説明

作業機における表示装置

【課題】コンバインに設けた表示装置において、異常状態の安全な解消方法を確認できるようにする。
【解決手段】コンバインの各種モードの情報を表示するための液晶パネルと、複数のモードのうち実行中のモードの情報を液晶パネルの画面に表示するように制御するCANコントローラユニットとを備えた表示装置において、CANコントローラユニットは、コンバイン各部の異常状態を検出した場合には、液晶パネルの画面に、警報表示モードにおける異常状態の情報として、前記異常状態に対する文字の処置情報152を表示するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインやトラクタ等の農作業機、クレーン車等の特殊作業用車両または乗用車等の各種作業機における表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンバイン等の農作業機は、制御目標となる制御量の信号を制御手段に伝えるためのセンサや設定器、例えば農作業機のエンジンの出力(負荷)を制御する電子式ガバナの燃料噴射量検知センサ(燃料噴射用プランジャの位置調節のためのラック位置の検出センサ)、走行機体に対する走行部の左右一対の走行クローラの相対的高さを検出するための車高センサや、前記信号に応じて制御対象の作動量を検出するためのセンサ、例えば農作業機の走行速度を検出するための車速センサ等の入力系機器と、各種アクチュエータ、例えば前記燃料噴射ポンプのラック位置を調節するための電磁ソレノイド等のラックアクチュエータ、前記走行クローラの相対的高さを調節するための油圧シリンダ等の出力系機器とを備えており、通常、これら各入出力系機器はマイクロコンピュータ等の制御手段で制御されている。
【0003】
そして、最近では、例えば特許文献1に記載されるように、この種の農作業機の操作部近傍に、液晶ディスプレイや表示計器等の表示装置が設けられており、これらの表示装置に農作業機各部の状態情報を表示することにより、作動状況(例えばエンジンの回転数や負荷、車速、穀粒タンク内の穀粒の積載量等)をオペレータが視覚的に認識できるようになっている。
【特許文献1】特開平10−23820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来から、液晶ディスプレイの画面面積には限りがあるため、農作業機各部に異常状態が発生した場合には、当該異常状態の情報(以下、異常情報という)として、この異常状態の内容を示す記号コード等の情報を、前記液晶ディスプレイの画面に表示するようにしていた。このため、前記液晶ディスプレイの画面に表示された異常情報を見ただけでは、どのようにして農作業機の異常状態を解消すればよいのかが分かり難いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解消した作業機における表示装置を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するため、請求項1の発明は、作業機の各種モードの情報を表示するための表示手段と、前記複数のモードのうち実行中のモードの情報を前記表示手段の画面に表示するように制御するための制御手段とを備えた表示装置において、前記制御手段は、前記作業機各部に異常状態が発生した場合には、前記表示手段の画面に、警報表示モードにおける異常状態の情報として、前記異常状態に対する文字の処置情報を表示するように制御するというものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載した作業機における表示装置において、前記処置情報には、作業部への動力伝達を継断するための作業クラッチを切り状態にするか又はエンジンを停止させるという内容と、前記異常状態を解消する手立てとを含んでいるというものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載した作業機における表示装置において、前記制御手段は、前記作業機各部に前記異常状態の1つである緊急状態が発生した場合には、エンジンを強制的に停止させるように制御するというものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によると、作業機各部に異常状態が発生した場合には、表示手段の画面に、警報表示モードにおける異常状態の情報として、前記異常状態に対する文字の処置情報を表示するから、オペレータは、前記異常状態に対する処置の仕方をその場で把握できる。このため、異常発生位置の修理等を迅速かつ的確に実行できるという効果を奏する。
【0010】
特に請求項2の発明によると、前記処置情報には、作業部への動力伝達を継断するための作業クラッチを切り状態にするか又はエンジンを停止させるという内容と、前記異常状態を解消する手立てとを含んでいるから、異常状態を解消するに際して、オペレータに予め、異常状態が発生した箇所への動力伝達を遮断したりエンジンを停止させたりすべきであるという注意を促すことができる。従って、異常発生箇所が駆動可能な状態のままで、オペレータが異常解消作業をするという危険を回避するのに効果を発揮できる。
【0011】
請求項3の発明によると、前記作業機各部に前記異常状態の1つである緊急状態が発生した場合には、エンジンを強制的に停止させるから、前記緊急状態が発生した箇所への動力伝達(駆動)を確実に停止できることになり、前記作業機の破損・故障を未然に防止できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明を具体化した実施形態を、作業機としてのコンバインに適用した場合の図面(図1〜図36)に基づいて説明する。
【0013】
図1〜図33は本発明の第1実施形態を示している。第1実施形態におけるコンバインの走行機体1は、左右一対の走行クローラ2,2に対して後述する走行部昇降駆動手段を介して昇降可能に構成されている。図1に示すように、走行機体1の進行方向に向かって左側には脱穀装置3が搭載されている。走行機体1の前部に配置した刈取前処理装置4は、走行機体1に対して、昇降フレーム14を介して昇降回動可能に支持されており、この昇降フレーム14と走行機体1との間に装着したアクチュエータとしての刈取部用油圧シリンダ9で昇降調節可能に構成されている。
【0014】
刈取前処理装置4の下部にはバリカン式の刈刃装置5が配置されており、前部には六条分の穀稈引起装置6が配置されている(図3参照)。この穀稈引起装置6と脱穀装置3におけるフィードチェーン7の前端との間には穀稈搬送装置8が配置されており、穀稈引起装置6の下部前方には、走行機体の進行方向に向かって突出する分草体10が取り付けられている。そして、走行機体1の右側前部には運転室11が配置されており、この運転室11の後方には穀粒タンク12が配置されている。
【0015】
図4に示すように、運転室11の後方下部に備わるエンジン15からの動力の一部は、オーガクラッチ16を介して、穀粒タンク12内の底スクリューコンベヤ17と排出オーガ28内の縦横スクリューコンベヤ18a,18bとに伝達される一方、エンジン15からの残りの動力は、動力分岐ミッション19を介して油圧ポンプ油圧モータ式走行駆動部24、脱穀装置3の扱胴13及び処理胴20、唐箕21、一番受樋のスクリューコンベヤ22a、二番受樋のスクリューコンベヤ22bやフィードチェーン7、穀粒タンク12への揚穀スクリューコンベヤ23、搖動選別機構40、排わらカッタ27等を回転駆動させるようになっている。
【0016】
刈取前処理装置4への動力は、走行速度と同期するときには、走行駆動部24からの出力軸26を介して伝達され、同期しないときには、動力分岐ミッション19からの分岐動力をワンウェイクラッチ25を介して伝達されるようになっている。
【0017】
図1及び図2に示すように、穀粒タンク12内の穀粒を機外に排出するための排出オーガ28は、走行機体1の後端に配置した縦筒28aと、この縦筒28aの上端に上下回動可能に連設した横筒28bとからなり、縦筒28a内には縦スクリューコンベア18aが、横筒28b内には横スクリューコンベア18bがそれぞれ内装されている。
【0018】
縦筒28aは、駆動モータ29とギア機構30とで縦軸回りに旋回可能に構成されており、横筒28bは、縦筒28aとの間に装架したオーガ用油圧シリンダ31とリンク機構32とで上下傾斜角度を変更可能に構成されている。
【0019】
そして、駆動モータ29に設けたロータリエンコーダ等の旋回角センサ81により、縦筒28aの水平旋回角度、ひいては横筒28bの水平旋回位置を検出でき、オーガ用油圧シリンダ31またはリンク機構32の箇所に設けたポテンショメータ等の上下回動角センサ82により、横筒28bの上下傾斜角度、ひいては横筒28b先端の排出部の高さ位置を検出できるようになっている。
