説明

作業機械における油圧制御システム

【課題】アキュムレータの蓄圧油が供給される油圧アクチュエータを備えた作業機械において、アキュムレータの蓄圧油を有効に利用できるようにする。
【解決手段】アキュムレータに蓄圧された圧油を吸込んでブームシリンダに供給するハイブリッドポンプと、油タンクの油を吸込んでブームシリンダに供給する第一メインポンプとを設ける一方、作業部の行う作業に対応して、アキュムレータの蓄圧量に基づいてハイブリッドポンプおよび第一メインポンプからブームシリンダへの供給流量を制御するアキュムレータ使用制御と、アキュムレータの蓄圧量に関わらずハイブリッドポンプからブームシリンダへの圧油供給を停止するアキュムレータ不使用制御とを行うように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキュムレータの蓄圧油が供給される油圧アクチュエータを備えた作業機械における油圧制御システムの技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベルやクレーン等の作業機械は、昇降自在な作業部を備えると共に、該作業部の昇降は、油圧ポンプから圧油供給される油圧シリンダの伸縮作動に基づいて行うように構成されているが、このものにおいて、従来、作業部の下降時に油圧シリンダの重量保持側油室から油タンクに排出される油は、作業部の自重による急激な落下を防止するため、油圧シリンダの油供給排出制御を行うコントロールバルブに設けられた絞りによってメータアウト制御されるように構成されている。つまり、地面より上方に位置している作業部は位置エネルギーを有しているが、該位置エネルギーは、前記コントロールバルブの絞りを通過するときに熱エネルギーに変換され、さらに該熱エネルギーはオイルクーラーによって大気中に放出されることになって、無駄なエネルギー損失となる。
そこで、作業部の有する位置エネルギーを回収、再利用するために、通常の油圧シリンダに加えて補助油圧シリンダ(アシストシリンダ)を設け、作業部の下降時に、補助油圧シリンダの重量保持側油室から排出される油をアキュムレータに蓄圧すると共に、作業部の上昇時に、アキュムレータに蓄圧された圧油を補助シリンダの重量保持側に供給するようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第2582310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記特許文献1のものは、作業部がどの様な作業を行っている場合であっても、作業部の上昇操作時にアキュムレータに蓄圧されている場合は、該アキュムレータから補助油圧シリンダに圧油供給される一方、アキュムレータに蓄圧されていない場合には、油圧ポンプからコントロールバルブを介して通常の油圧シリンダに供給される圧油の一部が、補助油圧シリンダに供給されると共にアキュムレータ蓄圧用に用いられるように構成されている。このため、例えば油圧ショベルでブームを持ち上げながら旋回作業を行う場合等、大きな動力を必要とする作業を行っている場合に、アキュムレータの蓄圧油が不足すると、ブームシリンダおよび旋回モータへの圧油供給だけでなく、補助油圧シリンダおよびアキュムレータにも圧油供給しなければならないことになって、更に大きな動力が必要となり、低燃費化に反するという問題があり、ここに本発明が解決しようとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、各種作業を行うべく作業部を動作せしめる油圧アクチュエータと、アキュムレータに蓄圧された圧油を吸込んで前記油圧アクチュエータに供給するハイブリッドポンプと、油タンクの油を吸込んで前記油圧アクチュエータに供給する油圧ポンプと、アキュムレータの蓄圧量を検出する蓄圧量検出手段と、前記ハイブリッドポンプおよび油圧ポンプから油圧アクチュエータへの圧油供給を制御する制御装置とを備える一方、該制御装置は、作業部の行う作業に対応して、アキュムレータの蓄圧量に基づいてハイブリッドポンプから油圧アクチュエータへの供給流量を制御する一方、該ハイブリッドポンプから油圧アクチュエータへの供給流量が不足する場合は該不足流量を油圧ポンプから油圧アクチュエータに供給するように制御するアキュムレータ使用制御と、アキュムレータの蓄圧量に関わらずハイブリッドポンプから油圧アクチュエータへの圧油供給を停止して油圧ポンプから油圧アクチュエータに圧油供給するように制御するアキュムレータ不使用制御とを行うことを特徴とする作業機械における油圧制御システムである。
そして、この様にすることにより、あまり大きな動力を必要としない作業の場合にはアキュムレータ不使用制御を行うことで、アキュムレータの蓄圧油を温存させておくことができる一方、大きな動力を必要とする作業を行う場合にはアキュムレータ使用制御を行うことで、アキュムレータに蓄圧された圧油を効率よく利用できることになり、而して、エンジンの消費動力を低減せしめることができて、低燃費化に大きく貢献できる。しかも、アキュムレータ使用制御において、ハイブリッドポンプから油圧アクチュエータへの供給流量は、アキュムレータの蓄圧量に基づいて制御される一方、該ハイブリッドポンプから油圧アクチュエータへの供給流量が不足する場合は該不足流量を油圧ポンプから油圧アクチュエータに供給するように制御されるから、アキュムレータの蓄圧量を最大限に利用することができると共に、アキュムレータの蓄圧量の変動に左右されることなく、必要な流量を油圧アクチュエータに供給することができる。
請求項2の発明は、制御装置は、作業部の行う作業が予め設定されるアキュムレータ使用作業、アキュムレータ不使用作業の何れであるかを判断する作業判断手段を備えると共に、該作業判断手段によりアキュムレータ使用作業と判断される場合はアキュムレータ使用制御を行う一方、アキュムレータ不使用作業と判断される場合はアキュムレータ不使用制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の作業機械における油圧制御システムである。
そして、この様にすることにより、アキュムレータの蓄圧油を使用したい所望の作業をアキュムレータ使用作業に設定することによって、該アキュムレータ使用作業時にはアキュムレータ使用制御が自動的に実行されることになり、而して、アキュムレータの蓄圧油を所望通りに効率良く利用することができる。
請求項3の発明は、制御装置は、アキュムレータ不使用制御を行うにあたり、アキュムレータの蓄圧量に関わらずアキュムレータに蓄圧されていないと仮定して、アキュムレータに蓄圧されていない場合のアキュムレータ使用制御と同じ制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の作業機械における油圧制御システムである。
そして、この様にすることにより、アキュムレータ使用制御として別途特別な制御を行う必要がなく、アキュムレータ使用制御をそのまま利用してアキュムレータ不使用制御を行えることになって、制御の簡略化に大きく貢献できる。
請求項4の発明は、油圧制御システムは、ハイブリッドポンプから油圧アクチュエータへの流量制御を行うコントロールバルブと、油圧ポンプから油圧アクチュエータへの流量制御を行うコントロールバルブとを備える一方、制御装置は、アキュムレータ使用制御、アキュムレータ不使用制御の各制御に対応して、前記各コントロールバルブをそれぞれ制御するコントロールバルブ制御部を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の作業機械における油圧制御システムである。
そして、この様にすることにより、ハイブリッドポンプおよび油圧ポンプから油圧アクチュエータへの供給流量を、アキュムレータ使用制御、アキュムレータ不使用制御の各制御に対応させて精度良くコントロールすることができる。
請求項5の発明は、制御装置は、アキュムレータ使用制御、アキュムレータ不使用制御の各制御に対応して、ハイブリッドポンプの吐出流量を制御するハイブリッドポンプ制御部を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の作業機械における油圧制御システムである。
そして、この様にすることにより、ハイブリッドポンプの吐出流量を、アキュムレータ使用制御、アキュムレータ不使用制御の各制御に対応させて精度良くコントロールすることができる。
請求項6の発明は、油圧アクチュエータは、作業部を昇降せしめる油圧シリンダであると共に、アキュムレータは、作業部の下降時に油圧シリンダの重量保持側油室から排出される油を蓄圧する構成であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の作業機械における油圧制御システムである。
そして、この様にすることにより、作業部の有する位置エネルギーをアキュムレータを用いて有効に回収、再利用できることになって、省エネルギー化に大きく貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1は作業機械の一例である油圧ショベルであって、該油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2、該下部走行体2の上方に旋回自在に支持される上部旋回体3、該上部旋回体3のフロントに装着される作業部4等の各部から構成され、さらに該作業部4は、基端部が上部旋回体3に上下揺動自在に支持されるブーム5、該ブーム5の先端部に前後揺動自在に支持されるスティック6、該スティック6の先端部に取付けられるバケット7等から構成されている。
【0006】
