説明

作業機械のエンジン回転制御装置およびエンジン回転制御方法

【課題】従来よりもさらに無駄な燃料消費を低減させることができるエンジン回転制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン50によって駆動される油圧ポンプ52からの作動油によって油圧アクチュエータ58、60が操作される作業機械1のエンジン回転制御装置10において、基準エンジン負荷を設定する基準エンジン負荷設定手段12と、設定された基準エンジン負荷に応じて前記エンジン50の基本目標回転速度を設定する基本目標回転速度設定手段20Aと、前記油圧ポンプ52の吐出圧を検出するポンプ吐出圧検出手段14と、を備え、前記ポンプ吐出圧検出手段14によって検出された前記油圧ポンプ52の吐出圧が所定の閾値P1を下回ったとき、エンジン50の目標回転速度を前記基準エンジン負荷に応じて設定された前記基本目標回転速度よりも低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械等の作業機械(例えば油圧ショベル)のエンジン回転制御装置およびエンジン回転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、一般的に用いられている油圧ショベルの一例についてのブロック構成図である。
【0003】
この油圧ショベル100は、スロットルボリューム112と、パイロット圧力センサ116と、回転センサ118と、コントローラ120と、エンジンコントロールアクチュエータ122と、エンジン150と、メインポンプ152と、コントロールバルブ154、156と、油圧アクチュエータ158、160と、リモコン弁162、164と、を有してなる。
【0004】
この油圧ショベル100を始め通常油圧ショベルにおいては、車両と異なり、リモコン弁162、164の操作レバー162A、164Aの操作の有無にかかわらず(油圧アクチュエータ158、160が実際に動作しているかどうかにかかわらず)、エンジン150はスロットルボリューム112で選択された回転速度で回り続け、燃料を消費している。
【0005】
これに対し、特許文献1には、予め遅延時間を定めておき、操作レバー162A、164Aが全て中立になった時点(油圧アクチュエータ158、160が未操作状態になった時点)から遅延時間t(sec)を経過するまでは、エンジン回転速度をスロットルボリューム112で定められる設定回転速度Tn−0に保持し、遅延時間を経過した後に、設定回転速度Tn−0から低速回転速度Tn−idleに急速に減少させる技術が開示されている。図6は、特許文献1に記載の技術を用いた場合の油圧ショベル100のエンジン回転制御装置の動作の状況を模式的に示す図で、油圧アクチュエータ156が操作状態であるか未操作状態であるかを示すタイムチャート(図6(a))、およびエンジン150の目標回転速度(Tt)についてのタイムチャート(図6(b))を示している。
【0006】
この技術では、常にエンジン回転速度をスロットルボリューム112で定める設定回転速度Tn−0に保持している場合に比べて燃料消費量を低減させることができるとともに、操作レバー160Aが中立になった時点で即座にエンジン回転速度を低速回転速度Tn−idleに減少させる場合に比べて操作性を向上させることができる。図6中のハッチング部分がこの技術において無駄な燃料消費を低減させた部分である。
【0007】
特許文献2には、特許文献1に開示された技術をさらに改良した技術が開示されている。即ち、操作レバー160Aが全て中立になった時点で即座に少しだけエンジン回転速度を減少させ、操作レバー160Aが全て中立になった時点から遅延時間を経過した後に、さらに低速の回転速度に二段階に減少させるものである。これによって、特許文献1に開示された技術に比べて、燃料消費量をさらに低減させることができる。
【0008】
【特許文献1】特公昭60−38561号公報
【特許文献2】特公平5−52411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来技術(特許文献2に記載の技術)では、操作レバーが全て中立位置になったことを検出すると即座に少しだけエンジン回転速度を減少させ、その時点から遅延時間を経過すると、さらに低速の回転速度に二段階に減少させていた。逆に言うならば、操作レバーが全て中立位置にならないと、制御自体が開始されることがなかった。そのため、特許文献2に記載の技術でも、無駄な燃料消費の低減は不十分であった。