【0020】
なお、排出オーガ28を使用しないときには、穀粒タンク12の上面に設けたレスト台33等に横筒28bの中途部が載置されるようになっている。このレスト台33には、横筒28bが載置されたか否かを検出する接触センサ等のレスト検出器34が取り付けられている。
【0021】
左右各走行クローラ2は、トラックフレーム35の前後端に各々配置した駆動輪36及び従動輪37と、トラックフレーム35の下面中途部に複数個配置した転動輪38との外周に巻回してなり、左右各トラックフレーム35と走行機体1とは、走行部用油圧シリンダ39a(39b)と、トラックフレーム35の前後位置に設けた側面視L字状の前後レバーを同時に作動させるように連結した連結杆(図示せず)等とからなる走行部昇降駆動手段を介して連結されている。
【0022】
左右の走行部用油圧シリンダ39a,39bは、互いに独立的に作動させることにより、左右各走行クローラ2を、走行機体1の左右に対して独立的に昇降させ得るようになっている。
【0023】
したがって、左右両側の走行部用油圧シリンダ39a,39bのピストンロッドを同時に突出させると、走行機体1は左右両走行クローラ2,2から上方に離れて(上昇し)、走行機体1の走行クローラ2,2に対する相対的高さ(車高)は高くなる。逆に、前記ピストンロッドを同時に後退させると、走行機体1は左右両走行クローラ2,2に近付いて(下降し)、走行機体1の走行クローラ2,2に対する相対的高さ(車高)は低くなる。
【0024】
そして、左側の走行部用油圧シリンダ39aにおけるピストンロッドを突出させるか、または、右側の走行部用油圧シリンダ39bにおけるピストンロッドを後退させると(もしくはこの両方の動作を同時に実行しても)、右走行クローラ2に対する走行機体1の車高は低くなり(左走行クローラ2に対する走行機体1の車高は高くなり)、走行機体1は右下がりに傾斜する。
【0025】
逆に、右側の走行部用油圧シリンダ39bにおけるピストンロッドを突出させるか、または、左側の走行部用油圧シリンダ39aにおけるピストンロッドを後退させると(もしくはこの両方の動作を同時に実行しても)、左走行クローラ2に対する走行機体1の車高は低くなり(右走行クローラ2に対する走行機体1の車高は高くなり)、走行機体1は左下がりに傾斜するのである。
【0026】
左右各走行部用油圧シリンダ39a,39bのピストンロッドの突出量を検出して、走行機体1の左右各走行クローラ2,2に対する相対的高さ(車高)を検出するためのロータリエンコーダ等の車高センサ41a,41bは、前記連結杆に連設した連結ロッドやリンク機構(図示せず)を介して連動するように構成されている。走行機体1の左右の傾斜角度を検出するための振り子式(重力式)等の傾斜センサ43は、走行機体1の任意の位置、例えば運転室11内等に配置されている。
【0027】
なお、図3に示すように、刈取前処理装置4と圃場面との対地高さを検出するための超音波センサ44a,44bは、発信器の発信部(ホーン部)と受信器の受信部とを圃場面に向けた状態で、刈取前処理装置4の左右両側における穀稈引起装置6の裏面側に設けたブラケット(図示せず)に配置されている。
【0028】
超音波センサ44a,44bの設置高さと刈刃装置5の設置高さとが異なる場合には、超音波センサ44a,44bの検出値から所定の換算により刈取前処理装置4と圃場面との対地高さを求めることができるようになっている。
【0029】
また、昇降フレーム14の基端に取り付けた昇降ポジションセンサ45は、昇降フレーム14の回動角度を検出することにより、走行機体1と刈取前処理装置4との相対的高さを求めることができるようになっている。
【0030】
図5に示すように、油圧シリンダ9,31,39a,39bのための油圧回路は、油圧ポンプ46からの圧油を分流する分流弁47を介して分岐しており、この分流弁47の一方の吐出路からは、オーガ用油圧シリンダ31と左側の走行部用油圧シリンダ39aとに対する第1油圧回路48ヘ圧油を送給し、他方の吐出路からは、刈取部用油圧シリンダ9と右側の走行部用油圧シリンダ39bとに対する第2油圧回路49へ圧油を送給するように構成されている。
【0031】
両油圧回路48,49には、それぞれの油圧シリンダ9,31,39a,39bに対する電磁制御弁50,51,52,53や逆止弁、リリーフ弁等が接続されている。
【0032】
次に、運転室11に備わる各種操作用のレバーやスイッチ類の構成を、図6及び図7を参照して説明する。運転座席56の前方のフロントコラムカバー体57から上向きに突出するハンドル軸(図示せず)には、走行機体1を操向操作する操向丸ハンドル58が取り付けられており、運転座席56から見てフロントコラムカバー体57の右側面には、前後方向に回動可能なアクセルレバー59が設けられている。
【0033】
フロントコラムカバー体57の上端部位には、液晶表示装置60が、平面視で操向丸ハンドル58における略半円形状のハンドルホイル58aの内径側に位置するように取り付けられている。
【0034】
この液晶表示装置60は、フロントコラムカバー体57のみに固定されていて、操向丸ハンドル58には連結していないので、操向丸ハンドル58を回動させても、液晶表示装置60は動かないようになっている。また、液晶表示装置60の上面(画面)を操向丸ハンドル58のハンドルホイル58aよりも下方に位置させているので、操向丸ハンドル58を回動させても、液晶表示装置60には接触しないようになっている。
【0035】
運転座席56の左方には、前後に長いサイドコラム61が配置されており、このサイドコラム61の前端部位には、走行機体1の車高を手動で変更調節できる車高調節レバー62と、車高制御における自動操作と手動操作とを切り替えるための車高制御切替スイッチ63と、走行機体1の左右傾斜角度を設定するための傾斜設定器64とが配置されている。
【0036】
サイドコラム61上のうち車高調節レバー62等の後方部位には、車速を無段階変速させる主変速レバー65と、作業状態に応じて走行駆動部24の出力及び回転数を所定範囲に設定保持する副変速レバー66とが左右に平行状に配置されており、これら各レバー65,66は前後回動可能に構成されている。
【0037】
また、サイドコラム61上のうち副変速レバー66の右寄り部位には、刈取自動昇降スイッチ131等の各種スイッチ類が配置されており、副変速レバー66の後方部位には、刈取作業のための刈取レバー67と脱穀作業のための脱穀レバー68とが前後回動可能に配置されている。
【0038】
刈取レバー67は、前傾させると刈取作業を実行するための刈取スイッチ134が切り作動し、後傾させると刈取スイッチ134が入り作動するように構成されている。同様にして、脱穀レバー68も、前傾させると脱穀作業を実行するための脱穀スイッチ135が切り作動し、後傾させると入り作動するように構成されている。
【0039】
主変速レバー65の握り部65aには、右側面に、刈取前処理装置4を強制的に上昇させるオートリフトスイッチ137と刈取前処理装置4を所定の刈高さまで強制的に下降させるオートセットスイッチ138とが設けられている。握り部65aの前側面のうち右側には、刈取前処理装置4の昇降動を手動操作するための刈取昇降レバー139が配置されており、左側には、穀稈の扱深さ位置を手動で変更調節できる扱深さ調節レバー140が配置されている。
【0040】
図6及び図7に示すように、液晶表示装置60は、文字、記号、画像等の情報を表示できるモノクロのドットマトリクス形の表示手段としての液晶パネル60bと、これを収納するケース60aとにより構成されている。なお、液晶パネル60bはカラー型であってもよい。
【0041】
このケース60aの表面のうち液晶パネル60bの外周側には、コンバイン全体の電源を入り切り操作する電源スイッチ142の入り操作時等に点灯する作業ランプ70と、画面表示の切替え等のための左右各2つのスイッチ71,72,73,74とが設けられている。これら各スイッチ71〜74は、スイッチの一回の押下により一つのONパルス信号が出るいわゆるプッシュスイッチで、ノンロックタイプのものである。また、これら各スイッチ71〜74は本発明における入力手段に相当する。
【0042】
ケース60a内であって液晶パネル60bの裏面側には、コンバインの各種モードのうち実行中のモードに対応した画像情報を液晶パネル60bの画面に表示するように制御するCANコントローラC5(詳細は後述する)が内装されている。
【0043】
次に、走行機体1の車速、姿勢及び車高、排出オーガ28の排出位置等コンバインの操作全般を制御するとともに、実行中のモード(コンバインの動作の状態)に対応した画像情報を液晶パネル60bの画面に表示するように制御するための制御手段の構成について説明する。
【0044】