8は前記ブーム5を上下揺動せしめるべく伸縮作動する左右一対のブームシリンダ(本発明の作業部を動作せしめる油圧アクチュエータ、および作業部を昇降せしめる油圧シリンダに相当する)であって、該ブームシリンダ8は、ヘッド側油室8a(本発明の重量保持側油室に相当する)の圧力によって作業部4の重量を保持すると共に、該ヘッド側油室8aへの圧油供給およびロッド側油室8bからの油排出により伸長してブーム5を上昇せしめ、また、ロッド側油室8bへの圧油供給およびヘッド側油室8aからの油排出により縮小してブーム5を下降せしめるように構成されている。そして、該ブーム5の昇降によって作業部4全体が昇降すると共に、ブーム5の上昇に伴い作業部4の有する位置エネルギーが増加するが、該位置エネルギーは、後述する油圧制御システムによってブーム5の下降時に回収される一方、該回収されたエネルギーは、ブーム5の上昇時に利用されるようになっている。
【0007】
次いで、前記油圧制御システムについて、図2、図3の回路図に基づいて説明するが、これらの図面において、9、10は油圧ショベル1に搭載のエンジンEにポンプドライブギア部Gを介して連結される第一、第二メインポンプであって、これら第一、第二メインポンプ9、10は、油タンク11から作動油を吸込んで第一、第二ポンプ油路12、13に吐出するように構成されている。
ここで、第一、第二メインポンプ9、10は、前記ブームシリンダ8だけでなく、油圧ショベル1に設けられる各種油圧アクチュエータ(図示しないが、走行モータ、旋回モータ、スティックシリンダ、バケットシリンダ等)の油圧供給源となる可変容量型の油圧ポンプであるが、これら第一、第二メインポンプ9、10のうち、第一メインポンプ9が本発明の油圧ポンプに相当する。尚、図2、図3中、丸付きの数字は結合子記号であって、対応する丸付き数字同士が接続される。
【0008】
14、15は前記第一、第二メインポンプ9、10の吐出流量制御を行う第一、第二レギュレータであって、該第一、第二レギュレータ14、15は、後述する制御装置16によって制御されるメインポンプ制御用電磁比例減圧弁17からの制御信号圧を受けて、エンジン回転数と作業負荷に対応したポンプ出力にするべく作動すると共に、第一、第二メインポンプ9、10の吐出圧力を受けて定馬力制御を行う。さらに第一、第二レギュレータ14、15は、後述するように第一、第二コントロールバルブ18、19のセンタバイパス弁路18f、19bの開口量に対応してポンプ流量を増減せしめるネガティブコントロール流量制御も行うように構成されている。
【0009】
一方、前記第一、第二コントロールバルブ18、19は、第一、第二ポンプ油路12、13にそれぞれ接続される方向切換弁であって、これら第一、第二コントロールバルブ18、19は、第一、第二メインポンプ9、10の吐出油をブームシリンダ8に供給するべく作動する。尚、第一、第二メインポンプ9、10は、前述したように、油圧ショベル1に設けられる各種油圧アクチュエータの圧油供給源となるため、第一、第二ポンプ油路12、13には他の油圧アクチュエータ用のコントロールバルブも接続されるが、これらについては省略する。
【0010】
前記第一コントロールバルブ18(本発明の油圧ポンプから油圧アクチュエータへの流量制御を行うコントロールバルブに相当する)は、上昇側、下降側パイロットポート18a、18bを備えたスプール弁で構成されており、そして、両パイロットポート18a、18bにパイロット圧が入力されていない状態では、ブームシリンダ8に対する油給排を行わない中立位置Nに位置しているが、上昇側パイロットポート18aにパイロット圧が入力されることによりスプールが移動して、第一メインポンプ9の圧油をシリンダヘッド側油路20を経由してブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給する一方、ロッド側油室8bからシリンダロッド側油路21に排出された油をリターン油路22を経由して油タンク11に流す上昇側位置Xに切換わる。また、下降側パイロットポート18bにパイロット圧が入力されることにより、前記上昇側位置Xとは反対側にスプールが移動して、ヘッド側油室8aからシリンダヘッド側油路20に排出された油を、再生用弁路18cを経由してシリンダロッド側油路21からロッド側油室8bに供給する下降側位置Yに切換るように構成されている。尚、前記シリンダヘッド側油路20は、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aに油を給排するべくヘッド側油室8aに接続される油路であり、シリンダロッド側油路21は、ブームシリンダ8のロッド側油室8bに油を給排するべくロッド側油室8bに接続される油路である。
【0011】
ここで、前記下降側位置Yの第一コントロールバルブ18に設けられる再生用弁路18cは、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aとロッド側油室8bとを連通する弁路であって、該再生用弁路18cには、ヘッド側油室8aからロッド側油室8bへの油の流れは許容するが逆方向の流れは阻止するチェック弁18dと、絞り18eとが配されている。而して、前述したように、第一コントロールバルブ18が下降側位置Yのとき、ヘッド側油室8aから排出された油は、再生用弁路18cを介してロッド側油室8bに供給されるが、その流量は、再生用弁路18cに配された絞り18eの開口特性(該絞り18eの開口特性は、第一コントロールバルブ18のスプール移動ストロークに応じて設定される)と、ヘッド側油室8aとロッド側油室8bの差圧とによって変化するようになっている。
【0012】
一方、第二コントロールバルブ19は、上昇側パイロットポート19aを備えたスプール弁で構成されており、そして、上昇側パイロットポート19aにパイロット圧が入力されていない状態では、ブームシリンダ8に対する油給排を行わない中立位置Nに位置しているが、上昇側パイロットポート19aにパイロット圧が入力されることによりスプールが移動して、第二メインポンプ10の圧油をシリンダヘッド側油路20を経由してブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給する上昇側位置Xに切換るように構成されている。
【0013】
また、23、24、25は第一上昇側、第一下降側、第二上昇側電磁比例減圧弁であって、これら各電磁比例減圧弁23、24、25は、制御装置16からの制御信号に基づいて、前記第一コントロールバルブ18の上昇側パイロットポート18a、下降側パイロットポート18a、第二コントロールバルブ19の上昇側パイロットポート19aにそれぞれパイロット圧を出力するべく作動するが、該パイロット圧は、制御装置16から出力される制御信号値の増減に対応して増減するように設定されている。そして、これら第一上昇側、第一下降側、第二上昇側電磁比例減圧弁23、24、25から出力されるパイロット圧の圧力の増減に対応して第一、第二コントロールバルブ18、19のスプールの移動ストロークが増減するようになっており、これによって、第一、第二コントロールバルブ18、19からブームシリンダ8への給排流量の増減制御がなされるように構成されている。尚、図2、図3中、26はパイロット油圧源となるパイロットポンプである。
【0014】
さらに、第一、第二コントロールバルブ18、19には、第一、第二メインポンプ9、10の圧油を第一、第二ネガティブコントロールバルブ27、28を介して油タンク11に流すセンタバイパス弁路18f、19bが形成されている。該センタバイパス弁路18f、19bの開口量は、第一、第二コントロールバルブ18、19が中立位置Nのときに最も大きく、上昇側位置Xに切換わったスプールの移動ストロークが大きくなるほど小さくなるように制御されるが、下降側位置Yの第一コントロールバルブ18のセンタバイパス弁路18fは、スプールの移動ストロークに拠らず大きな開口を維持する特性を有しており、これにより、下降側位置Yの第一コントロールバルブ18のセンタバイパス弁路18fの通過流量は、中立位置Nのときの通過流量から変化しないように設定されている。そして、上記センタバイパス弁路18f、19bの通過流量は、ネガティブコントロール制御信号として前記第一、第二レギュレータ14、15に入力されて、センタバイパス弁路18f、19bの通過流量が少なくなるほど第一、第二メインポンプ9、10の吐出流量が増加する、所謂ネガティブコントロール流量制御が行われるようになっている。ここで、前述したように、第一コントロールバルブ18のセンタバイパス弁路18fの通過流量は、下降側位置Yに切換わっても中立位置Nのときと変化せず、而して、第一コントロールバルブ18が下降側位置Yのときの第一メインポンプ9の吐出流量は、ネガティブコントロール流量制御によって最小となるように制御されるようになっている。
【0015】
また、29は前記シリンダヘッド側油路20に配されるドリフト低減弁、30は制御装置16からのON信号に基づいてOFF位置NからON位置Xに切換わるドリフト低減弁用電磁切換弁であって、上記ドリフト低減弁29は、前記第一、第二コントロールバルブ18、19および後述する第三コントロールバルブ37からブームシリンダ8のヘッド側油室8aへの油の流れは常時許容するが、逆方向の流れは、ドリフト低減弁用電磁切換弁30がOFF位置Nのときには阻止し、ON位置Xのときのみ許容するように構成されている。尚、31はシリンダヘッド側油路20に接続されるリリーフ弁であって、該リリーフ弁31によって、シリンダヘッド側油路20の最高圧力が制限されている。
【0016】
