作業機
【課題】合理的な冷却により無段変速装置の油温の上昇を抑制する作業機を構成する。
【解決手段】エンジンの出力軸に備えた出力プーリと、無段変速装置8の入力軸8Aに備えた入力プーリ46とに亘って無端ベルト47が巻回され、外気を吸引して無段変速装置8に供給する冷却ファン51が入力軸8Aに備えられている。この冷却ファン51の外周部から遠心方向に流れる風を無段変速装置8の方向に送る案内手段Gとして導風板52を備えた。
【解決手段】エンジンの出力軸に備えた出力プーリと、無段変速装置8の入力軸8Aに備えた入力プーリ46とに亘って無端ベルト47が巻回され、外気を吸引して無段変速装置8に供給する冷却ファン51が入力軸8Aに備えられている。この冷却ファン51の外周部から遠心方向に流れる風を無段変速装置8の方向に送る案内手段Gとして導風板52を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの出力軸に備えた出力プーリと、静油圧式の無段変速装置の入力軸に備えた入力プーリとに亘って無端ベルトを巻回した伝動機構を備え、前記入力軸と一体回転する冷却ファンを備えている作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された作業機として特許文献1には、走行機体の前部位置にエンジンを備え、この後部位置にミッションケースを備え、このミッションケースの側部に静油圧式の無段変速装置を連結した田植機が示されている。この特許文献1ではエンジンの出力軸のプーリ(出力プーリー)と、無段変速装置の入力軸のプーリ(入力プーリー)とに亘って無端ベルト(伝動ベルト)を巻回したベルト式伝動機構を備えており、入力軸に冷却ファンが備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008‐87489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静油圧式の無段変速装置は、入力軸からの駆動力が伝えられる可変容量型の油圧ポンプからの作動油を油圧モータに供給する油圧回路を有し、油圧ポンプでの作動油の油量の調節により無段階の変速を実現する。このような構成から、作動油の油温が上昇しやすく放熱を行う必要性から特許文献1に示されるように冷却ファンから冷却風を供給するように構成されている。
【0005】
静油圧式の無段変速装置は、油温が上昇しやすいものであるため、良好に冷却を行うことも望まれ、大型のファンを備えることも考えられるが作業機の構成からファンのサイズにも限界があり、油温上昇を招くこともあった。
【0006】
また、無段変速装置の油温上昇を抑制するため、オイルクーラを別途備えることや、外部にオイルタンクを備え油量を増大させることも考えるが、これらの構成は、大型化を伴うだけではなく部品点数が増大しコストの上昇を招来する点で改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、簡単な改良により無段変速装置の油温の上昇を抑制する作業機を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、エンジンの出力軸に備えた出力プーリと、静油圧式の無段変速装置の入力軸に備えた入力プーリとに亘って無端ベルトを巻回した伝動機構を備え、前記入力軸と一体回転する冷却ファンを備えている作業機であって、
外側の空気を吸引して前記無段変速装置に供給するように前記冷却ファンによる冷却風の流れが設定され、この冷却ファンの外周の外側部に、前記冷却ファンの外周部から、この冷却ファンの駆動軸芯と直交する遠心方向に流れる風を前記無段変速装置の方向に送る案内手段を備えている点にある。
【0009】
冷却ファンの回転における冷却風の流れを考えると、冷却風の多くは回転軸芯に平行な方向に流れるものであるが、冷却ファンの外周部分では、冷却ファンの回転に伴い冷却ファンの外周部分から風が外方(遠心方向)に流れ、このように外方に流れる冷却風は無段変速装置の冷却には寄与していない。このように冷却ファンの外周部分から外方(遠心方向)に風が流れる現象は、回転軸芯に沿って冷却風が送り出される際に、この冷却風からの圧力が冷却ファンの外周側に作用することや、この冷却ファンの回転に伴って遠心力が作用することに起因すると捉えることも可能である。
従って、本発明のように冷却ファンの外周から遠心方向に流れる風を無段変速装置の方向に案内する案内手段を備えることより、回転軸芯に平行な方向に流れる冷却風に加えて、冷却ファンから外方に無駄に流れていた冷却風を積極的に無段変速装置に供給することが可能となり、オイルクーラやオイルタンクを別途備えずとも無段変速装置の冷却を行える。
