説明

体脂肪の低減用または増加抑制用医薬とこれを含む体脂肪の低減または増加抑制剤、ラクチュロース、およびカルシウムを含むカルシウム源の使用、ラクチュロース、カルシウムを含むカルシウム源、およびマグネシウムを含むマグネシウム源の使用、ならびに飲食品

【課題】過度な食事制限や運動を必要とすることなく、体脂肪、特に内臓脂肪の低減作用または増加抑制作用を示す医薬とこれを含む体脂肪の低減または増加抑制剤の提供。
【解決手段】ラクチュロースおよびカルシウム源、またはラクチュロース、カルシウム源、およびマグネシウム源からなる体脂肪の低減用または増加抑制用医薬と、これを含む体脂肪の低減または増加抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体脂肪の低減用または増加抑制用医薬とこれを含む体脂肪の低減または増加抑制剤、ラクチュロース、およびカルシウムを含むカルシウム源の使用、ラクチュロース、カルシウムを含むカルシウム源、およびマグネシウムを含むマグネシウム源の使用、ならびに飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪(脂質)は本来、三大栄養素の一つとして身体に必要不可欠なものである。しかし、昨今の栄養事情から、現在ではその摂取が不足することよりも過剰であることによる悪影響が問題となっている。
特に、生活習慣病と呼ばれる慢性疾患と、体脂肪(特に内臓脂肪)との関係が重要視されつつある。内臓脂肪が蓄積すると、脂肪細胞の機能異常が発生しやすくなり、耐糖能異常、高血圧、高脂血症などの慢性疾患を引き起こしやすくなる。このような慢性疾患が引き起こされやすくなった状態は、メタボリックシンドロームと呼ばれている。
【0003】
メタボリックシンドロームの予防・解消としては、内臓脂肪を減らすことが効果的であり、肥満を予防、改善するのが重要となる。
体脂肪を低減させる方法としては、オリゴ糖を有効成分として用いる方法が知られている。例えばキシロオリゴ糖を有効成分として含有する抗肥満及び/または体脂肪減少剤(特許文献1参照)や、フラクトオリゴ糖を含有する体内脂質減少剤(特許文献2参照)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−290681号公報
【特許文献2】特開昭59−82313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1、2に記載のようにオリゴ糖を有効成分として用いる方法は知られているが、オリゴ糖と、カルシウムやマグネシウムとを組み合わせることで、体脂肪を低減させたり体脂肪の増加を抑制させたりする具体的な技術は知られていない。
【0006】
本発明の目的は、過度な食事制限や運動を必要とすることなく、体脂肪、特に内臓脂肪の低減作用または増加抑制作用を示す医薬とこれを含む体脂肪の低減または増加抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく検討を重ねた結果、ラクチュロースおよびカルシウム、またはラクチュロース、カルシウム、およびマグネシウムが、体脂肪、特に内蔵脂肪の低減作用または増加抑制作用を有することを発見し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の構成を採用した。
[1]ラクチュロース、およびカルシウムを含むカルシウム源からなる体脂肪の低減用または増加抑制用医薬。
[2]ラクチュロースとカルシウムとの比率(質量比)が、1:0.03〜1:0.30の範囲内である[1]に記載の体脂肪の低減用または増加抑制用医薬。
[3]ラクチュロース、カルシウムを含むカルシウム源、およびマグネシウムを含むマグネシウム源からなる体脂肪の低減用または増加抑制用医薬。
[4]ラクチュロースとカルシウムとの比率(質量比)が、1:0.03〜1:0.30の範囲内である[3]に記載の体脂肪の低減用または増加抑制用医薬。
[5]ラクチュロースとマグネシウムとの比率(質量比)が、1:0.01〜1:0.15の範囲内である[3]または[4]に記載の体脂肪の低減用または増加抑制用医薬。
[6][1]または[2]に記載の体脂肪の低減用または増加抑制用医薬を含有する体脂肪の低減または増加抑制剤。
[7]ラクチュロース含量が、総固形分に対し15〜96質量%である[6]に記載の体脂肪の低減または増加抑制剤。
