述するような1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合、光架橋可能なモノマー、オリゴマー、プレポリマーおよびそれらの混合物が適用でき、例えば不飽和カルボン酸及びその塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド化合物等が挙げられる。
【0054】
不飽和カルボン酸のモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等があり、また脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート等がある。
【0055】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等が挙げられる。イタコン酸エステルとしてはエチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート等が挙げられる。クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラクロトネート等が挙げられる。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等が挙げられる。マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレエート、トリエチレングリコールジマレエート、ペンタエリスリトールジマレエート、ソルビトールテトラマレエート等が挙げられる。
【0056】
ハロゲン化不飽和カルボン酸としては、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート等が挙げられる。また、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドのモノマーの具体例としてはメチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド等が挙げられる。
【0057】
(光重合開始剤)
開始剤系における光重合開始剤としては、1,3−ジ(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3´,4,4´−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、N−フェニルグリシン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、また、イミダゾール二量体類等が例示される。光重合開始剤は、記録されたホログラムの安定化の観点から、ホログラム記録後に分解処理されるのが好ましい。例えば有機過酸化物系にあっては紫外線照射することにより容易に分解されるので好ましい。
【0058】
(増感色素)
また、増感色素としては、350〜600nmに吸収光を有するチオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン染料、ローダミン染料、チオピリリウム塩系色素、ピリリウムイオン系色素、ジフェニルヨードニウムイオン系色素等が例示される。なお、350nm以下、または600nm以上の波長領域に吸収光を有する増感色素であってもよい。
【0059】
(感光材料)
上記バインダ樹脂、上記光重合可能な化合物、上記光重合開始剤および上記増感色素とからなる感光材料の配合比は次の通りである。光重合可能な化合物は、バインダ樹脂100質量部に対して10質量部〜1000質量部、好ましくは10質量部〜100質量部の割合で使用される。光重合開始剤は、バインダ樹脂100質量部に対して1質量部〜10質量部、好ましくは5質量部〜10質量部の割合で使用される。増感色素は、バインダ樹脂100質量部に対して0.01質量部〜1質量部、好ましくは0.01質量部〜0.5質量部の割合で使用される。その他、体積ホログラム形成用材料の成分としては、例えば可塑剤、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよび各種の非イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0060】
これらの感光材料は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、キシレン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、酢酸エチル、イソプロパノール等の単独、またはそれらの混合溶剤を使用し、固型分15%〜25%の塗布液とする。体積ホログラム層は、支持体が枚葉(1枚毎のシート)の状態であれば、バーコート、スピンコート、又はディッピング等により塗布形成される。また、支持体がロール状の長尺の状態で塗布するのであれば、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、又はコンマコート等により塗布し、乾燥および/または必要に応じて硬化させる。このようにして得られる体積ホログラム形成材料層の厚みは、0.1μm〜50μm、好ましくは5μm〜20μmであり、必要に応じて保護フィルムを貼付してもよい。該保護フィルムとしては、厚さ10μm〜100μm程度のポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等の透明性が高く、平滑性が高い樹脂フィルムをゴムローラー等で張り合わせるとよい。また、感光性材料として、例えばデュポン社製の市販品「オムニデックス801」等を使用してもよい。
【0061】
上記感光材料は、2光束のレーザー光を使用して記録する。該レーザー光としては、例えば、可視光量域であるヘリウム−ネオンレーザーにおける633nmの波長光、アルゴンレーザーにおける514.5nm、488nm、457.9nmの波長光、またクリプトンレーザーにおける647.1nm、568.2nm、520.8nmの波長光、さらに、クリプトンレーザー(1.5W)における337.5nm、350.7nm、356.4nmの波長光、また、アルゴンレーザー(40mW)における351.1nm、368.8nmの波長光、またネオンレーザー(50mW)における332.4nmの波長光、カドミウムレーザー(15mW)における325.0nmの波長光等が適用できる。
【0062】
このうちの一波長を取り出して、光重合開始剤を励起可能とする波長を使用して干渉縞を記録するか、物体光と参照光との干渉光を記録するか、あるいは、保護フィルムを剥がしてから、体積ホログラム層に体積ホログラムの原版を密着し、体積ホログラム層側からレーザーを入射し、原版からの反射光と入射した光の干渉縞を記録して体積ホログラムの情報を与える。これにより、単色ホログラム、またはカラーホログラムとすることができる。
【0063】
その後、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光源から、0.1〜10,000mJ/cm2、好ましくは、10〜1,000mJ/cm2 の紫外線照射により光重合開始剤を分解する工程、及び、例えば120℃で120分の加熱により、光重合可能な化合物を拡散移動される加熱処理工程等を経て、安定な体積ホログラムとされる。
