説明

作業機械の油圧装置

【課題】メインリリーフバルブからのリリーフを減らすために油圧アクチュエータを負荷逃がし方向に作動させる手段を備えることなく、リリーフを許容しリリーフした作動油を再生活用し、エネルギー損失を抑制、低減できる作業機械の油圧装置を提供する。
【解決手段】油圧装置が、原動機4により駆動され作動油を吐出する油圧ポンプ8と、この吐出油を制御して油圧アクチュエータ10に給排するコントロールバルブ12と、油圧ポンプとコントロールバルブを結ぶ吐出油路に設けられ油圧装置の圧力を規定するメインリリーフバルブ16と、原動機に連結されメインリリーフバルブの排出油路の作動油により駆動され原動機による油圧ポンプ20の駆動を補助する油圧モータを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の油圧装置、さらに詳しくは、メインリリーフバルブからのリリーフした流量を再生するシステムを備えた油圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械の油圧装置、例えば油圧ショベルの油圧装置は、油圧アクチュエータを操作したときにシステム圧力が定格圧力を超えないように規定するメインリリーフバルブを備えている。作業機械は作業負荷が大きいのでアクチュエータが過負荷状態になりやすくリリーフバルブが働いて作動油を逃がす(リリーフさせる)頻度が多い。
【0003】
リリーフした作動油は戻り油路を通してタンクに戻る。しかしながら高圧の作動油のリリーフは、エネルギーの損失となり油圧ポンプを駆動するエンジンの燃費を悪化させる原因になる。このエネルギー損失を抑制する方法の一つとして、負荷圧が所定の警告圧に達したときに一部の油圧アクチュエータを負荷逃がし方向に作動させ、メインリリーフバルブからの作動油のリリーフを減らす技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−190341号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようにメインリリーフバルブにより高圧の作動油を逃がす方法は、エネルギー損失が発生し油圧ポンプを駆動するエンジンの燃費を悪化させる。一方、作業負荷を逃がす方向に一部のアクチュエータを作動させる方法は、アクチュエータの作動が変動するために作業に支障を来すことがある。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、メインリリーフバルブからの作動油のリリーフを減らすために油圧アクチュエータを負荷逃がし方向に作動させる手段を備えることなく、メインリリーフバルブのリリーフを許容し、リリーフした作動油を再生活用しエネルギー損失を抑制、低減できるようにした作業機械の油圧装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば上記技術的課題を解決する作業機械の油圧装置として、原動機により駆動されタンクの作動油を吸引し吐出する油圧ポンプと、この吐出油を制御して複数の油圧アクチュエータに給排するコントロールバルブと、油圧ポンプとコントロールバルブを結ぶ吐出油路に設けられ油圧装置の圧力を規定するメインリリーフバルブと、原動機に連結されメインリリーフバルブの排出油路の作動油により駆動される油圧モータと、を備え、この油圧モータにより原動機による油圧ポンプの駆動を補助する、ことを特徴とする作業機械の油圧装置が提供される。
【0008】
好適には、油圧モータは、可変容量型であり、その容量制御器が油圧モータの容量を、排出油路を流れる作動油の少ないときには小さくし多いときには大きくする。
【0009】
また、コントロールバルブからタンクへの戻り油路と前記排出油路との間に戻り油路から排出油路の側への流れを許容するチェックバルブを備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従って構成された作業機械の油圧装置は、原動機により駆動される油圧ポンプとその吐出油を油圧アクチュエータに給排するコントロールバルブとを結ぶ吐出油路に設けたメインリリーフバルブの排出油路の作動油により駆動され原動機に連結されて油圧ポンプの駆動を補助する油圧モータを備えている。
【0011】
したがって、メインリリーフバルブからの作動油のリリーフを減らすために油圧アクチュエータを負荷逃がし方向に作動させる手段を備えることなく、メインリリーフバルブのリリーフを許容し、リリーフした作動油を再生活用しエネルギー損失を抑制、低減することができる。特に高負荷作業で稼動するリリーフ頻度の高い作業機械に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に従って構成された作業機械の油圧装置の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従って構成された作業機械の油圧装置について、代表的な作業機械である油圧ショベルにおける好適実施形態を図示している添付図面を参照して、さらに詳細に説明する。
【0014】
図1を参照して説明する。全体を番号2で示す作業機械の油圧装置は、原動機であるエンジン4により駆動されタンク6の作動油を吸引し吐出する一対の油圧ポンプ8、8と、この吐出油を制御して複数の油圧アクチュエータ10、10それぞれに給排するコントロールバルブ12、12と、油圧ポンプ8、8とコントロールバルブ12、12をそれぞれ結ぶ吐出油路14、14設けられ油圧装置の圧力を規定するメインリリーフバルブ16、16と、エンジン4に連結されメインリリーフバルブ16、16の排出油路18の作動油により駆動される油圧モータ20を備えている。
【0015】
コントロールバルブ12とタンク6は、戻り油路22によって結ばれている。油圧モータ20を通った作動油は、戻り油路22につながる油路を通してタンク6に流れる。
【0016】
油圧ポンプ8は可変容量型のポンプである。なお、油圧ショベルのような操作する油圧アクチュエータが多い作業機械の油圧装置は、図1に示すように、実質的に同じ油圧ポンプ、コントロールバルブ、メインリリーフバルブ等を2系統備えている。
【0017】
複数の油圧アクチュエータは、まとめて油圧アクチュエータ10、10の2グループで示されている。油圧ショベルには少なくとも、作業腕操作用のブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ、機体走行用の走行モータ、機体旋回用の旋回モータが備えられている。
【0018】