【0010】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、従来よりもさらに無駄な燃料消費を低減させることができるエンジン回転制御装置およびエンジン回転制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、エンジンによって駆動される油圧ポンプからの作動油によって油圧アクチュエータが操作される作業機械のエンジン回転制御装置において、基準エンジン負荷を設定する基準エンジン負荷設定手段と、設定された基準エンジン負荷に応じて前記エンジンの基本目標回転速度を設定する基本目標回転速度設定手段と、前記油圧ポンプの吐出圧を検出するポンプ吐出圧検出手段と、を備え、前記ポンプ吐出圧検出手段によって検出された前記油圧ポンプの吐出圧が所定の閾値を下回ったとき、エンジンの目標回転速度を前記基準エンジン負荷に応じて設定された前記基本目標回転速度よりも低下させることにより、上記課題を解決したものである。
【0012】
本発明では、従来技術(特許文献2に記載の技術)と相違して、必ずしも全ての操作レバーが全て中立位置(未操作)とならなくても、油圧ポンプの吐出圧が所定の閾値を下回ったとき、エンジンの回転速度を低下させる。これにより、油圧アクチュエータが全体として軽負荷の操作状態であるときに、エンジンの回転速度を基本目標回転速度より低下させることができるため、従来よりもさらに無駄な燃料消費を低減させることができる。
【0013】
なお、前記閾値が複数設けられており、前記ポンプ吐出圧検出手段によって検出された前記油圧ポンプの吐出圧が下回る前記閾値のうちの最小の閾値が小さいときほど、エンジンの目標回転速度の前記基本目標回転速度からの低下量が大きくなるようにされている場合、油圧アクチュエータの操作に支障のない範囲内でエンジン回転速度を低下させる量をより適切に定めることができ、無駄な燃料消費をより低減させることができる。
【0014】
さらに、前記吐出圧が前記閾値のうちの最小の閾値を下回った状態が所定時間継続すると、エンジンの目標回転速度をアイドル回転速度まで低下させる場合、無駄な燃料消費をよりさらに低減させることができる。
【0015】
本発明は見方を変えると、エンジンによって駆動される油圧ポンプからの作動油によって油圧アクチュエータを操作する作業機械のエンジン回転制御方法において、基準エンジン負荷を設定する手順と、該基準エンジン負荷に応じて前記エンジンの基本目標回転速度を設定する手順と、前記油圧ポンプの吐出圧を検出する手順と、検出された吐出圧に依存して、エンジンの目標回転速度を前記基準エンジン負荷に応じて設定された前記基本目標回転速度よりも低下させる手順と、を有することを特徴とする作業機械のエンジン回転制御方法と捉えることもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、不具合を発生させることなく、従来よりもさらに無駄な燃料消費を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図面に基づいて、本発明に係る作業機械のエンジン回転制御装置の好適な実施形態の例について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係るエンジン回転制御装置が組み込まれた作業機械を示すブロック構成図である。この作業機械1は通常の油圧ショベルと同様に例えば複数の油圧アクチュエータを有しているが、図1では、この作業機械1の油圧アクチュエータとして旋回アクチュエータ58、ブームアクチュエータ60の2つのみを代表して描いている。また、コントロールバルブについても、対応する旋回コントロールバルブ54、ブームコントロールバルブ56の2つのみを代表して描いている。
【0019】
本実施形態に係るエンジン回転制御装置10は、スロットルボリューム(基準エンジン負荷設定手段)12と、ポンプ吐出圧センサ14と、パイロット圧力センサ16と、回転センサ18と、コントローラ20と、エンジンコントロールアクチュエータ22と、を備える。
【0020】
