説明

体腔内挿入具の先端位置検出装置

【課題】体腔内に挿入された医療用チューブの先端の磁石の位置を電磁的に検出する装置の検出感度の向上及び磁気センサの小型化を可能にする。
【解決手段】患者の体腔内での医療用チューブまたはワイヤの先端に連携された磁化片を検出する装置であり、基準線に対し正の角度の向きで並設された一対の磁気インピーダンス効果素子1a,1bの出力の差を出力させる第1磁界検出手段と、前記基準線に対し負の角度の向きで並設された一対の磁気インピーダンス効果素子1a’,1b’の出力の差を出力させる第2磁界検出手段と、第1磁界検出手段の出力と第2検出手段の出力とを重畳する加算手段を有し、基板に前記磁気インピーダンス効果素子1a,1b及び1a’,1b’が搭載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は体腔内挿入具の先端位置検出装置に関し、例えば体腔内に挿入された栄養補給管の先端位置の検出に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
臨床医療では、患者の体腔内に医療用チューブを挿入して治療を行うことがあり、この場合、チューブ先端が所定の箇所に位置しているか否かを確認することが不可欠である。
例えば、栄養管を患者の口または鼻を経て胃に挿入し、この栄養管を通して栄養剤を補給しながら治療を行う場合、栄養管の先端部が食道内でカールアップして胃内に到達していないと、補給栄養剤が患者の肺の中へ吸い出されて死亡事故に発展する危険性があり、栄養管が胃の所定位置に到達していることの確認が不可欠である。
従来、医療用チューブの先端位置の確認は、X線透視により行われていた。しかし、この処理では、患者をX線設備に移動させる必要があり、患者にとって過酷である。
【0003】
そこで、医療用チューブの先端に磁石を連結し、この磁石の位置を電磁的に検出することが提案されている。
かかる検出装置として、特許文献1には「患者の体内での医療用チューブに連携された磁石の位置を検出する装置であって、磁石からの第1の距離における第1の静磁界の強さを検知して該第1の静磁界の強さの関数である第1のセンサ出力を出力する手段と、磁石からの第2の距離における第2の静磁界の強さを検知して該第2の静磁界の強さの関数である第2のセンサ出力を出力する手段であって、該第2の距離は該第1の距離よりも大きいものと、該第1のセンサ信号を受信して該第1のセンサ信号の関数である第1の検出信号を出力する手段と、該第2のセンサ信号を受信して該第2のセンサ信号の関数である第2の検出信号を出力する手段と、該第1及び第2の検出信号を受信して該第1の検出信号と該第2の検出信号との差である差信号を出力する手段と、該差信号に対する値を受信して表示し、該医療用チューブの位置を検出するための静磁界強度の勾配を与える手段を備えている装置」が開示されている。
【特許文献1】特許第3566293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている体腔内挿入具の先端位置検出装置では、特許文献1の第9頁第23行〜第29行に「第1センサと第2センサは第1及び第2距離の差に等しい距離だけ互いに離れている。この幾何学的条件では(例えば、地球磁界強度のような)周囲磁界は第1センサ、第2センサによって感知されても同じ値を示すが、磁石の磁界強度は第1センサによって感知されるか第2センサによって感知されるかによって異なる値を示す。一方のセンサで感知される磁界強度を他方のセンサで感知される磁界強度から差引くことにより、地球の磁界強度の感知を打消しながら、磁石の磁界強度勾配を感知することができる。」との記載から明らかなとおり、何れか一方のセンサが磁石に最接近すると感知出力が最大となり、他方のセンサの感知出力との差である差出力がピーク値を呈し、このときに警報信号を発信させて磁石の位置を検知している。
