説明

余剰ガス利用型サージ回避コンプレッサシステム

【課題】余剰ガスを利用して熱効率を向上し、かつサージ状態に陥ることも回避できるようにしたコンプレッサシステム。
【解決手段】回転式のコンプレッサ10と、前記コンプレッサ10の吐出側に接続され高温高圧の流体1を冷却・凝縮するコンデンサ2と、前記コンデンサ2の吐出側に接続され液化した流体1を貯留する貯留槽3と、流入口5から流体の流入を受け入れると共に上部でミスト・トラップされた前記流体1を前記コンプレッサ10の吸入側12に接続されたサクションドラム6と、前記貯留槽3の底部に接続され凝縮液の流体1をサクションドラム6へ供給する凝縮液供給ライン7と、前記コンプレッサ10の吐出側11から分流した前記高温高圧の流体1を前記サクションドラム6の底部に噴射するリサイクルライン7と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、余剰ガス利用機能とサージ回避機能を付加し、冷媒または液化ガスを取り扱うコンプレッサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
LNGは低温の液体のため、タンクを断熱材で覆っても、外部からの熱によってタンク内で自然に気化してしまう。この自然に気化したガスをボイルオフガス(boil off gas,以下、「BOG」と略す)という。また、下記特許文献1には、LNG貯蔵設備のBOG回収方法、に関する技術が開示されている。具体的には、LNG貯蔵設備のBOGをサクションドラムに供給し、LNG液で冷却した後、複数台のコンプレッサで回収設備に送出するに際し、コンプレッサからの吐出ガスをその圧力に応じてサクションドラムにリサイクルさせると共に、リサイクルガスによる熱負荷変動に応じて、冷却用LNG液のサクションドラムへの供給量を制御する、というものである。
【0003】
一方、下記特許文献2には、圧縮機を駆動する原動機を連続運転させることにより停止時の起動準備等が不要となる、あるいは過負荷を低減することができ、且つ、ガス供給圧力を安定化することができる圧送方法、圧送装置、燃料ガス供給装置及びガス輸送ラインの中継基地に関する技術が開示されている。具体的には、圧縮機と、圧縮機の吸入口に接続された流体供給ラインと、圧縮機の吐出口に接続された出口ラインと、圧縮機の吸入口と吐出口とを接続するリサイクルラインと、リサイクルラインに介装されたリサイクル弁とを備えた流体の圧送方法において、出口ラインの圧力を検出して圧縮機及びリサイクル弁をフィードバック制御すると共に、流体供給ラインに入口流体圧力調整弁を備え、入口流体圧力調整弁より上流側の圧力を検出して入口流体圧力調整弁の開度を制御する、というものである。
【0004】
また、下記特許文献3には、アンロード状態を長時間継続しても、シリンダ内を確実に冷却してピストンリングやブルリングの過熱を防止することができ、かつ無負荷時の駆動動力を低減することができる高圧圧縮設備とその無負荷運転方法に関する技術が開示されている。具体的には、複数のアンローダ付き吸入弁を有する高圧圧縮機と、高圧圧縮機で圧縮されたガスを冷却するアフタークーラと、アフタークーラを出た加圧ガスの逆流を防止して排出する逆止弁と、アフタークーラ出口と高圧圧縮機のガス入口とを連通するリサイクルラインと、リサイクルラインに設けた開閉弁と、開閉弁と高圧圧縮機のアンローダを制御する制御装置とを備える。無負荷運転時に、アンローダ付き吸入弁の一部をアンロード状態にし、残りの吸入弁を作動状態に保持して冷却した加圧ガスをリサイクルラインを通して高圧圧縮機のガス入口にリサイクルし、作動状態の吸入弁を通してシリンダ内を流通させる、というものである。
【特許文献1】特公昭63−16640号公報
【特許文献2】特開2006-316687号公報
【特許文献3】特開2006-115663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、余剰ガス利用型サージ回避コンプレッサシステムという観点から、特許文献1〜3に記載された技術には、いまだ改善余地が残されていた。特に、サージ領域に突入することを回避する手段を講じたことに対する弊害として、下記の問題があった。
1)バイパスラインにクーラーを配設する場合は、スペースやコストの問題があった。
2)コンプレッサをオン/オフ制御する場合は、起動/停止に際してのエネルギーロスのほか、機械的ストレスが増大して設備寿命を縮めるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、以下の点で問題解決した余剰ガス利用型サージ回避コンプレッサシステムを提供することを目的とする。