このように、簡単な改良により無段変速装置の油温の上昇を良好に抑制する作業機が合理的に構成された。
【0010】
本発明は、前記案内手段が、前記遠心方向に流れる風の流動方向を前記無段変速装置の方向に変更する導風板で構成されても良い。
【0011】
これによると、板状の部材を付加するだけで冷却ファンの外周から遠心方向に流れ出す風を導風板で無段変速装置に供給して冷却が実現する。
【0012】
本発明は、前記導風板が、前記冷却ファンの側部位置に配置されると共に、その下端部が、前車輪の車軸を内装する前車軸ケースに支持されても良い。
【0013】
これによると、導風板の下端が前車軸ケースに支持されることにより、車軸ケースを利用して導風板を決まった姿勢に維持して安定的な導風を実現する。
【0014】
本発明は、前記案内手段が、前記遠心方向に流れる風を前記無段変速装置の方向に送るように前記無段変速装置の駆動力で駆動される補助冷却ファンで構成しても良い。
【0015】
これによると、冷却ファンの外周から遠心方向に流れる風を補助冷却ファンが無段変速装置に送ることになるので、この補助冷却ファンに大型のものを用いずとも、冷却ファンからの風を利用することになり効率的な冷却が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】田植機の全体側面図である。
【図2】田植機前部の縦断側面図である。
【図3】田植機前部の構成を示す平面図である。
【図4】エンジンボンネット部分の縦断正面図である。
【図5】田植機のエンジンボンネット部分の正面図である。
【図6】田植機のエンジンボンネット部分の側面図である。
【図7】田植機のエンジンボンネット部分の後面図である。
【図8】導風板の支持構成の分解斜視図である。
【図9】冷却ファンと導風板との位置関係を示す平面図である。
【図10】冷却ファンと導風板との位置関係を示す側面図である。
【図11】別実施形態(a)の案内手段の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔田植機の全体構成〕
図1に示すように、左右一対の前車輪1と左右一対の後車輪2とを備えた走行機体Aの中央部に運転座席3を備えると共に、走行機体Aの後端に油圧シリンダ4の作動により昇降作動するリンク機構Lを介して昇降自在に苗植付装置Bを備えて作業機としての乗用型の田植機が構成されている。
【0018】
この田植機では図1〜図3に示すように、走行機体Aの前部位置にエンジン5(ディーゼルエンジン)が配置され、その後部位置にミッションケース6と後車軸ケース7とが配置され、このミッションケース6の側部位置に静油圧式の無段変速装置8が備えられている。エンジン5の駆動力はベルト式伝動機構Dにより無段変速装置8に伝えられ、この無段変速装置8で変速された駆動力はミッションケース6に伝えられ、更に、ミッションケース6の駆動力は中間伝動軸9によって後車軸ケース7に伝えられる。そして、ミッションケース6の駆動力で左右の前車輪1を駆動する伝動構造と、後車軸ケース7の駆動力で左右の後車輪2を駆動する伝動構造とが備えられ、この田植機は4輪駆動型に構成されている。
【0019】
苗植付装置Bは、複数の整地フロート11と、マット状苗を載置する苗載台12と、苗載台12に載置されたマット状苗から苗を切り出して圃場面に植え付けるロータリ式の植付機構13とを備えている。そして、苗植付け作業時には、走行機体Aの走行に伴い複数の整地フロート11が苗植え付け箇所の泥面を整地する一方で、外部出力軸14から伝えられる駆動力により、苗載台12を左右方向に一定ストロークで往復作動させ、この往復作動時に苗載台12のマット状苗の下端からロータリ式の植付機構13が苗を所定量ずつ切り出して圃場に植え付ける植え付け作動が行われる。
【0020】
図1〜図7に示すように、運転座席3の前方位置にステアリングホイール21が配置され、運転座席3の下側位置に搭乗ステップ22が形成されている。ステアリングホイール21の左側部位置に主変速レバー23が配置され、運転座席3の左側部に副変速レバー24が配置されている。図面には示していないが運転座席3の右側部には苗植付装置Bの昇降制御と、苗植付装置Bに対する動力の制御とを行う作業レバーが配置されている。尚、主変速レバー23は無段変速装置8を変速操作し、副変速レバー24はミッションケース6に内蔵されたギヤ式の変速装置を変速操作する。
【0021】