図8に示すように、制御手段としてのマイクロコンピュータ等の電子式制御装置75は、複数(第1実施形態では5つ)のCANコントローラC1,C2,C3,C4,C5と、これらの間を相互に接続するCAN通信バス76とで構成されている。CANコントローラC1及びC5には、制御データの反射を抑制する終端抵抗としての抵抗器(図示せず)が内蔵されている。
【0045】
各CANコントローラC1〜C5は、各種演算処理や制御を実行するCPU77、後述する各制御プログラムを記憶させる不揮発性メモリとしてのEEPROM78、各種データ等を一時的に記憶させるRAM79、タイマ機能としてのクロック、各種入力系機器及び出力系機器に接続してデータを伝送する入出力インターフェイス(図示せず)等を備えている。
【0046】
CANコントローラC1〜C5のEEPROM78の各々には、それぞれに対応するアプリケーション制御プログラム(ソフト)S1,S2,S3,S4,S5を予め記憶(格納)させている(図8参照)。
【0047】
アプリケーション制御プログラムS1は、脱穀装置3及び刈取前処理装置4の各種アクチュエータ(例えば刈取部用油圧シリンダ9等)を作動させる制御プログラムとし、アプリケーション制御プログラムS2は、刈取部用油圧シリンダ9及び走行機体1の左右の走行部用油圧シリンダ39a,39bを作動させて、刈取前処理装置4の刈高さ制御や走行機体1の姿勢及び車高制御を実行するための制御プログラムとする。
【0048】
アプリケーション制御プログラムS3は、エンジン15の出力を制御するための制御プログラムとし、アプリケーション制御プログラムS4は、排出オーガ28における駆動モータ29及びオーガ用油圧シリンダ31の作動を制御するための制御プログラムとする。
【0049】
そして、アプリケーション制御プログラムS5は、各コントローラC1〜C5に接続された全ての入出力系機器の入出力を管理・制御して、実行中のモードに対応した画像情報を液晶パネル60bの画面に表示する制御を司る制御プログラムとする。
【0050】
また、各EEPROM78には、CAN通信に必要な通信制御プログラムと、入出力系機器間で制御データ(情報)を伝送するための入出力用制御プログラムとについても予め格納しており、アプリケーション制御プログラムに対して入出力用制御プログラムがベースとなるように階層化している。
【0051】
各CANコントローラC1〜C5は、目安として、入出力系機器のハーネスの長さがなるべく短くなるように組み合せてそれらを制御するようにしており、それぞれの配置箇所でコントローラボックス(図示せず)内に格納されている。
【0052】
例えば、CANコントローラC1は、運転室11における床板の下面側に設置されている(図1〜図3参照)。CANコントローラC1の入力インターフェイスには、入力系機器として、昇降ポジションセンサ45、刈取前処理装置4において刈取穀稈を搬送しているか否かを検出する穀稈搬送センサ96、搬送中の刈取穀稈の長さを検出する穀稈長さセンサ97、扱深さセンサ98、オーガクラッチモータスイッチ99、超音波センサ44a,44b、車速センサ100、2番受樋スクリューコンベア回転センサ101、操向丸ハンドルリミットスイッチ102等がそれぞれ接続されている(図9参照)。
【0053】
CANコントローラC1の出力インターフェイスには、出力系機器として、扱深さ制御モータにおけるリレーユニット等の制御回路部103、オーガクラッチモータにおけるリレーユニット等の制御回路部104、脱穀クラッチを駆動させるための電磁ソレノイド105等がそれぞれ接続されている(図9参照)。
【0054】
CANコントローラC2は、刈取前処理装置4の上部でかつ運転室11に近い箇所に設置されている(図1〜図3参照)。このCANコントローラC2の入力インターフェイスには、入力系機器として、燃料センサ106、傾斜センサ43、車高センサ41a,41b、選別装置の流穀板における籾流量センサ107、選別装置各部での籾の有無を検出する籾センサ108、排藁カッタ詰まりセンサ109、旋回角センサ81、横筒28bの先端部に設けて排出オーガ28の水平旋回等を操作する排出オーガ先端操作部110、上下回動角センサ82、オーガクラッチセンサ111、排出オーガ過負荷センサ112、搖動選別過負荷センサ113、扱胴回転センサ114、処理胴回転センサ115等がそれぞれ接続されている(図10参照)。
【0055】
CANコントローラC2の出力インターフェイスには、出力系機器として、搖動選別駆動モータ116、FCクラッチ駆動回路部117、排出オーガ28の縦筒28aを水平旋回させるための駆動モータ29、排出オーガブレーキ118、オーガ用油圧シリンダ31に対する電磁制御弁51の電磁ソレノイド51a、走行機体1の左側の走行部用油圧シリンダ39aに対する電磁制御弁52の電磁ソレノイド52a、走行機体1の右側の走行部用油圧シリンダ39bに対する電磁制御弁53の電磁ソレノイド53a、刈取部用油圧シリンダ9に対する電磁制御弁50の電磁ソレノイド50a等がそれぞれ接続されている(図10参照)。
【0056】
図1〜図3に示すように、CANコントローラC3は、運転室11における運転座席56の後部に設置されている。このCANコントローラC3の入力インターフェイスには、入力系機器として、エンジン回転数センサ119、エンジンオイル量センサ120、エンジン水温センサ121、エンジン15の出力(負荷)を制御する電子ガバナ付き燃料噴射ポンプのラック位置を検出するための燃料噴射ポンプラック位置センサ122、エンジンスタータスイッチ123、排出オーガ28の水平旋回位置を予め記憶させるためのオーガセット位置ダイヤル124、運転室11に設けて排出オーガ28の水平旋回等を操作する排出オーガ操作部125、刈取クラッチモータリミットスイッチ126等がそれぞれ接続されている(図11参照)。
【0057】
CANコントローラC3の出力インターフェイスには、出力系機器として、エンジン15の回転数が所定の回転数となるように燃料噴射ポンプのラック位置を調節するための燃料噴射ポンプラックアクチュエータ127、エンジンスタータリレー128、警報ブザー129等が各々接続されている(図11参照)。
【0058】
CANコントローラC4は、運転室11のサイドコラム61内に設置されている(図1〜図3参照)。このCANコントローラC4の入力インターフェイスには、入力系機器として、アクセルレバー59の操作位置を検出するアクセルレバーセンサ59a、車高調節レバー62、車高制御切替スイッチ63、傾斜設定器64、扱深さ自動制御スイッチ130、刈取自動昇降スイッチ131、刈取前処理装置4が所定の刈高さまで下降すると自動的に前記刈取前処理装置4へ動力伝達するための刈取オートクラッチスイッチ132、刈取スイッチ134、脱穀スイッチ135、選別装置における穀粒の選別状態を調節するための選別調節ダイヤル136、オートリフトスイッチ137、オートセットスイッチ138、刈取昇降レバー139、扱深さ調節レバー140、副変速レバー66、走行機体1を後退動させるための後退スイッチ141、電源スイッチ142等がそれぞれ接続されている(図12参照)。
【0059】
CANコントローラC4の出力インターフェイスには、出力系機器として、車高制御を自動操作に切り替えたときに点灯する車高制御切替スイッチランプ143、扱深さ制御を自動操作に切り替えたときに点灯する扱深さ自動制御スイッチランプ144等が接続されている(図12参照)。
【0060】
ケース60a内に内装されたCANコントローラC5の入力インターフェイスには、液晶パネル60bの画面上のカーソルを画面上方向に移動させるためのカーソル上移動スイッチ71、画面下方向に移動させるためのカーソル下移動スイッチ72、液晶パネル60bの画面表示を切り替える操作等をするための第1及び第2切替スイッチ73,74等がそれぞれ接続されている(図13参照)。
【0061】
そして、CANコントローラC5の出力インターフェイスには、表示手段としての液晶パネル60b、コンバイン全体の電源を入り切り操作する電源スイッチ142の入り操作時等に点灯する作業ランプ70等がそれぞれ接続されている(図13参照)。
【0062】
次に、CANコントローラC5によるモードの切替え制御の態様について説明する。図14に示すように、コンバインのモード(動作の状態)は、初期モードM1、路上走行や各種作業をする通常モードM2、コンバイン各部の異常状態を報知する警報表示モードM3、検出エラー等の各種エラーの内容を報知するエラー表示モードM5及び自動走行制御等の設定を行うための環境設定モードM4の5つに大別される。
【0063】
そして、通常モードM2には、路上走行等をする非作業モードM2aと刈取・脱穀作業をする作業モードM2bとがあり、非作業モードM2aからのみ移行できるメンテナンスモードM6も設定されている(図15参照)。
【0064】
