説明

体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造方法

【課題】
体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体を、位置あわせ等の煩雑な工程を要することなく効率よく生産する方法を提供する。
【解決手段】
基材1上に、コレステリック液晶層2を形成した後、このコレステリック液晶層2上にさらに体積型ホログラム層3を形成する。コレステリック液晶層2から基材1を剥離し、基材1が剥離されたコレステリック液晶層2の面に粘着層4を形成し、さらに粘着層4に基材5を設ける。最終的には、この積層体から、型抜きをして、ラベル形態の体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不正な意図に基づく偽造や改ざん等により得られたものとの区別を可能にした真偽判定用媒体を物品に適用するのに適するラベルの形態や転写箔の形態に加工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、クレジットカード、預貯金用カード、プリペイドカード、定期券、通帳、パスポート、身分証明書等は、偽造されたり改ざんされたりして、不正に使用されると種々の支障を招く恐れがあり、偽造や改ざんによる損害を防止するために、そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。また、媒体に記録された音楽ソフト、映像ソフト、ゲームソフト、もしくはコンピュータソフト、プリンタ用消耗品等も、やはり偽造の対象となるので、同様に、真正性を識別できる機能を有することが望まれる。従来、これらの物品も含めた種々の物品の真正性の識別を可能にする目的で、ホログラムが多用されている。
【0003】
特許文献1(特開2004−230571号公報)には、熱収縮性基材フィルムの一方の面に接着剤層、光反射層、印刷プライマー層、印刷層を順次積層し、他方の面に粘着剤層、離型シートを順次積層した積層体からなることを特徴とするホログラムラベルが記載されている。
【0004】
また、特許文献2(特開平11−151877号公報)には、対象物に光学的に認識可能に設けて該対象物の真正性を識別するための対象物の識別媒体であって、反射層に高分子コレステリック液晶を設けたホログラムからなることを特徴とする対象物の識別媒体が開示されている。
【特許文献1】特開2004−230571号公報
【特許文献2】特開平11−151877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているようなホログラムは、単純な再生照明光あるいは白色光により再生可能であり、これを複製等の手法により偽造することは必ずしも困難なことではない。そして一旦偽造が可能となれば、ホログラムは精密なものであるだけに、真正なホログラムと偽造されたホログラムとの区別はなかなかに困難である。そのため、このようなホログラムからなるラベル、シール等のセキュリティー性は必ずしも完全なものではなかった。
【0006】
このような単純なホログラムに対して、出願人は一段と高いセキュリティー性を確保するために、ホログラムの機能とコレステリック液晶層が示す円偏光性による識別性機能とを組み合わせたラベル(体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体)を開発した。
【0007】
なお、本明細書中において「液晶層」という用語は、光学的に液晶の性質を有する層という意味で用い、層の状態としては、流動性のある液晶相の状態の他、液晶相の持つ分子配列を保って固化された固相の状態も含む。
【0008】
このようなホログラムの機能とコレステリック液晶層が示す円偏光性による識別性機能とを組み合わせたラベルの概略を説明する。このようなラベルは、主として、体積型ホログラム層とコレステリック液晶層の2層構造を有しており、体積型ホログラム層は、例えば、適当な支持体フィルム上に体積型ホログラム記録材料を塗布した後、物体からの光の波面に相当する干渉縞が透過率変調、屈折率変調の形で層内に記録されたもので、複製に際しても、体積型ホログラム原版を密着させて露光現像することにより容易に作製できる。記録材料としては、銀塩材料、重クロム酸ゼラチン乳剤、光重合性樹脂、光架橋性樹脂等公知の体積型ホログラム記録材料が挙げられ、特に、乾式の体積位相型ホログラム記録用途の感光性材料であり、マトリックスポリマー、光重合可能な化合物、光重合開始剤及び増感色素とからなるものが挙げられる。コレステリック液晶層は、液晶分子の物理的な分子配列として、液晶分子のダイレクター(分子長軸)の方向が液晶層の厚さ方向に連続的に回転してなる螺旋構造をとっており、このような液晶分子の物理的な分子配列に基づいて、一方向の円偏光成分と、これと逆回りの円偏光成分とを分離する偏光分離特性を有している。すなわち、このようなコレステリック液晶層に入射した自然光は、右旋および左旋の2つの円偏光成分に分離され、一方は透過され、他方は反射される。この現象は、円偏光二色性として知られ、液晶分子の螺旋構造における螺旋巻き方向を適宜選択すると、この螺旋巻き方向と同一の旋光方向を有する円偏光成分が選択的に反射される。コレステリック液晶層の材料としては、例えば、3次元架橋可能な重合性モノマー分子または重合性オリゴマー分子を用いることができる。重合性モノマー分子または重合性オリゴマー分子を所定の温度で液晶層にした場合には、これがネマチック状態になるが、ここに任意のカイラル剤を添加すれば、カイラル・ネマチック液晶(コレステリック液晶)となる。そして、この状態で、予め添加しておいた光開始剤と外部から照射した紫外線とによって重合を開始させるか、または電子線で直接重合を開始させることにより、液晶相状態のコレステリック液晶層′中の液晶分子を3次元架橋(ポリマー化)して硬化させ、固相状態のコレステリック液晶層として固化させる。
【0009】
以上のように構成された体積型ホログラム層とコレステリック液晶層の2層構造を有するラベルは、目視によれば、通常のホログラムと同様に、色が変わったり、立体的に見えたりする従来通りの真贋判定をすることができる。さらに、上記のようなコレステリック液晶層も体積型ホログラム層に重ねられているために、例えば、右円偏光を通す偏光板、左円偏光を通す偏光板からなる眼鏡を用意しておき、当該眼鏡を通してラベルを見ると、一方の偏光板ではラベルからの反射光が確認でき、他方の偏光板ではラベルからの反射光が確認できない、という現象により、一歩進んださらなる真贋判定をすることができる。
【0010】
特許文献2には、対象物の真正性を識別するための識別媒体であって、反射層に高分子コレステリック液晶を設けたホログラムが記載されているが、引用文献2に記載されているもののホログラムはリレーフ型であり、その反射層としてコレステリック液晶層が貼られた構造となっており、製造時貼り合わせの際、位置あわせが煩雑であり、生産性に劣るものであった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以上のようなセキュリティー媒体の生産性に係る課題を解決するためのもので、請求項1に係る発明は、体積型ホログラム層とコレステリック液晶層の2層構造を有する体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造方法であって、第1基材上にコレステリック液晶層を形成する工程と、該コレステリック液晶層上に体積型ホログラム層を形成する工程と、該第1基材を剥離する工程と、該第1基材が剥離された該コレステリック液晶層の面に粘着層を形成する工程と、該粘着層に第2基材を設ける工程と、からなることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に係る発明は、体積型ホログラム層とコレステリック液晶層の2層構造を有する体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造方法であって、第1基材上にコレステリック液晶層を形成する工程と、該コレステリック液晶層上に体積型ホログラム層を形成する工程と、該第1基材の該コレステリック液晶層が形成されていない方の面に粘着層を形成する工程と、からなることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に係る発明は、体積型ホログラム層とコレステリック液晶層の2層構造を有する体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造方法であって、第1基材上にコレステリック液晶層を形成する工程と、該コレステリック液晶層上に体積型ホログラム層を形成する工程と、該第1基材を剥離する工程と、該第1基材が剥離された該コレステリック液晶層の面にヒートシール層を形成する工程と、からなることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に係る発明は、請求項3に体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造方法であって、該ヒートシール層に第2基材を設ける工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、セキュリティー的に信頼性の高い体積型ホログラム層とコレステリック液晶層の2層構造を有する体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体を、位置あわせ等の煩雑な工程を要することなく効率よく生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