[8][3]〜[5]のいずれか一項に記載の体脂肪の低減用または増加抑制用医薬を含有する体脂肪の低減または増加抑制剤。
[9]ラクチュロース含量が、総固形分に対し15〜96質量%である[8]に記載の体脂肪の低減または増加抑制剤。
[10]体脂肪の低減または増加抑制剤製造のためのラクチュロース、およびカルシウムを含むカルシウム源の使用。
[11]体脂肪の低減または増加抑制剤製造のためのラクチュロース、カルシウムを含むカルシウム源、およびマグネシウムを含むマグネシウム源の使用。
[12][1]または[2]に記載の体脂肪の低減用または増加抑制用医薬を配合した飲食品。
[13][3]〜[5]のいずれか一項に記載の体脂肪の低減用または増加抑制用医薬を配合した飲食品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、過度な食事制限や運動を必要とすることなく、体脂肪、特に内臓脂肪の低減作用または増加抑制作用を示す医薬とこれを含む体脂肪の低減または増加抑制剤を提供できる。
また、本発明の医薬、本発明の医薬を含む体脂肪の低減または増加抑制剤、および本発明の医薬を配合した飲食品は、メタボリックシンドロームと呼ばれる状態を解消・防止し、耐糖能異常、高血圧、高脂血症などの慢性疾患を効果的に予防したり改善したりするために有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。
[第一の実施の形態]
本発明の体脂肪の低減用または増加抑制用医薬は、ラクチュロース、およびカルシウムを含むカルシウム源からなる。
【0011】
ラクチュロース(4−O−β−D−ガラクトピラノシル−D−フラクトース)は、フラクトース(果糖)とガラクトースからなる二糖類である。ラクチュロースは、1930年にハドソンによって乳糖にロブリー・ドブリュイン転位を行って製造された乳糖由来のミルクオリゴ糖であり、ビフィズス菌増殖因子として公知の物質である。
ラクチュロースとしては、市販のラクチュロースが使用できる。現在市場にはシロップ形状のもの(例、森永乳業株式会社製、商品名:MLS−50)と、粉末形状のもの(例、森永乳業株式会社製、商品名:MLC−97)などが存在するが、本発明に使用されるラクチュロースとしては、ラクチュロースが必要量含有されていれば、その形状やラクチュロース純度は特に問うものではない。
また、ラクチュロースは、市販のものでなくてもよく、例えば特開昭48−001143号公報や、特許第2977654号公報に記載された方法で使用時に製造したものであっても良い。
【0012】
カルシウム源は、元素としてカルシウムを含有するものであれば特に限定する必要はなく、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、硫酸カルシウム等のカルシウム塩や、ドロマイト、市販の骨粉、卵殻粉の天然物、牛乳由来の乳清から得られる乳清カルシウム(ミルクカルシウム)など、一般に入手可能なものであってもよく、自ら調製したものであってもよく、種類は問わない。また、これらを単独で又は2種以上を組合わせて使用することもできる。これらの中でも、体内への吸収がよいことから、ミルクカルシウムが最も適している。
【0013】
ラクチュロースとカルシウムとの比率(質量比)は、カルシウムの吸収率に優れることから、ラクチュロース:カルシウム=1:0.03〜1:0.30の範囲内であることが好ましく、1:0.06〜1:0.15の範囲内であることがより好ましい。
ここで、カルシウムの比率は、カルシウム源としての比率ではなく、元素としてのカルシウムの比率である。
【0014】
本発明において、「体脂肪の低減または増加抑制」とは、主として食餌により過多に摂取され生体に蓄積する内蔵脂肪等の体脂肪を減らす、または増加を抑制することができることを意味する。体脂肪を低減または増加抑制すると、体脂肪の蓄積に起因して導かれる種々の慢性疾患の発症を抑制できる。具体的には、脂質代謝を改善する効果、脂肪肝の形成を抑制する効果、皮下脂肪蓄積を抑制する効果、体重増加を抑制する効果、既に体内に蓄積された脂肪を減少させる効果、および体重を減少させる効果等が得られる。
【0015】
上述したラクチュロースおよびカルシウム源を、ヒトおよび家畜動物(例えば、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ヤギなど)を含む哺乳類に投与することにより、体脂肪の低減または増加抑制の効果が得られる。
【0016】
