説明

作業台車

【課題】従来の作業台車は、一つのレールから他のレールに移る場合、横移動のために別の台車を用意して乗せ替えて移動させるため、移し替える作業が必要で労力と手数を要し、コスト高となる課題があった。
【解決手段】この発明は、作業台車(1)の下部に、レール(3)上を走行する前・後輪(4)(5)を設け、該前輪(4)と後輪(5)の間で、左右の中間位置に、左右移動車輪(6a)(6b)(6c)(6d)を設け、該左右移動車輪は、上方位置と接地・走行する下方位置との間を昇降可能に設け、レール検出器(7)は、その検出部(7a)を、前記左右移動車輪より低い位置で、前記前・後輪(4)(5)の下端部より高い位置にあって、しかも、前記左右移動車輪より前側、又は後ろ側に配置して構成した作業台車としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主としてレール上を走行する作業台車に、左右移動用車輪を装備し、例えば、温室内に敷設された複数条のレール間を横移動して渡ることを可能にした作業台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の作業台車は、例えば、本件特許出願人と同一人が平成9年9月25日に特許出願し、平成11年4月6日に公開された特開平11−90286号公開特許公報に開示されているように、温室ハウス内に敷設されたレール上を走行しながら作業をする移動車両(「散布車」以下同じ)である。該公開公報に記載された移動車両は、一組のレール上を走行しながら一工程の作業を完了し、つぎに、隣に敷設された他のレールに移動する際、横移動専用に設けられている台車に乗せて、コンクリート通路上を横に移動して隣接した他のレール上に載せる横移動作業を行う技術を開示している。
【特許文献1】特開平11−90286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の作業台車(特許文献1の「散布車3」に相当する)は、例えば、前項で提示した本件出願人の出願に係る特許文献1の場合、前後方向に設けた複数のレール2を通る散布車3と、そのレール2の端で左右方向に進行する台車6を備え、散布車3は、一つのレール2から台車6に乗せて他のレール2に移るように設けられた構成となっている。
【0004】
したがって、従来の作業台車は、前記公報で解るように、一つのレール2から他のレール2に移る場合、必ず、レール2の端で待機している左右方向に進行する台車6に乗せ替えて他のレールまで移動させ、移し替える作業が必要で労力と手数を要する課題があった。
【0005】
そして、従来の公知技術では、押し引き操作して左右方向に移動させる台車6が必要であることは勿論であるが、台車6を通すコンクリート通路5を各レールの前に設ける必要があり、コスト的にも高くなる課題があった。(本項に記載した名称と符号は、特許文献1に記載されている名称と符号とを記載した。)
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、作業台(1a)上に乗って高所作業を可能とした作業台車(1)において、車体(2)の下部には、レール(3)上を走行できる左右一対の前輪(4)と後輪(5)とを軸架して設け、該前輪(4)と後輪(5)との間で、しかも、左右の中間位置に、車体(2)を左右方向に移動する左右移動車輪(6a)(6b)(6c)(6d)を配置して設け、該左右移動車輪(6a)(6b)(6c)(6d)は、車体(2)の上下定位置に軸架した前記左右一対の前輪(4)と後輪(5)に対して、上方位置から下方の接地・走行が可能となる低位置の間を昇降可能に装備して設け、前記レール(3)を検出するレール検出器(7)は、その検出部(7a)を、上昇位置にある前記左右移動車輪(6a)(6b)(6c)(6d)より低い位置で、前記前輪(4)と後輪(5)の下端部より高い位置に配置し、前記左右移動車輪(6a)(6b)(6c)(6d)より前側で前輪(4)との間か、又は後側で後輪(5)との間のいずれか一方側に配置して構成した作業台車であって、作業台車(1)は、レール(3)から他のレール(3)に移るときには、左右移動車輪(6a)(6b)(6c)(6d)によって自由に移動することができるものであって、別の横移動専用の台車に乗せたり、下ろしたりする必要がない。したがって、この発明は、製造コストも作業上の労力や手間も大幅に削減することが出来て、従来の課題を解消するものである。
【発明の効果】
【0007】