走行機体Aの前部には、エンジン5を収容するエンジンボンネット25が備えられ、このエンジンボンネット25の両側部には機体前方位置からの乗降を可能にする乗降ステップ26が形成されている。エンジンボンネット25の前端中央位置はセンターマスコット27が設けられ、このエンジンボンネット25の前部の左右位置には前照灯28が設けられ、エンジンボンネット25の後部にステアリングホイール21が設けられている。エンジンボンネット25の上面と、後面とに多数の吸気口25Aが形成され、エンジンボンネット25の側面と前面とには多数の排出口25Bが形成されている。特に、エンジンボンネット25の後面には、その左右中央部上下に亘って多数の吸気口25Aが形成され、その左右両側部の下部には複数の吸気口25Aが形成されている。また、エンジンボンネット25の左右の側面には、その略全域に亘って多数の排出口25Bが形成されている。また、左右の前照灯28の間に設けられた排出口25Bは上下に並んだ状態で前後向きの導風経路を形成する状態で設けられている。
【0022】
これらの吸気口25A及び排出口25Bの形状はスリット状に限るものではなく、例えば、円形や方形のものを規則的に配置することや、形や大きさが異なるものを組み合わせる等、形状やサイズは任意に設定できる。具体的には、エンジンボンネット25の上面に横長のスリット状態に形成されている吸気口25Aに代えて複数の孔状の吸気口25Aを形成して良く、エンジンボンネット25の後面に形成される略同じ形状となるスリット状の多数の吸気口25Aに代えて多数の孔状のものを用いることや比較的大きいサイズの吸気口25Aに網状体を張設したものでも良い。これと同様に排出口25Bとして前照灯28の下部に配置されている角孔状の排出口25Bに代えて多数の孔状となる排出口25Bを形成することや、縦長や横長となる多数のスリット状の排出口25Bを形成しても良い。更に、エンジンボンネット25の側面に形成される多数の排出口25Bのサイズを、エンジンボンネット25の上方位置ほど単位面積当たりの開口面積が大きくなるように、複数の排出口25Bの夫々の開口面積を異なる値に設定することや、エンジンボンネット25の上方位置ほど排出口25Bの数を増大させる等、エンジンボンネット25の位置と、単位面積当たりの開口面積とを任意に設定させるように構成しても良い。
【0023】
エンジン5に吸気空気を供給するエアークリーナ31がエンジンボンネット25の内部に備えられ、一方の乗降ステップ26の下側にエンジン排気が送られるマフラー32が備えられている。エンジンボンネット25の内部でエンジン5の後方位置には、電動型のファンモータ33Mで駆動されるラジエータファン33と、このラジエータファン33から冷却風が供給されるラジエータ34が備えられている。
【0024】
ラジエータ34の下端は、エンジン5を支持する前部フレーム41に支持され、このラジエータ34の外周とエンジンボンネット25との間にはスポンジ等の充填材35が備えられている。このラジエータ34では、ラジエータファン33に大型のものを用いることにより前後方向視において、ラジエータ34のラジエータコアが配置される面積に対して、ラジエータファン33の送風面積をできるだけ大きくして、冷却効率の向上が図られている。
【0025】
図2、図3において矢印で示すように、複数の吸気口25Aから吸引した冷却風を、ラジエータ34の後面側から前面側に供給すると共に、ラジエータ34を通過した冷却風をエンジン5に接触させて左右に分かれる状態で、このエンジン5の側部を通過させ、主としてエンジンボンネット25の両側部の複数の排出口25Bからエンジンボンネット外に送り出すようにエンジン5の冷却系が構成されている。
【0026】
このように冷却系が構成されることにより、冷却風は主に乗降ステップ26より上側の排出口25Bから排出されることになり、例えば、冷却風をエンジン5の下側に送り出す構成と比較すると、泥面がエンジン5の下側に近傍に達する作業状態でも、泥面に冷却風が阻害されることなく排出して良好な冷却状態を現出する。
【0027】
この田植機では、エアークリーナ31の吸気管31Aの端部がラジエータ34より後方側に配置され、吸気空気をラジエータ34より後方の空間から吸引するように構成されている。
【0028】
図2及び図3に示すように、前部フレーム41に対して防振ゴム42を介してエンジン5が支持されている。この前部フレーム41の後端はミッションケース6に連結し、このミッションケース6の後部位置に左右一対の主フレーム43の前端が連結し、この主フレーム43の後端位置に後車軸ケース7を支持している。前記エンジン5は、出力軸5Aを横向き姿勢にして支持され、この出力軸5Aには出力プーリ45が備えらえている。
