説明

作業機のパルス信号出力構造

【課題】作業機を走行停止させるための走行用動力の遮断操作を行なった後の作業機の慣性走行によって、作業機に連結した作業装置が無駄に作動することを防止する。
【解決手段】作業機に連結した作業装置14に作業機の情報をパルス信号に変換して出力するパルス信号出力手段22Bを備えた作業機のパルス信号出力構造において、走行用動力の回転数を検出する回転センサ23の出力に基づいて走行速度を演算する演算手段22Aと、作業機の進行方向を出力する進行方向出力手段Aと、走行用動力の断続情報を出力する走行用断続情報出力手段Bを備え、パルス信号出力手段22Bが、演算手段22Aの出力に基づいてパルス信号の周波数を変更し、かつ、進行方向出力手段Aの出力と走行用断続情報出力手段Bの出力に基づいて、パルス信号による作業機の走行状態の判別が可能となるようにパルス信号のデューティ比を変更するように構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に連結した作業装置に作業機の情報をパルス信号に変換して出力するパルス信号出力手段を備えた作業機のパルス信号出力構造に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機のパルス信号出力構造としては、走行用動力の回転数を検出する電磁ピックアップ式の回転センサの出力に基づいて作業機の走行速度を演算する演算手段と、変速操作具の操作位置に基づいて作業機の後進を検出する後進検出センサとを備え、パルス信号出力手段が、演算手段が出力する作業機の走行速度に基づいて、出力するパルス信号の周波数を変更し、後進検出センサが出力する作業機の進行方向に基づいて、出力するパルス信号のデューティ比を変更するように構成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−161088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、例えば、前記特許文献1に記載してあるように、パルス信号出力手段が出力するパルス信号に基づいて散布量調節用の電動シャッタの作動を制御する制御装置を備えた肥料散布装置を作業機に連結した場合には、肥料散布装置の制御装置が、肥料散布装置に備えた散布量設定器の出力とパルス信号出力手段の出力に基づいて電動シャッタの開度を調節することになる。
【0005】
具体的には、肥料散布装置の制御装置は、演算手段の出力が設定値以上であり、後進検出センサが機体の後進を検出していない場合には、そのときのパルス信号に基づいて作業機が前進走行状態であると判断し、かつ、散布量設定器の出力とパルス信号出力手段の出力(走行速度)に基づいて、散布量設定器で設定した単位走行距離当たりの散布量で肥料を散布することができるように電動シャッタの開度を調節する。これにより、作業機を前進走行させた場合には、作業機の走行速度にかかわらず、散布量設定器で設定した単位走行距離当たりの散布量で肥料を精度よく散布することができる。
【0006】
又、演算手段の出力が設定値未満である場合には、そのときにパルス信号出力手段が出力するパルス信号に基づいて作業機が走行停止状態であると判断し、又、後進検出センサが機体の後進を検出している場合には、そのときにパルス信号出力手段が出力するパルス信号に基づいて作業機が後進走行状態であると判断し、かつ、散布量設定器の出力に関係なく、パルス信号出力手段の出力(走行停止情報又は後進情報)に基づいて、肥料の散布を行わないように電動シャッタの開度を零にする。これにより、作業機を走行停止させた場合や後進走行させた場合における不必要な肥料の散布を防止することができる。
【0007】
しかしながら、上記の構成では、肥料散布装置の制御装置が、演算手段の出力が設定値未満である場合のパルス信号出力手段の出力に基づいて作業機が走行停止状態であると判断することから、作業機を走行停止させるための変速操作具の中立位置への操作やクラッチペダルの踏み込み操作によって駆動輪への伝動を遮断してから作業機が慣性で走行している間は、そのときのパルス信号出力手段の出力に基づいて肥料散布装置が肥料の散布を継続することになる。
【0008】
本発明の目的は、作業機を走行停止させるための走行用動力の遮断操作を行なった後の作業機の慣性走行によって、作業機に連結した作業装置が無駄に作動することを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明のうちの請求項1に記載の発明では、