ラクチュロースおよびカルシウム源からなる体脂肪の低減用または増加抑制用医薬の投与量は、剤形、症状、年齢、体重等によって異なる。
例えば体重50kgの成人に経口投与する場合、1日あたり、3〜20gであることが好ましい。また、投与回数は、1日あたり、1〜5回であることが好ましい。
【0017】
ラクチュロースおよびカルシウム源からなる体脂肪の低減用または増加抑制用医薬は、そのまま、または薬理学的に許容し得る担体と混合して、適当な剤形の体脂肪の低減または増加抑制剤とすることができる。
体脂肪の低減または増加抑制剤の剤形は、経口投与剤形でも非経口投与剤形でもよいが、経口投与剤形が好ましい。経口投与剤形としては、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、顆粒剤、散剤等の固形投与剤、シロップ剤、乳剤等の液剤等、公知の経口投与剤形とすることができる。
【0018】
薬理学的に許容される担体としては、剤形に応じ、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられる。
経口投与用の固形投与剤の場合の担体としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
【0019】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α−デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられる。
【0020】
結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マグロゴール等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ビーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸類塩;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられる。
安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられる。
矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられる。
【0021】
経口投与用の液剤の場合の担体としては、水などの溶剤や矯味矯臭剤等が挙げられる。
【0022】
体脂肪の低減または増加抑制剤が経口投与用の固形投与剤の場合、体脂肪の低減または増加抑制剤中におけるラクチュロース含量は、15〜96質量%であることが好ましく、15〜80質量%がより好ましく、30〜80質量%が最も好ましい。ラクチュロース含量が上記範囲内であると、製剤化が容易である。さらに、ラクチュロースの1回あたりの投与量を、上記好ましい範囲に調整することが容易である。
【0023】
また、体脂肪の低減または増加抑制剤が経口投与用の固形投与剤の場合、体脂肪の低減または増加抑制剤中におけるカルシウム含量は、特に限定されるものではないが、カルシウム補給の観点および他の成分とのバランスの観点から、0.5〜12質量%が好ましく、4〜8質量%がより好ましい。
ここで、カルシウム含量とは、カルシウム源としての含量ではなく、元素としてのカルシウムの含量である。
【0024】
体脂肪の低減または増加抑制剤は、ラクチュロースおよびカルシウム源との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の有効成分を含有してもよい。
このような他の有効成分としては、栄養成分(例えばカゼイン酵素分解物、ビタミンD等)等が挙げられる。
【0025】
ラクチュロースおよびカルシウム源からなる体脂肪の低減用または増加抑制用医薬は、これを飲食品や飼料等に配合して経口投与してもよい。
体脂肪の低減用または増加抑制用医薬を配合できる飲食品としては、飲料、ヨーグルト、ゼリー、プリン、アイスクリームに代表される冷菓、スキムミルク、豆腐、テーブルシュガー、チョコレート、キャンディーなどに代表される菓子類などが挙げられる。これらの中でも、本発明の医薬品を効率よく摂取できることから、飲料が特に好ましい。
飲料の種類に制限はなく、例えば酸性飲料、中性飲料、アルカリ性飲料、乳製品を主体とするもの、果汁を主体とするもの、野菜汁を主体とするもの、コーヒー、紅茶などのお茶類、乳酸菌飲料、豆乳、ココア類等が挙げられる。