1)バイパスラインのクーラーを省略することによってスペースやコストの面で簡素化する。
2)コンプレッサの頻繁なオン/オフ制御に伴う起動/停止のエネルギーロスをなくすほか、機械的ストレスをなくして設備寿命を伸ばす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、第1の発明に係る余剰ガス利用型サージ回避コンプレッサシステムは、下記第1の手段を採用する。すなわち、回転式のコンプレッサと、前記コンプレッサの吐出側に接続され高温高圧の流体を冷却・凝縮するコンデンサと、前記コンデンサの吐出側に接続され液化した流体を貯留する貯留槽と、流入口から流体の流入を受け入れると共に上部でミスト・トラップされた前記流体を前記コンプレッサの吸入側に接続されたサクションドラムと、前記貯留槽の底部に接続され凝縮液の流体をサクションドラムへ供給する凝縮液供給ラインと、前記コンプレッサの吐出側から分流した前記高温高圧の流体を前記サクションドラムの底部に噴射するリサイクルラインと、を採用した。
【0008】
第1の発明に係る余剰ガス利用型サージ回避コンプレッサシステムによれば、BOG等に代表される気体状態の流体(気体)、または飽和蒸気状態の流体(飽和蒸気)を回転式のコンプレッサによって凝縮する。凝縮されて気液混在する流体(気液混合体)を、コンデンサによって冷却・凝結して液化した流体(液体)にする。
【0009】
また、コンデンサの吐出側で得られる凝縮された流体(液体)は貯留槽に貯留される。この流体(液体)は、貯留槽の底部から汲み出されて用途に応じた利用に供される。例えば、液化ガスの貯留・供給設備においてBOGを液化処理する装置であれば、その液化ガスは消費に供される。
【0010】
一方、消費とは別用途として、例えば、冷凍設備における冷媒の圧縮・膨張サイクルの用途であれば、貯留槽に常温で貯留された液体の冷媒が、チラー(膨張・吸熱部)を巡って膨張・吸熱後に気体状態の流体(気体)となってから、流入口を経由してサクションドラムへ戻される。サクションドラムは、貯留槽の底部に連通する凝縮液供給ラインおよび/または流入口から流体の供給を受けて気水分離する。
【0011】
サクションドラムの気水分離機能によってミスト・トラップされた流体(気体)はコンプレッサの吸入側から吸入される。コンプレッサに吸入された流体(気体)は、凝縮されて前記同様のことが繰り返される。
【0012】
一方、コンプレッサの吐出側とコンデンサの間から分岐されたリサイクルラインを通して圧送された高温高圧の流体(ガス)を、サクションドラムの底部に配設された噴射手段によって、貯留された流体(液体)中に噴射する。そうすると、高温高圧の流体(ガス)に潜在する顕熱が、サクションドラムの底部に貯留された流体(液体)に移動して気化を促すことにより、(1)冷却される。(2)リサイクルガス冷却のための新たな用役が不要になる。(3)サクションドラムにガスが供給されることにより、コンプレッサがサージ状態に陥る危険を回避することができる。このことから、以下の効果が導き出される
【0013】
1)リサイクルライン(バイパスライン)のクーラーを省略することによって、スペースやコストの面で簡素化する。
2)コンプレッサの頻繁なオン/オフ制御に伴う起動/停止のエネルギーロスをなくすほか、機械的ストレスをなくして設備寿命を伸ばす。
【0014】
また、第2の発明に係る余剰ガス利用型サージ回避コンプレッサシステムは、前記第1の手段に加えて下記第2の手段を採用する。すなわち、前記サクションドラムに配設されて、内部の温度、圧力、液面の何れかを検知するセンサと、前記センサの検出出力に基づいて前記凝縮液供給ラインおよび/またはリサイクルラインの流量を制御する制御手段と、を採用する。
【0015】
第2の発明に係る余剰ガス利用型サージ回避コンプレッサシステムによれば、サクションドラムは、液面を一定に制御する制御手段によって、低温液供給ラインの流量が制御されるので、液面は一定に保持される。これに加えて、サクションドラムは、圧力を一定に制御する制御手段によって、リサイクルラインの流量も制御されるので、圧力も一定に保持される。そうすると、コンプレッサがサージ状態に陥る危険を、一層確実に回避することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下の点で問題解決した余剰ガス利用型サージ回避コンプレッサシステムを提供できる。
1)リサイクルライン(バイパスライン)のクーラーを省略することによって、スペースやコストの面で簡素化することが可能となる。