【0005】
しかしながら、前記ピーク値は磁石の向きにより変化し、磁石の磁化方向とセンサの感磁方向とが垂直に近づくにつれ、前記ピーク値近傍での変化が緩やかになって感度が低下するという不都合がある。
また、第1センサと第2センサとの間隔を余り短くすると前記ピーク値が減少して感度を担保し難いので、その間隔を相当に広くする必要があり、センサがかなり大きくなって患者の身体表面に沿ってのスムーズな移動が難しいという不都合もある。
【0006】
本発明の目的は、体腔内に挿入された医療用チューブの先端の磁石の位置を電磁的に検出する装置の検出感度の向上及び磁気センサの小型化を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る体腔内挿入具の先端位置検出装置は、患者の体腔内での医療用チューブまたはワイヤの先端に連携された磁化片を検出する装置であり、基準線に対し正の角度の向きで並設された一対の磁気インピーダンス効果素子1a,1bの出力の差を出力させる第1磁界検出手段と、前記基準線に対し負の角度の向きで並設された一対の磁気インピーダンス効果素子1a’,1b’の出力の差を出力させる第2磁界検出手段と、第1磁界検出手段の出力と第2検出手段の出力とを演算する手段を有し、基板に前記磁気インピーダンス効果素子1a,1b及び1a’,1b’が搭載されていることを特徴とする。
請求項2に係る体腔内挿入具の先端位置検出装置は、請求項1の体腔内挿入具の先端位置検出装置において、基準線に対し正の角度の絶対値と基準線に対し負の角度の絶対値とが等しくされていることを特徴とする。
請求項3に係る体腔内挿入具の先端位置検出装置は、請求項1または2の体腔内挿入具の先端位置検出装置において、一対の磁気インピーダンス効果素子1a,1bと一対の磁気インピーダンス効果素子1a’,1b’とが基板の表面と裏面とに中心点一致のもとで搭載されていることを特徴とする。
請求項4に係る体腔内挿入具の先端位置検出装置は、請求項1または2の体腔内挿入具の先端位置検出装置において、一対の磁気インピーダンス効果素子1a,1bと一対の磁気インピーダンス効果素子1a’,1b’とが基板の同一面に相互に近接して搭載されていることを特徴とする。
請求項5に係る体腔内挿入具の先端位置検出装置は、請求項1〜4何れかの体腔内挿入具の先端位置検出装置において、磁化片から磁気インピーダンス効果素子1a(1a’)への距離と磁化片から磁気インピーダンス効果素子1b(1b’)への距離とを等しくするように磁気インピーダンス効果素子搭載基板が移動されることを特徴とする。
請求項6に係る体腔内挿入具の先端位置検出装置は、請求項1〜5何れかの体腔内挿入具の先端位置検出装置において、磁気インピーダンス効果素子1aと1b(1a’と1b’)との間隔が5〜30cmとされている。
【発明の効果】
【0008】
一対の磁気インピーダンス効果素子1a,1b(1a’,1b’)の差出力を検出出力とするセンサにおいては、磁気インピーダンス効果素子1a,1b(1a’,1b’)の間隔に基づく位相差のために、両磁気インピーダンス効果素子の出力の完全打ち消しが回避されるが、両素子1a,1b(1a’,1b’)が被探知ポイントである磁化片上を通過する間、両素子1a,1b(1a’,1b’)の中央点が磁化片上を通過する際には両磁気インピーダンス効果1a,1b(1a’,1b’)の差出力に、両素子の出力の打ち消し合いにより特異点が発生する。この場合、磁化片に基づく磁気インピーダンス効果素子の軸方向感磁成分が磁気インピーダンス効果素子の入力となり、感磁成分(入力)が磁化片と磁気インピーダンス効果素子との間の経時的に変化する距離Rと磁化片に対する磁気インピーダンス効果素子の向きφの経時的変化により変化する。
而るに、磁気インピーダンス効果素子の基準線に対する傾き角αの如何によりどの経時的位置でφが正(負)→負(正)に変わるかが左右される。すなわち、前記位相にずれが生じる。