体脂肪の低減用または増加抑制用医薬を配合できる飼料としては、ペットフード、家畜飼料、養魚飼料などが挙げられる。
【0026】
体脂肪の低減用または増加抑制用医薬の飲食品や飼料等への配合は、経口投与時に行ってもよいし、飲食品等の製造工程時に予め配合し、ラクチュロースおよびカルシウム源からなる体脂肪の低減用または増加抑制用医薬を配合した飲食品や飼料等としてもよい。
【0027】
体脂肪の低減または増加抑制作用は、餌中にラクチュロースおよびカルシウム源を配合させることに基づいた食餌誘導性肥満モデル動物を用いた試験方法により評価できる。すなわち、常法により餌中の脂肪量が高い高脂肪食を与えることにより肥満および高脂血症を誘導し、その症状に対するラクチュロースおよびカルシウム源の効果(体脂肪低減効果)として検討することが可能である。
また、健康な成人にラクチュロースおよびカルシウム源を一定期間摂取させた後の体脂肪率(体脂肪量)の測定結果からも、体脂肪の低減または増加抑制作用を評価できる。
【0028】
[第二の実施の形態]
第二の実施の形態について説明する。なお、第二の実施の形態において第一の実施の形態と同様の点は、詳細な説明を省略する。
本発明の体脂肪の低減用または増加抑制用医薬は、ラクチュロース、カルシウムを含むカルシウム源、およびマグネシウムを含むマグネシウム源からなる。
【0029】
マグネシウム源は、カルシウム源と同様、元素としてマグネシウムを含有するものであれば特に限定する必要はなく、例えば炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、塩化マグネシウム、乳酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム等のマグネシウム塩や、ドロマイトなど一般に入手可能なものであってもよく、自ら調製したものであってもよく、種類は問わない。また、これらを単独で又は2種以上を組合わせて使用することもできる。これらの中でも、味の面から、酸化マグネシウムが本発明に適している。
【0030】
ラクチュロースとカルシウムとの比率(質量比)は、カルシウムの吸収率に優れることから、ラクチュロース:カルシウム=1:0.03〜1:0.30の範囲内であることが好ましく、1:0.06〜1:0.15の範囲内であることがより好ましい。
【0031】
また、ラクチュロースとマグネシウムとの比率(質量比)は、マグネシウムの吸収率に優れることから、ラクチュロース:マグネシウム=1:0.01〜1:0.15の範囲内であることが好ましく、1:0.03〜1:0.08の範囲内であることがより好ましい。
ここで、マグネシウムの比率は、マグネシウム源としての比率ではなく、元素としてのマグネシウムの比率である。
【0032】
さらに、カルシウムとマグネシウムとの比率(質量比)は、カルシウムおよびマグネシウムの吸収率に優れることから、カルシウム:マグネシウム=1:0.1〜1:1が好ましく、1:0.3〜1:0.6がより好ましい。
【0033】
ラクチュロース、カルシウム源、およびマグネシウム源を、ヒトおよび家畜動物を含む哺乳類に投与することにより、体脂肪の低減または増加抑制の効果が得られる。
【0034】
ラクチュロース、カルシウム源、およびマグネシウム源からなる体脂肪の低減用または増加抑制用医薬の投与量は、剤形、症状、年齢、体重等によって異なる。
例えば体重50kgの成人に経口投与する場合、1日あたり、3〜20gであることが好ましい。また、投与回数は、1日あたり、1〜5回であることが好ましい。
【0035】
ラクチュロース、カルシウム源、およびマグネシウム源からなる体脂肪の低減用または増加抑制用医薬は、そのまま、または薬理学的に許容し得る担体と混合して、適当な剤形の体脂肪の低減または増加抑制剤とすることができる。
【0036】
体脂肪の低減または増加抑制剤が経口投与用の固形投与剤の場合、体脂肪の低減または増加抑制剤中におけるラクチュロース含量は、15〜96質量%であることが好ましく、15〜80質量%がより好ましく、30〜80質量%が最も好ましい。ラクチュロース含量が上記範囲内であると、製剤化が容易である。さらに、ラクチュロースの1回あたりの投与量を、上記好ましい範囲に調整することが容易である。
【0037】
また、体脂肪の低減または増加抑制剤が経口投与用の固形投与剤の場合、体脂肪の低減または増加抑制剤中におけるカルシウム含量は、特に限定されるものではないが、カルシウム補給の観点および他の成分とのバランスの観点から、0.5〜12質量%が好ましく、4〜8質量%がより好ましい。