まず、請求項1の発明は、作業台車(1)をレール(3)から他のレール(3)に移すときには、従来のように、左右方向に進行する台車に乗せ替える必要がなく、作業台車(1)自体に装備した左右移動車輪(6a)(6b)(6c)(6d)を利用して横に移動して他のレール(3)上に移ることができる特徴と、併せて、製造コストの低減と作業(他のレールに移る作業)上の労力や手間を大幅に削減することができる特徴がある。
【0008】
そして、この発明は、レール検出器(7)の検出部(7a)を、上昇位置にある前記左右移動車輪(6a)(6b)(6c)(6d)より低い位置で、前記前輪(4)(4)と後輪(5)(5)の下端部より高い位置に配置し、前記左右移動車輪(6a)(6b)(6c)(6d)より前側で前輪(4)との間か、又は、後ろ側で後輪(5)との間のいずれか一方側に配置して構成したから、作業台車(1)の横移動時にレール(3)の検出が容易にでき、しかも、その検出精度が高い特徴がある。更に、この発明は、検出部(7a)が地面やレールに衝突して破損する虞がない特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、作業台車1は、図面に示すように、車体2の下部には、温室ハウス内に敷設されているレール3上を走行できる左右一対の前輪4,4と、後輪5,5とを軸架して構成している。なお、前輪4,4と後輪5,5とは、実施例の場合、地上を走行することもできる構成としている。そして、作業台車1は、一例として、図10、及び図11に示すように、車体2の前部に操作ボックス10が設けられ、作業者が搭乗して作業する作業台1aは、車体2に対して昇降リンク機構11を介して昇降可能に設けられている。そして、該作業台1aの昇降は、昇降電動モーター12の昇降スイッチ13の切替操作による正・逆転駆動により上下任意の高さ位置まで昇降して停止できる構成としている。
【0010】
なお、作業台1aには、上限、下限のリミットスイッチが設けられ、行き過ぎを防止できる構成としている。
そして、前記前輪4,4と後輪5,5とは、実施例の場合、温室ハウス内に敷設されている温湯配管14,14をレール3,3としてその上に沿って走行する構成としているが、温湯配管14,14に限定するものではなく、他の給水(液)パイプや専用のレールを敷設することもある。そして、車体2の走行は、走行用電動モーター15の駆動によって後輪車軸16を経由して左右後輪5,5を伝動して走行する構成としている。
【0011】
つぎに、左右移動車輪6a,6b,6c,6dは、図面に示すように、車体2の下部(下側面)において、前記前輪4,4と後輪5,5との前後の中間部位で、しかも、左右の中間位置に、図6の底面図に示すように、4箇所に配置して車体2を左右方向に横移動できるように構成している。この場合、左右移動車輪6a,6b,6c,6dは、図6、乃至図9に示すように、4個の各車輪が枠組みした状態で一体に軸架して構成され、油圧ポンプ18と油圧シリンダ19とに接続して上方の収納位置(図1、図7参照)と、前輪4,4、及び後輪5,5と同じ高さで接地する位置(図8参照)と、前輪4,4、及び後輪5,5より下方に下がり接地・走行ができる高さ位置(図9参照)まで下降できる構成としている。
【0012】
そして、左右移動車輪6a,6b,6c,6dは、図8に示すように、上記した前輪4,4、及び後輪5,5と同じ高さまで下降させた位置で全部の車輪が接地すると、作業台車1の前後移動も左右移動もできなくなり、別装置の駐車ブレーキを装備しなくても駐車ブレーキとしての機能を発揮できる効果がある。
【0013】
そして、左右移動車輪6a,6b,6c,6dは、図9に示すように、前輪4,4、及び後輪5,5より低い位置まで下げて接地させて、作業台車1を横から押し、引きすると左右方向に走行させることができる状態になり、レール3から他のレール3に移動することができる。
【0014】
つぎに、レール検出器7は、図4、及び図5に示すように、ローラ状の検出部7aを、基部を軸架して先端部が上下に回動するセンサアーム20の先端に軸架して上下可能に設け、そのセンサアーム20の基部に一体として連結した検出杆21を上方に延長して中間部に検出具22を固着してレール3を検出する構成としている。したがって、レール検出器7は、通常、ローラ状の検出部7aがセンサアーム20の基部を支点に垂下されて、検出杆21と共に検出具22が検出器7側に押圧状態にあるが、検出部7aが下側にレール3を検出して接触した状態になると、基部を支点にセンサアーム20の先端側が押し上げられ、検出具22が検出器7から離れて非接触状態になり、レール3の検出となる構成としている。