作業機に連結した作業装置に作業機の情報をパルス信号に変換して出力するパルス信号出力手段を備えた作業機のパルス信号出力構造であって、
走行用動力の回転数を検出する回転センサの出力に基づいて走行速度を演算する演算手段と、
作業機の進行方向を出力する進行方向出力手段と、
走行用動力の断続情報を出力する走行用断続情報出力手段を備え、
前記パルス信号出力手段が、前記演算手段の出力に基づいて前記パルス信号の周波数を変更し、かつ、前記進行方向出力手段の出力と前記走行用断続情報出力手段の出力に基づいて、前記パルス信号による作業機の走行状態の判別が可能となるように前記パルス信号のデューティ比を変更するように構成してあることを特徴とする。
【0010】
この特徴構成によると、作業機に、パルス信号出力手段の出力に基づいて制御作動を行なう制御装置を備えた作業装置を連結した場合には、パルス信号出力手段の出力により、作業機の走行速度と走行状態(走行停止状態、前進走行状態、後進走行状態)とを作業装置の制御装置に判別させることができ、その判別結果に基づいた作業装置に対する制御作動を制御装置に行なわせることができる。
【0011】
これにより、作業機に連結した作業装置が、例えば作業機の前進走行時に作動させるものであれば、パルス信号出力手段の出力に基づく制御装置の制御作動により、作業機が前進走行状態である場合には、作業機の走行速度に適した作動状態で作業装置を作動させることができる。又、作業機が走行停止状態又は後進走行状態である場合には作業装置を作動停止させることができる。
【0012】
又、作業機に連結した作業装置が、作業機の前進走行時と後進走行時に作動させるものであれば、パルス信号出力手段の出力に基づく制御装置の制御作動により、作業機が前進走行状態又は後進走行状態である場合には、作業機の走行速度に適した作動状態で作業装置を作動させることができる。又、作業機が走行停止状態である場合には作業装置を作動停止させることができる。
【0013】
しかも、作業装置の制御手段は、走行用断続情報出力手段の出力に基づいてデューティ比を変更したパルス信号出力手段からのパルス信号に基づいて、作業機が走行停止しているか否かの判別を行うことから、作業機を走行停止させるための走行用動力の遮断操作が行われた場合には、その遮断操作に基づくパルス信号を受け取るとともに作業装置を作動停止させることができる。
【0014】
従って、作業機を走行停止させるための走行用動力の遮断操作を行なった後の作業機の慣性走行によって、作業機に連結した作業装置が無駄に作動することを防止することができ、作業装置が播種装置あるいは肥料や薬剤を散布する散布装置である場合には、作業機の慣性走行による種あるいは肥料や薬剤の浪費を防止することができる。
【0015】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、
作業用動力の断続情報を出力する作業用断続情報出力手段を備え、
前記パルス信号出力手段が、前記進行方向出力手段の出力と前記走行用断続情報出力手段の出力と前記作業用断続情報出力手段の出力に基づいて、作業機が作業走行状態であるか否かの前記パルス信号による判別が可能となるように前記パルス信号のデューティ比を変更するように構成してあることを特徴とする。
【0016】
この特徴構成によると、作業機に、パルス信号出力手段の出力に基づいて制御作動を行なう制御装置を備えた作業装置を連結した場合には、パルス信号出力手段の出力により、作業機が作業走行状態であるか否かを作業装置の制御装置に判別させることができる。
【0017】
これにより、作業機が作業走行状態である場合には、作業機の走行速度に適した作動状態で作業装置を作動させることができる。又、作業機が非作業走行状態である場合には作業装置を作動停止させることができる。
【0018】
従って、作業機の非作業走行状態において作業機に連結した作業装置が無駄に作動することを防止することができる。
【0019】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、上記請求項1又は2に記載の発明において、
前記進行方向出力手段及び前記走行用断続情報出力手段を、中立位置と前進位置と後進位置とに位置変更可能な前後進切換レバーの操作位置に基づいて作業機の進行方向及び走行用動力の断続情報を出力する前後進センサにより構成してあることを特徴とする。