【0064】
(ii)カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、特定波長の光に感光してラジカル重合性化合物を重合させる光ラジカル重合開始剤系、および特定波長の光に対しては低感光性であり、別の波長の光に観光してカチオン重合性化合物を重合させる光カチオン重合開始剤系からなる感光材料
次に、上記感光材料について説明する。上記感光材料は、室温で液状であるカチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、特定の波長の光に感光してラジカル重合性化合部を重合させる光ラジカル重合開始剤系、及び上記特定の波長の光に対しては低感光性であり、別の光に感光してカチオン重合性化合物を重合させる光カチオン重合開始剤系からなる。
【0065】
この感光材料は、支持体上に塗布された後に、光ラジカル重合開始剤系が感光するレーザー光等の光を照射し、次いで、光カチオン重合開始剤系が感光する上記レーザー光とは別の波長の光を照射することによって、ホログラムが記録される。まず、レーザー光等の光の照射(以下、第1露光という。)によって、ラジカル重合性化合物を重合させる。その後、カチオン重合性化合物を、その次に行う全面露光(以下、後露光という。)によって、光カチオン重合開始剤系が分解されて発生するブレンステッド酸あるいはルイス酸によりカチオン重合させるものである。
【0066】
以下、上記感光材料の各材料ごとに説明する。
【0067】
(カチオン重合性化合物)
カチオン重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物の重合が比較的低粘度の組成物中で行われることが好ましいという点から、室温で液状のものが用いられる。このようなカチオン重合性化合物としては、ジグリセロールジエーテル、ペンタエリスリトールポリジグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0068】
(ラジカル重合性化合物)
また、ラジカル重合性化合物としては、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有するものが好ましい。また、ラジカル重合性化合物の平均屈折率は、上記カチオン重合性化合物の平均屈折率より大きいことが好ましく、中でも0.02以上大きいことが好ましい。これは、ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物との屈折率の差によって、体積ホログラムが形成されることによるものである。したがって、平均屈折率の差が上記値以下である場合には、屈折率変調が不十分となるからである。ラジカル重合性化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、2−ブロモスチレン、フェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2,3−ナフタレンジカルボン酸(アクリロキシエチル)モノエステル、メチルフェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、β−アクリロキシエチルハイドロゲンフタレート等が挙げられる。
【0069】
(光ラジカル重合開始剤系)
光ラジカル重合開始剤系としては、ホログラム作製のための第1露光によって、活性ラジカルを生成し、該活性ラジカルがラジカル重合性化合物を重合させる開始剤系であればよく、また、一般に光を吸収する成分である増感剤と活性ラジカル発生化合物や酸発生化合物を組み合わせて用いてもよい。このような光ラジカル重合開始剤系における増感剤は可視レーザー光を吸収するために色素のような有色化合物が用いられる場合が多いが、無色透明ホログラムとする場合には、シアニン系色素の使用が好ましい。シアニン系色素は一般に光によって分解しやすいため、本発明における後露光、または室内光や太陽光の下に数時間から数日放置することでホログラム中の色素が分解されて可視域に吸収を持たなくなり、無色透明な体積ホログラムを得ることができるからである。
【0070】
シアニン系色素の具体例としては、アンヒドロ−3,3´−ジカルボキシメチル−9−エチル−2,2´チアカルボシアニンベタイン、アンヒドロ−3−カルボキシメチル−3´,9´−ジエチル−2,2´チアカルボシアニンベタイン、3,3´,9−トリエチル−2,2´−チアカルボシアニン・ヨウ素塩、3,9−ジエチル−3´−カルボキシメチル−2,2´−チアカルボシアニン・ヨウ素塩、3,3´,9−トリエチル−2,2´−(4,5,4´,5´−ジベンゾ)チアカルボシアニン・ヨウ素塩、2−[3−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリデン)−1−プロペニル]−6−[2−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリデン)エチリデンイミノ]−3−エチル−1,3,5−チアジアゾリウム・ヨウ素塩、2−[[3−アリル−4−オキソ−5−(3−n−プロピル−5,6−ジメチル−2−ベンゾチアゾリリデン)−エチリデン−2−チアゾリニリデン]メチル]3−エチル−4,5−ジフェニルチアゾリニウム・ヨウ素塩、1,1´,3,3,3´,3´−ヘキサメチル−2,2´−インドトリカルボシアニン・ヨウ素塩、3,3´−ジエチル−2,2´−チアトリカルボシアニン・過塩素酸塩、アンヒドロ−1−エチル−4−メトキシ−3´−カルボキシメチル−5´−クロロ−2,2´−キノチアシアニンベタイン、アンヒドロ−5,5´−ジフェニル−9−エチル−3,3´−ジスルホプロピルオキサカルボシアニンヒドロキシド・トリエチルアミン塩等が挙げられ、これらの1種、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
シアニン系色素と組み合わせて用いてもよい活性ラジカル発生化合物としては、ジアリールヨードニウム塩類、あるいは2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類が挙げられる。高い感光性が必要なときは、ジアリールヨードニウム塩類の使用が特に好ましい。上記ジアリールヨードニウム塩類の具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4,4´−ジクロロジフェニルヨードニウム、4,4´−ジメトキシジフェニルヨードニウム、4,4´−ジターシャリーブチルジフェニルヨードニウム、3,3´−ジニトロジフェニルヨードニウムなどのクロリド、ブロミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、トリフルオロメタンスルホン酸塩、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸塩などが例示される。又2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類の具体例としては、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)ー1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシフェニルビニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4´−メトキシ−1´−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0072】