【0029】
〔無段変速装置〕
図2、図3、図9、図10に示すように無段変速装置8には、入力軸8Aからの駆動力が伝えられる可変容量型の油圧ポンプ8Pと、この油圧ポンプ8Pからの供給される作動油により回転し、この回転駆動力をミッションケース6に伝える油圧モータ8Mとが内蔵されている。この無段変速装置8の外壁面には放熱用の多数のフィンが形成され、外壁面の上面には油圧ポンプ8Pの作動油の吐出量の調整が可能なトラニオン軸8Tが上方に突設されている。このトラニオン軸8Tと前述した主変速レバー23とが機械的に連係(図示せず)し、主変速レバー23の操作により前進方向と後進方向とにおける走行速度を無段階に設定できるように構成されている。
【0030】
入力軸8Aは、横向き姿勢に設定され、この入力軸8Aに入力プーリ46が備えられ、この入力プーリ46と前述した出力プーリ45とに亘って無端ベルト47を巻回している。前部フレーム41に揺動自在に支持されるテンションアーム48の揺動端にテンションプーリ49が支持され、この無端ベルト47に張力を作用させるように、テンションプーリ49が無端ベルト47に圧接している。この出力プーリ45と、入力プーリ46と、無端ベルト47と、テンションプーリ49とでベルト式伝動機構Dが構成されている。
【0031】
また、ミッションケース6の駆動力を左右の前車輪1に伝えるように、ミッションケース6の両側面には前車軸ケース6Aが備えられている。
【0032】
図2及び図3に示すように、無段変速装置8の入力軸8Aのうち、入力プーリ46とケースとに挟まれる位置に、外方の空気を吸引して冷却風として無段変速装置8に供給する冷却ファン51が備えられている。この冷却ファン51は入力軸8Aと一体回転するものであれば良く、入力軸8Aに対して直接的に連結されるものでも、入力プーリ46に連結されるものでも良い。また、この冷却ファン51は入力プーリ46より外端側(無段変速装置8と反対側の端部)に備えられても良い。
【0033】
この冷却ファン51は、図8〜図11に示すように、回転により外側から冷却風を吸引して無段変速装置8に供給して無段変速装置8を冷却すると共に、この無段変速装置8の部位を通過した冷却風をミッションケース6に供給してミッションケース6を冷却するように機能する。この冷却ファン51は、入力軸8Aの軸芯方向にだけ冷却風を送るものではなく、外周部から遠心方向に流れる風も作り出すものであり、この田植機では、冷却ファン51から遠心方向に流れる風を無段変速装置8の油圧モータ8Mの方向に主に変更する案内手段Gとして、導風板52が備えられている。この導風板52は、平面視で無段変速装置8の後部外面形状に沿って斜めに傾斜した斜め姿勢で、かつ、側面視で、その前端が冷却ファン51の後部の外周形状に沿う姿勢で、冷却ファン51の直後方箇所に配備されている。
【0034】
前車軸ケース6Aの下面側に回り込む形状の連結部材54と、前車軸ケース6Aの上面に連結される支持プレート55とがボルト56により連結されている。支持プレート55は、前車軸ケース6Aに当接する連結部55Aと、連結部55Aよりも内側で、一段高い配置高さで配置された平面視で三角形状の載置支持部55Bとを備えて構成されている。また、搭乗ステップ22の下面側を支持するステップフレーム22Aに対してブラケット57が支持されている。導風板52は、上下方向の中間部が機体外方後方に膨れるように湾曲した形状をした板状であり、冷却ファン51から遠心方向(入力軸8Aの回転軸芯に直交する方向)に送り出される風を無段変速装置8の方向に案内するように前端側を冷却ファン51の外周に近接させ、後端側を無段変速装置8のケースの外面に接近させるように、平面視で走行機体Aの前後方向に対して略45度となる斜め姿勢で支持プレート55に対して下端が載置支持され、ブラケット57に対して上端が連結されている。
【0035】
導風板52は以下の手順で支持されている。つまり、導風板52の上部にブラケット57を溶接等によって連結し、この導風板52の下端を支持プレート55に溶接等によって固定しておき、このブラケット57の基端を連結ピン57Aにより左右軸芯周りでステップフレーム22Aに揺動自在に支持する。次に、連結部55Aをボルト56によって連結部材54によって前車軸ケース6Aに連結する。このような支持形態を採用することによりボルト56によって支持プレート55を前車軸ケース6Aに支持する際に導風板52が吊り下がる形態となるためセットが容易であり、導風板52の姿勢を決めるための操作の手間を軽減できる。