【0038】
また、体脂肪の低減または増加抑制剤が経口投与用の固形投与剤の場合、体脂肪の低減または増加抑制剤中におけるマグネシウム含量は、特に限定されるものではないが、マグネシウム補給の観点および他の成分とのバランスの観点から、0.1〜6質量%が好ましく、2〜4質量%がより好ましい。
ここで、マグネシウム含量とは、マグネシウム源としての含量ではなく、元素としてのマグネシウムの含量である。
【0039】
体脂肪の低減または増加抑制剤は、ラクチュロース、カルシウム源、およびマグネシウム源との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の有効成分を含有してもよい。
また、ラクチュロース、カルシウム源、およびマグネシウム源からなる体脂肪の低減用または増加抑制用医薬は、これを飲食品や飼料等に配合して経口投与してもよい。
【0040】
体脂肪の低減用または増加抑制用医薬の飲食品や飼料等への配合は、経口投与時に行ってもよいし、飲食品等の製造工程時に予め配合し、ラクチュロース、カルシウム源、およびマグネシウム源からなる体脂肪の低減用または増加抑制用医薬を配合した飲食品や飼料等としてもよい。
【0041】
体脂肪の低減または増加抑制作用は、餌中にラクチュロース、カルシウム源、およびマグネシウム源を配合させることに基づいた食餌誘導性肥満モデル動物を用いた試験方法により評価できる。
また、健康な成人にラクチュロース、カルシウム源、およびマグネシウム源を一定期間摂取させた後の体脂肪率(体脂肪量)の測定結果からも、体脂肪の低減または増加抑制作用を評価できる。
【実施例】
【0042】
以下本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
<試験例1>
雄のWister系ラットに、表1に示す配合組成のコントロール食品を6週間自由摂取させた後、体重、体脂肪率が均等になるように、5匹ずつ試験食群とコントロール食群の2群に分けた。
なお、コントロール食品は、AIN93組成にラードを付加した組成となっており、脂肪エネルギー比が30%まで高められている。また、「AIN93組成」は、米国国立栄養研究所(American Institute of Nutrition)から1993年に発表されたマウス・ラット用の栄養研究のための標準精製飼料組成である。
【0044】
ついで、表1に示す配合組成の試験食品を試験食群に、コントロール食品をコントロール食群に、各々摂取カロリー数が両群同じになるように、6週間の制限給餌を行った。各々の群のラットの体脂肪率を、制限給餌6週目に実験動物用X線CT装置(アロカ株式会社製、型式:LaTheta(ラシータ))を用いて測定した。結果を表2に示す。
なお、表1中のラクチュロース含量およびカルシウム含量は、食品の総固形分に対する含有量である。また、表2中の「P値」は、t検定のP値を示す。
【0045】
また、表1中の各成分は以下の通りである。
「ラクチュロース粉末」は、森永乳業株式会社製の「商品名:MLC−97」である。
「ミルクカルシウム」は、フォンテラ社製の「商品名:アラミン998。」である。
「AIN−93M」、「AIN−93Mミネラル配合の通常配合から炭酸カルシウムを抜いたもの」、「AIN−93ビタミン混合」、および「ラード」は、オリエンタル酵母工業株式会社製の実験動物用飼料である。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
表2から明らかなように、コントロール食群に比較して、試験食群は体脂肪率が有意に低かった。従って、カルシウム含量を高め、ラクチュロースを含有する試験食品が体脂肪低減作用を有することが確認された。
【0049】
<試験例2>
健康な成人女性44名をランダムに摂取群24名と対照群20名の2群に分けた。
摂取群には、後述の実施例2と同様に作製した顆粒品を、1包あたり2.7gずつアルミスティックに充填した試験食品を1日2包ずつ、1年間に渡り摂取させた。
対照群には、試験食品を摂取させなかった。
試験開始時、半年後、1年後の3回にわたり、DEXA法に準拠し、骨密度測定装置(GEヘルスケア社製、PRODIGY)を用いて、摂取群および対照群の体脂肪率を測定した。体重×体脂肪率で体脂肪量を算出し、試験食品による体脂肪量の低減効果を検証した。結果を表3に示す。