【0020】
この特徴構成によると、前後進切換レバーを操作した場合には、その操作後の操作位置を前後進センサが検出し、この検出に基づいて、パルス信号出力手段がパルス信号のデューティ比を変更して出力し、この出力に基づいて、作業機に連結した作業装置の制御装置が、そのときの作業機の走行状態(進行方向及び走行用動力の断続状態)を判別し、判別した作業機の走行状態に応じた作業装置の作動状態が得られるように作業装置の作動を制御することになる。
【0021】
これにより、作業機に連結した作業装置が、例えば作業機の前進走行時に作動させるものであれば、前後進切換レバーの前進位置への操作によって作業機を作動させることができる。又、前後進切換レバーの中立位置又は後進位置への操作によって作業機を作動停止させることができる。つまり、前後進切換レバーを中立位置又は後進位置に操作した場合に作業機が無駄に作動することを防止することができる。
【0022】
しかも、前後進切換レバーの操作によって作動状態が切り換えられる前後進切換装置の作動状態を検出する場合に比較して、作業装置の応答性を高めることができる。
【0023】
従って、前後進切換レバーの操作位置に応じて作業装置を応答性よく適正に作動させることができる。
【0024】
本発明のうちの請求項4に記載の発明では、上記請求項1〜3のいずれか一つに記載の発明において、
前記走行用断続情報出力手段を、走行用クラッチを操作するクラッチペダルの操作位置に基づいて走行用動力の断続情報を出力するクラッチセンサにより構成してあることを特徴とする。
【0025】
この特徴構成によると、クラッチペダルを踏み込み操作した場合には、その踏み込み位置をクラッチセンサが検出し、この検出に基づいて、パルス信号出力手段がパルス信号のデューティ比を変更して出力し、この出力に基づいて、作業機に連結した作業装置の制御装置が、そのときの作業機の走行状態(走行用動力の断続状態)を判別し、判別した作業機の走行状態に応じた作業装置の作動状態が得られるように作業装置の作動を制御することになる。
【0026】
これにより、作業機に連結した作業装置が、例えば作業機の前進走行時に作動させるものであれば、クラッチペダルの切り位置への踏み込み操作によって作業機を作動停止させることができる。又、クラッチペダルの踏み込み解除による入り位置への復帰操作によって作業機を作動させることができる。つまり、クラッチペダルを切り位置に踏み込み操作した場合に作業機が無駄に作動することを防止することができる。
【0027】
しかも、クラッチペダルの操作によって作動状態が切り換えられる走行用クラッチの作動状態を検出する場合に比較して、作業装置の応答性を高めることができる。
【0028】
従って、クラッチペダルの操作位置に応じて作業装置を応答性よく適正に作動させることができる。
【0029】
本発明のうちの請求項5に記載の発明では、上記請求項1〜4のいずれか一つに記載の発明において、
前記進行方向出力手段及び前記走行用断続情報出力手段を、中立位置と前進変速領域と後進変速領域とに操作可能な変速操作具の操作位置に基づいて作業機の進行方向及び走行用動力の断続情報を出力する変速センサにより構成してあることを特徴とする。
【0030】
この特徴構成によると、変速操作具を操作した場合には、その操作後の操作位置を変速センサが検出し、この検出に基づいて、パルス信号出力手段がパルス信号のデューティ比を変更して出力し、この出力に基づいて、作業機に連結した作業装置の制御装置が、そのときの作業機の走行状態(進行方向及び走行用動力の断続状態)を判別し、判別した作業機の走行状態に応じた作業装置の作動状態が得られるように作業装置の作動を制御することになる。
【0031】
これにより、作業機に連結した作業装置が、例えば作業機の前進走行時に作動させるものであれば、変速操作具の前進変速領域への操作によって作業機を作動させることができる。又、変速操作具の中立位置又は後進変速領域への操作によって作業機を作動停止させることができる。つまり、変速操作具を中立位置又は後進変速領域に操作した場合に作業機が無駄に作動することを防止することができる。
【0032】
しかも、変速操作具の操作によって作動状態が切り換えられる変速装置の作動状態を検出する場合に比較して、作業装置の応答性を高めることができる。
【0033】
従って、変速操作具の操作位置に応じて作業装置を応答性よく適正に作動させることができる。
【0034】