一方、32はハイブリッドポンプであって、このものもポンプドライブギア部Gを介してエンジンEに連結される可変容量型ポンプであるが、該ハイブリッドポンプ32は、サクション油路33から供給される油を吸込んでハイブリッドポンプ油路34に吐出すると共に、ハイブリッドポンプ32の吐出流量制御は、制御装置16から出力される制御信号に基づいて作動するハイブリッドポンプ用レギュレータ35によって行われるように構成されている。
【0017】
ここで、前記サクション油路33には、後述するように、アキュムレータ36の蓄圧油或いはブームシリンダ8のヘッド側油室8aからの排出油が供給されるようになっている。而して、ハイブリッドポンプ32は、アキュムレータ36の蓄圧油或いはブームシリンダ8のヘッド側油室8aからの排出油を吸込んでハイブリッドポンプ油路34に吐出することになるが、アキュムレータ36の蓄圧油およびヘッド側油室8aからの排出油は高圧であって、その圧力はハイブリッドポンプ32にトルクを供給することになり、而して、ハイブリッドポンプ32には、エンジンEだけでなくアキュムレータ36の蓄圧油或いはヘッド側油室8aからの排出油によってトルクが供給されるようになっている。
【0018】
37は前記ハイブリッドポンプ油路34に接続される第三コントロールバルブ(本発明のハイブリッドポンプから油圧アクチュエータへの流量制御を行うコントロールバルブに相当する)であって、該第三コントロールバルブ37は、制御装置16からの制御信号に基づいて、ハイブリッドポンプ32から吐出される圧油を、ブームシリンダ8に供給するべく作動する。
【0019】
前記第三コントロールバルブ37について詳細に説明すると、該第三コントロールバルブ37は、制御装置16からの制御信号が入力される第三上昇側、第三下降側電油変換弁38、39の作動に基づいてスプールが移動する方向切換弁であって、両電油変換弁38、39に制御信号が入力されていない状態では、ブームシリンダ8に対する油給排を行わない中立位置Nに位置しているが、第三上昇側電油変換弁38に制御信号が入力されることによりスプールが移動して、ハイブリッドポンプ32の吐出油をシリンダヘッド側油路20を経由してブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給する一方、ロッド側油室8bからシリンダロッド側油路21に排出された油をリターン油路22を経由して油タンク11に流す上昇側位置Xに切換わる。また、第三下降側電油変換弁39に制御信号が入力されることにより、前記上昇側位置Xとは反対側にスプールが移動して、ハイブリッドポンプ32の吐出油をシリンダロッド側油路21を経由してブームシリンダ8のロッド側油室8bに供給する下降側位置Yに切換るように構成されている。
【0020】
前記第三コントロールバルブ37のスプールの移動ストロークは、制御装置16から第三上昇側、第三下降側電油変換弁38、39に入力される制御信号値によって増減制御されるようになっており、そして該スプールの移動ストロークの増減制御によって、第三コントロールバルブ37からブームシリンダ8への給排流量の増減制御がなされるように構成されている。
【0021】
さらに、40は前記シリンダヘッド側油路20から分岐形成される回収油路であって、該回収油路40には、回収用バルブ41が配されていると共に、該回収用バルブ41の下流側で、アキュムレータ油路42と前記サクション油路33とに接続されている。さらに、回収油路40には、シリンダヘッド側油路20からアキュムレータ油路42およびサクション油路33への油の流れは許容するが、逆方向の流れは阻止するチェック弁43が配されている。而して、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからシリンダヘッド側油路20に排出された油を、回収油路40を経由して、アキュムレータ油路42およびサクション油路33に供給することができるようになっている。
【0022】
前記回収用バルブ41は、制御装置16からの制御信号が入力される回収用電油変換弁44の作動に基づいてスプールが移動する開閉弁であって、回収用電油変換弁44に制御信号が入力されていない状態では、回収油路40を閉じる閉位置Nに位置しているが、回収用電油変換弁44に制御信号が入力されることによりスプールが移動して、回収油路40を開く開位置Xに切換わるように構成されている。
【0023】
前記回収用バルブ41のスプールの移動ストロークは、制御装置16から回収用電油変換弁44に入力される制御信号値によって増減制御されるようになっており、そして、該スプールの移動ストロークの増減制御によって、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aから回収油路40を経由してアキュムレータ油路42およびサクション油路33に流れる流量の増減制御がなされるように構成されている。
【0024】
一方、アキュムレータ油路42は、前記回収油路40からアキュムレータチェックバルブ45を経由してアキュムレータ36に至る油路であって、該アキュムレータ油路42の最高圧力は、アキュムレータ油路42に接続されるリリーフ弁46によって制限されている。尚、本実施の形態において、アキュムレータ36は、油圧エネルギー蓄積用として最適なブラダ型のものが用いられているが、これに限定されることなく、例えばピストン型のものであっても良い。
【0025】
前記アキュムレータチェックバルブ45は、アキュムレータ36に対する油の給排制御を行うバルブであって、ポペット弁47と、制御装置16から出力されるON信号に基づいてOFF位置NからON位置Xに切換わるアキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁48とを用いて構成されている。そして、上記ポペット弁47は、回収油路40からアキュムレータ36への油の流れは、アキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁48がOFF位置N、ON位置Xの何れであっても許容するが、アキュムレータ36からサクション油路33への油の流れは、アキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁48がOFF位置Nに位置しているときには阻止し、ON位置Xに位置しているときのみ許容するように構成されている。尚、回収油路40からアキュムレータ36への油の流れは、前述したようにアキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁48がOFF位置N、ON位置Xの何れであっても許容されるが、アキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁48がON位置Xに位置している状態では、アキュムレータ油路42の圧力がポペット弁47のバネ室47aに導入されないため、殆ど圧力損失のない状態で回収油路40からアキュムレータ油路42に油を流すことができる。
【0026】
さらに、49は前記サクション油路33から分岐形成されて油タンク11に至る排出油路であって、該排出油路49には、タンクチェックバルブ50が配されている。
【0027】
前記タンクチェックバルブ50は、ポペット弁51と、制御装置16から出力されるON信号に基づいてOFF位置NからON位置Xに切換わるタンクチェックバルブ用電磁切換弁52とを用いて構成されている。上記ポペット弁51は、サクション油路33から油タンク11への油の流れを、タンクチェックバルブ用電磁切換弁52がON位置Xに位置しているときのみ許容し、OFF位置Nに位置しているときには阻止するようになっている。そして、例えば、油圧ショベル1の作業終了時やメンテナンス時等に、前記アキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁48およびタンクチェックバルブ用電磁切換弁52を共にON位置Xに切換えることにより、アキュムレータ36に蓄圧された圧油を油タンク11に放出することができるようになっている。
【0028】
一方、前記制御装置16は、マイクロコンピュータ等を用いて構成されるものであって、図4のブロック図に示すごとく、図示しないブーム用操作レバーの操作方向および操作量を検出するブーム操作検出手段53、図示しないスティック用操作レバーの操作方向および操作量を検出するスティック操作検出手段62、第一メインポンプ9の吐出圧を検出するべく第一ポンプ油路12に接続される第一吐出側圧力センサ54、第二メインポンプ10の吐出圧を検出するべく第二吐出側ポンプ油路13に接続される第二吐出側圧力センサ55、ハイブリッドポンプ32の吐出圧を検出するべくハイブリッドポンプ油路34に接続される第三吐出側圧力センサ56、ハイブリッドポンプ32の吸入側の圧力を検出するべくサクション油路33に接続される吸入側圧力センサ57、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aの圧力を検出するべくシリンダヘッド側油路20に接続されるシリンダヘッド側圧力センサ58、ブームシリンダ8のロッド側油室8bの圧力を検出するべくシリンダロッド側油路21に接続されるシリンダロッド側圧力センサ59、アキュムレータ36の圧力を検出するべくアキュムレータ油路42に接続されるアキュムレータ用圧力センサ60、アキュムレータ36の封入ガス温度を検出するアキュムレータ用温度センサ61、エンジンEの回転数を設定するアクセルダイヤル63等からの信号を入力し、これら入力信号に基づいて、前述のメインポンプ制御用電磁比例減圧弁17、第一上昇側電磁比例減圧弁23、第一下降側電磁比例減圧弁24、第二上昇側電磁比例減圧弁25、ドリフト低減弁用電磁切換弁30、ハイブリッドポンプ用レギュレータ35、第三上昇側電油変換弁38、第三下降側電油変換弁39、回収用電油変換弁44、アキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁48、タンクチェックバルブ用電磁切換弁52等に制御信号を出力する。尚、前記アクセルダイヤル63は、オペレータがエンジンEの回転数を設定するべく操作するエンジン回転数設定用操作具である。