本発明では、磁気インピーダンス効果素子に方向性を与えており、前記被探知ポイントである磁化片に対する磁気インピーダンス効果素子の向きφの経時的変化の位相ずれを前記差出力に反映させており、それにより前記特異点の変化を急峻にして検出感度をアップできる。
また、一方の磁気インピーダンス効果素子1a(1b)の感磁ピーク時に他方の磁気インピーダンス効果素子1b(1a)の感磁強さをそれほど小さくする必要がなく、従って、磁気インピーダンス効果素子1a,1b間の間隔をそれほど広くする必要がなく、磁気インピーダンス効果センサの小型化をよく担保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1−1は本発明において使用される体腔内挿入具の先端位置検出装置の一例の回路図を示している。
図1−1において、1a,1bは第1磁界検出手段の並設磁気インピーダンス効果素子、1a’,1b’は第2磁界検出手段の並設磁気インピーダンス効果素子であり、これらの磁気インピーダンス効果素子には、自発磁化の方向がワイヤ周方向に対し互いに逆方向の磁区が交互に磁壁で隔てられた構成の外殻部を有する、零磁歪乃至は負磁歪のアモルファス合金ワイヤが使用される。かかる零磁歪乃至は負磁歪のアモルファス磁性ワイヤに高周波励磁電流を流したときに発生するワイヤ両端間出力電圧中のインダクタンス電圧分は、ワイヤの横断面内に生じる円周方向磁束によって易磁化性の外殻部が円周方向に磁化されることに起因して発生する。従って、周方向透磁率μθは同外殻部の円周方向の磁化に依存する。而るに、この通電中のアモルファスワイヤの軸方向に信号磁界を作用させると、上記通電による円周方向磁束と信号磁界磁束との合成により、上記円周方向に易磁化性を有する外殻部に作用する磁束の方向が円周方向からずれ、それだけ円周方向への磁化が生じ難くなり、上記周方向透磁率μθが変化し、上記インダクタンス電圧分が変動することになる。この変動現象は磁気インダクタンス効果と称され、これは上記高周波励磁電流(搬送波)が信号磁界(信号波)で変調される現象ということができる。更に、上記通電電流の周波数がMHzオ−ダになると、高周波表皮効果が大きく現れ、表皮深さδ=(2ρ/wμθ1/2(μθは前記した通り円周方向透磁率、ρは電気抵抗率、wは角周波数をそれぞれ示す)がμθにより変化し、このμθが前記した通り、信号磁界によって変化するので、ワイヤ両端間出力電圧中の抵抗電圧分も信号磁界で変動するようになる。この変動現象は磁気インピーダンス効果と称され、これは上記高周波励磁電流(搬送波)が信号磁界(信号波)で変調される現象ということができる。
【0010】
図1−1において、2は磁気インピーダンス効果素子1a,1b及び磁気インピーダンス効果素子1a’,1b’に高周波励磁電流を加えるための高周波電流源回路、3a,3b(3a‘,3b’)は磁気インピーダンス効果素子1a,1b(1a’,1b’)の軸方向に作用する信号磁界(信号波)で前記高周波励磁電流(搬送波)を変調させた被変調波を復調する検波回路、4(4’)は磁気インピーダンス効果素子1a,1b(1a’,1b’)の検波出力を差動増幅して差出力を得るための演算差動増幅器である。60(60‘)は差動増幅器4(4’)の出力を各負帰還用巻線6a,6b(6a’,6b’)に対し負帰還させるための負帰還回路である。7a,7b(7a’,7b’)は磁気インピーダンス効果素子1a,1b(1a’,1b’)に付設したバイアス磁界用巻線である。
【0011】