まず最初に、電源スイッチ142を入り操作すると、初期モードM1が起動して、液晶パネル60bの画面に図16に示す初期画像情報が表示される。
【0065】
次いで、CANコントローラC5のEEPROM78に予め設定された時間(第1実施形態では10秒)が経過するか、あるいは、エンジン15の回転数が予め設定された回転数(第1実施形態では240rpm)以上になると、自動的に通常モードM2のうち非作業モードM2aに移行して(図15参照)、液晶パネル60bの画面の表示が、前記初期画像情報からエンジン回転数や燃料の残量等の画像情報(非作業モードM2aに対応した画像データ)に遷移する(図17参照)。
【0066】
この場合、液晶パネル60bの画面には、非作業モードM2aの画像情報として、走行機体1の走行速度(車速)を示す速度計85、エンジン回転数を示す略L字状の回転数グラフ86、穀粒タンク12内のもみの量を知らせるタンクモニタ87、燃料の残量を知らせる燃料計88、副変速レバー66の設定状態を知らせる副変速モニタ89、刈取前処理装置4の速度の設定状態を知らせる刈取変速モニタ90、及びエンジン15の稼動時間を積算した値等を知らせる積算値モニタ91とが表示される。
【0067】
初期モードM1の実行中に、脱穀装置3への動力伝達のための脱穀クラッチが入り状態、すなわち脱穀スイッチ135が入り作動している場合は、後述する警報表示モードM3に移行して、警報ブザー129を鳴動させるとともに、液晶パネル60bの画面に、扱胴詰まりの画像情報が切替え表示される(図21(a)参照)。これは、実際に扱胴詰まりが発生した訳ではないが、前記扱胴詰まりの画像情報を代用して液晶パネル60bの画面に表示することにより、脱穀クラッチが入り状態であることをオペレータに報知して、このままで始動することを防止するようにしたものである。
【0068】
それから、脱穀スイッチ135を切り作動させると、警報ブザー129は鳴動停止するとともに非作業モードM2aに移行して、液晶パネル60bの画面の表示が非作業モードM2aの画像情報に戻る(図17参照)。
【0069】
図15に示すように、通常モードM2のうち非作業モードM2aの実行中に脱穀スイッチ135を入り作動させると、作業モードM2bに移行して、図17の画像情報を示す画面の表示がエンジン負荷や燃料の残量等の画像情報(作業モードM2bに対応した画像データ)に遷移する(図18参照)。作業モードM2bの画像情報は、非作業モードM2aの画像情報のうちエンジン回転数を示す回転数グラフ86の表示領域に、これに代えてエンジン負荷を示す負荷グラフ86′を表示する点が異なるだけであり、その他は非作業モードM2aの場合と同様である。
【0070】
それから、脱穀スイッチ135を切り作動させると、非作業モードM2aに移行して、液晶パネル60bの画面に、非作業モードM2aの画像情報が切替え表示される。
【0071】
なお、通常モードM2(非作業モードM2aまたは作業モードM2b)の実行中に、液晶表示装置60に設けたカーソル上移動スイッチ71を適宜時間(第1実施形態では5秒)以上押下すると、液晶パネル60bの画面における積算値モニタ91の表示が、刈取作業時間の積算値モニタ91′に切り替わる(図19参照)。この刈取作業時間とは、エンジン回転数が予め設定された回転数(第1実施形態では1000rpm)以下でかつ刈取クラッチが入り状態(刈取スイッチ134が入り状態)である時間を積算したものであり、実質的に刈取作業を行った時間を表している。この状態で、カーソル下移動スイッチ72を適宜時間以上押下すると、前記刈取作業時間の積算値がゼロにリセットされる。刈取クラッチと脱穀クラッチとは、作業部(刈取前処理装置4や脱穀装置3)への動力伝達を継断する作業クラッチに相当するものである。
【0072】
それから、もう一度カーソル上移動スイッチ71を適宜時間(第1実施形態では5秒)以上押下すると、前記画面における刈取作業時間の積算値モニタ91′の表示が、エンジン稼動時間の積算値モニタ91に戻る。液晶パネル60bの画面に、通常モードM2の画像情報が電源投入後はじめて表示された場合、前記画面には、必ずエンジン稼動時間の積算値モニタ91が表示される。
【0073】
図14に示すように、通常モードM2において、コンバイン各部において許容される制御範囲から外れた異常データが発生した場合には、液晶パネル60bの画面の表示が、通常モードM2の画像情報から前記異常データに係る異常状態の画像情報(図20〜図22参照)、すなわち警報表示モードM3の画像情報に遷移する。なお、各種異常データが発生した場合には、液晶表示装置60のケース60aに設けた作業ランプ70(図7参照)が点灯するようになっている。
【0074】
第1実施形態における異常情報は、異常状態の内容や異常発生位置等の詳細を示す詳細情報151(図20(a)等参照)と、この異常状態に対する処置情報152(図20(b)等参照)とからなり、これら両情報が各々単独で液晶パネル60bの画面に表示されるようになっている。前記画面における両情報151,152の切替え表示は、第2切替スイッチ73の押下により実行される。
【0075】
図20(a)等に示すように、詳細情報151は、異常発生機器等を意味する分かり易い図柄やシンボルマーク等の記号情報153と、異常発生機器等の名称等を示す文字情報154と、図形情報としてのコンバイン全体の略図155とからなり、記号及び文字情報153,154が画面左側に、コンバインの略図155が画面右側に表示される。
【0076】
また、記号及び文字情報153,154から延びる矢印156は、略図155中で異常発生位置(異常発生機器等が搭載された部位)に該当する領域を指示するようになっている。ここで、図20(a)の画面では、穀稈引起装置6の穀稈詰まりの詳細情報が表示されているから、矢印156は穀稈引起装置6が配設されている刈取前処理装置4の領域を指し示している。
【0077】
このように構成すると、コンバインの構造について余り詳しくないオペレータでも、発生した異常状態の内容や異常発生位置を視覚的に容易に把握でき、オペレータは、例えば整備マニュアル等を見直したりする手間が省けて、異常発生位置の修理等を迅速かつ的確に実行できる。
【0078】
図20(b)、図21(b)及び図22(b)に示すように、異常状態に対する処置情報152には、作業クラッチを切り状態にするか又はエンジンを停止させるという内容と、その異常状態を解消する手立てとに関する文字の情報が含まれている。例えば、図20(b)の画面には、穀稈引起装置6の穀稈詰まり(緊急状態)を解消するための手順として、「刈取クラッチを切って、詰りを取り除いてください。」という内容の処置情報が表示されている。図21(b)の画面には、後述する扱胴13の詰まり(作業系の異常状態)を解消するための手順として、「脱穀クラッチを切って、エンジンを停止し、詰りを取り除いてください。」という内容の処置情報が表示されている。図22(b)の画面には、後述するエンジン油圧異常(エンジン系の異常状態)を解消するための手順として、「エンジンを停止して、エンジンオイルを点検し、オイルを補給してください。」という内容の処置情報が表示されている。
【0079】
このように構成すると、コンバインの異常状態を解消する手立てがその場で分かり、異常発生位置の修理等を迅速かつ的確に実行できる。また、異常状態を解消するに際して、オペレータに予め、異常状態が発生した箇所への動力伝達を遮断したりエンジンを停止させたりすべきであるという注意を促すことができ、異常発生箇所が駆動可能な状態のままで、オペレータが異常解消作業をするという危険を回避するのに効果を発揮できる。
【0080】
警報表示モードM3で報知される異常状態は、危険性が高いためエンジン15を強制停止させる緊急状態と、扱胴詰まりに代表される作業系の異常状態と、エンジン油圧異常に代表されるエンジン系の異常状態との三つに大別される。
【0081】
例えば緊急状態に関する異常データ(以下、緊急データという)が発生した場合には、液晶パネル60bの画面に、前記緊急状態の画像情報(以下、緊急情報という)を切替え表示する(図20参照)とともに、エンジン15が強制的に停止する。このため、緊急状態が発生した箇所への動力伝達(駆動)を確実に停止できることになり、コンバインの破損・故障を未然に防止できる。
【0082】
コンバインの緊急状態としては、前述した穀稈引起装置6の穀稈詰まり、穀稈搬送装置8の穀稈詰まり、排わらカッタ27の排わら詰まり、及び結束装置(図示せず)の結束ひも消尽等という四つの態様があり、検出された緊急データが穀稈引起装置6または穀稈搬送装置8に関するものであるときには、刈取スイッチ134の入り切り状態に応じて警報ブザー129を鳴動または鳴動停止させる一方、排わらカッタ27または図示しない結束装置に関する緊急データであるときには、脱穀スイッチ135の入り切り状態に応じて警報ブザー129を鳴動または鳴動停止させるようになっている。