【0029】
次いで、前記制御装置16に設けられる各種演算部や制御部について説明する。まず、64は作業判断部(本発明の作業判断手段に相当する)であって、該作業判断部64は、ブーム5の上昇を伴う作業部4の作業が、アキュムレータ36の蓄圧油を使用する作業として予め設定されるアキュムレータ使用作業であるか、或いはアキュムレータ36の蓄圧油を使用しない作業として予め設定されるアキュムレータ不使用作業であるかの判断を行い、そして、アキュムレータ使用作業と判断される場合はアキュムレータ不使用OFF信号を出力し、アキュムレータ不使用作業と判断される場合はアキュムレータ不使用ON信号を出力する。そして、該作業判断部64からアキュムレータ不使用OFF信号が出力されることに基づいて、本発明のアキュムレータ使用制御が実行される一方、アキュムレータ不使用ON信号が出力されることに基づいて、本発明のアキュムレータ使用制御が実行される構成となっている。
【0030】
ここで、本実施の形態では、アキュムレータ不使用作業として掘削作業が設定される一方、アキュムレータ使用作業として、掘削作業以外のブーム5の上昇を伴う作業、例えば持ち上げ作業や持ち上げ旋回作業等が設定されている。さらに、前記アキュムレータ不使用作業(掘削作業)、アキュムレータ使用作業(持ち上げ作業や持ち上げ旋回作業等)の何れであるかの判断は、ブーム上昇操作とスティックイン操作(スティック6が上部旋回体3に近づく方向の操作)とが同時に行われた場合は掘削作業、つまりアキュムレータ不使用作業と判断し、それ以外のブーム5の上昇を伴う作業は、アキュムレータ使用作業と判断するように構成されている。
【0031】
つまり、作業判断部64は、図5のブロック図に示す如く、ブーム操作検出手段53から出力されるブーム用操作レバーの操作信号をブーム用判断テーブル65に入力し、ブーム上昇側に操作された場合にはON信号を、またブーム下降側に操作された場合にはOFF信号をANDゲート67に出力する。また、スティック操作検出手段62から出力されるスティック用操作レバーの操作信号をスティック用判断テーブル66に入力し、スティックイン側(スティック6が上部旋回体3に近づく方向)に操作された場合にはON信号を、スティックアウト側(スティック6が上部旋回体3から遠ざかる方向)に操作された場合にはOFF信号を前記ANDゲート67に出力する。該ANDート67は、ブーム用判断テーブル65およびスティック用判断テーブル66の両方からON信号が入力された場合に、アキュムレータ不使用ON信号を出力する一方、ブーム用判断テーブル65或いはスティック用判断テーブル66の少なくとも一方からOFF信号が入力された場合は、アキュムレータ不使用OFF信号を出力する。
【0032】
一方、68はアキュムレータ36の蓄圧量を演算する蓄圧量演算部(該蓄圧量演算部68、およびアキュムレータ用圧力センサ60、アキュムレータ用温度センサ61が本発明の蓄圧量検出手段に相当する)であって、該蓄圧量演算部68により演算されるアキュムレータ36の蓄圧量は、本実施の形態では、予め設定される蓄圧開始設定圧(プレチャージ圧)を越えてアキュムレータ36に蓄圧された圧力であるが、該蓄圧圧力の演算を行うにあたり、まず、蓄圧量演算部68は、図6のブロック図に示す如く、アキュムレータ用温度センサ61により検出される現在のアキュムレータ36の封入ガス温度T[℃]を入力し、該封入ガス温度T[℃]の単位を絶対温度[K]に変換して、演算ブロック69に出力する。該演算ブロック69は、前記絶対温度に変換された封入ガス温度T[K]と、20[℃](293[K])におけるアキュムレータ36の蓄圧開始設定圧Poとを入力し、ボイル・シャルルの法則を用いて、現在の封入ガス温度T[K]におけるアキュムレータ36の蓄圧開始設定圧Paoを演算(Pao=T[K]×Po/293[K])し、減算器70に出力する。該減算器70は、前記現在の封入ガス温度T[K]におけるアキュムレータ36の蓄圧開始設定圧Paoと、アキュムレータ用圧力センサ60により検出される現在のアキュムレータ36の圧力Paとを入力し、該アキュムレータ圧力Paから蓄圧開始設定圧Paoを減ずることで現在のアキュムレータ36の蓄圧圧力ΔPaを求め(ΔPa=Pa−Pao)、最大値選択器71に出力する。該最大値選択器71は、計測誤差等により蓄圧圧力ΔPaとしてマイナスの値が出力されないように、前記減算器70で演算された蓄圧圧力ΔPaの値と「0」とのうち大きい方を選択し、該選択した値を現在の蓄圧圧力ΔPaとして出力する。そして、前述した作業判断部64からアキュムレータ不使用OFF信号が入力された場合(アキュムレータ使用制御時)は、前記最大値選択器71から出力される現在の蓄圧圧力ΔPaの値が、蓄圧圧力ΔPとして蓄圧量演算部68から出力される一方、作業判断部64からアキュムレータ不使用ON信号が入力された場合(アキュムレータ不使用制御時)は、最大値選択器71から出力される現在の蓄圧圧力ΔPaの値に関わらず、アキュムレータ36に蓄圧されていないと仮定され、而して、蓄圧圧力ΔPとして「0」の値が蓄圧量演算部68から出力される。
【0033】
一方、72は要求ポンプ容量演算部であって、該要求ポンプ容量演算部72は、図7のブロック図に示す如く、ブーム操作検出手段53から出力されるブーム用操作レバーの操作信号を入力し、ゲインコントロール73によって要求ポンプ容量DRを演算する。該要求ポンプ容量DRは、ブーム用操作レバーの操作量によって要求されるポンプ容量であって、ブーム用操作レバーの操作量の増加に伴い増加するように設定されると共に、ブーム上昇側に操作された場合は「正」の値で、また、ブーム下降側に操作された場合は「負」の値で出力されるように設定されている。
【0034】
また、74は分担割合演算部であって、該分担割合演算部74は、図8のブロック図に示す如く、前記蓄圧量演算部68によって演算される蓄圧圧力ΔPと、ブーム5の上昇時における第一メインポンプ9のアシスト割合α(α=「0」〜「1」)との関係を設定したアシストテーブル75を有している。そして、分担割合演算部74は、上記アシストテーブル75に基づいてアシスト割合αを求めるが、該アシスト割合αは、本実施の形態では、蓄圧圧力ΔPが、アキュムレータ36の蓄圧量が充分であるときの圧力として予め設定される高設定圧PHに達しているときには「0」、アキュムレータの蓄圧量が殆どないときの圧力として予め設定される低設定圧PL以下の場合には「1」、上記高設定圧PHと低設定圧PLとの間のときは、蓄圧圧力ΔPが減少するにつれてアシスト割合αが高くなるように設定されている。さらに分担割合演算部74は、「1」から前記アシスト割合αを減ずることで、ブーム5の上昇時におけるハイブリッドポンプ32の供給割合β(β=1−α)を演算する。そして、これらアシストテーブル75に基づいて求められたアシスト割合αおよび供給割合βは、ブーム用操作レバーがブーム上昇側に操作された場合に分担割合演算部74から出力されて、後述するように、第一コントロールバルブ18、第三コントロールバルブ37の流量制御、およびハイブリッドポンプ32の吐出流量制御に用いられる。一方、ブーム用操作レバーがブーム下降側に操作された場合、分担割合演算部74から出力されるアシスト割合αおよび供給割合βは、アキュムレータ36の蓄圧圧力ΔPに関わらず常に「1」となるように設定されている。
【0035】
さらに、76は第一コントロールバルブ制御部であって、該第一コントロールバルブ制御部76は、図9のブロック図に示す如く、前記分担割合演算部74から出力されるアシスト割合αと要求ポンプ容量演算部72から出力される要求ポンプ容量DRとを入力し、これらアシスト割合αと要求ポンプ容量DRとを乗算器77で乗じて、アシスト用要求ポンプ容量DRαを求める。さらに、第一コントロールバルブ制御部76は、上記アシスト用要求ポンプ容量DRαを、第一上昇側、第一下降側電磁比例減圧弁23、24に対する制御信号値に変換するための第一バルブテーブル78を有しており、該第一バルブテーブル78に基づいて、第一上昇側、第一下降側電磁比例減圧弁23、24に対する制御信号値を求める。そして、第一コントロールバルブ制御部76は、上記制御信号値を、ブーム用操作レバーがブーム上昇側に操作された場合は第一上昇側電磁比例減圧弁23に出力し、またブーム下降側に操作された場合は第一下降側電磁比例減圧弁24に出力するように設定されているが、該制御信号値によって第一上昇側電磁比例減圧弁23は、ブーム上昇時における第一コントロールバルブ18からブームシリンダ8への供給流量を、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量にアシスト割合αを乗じた流量にするためのパイロット圧を出力するように制御される。
【0036】