磁気インピーダンス効果素子においては、前記した通り励磁電流に基づく円周方向磁束と信号磁界による軸方向磁束との合成により、円周方向に易磁化性を有する外殻部に作用する磁束の方向が円周方向からずらされるために、周方向透磁率μθが変化し、インダクタンスが変動され、この円周方向透磁率μθの高周波表皮効果の表皮深さの変化でインピーダンスが変動される。従って、信号磁界の±により上記合成磁界による周方向ずれφも±φになるが、周方向の磁界の減少倍率cos(±φ)は変わらず、従ってμθの減少度は信号磁界の方向の正負によっては変化されない。従って、信号磁界−出力特性は、図1−2の(イ)のように信号磁界をx軸に、出力をy軸にとると、y軸に対してほぼ左右対称となる。この信号磁界−出力特性は非線形である。非線形特性では、不安定であり、高感度の測定も困難である。そこで、負帰還用巻線で負帰還をかけて図1−2の(ロ)に示すように出力特性を直線化している。しかし、この出力特性では、信号磁界の極性判別を行ない得ないので、バイアス用巻線でバイアス磁界をかけ、図1−2の(ハ)に示すように極性判別可能としている。すなわち、図1−2の(ロ)の特性を、図1−2の(ハ)に示すようにバイアス磁界−Hbによりx軸のマイナス方向に移動させ、信号磁界の最大検出範囲を所定の範囲内に納めている。
【0012】
図1−1において、5は第1磁界検出手段の出力(磁気インピーダンス効果素子1a,1bの差出力)と第2磁界検出手段の出力(磁気インピーダンス効果素子1a’,1b’の差出力)とを演算する演算回路であり、加算器や乗算器が用いられ、同時に絶対値回路を用いることもできる。50は計測結果を表示する装置であって、小型のパソコンやPDAや電圧計などが使用され、出力変化によって音色の変わるブザーや明るさが変わる発光体を用いることもできる。
【0013】
図1−3は前記磁気インピーダンス効果素子1a,1b及び磁気インピーダンス効果素子1a’,1b’を基板1000に搭載してなるセンサヘッドを示し、磁気インピーダンス効果素子1a,1bを基板表面に基準線に対し角度+αの向きで配設し、磁気インピーダンス効果素子1a’,1b’を基板裏面に基準線に対し角度−αの向きで配設してあり、磁気インピーダンス効果素子1a,1b間の中心点と磁気インピーダンス効果素子1a’,1b’間の中心点とが一致されている。
磁気インピーダンス効果素子1a,1bと磁気インピーダンス効果素子1a’,1b’とを近接位置にて基板の同一面に設けることも可能である。要は、磁気インピーダンス効果素子の向きの異方性が保持できて可及的に相互接近させ得れば足りる。
磁気インピーダンス効果素子1a,1bの基準線に対する角度の絶対値と磁気インピーダンス効果素子1a’,1b’の基準線に対する角度の絶対値とは等しくすることが望ましいが、10°以下の差であれば許容される。
【0014】
上記磁気インピーダンス効果素子としては、遷移金属と非金属の合金で非金属が10〜30原子%組成のもの、特に遷移金属と非金属との合金で非金属量が10〜30原子%を占め、遷移金属がFeとCoで非金属がBとSiであるかまたは遷移金属がFeで非金属がBとSiである組成のものを使用することができ、例えば、組成Co70.515Si10Fe4.5、長さ2000μm〜6000μm、外径30μm〜50μmφのものを使用できる。磁気インピーダンス効果素子1には、零磁歪乃至は負磁歪のアモルファスワイヤの外、アモルファスリボン、アモルファススパッタ膜等も使用できる。
【0015】
上記において、高周波励磁電流には、例えば連続正弦波、パルス波、三角波等の通常の高周波を使用でき、高周波励磁電流源としては、例えばハートレー発振回路、コルピッツ発振回路、コレクタ同調発振回路、ベース同調発振回路のような通常の発振回路の外、水晶発振器の矩形波出力を直流分カットコンデンサを経て積分回路で積分しこの積分出力の三角波を増幅回路で増幅する三角波発生器、CMOS−ICを発振部として使用した三角波発生器等を使用できる。
【0016】
上記の検波回路としては、例えば被変調波を演算増幅回路で半波整流しこの半波整流波を並列RC回路またはRCローパスフィルターで処理して半波整流波の包絡線出力を得る構成、被変調波をダイオードで半波整流しこの半波整流波を並列RC回路またはRCローパスフィルターで処理して半波整流波の包絡線出力を得る構成等を使用できる。