(光カチオン重合開始剤系)
光カチオン重合開始剤系は、第1露光に対しては低感光性で、第1露光と異なる波長の光を照射する後露光に感光してブレンステッド酸あるいはルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物を重合させるような開始剤系とするとよく、第1露光の間はカチオン重合性化合物を重合させないものが特に好ましい。光カチオン重合開始剤系としては、例えばジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類、鉄アレン錯体類等が挙げられる。ジアリールヨードニウム塩類で好ましいものとしては上述した光ラジカル重合開始剤系で示したヨードニウムのテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネートなどが挙げられる。トリアリールスルホニウム塩類で好ましいものとしては、トリフェニルスルホニウム、4−ターシャリーブチルトリフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0073】
(その他)
感光材料は、必要に応じてバインダ樹脂、熱重合防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、着色料等を併用してもよい。バインダ樹脂は、ホログラム形成前の組成物の成膜性、膜厚の均一性を改善する場合や、レーザー光等の光の照射による重合で形成された干渉縞を後露光までの間、安定に存在させるために使用される。バインダ樹脂は、カチオン重合性化合物やラジカル重合性化合物と相溶性のよいものであればよく、例えば塩素化ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体、塩化ビニルとアクリロニトリルの共重合体、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。バインダ樹脂は、その側鎖又は主鎖にカチオン重合性基等の反応性を有していてもよい。
【0074】
(感光材料)
感光材料の組成において、組成物全質量に対して、カチオン重合性化合物は2質量%〜70質量%、好ましくは10重量%〜50質量%、ラジカル重合性化合物は30質量%〜90質量%、好ましくは40質量%〜70質量%、カチオン重合開始剤系は0.3質量%〜8質量%、好ましくは1質量%〜5質量%、ラジカル重合開始剤系は0.3質量%〜8質量%、好ましくは1質量%〜5質量%である。上記感光材料は、必須成分および任意成分をそのまま、もしくは必要に応じて、例えばメチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、トルエンなどの芳香族系溶媒、メチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒、メタノールなどのアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒と配合し、冷暗所にて例えば高速撹拌機を使用して混合することにより調製できる。
【0075】
このような感光材料からなる体積ホログラム形成用層は、上記感光材料を、(i)の感光材料と同様の塗布方法で塗布し、乾燥して形成することができる。塗布量は、適宜選択されるが、例えば乾燥後の膜厚が1μm〜50μmとすることができる。
【0076】
このように作製された体積ホログラム形成用層に、例えば波長300〜1200nmのレーザー光を使用して、ラジカル重合性化合物を重合させることにより、内部に干渉縞が記録される。この段階で、記録された干渉縞による回折光が得られ、ホログラムが形成されるが、未反応のまま残っているカチオン重合性化合部をさらに重合させるために、後露光として光カチオン重合開始剤系が感光する波長200nm〜700nmの光を全面照射して、ホログラムを形成することが好ましい。なお、後露光の前に体積ホログラム形成用層を熱や赤外線で処理することで回折効率、回折光のピーク波長、半値幅などを変化させることもできる。
【0077】
ここで、本態様の体積ホログラム層は、ガラス転移温度が80℃程度であることが好ましい。従って、破断点伸度を上記の範囲内とするためには、ホログラム形成材料を選択された該材料の硬化条件を予め予備実験で決定することが必要である。
【0078】
(3)基材
次に、本態様に用いられる基材について説明する。本態様に用いられる基材は、は、上記体積ホログラム層が形成可能なものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフイルム、セロハンフィルム、アセテートフィルム、ナイロンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム等を用いることができる。また、このような基材の厚さとしては、体積ホログラム転写箔の用途や種類等に応じて適宜選択されるものであるが、通常5μm〜200μm、好ましくは10μm〜50μmの範囲内とされる。
【0079】
(4)体積ホログラム転写箔
次に、本発明の体積ホログラム転写箔について説明する。本発明の体積ホログラム転写箔は、上記基材と、その基材上に形成された体積ホログラム層と、その体積ホログラム層上に形成された上記熱接着層とを有するものであれば、その構成等は特に限定されるものではなく、上述したように、剥離層や、プライマー層、バリア層等を有するものであってもよい。
【0080】
剥離層としては、通常上記基材と、上記体積ホログラムとの間に設けられ、体積ホログラム転写箔を用いて、体積ホログラムを被転写体に転写する際に、基材が剥離されやすいようにする層である。このような剥離層としては、例えばポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系およびメタアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、塩化ゴム、カゼイン、各種界面活性剤、金属酸化物等の1種または2種以上混合したものを用いることができる。特に本態様における剥離層は、基材と体積ホログラム層との間の剥離力が1〜5g/2.54mm巾(90°剥離)となるように、材質を適宜選択して形成することが好ましい。このような剥離層は、上記樹脂等をインキ化し、塗布等の公知の方法によって、上記基材表面に形成することが可能であり、その厚みは剥離力、箔切れ等を考慮すると、0.1μm〜2μmの範囲内であることが好ましい。また、この剥離層は、被転写体へ転写された後は、最表面へ露出するので、被転写体が流通する際や、使用される際には、保護層としての機能も果たすことができる。このような場合には、剥離保護層と呼ぶこともある。
【0081】