特に、導風板52と支持プレート55とは必ずしも連結固定する必要はなく、例えば、支持プレート55の上面(連結部55Aの上面)に対して導風板52の下端が嵌り込む凹部や孔部等を形成しておき、これらに導風板52の下端を嵌め込む構成を採用して良い。また、支持プレート55を前車軸ケース6Aに連結した後に、導風板52の下端部を支持プレート55の上面(連結部55Aの上面)に連結できるように導風板52の下端にフランジを形成し、このフランジと連結部55Aとをボルト等で連結できる構成を採用しても良い。更に、連結ピン57Aを挿抜自在に構成することや、この連結ピン57を連結用のボルト等で構成することにより、導風板52を支持プレート55に支持した後に、その上端を搭乗ステップ22の下面側に支持する構成を採用しても良い。このように導風板52の下端側と上端側との支持形態は任意に設定できる。
【0036】
これにより、エンジン5の駆動力がベルト式伝動機構Dにより無段変速装置8に伝えられ、冷却ファン51が駆動される際には、無段変速装置8の入力軸8Aの軸芯に沿う方向に冷却ファン51の冷却風が無段変速装置8に供給されると共に、この冷却ファン51の外周部から遠心方向に送り出される空気を導風板52が無段変速装置8の方向に供給する。従って、冷却ファン51の外周部から遠心方向に流れ出し、無段変速装置8の冷却に機能しない風を冷却風として無段変速装置8に供給できるので、大型のファンを用いることなく、無段変速装置8の油温上昇を抑制でき、この無段変速装置8だけではなく、ミッションケース6の温度上方も抑制する。
【0037】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、前記実施の形態と共通の番号、符号を付している)。
【0038】
(a)図11に示すように、案内手段Gとして、無段変速装置8の油圧モータ8Mの出力軸8Dを無段変速装置8の外壁面から側方に突出させ、この出力軸8Dに対し、案内手段Gとして補助冷却ファン61を備えている。この補助冷却ファン61は、回転によって冷却風を無段変速装置8に供給するように冷却風の供給方向を設定してあり、冷却ファン51の外周部から遠心方向に流れる風を補助冷却ファン61が吸引して無段変速装置8の方向に案内するように機能する。これにより、冷却ファン51の外周部から遠心方向に流れ出す風を冷却風として無段変速装置8に積極的に供給すると共に、ミッションケース6に対しても積極的に供給して冷却を行えることになる。
【0039】
(b)案内手段Gとして、導風板52と、前述した補助冷却ファン61とを組み合わせる。このように組み合わせることにより、冷却ファン51の外周部から遠心方向に流れる風を効率的に取り込んで冷却風として無段変速装置8にたいして効率的に供給することが可能となる。
【0040】
(c)導風板52は、冷却ファン51の外周部のうち、上方側や下方側から流れ出す風を無段変速装置8の方向に案内するように、冷却ファン51の上方や下方に配置しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、静油圧式の無段変速装置を備えた作業機全般に利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 前車輪
5 エンジン
5A 出力軸
6A 前車軸ケース
8 無段変速装置
8A 入力軸
45 出力プーリ
46 入力プーリ
47 無端ベルト
51 冷却ファン
52 導風板
61 補助冷却ファン
D 伝動機構(ベルト式伝動機構)
G 案内手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの出力軸に備えた出力プーリと、静油圧式の無段変速装置の入力軸に備えた入力プーリとに亘って無端ベルトを巻回した伝動機構を備え、前記入力軸と一体回転する冷却ファンを備えている作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された作業機として特許文献1には、走行機体の前部位置にエンジンを備え、この後部位置にミッションケースを備え、このミッションケースの側部に静油圧式の無段変速装置を連結した田植機が示されている。この特許文献1ではエンジンの出力軸のプーリ(出力プーリー)と、無段変速装置の入力軸のプーリ(入力プーリー)とに亘って無端ベルト(伝動ベルト)を巻回したベルト式伝動機構を備えており、入力軸に冷却ファンが備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008‐87489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静油圧式の無段変速装置は、入力軸からの駆動力が伝えられる可変容量型の油圧ポンプからの作動油を油圧モータに供給する油圧回路を有し、油圧ポンプでの作動油の油量の調節により無段階の変速を実現する。このような構成から、作動油の油温が上昇しやすく放熱を行う必要性から特許文献1に示されるように冷却ファンから冷却風を供給するように構成されている。