【0015】
このように構成されたレール検出器7は、図1、及び図2に示す実施例の場合、前記したローラ状の検出部7aを、上昇位置で待機させている前記左右移動車輪6a,6b,6c,6dより低い位置で、しかも、前記前輪4,4の下端部より高い位置に配置し、更に、前記左右移動車輪6a,6b,6c,6dより前側で一方側の前輪4との間に配置した構成としている。
【0016】
そして、レール検出器7は、検出部7aが常にレール3の高さ位置か、その近傍に配置され、ローラ状の検出部7aの下側がレール3に接触するとレール3に押し上げられながらレール3を検出できる構成となっている。このようにして、レール検出器7は、レール3を検出すると、実施例の場合、ブザーでオペレータに通報できる構成としている。
【0017】
以上述べたように、実施例は、作業台車1をレール3から他のレール3に移すときには、従来のように、左右方向に進行する横移動専用の台車に乗せ替える必要がなくなり、作業台車1自体に装備した左右移動車輪6a,6b,6c,6dを利用して横に移動して他のレール3上に移ることができる。実施例によると、従来に対比して、製造コストの低減と作業(他のレールに移る作業)上の労力や手間も大幅に削減することができる利点がある。
【0018】
そして、この実施例は、レール検出器7の検出部7aを、レール3の高さ位置に配置して構成したから、作業台車1の横移動時にレール3の検出が容易にでき、しかも、その検出精度が高い特徴と、併せて、検出部7aが、地面やレール3に衝突して破損する虞もないものとなっている。
【0019】
そして、前記左右移動車輪6a,6b,6c,6dは、実施例の場合、作業台車1をオペレータが押し引きして横移動する構成としているが、これを電動モーターに接続して自動走行ができる構成にすることは自由であり、レール検出器7と関連させて構成し、レール3が検出されると自動的に横移動が停止される制御構成にすることも比較的簡単にできる。
【0020】
つぎに、温室ハウス内、又は屋外において、敷設されたレール3,3上を走行しながら防除薬剤(病害虫を防除する薬液、及び紛剤を含む)を散布する防除ロボットに関する実施例を説明する。
【0021】
一般に、作物を栽培する場合、同一の温室ハウス内であっても、病虫害の発生率が高いエリアと比較的低いエリアとの差が発生する場合が多く、病害虫の発生率が高いエリアには多量の薬剤を散布できる構成とすると防除作業が効果的にできる。
【0022】
そこで、実施例は、防除ロボットが走行するレール3,3上にマークM1(多量噴霧開始位置)とM2(通常噴霧量に戻る位置)とを設け、防除ロボットが、これを検出すると、その区間だけ走行速度を自動減速して他の区間より低速にして走行する構成とした。したがって、防除ロボットは、単位時間当りの散布量を同一に設定して薬液の散布作業を行うと、上記マークM1とM2との間では、単位面積あたりの散布量が増えて目的を達することが出来る。
【0023】
つぎに、実施例は、図13に示すように、養液栽培に使用する誘引紐25に物差しの如きメモリ(例えば、紐上に10cmごとにマークを付す)26を付けて構成するものである。このように、誘引紐25は、メモリ26を付けると、物差し代わりに使用できるのは勿論のこと、作物の生長度を一目で知ることができる特徴がある。
【0024】
つぎに、近赤外線スペクトル測定装置(NIR測定装置)について、実施例を説明する。
まず、NIR測定装置は、図14に示すように、物質に吸収され易い近赤外線を含む光を発生する光源30と、該光源30からの光を照射すると共にその拡散反射光を受光する光干渉型プローブ31と、該光干渉型プローブ31が受光した拡散反射光を分光分析し近赤外線スペクトルを測定する分光分析器32と、該分光分析器32で分析された結果を出力する出力端末(パソコン)33とから構成している。
【0025】
そして、実施例は、前記近赤外線スペクトル測定装置(NIR測定装置)に切替スイッチ34を接続して光源30から照射する光の波長を、例えば、図15に示すように、野菜、果物、更には、各品種に合わせた波長を設定して、切替できる構成としている。
【0026】
このように、実施例は、光源30が照射する光の波長を野菜、及び品種ごとに設定しておき、切替スイッチ34で変更できる構成にすることによって、その野菜(果物)に有効な波長を得て測定することが可能となった。
【0027】