また、体積ホログラム層と熱接着層との接着性を向上させるために、または体積ホログラム層と、上記剥離層との接着性を向上させるために、必要に応じてプライマー層を形成してもよい。このようなプライマー層としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレンと酢酸ビニルあるいはアクリル酸等との共重合体、エポキシ樹脂等が使用できる。本態様に用いられるプライマー層は、上記樹脂を適宜溶剤に溶解または分散させて塗布液とし、公知のコーティング方法により塗布、乾燥することにより形成することができる。また、塗布液として、上記樹脂にモノマー、オリゴマー、プレポリマー等と、反応開始剤、硬化剤、架橋剤等を組み合わせてもよく、また主剤と硬化剤とを組み合わせて、塗布、乾燥、また必要に応じてエージング処理を行うことによって反応させて形成してもよい。このようなプライマー層の厚さは0.05〜10μm程度、好ましくは0.1μm〜5μm程度である。
【0082】
またさらに、本態様においては、上記剥離層と体積ホログラム層との間、または体積ホログラム層と熱接着層との間のいずれか一方、または双方にバリア層を形成してもよい。本態様に使用する感光材料や剥離層ならびに熱接着層(ヒートシール層)の組み合わせによっては、経時的に体積ホログラム層から他の層への低分子量成分の移行が起こり、これに起因して記録されたホログラムのピーク波長が青側(短波長側)に移行したり、剥離層等にこれが移行した場合には、その剥離性を変化する場合がある。そのため上記のようなバリア層を設けることによって、これらの阻害要因を解消することができる。
【0083】
このようなバリア層として用いる材料としては、そのバリア性を発現する材料であれば、特に制限はないが、通常、透明性有機樹脂材料を用いることによって、その目的を達成することができる。無溶剤系の3官能以上、好ましくは6官能以上の、紫外線や電子線等の電離放射線に反応する電離放射線硬化性エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂等を用いることが好ましく、特に、ウレタン変性アクリレート樹脂がそのバリア性の高さからさらに好ましい。
【0084】
また、これらの電離放射線硬化性樹脂としては、そのコーティング適性、最終的に得られるバリア層の硬度等を考慮すると、その分子量は500〜2000の範囲のものが好ましい。また、バリア層のコーティングは基本的に無溶剤系であるため、体積ホログラム層、剥離層、熱接着層のどの層にも積層することができる。
【0085】
またさらに、本態様の体積ホログラム転写箔は、反射層を有していてもよい。反射層としては、上記熱接着剤層と体積ホログラム層との間に形成されるものであり、この反射層に光を反射する例えば金属薄膜等を用いると、不透明タイプの体積ホログラムとなり、ホログラム層と屈折率差がある透明な物質を用いた場合には、透明タイプの体積ホログラムとなるがいずれも本発明に用いることが可能である。このような反射層は、昇華、真空蒸着、スパッタリング、反応性スパッタリング、イオンプレーティング、電気メッキ等の公知の方法により形成することが可能である。
【0086】
また、不透明タイプのホログラムを形成する金属薄膜としては、例えば、Cr、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Ge、Al、Mg、Sb、Pb、Pd、Cd、Bi、Sn、Se、In、Ga、Rb等の金属およびその酸化物、窒化物等を単独若しくは2種類以上組み合わせて形成される薄膜が挙げられる。上記金属薄膜の中でもAl、Cr、Ni、Ag、Au等が特に好ましく、その膜厚は1〜10,000nm、中でも20〜200nmの範囲であることが好ましい。
【0087】
一方、透明タイプのホログラムを形成する薄膜としては、ホログラム効果を発現できる光透過性のものであれば、いかなる材質のものも使用できる。例えば、ホログラム形成層(光硬化樹脂層)の樹脂と屈折率の異なる透明材料が挙げられる。この場合の屈折率はホログラム形成層の樹脂の屈折率より大きくても、小さくてもよいが、屈折率の差は0.1以上が好ましく、より好ましくは0.5以上であり、1.0以上が最適である。また、上記以外では20nm以下の金属性反射膜が挙げられ、好適に使用される透明タイプ反射層としては、酸価チタン(TiO )、硫化亜鉛(ZnS)、Cu・Al複合金属酸化物等が挙げられる。
【0088】
ここで、上記体積ホログラム転写箔を、被転写体へ転写する方法は、前述した通りである。被転写体である物品としては、特に限定されるものではなく、例えばプラスチックカード、携帯電話、金券、日用品またはCD−ROMの本体あるいは包装や梱包体等に適用可能である。
【0089】
2.第2の態様
次に、本発明の体積ホログラム転写箔の第2の態様について説明する。本発明の体積ホログラム転写箔の第2の態様は、基材と、上記基材上に形成された体積ホログラム層と、上記体積ホログラム層上に形成された熱接着層とを有する体積ホログラム転写箔であって、上記熱接着層が熱接着性を有する合成樹脂と、平均粒子径が上記熱接着層の膜厚より小さい微粒子とを含有するものである。
【0090】
上述したように、体積ホログラム転写箔の被転写体への転写性の向上が望まれていた。そこで、本発明者等は、特開2000−272295号公報の開示発明をさらに研究した結果、熱接着層に添加する微粒子(フィラー)を限定することで、箔切れ性が改良されて、被転写体への転写性が向上することを見出し、本発明に至った。またさらに、体積ホログラム転写箔中の熱接着層、保護層(OP層ともいう。)などの他部材にも、脆性材料を選択する必要がある。しかし、低温で熱可塑性を有する材料を用いねばならない熱接着層に関しては、微粒子(フィラー)を添加することで、脆性を向上させ、転写時の箔切れを補助し、良化させることができる。
【0091】
本態様によれば、上記平均粒子径の微粒子を含有することから、上記熱接着層に脆性を付与することができ、ホログラム像の明るさを保ったまま、良好な箔切れ性を有する体積ホログラム転写箔とすることができるのである。また、上記微粒子の平均粒子径が上記範囲であることにより、上記熱接着層の平滑性、または熱接着層と体積ホログラム層および被着体との密着力を損なうことなく、良好な転写性を得ることが可能となる。
【0092】
以下、本態様の体積ホログラム層の各構成について説明する。
【0093】
(1)熱接着層
まず、本態様の体積ホログラム転写箔に用いられる熱接着層について説明する。本態様に用いられる熱接着層は、接着層が熱接着性を有する合成樹脂と、平均粒子径が上記熱接着層の膜厚より小さいものであって、後述する体積ホログラム層と、被転写体とを接着する層である。
【0094】
上記微粒子の平均粒子径が上記熱接着層の膜厚より大きいと、上記熱接着層表面に凹凸が生じてしまい、熱接着層の平滑性が損なわれるため、体積ホログラム層および被着体との密着力が低下し、良好な転写性を得ることができない可能性があることから、本態様においては上記微粒子の平均粒子径は上記熱接着層の膜厚より小さいものとする。
【0095】
本態様に用いられる微粒子の平均粒子径として、具体的には、0.05μm〜10μm、中でも0.01μm〜6μmであることが好ましい。上記微粒子の平均粒子径が、上記範囲内より小さい場合には、熱接着層に脆性を付与することが困難となるからであり、また上記範囲より大きい場合には、分散性が悪く、熱接着層の平滑性が損なわれ、ホログラム像に悪影響を及ぼす可能性があるからである。ここで、本態様における平均粒子径は、上述した第1の態様と同様の方法により測定された値である。
【0096】