【0005】
静油圧式の無段変速装置は、油温が上昇しやすいものであるため、良好に冷却を行うことも望まれ、大型のファンを備えることも考えられるが作業機の構成からファンのサイズにも限界があり、油温上昇を招くこともあった。
【0006】
また、無段変速装置の油温上昇を抑制するため、オイルクーラを別途備えることや、外部にオイルタンクを備え油量を増大させることも考えるが、これらの構成は、大型化を伴うだけではなく部品点数が増大しコストの上昇を招来する点で改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、簡単な改良により無段変速装置の油温の上昇を抑制する作業機を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、エンジンの出力軸に備えた出力プーリと、静油圧式の無段変速装置の入力軸に備えた入力プーリとに亘って無端ベルトを巻回した伝動機構を備え、前記入力軸と一体回転する冷却ファンを備えている作業機であって、
外側の空気を吸引して前記無段変速装置に供給するように前記冷却ファンによる冷却風の流れが設定され、この冷却ファンの外周の外側部に、前記冷却ファンの外周部から、この冷却ファンの駆動軸芯と直交する遠心方向に流れる風を前記無段変速装置の方向に送る案内手段を備えている点にある。
【0009】
冷却ファンの回転における冷却風の流れを考えると、冷却風の多くは回転軸芯に平行な方向に流れるものであるが、冷却ファンの外周部分では、冷却ファンの回転に伴い冷却ファンの外周部分から風が外方(遠心方向)に流れ、このように外方に流れる冷却風は無段変速装置の冷却には寄与していない。このように冷却ファンの外周部分から外方(遠心方向)に風が流れる現象は、回転軸芯に沿って冷却風が送り出される際に、この冷却風からの圧力が冷却ファンの外周側に作用することや、この冷却ファンの回転に伴って遠心力が作用することに起因すると捉えることも可能である。
従って、本発明のように冷却ファンの外周から遠心方向に流れる風を無段変速装置の方向に案内する案内手段を備えることより、回転軸芯に平行な方向に流れる冷却風に加えて、冷却ファンから外方に無駄に流れていた冷却風を積極的に無段変速装置に供給することが可能となり、オイルクーラやオイルタンクを別途備えずとも無段変速装置の冷却を行える。
このように、簡単な改良により無段変速装置の油温の上昇を良好に抑制する作業機が合理的に構成された。
【0010】
本発明は、前記案内手段が、前記遠心方向に流れる風の流動方向を前記無段変速装置の方向に変更する導風板で構成されても良い。
【0011】
これによると、板状の部材を付加するだけで冷却ファンの外周から遠心方向に流れ出す風を導風板で無段変速装置に供給して冷却が実現する。
【0012】
本発明は、前記導風板が、前記冷却ファンの側部位置に配置されると共に、その下端部が、前車輪の車軸を内装する前車軸ケースに支持されても良い。
【0013】
これによると、導風板の下端が前車軸ケースに支持されることにより、車軸ケースを利用して導風板を決まった姿勢に維持して安定的な導風を実現する。
【0014】
本発明は、前記案内手段が、前記遠心方向に流れる風を前記無段変速装置の方向に送るように前記無段変速装置の駆動力で駆動される補助冷却ファンで構成しても良い。
【0015】
これによると、冷却ファンの外周から遠心方向に流れる風を補助冷却ファンが無段変速装置に送ることになるので、この補助冷却ファンに大型のものを用いずとも、冷却ファンからの風を利用することになり効率的な冷却が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】田植機の全体側面図である。
【図2】田植機前部の縦断側面図である。
【図3】田植機前部の構成を示す平面図である。
【図4】エンジンボンネット部分の縦断正面図である。
【図5】田植機のエンジンボンネット部分の正面図である。
【図6】田植機のエンジンボンネット部分の側面図である。
【図7】田植機のエンジンボンネット部分の後面図である。
【図8】導風板の支持構成の分解斜視図である。
【図9】冷却ファンと導風板との位置関係を示す平面図である。