これらの油圧ポンプ8、コントロールバルブ12、タンク6、吐出油路14、戻り油路22等は周知のものでよい。したがってその詳細な説明は省略する。
【0019】
メインリリーフバルブ16には、排出側(排出油路18側)の圧力の影響を受けにくいパイロット作動型が用いられている。
【0020】
油圧モータ20は、可変容量型の例えば斜板型ピストンモータである。油圧モータ20の容量制御器21はモータ容量を、排出油路18を流れる作動油量に基づいて斜板の傾転角を制御する。油圧モータ20の容量(斜板の傾転角)は、排出油路18を流れる作動油の少ないときには小さく、多いときには大きく制御される。すなわち、作動油量の少ないときは油圧モータ20が連結したエンジン4の回転抵抗とならないように容量を小さくし作動油量の多いときにはエンジン4の回転を補助するトルクを生成するように容量を大きくする。
【0021】
この油圧モータ20はエンジン4に、歯車などの変速連結手段(図示していない)を介して、エンジン4の回転速度と油圧モータ20の回転速度が油圧ポンプ8の駆動を補助するようにマッチングさせて接続されている。
【0022】
コントロールバルブ12からタンク6への戻り油路22と排出油路18との間には、戻り油路22から排出油路18の側への流れを許容するチェックバルブ24を備えている。このチェックバルブ24は、エンジン4と油圧モータ20の回転速度の関係において、油圧モータ20がエンジン4によって回転されるような状態のときに、油圧モータ20がエンジン4の回転負荷とならないように作動油を補充する。このチェックバルブ24を通す作動油は、特にタンク6が密閉加圧タイプのような場合、加圧状態で有効に油圧モータ20に供給される。
【0023】
図1を参照して上述したとおりの作業機械の油圧装置2の作用効果について説明する。
【0024】
作業機械の油圧装置2は、原動機4により駆動される油圧ポンプ8とその吐出油を複数の油圧アクチュエータ10に給排するコントロールバルブ12とを結ぶ吐出油路14に設けたメインリリーフバルブ16の排出油路18の作動油により駆動され油圧ポンプ8の駆動を補助する油圧モータ20を備えている。
【0025】
したがって、メインリリーフバルブ16からの作動油のリリーフを減らすために油圧アクチュエータ10を負荷逃がし方向に作動させる手段を備えることなく、メインリリーフバルブ16のリリーフを許容し、この排出油を、排出油路18を通してエンジン4に連結した油圧モータ20を駆動することにより、リリーフした作動油を再生活用しエネルギー損失を抑制、低減することができる。リリーフ時にエンジンアシスト量が大きくなることから、高負荷時の燃費を低減することができる。特にリリーフ時にエンジンアシスト量が大きくなることから、高負荷時の燃費を低減することができる。
【0026】
そして、油圧モータ20は可変容量型であり、その容量制御器21は油圧モータ20の容量を、排出油路18を流れる作動油の少ない、あるいはないときには小さくし、多いときには大きくする。
【0027】
したがって、作動油量の少ないときには容量を小さくして、油圧モータ20が連結したエンジン4の回転抵抗とならないように油圧モータ20を空転に近い状態にし、作動油量の多いときには大きくしエンジン4の回転を補助するトルクを生成するようにする。
【0028】
また、コントロールバルブ12からタンク6への戻り油路22と排出油路18との間に戻り油路22から排出油路18の側への流れを許容するチェックバルブ24を備えている。
【0029】
したがって、排出油路18にメインリリーフバルブ16からのリリーフした作動油の流れのないときには、油圧モータ20がエンジン4の回転負荷とならないように作動油を補充することができる。またチェックバルブ24を通す作動油は、特にタンク6が密閉加圧タイプのような場合、加圧状態で有効に油圧モータ20に供給される。
【0030】
以上、本発明を実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、例えば下記のように、本発明の範囲内においてさまざまな変形あるいは修正ができるものである。
【0031】
本発明の実施の形態においては、原動機4はエンジンであるが、原動機4は電動機であってもよい。
【0032】
本発明の実施の形態においては、油圧装置2は、実質的に同じ油圧ポンプ8、コントロールバルブ12、メインリリーフバルブ16等を2系統備えているが、これらは1系統であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
2:作業機械の油圧装置
4:エンジン(原動機)
6:タンク
8:油圧ポンプ
10:油圧アクチュエータ
12:コントロールバルブ
14:吐出油路
16:メインリリーフバルブ
18:排出油路
20:油圧モータ
21:容量制御器
22:戻り油路
24:チェックバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の油圧アクチュエータを備える作業機械の油圧装置であって、
原動機により駆動されタンクの作動油を吸引し吐出する油圧ポンプと、
この吐出油を制御して油圧アクチュエータに給排するコントロールバルブと、
油圧ポンプとコントロールバルブを結ぶ吐出油路に設けられ油圧装置の圧力を規定するメインリリーフバルブと、
原動機に連結されメインリリーフバルブの排出油路の作動油により駆動される油圧モータと、を備え、
この油圧モータにより原動機による油圧ポンプの駆動を補助する、
ことを特徴とする作業機械の油圧装置。
【請求項2】
油圧モータが、可変容量型であり、
その容量制御器が油圧モータの容量を、排出油路を流れる作動油の少ないときには小さくし多いときには大きくする、
ことを特徴とする請求項1記載の作業機械の油圧装置。
【請求項3】
コントロールバルブからタンクへの戻り油路と前記排出油路との間に戻り油路から排出油路の側への流れを許容するチェックバルブを備えている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の作業機械の油圧装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−83293(P2013−83293A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222890(P2011−222890)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(505236469)キャタピラー エス エー アール エル (144)
【Fターム(参考)】