スロットルボリューム(基準エンジン負荷設定手段)12は、オペレータによって操作され、旋回アクチュエータ58、ブームアクチュエータ60を含む各アクチュエータを用いて作業を行う際のエンジン50の基本目標回転速度(Tns)を設定するための指標となるエンジン負荷を設定する手段であり、可変抵抗器を有した構成とされている。具体的には、スロットルボリューム12で設定された値(エンジン負荷)に応じた電圧信号がコントローラ20内の基本目標回転速度設定部(基本目標回転速度設定手段)20Aに入力されるようになっている(後述)。
【0021】
ポンプ吐出圧センサ14は、メインポンプ52の吐出側油路52Aの作動油の圧力(メインポンプ52の吐出圧)を検出する。検出した吐出圧データは電気信号線14Aを介してコントローラ20に送られる。
【0022】
回転センサ18は、エンジン50の回転速度情報を検出する。検出した回転速度情報は電気信号線18Aを介してコントローラ20に送られる。
【0023】
コントローラ20は、基本目標回転速度設定部(基本目標回転速度設定手段)20Aと、目標回転速度設定部20Bと、エンジン回転速度算出部20Cと、制御信号生成発信部20Dと、を備える。
【0024】
基本目標回転速度設定部(基本目標回転速度設定手段)20Aは、スロットルボリューム12で設定された値に基づきエンジン50の基本目標回転速度(Tns)および低負荷操作時目標回転速度(Tn−low)を決定する。具体的には、例えば図2に示す、スロットルボリューム12からの電圧信号と基本目標回転速度(Tns)との関係、およびスロットルボリューム12からの電圧信号と低負荷操作時目標回転速度(Tn−low)との関係を用いて決定する。図2中、同一スロットルボリューム時の基本目標回転速度(Tns)と低負荷操作時目標回転速度(Tn−low)との差Δnは例えば50rpmであり、エンジン50の基本目標回転速度(Tns)の最大値は例えば2000rpmである。低負荷操作時目標回転速度(Tn−low)の最小値は例えば950rpmである。この回転速度はアイドル回転速度(Tn−idle)よりは高い。
【0025】
基本目標回転速度(Tns)の対象となる作業は、メインポンプ52の吐出圧Pが閾値P1を上回るような作業(油圧アクチュエータを用いて行われる所定以上の負荷を伴う作業)であり、この作業には、旋回アクチュエータ58、ブームアクチュエータ60を用いて通常行われる作業が含まれている。具体的には、基本目標回転速度(Tns)の対象となる作業としては、例えば、複数の油圧アクチュエータが操作されてエンジン50に加わる負荷が高い状態や、1つの油圧アクチュエータのみが操作されている場合でも、その1つの油圧アクチュエータを操作する際にエンジン50に加わる負荷が高い状態を挙げることができる。一方、低負荷操作時目標回転速度(Tn−low)の対象となる作業はメインポンプ52の吐出圧Pが閾値P1を下回るような作業であり、通常行われる作業よりも所定量以上負荷が小さい作業が低負荷操作時目標回転速度(Tn−low)の対象となる。具体的には、低負荷操作時目標回転速度(Tn−low)の対象となる作業としては、例えば、複数の油圧アクチュエータのうち1つの油圧アクチュエータのみが操作され、かつ、その1つの油圧アクチュエータが減速段階であり、エンジン50に加わる負荷が低い状態を挙げることができる。なお、閾値P1は、旋回アクチュエータ58、ブームアクチュエータ60を含む各アクチュエータの操作に支障が生じないように状況に応じて適宜定めることができる。
【0026】
ここで、油圧アクチュエータ58、60を含む各アクチュエータに供給される作動油の圧力が閾値P1よりも小さいとき(低負荷操作時)は、油圧アクチュエータ58、60を含む各アクチュエータに供給される作動油の圧力が閾値P1よりも大きいとき(通常負荷操作時)より、エンジン50の回転速度を所定量低下させても、低負荷操作時なのであるからそのこと自体では問題は生じない。ただし、低負荷操作時目標回転速度(Tn−low)の基本目標回転速度(Tns)に対する低下量が大きすぎると、エンジン50の回転速度を基本目標回転速度(Tns)に即座にもどすことができず、油圧アクチュエータ58、60を含む各アクチュエータの操作性に問題が生じる。そこで本実施形態では、エンジン50の低負荷操作時目標回転速度(Tn−low)を、基本目標回転速度(Tns)から50rpm低下したレベルに設定した。これにより、油圧アクチュエータ58、60を含む各アクチュエータのうちのいずれかが操作状態にある時点でエンジンの回転速度を目標回転速度より低下させても、油圧アクチュエータの操作に支障のないようにすることができる。なお、この50rpmは一例であり、低負荷操作時目標回転速度(Tn−low)の基本目標回転速度(Tns)に対する低下量は、油圧アクチュエータ58、60を含む各アクチュエータの操作に支障のない範囲内で状況に応じて適宜定めることができる。