さらに、79は第三コントロールバルブ制御部であって、該第三コントロールバルブ制御部79は、図10のブロック図に示す如く、前記分担割合演算部74から出力される供給割合βと要求ポンプ容量演算部72から出力される要求ポンプ容量DRとを入力し、これら供給割合βと要求ポンプ容量DRとを乗算器80で乗じて、供給用要求ポンプ容量DRβを求める。さらに、第三コントロールバルブ制御部79は、上記供給用要求ポンプ容量DRβを、第三上昇側、第三下降側電油変換弁38、39に対する制御信号値に変換するための第三バルブテーブル81を有しており、該第三バルブテーブル81に基づいて、第三上昇側、第三下降側電油変換弁38、39に対する制御信号値を求める。そして、第三コントロールバルブ制御部79は、上記制御信号値を、ブーム用操作レバーがブーム上昇側に操作された場合は第三上昇側電油変換弁38に出力し、またブーム下降側に操作された場合は第三下降側電油変換弁39に出力するように設定されているが、該制御信号値によって、第三上昇側電油変換弁38は、ブーム上昇時における第三コントロールバルブ37からブームシリンダ8への供給流量を、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量に供給割合βを乗じた流量にするように制御される。
【0037】
また、82はハイブリッドポンプ制御部であって、該ハイブリッドポンプ制御部82は、図11のブロック図に示す如く、前記分担割合演算部74から出力される供給割合βと、ブーム操作検出手段53から出力されるブーム用操作レバーの操作信号と、後述するブーム上昇時ハイブリッドポンプ出力最大値Puと、ブーム下降時ハイブリッドポンプ出力最大値Pdと、アクセルダイヤル63により設定されるエンジン回転数Nとを入力する。
ここで、前記ブーム上昇時ハイブリッドポンプ出力最大値Puは、ブーム5の上昇時におけるハイブリッドポンプ32の出力の最大値を制限するために予め設定される値、また、ブーム下降時ハイブリッドポンプ出力最大値Pdは、ブーム5の下降時におけるハイブリッドポンプ32の出力の最大値を制限するために予め設定される値である。
【0038】
前記ハイブリッドポンプ制御部82は、まず、判断テーブル83を用いて、ブーム用操作レバーがブーム上昇側、下降側の何れに操作されたかを判断し、ブーム上昇側に操作された場合はブーム上昇時ハイブリッドポンプ出力最大値Puをトルク演算ブロック84に出力し、また、ブーム下降側に操作された場合はブーム下降時ハイブリッドポンプ出力最大値Pdをトルク演算ブロック84に出力する。該トルク演算ブロック84は、前記ブーム上昇時ハイブリッドポンプ出力最大値Pu或いはブーム下降時ハイブリッドポンプ出力最大値Pdと、アクセルダイヤル63により設定されるエンジン回転数Nとを入力し、そして、これら入力値とトルク変換定数Kとを用いて、エンジン回転数Nに応じて設定されるブーム上昇時或いはブーム下降時のハイブリッドポンプトルク最大値Toを演算(To=(Pu或いはPd)×K/N)し、該ハイブリッドポンプトルク最大値Toを乗算器85に出力する。該乗算器85は、ハイブリッドポンプトルク最大値Toと供給割合βとを乗じることで、ハイブリッドポンプ32の目標トルクTt(Tt=To×β)を求める。そして、ハイブリッドポンプ32に供給されるトルクが前記目標トルクTtとなるように、ハイブリッドポンプ用レギュレータ35に制御信号を出力してハイブリッドポンプ32の吐出流量制御を行う。
【0039】
尚、制御装置16には、前述した演算部や制御部の他にも、第二コントロールバルブ19や回収バルブ41、ドリフト低減弁29、アキュムレータチェックバルブ45、タンクチェックバルブ50等を制御するための各種制御部(図示せず)が設けられているが、これら制御部における制御については、個別に説明することなく、制御装置16の制御として説明する。
【0040】
次いで、ブーム用操作レバーの上昇側、下降側の操作に基づく制御装置16の制御について説明する。
まず、ブーム用操作レバーが上昇側に操作された場合について説明すると、制御装置16は、メインポンプ制御用電磁比例減圧弁17に対し、第一、第二メインポンプ9、10のポンプ出力をエンジン回転数と作業負荷に対応させるべく制御信号を出力する。
【0041】
さらに、ブーム用操作レバーが上昇側に操作された場合、制御装置16は、第二上昇側電磁比例減圧弁25に対し、ブーム用操作レバーの操作量に応じて設定される制御信号値を出力する。これにより、第二上昇側電磁比例減圧弁25からパイロット圧が出力されて、第二コントロールバルブ19が上昇側位置Xに切換り、而して、第二メインポンプ10の吐出油が、上昇側位置Xの第二コントロールバルブ19を経由してシリンダヘッド側油路20に流れて、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給されるが、該第二コントロールバルブ19からヘッド側油室8aへの供給流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量となるように制御される。
【0042】
さらに、ブーム用操作レバーが上昇側に操作された場合、制御装置16は、前記第一コントロールバルブ制御部76において実行される制御に基づいて、第一上昇側電磁比例減圧弁23に対して制御信号を出力する。そして、該第一上昇側電磁比例減圧弁23に出力される制御信号値によって、第一コントロールバルブ18からブームシリンダ8への供給流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量にアシスト割合αを乗じた流量になるように制御される。
つまり、アシスト割合αが「1」の場合は、制御装置16から出力される制御信号によって第一上昇側電磁比例減圧弁23からパイロット圧が出力され、これにより第一コントロールバルブ18が上昇側位置Xに切換り、而して、第一メインポンプ9の吐出油が、上昇側位置Xの第一コントロールバルブ18を経由してシリンダヘッド側油路20に流れて、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給されるが、該第一コントロールバルブ18からヘッド側油室8aへの供給流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量となるように制御される。
また、アシスト割合αが「1」〜「0」のあいだ(但し、「1」および「0」は含まず)の場合は、前述したアシスト割合αが「1」の場合と同様に、制御装置16から出力される制御信号によって第一上昇側電磁比例減圧弁23からパイロット圧が出力され、これにより第一コントロールバルブ18が上昇側位置Xに切換って、第一メインポンプ9の吐出油がブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給されるが、該第一コントロールバルブ18からヘッド側油室8aへの供給流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量にアシスト割合αを乗じた流量となるように、つまりアシスト割合αの増減に対応して増減するように制御される。
さらに、アシスト割合αが「0」の場合は、制御装置16から第一上昇側電磁比例減圧弁23に対して、第一コントロールバルブ18からブームシリンダ8への供給流量をゼロにするための制御信号が出力される。これにより、第一コントロールバルブ37は中立位置Nに保持され、而して、第一メインポンプ9からブームシリンダ8のヘッド側油室8aに圧油供給されないと共に、ネガティブコントロール流量制御によって、第一メインポンプ9の吐出流量は最小となるように制御されるようになっている。
【0043】
さらに、ブーム用操作レバーが上昇側に操作された場合、制御装置16は、前記ハイブリッドポンプ制御部82において実行される制御に基づいて、ハイブリッドポンプ用レギュレータ35に対し、ハイブリッドポンプ32に供給されるトルクが、前述した目標トルクTtになるように制御信号を出力する。これによりハイブリッドポンプ32は、エンジン回転数Nに応じて設定されるブーム上昇時のハイブリッドポンプトルク最大値Toに供給割合βを乗じたトルク(目標トルクTt)が供給されるように制御される。而して、ハイブリッドポンプ32は、供給割合βが「1」の場合はハイブリッドポンプ32への供給トルクが前記ブーム上昇時のハイブリッドポンプトルク最大値Toとなり、また、供給割合βが「1」〜「0」のあいだ(但し、「1」および「0」は含まず)の場合は供給割合βの増減に対応して供給トルクも増減し、さらに、供給割合βが「0」の場合は供給トルクがゼロになるように、流量制御される。
【0044】
さらに、ブーム用操作レバーが上昇側に操作された場合、制御装置16は、前記第三コントロールバルブ制御部79において実行される制御に基づいて、第三上昇側電油変換弁38に対して制御信号を出力する。そして、該第三上昇側電油変換弁38に出力される制御信号値によって、第三コントロールバルブ37からブームシリンダ8への供給流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量に供給割合βを乗じた流量になるように制御される。
つまり、供給割合βが「1」の場合は、制御装置16から第三上昇側電油変換弁38に対して出力される制御信号によって第三コントロールバルブ37が上昇側位置Xに切換り、而して、ハイブリッドポンプ32の吐出油が、上昇側位置Xの第三コントロールバルブ37を経由してシリンダヘッド側油路20に流れて、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給されるが、該第三コントロールバルブ37からヘッド側油室8aへの供給流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量となるように制御される。