本発明のうちの請求項6に記載の発明では、上記請求項4に記載の発明において、
前記クラッチペダルの操作位置を判別する閾値に、その前記クラッチペダルの踏み込み解除方向での値が、前記クラッチペダルの踏み込み方向での値よりも、前記クラッチペダルの踏み込み解除位置での前記クラッチセンサの検出値に近くなるようにヒステリシスを持たせてあることを特徴とする。
【0035】
この特徴構成によると、クラッチペダルの操作によって作業装置の作動状態が頻繁に切り換わることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】肥料散布装置を連結したトラクタの全体側面図である。
【図2】パルス信号の出力に関する制御構成を示すブロック図である。
【図3】機体の走行速度とパルス信号の周波数との関係を示す図である。
【図4】機体の状態とパルス信号のデューティ比との関係を示す図である。
【図5】別実施形態でのパルス信号の出力に関する制御構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る作業機のパルス信号出力構造を、作業機の一例であるトラクタに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0038】
図1に示すように、このトラクタは、その前部に水冷式のエンジン1を搭載し、このエンジン1からの動力を、操舵用の左右一対の前輪2と主駆動輪としての左右一対の後輪3とに伝達する4輪駆動型に構成してある。トラクタの後部には、前輪操舵用のステアリングホイール4や運転座席5などを配備して搭乗運転部6を形成し、搭乗運転部6を覆うキャビン7を装備してある。
【0039】
エンジン1からの動力は、電子油圧制御式の主クラッチ(走行用クラッチの一例)8を経由して走行伝動系と作業伝動系とに分配し、走行伝動系に供給した動力を左右の前輪2と後輪3に伝達する。作業伝動系に供給した動力は、機体フレームに兼用するトランスミッションケース(以下、T/Mケースと略称する)9の後端部に備えた動力取り出し用のPTO軸10に伝達する。
【0040】
図示は省略するが、走行伝動系には、12段の変速操作を可能にする電子油圧制御式の主変速装置、3段の変速操作を可能にする電子油圧制御式の副変速装置、前後進の切り換え操作を可能にする電子油圧制御式の前後進切換装置、左右の前輪3に対する伝動の断続操作や倍速操作を可能にする電子油圧制御式の前輪用変速装置、前輪用の差動装置、及び、後輪用の差動装置、などを備えてある。
【0041】
作業伝動系には、PTO軸10に対する伝動の断続操作を可能にする電子油圧制御式の作業用クラッチや、PTO軸10の3段の変速操作と正逆転の切り換え操作を可能にする電子油圧制御式の作業用変速装置、などを備えてある。
【0042】
図1に示すように、T/Mケース5の後部には、油圧式で左右一対のリフトシリンダ11や、左右のリフトシリンダ11の作動により上下方向に揺動する左右一対のリフトアーム12、などを備え、左右のリフトアーム12に連動する作業装置連結用のリンク機構13などを介して、作業装置の一例である肥料散布装置14を昇降可能に連結してある。
【0043】
図1及び図2に示すように、肥料散布装置14は、リンク機構13に連結する施肥フレーム15に、肥料貯留用のホッパ16、散布量調節用のシャッタ17、シャッタ駆動用の電動モータ18、電動モータ18の作動を制御する制御装置19、及び、散布用の回転羽根20、などを備えて構成してある。制御装置19は、CPUやEEPROMなどを備えたマイクロコンピュータを利用して構成してある。回転羽根20には、PTO軸10から取り出した動力を、屈曲可能かつ伸縮可能に構成した外部伝動機構21を介して伝達してある。
【0044】
図2に示すように、トラクタには、主クラッチ8や主変速装置などの作動を制御する走行変速制御、作業用クラッチ及び作業用変速装置の作動を制御するPTO変速制御、及び、左右のリフトシリンダ12の作動を制御して作業装置を昇降させる昇降制御、などを行なう電子制御ユニット(以下、ECUと略称する)22を搭載してある。ECU22は、CPUやEEPROMなどを備えたマイクロコンピュータを利用して構成してある。
【0045】
ECU22には、機体の走行速度を演算する演算手段22Aや、演算手段22Aの演算結果などをパルス信号に変換して出力するパルス信号出力手段22B、などを備えてある。
【0046】