【0083】
また、緊急データが検出された場合には、当該緊急データに係る緊急情報のみを液晶パネル60bの画面に表示し、他の異常データが併せて検出されていたとしても、当該他の異常データに関する異常情報には切り替わらないようになっている。この場合は、一旦電源スイッチ142を切り作動させない限り、他のモードへ移行することもできない。
【0084】
このように制御すると、例えばコンバインが破損・故障する危険性が高いときや、刈取等の作業に重大な支障となるような緊急状態が発生した場合には、オペレータは、この緊急情報を他の異常情報に優先して把握できるので、刈取・脱穀作業等を安全に実行できる。
【0085】
なお、複数の緊急データが検出された場合には、後に検出された緊急データに関する緊急情報は、先の緊急状態が解消されたのちに、先の緊急情報から切り替わって、液晶パネル60bの画面に表示されるようになっている。
【0086】
作業系の異常データが発生した場合には、液晶パネル60bの画面に、通常モードM2の画像情報に代えて、前記作業系異常データに係る異常状態の画像情報(図21参照)を切替え表示する。ここで、作業系の異常状態とは、コンバインの例でいうと脱穀関係であり、扱胴13の詰まり、処理胴20の詰まり、二番受樋のスクリューコンベヤ22bの詰まり、搖動選別機構40の詰まり、及び穀粒タンク12内のもみ満量という五つの態様がある。
【0087】
作業系の異常状態だけが発生していた場合には、前記異常状態が解消することにより、警報表示モードM3から通常モードM2に復帰して、液晶パネル60bの画面に、通常モードM2の画像情報が切替え表示される。液晶表示装置60の作業ランプ70(図7参照)はこのとき消灯する。
【0088】
なお、複数の作業系異常データが検出された場合にも、前述した緊急データの場合と同様に、後に検出された作業系異常データに関する異常情報は、先の作業系の異常状態が解消されたのちに、先の作業系の異常情報から切り替わって、液晶パネル60bの画面に表示されるようになっている。
【0089】
エンジン系の異常データが発生した場合には、液晶パネル60bの画面に、通常モードM2の画像情報に代えて、前記エンジン系異常データに係る異常状態の画像情報(図22参照)が切替え表示されるとともに、警報ブザー129が鳴動する。ここで、エンジン系の異常状態としては、エンジン油圧異常、エンジン冷却水温異常、充電回路関係の異常(チャージ異常)、及びエアクリーナ異常(詰まり)という四つの態様がある。
【0090】
エンジン系の異常状態だけが発生している場合には、第1切替スイッチ73を押下することにより、警報表示モードM3と通常モードM2との間において、液晶パネル60bの画面に各種情報を切替え表示できるようになっている。
【0091】
すなわち、エンジン系の異常状態だけが発生している場合には、第1切替スイッチ73を一回押下すると、通常モードM2に移行して、液晶パネル60bの画面の表示がエンジン系の異常情報から通常モードM2の画像情報に遷移する。
【0092】
この場合は、第1切替スイッチ73の押下に伴って警報ブザー129が鳴動停止し、通常モードM2の画像情報を示した画面における副変速モニタ89の右側部位に、「警報」の文字標識93が点滅表示される(図23参照)。この警報標識93の点滅により、通常モードM2の画像情報を示した画面上でも、オペレータはエンジン系の異常状態が発生していることを視認でき、オペレータの注意を喚起できる。
【0093】
もう一度、第1切替スイッチ73を押下すると、警報表示モードM3に移行して、液晶パネル60bの画面に、エンジン系の異常情報が切替え表示されるとともに、再び警報ブザー129が鳴動する。
【0094】
エンジン系の異常状態が解消すると、警報表示モードM3から通常モードM2に復帰して、警報ブザー129の鳴動を停止させるとともに、液晶パネル60bの画面に通常モードM2の画像情報が切替え表示される。なお、液晶表示装置60の作業ランプ70(図7参照)はこのとき消灯する。
【0095】
作業系の異常状態とエンジン系の異常状態とが発生した場合や、エンジン系の異常状態だけが複数発生した場合には、適宜時間(第1実施形態では5秒)ずつ順送りで、各異常状態の画像情報が液晶パネル60bの画面に切替え表示される。なお、作業系の異常状態が確認された場合には、第1切替えスイッチ73を押下しても、液晶パネル60bの画面表示は通常モードM2の画像情報に切り替わらないようになっている。
【0096】
このように制御すると、コンバインの構造について余り詳しくないオペレータであっても、発生した異常情報の内容及び異常発生位置について、切替え表示に伴って順次把握した結果、全ての異常情報を的確に確認できる。したがって、これら各異常の発生を見落としたりするおそれがなくなる。
【0097】
その上、オペレータが例えばスイッチ等の切替え操作をしなくても、液晶パネル60bの画面の表示は自動的に切り替わるので、オペレータは、他のことに手を煩わされることなく、コンバインの運転操作等をしながら、発生した異常情報を簡単に確認できる。
【0098】
また、液晶パネル60bの画面には、異常状態が解消されたものから表示されなくなって、残りの異常情報が適宜時間毎に順次切替え表示され、発生した異常状態が全て解消されるまで、これを繰り返すようになっている。したがって、オペレータは異常状態の解消状況をも容易に把握できる。
【0099】
図14に示すように、通常モードM2(非作業モードM2aまたは作業モードM2b)の実行中に、例えばセンサや設定器等の検出エラーや各種アクチュエータの作動エラー等の各種エラーが発生した場合には、液晶パネル60bの画面における副変速モニタ89の右側部位に、「エラー」の文字標識92が点滅表示される(図24参照)。このエラー標識92の点滅により、オペレータは、何らかのエラーが生じたことを、通常モードM2の画像情報を示した画面上で迅速に視認できる。
【0100】
この状態で、第1切替スイッチ73を適宜時間(第1実施形態では5秒)以上押下すると、エラー表示モードM5に移行して、液晶パネル60bの画面の表示がこのとき発生したエラーの内容を示す画像情報に遷移する(図25(a)〜(d)参照)。これにより、オペレータは、エラーの詳細について自らが望むときに確認できるので、作業効率が向上するし、運転操作時の安全性も高まる。
【0101】
それから、もう一度第1切替スイッチ73を一回押下するか、または、前記エラーが解消されると、エラー表示モードM5から通常モードM2に戻って、液晶パネル60bの画面に、通常モードM2の画像情報が切替え表示される。
【0102】
通常モードM2の実行中に第2切替スイッチ74を一回押下した場合は、環境設定モードM4に移行して、液晶パネル60bの画面の表示が、通常モードM2の画像情報から環境設定モードM4の画像情報に遷移する(図26参照)。もう一度、第2切替スイッチ74を押下すると、通常モードM2に移行して、液晶パネル60bの画面の表示が、環境設定モードM4の画像情報から通常モードM2の画像情報に戻る。第1実施形態では、環境設定モードM4を実行する頻度が少ないので、第1切替スイッチ73とは別に第2切替スイッチ74を設けて、不用意に環境設定モードM4を作動させることがないようになっている。
【0103】
次に、図15のモード間遷移図と図27〜図33の画面図とを参照して、メンテナンスモードM6の制御態様について説明する。
【0104】
図15に示すように、非作業モードM2aの実行中に、エンジン回転数が予め設定された回転数(第1実施形態では1500rpm)以下でかつ車速停止状態(第1実施形態では車速が0.03m/s以下)の条件で、ケース60aに設けた両カーソル移動スイッチ71,72を同時に適宜時間(第1実施形態では1秒)以上入り作動させたのち、続けてケース60aに設けた4つのスイッチ71〜74を同時に適宜時間(第1実施形態では5秒)以上入り作動させると、警報ブザー129の鳴動に伴ってメンテナンスモードM6に移行し、液晶パネル60bの画面に、メンテナンスモードM6における選択メニューの画像情報(以下、選択メニュー情報という)が切替え表示される(図27参照)。警報ブザー129は前記画面が切り替わった時点で鳴動停止する。
【0105】
このメンテナンスモードM6では、各入出力系機器の故障診断(詳細は後述する)をするだけでなく、これら各機器の制御範囲を設定変更できるから、前述した複雑な手順を踏まないとメンテナンスモードM6へ移行しないようにして、いたずらや誤操作により設定変更されることを防止している。また、メンテナンスモードM6では、一旦電源スイッチ142を切り作動させない限り、他のモードM1〜M5への移行ができないように設定されている。
【0106】