【0027】
目標回転速度設定部20Bは、検出されたメインポンプ52の吐出圧に基づき、基本目標回転速度(Tns)および低負荷操作時目標回転速度(Tn−low)のうちからいずれかを選択して、目標回転速度(Tt)とする。なお、油圧アクチュエータ58、60を含む各アクチュエータが未操作状態(全ての油圧アクチュエータが停止状態)となって、その状態を所定時間t(sec)継続した場合には、低負荷操作時目標回転速度(Tn−low)をアイドル回転速度(Tn−idle)まで低下させる。
【0028】
油圧アクチュエータ58、60を含む各アクチュエータが未操作状態(全ての油圧アクチュエータが停止状態)となったかどうかは、パイロット圧力センサ16によって検出されたパイロット圧力に基づき目標回転速度設定部20Bが判断する。なお、油圧アクチュエータ58、60を含む各アクチュエータが未操作状態(全ての油圧アクチュエータが停止状態)となったかどうかは、メインポンプ52の吐出圧が、全てのコントロールバルブのスプールが中立位置となった状態(全ての油圧アクチュエータに作動油が供給されていない状態)の吐出圧P0まで低下したかどうかでも判断することができ、この場合は、ポンプ吐出圧センサ12から送られる吐出圧データに基づき目標回転速度設定部20Bが判断する。
【0029】
エンジン回転速度算出部20Cは、電気信号線18Aを介して受け取った回転センサ18からの回転速度情報に基づいて、エンジン50の回転速度を算出する。
【0030】
制御信号生成発信部20Dは、決定された目標回転速度(Tt)およびエンジン50の回転速度に基づき、エンジン50の回転速度を制御するための燃料流量コントロール信号(制御信号)を、電気信号線22Aを介してエンジンコントロールアクチュエータ22に送り、エンジン50への燃料噴射量を調整させ、エンジン50の回転速度が目標回転速度(Tt)となるように制御する。
【0031】
エンジンコントロールアクチュエータ22は、コントローラ20から受け取った燃料流量コントロール信号(制御信号)に基づき、エンジン50への燃料噴射量を調整する。
【0032】
次に、作業機械10の動作について説明する。
【0033】
リモコン弁62、64の操作レバー62A、64Aが図1において右または左に倒されて、パイロットポンプ66からパイロット油路54A、54B、パイロット油路56A、56Bに供給されるパイロット圧力により、コントロールバルブ54、56のスプールが図1において右または左に移動しているときは、メインポンプ52からの作動油が油圧アクチュエータ58、60に供給されている状態となる。
【0034】
一方、リモコン弁62、64の操作レバー62A、64Aが中立位置にあるときは、パイロット油路54A、54B、56A、56Bのパイロット圧力はいずれも零となり、コントロールバルブ54、56のスプールは中立位置となり、油圧アクチュエータ58、60には作動油が供給されず、油圧アクチュエータ58、60はメインポンプ52から遮断された状態となる。この状態では、メインポンプ52から供給される作動油の全量がブリードオフ通路68を通ってタンク70にもどされる。このため、作動油の流れを妨害する大きな抵抗がないため、油路52Aの圧力(メインポンプ52の吐出圧)は小さくなり、閾値P1よりも小さくなる。従ってこの状態では、エンジン50は基準エンジン負荷に見合う高い回転速度で回転する必要はない。
【0035】
なお、本実施形態では、エンジン50の回転速度を基本目標回転速度(Tns)から低負荷操作時目標回転速度(Tn−low)へ低下させる際の閾値を閾値P1の1つだけにしたが、この閾値は複数設けてもよく、この場合、ポンプ吐出圧センサ14によって検出されたメインポンプ52の吐出圧が下回る閾値のうちの最小の閾値が小さいときほど、エンジン50の目標回転速度(Tt)の基本目標回転速度(Tns)からの低下量を大きくするようにできる。したがって、閾値を複数設けることにより、油圧アクチュエータの操作に支障のない範囲内でエンジン回転速度低下量をより適切に定めることができ、無駄な燃料消費をより低減させることができる。