また、被変調波(周波数fs)に同調させた周波数fsの方形波を被変調波に乗算して信号波をサンプリングする同調検波を使用することができる。
上記の実施例では、被変調波の復調によって被検出磁界を取り出しているが、これに限定されず、磁気インピーダンス効果素子に作用する信号磁界(信号波)で変調された高周波励磁電流波(搬送波)から信号磁界を検波し得るものであれば、適宜の検波手段を使用できる。
【0017】
前記負帰還用巻線及びバイアス磁界用巻線は磁気インピーダンス効果素子に巻き付けることができる。また、図1−4に示すように磁気インピーダンス効果素子とループ磁気回路を構成する鉄芯に負帰還用巻線及びバイアス磁界用巻線を巻き付けることもできる。 図1−4の(イ)は鉄芯巻線付き磁気インピーダンス効果ユニットの一例を示す側面図、図1−4の(ロ)は同じく底面図、図1−4の(ハ)は図1−4の(ロ)におけるハ−ハ断面図である。
図1−4において、100は基板チップであり、例えばセラミックス板を使用できる。101は基板片の片面に設けた電極であり、磁気インピーダンス効果素子接続用突部102を備えている。この電極は導電ペースト、例えば銀ペーストの印刷・焼付けにより設けることができる。1xは電極101,101の突部102,102間にはんだ付けや溶接により接続した磁気インピーダンス効果素子であり、前記した通り零磁歪乃至負磁歪のアモルファスワイヤ、アモルファスリボン、スパッタ膜等を使用できる。103は鉄やフェライト等からなるC型鉄芯、6xはC型鉄芯に巻装した負帰還用巻線、7xは同じくバイアス磁界用巻線であり、磁気インピーダンス効果素子1xとC型鉄芯103とでループ磁気回路を構成するように、C型鉄芯103の両端を基板片100の他面に接着剤等で固定してある。鉄芯材料としては、残留磁束密度の小さい磁性体であればよく、例えば、パーマロイ、フェライト、鉄、アモルファス磁性合金の他、磁性体粉末混合プラスチック等を挙げることができる。
【0018】
図2−1において、被探知スポットとしての磁化片の磁気モーメントをM、磁気インピーダンス効果素子の基準線に対する傾き角度をα、磁化片に対する磁気インピーダンス効果素子1の位置pを距離R,角度φとすると、磁気モーメントMによる位置pでの磁界Hは、H=(H+Hφ1/2から、
H=M(1+3cosφ)1/2/(4πμ
で与えられる。
磁気インピーダンス効果素子1の軸方向感磁成分Hmは、
Hm=Hcos(θ+φ−α)=H〔cosθcos(φ−α)−sinθsin(φ−α)〕
で与えられ、図2−1において、
sinθ=sinφ/(1+3cosφ)1/2
cosθ=2cosφ/(1+3cosφ)1/2
の関係があるから
〔式1〕
Hm=M(2cosφcosα+sinαsinφcosφ−cosαsinφ)/(4πμ
で与えられる。
【0019】
図2−2の(イ)に示すように、前記磁化片Mが両磁気インピーダンス効果素子1a,1bの中央点が前記磁化片Mの直上に到来したときの各磁気インピーダンス効果素子の感磁出力E1、E1’は、式1においてR=R、φ=±φとすることにより得られ、磁気インピーダンス効果素子1a,1bの差出力ΔE+αは(E−E’)により得られ
ΔE+α=Msinαsinφcosφ/(2πμ
で与えられる。
一方、基準線に対する傾きが−αの磁気インピーダンス効果素子1a’,1b’における、両磁気インピーダンス効果素子1a’,1b’の中央点が磁化片の直上に到来したときの両磁気インピーダンス効果素子1a’,1b’の差出力ΔE−α
ΔE−α=−Msinαsinφcosφ/(2πμ
で与えられ、第1磁界検出手段の出力ΔE+αと第2磁界検出手段の出力ΔE−αとの加算値ΔE=(ΔE+α+ΔE−α)は0となる。