メンテナンスモードM6としては、各種センサやCANコントローラC1〜C5を交換した際に刈高さ位置等の各種設定を行う初期設定モード、入出力系機器の故障の有無を診断する故障診断モードとしてのチェッカーモード、過去のメンテナンス情報を消去するリセットモード、及び各CANコントローラC1〜C5のEEPROM78の記憶内容を書き替える編集モードの四つの態様がある。
【0107】
選択メニュー情報を示した図27の画面には、「初期設定モード」、「チェッカーモード」、「メンテナンス情報リセット」及び「EEPROM編集」の文字情報161〜164と、選択する文字情報を指し示すカーソル160とが表示されている。
【0108】
また、この画面の四隅部位には、入力手段としての各スイッチ71,72,73,74の機能を示す操作指示標識165,166,167,168とが表示されるようになっている(操作指示標識168は図26及び図33参照)。
【0109】
これら各操作指示標識165〜168は、その表示位置と対応した各スイッチ71〜74を押下した際の作動内容を、文字や図形等で簡略化して表したものである。例えば図27の画面で説明すると、画面左上隅部の操作指示標識165(上向き矢印)に対応したカーソル上移動スイッチ71を押下すると、カーソル160が画面の上方向に移動し、左下隅部の操作指示標識166(下向き矢印)に対応したカーソル下移動スイッチ72を押下すると、カーソル160が画面の下方向に移動するのである。なお、この場合は、第2切替スイッチ74を押下しても何も作動しないので、第2切替スイッチ74に対する操作指示標識168は表示されていない。
【0110】
前記各文字情報161〜164は、カーソル160で指し示した状態では反転表示される。そして、例えば図27に示すように、「チェッカーモード」の文字情報162を反転表示させた状態で、画面右下隅部の操作指示標識167(「決定」の文字)に対応した第1切替スイッチ73を押下すると、チェッカーモードを選択(決定)したことになり、選択メニュー情報を示した画面の表示がチェッカメニューの画像情報(以下、チェッカメニュー情報という)に遷移する(図28(a)〜(c)参照)。
【0111】
チェッカメニュー情報は、主に扱深さ制御や車高水平制御等の制御方式に応じて十三項目に分類されており、図28(a)〜(c)に示すように、これら項目群は、液晶パネル60bの画面に表示できる画素数等に応じて、一画面にまとめてまたは二以上に分けて表示されるようになっている(第1実施形態では三つに分けている)。
【0112】
前記画面(図28参照)における複数のメニュー情報の切替え表示は、前述した選択メニューでのスイッチ操作と同様に、カーソル下移動スイッチ72を押下して、カーソル160を画面の下方向に移動させ、このカーソル160で指し示した「次(または1/3)の画面へ」の文字情報169を反転表示させた状態で、第1切替スイッチ73を押下することにより実行される。
【0113】
前記各項目は、扱深さ制御や車高水平制御等の制御方式に応じてグループ化した入出力系機器に対する見出し(インデックス)であって、オペレータ等の点検者が、診断対象の機器の文字表示を探し出すための手がかりとなっている。
【0114】
それから、例えば図28(a)に示すように、「オーガ制御」の文字情報を反転表示させた状態で、第1切替スイッチ73を押下すると、液晶パネル60bの画面に、オーガ制御メニューの画像情報が切替え表示される(図29参照)。
【0115】
オーガ制御メニューの画像情報としては、各診断対象機器のうち入力系機器の文字情報171〜178、すなわち「排出オーガ操作部」(171)、「排出オーガ先端操作部」(172)、「オーガセット位置ダイヤル」(173)、「旋回角センサ」(174)、「上下回動角センサ」(175)、「オーガクラッチモータスイッチ」(176)、「オーガクラッチセンサ」(177)、及び「排出オーガ過負荷センサ」(178)と、出力系機器の文字情報179〜182、すなわち「オーガクラッチモータ制御回路部」(179)、「排出オーガブレーキ」(180)、「駆動モータ」(181)、及び「オーガ用電磁ソレノイド」(182)とがあり、これら文字情報群171〜182の一覧は、前述したチェッカメニュー情報の場合と同様に、液晶パネル60bの画面に表示できる画素数等に応じて、一画面にまとめてまたは二以上に分けて表示されるようになっている(第1実施形態では三つに分けている。図29参照)。
【0116】
なお、前記画面(図29参照)における複数のメニュー情報の切替え表示は、前述した選択メニューやチェッカメニューでのスイッチ操作と同様に実行される。前記文字情報群171〜182の一覧は、本発明における診断対象の機器の一覧に相当するものである。
【0117】
次いで、例えば図29(a)に示すように、「オーガセット位置ダイヤル」の文字情報173を反転表示させた状態で第1切替スイッチ73を押下すると、入力系機器の一つであるオーガセット位置ダイヤル124を選択(決定)したことになり、液晶パネル60bの画面に、オーガセット位置ダイヤル124の診断情報が切替え表示される(図30参照)。
【0118】
この場合、液晶パネル60bの画面には、診断情報として、診断対象の機器名183(図30では「オーガセット位置ダイヤル」)、検出した電圧や回転数等の診断結果184、正常な制御範囲等を示す備考185、及び検出したCANコントローラ名(図30では「コラムコントローラ(C4)」)が表示される。
【0119】
また、前記画面(図30参照)には、操作指示標識165〜168のうち第1切替スイッチ73に対する操作指示標識167だけが表示されており、第1切替スイッチ73を押下すると、液晶パネル60bの画面の表示が選択メニュー情報に戻る(図27参照)。
【0120】
以上のように制御すると、コンバインの構造について余り詳しくないオペレータ等の点検者であっても、液晶パネル60bの画面の表示に従ってスイッチ71〜74の操作を実行すれば、診断対象の入出力系機器の一覧(第1実施形態ではオーガ制御に関するもの)を前記画面に表示できるから、前記点検者は、前記一覧表示の中から故障診断する機器名の文字情報を選択するという簡単な操作で、前記選択された機器を点検できる。したがって、診断対象の機器の取付け位置等が分からなくて点検できないという不具合が生ずることはない。
【0121】
また、液晶パネル60bの画面には、オーガ制御以外の制御に関する入出力機器の一覧をも表示できるから、例えば作業前点検のように入出力系機器全てを点検するに際しても、点検漏れのおそれがなくなるのである。
【0122】
さらに、前記一覧表示の中の文字情報(第1実施形態では「オーガセット位置ダイヤル」の文字情報173)を反転表示させた状態で、第1切替スイッチ73を押下することにより、液晶パネル60bの画面に、前記一覧表示の中から選択された機器(第1実施形態ではオーガセット位置ダイヤル124)の診断情報を切替え表示できるから、オペレータ等の点検者は、この診断情報の内容から、前記選択された機器(第1実施形態ではオーガセット位置ダイヤル124)が正常に作動しているか否かを簡単に把握できる。
【0123】
図30の画面では、診断結果184が「0.00V」と表示されており、この値は、この画面の備考185に表示された正常制御範囲(第1実施形態では0.25V〜4.75Vの範囲)から外れているので、オペレータ等の点検者は、オーガセット位置ダイヤル124が故障していることをすぐに確認できる。
【0124】
他方、故障診断モードとしてのチェッカーモードの実行中、すなわち液晶パネル60bの画面に、図28〜図30の画像情報が表示されている場合に、例えばサイドコラム61の前端部位に設けた車高調節レバー62(図6参照)を、オペレータ等の点検者が走行機体1の進行方向左側に傾動させて、この傾動動作に基づく車高調節レバー62からの制御データが、CAN通信バス76を経由してCANコントローラC5に受信されると、CANコントローラC5は前記制御データが傾動動作により変化したことを認識して、液晶パネル60bの画面に、車高調節レバー62の診断情報を切替え表示する(図31(a)参照)。この診断情報は、請求項3に記載した「一つの入力系機器についての情報」に相当する。
【0125】
この場合、車高調節レバー62が正常に作動していれば、液晶パネル60bの画面には、診断対象の機器名183として「車高調節レバー」の文字、診断結果184として「左傾きON」の文字、及び検出コントローラ名として「コラムコントローラ(C4)」の文字が表示される。
【0126】
それから、車高調節レバー62を前方向に傾動させると、液晶パネル60bの画面における診断結果184の表示が「上昇ON」の文字に切り替わり(図31(b)参照)、車高調節レバー62から手を離すと、前記診断結果184の表示が「OFF」に切り替わる(図31(c)参照)。
【0127】