演算手段22Aは、走行伝動系の伝動方向下手側に位置する副変速装置の出力回転数を検出する電磁ピックアップ式の回転センサ23の出力や、EEPROMに書き込んだ後輪3の外径、などに基づいて機体の走行速度を演算する。
【0047】
パルス信号出力手段22Bは、演算手段22Aの演算結果である機体の走行速度に基づいて、出力するパルス信号の周波数を変更する。具体的には、図3に示すように、出力するパルス信号の周波数と演算手段22Aが出力する機体の走行速度との関係が略正比例となるように出力するパルス信号の周波数を変更する。例えば、走行速度が0.1km/hである場合には、出力するパルス信号の周波数を1Hzとし、走行速度が30km/hである場合には、出力するパルス信号の周波数を300Hzとする。
【0048】
但し、走行速度が0.1km/h未満である場合には、出力するパルス信号の周波数を0.5Hzとする。これにより、肥料散布装置14の制御装置19に、作業機が走行停止して状態と、作業機からのパルス信号を受け取っていない状態とを判別させることができる。
【0049】
又、パルス信号出力手段22Bは、中立位置と前進位置と後進位置とに位置変更可能な前後進切換レバー24の操作位置を検出する前後進センサ(進行方向出力手段A及び走行用断続情報出力手段Bの一例)25の出力、PTOクラッチの断続操作を指令するダイヤル式のPTOスイッチ(作業用断続情報出力手段Cの一例)26の出力、及び、クラッチペダル27の踏み込み操作量を検出するクラッチセンサ(走行用断続情報出力手段Bの一例)28の出力、に基づいて、出力するパルス信号のデューティ比を変更する。
【0050】
具体的には、前後進センサ25の出力に基づいて前後進切換レバー24の操作位置を判別する。そして、操作レバー24が中立位置にある場合は前後進切換装置の作動状態が中立状態であると判断し、前進位置にある場合は前後進切換装置の作動状態が前進状態であると判断し、後進位置にある場合は前後進切換装置の作動状態が後進状態であると判断する。
【0051】
又、PTOスイッチ26の出力に基づいてPTOスイッチ26の操作位置が入り位置か切り位置かを判別する。そして、PTOスイッチ26が入り位置である場合はPTOクラッチの作動状態が伝動状態であると判断し、切り位置である場合はPTOクラッチの作動状態が遮断状態であると判断する。
【0052】
更に、クラッチセンサ28の出力に基づいてクラッチペダル27の操作位置を判別する閾値を越えるクラッチペダル27の踏み込み操作が行われているか否かを判別する。そして、クラッチペダル27の閾値を越える踏み込み操作が行われていない場合(以下、クラッチペダル27が入り位置にある場合と称する)は主クラッチ8の作動状態が伝動状態であると判断し、クラッチペダル27の閾値を越える踏み込み操作が行われている場合(以下、クラッチペダル27が切り位置にある場合と称する)は主クラッチ8の作動状態が遮断状態であると判断する。
【0053】
そして、図4に示すように、上記の判別結果に基づいて、操作レバー24が前進位置にあり、PTOスイッチ26が入り位置であり、クラッチペダル27が入り位置にある場合には、作業走行状態であると判断して、出力するパルス信号のデューティ比を50%に変更する。又、操作レバー24が中立位置又は後進位置にあり、PTOスイッチ26が入り位置であり、クラッチペダル27が入り位置にある場合、又は、操作レバー24が前進位置にあり、PTOスイッチ26が入り位置であり、クラッチペダル27が切り位置にある場合、あるいは、操作レバー24が中立位置又は後進位置にあり、PTOスイッチ26が入り位置であり、クラッチペダル27が切り位置にある場合には、作業停止状態であると判断して、出力するパルス信号のデューティ比を75%に変更する。更に、操作レバー24の操作位置及びクラッチペダル27の操作位置にかかわらず、PTOスイッチ26が切り位置である場合には、移動走行状態又は走行停止状態であると判断して、出力するパルス信号のデューティ比を25%に変更する。
【0054】
図2に示すように、ECU22は、コネクタ29を介して肥料散布装置14の制御装置19に接続することができる。これにより、肥料散布装置14の制御装置19は、ECU22のパルス信号出力手段22Bが出力するパルス信号を受け取ることができる。
【0055】
肥料散布装置14の制御装置19は、電源スイッチ30の操作により起動又は作動停止する。そして、作動中は、肥料散布装置14に備えた散布量設定器31の出力とパルス信号出力手段22Bの出力に基づいて、作業走行時には、散布量設定器30により設定した単位走行距離当たりの散布量で肥料が散布されるように、又、非作業走行時には、肥料散布装置14の無駄な作動による肥料の浪費がないようにシャッタ17の開度を調節する。