2)コンプレッサの頻繁なオン/オフ制御に伴う起動/停止のエネルギーロスをなくすほか、機械的ストレスをなくして設備寿命を伸ばすことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」という)について、構成と動作を適宜織り交ぜて説明する。図1は、本実施形態に係る余剰ガス利用型サージ回避コンプレッサシステム(以下、「本システム」ともいう)Eの配管図である。
【0018】
図1に示すように、本システムEは、回転式のコンプレッサ10→コンデンサ2→貯留槽3→低温液供給ライン4→サクションドラム6→コンプレッサ10の流体循環回路によって主要構成され、冷凍設備等の熱交換サイクルのほか、液化ガスを圧縮・膨張するためのコンプレッサシステムを構成している。この本システムEは、熱交換サイクルの冷媒としてのフロン、アンモニアを、図示せぬチラーを含む閉回路で循環させるほか、液化ガスであるLNG、液化窒素、液化酸素等を貯蔵し、消費に供するように取り扱うことが主な用途である。
【0019】
特に、巨大ガスタンクを含むLNG貯蔵設備の場合は、外部からの熱によってタンク内で自然に気化するBOGの凝結・液化が主用途となる。より詳しくは、BOGを流入口5からサクションドラム6へ導入すると、サクションドラム6の底部に所定の液面を維持するように貯留されたLNG液1の低温によってある程度まで冷却される。サクションドラム6の上部に連通するコンプレッサ10で圧縮される。このコンプレッサ10の吐出ガスを、その圧力に応じてサクションドラム6へ分流してリサイクルさせる。その際、リサイクルガスによる熱負荷変動に応じて、冷却用LNG液のサクションドラムへの供給量を制御する。
【0020】
ここで、コンプレッサ10は、気体の状態である流体(以下、「気体」ともいう)1のみに対して圧縮を行なうことができる仕様であるため、飽和蒸気1ならば対応可能であるが、気液混合状態の流体(以下、「気液混合体」ともいう)1であれば、サクションドラム6によって気液分離(以下、「ミスト・トラップ」ともいう)された気体1のみを、コンプレッサ10の吸入側12へと導入する。
【0021】
コンデンサ2はコンプレッサ10の吐出側11に接続され吐出された飽和蒸気1または気液混合体1を冷却・凝縮して液化させる。貯留槽3はコンデンサ2の吐出側21により液化された流体(以下、「液体」ともいう)1を貯留する。
【0022】
サクションドラム6は、貯留槽3の底部に接続された低温液供給ライン4および/または流入口5から流体1・1・1の供給を受けて気液混合体1で充満する。この気液混合体1が重力によって気液分離され、上層部の気体1と底層部の液体1に分離されて一時貯留されている。
【0023】
また、コンプレッサ10の吐出側11からリサイクルライン7を通して分流しバイパスされた高温高圧の気液混合体1が、サクションドラム6の底部に貯留された液体1中に、噴射手段(ノズル等)8を介して噴射される。
【0024】
そうすると、高温高圧の気液混合体1に潜在する潜熱が、貯留された液体1に移動して気化を促すことにより、コンデンサ2の手前で発生する排熱を回収するので、エネルギー効率を向上させるのみならず、コンプレッサ10がサージ状態に陥る危険を回避することができる。
【0025】
また、貯留槽3の底部からサクションドラム6に接続された低温液供給ライン4によって、低温の液体1が冷却用として適宜に供給される。なお、低温液供給ライン4には調節弁41が介挿され、低温液供給ライン4の流量を制御する制御手段LICにより調節弁41の弁開度が制御されている。この調節弁41は、サクションドラム6の液面を監視するように配設された液面検知用のセンサ9の検出出力に基づいた制御手段LICの制御を受けるので、サクションドラム6は液面が一定に保持される。
【0026】
そして、リサイクルライン7には調節弁71が介挿され、リサイクルライン7の流量を制御する制御手段PICにより調節弁71の弁開度が制御されている。また、サクションドラム6に配設されて、その内部の圧力を検知するセンサ9の検出出力に基づいて制御手段PICが制御動作するので、サクションドラム6は圧力が一定に保持される。
【0027】
このように、サクションドラム6は、液面を一定に制御する制御手段LICによって、低温液供給ライン4の流量が制御されるので、液面は一定に保持される。さらに、サクションドラム6は、圧力を一定に制御する制御手段PICによって、リサイクルライン7の流量も制御されるので、圧力も一定に保持される。このことによって、コンプレッサ10がサージ状態に陥る危険を一層確実に回避することができる。