また、供給割合βが「1」〜「0」のあいだ(但し、「1」および「0」は含まず)の場合は、前述した供給割合βが「1」の場合と同様に、制御装置16から第三上昇側電油変換弁38に対して出力される制御信号によって第三コントロールバルブ37が上昇側位置Xに切換り、ハイブリッドポンプ32の吐出油がブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給されるが、該第三コントロールバルブ19からヘッド側油室8aへの供給流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量に供給割合βを乗じた流量となるように、つまり供給割合βの増減に対応して増減するように制御される。
さらに、供給割合βが「0」の場合は、制御装置16から第三上昇側電油変換弁38に対して、第三コントロールバルブ37からブームシリンダ8への供給流量をゼロにするための制御信号が出力される。これにより、第三コントロールバルブ37は中立位置Nに保持され、而して、ハイブリッドポンプ32からブームシリンダ8のヘッド側油室8aに圧油供給されないようになっている。
【0045】
さらに、ブーム用操作レバーが上昇側に操作された場合、制御装置16は、アキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁48に対し、ON位置Xに切換わるようON信号を出力する。これにより、アキュムレータチェックバルブ45は、アキュムレータ油路42からサクション油路33への油の流れを許容する状態になる。而して、アキュムレータ36に蓄圧された圧油がサクション油路33を経由して、ハイブリッドポンプ32の吸入側に供給される。
【0046】
また、ブーム用操作レバーが上昇側に操作された場合、制御装置16から回収用電油変換弁44に制御信号は出力されず、回収用バルブ41は、回収油路40を閉じる閉位置Nに位置している。これにより、前述した第一、第二、第三コントロールバルブ18、19、37からの供給圧油がアキュムレータ油路42およびサクション油路33に流れてしまうことなく、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給されるようになっている。
【0047】
次いで、ブーム用操作レバーがブーム上昇側に操作された場合に、前述した制御装置16の制御に基づいて実行されるブームシリンダ8への圧油供給について、作業部4の作業(アキュムレータ使用作業、アキュムレータ不使用作業)別、およびアキュムレータ36の蓄圧量別に説明する。
【0048】
まず、アキュムレータ使用作業が行われている場合は、前述したように、作業判断部64からアキュムレータ不使用OFF信号が出力され、これによりアキュムレータ使用制御が実行されるが、この場合、蓄圧量演算部68から出力される蓄圧圧力ΔPは、蓄圧開始設定圧Pao(20[℃]における蓄圧開始設定圧Poを現時点での温度に換算した圧力)を越えてアキュムレータ36に蓄圧された現在の蓄圧圧力ΔPaとなる。
【0049】
前記アキュムレータ使用制御時において、アキュムレータ36の蓄圧量が充分であって蓄圧圧力ΔPが高設定圧PHに達している場合、分担割合演算部74により演算される供給割合βは「1」、アシスト割合αは「0」となるが、この場合は、前述したように、第二コントロールバルブ19および第三コントロールバルブ37は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量をブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給するように制御される一方、第一コントロールバルブ18は中立位置Nに保持される。これにより、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aには、第二メインポンプ10から最大(ブーム用操作レバーの操作量が最大のとき)で一ポンプ分の流量と、ハイブリッドポンプ32から最大で一ポンプ分の流量とが供給される。このときハイブリッドポンプ32の吐出流量は、エンジン回転数Nに応じて設定されるブーム上昇時のハイブリッドポンプトルク最大値Toがハイブリッドポンプ32に供給されるように制御される。
【0050】
而して、アキュムレータ36の蓄圧量が充分の状態でアキュムレータ使用作業を行う場合、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aには、第二メインポンプ10から供給される最大一ポンプ分の流量とハイブリッドポンプ32から供給される最大一ポンプ分の流量とが合流して供給されることになって、作業部4の重量負荷に抗するブーム5の上昇であっても、ブーム用操作レバーの操作量に対応した所望の速度でブーム5を上昇せしめることができるが、この場合、ハイブリッドポンプ32は、アキュムレータ36に蓄圧された高圧の圧油を吸込んで吐出するため、アキュムレータ36からトルク供給されることになり、よって、エンジンEの動力を殆ど消費することなく圧油供給を行うことができる。
【0051】
これに対し、アキュムレータ使用制御時において、アキュムレータ36の蓄圧量が殆どなく蓄圧圧力ΔPが低設定圧PL以下の場合、分担割合演算部74により演算される供給割合βは「0」、アシスト割合αは「1」となるが、この場合は、前述したように、第一コントロールバルブ18および第二コントロールバルブ19は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量をブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給するように制御される一方、第三コントロールバルブ37は、中立位置Nに保持される。これにより、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aには、第一メインポンプ9から最大で一ポンプ分の流量と、第二メインポンプ10から最大で一ポンプ分の流量とが供給される。このときハイブリッドポンプ32は、供給トルクがゼロとなるように制御され、而してハイブリッドポンプ32の吐出流量はゼロとなる。
【0052】
而して、アキュムレータ36の蓄圧量が殆どない状態でアキュムレータ使用作業を行う場合、ハイブリッドポンプ32からの圧油供給は停止される代わりに第一メインポンプ9から圧油供給され、これによりブームシリンダ8のヘッド側油室8aには、第二メインポンプ10から供給される最大一ポンプ分の流量と第一メインポンプ9から供給される最大一ポンプ分の流量とが合流して供給されることになり、よって、アキュムレータ36に蓄圧されていない状態であっても、アキュムレータ36に充分蓄圧されている場合と同様に、ブーム用操作レバーの操作量に対応した所望の速度でブーム5を上昇せしめることができる。
【0053】
また、アキュムレータ使用作業時において、アキュムレータ36の蓄圧圧力ΔPが高設定圧PHと低設定圧PLの間のとき、供給割合βおよびアシスト割合αは「1」〜「0」の間の値(但し、β=α−1)となるが、この場合、第三コントロールバルブ37は、供給割合βの増減、つまり蓄圧圧力ΔPの増減に対応してヘッド側油室8aへの供給流量が増減するように制御される。また、第一コントロールバルブ18は、アシスト割合αの増減に対応してヘッド側油室8aへの供給流量が増減するように制御される。
ここで、前記第三コントロールバルブ37からヘッド側油室8aへの供給流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量に供給割合βを乗じた流量であり、また、第一コントロールバルブ18からヘッド側油室8aへの供給流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量にアシスト割合αを乗じた流量であり、しかもアシスト割合αと供給割合βとを足すと「1」となる(α+β=1)ように設定されているから、第三コントロールバルブ37からの供給流量が減少するに伴い第一コントロールバルブ18からの供給流量が増加すると共に、第三コントロールバルブ37からの供給流量と第一コントロールバルブ18からの供給流量とを足すと、ブーム用操作レバーに応じて要求される流量になる。つまり、第三コントロールバルブ37からの供給流量だけでは不足する流量分を、第一コントロールバルブ18からの供給流量で補うように制御されることになる。而して、ハイブリッドポンプ32および第一メインポンプ9から足して最大で一ポンプ分の流量がヘッド側油室8aに供給される。このときハイブリッドポンプ32は、エンジン回転数Nに応じて設定されるブーム上昇時のハイブリッドポンプトルク最大値Toに供給割合βを乗じたトルクが供給されるように、流量制御される。
また、第二コントロールバルブ19は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量をヘッド側油室8aに供給するように制御され、これにより、第二メインポンプ10から最大で一ポンプ分の流量がヘッド側油室8aに供給される。
【0054】
而して、アキュムレータ36の蓄圧圧力ΔPが高設定圧PHと低設定圧PLの間のときにアキュムレータ使用作業を行う場合、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aには、第二メインポンプ10から供給される最大一ポンプ分の流量と、ハイブリッドポンプ32および第一メインポンプ9から供給される足して最大一ポンプ分の流量とが合流して供給されることになり、よって、アキュムレータ36の蓄圧量が変動しても、アキュムレータ36に充分蓄圧されている場合と同様に、ブーム用操作レバーの操作量に対応した所望の速度でブーム5を上昇せしめることができる。
【0055】