なお、前記画面には、オーガセット位置ダイヤル124の診断情報(図30参照)と同様に、操作指示標識165〜168のうち第1切替スイッチ73に対する操作指示標識167だけが表示され、第1切替スイッチ73を押下すると、液晶パネル60bの画面表示が選択メニュー情報に戻る。
【0128】
このように制御すると、故障診断する機器の取付け位置を知っていれば、液晶パネル60bの画面の表示に従ってスイッチ71〜74の操作を実行することにより、診断対象の入出力系機器の一覧(この場合は車高水平制御に関するもの)を前記画面に表示したりしなくても、直接、故障診断する機器(第1実施形態では車高調節レバー62)の診断情報を前記画面に切替え表示できるので、オペレータ等の点検者は、この診断情報の内容から、前記故障診断する機器(第1実施形態では車高調節レバー62)が正常に作動しているか否かを、簡単に把握することができる。
【0129】
したがって、前記画面における一覧表示の中から故障診断する機器を探し出す手間が省けて、各入出力系機器の故障診断(点検)を効率よく実行できる。
【0130】
また、液晶パネル60bの画面に切替え表示される車高調節レバー62についての情報は、前述した診断情報に限らず、例えば図32に示すように、車高水平制御メニューの画像情報、すなわち車高水平制御に関する入出力系機器の一覧であってもよい。したがって、オーガ制御メニューや車高水平制御メニュー等のような項目別制御メニューの画像情報(図29及び図32参照)も、請求項3に記載した「一つの入力系機器についての情報」に相当する。
【0131】
このように制御すると、車高調節レバー62が含まれる車高水平制御関連の入出力系機器の一覧を、液晶パネル60bの画面に迅速に表示できるから、手動操作した車高調節レバー62だけでなく、車高水平制御に関連する入出力系機器の文字表示を探し出すことが簡単にできるのである。
【0132】
なお、昇降ポジションセンサ45や穀稈搬送センサ96等の他の入力系機器についても、同様にして、故障診断を実行できることはいうまでもない。
【0133】
次に、出力系機器の故障診断の実施態様について説明する。図29(c)の画面図に戻り、「駆動モータ」の文字情報181を反転表示させた状態で、第1切替スイッチ73を押下すると、出力系機器の一つである駆動モータ29を選択(決定)したことになり、液晶パネル60bの画面に、駆動オーガ29の診断情報(図33(a)参照)が切替え表示される。
【0134】
この場合、液晶パネル60bの画面には、診断情報として、診断対象の機器名183(図33では「駆動モータ」)、診断結果184、故障診断に際しての各スイッチ71,72,74の操作手順を示す備考185及び検出したCANコントローラ名(図33では「脱こくコントローラ(C2)」)が表示される。
【0135】
なお、ここでの診断結果184の表示は、故障診断中の出力系機器(図33では駆動モータ29)の作動状態を示すものである。また、前記画面(図33参照)には四つの操作指示標識165〜168も表示されている。
【0136】
出力系機器の一つである駆動モータ29を故障診断するに際しては、操作手順を説明した備考185に表示されるように、「駆動」を押下しながら「右」を押下する、すなわち画面右上隅部の操作指示標識168に対する第2切替スイッチ74を押下しながら、画面左上隅部の操作指示標識165に対するカーソル上移動スイッチ71を押下すると、駆動モータ29が正常に作動していれば、診断結果184の文字表示が「停止」から「右旋回中」に切り替わって、排出オーガ28の縦筒28aひいては横筒28bが図3に示す矢印R方向に縦軸回りに旋回する。前記二つのスイッチ71,74を同時に押下している間は、警報ブザー129が鳴動する。
【0137】
一方、「駆動」を押下しながら「左」を押下する、すなわち操作指示標識168に対する第2切替スイッチ74を押下しながら、画面左下隅部の操作指示標識166に対するカーソル下移動スイッチ72を押下すると、駆動モータ29が正常に作動していれば、診断結果184の文字表示が「左旋回中」に切り替わって、排出オーガ28の縦筒28aひいては横筒28bが図3に示す矢印L方向に縦軸回りに旋回する。この場合も、前記二つのスイッチ72,74を同時に押下している間は、警報ブザー129が鳴動する。
【0138】
なお、この場合も、画面右下隅部の操作指示標識167に対する第1切替スイッチ73を押下すると、液晶パネル60bの画面表示が選択メニュー情報(図27参照)に戻る。
【0139】
このように制御すると、出力系機器の故障診断に際して、第2切替スイッチ74と、カーソル上移動スイッチ71またはカーソル下移動スイッチ72との二つを操作しなければ、診断対象の出力系機器は作動せず、ひいてはこの出力系機器が設けられた制御対象(走行部や刈取部等)が作動しない。したがって、オペレータ等の点検者が前記各スイッチ71,72,74のいずれかに不用意に当たって、点検者が気づかないうちに、前記制御対象が作動するという危険を確実に防止できる。
【0140】
また、点検者は、二つのスイッチ71(または72),74を同時に押下するという操作を、通常は両手で行うものと考えられるので、点検者が、診断対象以外の出力系機器に対する各種レバーやスイッチ類に不用意に当たるおそれを低減して、点検者が気づかないうちに、別の制御対象が作動するという危険をも回避できる。
【0141】
さらに、二つのスイッチ71(または72),74を同時に押下する間は、警報ブザー129が鳴動するから、オペレータの注意を喚起できるとともに、例えばコンバインの周囲にいる人にも、このコンバインが作動状態であることを知らせて、出力系機器の故障診断を安全に実行できるのである。
【0142】
なお、扱深さ制御モータ制御回路部103や搖動選別駆動モータ116等の他の出力系機器についても、同様にして、故障診断を実行できることはいうまでもない。
【0143】
図34〜図36は故障診断の実施態様を示す第2実施形態である。ここで、第2実施形態において構成及び作用が第1実施形態と変わらないものは、第1実施形態のものと同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0144】
第2実施形態では、通常モードM2の実行中に、入力系機器群のうち任意の一つからの制御データが、CAN通信バス76を経由してCANコントローラC5に受信されると、前記入力系機器の作動状態の変化を示す文字情報191〜193を、液晶パネル60bの画面における副変速モニタ89の右側部位に表示するようになっている。
【0145】
以下に、畦際で刈取作業の向きを変える等のため、刈取・ 脱穀作業を一旦中断して走行機体1を旋回させる場合を例として、第2実施形態の故障診断の態様を説明する。
【0146】
図34に示すように、作業モードM2bの実行中に、例えば走行機体1が畦際に近付いたため、オペレータが主変速レバー65の握り部65aに設けたオートリフトスイッチ137を押下すると、所定の刈高さよりも高い高さまで刈取前処理装置4が強制的に上昇するとともに、CANコントローラC5がオートリフトスイッチ137からの制御データが押下操作により変化したことを認識し、液晶パネル60bの画面における副変速モニタ89の右側部位に、「オートリフトスイッチ作動」の文字情報191が表示される。
【0147】
前記の操作で、刈取前処理装置4が所定の刈高さよりも高い高さまで強制的に上昇すると、昇降フレーム14の回動角度の変化に基づいて、昇降ポジションセンサ45から発信される制御データが変化するので、液晶パネル60bの画面における副変速モニタ89の右側部位に、「オートリフトスイッチ作動」の文字情報191に代えて「ポジションセンサ作動」の文字情報192が切替え表示される(図35参照)。
【0148】
次いで、オペレータが操向丸ハンドル58を操作して走行機体1を旋回させたのち、主変速レバー65の握り部65aに設けたオートセットスイッチ138を押下すると、刈取前処理装置4が所定の刈高さに位置するように強制的に下降するとともに、CANコントローラC5がオートセットスイッチ138からの制御データが押下操作により変化したことを認識し、液晶パネル60bの画面における副変速モニタ89の右側部位の表示が、「ポジションセンサ作動」の文字情報192から「オートセットスイッチ作動」の文字情報193に切り替わる(図36参照)。
【0149】
そして、前記の操作で、刈取前処理装置4が所定の刈高さまで強制的に下降すると、昇降フレーム14の回動角度の変化に基づいて、昇降ポジションセンサ45から発信される制御データが再び変化するので、液晶パネル60bの画面における副変速モニタ89の右側部位の表示が、「ポジションセンサ作動」の文字情報192に切り替わるのである(図35参照)。
【0150】