I.コレステリック液晶層の形成
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1に、本発明の体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造工程の経過の断面図を示す。図1に示すように、本発明の体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造方法では、まず基材1を用意し、その上にコレステリック液晶層2を形成する。
【0017】
基材1としては、コレステリック液晶層2が形成可能であり、ある程度の機械的強度を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えばPETフィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフイルム、ポリカーボネートフイルム、セロハンフィルム、アセテートフィルム、ナイロンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム等を用いることができる。また、このような基材の厚さとしては、適宜選択され得るものであるが、通常5μm〜200μm、好ましくは10μm〜50μmの範囲内とされる。
【0018】
なお、コレステリック液晶層2を形成する際、配向膜Aを予め設ける場合と、省略する場合がある。配向膜Aを設けておくと、配向膜A上部に塗布される液晶は、プラーナー配向状態となり、配向膜Aがないと、液晶はこのような配向状態とならない。配向膜Aを設けておくと、鏡面のような反射が得られるラベル(媒体)を製造することができ、また、配向膜Aがないと、液晶自身による自己配向性に依存するので、散乱性があり、多少斜めからの目視でも視認性の良いラベル(媒体)を製造することができる。なお、散乱性コレステリック液晶層の場合でも配向膜を設けてもよく、配向膜の分子配列規制力の違いにより散乱度合いの制御を任意に行うことで、任意の視認条件に適した散乱特性を付与することができる。
【0019】
以下、コレステリック液晶層2を積層(固着)させるための各工程(塗布工程、配向処理工程及び硬化処理工程)の詳細について説明する。
(塗布工程)
塗布工程においては、コレステリック規則性を示す液晶性組成物を塗布することにより、コレステリック液晶層を形成する。このとき、液晶性組成物を塗布する方法としては、既存の任意の方法を用いることができる。具体的には、ロールコート法やグラビアコート法、バーコート法、スライドコート法、ダイコート法、スリットコート法、浸漬法、スクリーン印刷法などを用いることができる。また、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)システムによるコーティングなどを用いることができる。
【0020】
なお、塗布される液晶性組成物としては、コレステリック規則性を示すカイラルネマチック液晶やコレステリック液晶を用いることができる。このような材料としては、コレステリック液晶構造を形成し得る液晶材料であれば特に限定されるものではないが、特に、分子の両末端に重合性の官能基があるような重合性の液晶材料が、硬化後に光学的に安定したコレステリック液晶層2を得る上で好ましい。
【0021】
また、塗布工程において、塗布を一部分のみに対して施すことによって、例えば、文字、図形等のパターンが形成されたコレステリック液晶層を実現することができる。
【0022】
以下、液晶性組成物としてカイラルネマチック液晶を用いる場合を例に挙げて説明する。なお、カイラルネマチック液晶は、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料とカイラル剤とを混合したものである。ここで、カイラル剤は、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料の螺旋ピッチ長を制御し、液晶性組成物が全体としてコレステリック規則性を呈するようにするためのものである。また、このような液晶性組成物には、光重合開始剤や適当な添加剤が添加される。
【0023】
ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料の一例としては、例えば、下記の一般式(1)で表わされる化合物や、下記の式(2−i)〜(2−xi)で表される化合物を挙げることができる。また、これらの化合物を単独で、もしくは混合して用いることができる。
【0024】
【化1】

【0025】
【化2】

【0026】
上記一般式(1)において、R1及びR2はそれぞれ水素又はメチル基を示すが、液晶相を示す温度範囲の広さからR1及びR2はともに水素であることが好ましい。Xは水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基、ニトロ基のいずれであっても差し支えないが、塩素又はメチル基であることが好ましい。また、上記一般式(1)において、分子鎖両端の(メタ)アクリロイロキシ基と芳香環とのスペーサーであるアルキレン基の鎖長を示すa及びbは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数をとり得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。a=b=0である一般式(1)の化合物は、安定性に乏しく、加水分解を受けやすい上に、化合物自体の結晶性が高い。また、a及びbがそれぞれ13以上である一般式(1)の化合物は、アイソトロピック転移温度(TI)が低い。この理由から、これらの化合物はどちらも液晶相を示す温度範囲が狭く好ましくない。
【0027】
なお、以上においては、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料として重合性液晶モノマーの例を挙げて説明したが、これに限らず、重合性液晶オリゴマーや重合性液晶高分子、液晶ポリマーなどを用いることも可能である。このような重合性液晶オリゴマーや重合性液晶高分子、液晶ポリマーとしては、従来から提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。
【0028】
一方、カイラル剤は、光学活性な部位を有する低分子化合物であり、主として分子量1500以下の化合物である。カイラル剤は主として、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料が発現する正の一軸ネマチック規則性に螺旋構造を誘起させる目的で用いられる。この目的が達成される限り、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料との間で溶液状態あるいは溶融状態において相溶し、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料の液晶性を損なうことなく、これに所望の螺旋構造を誘起できるものであれば、カイラル剤としての低分子化合物の種類は特に限定されない。
【0029】
なお、このようにして液晶に螺旋構造を誘起させるために用いられるカイラル剤は、少なくとも分子中に何らかのキラリティーを有していることが必要である。従って、ここで用いられるカイラル剤としては、例えば1つあるいは2つ以上の不斉炭素を有する化合物、キラルなアミンやキラルなスルフォキシドなどのようにヘテロ原子上に不斉点がある化合物、あるいはクムレンやビナフトールなどの軸不斉を持つ光学活性な部位を有する化合物が挙げられる。さらに具体的には、市販のカイラルネマチック液晶(例えばキラルドーパント液晶S−811(Merck社製))が挙げられる。
【0030】