一方、アキュムレータ不使用作業が行われている場合は、作業判断部64からアキュムレータ不使用ON信号が出力され、これによりアキュムレータ不使用制御が実行されるが、この場合は、アキュムレータ36の現在の蓄圧圧力ΔPaに関わらず、アキュムレータ36に蓄圧されていないと仮定され、蓄圧量演算部68から出力される蓄圧圧力ΔPは「0」となる。これにより、分担割合演算部74により演算される供給割合βは「0」、アシスト割合αは「1」となって、前述したアキュムレータ36の蓄圧量が殆どない状態でアキュムレータ使用作業を行う場合と同じ制御が実行される。つまり、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aには、第二メインポンプ10から供給される最大一ポンプ分の流量と第一メインポンプ9から供給される最大一ポンプ分の流量とが合流して供給される一方、ハイブリッドポンプ32からブームシリンダ8への圧油供給は停止されて、第三コントロールバルブ37は中立位置Nに保持されると共に、ハイブリッドポンプ32の吐出流量はゼロとなるように制御される。
【0056】
次に、ブーム用操作レバーがブーム下降側に操作された場合の制御装置16の制御について説明するが、まず、前述したように、ブーム下降側に操作された場合に分担割合演算部74から出力されるアシスト割合αおよび供給割合βは、アキュムレータ36の蓄圧圧力ΔPの値に関わらず、常に「1」となるように設定されている。
【0057】
扨、ブーム用操作レバーがブーム下降側に操作された場合、制御装置16は、第一、第二メインポンプ9、10を圧油供給源とするブームシリンダ8以外の油圧アクチュエータ(走行モータ、旋回モータ、スティックシリンダ、バケットシリンダ等)用操作具が何れも操作されていない場合は、メインポンプ制御用電磁比例減圧弁17に対し、第一、第二メインポンプ9、10のポンプ出力を低減せしめるよう制御信号を出力する。尚、第一、第二メインポンプ9、10を圧油供給源とするブームシリンダ8以外の何れかの油圧アクチュエータ用操作具が操作されている場合は、第一、第二メインポンプ9、10のポンプ出力をエンジン回転数と作業負荷に対応させるべく制御信号を出力する。
【0058】
さらに、ブーム用操作レバーが下降側に操作された場合、制御装置16は、前記第一コントロールバルブ制御部76において実行される制御に基づいて、第一下降側電磁比例減圧弁24に対して制御信号を出力する。これにより、第一コントロールバルブ18が下降側位置Yに切換り、而して、ブームシリンダ8aのヘッド側油室8aからの排出油が、下降側位置Yの再生用弁路18cを経由してロッド側油室8bに供給されるが、その流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量となるように制御される。また、第一コントロールバルブ18が下降側位置Yのときの第一メインポンプ9の吐出流量は、前述したように、ネガティブコントロール流量制御によって最小となるように制御される。
尚、第二コントロールバルブ19は、ブーム5の下降時には中立位置Nに保持され、而して、ブームシリンダ8に対する油給排を行わないと共に、第二メインポンプ9の吐出流量も、ネガティブコントロール流量制御によって最小となるように制御される。
【0059】
さらに、ブーム用操作レバーが下降側に操作された場合、制御装置16は、前記ハイブリッドポンプ制御部82において実行される制御に基づいて、ハイブリッドポンプ用レギュレータ35に対し、ハイブリッドポンプ32に供給されるトルクが、エンジン回転数Nに応じて設定されるブーム下降時のハイブリッドポンプトルク最大値Toとなるように、制御信号を出力する。
【0060】
さらに、ブーム用操作レバーが下降側に操作された場合、制御装置16は、前記第三コントロールバルブ制御部79において実行される制御に基づいて、第三下降側電油変換弁39に対して制御信号を出力する。これにより、第三コントロールバルブ37が下降側位置Yに切換り、而して、ハイブリッドポンプ32の吐出油が、下降側位置Yの第三コントロールバルブ37を経由してシリンダロッド側油路21に流れて、ブームシリンダ8のロッド側油室8bに供給されるが、該第三コントロールバルブ37からロッド側油室8bへの供給流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量となるように制御される。
【0061】
さらに、ブーム用操作レバーが下降側に操作された場合、制御装置16は、ドリフト低減弁用電磁比例減圧弁30に対し、ON位置Xに切換わるようON信号を出力する。これにより、ドリフト低減弁29は、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからの油排出を許容する状態になる。
【0062】
さらに、ブーム用操作レバーが下降側に操作された場合、制御装置16は、回収用電油変換弁44に対し、回収用バルブ41を開位置Xに切換えるよう制御信号を出力する。これにより、回収用バルブ41が回収油路40を開く開位置Xに切換り、而して、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aから排出された油が、回収油路40を経由してアキュムレータ油路42およびサクション油路33に流れて、アキュムレータ36に蓄圧されると共に、ハイブリッドポンプ32の吸入側に供給されるようになっているが、該回収油路40の流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量となるように制御される。さらにこのとき、制御装置16は、アキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁48に対し、ON位置Xに切換るようON信号を出力する。これにより、殆ど圧力損失のない状態で回収油路40からアキュムレータ油路42に油を流すことができるようになっている。
【0063】
而して、ブーム5の下降時には、第三コントロールバルブ37を経由するハイブリッドポンプ32からの圧油がブームシリンダ8のロッド側油室8bに供給されることになるが、この場合、上記ハイブリッドポンプ32は、ヘッド側油室8aから排出された高圧の圧油を吸込んで吐出するため、該高圧の排出油からトルクが供給されることになり、よって、エンジンEの動力を殆ど消費することなく圧油供給を行うことができる。
【0064】
一方、ブーム5の下降時に、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aから排出される油は、作業部4の有する位置エネルギーにより高圧となっていると共に、ピストン8cに作用する受圧面積の関係からロッド側油室8bへの供給量に対して略2倍の排出量となるが、該ヘッド側油室8aからの排出油は、回収油路40を経由してサクション油路33およびアキュムレータ油路42に流れる。そして、サクション油路33に流れた油は、ハイブリッドポンプ32の吸入側に供給され、該ハイブリッドポンプ32からロッド側油室8bに供給される一方、アキュムレータ油路42に供給された圧油はアキュムレータ36に蓄圧されて、前述したように、アキュムレータ使用作業時にハイブリッドポンプ32からヘッド側油室8aに供給されることになる。而して、作業部4の有する位置エネルギーを、無駄にすることなく回収、再利用できるようになっている。
尚、ブーム5の下降時に、ヘッド側油室8aからの排出油のうち一部は、第一コントロールバルブ18の再生用弁路18dを経由してロッド側油室8bに供給される。
【0065】
叙述の如く構成された本形態において、油圧ショベル1の油圧制御システムには、アキュムレータ36に蓄圧された圧油を吸込んでブームシリンダ8に供給するハイブリッドポンプ32と、油タンク11の油を吸込んでブームシリンダ8に供給する第一メインポンプ9と、これらハイブリッドポンプ32および第一メインポンプ9からブームシリンダ8への圧油供給を制御する制御装置16とが設けられていると共に、該制御装置16は、作業部4の行う作業に対応して、アキュムレータ36の蓄圧量に基づいてハイブリッドポンプ32からブームシリンダ8への供給流量を制御する一方、該ハイブリッドポンプ32からブームシリンダ8への供給流量が不足する場合は該不足流量を第一メインポンプ9からブームシリンダ8に供給するように制御するアキュムレータ使用制御と、アキュムレータ36の蓄圧量に関わらずハイブリッドポンプ32からブームシリンダ8への圧油供給を停止して第一メインポンプ9からブームシリンダ8に圧油供給するように制御するアキュムレータ不使用制御とを行うことになる。
尚、本実施の形態では、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aに圧油供給するポンプとして、前記ハイブリッドポンプ32および第一メインポンプ9の他に、アキュムレータ使用制御、アキュムレータ不使用制御の何れの制御であっても、油タンク11の油を吸込んでブームシリンダ8に供給する第二メインポンプ10が設けられている。
【0066】
この結果、例えば掘削作業等、あまり大きな動力を必要としない作業の場合にはアキュムレータ不使用制御を行うことで、アキュムレータ36の蓄圧油を温存させておくことができる一方、例えば持ち上げ旋回作業等、大きな動力を必要とする作業の場合にはアキュムレータ使用制御を行うことで、アキュムレータ36に蓄圧された圧油を効率よく利用できることになって、エンジンEの消費動力を低減せしめることができ、低燃費化に大きく貢献できる。しかも、アキュムレータ使用制御において、ハイブリッドポンプ32からブームシリンダ8への供給流量は、アキュムレータ36の蓄圧量の増減に基づいて増減制御される一方、該ハイブリッドポンプ32からブームシリンダ8への供給流量が不足する場合は該不足流量を第一メインポンプ9からブームシリンダ8に供給するように制御されるから、アキュムレータ36の蓄圧量を最大限に利用することができると共に、アキュムレータ36の蓄圧量の変動に左右されることなく、必要な流量をブームシリンダ8に供給することができる。