また、このような微粒子の含有量としては、熱接着層を構成する合成樹脂100質量部に対して10質量部〜500質量部、中でも20質量部〜200質量部であることが好ましい。上記微粒子の含有量が、上記範囲内より少ない場合には、箔切れ性が悪く、また上記範囲内より多い場合には、分散性が悪く、脆性にムラが生じて、熱接着層の箔切れ性が不安定となるからである。またさらに、被接着体との接着力の低下が起こる可能性もあるからである。
【0097】
ここで、本態様に用いられる熱接着層における上記合成樹脂、および上記微粒子については、上述した第1の態様と同様のものを用いることが可能であるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0098】
なお、本態様に用いられる上記微粒子は、熱架橋性基および光架橋性基を有しないものとすることができる。これは上記微粒子が、上記架橋性基を有しないことから、周りの上記合成樹脂と架橋しない。したがって、体積ホログラムの転写の際、応力を加えられることによって、上記微粒子と上記合成樹脂との間にクラックが生じやすく、熱接着層により大きな脆性を付与することが可能となるからである。
【0099】
また、このような熱接着層の膜厚は、体積ホログラム転写箔の種類や、被転写体の種類等により、適宜選択されるものであるが、通常1μm〜11μm程度、好ましくは1μm〜6μm程度とされる。上記範囲未満の厚さでは、被転写体との接着が十分でなく、この範囲を超える厚さは、箔切れ性が悪く、また、転写する際の加熱温度を高めなければならないからである。
【0100】
(2)体積ホログラム層
次に、本態様に用いられる体積ホログラム層について説明する。本態様に用いられる体積ホログラム層は、体積ホログラム像が形成可能な層であれば、特に限定されるものではないが、本態様においては、特に生産の効率上、下記の(i)、(ii)の感光材料が好適に用いられる。
【0101】
(i)バインダ樹脂、光重合可能な化合物、光重合開始剤および増感色素からなる感光材料。
【0102】
(ii)カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、特定波長の光に感光してラジカル重合性化合物を重合させる光ラジカル重合開始剤系、および特定波長の光に対しては低感光性であり、別の波長の光に観光してカチオン重合性化合物を重合させる光カチオン重合開始剤系からなる感光材料。
【0103】
ここで、本態様に用いられる上記感光材料については、上述した第1の態様で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0104】
(3)基材
次に、本態様に用いられる基材について説明する。本態様に用いられる基材は、は、上記体積ホログラム層が形成可能なものであれば、特に限定されるものではなく、上述した第1の態様で説明したものと同様のものを用いることが可能であるので、ここでの説明は省略する。
【0105】
(4)体積ホログラム転写箔
次に、本発明の体積ホログラム転写箔について説明する。本発明の体積ホログラム転写箔は、上記基材と、その基材上に形成された体積ホログラム層と、その体積ホログラム層上に形成された上記熱接着層とを有するものであれば、その構成等は特に限定されるものではなく、上述したように、剥離層や、プライマー層、バリア層、反射層等を有するものであってもよい。
【0106】
ここで、本態様の体積ホログラム転写箔においては、上記体積ホログラム層の25℃および120℃における破断点伸度として、25℃における破断点伸度が0.5%〜15%の範囲内、中でも1%〜10%の範囲内であることが好ましく、また120℃における破断点伸度が0.5%〜30%の範囲内、中でも1%〜20%の範囲内であることが好ましい。
【0107】
またさらに、上記熱接着層の25℃における破断点伸度は、0.5%〜15%の範囲内、中でも1%〜10%の範囲内であることが好ましい。上記体積ホログラム層および上記熱接着層の破断点伸度をそれぞれ、上記範囲内とすることにより、体積ホログラム転写箔の箔切れ性を良好なものとすることができるからである。また、上記体積ホログラム層または上記熱接着層のどちらか一方では効果が不十分であるといえる。上記破断点伸度は、上述した第1の態様と同様の方法により測定した値である。
【0108】
ここで、本態様に用いられる剥離層や、プライマー層、バリア層、反射層等については、上述した第1の態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0109】
3.体積ホログラム転写箔の製造方法
次に、上述した体積ホログラム転写箔の製造方法について説明する。上述した体積ホログラム転写箔のどちらの態様においても、下記の方法で製造することができる。
【0110】
本発明の体積ホログラム転写箔の好ましい製造方法としては、体積ホログラム層を有する第1フィルム、熱接着層を有する第2フィルム、および剥離層を有する第3フィルムをそれぞれ独立の工程によって別々に用意し、後の工程において用途に応じて、これらを組み合わせて積層する方法である。
【0111】
具体的には、まず体積ホログラム層を有する第1フィルム、熱接着層を有する第2フィルム、および剥離層を有する第3フィルムをそれぞれ独立の工程によって別々に用意する。続いて、第1フィルムの体積ホログラム層にホログラム画像を形成した後、第2フィルム、必要に応じて第3フィルムを積層していけばよい。ここで、上述した基材は、第1フィルム中に含まれていてもよく、また第3フィルムに含まれていてもよい。ここで、第1ないし第3フィルムの積層は、ドライプロセスにより行うことができ、溶剤を使用する必要がないので、簡易な設備で温和な条件で積層することができるので、工程上有利である。
【0112】
さらに、本発明においては、体積ホログラム層と剥離層と基材とを有するフィルムと、熱接着層を有するフィルムとを、それぞれ独立の工程によって用意する方法、ならびに、体積ホログラム層と熱接着層とを有するフィルムと、剥離層と基材とを有するフィルムをそれぞれ独立の工程によって用意する方法も包含する。さらにまた、本発明においては、上記第1フィルムの体積ホログラム層に体積ホログラム像を記録した後、第3フィルムを積層し、現像処理し、これに第2フィルムを積層する方法を包含する。
【0113】
本発明の体積ホログラム転写箔の製造に用いられる、第1フィルム、第2フィルム、第3フィルムの断面図を図5に示す。図5では、層構成をわかりやすくするために、上から図5(A)が第3フィルム、図5(B)が第1フィルム、図5(C)が第2フィルムである。そして、各フィルム間に基体または剥離紙がある場合には、それらを剥離して、露出した層同士を積層する。積層方法は、一般的には加熱又は非加熱の2本のロール間を通過させるか、または加熱又は非加熱の板に挟んで加圧する、簡易なドライプロセス法により積層(ラミネート)すればよい。
【0114】
図5(B)に示す第1フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PETと略す)等の基体8に体積ホログラム層2を形成し、さらに剥離紙9としての剥離層PETを積層したもの(基体/体積ホログラム層/剥離紙)である。この場合、体積ホログラム層の粘着力は弱いので、剥離紙9の替わりに基体8を用いて第1フィルム(基体/体積ホログラム層/基体)としてもよい。また体積ホログラム層を記録する際に、レーザー光を照射する側のPETには、延伸配向が少なく複屈折の小さい、光学用のPETが最適である。