【0056】
具体的には、前後進切換レバー24を前進位置に操作し、PTOスイッチ26を入り位置に操作し、クラッチペダル27の踏み込み操作を解除した作業走行時(PTO軸10を駆動させた前進走行時)には、散布量設定器31の出力とパルス信号出力手段22Bの出力に基づいて、作業機の走行速度に応じたシャッタ17の目標開度を設定し、シャッタ17の開度を検出するシャッタセンサ32の出力が目標開度に合致するように電動モータ18の作動を制御する。
【0057】
これにより、前後進切換レバー24を前進位置に操作し、PTOスイッチ26を入り位置に操作し、クラッチペダル27の踏み込み操作を解除した作業走行時には、作業機の走行速度にかかわらず、散布量設定器31により設定した単位走行距離当たりの散布量で肥料を精度よく散布することができる。
【0058】
そして、前後進切換レバー24の中立位置又は後進位置への操作、PTOスイッチ26の切り位置への操作、及び、クラッチペダル27の入り位置への踏み込み操作のうちのいずれかが行われた非作業走行時には、パルス信号出力手段22Bの出力に基づいて、作業機の走行速度に応じたシャッタ17の目標開度を零に設定し、シャッタ17の開度を検出するシャッタセンサ32の出力が目標開度に合致するように電動モータ18の作動を制御する。
【0059】
これにより、前後進切換レバー24の中立位置又は後進位置への操作、PTOスイッチ26の切り位置への操作、及び、クラッチペダル27の入り位置への踏み込み操作のうちのいずれかが行われた非作業走行時には、肥料散布装置14の無駄な作動による肥料の浪費を防止することができる。
【0060】
又、パルス信号出力手段22Bが出力するパルス信号の周波数が0.5Hz以上であるか否かを判別し、0.5Hz未満である場合には、肥料散布装置14に備えた警報器33を作動させる。これにより、コネクタ29のつなぎ忘れや作業機と肥料散布装置14との間での断線の発生を操縦者に知らせることができる。
【0061】
尚、パルス信号出力回路にはオープンコレクタ方式を採用している。又、肥料散布装置14のチャタリングを防止するために、クラッチペダル27の操作位置を判別する閾値に、そのクラッチペダル27の踏み込み解除方向での値が、クラッチペダル27の踏み込み方向での値よりも、クラッチペダル27の踏み込み解除位置でのクラッチセンサ28の検出値に近くなるようにヒステリシスを持たせてある。
【0062】
〔別実施形態〕
【0063】
〔1〕作業機としては、パルス信号出力手段22Bを備えるものであれば、例えば、施肥装置や薬剤散布装置などの取り付けが可能となるように構成した乗用田植機などであってもよい。
【0064】
〔2〕作業装置14としては、パルス信号出力手段の出力に基づいて制御作動を行なう制御装置を備えるものであれば、薬剤散布装置や播種装置などであってもよい。
【0065】
〔3〕進行方向出力手段A及び走行用断続情報出力手段Bを、前後進切換装置の作動状態を検出する前後進センサで構成してもよい。
【0066】
〔4〕進行方向出力手段A及び走行用断続情報出力手段Bとして、中立位置と前進変速領域と後進変速領域とに操作可能な変速レバーや変速ペダルなどの変速操作具の操作位置に基づいて作業機の進行方向及び走行用動力の断続情報を出力する変速センサを備えるようにしてもよい。
【0067】
〔5〕図5に示すように、進行方向出力手段A及び走行用断続情報出力手段Bとして、前後進センサ25とともに、中立位置と前進変速領域と後進変速領域とに操作可能な変速レバーや変速ペダルなどの変速操作具34の操作位置に基づいて作業機の進行方向及び走行用動力の断続情報を出力する変速センサ35を備えるようにしてもよい。
【0068】
〔6〕進行方向出力手段A及び走行用断続情報出力手段Bを、主変速装置の作動状態を検出する主変速センサで構成してもよい。又、走行用断続情報出力手段Bを、副変速装置の作動状態を検出する副変速センサで構成してもよい。更に、主変速センサ及び副変速センサを、前後進センサ25や変速センサ35などとともに備えるようにしてもよい。
【0069】
〔7〕作業用断続情報出力手段Cを、作業用クラッチの作動状態を検出する作業用クラッチセンサで構成してもよい。
【0070】
