説明

作業機械

【課題】リフマグ等の電動作業装置への電力供給の停止時に、その発電設備で作られた電力を、排ガスフィルタの再生補助に有効利用する。
【解決手段】電動作業装置としてのリフマグ6と、リフマグ6に電力を供給するための発電機10とを備えた作業機械において、排ガスフィルタ15を加熱して再生作用を助ける電気式の再生ヒータ18を設け、リフマグ6への電力供給が停止しているときに、粒子状物質の堆積量が設定値以上であること、及びフィルタ温度が設定値以下であることを条件として、発電機10からの電力を再生ヒータ18に供給する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンで駆動される発電機からの電力によってリフティングマグネット等の電動作業装置を作動させる作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リフティングマグネット作業機械(以下、リフマグ機と略称する)を例にとって背景技術を説明する。
【0003】
リフマグ機は、図3に示すように、下部走行体1と上部旋回体2とから成る自走式のベースマシン3にブーム4、アーム5を有する作業アタッチメントAを装着した油圧ショベルを母体として、作業アタッチメントAの先端(図示のようにリフマグ専用機ではアーム5の先端、ショベル兼用機では図示しないバケット)にリフティングマグネット(以下、リフマグと略称する)6を取付けて構成され、リフマグ6に金属スクラップ等を吸着させて運搬する。
【0004】
このリフマグ機においては、エンジンで油圧ポンプを駆動し、この油圧ポンプを油圧源とする油圧モータにより発電機を常時駆動し、この発電機からの電力によりリフマグ6を励磁して吸着作用を行わせる構成がとられる(特許文献1参照)。
【0005】
このリフマグ機において、リフマグに使用していない余剰電力をバッテリに充電させる技術(特許文献2参照)や、リフマグ停止中は発電機を停止させる技術(特許文献3参照)が公知である。
【0006】
一方、建設機械において、ディーゼルエンジンから排出される排ガスを排ガスフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)に導入し、煤等のPM(Particulate Matter:粒子状物質)を除去して浄化する排ガス浄化システムが用いられている。
【0007】
この種の排ガス浄化システムにおいて、排ガスフィルタの目詰まりを防止して浄化作用を一定に保つために、排ガスフィルタに堆積したPMを燃焼させて除去するフィルタ再生(自己再生ともいう)操作が行われる。
【0008】
このフィルタ再生方法として、エンジンの燃焼室にポスト噴射を行い、未燃の炭化水素をフィルタの触媒上で反応させて発熱させることによってPMを燃焼させる燃料ポスト噴射方式や、フィルタ内にエンジン燃料を供給することによりPMを強制的に燃焼させる強制燃焼方式が公知である。
【0009】
また、このフィルタ再生に関して、排ガスフィルタの排気上流に電気式の再生ヒータを設け、この再生ヒータにより排ガスフィルタを加熱して(正確には排ガスを加熱することでフィルタを昇温させて)フィルタの再生を助ける技術(特許文献4参照)が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−13548号公報
【特許文献2】特開2007−45615号公報
【特許文献3】特開2002−348087号公報
【特許文献4】特開2008−101497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載された一般的なリフマグ機では、エンジン運転中、リフマグの吸着作用が行われていないときを含めて、発電機が常に発電作用を行う状態となるため、電力が無駄となる。
【0012】
この場合、特許文献2に記載された公知技術によると、余剰電力をバッテリに充電できるが、バッテリが満充電状態であれば、発電機電力が無駄となる。
【0013】
また、リブマグ停止中は発電機を停止させる特許文献3の技術によれば、電力の無駄はなくなるが、せっかくの発電設備(発電機、油圧モータ、油圧ポンプ)を有効利用できない。
【0014】
一方、排ガスフィルタの再生補助に電気式の再生ヒータを用いる特許文献4の技術において、再生ヒータをバッテリから通電する構成をとると、バッテリの過放電を招き易い。
【0015】
あるいは、再生ヒータ専用の発電機をエンジンに接続すると、設備コストが高くなる。
【0016】
そこで本発明は、リフマグ等の電動作業装置への電力供給の停止時に、その発電設備で作られた電力を、排ガスフィルタの再生補助に有効利用することができる作業機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1の発明は、エンジンと、このエンジンを動力源として発電作用を行う発電機と、この発電機からの電力によって駆動される電動作業装置と、上記エンジンから出た排ガス中の粒子状物質を除去する排ガスフィルタと、この排ガスフィルタを加熱して再生作用を助ける電気式の再生ヒータと、上記発電機から電動作業装置及び再生ヒータに対する電力の供給を制御する制御手段とを備え、この制御手段は、上記電動作業装置への電力供給が停止しているときに、上記発電機からの電力を上記再生ヒータに供給するように構成されたものである。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、上記電動作業装置として、上記発電機からの電力により励磁されて吸着作用を行うリフティングマグネットを備え、このリフティングマグネットの電源となる上記発電機を油圧モータで常時駆動し、この油圧モータの油圧源となる油圧ポンプを上記エンジンによって駆動するように構成されたものである。