【0028】
本システムEによれば、BOG等に代表される気体1、または飽和蒸気1を回転式のコンプレッサ10によって凝縮する。この凝縮された気液混合体1を、コンデンサ2によって冷却・凝結・液化した液体1は貯留槽3に貯留される。この液体1は、貯留槽3の底部から汲み出されて用途に応じた利用に供される。例えば、液化ガスのBOGを液化処理したのであれば消費に供される。
【0029】
あるいは、消費とは異なる用途として、例えば、冷凍設備における冷媒の圧縮・膨張サイクルの用途であれば、チラーを巡らせる間に膨張して気化した気体1が、流入口5を経由してサクションドラム6へ流入されることによって閉回路を循環される。すなわち、サクションドラム6の気水分離機能によってミスト・トラップされた気体1はコンプレッサ10の吸入側12から吸入される。そして、以下の流体循環回路を循環する。
コンプレッサ10→コンデンサ2→貯留槽3→サクションドラム6→コンプレッサ10
【0030】
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。また、各部の呼称に関しては、他の表現であっても実質同一であれば本発明に含まれるものと見なし得る。例えば、リサイクルライン7をバイパスライン7と読み替えても構わない。
【0031】
要するに、コンプレッサ10の吐出側11とコンデンサ2の間から分岐されたリサイクルライン7を通してバイパスされた高温高圧の流体(気液混合体)1を、サクションドラム6の底部に配設された噴射手段8によって、サクションドラム6の底部に所定の深さ(液面)を保持して貯留された流体(液体)1中に噴射するようにした技術はすべて本発明に含まれる。
【0032】
本発明によれば、高温高圧の流体(気液混合体)1に潜在する潜熱が、サクションドラム6の底部に貯留された流体(液体)1に移動して気化を促すことにより、コンデンサ2の手前で発生する排熱を回収する。このことによってエネルギー効率が向上するのみならず、コンプレッサ2がサージ状態に陥る危険を回避することができる。このことから、以下の効果が導き出される
1)リサイクルライン(バイパスライン)7のクーラーを省略することによって、スペースやコストの面で簡素化することが可能となる。
2)コンプレッサ10の頻繁なオン/オフ制御に伴う起動/停止のエネルギーロスをなくすほか、機械的ストレスをなくして設備寿命を伸ばすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る余剰ガス利用型サージ回避コンプレッサシステム(本システム)の概略構成を示す配管図である。
【符号の説明】
【0034】
1,1,1,1,1…流体
…(気体)流体、
…(飽和蒸気)流体、
…(気液混合体)流体、
…(液体)流体、
2…コンデンサ、
3…貯留槽、
4…凝縮液供給ライン
5…流入口
6…サクションドラム、
7…リサイクルライン
8…噴射手段
,9…(サクションドラム6に配設されて、内部の温度、圧力、液面の何れかを検知する)センサ、
10…回転式のコンプレッサ、
11…(コンプレッサ10の)吐出側、
12…(コンプレッサ10の)吸入側、
21…吐出側、
E…余剰ガス利用型サージ回避コンプレッサシステム、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転式のコンプレッサと、
前記コンプレッサの吐出側に接続され高温高圧の流体を冷却・凝縮するコンデンサと、
前記コンデンサの吐出側に接続され液化した流体を貯留する貯留槽と、
流入口から流体の流入を受け入れると共に上部でミスト・トラップされた前記流体を前記コンプレッサの吸入側に接続されたサクションドラムと、
前記貯留槽の底部に接続され凝縮液の流体をサクションドラムへ供給する低温液供給ラインと、
前記コンプレッサの吐出側から分流した前記高温高圧の流体を前記サクションドラムの底部に噴射するリサイクルラインと、を備えたことを特徴とする余剰ガス利用型サージ回避コンプレッサシステム。
【請求項2】
前記サクションドラムに配設されて、内部の温度、圧力、液面の何れかを検知するセンサと、
前記センサの検出出力に基づいて前記低温液供給ラインおよび/またはリサイクルラインの流量を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の余剰ガス利用型サージ回避コンプレッサシステム。

【図1】
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