なお、表3には試験開始時と1年後の体脂肪量、およびその変化量(1年後の体脂肪量−試験開始時の体脂肪量)を、平均値±標準偏差として示した。また、表3中の「P値」は、体脂肪量の変化量のt検定のP値である。
【0050】
【表3】

【0051】
表3から明らかなように、対照群に比較して、摂取群は1年後の体脂肪量の変化量が有意に低かった。従って、ラクチュロース、カルシウム、およびマグネシウムを含有する試験食品が、体脂肪量の低減作用を有することが確認された。
【0052】
<実施例1>
ラクチュロース粉末(森永乳業株式会社製、商品名:MLC−97)1.5kg、ミルクカルシウム(フォンテラ社製、商品名:アラミン998。)1.5kgを、混合機(株式会社昭和化学機械工作所製、型式:Power Kneader PK−350)で混合し、白色粉末を得た。得られた粉末は均一で、流動性の良い粉末であった。
【0053】
<実施例2>
ラクチュロース粉末(森永乳業株式会社製、商品名:MLC−97)756g、ミルクカルシウム(フォンテラ社製、商品名:アラミン998。)197g、酸化マグネシウム(富田製薬株式会社製、商品名:酸化マグネシウム)47gを混合した後、水―エタノール溶液0.3L(水:エタノール=1:4(容積比))をバインダーとして混合し、常法に従い、押し出し造粒機(日本薬業機械社)にて混錬、押し出して、顆粒品を得た。
得られた顆粒品をアルミ製トレーに広げた後、乾燥機(ヤマト科学株式会社製、型式:DA63)に入れ、60℃で1時間乾燥し、さらに80℃で2時間乾燥した。乾燥後の顆粒品の水分量を、赤外線水分計(メトラー・トレド社製、型式:LP−16)を用い、105℃、5分、サンプリング量5gで測定したところ、1.0質量%であった。
また、得られた顆粒品中のラクチュロースの含有量は、顆粒品の総固形分に対し74.2質量%であった。さらに、顆粒品中のラクチュロースとカルシウムとの質量比は、ラクチュロース:カルシウム=1:0.07であり、ラクチュロースとマグネシウムとの質量比は、ラクチュロース:マグネシウム=1:0.04であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクチュロース、およびカルシウムを含むカルシウム源からなる体脂肪の低減用または増加抑制用医薬。
【請求項2】
ラクチュロースとカルシウムとの比率(質量比)が、1:0.03〜1:0.30の範囲内である請求項1に記載の体脂肪の低減用または増加抑制用医薬。
【請求項3】
ラクチュロース、カルシウムを含むカルシウム源、およびマグネシウムを含むマグネシウム源からなる体脂肪の低減用または増加抑制用医薬。
【請求項4】
ラクチュロースとカルシウムとの比率(質量比)が、1:0.03〜1:0.30の範囲内である請求項3に記載の体脂肪の低減用または増加抑制用医薬。
【請求項5】
ラクチュロースとマグネシウムとの比率(質量比)が、1:0.01〜1:0.15の範囲内である請求項3または4に記載の体脂肪の低減用または増加抑制用医薬。
【請求項6】
請求項1または2に記載の体脂肪の低減用または増加抑制用医薬を含有する体脂肪の低減または増加抑制剤。
【請求項7】
ラクチュロース含量が、総固形分に対し15〜96質量%である請求項6に記載の体脂肪の低減または増加抑制剤。
【請求項8】
請求項3〜5のいずれか一項に記載の体脂肪の低減用または増加抑制用医薬を含有する体脂肪の低減または増加抑制剤。
【請求項9】
ラクチュロース含量が、総固形分に対し15〜96質量%である請求項8に記載の体脂肪の低減または増加抑制剤。
【請求項10】
体脂肪の低減または増加抑制剤製造のためのラクチュロース、およびカルシウムを含むカルシウム源の使用。
【請求項11】
体脂肪の低減または増加抑制剤製造のためのラクチュロース、カルシウムを含むカルシウム源、およびマグネシウムを含むマグネシウム源の使用。
【請求項12】
請求項1または2に記載の体脂肪の低減用または増加抑制用医薬を配合した飲食品。
【請求項13】
請求項3〜5のいずれか一項に記載の体脂肪の低減用または増加抑制用医薬を配合した飲食品。

【公開番号】特開2011−11996(P2011−11996A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155726(P2009−155726)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000006127)森永乳業株式会社 (269)
【Fターム(参考)】