しかしながら、選択されたカイラル剤の性質によっては、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料が形成するネマチック規則性の破壊、配向性の低下、あるいはカイラル剤が非重合性の場合には、液晶性組成物の硬化性の低下や、硬化後のフィルムの信頼性の低下を招くおそれがある。さらに、光学活性な部位を有するカイラル剤の多量な使用は、液晶性組成物のコストアップを招く。従って、短い螺旋ピッチ長のコレステリック規則性を有するコレステリック液晶層を形成する場合には、液晶性組成物に含有させる光学活性な部位を有するカイラル剤としては、螺旋構造を誘起させる効果の大きなカイラル剤を選択することが好ましく、具体的には下記の一般式(3)、(4)又は(5)で表されるような、分子内に軸不斉を有する低分子化合物を用いることが好ましい。
【0031】
【化3】

【0032】
【化4】

【0033】
【化5】

【0034】
上記一般式(3)又は(4)において、R4は水素又はメチル基を示す。Yは上記に示す式(i)〜(xxiv)の任意の一つであるが、中でも、式(i)、(ii)、(iii)、(v)及び(vii)のいずれか一つであることが好ましい。また、アルキレン基の鎖長を示すc及びdは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数をとり得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。c又はdの値が0又は1である上記一般式(3)又は(4)の化合物は、安定性に欠け、加水分解を受けやすく、結晶性も高い。一方、c又はdの値が13以上である化合物は融点(Tm)が低い。これらの化合物では、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料との間の相溶性が低下し、濃度によっては相分離などが起きるおそれがある。
【0035】
なお、このようなカイラル剤は、特に重合性を有する必要はない。しかしながら、カイラル剤が重合性を有している場合には、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料と重合され、コレステリック規則性が安定的に固定化されるので、熱安定性などの面では非常に好ましい。特に、分子の両末端に重合性の官能基があることが、耐熱性の良好なコレステリック液晶層2を得る上で好ましい。
【0036】
なお、液晶性組成物に含有されるカイラル剤の量は、螺旋構造の誘起能力や最終的に得られるコレステリック液晶層のコレステリック液晶構造などを考慮して最適値が決められる。具体的には、用いられる液晶性組成物の材料により大きく異なるものではあるが、液晶性組成物の合計量100重量部当り、0.01〜60重量部、好ましくは0.1〜40重量部、さらに好ましくは0.5〜30重量部、最も好ましくは1〜20重量部の範囲で選ばれる。カイラル剤の含有量が上述した範囲よりも少ない場合は、液晶性組成物に充分なコレステリック規則性を付与することができない場合があり、上述した範囲を越える場合は、液晶分子の配向が阻害され、活性放射線などによって硬化させる際に悪影響を及ぼす危惧がある。
【0037】
なお、液晶性組成物はそのまま塗布することも可能であるが、粘性を塗布装置に合わせたり、良好な配向状態を得る目的で有機溶媒などの適当な溶媒に溶解させてインキ化するようにしてもよい。
【0038】
このような溶媒としては、上述したような重合性の液晶材料を溶解することが可能であれば特に限定されるものではないが、被塗布層を浸食しないものであることが好ましい。具体的には、アセトンや、酢酸−3−メトキシブチル、ジグライム、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、塩化メチレン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。重合性の液晶材料の希釈の程度は特に限定されるものではないが、液晶自体が溶解性の低い材料であり、また粘性が高いことなどを考慮して、5〜50%、さらに好ましくは10〜30%程度に希釈することが好ましい。
(配向処理工程)
上述した塗布工程において、液晶性組成物を塗布し、コレステリック液晶層を形成した後、配向処理工程において、コレステリック液晶層をコレステリック液晶構造が発現する所定の温度に保持し、コレステリック液晶層中の液晶分子を配向させる。
【0039】
なお、本実施の形態において最終的に得られるべきコレステリック液晶層2のコレステリック液晶構造は、複数の螺旋構造領域の螺旋軸の方向が層内でばらついた配向状態となっている場合と、プラーナー配向状態となっている場合とがあるが、どちらの場合でも、配向処理は必要となる。すなわち、前者においては、コレステリック液晶構造中に複数の螺旋構造領域を形成させるような配向処理が必要となり、後者においては、コレステリック液晶構造中に複数の螺旋構造領域を形成させるような配向処理と、コレステリック液晶構造の液晶分子のダイレクターを一定方向に揃えるような配向処理とが必要となる。
【0040】
また、この配向処理をコレステリック液晶層の一部分のみに対して施すことによって、例えば、文字、図形等のパターンが形成されたコレステリック液晶層を発現させることができる。
【0041】
ここで、コレステリック液晶層2を、コレステリック液晶構造が発現する所定の温度に保持すると、コレステリック液晶層は液晶相を呈し、液晶分子自体の自己集積作用により、液晶分子のダイレクター連続的に回転してなる螺旋構造が形成される。また、コレステリック液晶層2に拡散性を持たせない場合であれば、コレステリック液晶構造の液晶分子のダイレクターが一定方向に揃えられる。そして、このような液晶相の状態で発現したコレステリック液晶構造は、後述するような手法でコレステリック液晶層を硬化させることにより、固定化することができる。
【0042】
なお、このような配向処理工程は、コレステリック液晶層2上に塗布された液晶性組成物に溶媒が含有されている場合には、通常、溶媒を除去するための乾燥処理とともに行われる。なお、溶媒を除去するためには、40〜120℃、好ましくは60〜100℃の乾燥温度が適しており、乾燥時間(加熱時間)はコレステリック液晶構造が発現し、実質上溶媒が除去されればよく、例えば、15〜600秒が好ましく、さらに好ましくは30〜180秒である。なお、乾燥後に配向状態が不十分であることが分かった場合には、適宜加熱時間を延長するようにするとよい。なお、このような乾燥処理において減圧乾燥の手法を用いる場合には、配向処理のために別途加熱処理を行うことが好ましい。
(硬化処理工程)
上述した配向処理工程において、コレステリック液晶層中の液晶分子を配向させた後、硬化処理工程において、コレステリック液晶層を硬化させ、液晶相の状態で発現したコレステリック液晶構造を固定化する。
【0043】
ここで、硬化処理工程で用いられる方法としては、(1)液晶性組成物中の溶媒を乾燥させる方法、(2)加熱により液晶性組成物中の液晶分子を重合させる方法、(3)放射線の照射により液晶性組成物中の液晶分子を重合させる方法、及び(4)それらの方法を組み合わせた方法を用いることができる。
【0044】
このうち、上記(1)の方法は、コレステリック液晶層の材料である液晶性組成物に含有されるネマチック規則性を示す重合性の液晶材料として液晶ポリマーを用いた場合に適した方法である。この方法では、液晶ポリマーを有機溶媒などの溶媒に溶解させた状態で塗布することとなるが、この場合には、乾燥処理により溶媒を除去するだけで、コレステリック規則性を有する固体化したコレステリック液晶層が形成される。なお、溶媒の種類や乾燥条件などについては、上述した塗布工程及び配向処理工程で述べたものを用いることができる。
【0045】
上記(2)の方法は、加熱により液晶性組成物中の液晶分子を熱重合させてコレステリック液晶層を硬化させる方法である。この方法では、加熱(焼成)温度によって液晶分子の結合状態が変化するので、加熱時にコレステリック液晶層の面内で温度ムラがあると、膜硬度などの物性や光学的な特性にムラが生じる。ここで、膜硬度の分布を±10%以内にするためには、加熱温度の分布も±5%以内に抑えることが好ましく、より好ましくは±2%以内に抑えることが好ましい。
【0046】
なお、形成されたコレステリック液晶層を加熱する方法としては、加熱温度の均一性が得られれば特に限定はなく、ヒートプレート上に密着して保持したり、ヒートプレートとの間にわずかな気層を設けてヒートプレートと平行になるように保持する方法を用いることができる。また、オーブンのような特定の空間全体を加熱する装置内に静置したり当該装置内を通過させる方法でもよい。なお、フィルムコーターなどを用いる場合には、乾燥ゾーンを長くして加熱時間を十分にとることができるようにすることが好ましい。
【0047】
加熱温度としては一般に、100℃以上の高温が必要となるが、基材1の耐熱性から150℃程度までとすることが好ましい。ただし、耐熱性に特化したフィルムなどを支持基材1の材料として用いれば、150℃以上の高温での加熱も可能である。
【0048】