【0036】
また、エンジン50の目標回転速度(Tt)を、メインポンプ52の吐出圧が小さいときほど、基本目標回転速度(Tns)からの低下量が大きくなるように連続的に変化させてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、油圧アクチュエータ58、60を含む各アクチュエータが未操作状態(全ての油圧アクチュエータが停止状態)となって、その継続時間が所定時間t(sec)を超えた場合には、低負荷操作時目標回転速度(Tn−low)をアイドル回転速度(Tn−idle)まで低下させることとしているが、設計によってエンジン50を停止させるようにしてもよい。これにより、無駄な燃料消費をよりさらに低減させることができる。
【0038】
次に、本実施形態に係るエンジン回転制御装置10の作用について、図3、図4を適宜参照して説明する。図3、図4は、エンジン回転制御装置10の動作の状況を模式的に示す図で、油圧アクチュエータ56が操作状態であるか未操作状態であるかを示すタイムチャート(図3(a)、図4(a))、メインポンプ52の吐出圧Pのタイムチャート(図3(b)、図4(b))、およびエンジン50の目標回転速度(Tt)についてのタイムチャート(図3(c)、図4(c))を示している。
【0039】
詳しくは、図3は、通常負荷操作時の操作状態(メインポンプ52の吐出圧が閾値P1を上回って油圧アクチュエータが操作されている操作状態)と、未操作状態(全操作レバーが中立位置にあって、全ての油圧アクチュエータが停止した状態)とを取るときのエンジン回転制御装置10の動作の状況を模式的に示す。図4は、通常負荷操作時の操作状態(メインポンプ52の吐出圧が閾値P1を上回って油圧アクチュエータが操作されている操作状態)と、低負荷操作時の操作状態(メインポンプ52の吐出圧が閾値P1を下回って油圧アクチュエータが操作されている操作状態)と、未操作状態(全操作レバーが中立位置にあって、全ての油圧アクチュエータが停止した状態)とを取るときのエンジン回転制御装置10の動作の状況を模式的に示す。
【0040】
まず図3の場合であるが、図3は、油圧アクチュエータ58、60を含む各アクチュエータのうち少なくとも1つが操作状態のとき、メインポンプ52の吐出圧Pは一定値P2を保ち、閾値P1を下回ることがない通常負荷操作時の操作状態を保つ場合であり、油圧アクチュエータ58、60を含む各アクチュエータが未操作状態となったとき(全ての油圧アクチュエータ56が停止したとき)に、吐出圧がP0となって閾値P1を下回り、エンジンの目標回転速度(Tt)は低負荷操作時目標回転速度(Tn−low)に低下する。そして、油圧アクチュエータ58、60を含む各アクチュエータの未操作状態を所定の時間t(sec)継続した場合には、さらにアイドル回転速度(Tn−idle)まで低下する。これにより無駄な燃料消費を低減させることができる。
【0041】
次に図4の場合であるが、図4は、油圧アクチュエータ58、60を含む各アクチュエータのうち少なくとも1つが操作状態のときでも、メインポンプ52の吐出圧Pが変動して閾値P1を下回ることがある場合であり、通常負荷操作時の操作状態と低負荷操作時の操作状態を取る場合である。作業機械1を用いて作業を行うときメインポンプ52の吐出圧Pは、図3のときのようにP2とP0の2値のみを取ることは考えにくく、通常は図4のように、メインポンプ52の吐出圧PはP2とP0の間を変動する。図4のようにメインポンプ52の吐出圧Pが変動する場合、本実施形態では、低負荷操作時の操作状態において、エンジンの目標回転速度(Tt)が低負荷操作時目標回転速度(Tn−low)に低下し、これにより無駄な燃料消費をさらに低減させることができる。
【0042】
図3、図4中のハッチング部分が本実施形態において無駄な燃料消費を低減させた部分である。特に、図4の場合、油圧アクチュエータ58、60を含む各アクチュエータのうち少なくとも1つが操作状態のときであっても、エンジンの目標回転速度(Tt)を低負荷操作時目標回転速度(Tn−low)に低減させて無駄な燃料消費を低減させており、この点が本実施形態に特有の効果である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