【0115】
なお、第1フィルムと第3フィルムとを積層しない場合には、上記基体を、上述した基材とすることも可能である。
【0116】
また、図5(C)に図示する第2フィルムとしては、剥離紙9としての剥離性PET上に、熱接着層3を形成し、該熱接着層3上に剥離紙9としての剥離性PETを形成したもの(剥離紙/熱接着層/剥離紙)である。この場合、熱接着層は常温での粘着性はないので、どちらか一方の剥離紙はなくともよい。
【0117】
さらに、図5(A)に図示する第3フィルムとしては、PET等の基材1上に、剥離層5を形成したものである。
【0118】
上記の第1から第3フィルムを用いて体積ホログラム転写箔を形成することができる。まず、図5(B)に図示する第1フィルムの体積ホログラム層2に所定のホログラム画像を記録(露光)した後、基体8を剥離して除去し、図5(A)に図示する第3フィルムの剥離層5と体積ホログラム層2とを対向するようにして、加熱下(例えば100℃〜180℃)で積層する。
【0119】
次いで、これを現像処理ラインに導入して、所定の加熱処理およびUV処理を施して、記録画像を固定する。さらに、体積ホログラム層2に積層された剥離紙9を剥離して除去し、体積ホログラム層2を露出し、図5(C)に示す第2フィルムの剥離紙9を剥離して露出した熱接着層3と体積ホログラム層2とを対向するように加熱下(例えば100℃〜180℃)で積層することによって、基材/剥離層/体積ホログラム層/熱接着層/剥離紙の層構成が得られる。このような構成体から剥離紙を剥離することによって、基材/剥離層/体積ホログラム層/熱接着層からなる転写箔を得ることができる。また、用途によっては、第3フィルムを用いずに、基材/体積ホログラム層/熱接着層/剥離紙の層構成としてもよい。
【0120】
ここで、剥離紙としては、当業者がいわゆるセパ紙(セパレート紙、剥離紙とも呼ばれる)と呼ぶ上質紙、コート紙、含浸紙、プラスチックフィルム等の基材フィルムの片面に離型性を有するものである。本発明に使用される剥離紙の基材フィルムとしては、表面平滑性、耐熱性等からポリエチレンテレフタレートが好適であり、これは表面離型処理型PETフィルムともいう。該プラスチックフィルムの厚さは、特に制限はないが、通常、6μm〜250μm程度、12μm〜100μm程度が好適である。この範囲未満であると、薄くて機械的強度が不足し、切断したり、シワが発生したりするからである。また、この範囲以上では、強度が過剰でありコストもかかるからである。
【0121】
このような剥離紙に用いられる離型層としては、離型性を有する材料であれば、特に限定されるものではないが、例えば、シリコーン樹脂、有機樹脂変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アミノアルキド樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、エマルジョン方型、溶剤型、無溶剤型のいずれも使用することができる。
【0122】
また、このような離型層の厚さは、特に制限はないが、通常0.01μm〜3μm程度、0.05μm程度〜1μm程度とすることができる。この厚みが0.01μm以下である場合には、基材フィルムの被覆が十分ではなく剥離不良が発生するからである。一方、厚みが3μmより厚い場合には、未反応物や低分子のシリコーンの絶対量が増え、低分子シリコーンの移行やブロッキングの原因となるからである。離型層の剥離力は、粘着剤テープに対し、1〜2000mN/cm程度、さらに100〜1000mN/cmであることが好ましい。離型層の剥離力が1mN/cm未満の場合は、粘着シートや非粘着剤との剥離力が弱く、剥がれたり部分的に浮いたりする。また2000mN/cmより大きい場合は、離型層の剥離力が強く、剥離しにくい。安定した離型性や加工性の点で、ポリジメチルシロキサンを主成分とする付加及び/または重縮合型の剥離紙用硬化型シリコーン樹脂が好ましい。
【0123】
このような離型層は、離型層成分を分散および/または溶解した塗布液、上記基材フィルムの片面に塗布し、加熱乾燥および/または硬化させて形成する。該塗布液の塗布方法としては、公知で任意の塗布方法が使用でき、例えば、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、コンマコート、バーコート、ワイヤーバーコート、ロッドコート、キスコート、ナイフコート、ダイコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート等である。また、離型層は必要に応じて、基材フィルムの少なくとも片面または全面の一部に形成すればよい。
【0124】
4.その他
ここで、本発明においては、第1ないし第3フィルムの各フィルムの層間接着力を制御する方法も包含する。すなわち、上記の転写箔の層構成において、剥離層と基材との間の層間接着力Aと、剥離層と体積ホログラム層との間の層間接着力Bと、体積ホログラム層と熱接着層との間の層間接着力Cの、相対関係並びにこのBの値が、下記の関係を満足することが好ましい。
層間接着力: C≧B>A
B値: 600gf/2.54mm幅 。
【0125】
また、本発明の好ましい態様においては、剥離層が分子量20000〜100000程度のアクリル系樹脂単独、または該アクリル系樹脂と分子量8000〜20000の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂とからなり、さらに添加剤として分子量1000〜5000のポリエステル樹脂が1〜5質量%含有する組成物からなることが特に好ましい。
【0126】
また、第2フィルムは、剥離紙、接着層、剥離紙からなり、両側が剥離層からなるものとすることができる。前述したように、第2フィルムから一方の剥離紙を剥がす際に、両側の剥離紙の剥離力が同じでは、一方のみがスムースに剥がれない。このために、両側の剥離紙の剥離力に差をつけておく。該剥離力の差は、剥離紙の基材フィルムに塗布されている離型層を変えればよい。または当業者が強剥離タイプ、中剥離タイプ、弱剥離タイプ、再剥離タイプ等と呼ぶグレードの剥離紙が市販されており、これらの中から適宜選択してもよい。
【0127】
5.提供される発明
以上のように、本発明においては、以下の発明を提供することができる。
(1)基材と、上記基材上に形成された体積ホログラム層と、上記体積ホログラム層上に形成された熱接着層とを有する体積ホログラム転写箔であって、上記体積ホログラム層の25℃における破断点伸度が0.5%〜15%の範囲内、120℃における破断点伸度が0.5%〜30%の範囲内であり、かつ上記熱接着層の25℃における破断点伸度が0.5%〜15%の範囲内であることを特徴とする体積ホログラム転写箔。
本発明によれば、熱接着層の破断点伸度を、体積ホログラム層の上記破断点伸度と同等、またはそれ以下にすることで、ホログラム像の明るさを保ったまま、良好な箔切れ性を持たせて、被転写体へ容易に転写することのできる転写性が改善された体積ホログラム転写箔が提供される。
(2)上記熱接着層が微粒子を含有することを特徴とする体積ホログラム転写箔。