上記(3)の方法は、放射線の照射により液晶性組成物中の液晶分子を光重合させてコレステリック液晶層を硬化させる方法である。この方法では、放射線として、電子線や紫外線などを条件に応じて適宜用いることができる。通常は、装置の容易性などの観点から紫外線が好ましく用いられ、その波長は250〜400nmである。ここで、紫外線を用いる場合には、液晶性組成物に光重合開始剤が添加されていることが好ましい。
【0049】
液晶性組成物中に添加される光重合開始剤としては、ベンジル(ビベンゾイルともいう)や、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどを挙げることができる。なお、光重合開始剤の他に増感剤を、本発明の目的が損なわれない範囲で添加することも可能である。
【0050】
なお、液晶性組成物に添加される光重合開始剤の添加量は、0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%の範囲であることが好ましい。
【0051】
以上のような一連の工程(塗布工程、配向処理工程及び硬化処理工程)を行うことにより、基材1上に単層のコレステリック液晶層2を積層(固着)させることができる。
II.体積型ホログラム層の形成
以上のように形成されたコレステリック液晶層2の上に、次に体積型ホログラム層3を形成する。図2に、体積型ホログラム層3を形成後の、体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造時の断面構造を示す。
【0052】
体積型ホログラム層3の形成は、後述する各成分を混合した組成物を、コレステリック液晶層21上に、一般的なコーティング手段、例えば、スピンコーター、グラビアコーター、コンマコーター、バーコーター等により塗布し、必要に応じて乾燥する。
【0053】
ホログラム用材料としては、従来公知の体積ホログラム記録材料を使用できる。具体的には、銀塩感材、重クロム酸ゼラチン、光架橋型ポリマー、フォトポリマー等が例示される。特にフォトポリマーは、その他材料に比べて、乾式プロセスのみで体積型ホログラムを作製することができ、量産性に優れた材料である。
【0054】
ホログラム用材料に使用されるフォトポリマーは、少なくとも1種の光重合性化合物と、光重合開始剤を有するものである。以下、このような体積型ホログラム記録用フォトポリマーの各構成材料について説明する。
【0055】
1.光重合性化合物
本発明に用いられる光重合性化合物について説明する。本発明における光重合性化合物としては、光ラジカル重合性化合物であってもよく、光カチオン重合性化合物であってもよい。以下、光ラジカル重合性化合物及び光カチオン重合性化合物に分けて説明する。
【0056】
a.光ラジカル重合性化合物
本発明に用いられる光ラジカル重合性化合物としては、本発明の体積型ホログラム用樹脂組成物を用いて体積型ホログラムを形成する際に、例えばレーザー照射等によって、後述する光ラジカル重合開始剤から発生した活性ラジカルの作用により重合する化合物であれば、特に限定されるものではないが、少なくとも一つの付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を持つ化合物を使用することができる。例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド結合物等をあげることができる。上記不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステルのモノマーの具体例を以下に示す。
【0057】
アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、2−フェノキシエチルアクリレート、フェノールエトキシレートモノアクリレート、2−(p−クロロフェノキシ)エチルアクリレート、p−クロロフェニルアクリレート、フェニルアクリレート、2−フェニルエチルアクリレート、ビスフェノールAの(2−アクリルオキシエチル)エーテル、エトキシ化されたビスフェノールAジアクリレート、2−(1−ナフチルオキシ)エチルアクリレート、o−ビフェニルアクリレート、9,9−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシトリエトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシジプロポキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジメチル)フルオレン等が例示される。
【0058】
また、硫黄含有アクリル化合物を使用することもできる。例えば、4,4’−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルケトン、4,4’−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)3,3’,5,5’−テトラブロモジフェニルケトン、2,4−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルケトン等があげられる。
【0059】
さらに、メタクリル酸エステルとしては、上述したアクリル酸エステルに例示される化合物名のうち、「アクリレート」が「メタクリレート」に、「アクリロキシ」が「メタクリロキシ」に、及び「アクリロイル」が「メタクリロイル」に変換された化合物が例示される。
【0060】
また、上記光ラジカル重合性化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよいものである。
【0061】
b.光カチオン重合性化合物
本発明に用いられる光カチオン重合性化合物は、エネルギー照射を受け、後述する光カチオン重合開始剤の分解により発生したブレンステッド酸あるいはルイス酸によってカチオン重合する化合物である。例えば、エポキシ環やオキセタン環等の環状エーテル類、チオエーテル類、ビニルエーテル類等をあげることができる。
【0062】
上記エポキシ環を含有する化合物としては、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド等が例示される。
【0063】
また、上記光カチオン重合性化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよいものである。
【0064】
さらに、上記の光ラジカル重合性化合物及び光カチオン重合性化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよいものである。
【0065】
ここで、体積型ホログラム用樹脂組成物を用いて体積型ホログラムを形成する際に、例えば目的とする像の形状にレーザーを照射して、光ラジカル重合性化合物を重合させた後、全面にエネルギーを照射することにより、光カチオン重合性化合物等の未硬化の物質を重合させることによって行われる。なお、像を形成する際のレーザー等と、全面にエネルギー照射されるエネルギーとは、通常異なる波長のものが用いられ、本発明に用いられる光カチオン重合性化合物は、像を形成する例えばレーザー等によって重合しない化合物であることが好ましい。
【0066】
また、このような光カチオン重合性化合物は、上記光ラジカル重合性化合物の重合が、比較的低粘度の組成物中で行われることが好ましいという点から、常温で液状であることが好ましい。
【0067】
c.その他
本発明に用いられる光重合性化合物は、後述するバインダー樹脂100重量部に対して10〜1000重量部、好ましくは10〜300重量部の割合で使用するとよい。
【0068】
ここで、体積型ホログラムは、例えばレーザー光又はコヒーレンス性の優れた光等によって光重合性化合物を重合させて干渉縞を形成し、像を形成するものである。したがって、体積型ホログラム用樹脂組成物に光ラジカル重合性化合物及び光カチオン重合性化合物が含有されている場合には、それぞれにおける屈折率が異なるものが選択されて用いられるものであり、どちらの屈折率が大きいものであってもよい。本発明においては、中でも材料選択性の面から光ラジカル重合性化合物の平均の屈折率が光カチオン重合性化合物より大きいものであることが好ましく、具体的には、平均の屈折率が0.02以上大きいことが好ましい。これは、光ラジカル重合性化合物と光カチオン重合性化合物との平均の屈折率の差が上記値より低い場合には、屈折率変調が不十分となり、高精細な像を形成することが困難となる可能性があるからである。ここでいう平均の屈折率とは、光カチオン重合性化合物又は光ラジカル重合性化合物を重合させた後の重合体について測定する屈折率の平均値をいう。また、本発明の屈折率は、アッベ屈折率計により測定された値である。
【0069】
2.光重合開始剤
次に、本発明に用いられる光重合開始剤について説明する。本発明における光重合開始剤としては、上述した光重合性化合物により種類が異なるものである。すなわち、光重合性化合物が光ラジカル重合性化合物である場合は、光重合開始剤は光ラジカル重合開始剤を選択し、光重合性化合物が光カチオン重合性化合物である場合は、光重合開始剤は光カチオン重合開始剤を選択する必要がある。以下、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤に分けて説明する。