【0019】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成において、上記排ガスフィルタへの粒子状物質の堆積量を検出する堆積量検出手段が設けられ、上記制御手段は、上記堆積量が設定値以上であることを条件として上記再生ヒータへの電力供給を行うように構成されたものである。
【0020】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの構成において、上記排ガスフィルタまたはその周辺の温度であるフィルタ温度を検出する温度検出手段が設けられ、上記制御手段は、フィルタ温度が設定値以下であることを条件として上記再生ヒータへの電力供給を行うように構成されたものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、電動作業装置(請求項2ではリフマグ)と、同装置に電力を供給するための発電機とを備えた作業機械(同、リフマグ機)において、排ガスフィルタを加熱して再生作用を助ける電気式の再生ヒータを設け、電動作業装置への電力供給が停止しているときに、発電機からの電力を再生ヒータに供給する構成としたから、作業停止中の発電設備及び電力をフィルタ再生に有効利用することができる。
【0022】
これにより、再生ヒータ専用の発電設備が不要となることと相まって省設備、省エネルギーとなる。この点の効果は、とくに、エンジン運転中、発電機が常時発電作用を行うリフマグ機において顕著となる。
【0023】
また、バッテリ電力を再生ヒータに供給する場合のようなバッテリの過放電のおそれがなくなる。
【0024】
ここで、請求項3の発明によると、排ガスフィルタへの粒子状物質の堆積量が設定値以上であること、すなわち、フィルタ再生の必要があるときに限って再生ヒータに通電するため、排ガスフィルタが常時高温になることを防ぎ、周辺部品の熱害、熱劣化を抑えることができる。
【0025】
また、請求項4の発明によると、排ガスフィルタまたはその周辺温度であるフィルタ温度が設定値以下(再生可能な温度以下)であるときに限って再生ヒータに通電するため、いいかえれば排ガスフィルタがすでに再生可能な温度まで高温化している状況では再生ヒータに通電しないため、同フィルタが異常高温となることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係るリフマグ回路及びエンジン排気系の構成を示す図である。
【図2】実施形態の作用を説明するためのフローチャートである。
【図3】リフマグ機の全体概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施形態では、電動作業装置としてリフマグを備えたリフマグ機を適用対象としている。
【0028】
図1はこの機械のマグネット駆動部分とエンジン排気系、これらの制御部分を示す。
【0029】
図3中のベースマシン3に搭載されたエンジン7により、図示しない油圧アクチュエータ用の油圧ポンプとともにリフマグ用の油圧ポンプ8が駆動され、この油圧ポンプ8によって発電機駆動用の油圧モータ9が駆動される。
【0030】
10はこの油圧モータ9によって駆動されるリフマグ電源としての発電機で、この発電機10で発生した電力が制御手段としてのコントローラ11に入力される。
【0031】
このコントローラ11は、発電機出力の整流作用、電圧制御等を行う出力制御部12と、この出力制御部12に対して制御指令を送る制御指令部13とから成り、出力制御部12からの出力(直流電圧)がリフマグ電圧としてリフマグ6に加えられる。
【0032】
制御指令部13には、吸着スイッチ14のスイッチ信号が入力され、このスイッチ信号に基づき、制御指令部13から出力制御部12に吸着(リフマグ6の励磁)、釈放(励磁停止)の指令が送られる。
【0033】
一方、エンジン7の排気系に排ガスフィルタ15が設けられている。
【0034】
この排ガスフィルタ15は、DPF(Diesel Particulate Filter:ディーゼル煤フィルタ)、またはDPFとDOC(Diesel Oxidation Catalyst:ディーゼル酸化触媒)を備え、排ガスに含まれるPM(Particulate Matter:粒子状物質)がこの排ガスフィルタ15で除去される。
【0035】
また、排ガスフィルタ15の情報を得る検出手段として、排ガスフィルタ16の前後の差圧を通してPMの堆積量を検出する差圧センサ(堆積量検出手段)16と、同フィルタ16内またはその周辺の温度であるフィルタ温度を検出する温度センサ(温度検出手段)17とが設けられ、この両センサ16,17からのPM堆積量及びフィルタ温度の信号がコントローラ11の制御指令部13に送られる。
【0036】
さらに、排ガスフィルタ15内に再生補助のための電気式の再生ヒータ18が設けられ、この再生ヒータ18がコントローラ11(出力制御部12)によって通電制御される。
【0037】
制御指令部13は、吸着スイッチ14のスイッチ信号と、検出されたPM堆積量及びフィルタ温度に基づき、一定の条件を満足するときに出力制御部12に再生ヒータ18への通電を指令する。
【0038】
出力制御部12は出力切換手段12aを備え、上記通電指令に基づいて出力切換手段12aを切換えて再生ヒータ18に通電し、これにより再生ヒータ18が発熱作動する。
【0039】
この作用を図2のフローチャートを併用して説明する。
【0040】
エンジン始動後、ステップS1でリフマグ6が非吸着中か否かが判断される。
【0041】
ここでYES(非吸着中)となると、ステップS2で差圧が設定値以上か否か、つまりPM堆積量が再生を要するレベルに達しているか否かが、予め入力された堆積量データに基づいて判断される。