従って、加算出力が0になった時点から、センサヘッドの中央点が磁化片の直上に達した時点を知り得る。
加算出力波形が0になるその近傍の出力波形の様相は、Msinαsinφcosφ/(2πμ)→0にドロップする険しさであって急峻な変化であり、これは磁気インピーダンス効果素子の傾き角αに基づく効果である。
【0020】
図2−2の(ロ)に示すように、一の磁気インピーダンス効果素子1aが磁化片の直上に位置したときの一の磁気インピーダンス効果素子1aの出力Eaは、式1において、R=r,φ=0として
Ea=M(2cosα)/(4πμ)で与えられ、
他方の磁気インピーダンス効果素子1bの出力Ebは、式1において、R≒r,φ=φ’として
Eb=M(2cosφ’cosα+sinαsinφ’cosφ’−cosαsinφ’)/(4πμ
で与えられる。
例えばα=90°の場合に較べ、α=45°の場合の方がEaとEbの差を大きくできるから、磁気インピーダンス効果素子1a,1b(1a’,1b’)間の間隔を相当に短くしても、充分な差出力を得ることができる。
【0021】
上記の説明では垂直姿勢の磁石を取りあげているが、前記においてφ→φ−90°の置換を行うことにより水平の磁石についても同様に説明でき、この場合でも、磁気インピーダンス効果素子の傾き角αに基づく加算出力の急峻性、磁気インピーダンス効果素子間の間隔の縮小の効果を得ることができる。
更に、第1磁界検出手段の出力と第2磁界検出手段の出力とを乗じることにより、磁気インピーダンス効果素子の傾きαに基づく出力の急峻性を大きくすることが可能となる。
【0022】
本発明に係る体腔内挿入具の先端位置検出装置は、先端に磁化片を取付けた医療用チューブを患者の体内に挿入したのち、その磁化片の位置を検出するのに使用される。
磁化片には、永久磁石を用いることが好ましく、その形状は円柱体または棒状とすることが好ましく、その寸法は直径1〜3mm、長さ4〜40mmとすることが好ましい。磁化の方向は、上半周側をN(S)極、下半周側をS(N)極とするもの、長手方向の一端側をN(S)極、他端側をS(N)極とするものの何れであってもよい。
医療用チューブとしては、栄養管以外に、尿カテーテル、拡張カテーテル、経鼻胃管、気管内チューブ、胃ポンプ管、直腸管、泌尿器用チューブ等を挙げることができ、医療用ワイヤとしては、拡張カテーテルやその他の医療用チューブを案内または配置するためのガイドワイヤを挙げることができる。
【0023】
図3の(イ)及び(ロ)〔図3の(イ)の右側面図〕は患者の体腔内に挿入した医療用チューブの先端の磁化片の位置を本発明の体腔内挿入具の先端位置検出装置により検出する状態を示している。
図3において、pは患者の口または鼻から胃にかけて挿入したプラスチック製の栄養管、Mは栄養管の先端に取付けられた管状磁石であり、上半周側がN(S)極に、下半周側がS(N)極になるように磁化されている。
Tは基板に前記磁気インピーダンス効果素子1a,1b(1a’,1b’)を搭載したセンサヘッドであり、該センサヘッドを患者の身体表面に垂直向きで、かつヘッドの長手方向をヘッドの移動方向に対し直角に向け、しかも前記加算器の加算出力を0とするようにセンサヘッドを身体の軸線下方に移動させていく。
センサヘッドTが磁石Mに近づくにつれて加算出力の0点近傍での加算出力変化が急峻となり、センサヘッドTの中央が磁石M直上を通過する際にその急峻変化が最高となるので、この最急峻変化から高感度で磁石の位置を検知できる。
【0024】
磁気インピーダンス効果素子1a,1b、1a’,1b’の前記配置に基づく加算出力の高感度性と磁気インピーダンス効果素子自体の高感度性のために、磁気インピーダンス効果素子1a,1b(1a’,1b’)間の間隔を5〜30cmとすることにより、前記加算出力の0点近傍での急峻変化を有効に達成でき、センサヘッドの長さを充分に短くできる。
【0025】