【0070】
a.光ラジカル重合開始剤
本発明に用いられる光ラジカル重合開始剤としては、体積型ホログラム用樹脂組成物を用いて体積型ホログラム層を形成する際に照射される例えばレーザー等によって、活性ラジカルを生成し、上記光ラジカル重合性化合物を重合させることが可能な開始剤であれば、特に限定されるものではない。例えば、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N−アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、アルミナート錯体、有機過酸化物、N−アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体等を使用することができる。具体的には、1,3−ジ(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名イルガキュア651、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名イルガキュア18
4、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(商品名イルガキュア369、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(商品名イルガキュア784、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)等があげられる。
【0071】
b.光カチオン重合開始剤
本発明に用いられる光カチオン重合開始剤としては、エネルギー照射によりブレンステッド酸やルイス酸を発生し、上記光カチオン重合性化合物を重合させるものであれば、特に限定されるものではない。体積型ホログラム用樹脂組成物が光ラジカル重合性化合物及び光カチオン重合性化合物を含有する場合、光カチオン重合性化合物は、特に上記光ラジカル重合性化合物を重合させる例えばレーザーやコヒーレンス性の優れた光等に対しては反応せず、その後全面に照射されるエネルギーによって感光するものであることが好ましい。これにより、上記光ラジカル重合性化合物が重合する際、光カチオン重合性化合物がほとんど反応しないまま存在させることができ、体積型ホログラムにおける大きな屈折率変調が得られるからである。
【0072】
具体的には、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸−p−ニトロベンジルエステル、シラノール−アルミニウム錯体、(η6−ベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(II)等が例示される。さらに、ベンゾイントシレート、2,5−ジニトロベンジルトシレート、N−トシフタル酸イミド等も使用することができる。
【0073】
c.その他
本発明において、光ラジカル重合開始剤としても、光カチオン重合開始剤としても用いられるものとしては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、トリアジン化合物、鉄アレーン錯体等が例示される。具体的には、ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p−t−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム等のヨードニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム、4−t−ブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム等のスルホニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のスルホニウム塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等の2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン化合物等があげられる。
【0074】
また、上記の光重合開始剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよいものである。
【0075】
さらに、光重合開始剤は、後述するバインダー樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは5〜15重量部の割合で使用するとよい。
【0076】
3.添加剤
次に、体積型ホログラム用樹脂組成物に添加することができる添加剤について説明する。
【0077】
a.増感色素
本発明においては、体積型ホログラム用樹組成物が増感色素を含有することが好ましい。上記光重合性化合物及び光重合開始剤は、紫外線に活性であるものが多いが、増感色素を添加することにより可視光にも活性となり、可視レーザー光を用いて干渉縞を記録することが可能となるからである。
【0078】
このような増感色素としては、干渉縞を記録する際に使用するレーザー光波長を考慮して選択されるものであるが、特に限定されるものではない。例えば、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、クマリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、シクロペンタノン系色素、シクロヘキサノン系色素等を使用することができる。
【0079】
上記シアニン系色素、メロシアニン系色素としては、3,3’−ジカルボキシエチル−2,2’−チオシアニンブロミド、1−カルボキシメチル−1’−カルボキシエチル−2,2’−キノシアニンブロミド、1,3’−ジエチル−2,2’−キノチアシアニンヨージド、3−エチル−5−[(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)エチリデン]−2−チオキソ−4−オキサゾリジン等があげられる。
【0080】
また、上記クマリン系色素、ケトクマリン系色素としては、3−(2’−ベンゾイミダゾール)7−N,N−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニルビスクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジメトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)等があげられる。
【0081】
可視光領域に吸収波長を有する増感色素は、例えばホログラムを光学素子に用いる際には高透明性が要求されるため、このような場合には、干渉縞記録後の後工程、加熱や紫外線照射により分解される等して無色になるものが好ましい。このような増感色素としては、上述したシアニン系色素が好適に用いられる。
【0082】
また、増感色素は、後述するバインダー樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.01〜2重量部の割合で使用するとよい。
【0083】
b.バインダー樹脂
本発明においては、体積型ホログラム用樹脂組成物がバインダー樹脂を含有することが好ましい。バインダー樹脂を含有することにより、成膜性、膜厚の均一性を向上させることができ、記録された干渉縞を安定に存在させることができるからである。
【0084】
このようなバインダー樹脂としては、ポリメタアクリル酸エステル又はその部分加水分解物、ポリ酢酸ビニル又はその加水分解物、ポリビニルアルコール又はその部分アセタール化物、トリアセチルセルロース、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、シリコーンゴム、ポリスチレン、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリアリレート、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール又はその誘導体、ポリ−N−ビニルピロリドン又はその誘導体、スチレンと無水マレイン酸との共重合体又はその半エステル等をあげることができる。また、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリルニトリル、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、及び酢酸ビニル等の共重合可能なモノマーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを重合させてなる共重合体を使用することもできる。また、側鎖に熱硬化又は光硬化可能な官能基を有するモノマーを重合させてなる共重合体も使用することができる。さらに、1種又は2種以上の混合物を用いることもできる。