【図10】冷却ファンと導風板との位置関係を示す側面図である。
【図11】別実施形態(a)の案内手段の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔田植機の全体構成〕
図1に示すように、左右一対の前車輪1と左右一対の後車輪2とを備えた走行機体Aの中央部に運転座席3を備えると共に、走行機体Aの後端に油圧シリンダ4の作動により昇降作動するリンク機構Lを介して昇降自在に苗植付装置Bを備えて作業機としての乗用型の田植機が構成されている。
【0018】
この田植機では図1〜図3に示すように、走行機体Aの前部位置にエンジン5(ディーゼルエンジン)が配置され、その後部位置にミッションケース6と後車軸ケース7とが配置され、このミッションケース6の側部位置に静油圧式の無段変速装置8が備えられている。エンジン5の駆動力はベルト式伝動機構Dにより無段変速装置8に伝えられ、この無段変速装置8で変速された駆動力はミッションケース6に伝えられ、更に、ミッションケース6の駆動力は中間伝動軸9によって後車軸ケース7に伝えられる。そして、ミッションケース6の駆動力で左右の前車輪1を駆動する伝動構造と、後車軸ケース7の駆動力で左右の後車輪2を駆動する伝動構造とが備えられ、この田植機は4輪駆動型に構成されている。
【0019】
苗植付装置Bは、複数の整地フロート11と、マット状苗を載置する苗載台12と、苗載台12に載置されたマット状苗から苗を切り出して圃場面に植え付けるロータリ式の植付機構13とを備えている。そして、苗植付け作業時には、走行機体Aの走行に伴い複数の整地フロート11が苗植え付け箇所の泥面を整地する一方で、外部出力軸14から伝えられる駆動力により、苗載台12を左右方向に一定ストロークで往復作動させ、この往復作動時に苗載台12のマット状苗の下端からロータリ式の植付機構13が苗を所定量ずつ切り出して圃場に植え付ける植え付け作動が行われる。
【0020】
図1〜図7に示すように、運転座席3の前方位置にステアリングホイール21が配置され、運転座席3の下側位置に搭乗ステップ22が形成されている。ステアリングホイール21の左側部位置に主変速レバー23が配置され、運転座席3の左側部に副変速レバー24が配置されている。図面には示していないが運転座席3の右側部には苗植付装置Bの昇降制御と、苗植付装置Bに対する動力の制御とを行う作業レバーが配置されている。尚、主変速レバー23は無段変速装置8を変速操作し、副変速レバー24はミッションケース6に内蔵されたギヤ式の変速装置を変速操作する。
【0021】
走行機体Aの前部には、エンジン5を収容するエンジンボンネット25が備えられ、このエンジンボンネット25の両側部には機体前方位置からの乗降を可能にする乗降ステップ26が形成されている。エンジンボンネット25の前端中央位置はセンターマスコット27が設けられ、このエンジンボンネット25の前部の左右位置には前照灯28が設けられ、エンジンボンネット25の後部にステアリングホイール21が設けられている。エンジンボンネット25の上面と、後面とに多数の吸気口25Aが形成され、エンジンボンネット25の側面と前面とには多数の排出口25Bが形成されている。特に、エンジンボンネット25の後面には、その左右中央部上下に亘って多数の吸気口25Aが形成され、その左右両側部の下部には複数の吸気口25Aが形成されている。また、エンジンボンネット25の左右の側面には、その略全域に亘って多数の排出口25Bが形成されている。また、左右の前照灯28の間に設けられた排出口25Bは上下に並んだ状態で前後向きの導風経路を形成する状態で設けられている。
【0022】
これらの吸気口25A及び排出口25Bの形状はスリット状に限るものではなく、例えば、円形や方形のものを規則的に配置することや、形や大きさが異なるものを組み合わせる等、形状やサイズは任意に設定できる。具体的には、エンジンボンネット25の上面に横長のスリット状態に形成されている吸気口25Aに代えて複数の孔状の吸気口25Aを形成して良く、エンジンボンネット25の後面に形成される略同じ形状となるスリット状の多数の吸気口25Aに代えて多数の孔状のものを用いることや比較的大きいサイズの吸気口25Aに網状体を張設したものでも良い。これと同様に排出口25Bとして前照灯28の下部に配置されている角孔状の排出口25Bに代えて多数の孔状となる排出口25Bを形成することや、縦長や横長となる多数のスリット状の排出口25Bを形成しても良い。更に、エンジンボンネット25の側面に形成される多数の排出口25Bのサイズを、エンジンボンネット25の上方位置ほど単位面積当たりの開口面積が大きくなるように、複数の排出口25Bの夫々の開口面積を異なる値に設定することや、エンジンボンネット25の上方位置ほど排出口25Bの数を増大させる等、エンジンボンネット25の位置と、単位面積当たりの開口面積とを任意に設定させるように構成しても良い。