上記において、前記センサヘッドと+Vcc電源、検波回路、差動増幅回路、バイアス回路、負帰還回路、励磁電流源回路等を基板に搭載した駆動部とを分離し、両者の間を可撓性リードで連結している。磁気インピーダンス効果素子1a,1b、1a’,1b’と+Vcc電源、検波回路、差動増幅回路、バイアス回路、負帰還回路、励磁電流源回路等とを共通の基板に搭載することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1−1】本発明に係る体腔内挿入具の先端位置検出装置を示す回路図である。
【図1−2】磁気インピーダンス効果素子の出力特性を示す図面である。
【図1−3】図1−1の体腔内挿入具の先端位置検出装置におけるセンサヘッドを示す図面である。
【図1−4】本発明において使用される鉄芯巻線付き磁気インピーダンス効果ユニットを示す図面である。
【図2−1】磁化片の磁気モーメントにより磁気インピーダンス効果素子に作用する磁界を示す図面である。
【図2−2】磁化片の磁気モーメントにより磁気インピーダンス効果センサの磁気インピーダンス効果素子に作用する磁界を示す図面である。
【図3】本発明に係る体腔内挿入具の先端位置検出装置の使用状態を示す図面である。
【符号の説明】
【0027】
1a,1b 一対の磁気インピーダンス効果素子
1a’,1b’ 一対の磁気インピーダンス効果素子
5 加算器
p 医療用チューブ
M 磁化片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体腔内での医療用チューブまたはワイヤの先端に連携された磁化片を検出する装置であり、基準線に対し正の角度の向きで並設された一対の磁気インピーダンス効果素子1a,1bの出力の差を出力させる第1磁界検出手段と、前記基準線に対し負の角度の向きで並設された一対の磁気インピーダンス効果素子1a’,1b’の出力の差を出力させる第2磁界検出手段と、第1磁界検出手段の出力と第2検出手段の出力とを演算する手段を有し、基板に前記磁気インピーダンス効果素子1a,1b及び1a’,1b’が搭載されていることを特徴とする体腔内挿入具の先端位置検出装置。
【請求項2】
基準線に対し正の角度の絶対値と基準線に対し負の角度の絶対値とが等しくされている請求項1記載の体腔内挿入具の先端位置検出装置。
【請求項3】
一対の磁気インピーダンス効果素子1a,1bと一対の磁気インピーダンス効果素子1a’,1b’とが基板の表面と裏面とに中心点一致のもとで搭載されている請求項1または2記載の体腔内挿入具の先端位置検出装置。
【請求項4】
一対の磁気インピーダンス効果素子a,bと一対の磁気インピーダンス効果素子1a’,1b’とが基板の同一面に相互に近接して搭載されている請求項1または2記載の体腔内挿入具の先端位置検出装置。
【請求項5】
磁化片から磁気インピーダンス効果素子1a(1a’)への距離と磁化片から磁気インピーダンス効果素子1b(1b’)への距離とを等しくするように磁気インピーダンス効果素子搭載基板が移動されることを特徴とする請求項1〜4何れか記載の体腔内挿入具の先端位置検出装置。
【請求項6】
磁気インピーダンス効果素子1aと1b(1a’と1b’)との間隔が5〜30cmとされている請求項1〜5何れか記載の体腔内挿入具の先端位置検出装置。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−99715(P2008−99715A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282069(P2006−282069)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000225337)内橋エステック株式会社 (115)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】