【0085】
また、バインダー樹脂としては、オリゴマータイプの硬化性樹脂を使用することもできる。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ノボラック、o−クレゾールノボラック、p−アルキルフェノールノボラック等の各種フェノール化合物とエピクロロヒドリンとの縮合反応により生成されるエポキシ化合物等があげられる。
【0086】
さらに、バインダー樹脂としては、ゾルゲル反応を利用した有機−無機ハイブリッドポリマーを使用することもできる。例えば、下記一般式(1)で表される重合性基を有する有機金属化合物とビニルモノマーとの共重合体があげられる。
【0087】
Rm M(OR’)n ・・・(1)
(ここで、MはSi、Ti、Zr、Zn、In、Sn、Al、Se等の金属、Rは炭素数1〜10のビニル基又は(メタ)アクリロイル基、R’は炭素数1〜10のアルキル基を表し、m+nは金属Mの価数である)。
【0088】
金属MとしてSiを使用する場合の有機金属化合物の例としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリアリルオキシシラン、ビニルテトラエトキシシラン、ビニルテトラメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等があげられる。
【0089】
また、上記ビニルモノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等をあげることができる。
【0090】
ここで、体積型ホログラムは、干渉縞が屈折率変調又は透過率変調として記録され形成されるものである。よって、バインダー樹脂と光重合性化合物との屈折率差が大きいことが好ましい。本発明においては、バインダー樹脂と光重合性化合物との屈折率差を大きくするために、下記一般式(2)で表される有機金属化合物を体積型ホログラム用樹脂組成物中に添加することもできる。
【0091】
M(OR”)k ・・・(2)
(ここで、MはTi、Zr、Zn、In、Sn、Al、Se等の金属、R”は炭素数1〜10のアルキル基を表し、kは金属Mの価数である)。
【0092】
上記(2)式で表される化合物を体積型ホログラム用樹脂組成物中に添加すると、水、酸触媒の存在下でゾルゲル反応により、バインダー樹脂と網目構造を形成するため、バインダー樹脂の屈折率を高くするたけでなく、膜の強靭性、耐熱性を向上させる効果がある。よって、光重合性化合物との屈折率差を大きくするには、金属Mは高い屈折率を有するものを使用することが好ましい。
【0093】
上記バインダー樹脂は、体積型ホログラム用組成物中に、通常15〜50重量%の範囲内、好ましくは20〜40重量%の範囲内で用いられる。
【0094】
次に、本発明の体積型ホログラム層3の形成について説明する。
【0095】
本発明において、体積型ホログラム層3の形成は、まず上記体積型ホログラム用樹脂組成物を、コレステリック液晶層2上に、一般的なコーティング手段により塗布し、必要に応じて乾燥し、体積型ホログラム層3とする。
【0096】
次に、上記体積型ホログラム層3に、通常ホログラフィー露光装置に用いられるレーザー光であるコヒーレンス性の優れた光(例えば波長300nm〜1200nmの光)による露光によって、上述した光重合性化合物を重合させて、目的とする像の干渉縞を記録する。これにより、体積型ホログラム層が形成される。
【0097】
上記体積型ホログラム用樹脂組成物は、塗布の際、必要に応じて溶媒を用いてもよい。このような溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、酢酸エチル、1,4−ジオキサン、1,2−ジクロロエタン、ジクロルメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール等を使用することができる。また、これらの溶媒を1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0098】
また、体積型ホログラム用樹脂組成物の塗布方法としては、スピンコーター、グラビアコーター、コンマコーター、バーコーター等の方法を使用することができる。
【0099】
上記体積型ホログラム用樹脂組成物の塗布量は、体積型ホログラム層3の用途や種類によって適宜選択されるものであるが、通常1g/m2 〜100g/m2 の範囲内、好ましくは2g/m2 〜40g/m2 の範囲内とされ、体積型ホログラム層の膜厚は、通常1μm〜100μm、中でも2μm〜40μmの範囲内とすることが好ましい。さらに、体積型ホログラム用樹脂組成物を硬化させて形成される体積型ホログラム層3の膜厚としては、1〜100μm、中でも10〜40μmの範囲内とすることが好ましい。
【0100】
上記体積型ホログラム層3に、通常ホログラフィー露光装置に用いられるレーザー光はコヒーレンス性の優れた光(たとえば波長300nm〜1200nmの光)による露光によって、上述した光重合性化合物を重合させて、目的とする像の干渉縞を記録する。上記レーザー光としては、可視レーザー、例えばアルゴンイオンレーザー(458nm、488nm、514.5nm)、クリプトンイオンレーザー(647.1nm)、ヘリウム−ネオンレーザー(633nm)、YAGレーザー(532nm)等を使用することができる。
【0101】
上記の像の干渉縞を記録する方法としては、従来の公知の方法を使用することができる。例えば、上記体積型ホログラム層3に原版を密着させ、基材フィルム側から可視光、あるいは紫外線や電子線等の電離放射線を用いて干渉露光を行うことにより像の干渉縞が記録される。
【0102】
また、屈折率変調の促進、光重合性化合物等の重合反応完結のために干渉露光後、紫外線による全面露光や加熱等の処理を適宜行うことができる。なお、このような紫外線による全面露光や加熱等の処理を行う前段に、体積型ホログラム層3を保護するためPET等から成る保護層を体積型ホログラム層3表面に設けておくことを適宜行っても良い。
III.ラベル加工・転写箔加工
以上のように形成されたコレステリック液晶層2と体積型ホログラム層3とにラベル加工又は転写箔加工を施し、取り扱い性を容易にする。図3に、ラベル加工又は転写箔加工を施した後の、体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の断面構造を示す。加工方法として、ラベル加工を採用する際には、4は粘着層とし、転写箔加工を採用する際には、4はヒートシール層とする。図2において、まず体積型ホログラム層3とコレステリック液晶層2から基材1を剥離し、剥離した基材1の代わりに、粘着層(又は、ヒートシール層)4及び新たな基材5を設け、図3の状態とする。
【0103】
なお、配向膜Aについては、基材1と共にコレステリック液晶層2から剥離させても構わないし、そのままコレステリック液晶層2付着するように残しておいても構わない。
【0104】
基材5は体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体を被着体に適用する際に剥離するものであるので、粘着層(又は、ヒートシール層)4からの剥離性が適度なもので、ある程度の機械的強度があるものを用いればよく、特に限定されるものではない。例えばPETフィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフイルム、ポリカーボネートフイルム、セロハンフィルム、アセテートフィルム、ナイロンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム等の透明樹脂フィルムを用いることができる。
【0105】
また、このような基材フィルムの厚さとしては、ラベルや転写箔の用途や種類等に応じて適宜選択されるものであるが、通常2μm〜200μm、好ましくは10μm〜50μmの範囲内とされる。
(ラベル加工)
体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体をラベル形態に加工する際の粘着層4について説明する。粘着層4は、体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体と被着体を接着させるもので、例えばアクリル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、またはこれらの共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、天然ゴム、カゼイン、ゼラチン、ロジンエステル、テルペン樹脂、フェノール系樹脂、スチレン系樹脂、クロマンインデン樹脂、ポリビニルエーテル、シリコーン樹脂等、また、アルファ−シアノアクリレート系、シリコーン系、マレイミド系、スチロール系、ポリオレフィン系、レゾルシノール系、ポリビニルエーテル系粘着剤を使用して得られる。粘着層4の厚みとしては、4μm〜30μmが好ましい。