建設機械等の作業機械(例えば油圧ショベル)に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジン回転制御装置が組み込まれた作業機械を示すブロック構成図
【図2】スロットルボリュームからの電圧信号とエンジン目標回転速度Tn(基本目標回転速度(Tns)および低負荷操作時目標回転速度(Tn−low))との関係の一例
【図3】本発明の実施形態に係るエンジン回転制御装置の動作の状況を模式的に示す一例
【図4】同じく本発明の実施形態に係るエンジン回転制御装置の動作の状況を模式的に示す一例
【図5】一般的に用いられている油圧ショベルの一例についてのブロック構成図
【図6】特許文献1に記載の技術を用いた場合の前記油圧ショベルのエンジン回転制御装置の動作の状況を模式的に示す図
【符号の説明】
【0045】
1…作業機械
10…エンジン回転制御装置
12…スロットルボリューム(基準エンジン負荷設定手段)
14…ポンプ吐出圧センサ(ポンプ吐出圧検出手段)
16…パイロット圧力センサ
18…回転センサ
20…コントローラ
20A…基本目標回転速度設定部(基本目標回転速度設定手段)
20B…目標回転速度設定部
20C…エンジン回転速度算出部
20D…制御信号生成発信部
22…エンジンコントロールアクチュエータ
50…エンジン
52…メインポンプ
54、56…コントロールバルブ
58、60…油圧アクチュエータ
62、64…リモコン弁
62A、64A…操作レバー
66…パイロットポンプ
68…ブリードオフ通路
70…タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンによって駆動される油圧ポンプからの作動油によって油圧アクチュエータが操作される作業機械のエンジン回転制御装置において、
基準エンジン負荷を設定する基準エンジン負荷設定手段と、
設定された基準エンジン負荷に応じて前記エンジンの基本目標回転速度を設定する基本目標回転速度設定手段と、
前記油圧ポンプの吐出圧を検出するポンプ吐出圧検出手段と、
を備え、
前記ポンプ吐出圧検出手段によって検出された前記油圧ポンプの吐出圧が所定の閾値を下回ったとき、エンジンの目標回転速度を前記基準エンジン負荷に応じて設定された前記基本目標回転速度よりも低下させることを特徴とする作業機械のエンジン回転制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記閾値が複数設けられており、前記ポンプ吐出圧検出手段によって検出された前記油圧ポンプの吐出圧が下回る前記閾値のうちの最小の閾値が小さいときほど、エンジンの目標回転速度の前記基本目標回転速度からの低下量が大きくなるようにされていることを特徴とする作業機械のエンジン回転制御装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記吐出圧が前記閾値のうちの最小の閾値を下回った状態が所定時間継続すると、エンジンの目標回転速度をアイドル回転速度まで低下させることを特徴とする作業機械のエンジン回転制御装置。
【請求項4】
エンジンによって駆動される油圧ポンプからの作動油によって油圧アクチュエータを操作する作業機械のエンジン回転制御方法において、
基準エンジン負荷を設定する手順と、
該基準エンジン負荷に応じて前記エンジンの基本目標回転速度を設定する手順と、
前記油圧ポンプの吐出圧を検出する手順と、
検出された吐出圧に依存して、エンジンの目標回転速度を前記基準エンジン負荷に応じて設定された前記基本目標回転速度よりも低下させる手順と、を有することを特徴とする作業機械のエンジン回転制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−77877(P2010−77877A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246397(P2008−246397)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】