これにより、上記熱接着層に脆性を付与することができ、熱接着層の破断点伸度を上記の範囲内とすることが可能となる。
(3)基材と、上記基材上に形成された体積ホログラム層と、上記体積ホログラム層上に形成された熱接着層とを有する体積ホログラム転写箔であって、上記熱接着層が熱接着性を有する合成樹脂と、平均粒子径が上記熱接着層の膜厚より小さい微粒子とを含有することを特徴とする体積ホログラム転写箔。
(4)上記熱接着層の膜厚が1μm〜11μmの範囲内であり、かつ上記微粒子の平均粒子径が0.05μm〜10μmであることを特徴とする体積ホログラム転写箔。
(5)上記微粒子が、熱架橋性基および光架橋性基を有しないものであることを特徴とする体積ホログラム転写箔。
(6)上記体積ホログラム層の25℃における破断点伸度が0.5%〜15%の範囲内、120℃における破断点伸度が0.5%〜30%の範囲内であり、かつ上記熱接着層の25℃における破断点伸度が0.5%〜15%の範囲内であることを特徴とする体積ホログラム転写箔。
(7)上記微粒子が、熱可塑性を有し、かつガラス転移温度が120℃以上の有機微粒子であることを特徴とする体積ホログラム転写箔。
(8)上記微粒子が、樹脂ビーズ顔料であることを特徴とする体積ホログラム転写箔。
(9)上記微粒子が、蛍光性微粒子であることを特徴とする体積ホログラム転写箔。
(10)上記基材と、上記体積ホログラム層との間に剥離層を有することを特徴とする体積ホログラム転写箔。
【0128】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0129】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0130】
(実施例1)
「材料の準備」
ホログラム形成層を有する第1フィルム(PETフィルム/体積型ホログラム形成材料/表面離型処理PETフィルム)、剥離層を有する第3フィルム(剥離層/PETフィルム)、及び微粒子を添加した熱接着層を有する第2フィルム(熱接着層/表面離型PETフィルム)をそれぞれ独立の工程によって別々に用意した。
【0131】
第1フィルムは、PETフィルム(ルミラーT60(50μm);東レ社製)上に下記の感光性材料組成物を乾燥膜厚10μmになるように塗布し、表面離型処理PETフィルム(トーセロ社製、SP−PET(38μm))をラミネートして作製した。
【0132】
感光性材料組成物
・ポリメチルメタクリレート系樹脂(分子量200,000) 500質量部
・3,9−ジエチル−3´−カルボキシルメチル−2,2´−チアカルボキシアニン沃素塩 5質量部
・ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート 60質量部
・2,2´−ビス[4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン
800質量部
・ペンタエリスリトールポリグルシジルエーテル 800質量部
第3フィルムはPETフィルム(ルミラーT60(50μm);東レ社製))上に下記の剥離層組成物を乾燥膜厚2μmとなるように塗布して作製した。
【0133】
剥離層組成物
・ポリメチルメタクリレート樹脂(Mw=35000) 97質量部
・ポリエチレンワックス(Mw=10000) 3質量部
・ポリエステル(Mw=1500) 0.3質量部
・メチルエチルケトン 200質量部
・トルエン 200質量部
第2フィルムは、表面離型処理PETフィルム(SP−PET(50μm);トーセロ社製)上に、下記の熱接着層組成物を乾燥後膜厚3μmになるように塗布して作製した。
【0134】
熱接着層組成物
・感熱性接着剤(A−928;大日本インキ化学工業社製) 100質量部
・シリカ微粒子(平均粒径50nm) 20質量部
・トルエン 600質量部
・メチルエチルケトン 100質量部
「ホログラム記録・剥離性表面保護層の積層」
まず、514nmの波長を持つレーザー光を用いてリップマンホログラムを記録し、100℃で10分加熱した第1フィルムの片面の表面離型処理PETフィルムを剥がし、剥がした面に第3フィルムの表面保護層面を80℃にてラミネートした。これによりPETフィルム/剥離層/体積ホログラム/PETフィルムからなる積層体を得た。
【0135】
「熱接着層の積層」
次に、ホログラム層を高圧水銀灯にて2500mJ/cmの照射による定着処理した後、感材に接するPETフィルムを剥がし、剥がした面に第2フィルムの感熱性接着剤面を130℃にてラミネートした。これによりPETフィルム/剥離性表面保護層/体積ホログラム層/微粒子を含んだ感熱性接着剤/表面離型処理PETフィルムからなる本発明の体積ホログラム転写箔の積層体を得た。
【0136】
該実施例1のホログラム層の破断点伸度は25℃では6%、120℃では13%であった。また、熱接着層の接着剤の25℃における破断点伸度は6.4%であった。また、転写性は、箔切れ性が非常に良好であった。また、ホログラム像も明るく、非常に観察しやすい転写箔が得られた。
【0137】
(比較例1)
「材料の準備」
第2フィルム(熱接着層)以外のフィルムは実施例1で使用した材料を使用する。
【0138】
第2フィルムとして表面離型処理PETフィルム(SP−PET(50μm);トーセロ社製)上に、下記の熱接着層組成物を乾燥膜厚3μmとなるように塗布して作製した。
【0139】
熱接着層組成物
・感熱性接着剤(A−928;大日本インキ化学工業社製) 100質量部
・トルエン 600質量部
「ホログラム転写箔の作製」
実施例1と同様の方法により、PETフィルム/剥離性表面保護層/体積ホログラム/微粒子を含まない感熱性接着剤/表面離型処理PETフィルムからなる体積ホログラム転写箔を得た。該比較例1の体積ホログラム転写箔は、その熱接着層の接着剤の25℃における破断点伸度は20%以上であった。また、転写性は、感熱性接着剤の伸びのため、箔切れ性が悪く、バリが発生して、被転写物に良好に転写することができなかった。
【0140】
(実施例2)
シリカ微粒子の代わりに、蛍光微粒子として、平均粒径10μmのルミノーバG−300F(根元特殊化学社製、蛍光性顔料商品名)を用い、熱接着層を11μmとした以外は、実施例1と同様にして体積ホログラム転写箔を得た。該体積ホログラム転写箔は、その熱接着層の接着剤の25℃における破断点伸度は13.5%であった。また、転写性は箔切れが非常に良好であった。また、ホログラム像も明るく、非常に観察しやすい転写箔が得られた。
【0141】
(実施例3)
シリカ微粒子20質量部の代わりに、アクリル微粒子(積水化成品工業社製テクポリマーMB−5:平均粒径5μm)20質量部を用い、熱接着層の膜厚を6μmとした以外は、実施例1と同様にして体積ホログラム転写箔を得た。該体積ホログラム転写箔は、その熱接着層の接着剤の25℃における破断点伸度は5.3%であった。また、転写性は箔切れが非常に良好であった。また、ホログラム像も明るく、非常に観察しやすい転写箔が得られた。
【0142】
(実施例4)
シリカ微粒子20質量部の代わりに、アクリル微粒子(綜研化学社製ケミスノー・MP−1000:平均粒径400nm)20質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして体積ホログラム転写箔を得た。該体積ホログラム転写箔は、その熱接着層の接着剤の25℃における破断点伸度は7.5%であった。また、転写性は箔切れが非常に良好であった。また、ホログラム像も明るく、非常に観察しやすい転写箔が得られた。