(転写箔加工)
次に、体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体を転写箔に加工する際のヒートシール層4について説明する。ヒートシール層4は、体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体を熱転写により被着体上に転写する際に密着させて加熱等することにより体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体と被着体とを接着する層である。
【0106】
このような感熱性接着剤層としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−イソブチルアクリレート共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル及びその共重合体樹脂、セルロース系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)等の熱可塑性樹脂を用いることができる。上記の中でも、180℃以下の温度でヒートシール可能な層であることが好ましい。また、上記樹脂に、必要に応じて感熱性接着剤層が着色されたものであってもよい。
IV.その他の加工処理
上記のラベル加工・転写箔加工処理の他に、本発明では以下に示すような各種加工処理、及び、これらの加工処理の組み合わせを適宜採用することができる。
(粘着層等の事前加工1)
上記のラベル加工・転写箔加工の際には、体積型ホログラム層2とコレステリック液晶層3から基材1を剥離し、剥離した基材1の代わりに、粘着層(又は、ヒートシール層)4及び新たな基材5を順次設けるようにしたが、予め、基材/粘着層(又は、ヒートシール層)/セパレータフィルム、の三層構造のフィルムを用意しておき、基材/粘着層(又は、ヒートシール層)/セパレータフィルムの三層構造のフィルムからはセパレータ用フィルムを剥離しつつ、両者を貼り合わせるように構成すれば、体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の生産性を向上させることができる。
(粘着層等の事前加工2)
(粘着層等の事前加工1)で用いた、基材/粘着層(又は、ヒートシール層)/セパレータフィルムの三層構造のフィルムでは、フィルムのこし、強度が足りないようなことがある。そのような場合には、基材/粘着層(又は、ヒートシール層)/補強用基材フィルム/粘着層(又は、ヒートシール層)/セパレータフィルムの五層構造のフィルムを用いても良い。利用方法は先の場合と同様に、セパレータフィルムを剥離しつつ利用する。
(保護層の加工)
本発明においては、必要な層間に保護層を適宜設けることができる。保護層としては例えばアクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、塩化ゴム、カゼイン、各種界面活性剤、金属酸化物等から、1種又は2種以上を混合したもの等を用いることができる。上記の中でも、分子量20000〜100000程度のアクリル系樹脂単独、又はアクリル系樹脂と分子量8000〜20000の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂とからなり、さらに添加剤として分子量1000〜5000のポリエステル樹脂が1〜5重量%含有する組成物からなることが特に好ましい。また、保護層として、紫外線や電子線等に反応する電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いてもよい。
(剥離層の加工)
本発明においては、剥離性の良さが要求される層間に剥離層を適宜設けることができる。剥離層は、水溶性樹脂、親水性樹脂、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂などが用いられる。離型層の厚みは、通常、0.5〜5μm程度に形成される。
V.型抜き
以上のように、ラベルの形態又は転写箔の形態に加工された体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体型抜きされて最終製品となる。
【実施例】
【0107】
(実施例1)
(1)第1積層体(TACフィルム/粘着層1/セパレータ1)の作製(図4参照)
トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(FT80UL(80μm);富士写真フィルム(株)製)上に下記組成
(粘着層溶液)
・アクリル系粘着剤(ニッセツPE−118;日本カーバイト工業(株)製)) 100重量部
・イソシアネート系架橋剤(ニッセツCK−101;日本カーバイト工業(株)製) 2重量部
・溶剤(メチルエチルケトン/トルエン/酢酸エチル=2/1/1(重量比)) 60重量部
からなる粘着層溶液をアプリケータにより乾燥後膜厚20μmとなるように塗布した後、オーブンで乾燥させて粘着層1/TACフィルムを得た。乾燥後、粘着層1面にセパレータ1(SPPET(38μm);東セロ(株)製)をラミネートして第1積層体を得た。
(2)第2積層体(未処理PETフィルム1/体積型ホログラム層/コレステリック液晶層/剥離層/未処理PETフィルム2)の作製(図5参照)
未処理PETフィルム2(ルミラー50T60(50μm);東レ(株)製)上に下記組成
(剥離層溶液)
・シリコーン変性アクリル系樹脂(セルトップ226;ダイセル化学(株)製) 16重量部
・アルミ触媒(セルトップCAT−A;ダイセル化学(株)製) 3重量部
・溶媒(メチルエチルケトン/トルエン=1/1(重量比)) 16重量部
からなる剥離層溶液をバーコーターにて乾燥膜厚0.8μmになるように塗布後、オーブンで乾燥させて剥離層を得た。
(コレステリック液晶溶液の調整)
紫外線硬化型のネマチック液晶からなる主剤(95.8重量部)に重合性カイラル剤(4.2重量部)及び光重合開始剤(5重量部;Ciba Specialty Chemicals社製)を添加したものをシクロヘキサノンに溶解し、コレステリック液晶溶液を得た。
【0108】
上記で調整したコレステリック液晶溶液を、剥離層上にバーコーターにより乾燥後膜厚4μmとなるように塗布後、オーブンで加熱し配向処理(乾燥処理)を行った。
【0109】
その後、窒素雰囲気下でコレステリック液晶層に対して365nmの紫外線を3000mJ/cm2照射し、コレステリック液晶層を硬化させることにより640nmに反射中心波長を有するコレステリック液晶層/剥離層/未処理PETフィルム2を得た。このコレステリック液晶層面上に下記組成
(体積型ホログラム記録用溶液)
・ポリメチルメタクリレート(重量平均分子量 200,000) 100重量部
・9,9−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)フルオレン 80重量部
・1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル 70重量部
・ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート 5重量部
・3,9−ジエチル−3’−カルボキシメチル−2,2’−チアカルボシアニンヨードニウム塩
1重量部
・溶剤(メチルエチルケトン/1−ブタノール=1/1(重量比)) 200重量部
からなる体積型ホログラム記録用溶液をアプリケータにより乾燥後膜厚10μmとなるように塗布した後、オーブンで乾燥させて体積型ホログラム記録用層/コレステリック液晶層/剥離層/未接着PETフィルム1を得た。得られた積層体の体積型ホログラム記録用層面をホログラム原版に密着させ、レーザー光(532nm)を未接着PETフィルム2側から80mJ/cm2入射し、体積型ホログラム記録用層に体積型ホログラムを記録した。ホログラム記録後ホログラム原版から剥離して未処理PETフィルム1(ルミラーT60(50μm))を体積型ホログラム層面にラミネートし、その後加熱、紫外線定着露光を実施して、530nmに反射中心波長を有する体積型ホログラム層と640nmに反射中心波長を有するコレステリック液晶層とを併せ持つ第2積層体を得た。
(3)第3積層体(セパレータ2/粘着層2/黒PETフィルム/粘着層3/セパレータ3)の作製(図6参照)
黒PETフィルム(ルミラーX30(75μm);東レ(株)製)上に粘着層1で使用した粘着層溶液と同じものをアプリケータにより乾燥後膜厚25μmとなるように塗布した後、オーブンにて乾燥させて粘着層2/黒PETフィルムを得た。乾燥後、粘着層2面にセパレータ2(SPPET(38μm);東セロ(株)製)をラミネートしてセパレータ2/粘着層2/黒PETフィルムを得た。その後黒PETフィルムのもう一方の面に、同様な方法を用いて粘着層3、セパレータ3(SPPET(38μm);東セロ(株)製)を形成して第3積層体を得た。