【0042】
ここでYES(堆積量が設定値以上)となると、ステップS3でフィルタ温度が設定値(前記した燃料ポスト噴射方式や強制燃焼方式による再生を開始するのに適した温度)以下か否かが判断され、YESの場合に限り、ステップS4で、発電機10からの電力がコントローラ11の出力制御部12を介して再生ヒータ18に供給される。
【0043】
これにより、再生ヒータ18が発熱し、排ガスフィルタ15(正確には同フィルタ15に導入される排ガス)が加熱されて、同フィルタ15が再生開始適正温度まで昇温する。
【0044】
従って、この状態で燃料ポスト噴射方式や強制燃焼方式によるフィルタ再生操作が行われると、フィルタ再生作用が直ちに開始される。
【0045】
なお、ステップS1〜S3のいずれかでNOの場合、つまり、リフマグ吸着中、差圧が設定値以下、フィルタ温度が設定値以上のいずれかに該当する場合、及びステップS4で再生ヒータ18に通電した後、ステップS1に戻る。
【0046】
このように、排ガスフィルタ15を加熱(予熱)して再生作用を助ける電気式の再生ヒータ18を設け、リフマグ6への電力供給が停止しているときに、発電機10からの電力を再生ヒータ18に供給する構成としたから、これまで無駄となっていた作業停止中の発電設備(発電機10、油圧モータ9、油圧ポンプ8)と、これによって発生する電力をフィルタ再生に有効利用することができる。
【0047】
このため、再生ヒータ専用の発電設備が不要となることと相まって省設備、省エネルギーとなる。
【0048】
また、バッテリ電力を再生ヒータ18に供給する場合のようなバッテリの過放電のおそれがなくなる。
【0049】
しかも、排ガスフィルタ15への粒子状物質の堆積量が設定値以上であること、すなわち、フィルタ再生の必要があることを条件として再生ヒータ18に通電するため、排ガスフィルタ15が常時高温になることを防ぎ、周辺部品の熱害、熱劣化を抑えることができる。
【0050】
また、フィルタ温度が設定値以下(再生開始適正温度以下)であることをも再生ヒータ通電の条件とするため、いいかえれば排ガスフィルタ15がすでに再生開始適正温度まで高温化している状況では再生ヒータ18に通電しないため、同フィルタ15が異常高温となることを防止することができる。
【0051】
なお、排ガスフィルタ15への粒子状物質の堆積量を検出する手段として、堆積量センサによって堆積量を直接検出する方式や、エンジン負荷の累積に基づく見込み値を求める方式を採用してもよい。
【0052】
また、温度検出手段として、上記温度センサ18によってフィルタ温度を直接検出する方式に代えて、エンジン回転数からエンジン負荷を演算し、このエンジン負荷からフィルタ温度を推測する方式を用いてもよい。
【0053】
さらに、排ガス温度及びフィルタ温度が常に低い機械、あるいは排ガスフィルタ15が高温化しても差し支えない場合には、堆積量検出手段と温度検出手段の一方または双方を省略し、リフマグ吸着停止中、常時、再生ヒータ18に通電するようにしてもよい。
【0054】
一方、本発明はリフマグ機に限らず、ハイブリッドショベルを含めて、他の電動作業装置を備えた作業機械にも上記同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
6 電動作業装置としてのリフティングマグネット
7 エンジン
8 発電用の油圧ポンプ
9 同油圧モータ
10 発電機
11 制御手段としてのコントローラ
15 排ガスフィルタ
16 堆積量検出手段としての差圧センサ
17 温度検出手段としての温度センサ
18 再生ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、このエンジンを動力源として発電作用を行う発電機と、この発電機からの電力によって駆動される電動作業装置と、上記エンジンから出た排ガス中の粒子状物質を除去する排ガスフィルタと、この排ガスフィルタを加熱して再生作用を助ける電気式の再生ヒータと、上記発電機から電動作業装置及び再生ヒータに対する電力の供給を制御する制御手段とを備え、この制御手段は、上記電動作業装置への電力供給が停止しているときに、上記発電機からの電力を上記再生ヒータに供給するように構成されたことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
上記電動作業装置として、上記発電機からの電力により励磁されて吸着作用を行うリフティングマグネットを備え、このリフティングマグネットの電源となる上記発電機を油圧モータで常時駆動し、この油圧モータの油圧源となる油圧ポンプを上記エンジンによって駆動するように構成されたことを特徴とする請求項1記載の作業機械。
【請求項3】
上記排ガスフィルタへの粒子状物質の堆積量を検出する堆積量検出手段が設けられ、上記制御手段は、上記堆積量が設定値以上であることを条件として上記再生ヒータへの電力供給を行うように構成されたことを特徴とする請求項1または2記載の作業機械。
【請求項4】
上記排ガスフィルタまたはその周辺の温度であるフィルタ温度を検出する温度検出手段が設けられ、上記制御手段は、フィルタ温度が設定値以下であることを条件として上記再生ヒータへの電力供給を行うように構成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−136784(P2011−136784A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297236(P2009−297236)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】