〔8〕パルス信号出力手段22Bが出力するパルス信号のデューティ比を、作業機の中立停止状態(例えば前後進切換レバー24が中立位置に位置する状態)と後進走行状態(例えば前後進切換レバー24が後進位置に位置する状態)とで異ならせて、パルス信号による作業機の中立停止状態と後進走行状態との判別が可能となるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る作業機のパルス信号出力構造は、パルス信号出力手段を備えるものであれば、施肥装置や薬剤散布装置などの取り付けが可能となるように構成したトラクタや乗用田植機などの作業機に適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
14 作業装置
22B パルス信号出力手段
23 回転センサ
22A 演算手段
A 進行方向出力手段
B 走行用断続情報出力手段
C 作業用断続情報出力手段
24 前後進切換レバー
25 前後進センサ
8 走行用クラッチ
27 クラッチペダル
28 クラッチセンサ
34 変速操作具
35 変速センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機に連結した作業装置に作業機の情報をパルス信号に変換して出力するパルス信号出力手段を備えた作業機のパルス信号出力構造であって、
走行用動力の回転数を検出する回転センサの出力に基づいて走行速度を演算する演算手段と、
作業機の進行方向を出力する進行方向出力手段と、
走行用動力の断続情報を出力する走行用断続情報出力手段を備え、
前記パルス信号出力手段が、前記演算手段の出力に基づいて前記パルス信号の周波数を変更し、かつ、前記進行方向出力手段の出力と前記走行用断続情報出力手段の出力に基づいて、前記パルス信号による作業機の走行状態の判別が可能となるように前記パルス信号のデューティ比を変更するように構成してあることを特徴とする作業機のパルス信号出力構造。
【請求項2】
作業用動力の断続情報を出力する作業用断続情報出力手段を備え、
前記パルス信号出力手段が、前記進行方向出力手段の出力と前記走行用断続情報出力手段の出力と前記作業用断続情報出力手段の出力に基づいて、作業機が作業走行状態であるか否かの前記パルス信号による判別が可能となるように前記パルス信号のデューティ比を変更するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の作業機のパルス信号出力構造。
【請求項3】
前記進行方向出力手段及び前記走行用断続情報出力手段を、中立位置と前進位置と後進位置とに位置変更可能な前後進切換レバーの操作位置に基づいて作業機の進行方向及び走行用動力の断続情報を出力する前後進センサにより構成してあることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業機のパルス信号出力構造。
【請求項4】
前記走行用断続情報出力手段を、走行用クラッチを操作するクラッチペダルの操作位置に基づいて走行用動力の断続情報を出力するクラッチセンサにより構成してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の作業機のパルス信号出力構造。
【請求項5】
前記進行方向出力手段及び前記走行用断続情報出力手段を、中立位置と前進変速領域と後進変速領域とに操作可能な変速操作具の操作位置に基づいて作業機の進行方向及び走行用動力の断続情報を出力する変速センサにより構成してあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の作業機のパルス信号出力構造。
【請求項6】
前記クラッチペダルの操作位置を判別する閾値に、その前記クラッチペダルの踏み込み解除方向での値が、前記クラッチペダルの踏み込み方向での値よりも、前記クラッチペダルの踏み込み解除位置での前記クラッチセンサの検出値に近くなるようにヒステリシスを持たせてあることを特徴とする請求項4に記載の作業機のパルス信号出力構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−172306(P2010−172306A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20750(P2009−20750)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】