そして、前記光干渉型プローブ31は、図16、及び図17に示すように、伸縮可能なスプリング35を介装してプローブカバー36を取り付けた構成としている。このように構成すると、光干渉型プローブ31は、サンプルとなるトマトに押し付けるだけでプローブカバー36がスプリングの張力によって自動的にサンプルに接触しカバーできるから、測定が行い易く測定精度が向上する特徴がある。
【0028】
そして、プローブカバー36は、図18に示すように、アクリル製の細い素材37を渦巻状に巻き付けて、内径が拡縮可能に構成している。
このように構成すると、実施例のプローブカバー36は、図19に示すように、サンプルの大きさに対応して拡縮可能になるから、サンプルの大小に影響されることなく、測定が行い易く測定精度が向上する特徴がある。
【0029】
つぎに、前記光干渉型プローブ31の自動清掃装置40は、図20に示すように、プローブ31を上側から挿入する清掃穴41の底部に回転する清掃ブラシ42を軸装し、電動モーター43で駆動する構成としている。実施例の場合、清掃ブラシ42は、軟らかいスポンジ材を使用し、清掃穴41にプローブ31を上側から挿入する電動モーター43が自動的に始動して駆動され清掃することができる構成となっている。
【0030】
つぎに、実施例の近赤外線スペクトル測定装置(NIR測定装置)は、図21に(A)(B)に示すように、生育過程における予測糖度(完熟時)と実際(現在)の糖度とを測定することを可能にしている。従来のこの種装置は、特開2006−238849号公開特許公報に開示されているように、成熟時の糖度を予測できる構成にはなっているが、現時点の糖度を同時に測定することはできないものである。
【0031】
実施例は、図21の(A)(B)に示すように、生産過程における成熟時の予測糖度と実際の糖度との両方を、算出式に基づいて演算し算出できるすばらしい発明である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】作業台車の側面図
【図2】作業台車の底面図
【図3】作業台車の背面図
【図4】レール検出器の側面図
【図5】レール検出器の平面図
【図6】作業台車の底面図
【図7】作業台車の側面図
【図8】要部の側面図
【図9】作業台車の作用側面図
【図10】実施例の作業台車の背面図
【図11】実施例の作業台車の側面図
【図12】マークを付けたレールの平面図
【図13】実施例に係る誘引紐の平面図
【図14】近赤外線スペクトル測定装置の概略を示す斜面図
【図15】光の波長バンドの例示図
【図16】プローブとそのカバーの正面図
【図17】プローブとそのカバーとの側断面図
【図18】プローブカバーの斜面図
【図19】プローブカバーの作用側断面図
【図20】プローブの自動清掃装置の側断面図
【図21】(A)は、糖度予測に関するグラフと算出式とを示す。
【0033】
(B)は、計測時点の糖度に関するグラフと算出式とを示す。
【符号の説明】
【0034】
1 作業台車 1a 作業台
2 車体 3 レール
4,4 前輪 5,5 後輪
6a,6b,6c,6d 左右移動車輪
7 レール検出器 7a 検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業台(1a)上に乗って高所作業を可能とした作業台車(1)において、車体(2)の下部には、レール(3)上を走行できる左右一対の前輪(4)と後輪(5)とを軸架して設け、該前輪(4)と後輪(5)との間で、しかも、左右の中間位置に、車体(2)を左右方向に移動する左右移動車輪(6a)(6b)(6c)(6d)を配置して設け、該左右移動車輪(6a)(6b)(6c)(6d)は、車体(2)の上下定位置に軸架した前記左右一対の前輪(4)と後輪(5)に対して、上方位置から下方の接地・走行が可能となる低位置の間を昇降可能に装備して設け、前記レール(3)を検出するレール検出器(7)は、その検出部(7a)を、上昇位置にある前記左右移動車輪(6a)(6b)(6c)(6d)より低い位置で、前記前輪(4)と後輪(5)の下端部より高い位置に配置し、前記左右移動車輪(6a)(6b)(6c)(6d)より前側で前輪(4)との間か、又は後側で後輪(5)との間のいずれか一方側に配置して構成した作業台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−77656(P2009−77656A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249534(P2007−249534)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】