以上のように制御すると、通常モードM2の実行中に、入力系機器群のうち任意の一つからの制御データが変化した場合には、前記入力系機器(第2実施形態ではオートリフトスイッチ137、昇降ポジションセンサ45及びオートセットスイッチ138)の作動状態の変化を示す文字情報を、液晶パネル60bの画面における副変速モニタ89の右側部位に表示できるから、故障診断モードとしてのチェッカーモードを実行していなくても、オペレータ等の点検者は、この文字情報の内容から、前記入力系機器が正常に作動しているか否かを簡単に把握できるのである。
【0151】
例えば液晶パネル60bの画面における副変速モニタ89の右側部位に、前述のような文字情報が表示されない場合には、オペレータは、自ら行ったオートリフトスイッチ137やオートセットスイッチ138の操作等から鑑みて、どの入力系機器が故障しているのか判別できる。
【0152】
したがって、通常の農作業時や路上走行時等であっても、各入力系機器の故障診断を実行できるように制御することにより、オペレータは特別な操作をしなくても、コンバインに備わる各入力系機器を随時点検でき、各入力系機器の点検作業が簡単になるのである。なお、各入力系機器の故障診断を実行できるのは、通常モードM2の場合に限らず、故障診断モード以外の他のモードの実行時であってもよい。
【0153】
本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、各種農作業機、クレーン車等の特殊作業用車両または乗用車等の各種作業機に対して、広く適用できることはいうまでもない。
【0154】
また、本発明における通信バス(回線)はCAN(Controller Area Network)プロトコルのみならず、LAN(Local Area Network) プロトコルを用いてもよい。本発明は、前記したCAN通信環境のみならず、LAN通信環境の制御システムに対しても適用できるが、CAN通信プロトコルによるデータ通信の方が、各コントローラ間での制御データのやりとりが円滑で、かつ、その間の通信エラー状態の検出及びエラー処理をもスムーズに行える。なお、制御手段としてのコントローラは複数であってもよいし、単一のものであってもよい。
【0155】
本発明における入力手段としては、前述した四つのスイッチ71〜74に限らず、液晶パネル60bの画面上に設けるタッチパネルであってもよい。この場合は、タッチパネルを、フレキシブル配線板を介してCANコントローラC5の入力インターフェイスに接続し、オペレータが前記タッチパネルの表面のうち操作指示標識165〜168に対応する箇所を指やペン等で押圧すると、前記タッチパネルがこの位置を検出して、この押圧位置情報をフレキシブル配線板を介してCANコントローラC5に伝送し、前記押圧位置に対応する操作指示標識165〜168の内容(例えばカーソルを画面の上方向に移動させる等)を実行するように構成すればよい。
【0156】
さらに、本発明の表示装置は、液晶パネル60bを用いた液晶表示装置60に限らず、CRTディスプレイやELディスプレイ等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの右側面図である。
【図3】コンバインの正面図である。
【図4】動力伝達系のスケルトン図である。
【図5】油圧回路図である。
【図6】運転室の概略平面図である。
【図7】操向丸ハンドル及び液晶表示装置を示す拡大平面図である。
【図8】制御装置全体の機能ブロック図である。
【図9】CANコントローラC1の機能ブロック図である。
【図10】CANコントローラC2の機能ブロック図である。
【図11】CANコントローラC3の機能ブロック図である。
【図12】CANコントローラC4の機能ブロック図である。
【図13】CANコントローラC5の機能ブロック図である。
【図14】各モードの遷移図である。
【図15】通常モードの遷移図である。
【図16】初期モードの画像情報を示す画面の図である。
【図17】非作業モードの画像情報を示す画面の図である。
【図18】作業モードの画像情報を示す画面の図である。
【図19】刈取作業時間の積算値が表示された通常モードの画面の図である。
【図20】緊急情報のうち穀稈引起装置の穀稈詰まり情報を示す画面の図であり、(a)は詳細情報、(b)は処置情報である。
【図21】作業系異常情報のうち扱胴詰まり情報を示す画面の図であり、(a)は詳細情報、(b)は処置情報である。
【図22】エンジン系異常情報のうちエンジン油圧異常情報を示す画面の図であり、(a)は詳細情報、(b)は処置情報である。
【図23】警報標識が表示された通常モードの画面の図である。
【図24】エラー標識が表示された通常モードの画面の図である。
【図25】エラー表示モードの画像情報を示す画面の図であり、(a)は扱深さセンサ、(b)は燃料センサ、(c)は燃料噴射ポンプラックアクチュエータ、(d)は刈取スイッチセンサである。
【図26】操作スイッチ設定モードの画像情報を示す画面の図である。
【図27】画面にメンテナンスモードにおける選択メニュー情報を示した状態の液晶表示装置の拡大平面図である。
【図28】(a)〜(c)のいずれもチェッカメニュー情報を示す画面の図である。
【図29】(a)〜(c)のいずれもオーガ制御メニューの画像情報を示す画面の図である。
【図30】オーガセット位置ダイヤルの診断情報を示す画面の図である。
【図31】(a)〜(c)のいずれも車高調節レバーの診断情報を示す画面の図である。
【図32】車高水平制御メニューの画像情報を示す画面の図である。
【図33】(a)〜(c)のいずれも駆動モータの診断情報を示す画面の図である。
【図34】第2実施形態において「オートリフトスイッチ作動」文字情報が表示された通常モード(作業モード)の画面の図である。
【図35】「ポジションセンサ作動」の文字情報が表示された通常モード(作業モード)の画面の図である。
【図36】「オートセットスイッチ作動」文字情報が表示された通常モード(作業モード)の画面の図である。
【符号の説明】
【0158】
C1〜C5 CANコントローラ
S1〜S5 アプリケーション制御プログラム
M1 初期モード
M2 通常モード
M3 警報表示モード
M4 環境設定モード
M5 エラー表示モード
M6 メンテナンスモード
1 走行機体
2,2 走行クローラ
3 脱穀装置
4 刈取前処理装置
15 エンジン
28 排出オーガ
56 運転座席
57 フロントコラムカバー体
58 操向丸ハンドル
60 液晶表示装置
60a ケース
60b 表示手段としての液晶パネル
70 作業ランプ
71 カーソル上移動スイッチ
72 カーソル下移動スイッチ
73 第1切替スイッチ
74 第2切替スイッチ
75 制御装置
77 CPU
78 EEPROM
151 詳細情報
152 処置情報
153 記号情報
154 文字情報
155 図形情報としての略図
156 矢印
157,158,159 指示標識

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機の各種モードの情報を表示するための表示手段と、前記複数のモードのうち実行中のモードの情報を前記表示手段の画面に表示するように制御するための制御手段とを備えた表示装置において、
前記制御手段は、前記作業機各部に異常状態が発生した場合には、前記表示手段の画面に、警報表示モードにおける異常状態の情報として、前記異常状態に対する文字の処置情報を表示するように制御することを特徴とする作業機における表示装置。
【請求項2】
前記処置情報には、作業部への動力伝達を継断するための作業クラッチを切り状態にするか又はエンジンを停止させるという内容と、前記異常状態を解消する手立てとを含んでいることを特徴とする請求項1に記載した作業機における表示装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記作業機各部に前記異常状態の1つである緊急状態が発生した場合には、エンジンを強制的に停止させるように制御することを特徴とする請求項1又は2に記載した作業機における表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate


【公開番号】特開2008−29343(P2008−29343A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186158(P2007−186158)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【分割の表示】特願2001−386423(P2001−386423)の分割
【原出願日】平成13年12月19日(2001.12.19)
【公序良俗違反の表示】
特許法第64条第2項第4号の規定により図面の一部または全部を不掲載とする。
【出願人】(000006851)ヤンマー農機株式会社 (132)
【Fターム(参考)】