(4)体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体1(TACフィルム/粘着層1/体積型ホログラム層/コレステリック液晶層/粘着層2/黒PETフィルム/粘着層3/セパレータ3)の作製(図7参照)
第1積層体、第2積層体、第3積層体を各々準備し、まず第1積層体のセパレータ1及び第2積層体の未処理PETフィルム1を各々剥離して、粘着層1面と体積型ホログラム層面とを向い合せてラミネートした。その後できた積層体の剥離層/未処理PETフィルム2及び、第3積層体のセパレータ2を各々剥離して、コレステリック液晶層面と粘着層2面とを向い合せてラミネートして、体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体1を得た。
(実施例1’)
(1)第1’積層体の作製(未処理PETフィルム1/体積型ホログラム層/コレステリック液晶層/易接着PETフィルム)(図8参照)
第2積層体の作製において未処理PETフィルム2の代わりに易接着PETフィルム(コスモシャインA4100(50μm);東洋紡績製)を用い、剥離層は塗工せずに、それ以外は同様の加工を行い、第5積層体を得た。
(2)体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体1’(TACフィルム/粘着層1/体積型ホログラム層/コレステリック液晶層/易接着PETフィルム/粘着層2/黒PETフィルム/粘着層3/セパレータ3)の作製(図9参照)
第1積層体、第3積層体、第1’積層体を各々準備し、まず第1積層体のセパレータ1および第1’積層体の未処理PETフィルム1を剥離して、粘着層1面と体積型ホログラム層面とを向い合せてラミネートした。その後第3積層体のセパレータ2を剥離して、できた積層体の易接着PETフィルム面と粘着層2のを向い合せてラミネートして、体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体1’を得た。
(実施例2)
(1)第4積層体(未処理PETフィルム3/剥離性保護層)の作製(図10参照)
未処理PETフィルム3(ルミラーT60(25μm);東レ(株)製)上に下記組成
(剥離性保護層溶液)
・ポリメチルメタクリレート(重量平均分子量 100,000) 97重量部
・ポリエチレンワックス(重量平均分子量 10,000) 3重量部
・溶剤(メチルエチルケトン/トルエン=1/1(重量比)) 400重量部
からなる剥離性保護層溶液をバーコーターにて乾燥後膜厚1μmとなるように塗布した後、オーブンで乾燥させて第4積層体を得た。
(2)第5積層体(未処理PETフィルム3/剥離性保護層/体積型ホログラム層/コレステリック液晶層/剥離層/未処理PETフィルム2)の作製(図11参照)
第2積層体で、ホログラム記録後に体積型ホログラム層面に貼り合せる未処理PETフィルム1の代わりに、第4積層体の剥離性保護層面を向い合せて80℃のローラーに通して熱ラミネートを実施した以外は同様な方法で第5積層体を得た。
(3)体積型ホログラム付きコレステリック積層体2(未処理PETフィルム3/剥離性保護層/体積型ホログラム層/コレステリック液晶層/ヒートシール層)の作製(図12参照)
第5積層体の剥離層/未処理PETフィルム2を剥離して、コレステリック液晶面上に下記組成
(ヒートシール層溶液)
・ポリエステル樹脂(バイロナールMD1985;東洋紡績(株)製) 100重量部
・溶剤(水/イソプロピルアルコール=1/1(重量比)) 100重量部
からなるヒートシール層溶液をバーコーターにて乾燥後膜厚4μmとなるように塗布した後、オーブンで乾燥させて体積型ホログラム付きコレステリック積層体2を得た。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造時の断面を示す図である。
【図2】本発明の体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造時の断面を示す図である。
【図3】ラベル加工又は転写箔加工を施した後の、体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の断面構造を示す。
【図4】本発明の体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造工程での断面構造を示す図である。
【図5】本発明の体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造工程での断面構造を示す図である。
【図6】本発明の体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造工程での断面構造を示す図である。
【図7】本発明の方法により製造された体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の断面構造を示す図である。
【図8】本発明の体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造工程での断面構造を示す図である。
【図9】本発明の方法により製造された体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の断面構造を示す図である。
【図10】本発明の体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造工程での断面構造を示す図である。
【図11】本発明の体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造工程での断面構造を示す図である。
【図12】本発明の方法により製造された体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の断面構造を示す図である。
【符号の説明】
【0111】
1・・・基材、2・・・コレステリック液晶層、3・・・体積型ホログラム層、4・・・粘着層(又はヒートシール層)、5・・・基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積型ホログラム層とコレステリック液晶層の2層構造を有する体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造方法であって、
第1基材上にコレステリック液晶層を形成する工程と、
該コレステリック液晶層上に体積型ホログラム層を形成する工程と、
該第1基材を剥離する工程と、
該第1基材が剥離された該コレステリック液晶層の面に粘着層を形成する工程と、
該粘着層に第2基材を設ける工程と、からなることを特徴とする体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造方法。
【請求項2】
体積型ホログラム層とコレステリック液晶層の2層構造を有する体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造方法であって、
第1基材上にコレステリック液晶層を形成する工程と、
該コレステリック液晶層上に体積型ホログラム層を形成する工程と、
該第1基材の該コレステリック液晶層が形成されていない方の面に粘着層を形成する工程と、からなることを特徴とする体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造方法。
【請求項3】
体積型ホログラム層とコレステリック液晶層の2層構造を有する体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造方法であって、
第1基材上にコレステリック液晶層を形成する工程と、
該コレステリック液晶層上に体積型ホログラム層を形成する工程と、
該第1基材を剥離する工程と、
該第1基材が剥離された該コレステリック液晶層の面にヒートシール層を形成する工程と、からなることを特徴とする体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造方法。
【請求項4】
該ヒートシール層に第2基材を設ける工程を有することを特徴とする請求項3に体積型ホログラム付きコレステリック液晶媒体の製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−98942(P2007−98942A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240206(P2006−240206)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】