【0067】
さらに、前記制御装置4には、作業部4の行う作業が予め設定されるアキュムレータ使用作業、アキュムレータ不使用作業の何れであるかを判断する作業判断部64が設けられており、該作業判断部64の判断に基づいて、アキュムレータ使用制御、アキュムレータ不使用制御が実行されることになる。而して、アキュムレータ36の蓄圧油を使用したい所望の作業をアキュムレータ使用作業に設定することによって、該アキュムレータ使用作業時にアキュムレータ使用制御が自動的に実行されることになって、アキュムレータ36の蓄圧油を所望通りに効率良く利用することができる。
尚、本実施の形態では、ブーム5の上昇を伴う作業のうち、アキュムレータ不使用作業として掘削作業が設定される一方、アキュムレータ使用制御として前記掘削作業以外の作業が設定されており、これによって、あまり動力を必要としない掘削作業の場合にはアキュムレータ36の蓄圧油を温存する一方、持ち上げ旋回作業等の大きな動力を必要とする作業時にアキュムレータ36の蓄圧油を利用する構成となっているが、これに限定されることなく、作業部4の行う各種作業に対応して、アキュムレータ使用作業、アキュムレータ不使用作業を適宜設定することができる。また、本実施の形態では、作業判断部64において、アキュムレータ使用作業、アキュムレータ不使用作業の何れであるかを判断するにあたり、ブーム用操作レバーの操作を検出するブーム操作検出手段53、およびスティック用操作レバーの操作を検出するスティック操作検出手段62からの検出信号に基づいて行う構成となっているが、これに限定されることなく、例えば、ブームシリンダ8やスティックシリンダの作動圧の検出に基づいて行うように構成することもできる。
【0068】
さらに、制御装置16は、アキュムレータ不使用制御を行うにあたり、アキュムレータ36の蓄圧量に関わらず、アキュムレータ36に蓄圧されていない(蓄圧圧力ΔPが「0」である)と仮定して、アキュムレータ36に蓄圧されていない場合のアキュムレータ使用制御と同じ制御を行う構成になっているから、アキュムレータ不使用制御として別途特別な制御を行う必要がなく、而して、制御の簡略化に大きく貢献できる。
【0069】
また、油圧ショベル1の油圧制御システムには、第一メインポンプ9からブームシリンダ8への流量制御を行う第一コントロールバルブ18と、ハイブリッドポンプ32からブームシリンダ8への流量制御を行う第三コントロールバルブ37とが設けられていると共に、制御装置16には、アキュムレータ使用制御、アキュムレータ不使用制御の各制御に対応して、上記第一コントロールバルブ18および第三コントロールバルブ37をそれぞれ制御する第一コントロールバルブ制御部76および第三コントロールバルブ制御部79が設けられているから、第一メインポンプ9およびハイブリッドポンプ32からブームシリンダ8への供給流量を、アキュムレータ使用制御、アキュムレータ不使用制御の各制御に対応させるべく精度良くコントロールすることができる。
【0070】
さらに、制御装置16には、アキュムレータ使用制御、アキュムレータ不使用制御の各制御に対応して、ハイブリッドポンプ32の吐出流量を制御するハイブリッドポンプ制御部82が設けられているから、ハイブリッドポンプ32の吐出流量を無駄にすることなく、且つ不足することなくブームシリンダ8に供給することができる。
【0071】
また、本実施の形態において、アキュムレータ36には、ブーム5の下降時にブームシリンダ8のヘッド側油室8aから排出された高圧の油が蓄圧される一方、該アキュムレータ36に蓄圧された圧油は、アキュムレータ使用制御時にハイブリッドポンプ32からブームシリンダ8に供給される構成となっているから、作業部4の有する位置エネルギーをアキュムレータ36を用いて有効に回収、再利用できることになって、省エネルギー化に大きく貢献できる。
【0072】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されないことは勿論であって、上記実施の形態では、油圧ショベルの油圧制御システムを例にとって説明したが、本発明は、アキュムレータの蓄圧油が供給される油圧アクチュエータを備えた各種作業機械の油圧制御システムに実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】油圧ショベルの側面図である。
【図2】油圧制御システムの回路図である。
【図3】油圧制御システムの回路図である。
【図4】制御装置の入出力を示すブロック図である。
【図5】作業判断部の制御手順を示すブロック図である。
【図6】蓄圧量演算部の制御手順を示すブロック図である。
【図7】要求ポンプ容量演算部の制御手順を示すブロック図である。
【図8】分担割合演算部の制御手順を示すブロック図である。
【図9】第一コントロールバルブ制御部の制御手順を示すブロック図である。
【図10】第三コントロールバルブ制御部の制御手順を示すブロック図である。
【図11】ハイブリッドポンプ制御部の制御手順を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0074】
4 作業部
8 ブームシリンダ
8a ヘッド側油室
9 第一メインポンプ
11 油タンク
16 制御装置
18 第一コントロールバルブ
32 ハイブリッドポンプ
36 アキュムレータ
37 第三コントロールバルブ
60 アキュムレータ用圧力センサ
61 アキュムレータ用温度センサ
64 作業判断部
68 蓄圧量演算部
76 第一コントロールバルブ制御部
79 第三コントロールバルブ制御部
82 ハイブリッドポンプ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種作業を行うべく作業部を動作せしめる油圧アクチュエータと、アキュムレータに蓄圧された圧油を吸込んで前記油圧アクチュエータに供給するハイブリッドポンプと、油タンクの油を吸込んで前記油圧アクチュエータに供給する油圧ポンプと、アキュムレータの蓄圧量を検出する蓄圧量検出手段と、前記ハイブリッドポンプおよび油圧ポンプから油圧アクチュエータへの圧油供給を制御する制御装置とを備える一方、該制御装置は、作業部の行う作業に対応して、アキュムレータの蓄圧量に基づいてハイブリッドポンプから油圧アクチュエータへの供給流量を制御する一方、該ハイブリッドポンプから油圧アクチュエータへの供給流量が不足する場合は該不足流量を油圧ポンプから油圧アクチュエータに供給するように制御するアキュムレータ使用制御と、アキュムレータの蓄圧量に関わらずハイブリッドポンプから油圧アクチュエータへの圧油供給を停止して油圧ポンプから油圧アクチュエータに圧油供給するように制御するアキュムレータ不使用制御とを行うことを特徴とする作業機械における油圧制御システム。
【請求項2】
制御装置は、作業部の行う作業が予め設定されるアキュムレータ使用作業、アキュムレータ不使用作業の何れであるかを判断する作業判断手段を備えると共に、該作業判断手段によりアキュムレータ使用作業と判断される場合はアキュムレータ使用制御を行う一方、アキュムレータ不使用作業と判断される場合はアキュムレータ不使用制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の作業機械における油圧制御システム。
【請求項3】
制御装置は、アキュムレータ不使用制御を行うにあたり、アキュムレータの蓄圧量に関わらずアキュムレータに蓄圧されていないと仮定して、アキュムレータに蓄圧されていない場合のアキュムレータ使用制御と同じ制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の作業機械における油圧制御システム。
【請求項4】
油圧制御システムは、ハイブリッドポンプから油圧アクチュエータへの流量制御を行うコントロールバルブと、油圧ポンプから油圧アクチュエータへの流量制御を行うコントロールバルブとを備える一方、制御装置は、アキュムレータ使用制御、アキュムレータ不使用制御の各制御に対応して、前記各コントロールバルブをそれぞれ制御するコントロールバルブ制御部を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の作業機械における油圧制御システム。
【請求項5】
制御装置は、アキュムレータ使用制御、アキュムレータ不使用制御の各制御に対応して、ハイブリッドポンプの吐出流量を制御するハイブリッドポンプ制御部を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の作業機械における油圧制御システム。
【請求項6】
油圧アクチュエータは、作業部を昇降せしめる油圧シリンダであると共に、アキュムレータは、作業部の下降時に油圧シリンダの重量保持側油室から排出される油を蓄圧する構成であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の作業機械における油圧制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−133914(P2008−133914A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321156(P2006−321156)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】