【0143】
(実施例5)
シリカ微粒子20質量部の代わりに、アクリル微粒子(綜研化学社製ケミスノー・MR−2G:平均粒径1μm)20質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして体積ホログラム転写箔を得た。該体積ホログラム転写箔は、その熱接着層の接着剤の25℃における破断点伸度は4.5%であった。また、転写性は箔切れが非常に良好であった。また、ホログラム像も明るく、非常に観察しやすい転写箔が得られた。
【0144】
(実施例6)
シリカ微粒子20質量部の代わりに、アクリル微粒子(綜研化学社製ケミスノー・MS−300X:平均粒径100nm)20質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして体積ホログラム転写箔を得た。該体積ホログラム転写箔は、その熱接着層の接着剤の25℃における破断点伸度は9.8%であった。また、転写性は箔切れが非常に良好であった。また、ホログラム像も明るく、非常に観察しやすい転写箔が得られた。
【0145】
(実施例7)
シリカ微粒子20質量部の代わりに、アクリル微粒子(綜研化学社製ケミスノー・MP−1000:平均粒径400nm)20質量部を用い、熱接着層の膜厚を3μmから1μmに変更した以外は、実施例1と同様にして体積ホログラム転写箔を得た。該体積ホログラム転写箔は、その熱接着層の接着剤の25℃における破断点伸度は7.5%であった。また、転写性は箔切れが非常に良好であった。また、ホログラム像も明るく、非常に観察しやすい転写箔が得られた。
【0146】
(実施例8)
シリカ微粒子を200質量部用いた以外は、実施例1と同様にして体積ホログラム転写箔を得た。該体積ホログラム転写箔は、その熱接着層の接着剤の25℃における破断点伸度は3.2%であった。また、転写性は箔切れが非常に良好であった。また、ホログラム像も明るく、非常に観察しやすい転写箔が得られた。
【0147】
(比較例2)
実施例1に記載の体積ホログラム記録用感光性材料組成物を下記のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして体積ホログラム転写箔を得た。
【0148】
感光性材料組成物
・ポリ酢酸ビニル樹脂(分子量100,000) 500質量部
・2−フェノキシエチルアクリレート 600質量部
・2−エトキシエチルアクリレート 600質量部
・ヘキサアリルピイミダゾール 50質量部
・2,5−ビス[4−(ジエチルアミノ)フェニル]メチレン−シクロペンタノン
5質量部
ホログラム層の破断点伸度は、25℃で30%、120℃では測定装置に設置直後に伸びきってしまい、測定が不可能であった。また、転写性は、ホログラム層の伸びのため、箔切れ性が悪く、バリが発生して、被転写物に良好に転写することができなかった。
【0149】
(比較例3)
シリカ微粒子20質量部の代わりに、アクリル微粒子(綜研化学社製ケミスノー・MR−20G:平均粒径20μm)20質量部を用い、熱接着層の膜厚を3μmから11μmに変更した以外は、実施例1と同様にして体積ホログラム転写箔を得た。該体積ホログラム転写箔は、その熱接着層の接着剤の25℃における破断点伸度は3.8%であった。微粒子の平均粒径が熱接着層の膜厚より大きいため、微粒子の影響により熱接着層表面の凹凸が大きく、ホログラム層との密着が悪く、被転写物に良好に転写することができなかった。
【0150】
(比較例4)
感熱接着剤層の厚みを3μmから15μmに変更した以外は、実施例1と同様にして体積ホログラム転写箔を得た。この場合、熱接着層が厚すぎることから、被転写物に良好に転写することができなかった。
【符号の説明】
【0151】
1 … 基材
2 … 体積ホログラム層
3 … 熱接着層
4 … プライマー層
5 … 剥離層
6 … 被着体
7 … スタンパ
8 … 基体
9 … 剥離紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に形成された体積ホログラム層と、前記体積ホログラム層上に形成された熱接着層とを有する体積ホログラム転写箔であって、前記熱接着層が熱接着性を有する合成樹脂と、平均粒子径が前記熱接着層の膜厚より小さい微粒子とを含有することを特徴とする体積ホログラム転写箔。
【請求項2】
前記熱接着層の膜厚が1μm〜11μmの範囲内であり、かつ前記微粒子の平均粒子径が0.05μm〜10μmであることを特徴とする請求項1に記載の体積ホログラム転写箔。
【請求項3】
前記微粒子が、熱架橋性基および光架橋性基を有しないものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の体積ホログラム転写箔。
【請求項4】
前記体積ホログラム層の25℃における破断点伸度が0.5%〜15%の範囲内、120℃における破断点伸度が0.5%〜30%の範囲内であり、かつ前記熱接着層の25℃における破断点伸度が0.5%〜15%の範囲内であり、
前記体積ホログラム層の各温度における破断点伸度は、幅5mm〜10mmの範囲内、長さ20mm〜50mmの範囲内、かつ、厚さ20μm〜100μmの範囲内である試験片を用いて、引っ張り速度2mm/minで測定されたものであり、
前記熱接着層の25℃における破断点伸度は、幅25mm、長さ50mm、かつ、厚さ20μmの試験片を用いて、引っ張り速度2mm/minで測定するJIS−K−7127に準じた測定方法で測定されたものであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の体積ホログラム転写箔。
【請求項5】
前記微粒子が、熱可塑性を有し、かつガラス転移温度が120℃以上の有機微粒子であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の体積ホログラム転写箔。
【請求項6】
前記微粒子が、樹脂ビーズ顔料であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の体積ホログラム転写箔。
【請求項7】
前記微粒子が、蛍光性微粒子であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の体積ホログラム転写箔。
【請求項8】
前記基材と、前記体積ホログラム層との間に剥離層を有することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載の体積ホログラム転写箔。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−793(P2010−793A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173046(P2009−173046)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【分割の表示】特願2003−201643(P2003−201643)の分割
【原出願日】平成15年7月25日(2003.7.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】