【0023】
エンジン5に吸気空気を供給するエアークリーナ31がエンジンボンネット25の内部に備えられ、一方の乗降ステップ26の下側にエンジン排気が送られるマフラー32が備えられている。エンジンボンネット25の内部でエンジン5の後方位置には、電動型のファンモータ33Mで駆動されるラジエータファン33と、このラジエータファン33から冷却風が供給されるラジエータ34が備えられている。
【0024】
ラジエータ34の下端は、エンジン5を支持する前部フレーム41に支持され、このラジエータ34の外周とエンジンボンネット25との間にはスポンジ等の充填材35が備えられている。このラジエータ34では、ラジエータファン33に大型のものを用いることにより前後方向視において、ラジエータ34のラジエータコアが配置される面積に対して、ラジエータファン33の送風面積をできるだけ大きくして、冷却効率の向上が図られている。
【0025】
図2、図3において矢印で示すように、複数の吸気口25Aから吸引した冷却風を、ラジエータ34の後面側から前面側に供給すると共に、ラジエータ34を通過した冷却風をエンジン5に接触させて左右に分かれる状態で、このエンジン5の側部を通過させ、主としてエンジンボンネット25の両側部の複数の排出口25Bからエンジンボンネット外に送り出すようにエンジン5の冷却系が構成されている。
【0026】
このように冷却系が構成されることにより、冷却風は主に乗降ステップ26より上側の排出口25Bから排出されることになり、例えば、冷却風をエンジン5の下側に送り出す構成と比較すると、泥面がエンジン5の下側に近傍に達する作業状態でも、泥面に冷却風が阻害されることなく排出して良好な冷却状態を現出する。
【0027】
この田植機では、エアークリーナ31の吸気管31Aの端部がラジエータ34より後方側に配置され、吸気空気をラジエータ34より後方の空間から吸引するように構成されている。
【0028】
図2及び図3に示すように、前部フレーム41に対して防振ゴム42を介してエンジン5が支持されている。この前部フレーム41の後端はミッションケース6に連結し、このミッションケース6の後部位置に左右一対の主フレーム43の前端が連結し、この主フレーム43の後端位置に後車軸ケース7を支持している。前記エンジン5は、出力軸5Aを横向き姿勢にして支持され、この出力軸5Aには出力プーリ45が備えらえている。
【0029】
〔無段変速装置〕
図2、図3、図9、図10に示すように無段変速装置8には、入力軸8Aからの駆動力が伝えられる可変容量型の油圧ポンプ8Pと、この油圧ポンプ8Pからの供給される作動油により回転し、この回転駆動力をミッションケース6に伝える油圧モータ8Mとが内蔵されている。この無段変速装置8の外壁面には放熱用の多数のフィンが形成され、外壁面の上面には油圧ポンプ8Pの作動油の吐出量の調整が可能なトラニオン軸8Tが上方に突設されている。このトラニオン軸8Tと前述した主変速レバー23とが機械的に連係(図示せず)し、主変速レバー23の操作により前進方向と後進方向とにおける走行速度を無段階に設定できるように構成されている。
【0030】
入力軸8Aは、横向き姿勢に設定され、この入力軸8Aに入力プーリ46が備えられ、この入力プーリ46と前述した出力プーリ45とに亘って無端ベルト47を巻回している。前部フレーム41に揺動自在に支持されるテンションアーム48の揺動端にテンションプーリ49が支持され、この無端ベルト47に張力を作用させるように、テンションプーリ49が無端ベルト47に圧接している。この出力プーリ45と、入力プーリ46と、無端ベルト47と、テンションプーリ49とでベルト式伝動機構Dが構成されている。
【0031】
また、ミッションケース6の駆動力を左右の前車輪1に伝えるように、ミッションケース6の両側面には前車軸ケース6Aが備えられている。
【0032】
図2及び図3に示すように、無段変速装置8の入力軸8Aのうち、入力プーリ46とケースとに挟まれる位置に、外方の空気を吸引して冷却風として無段変速装置8に供給する冷却ファン51が備えられている。この冷却ファン51は入力軸8Aと一体回転するものであれば良く、入力軸8Aに対して直接的に連結されるものでも、入力プーリ46に連結されるものでも良い。また、この冷却ファン51は入力プーリ46より外端側(無段変速装置8と反対側の端部)に備えられても良い。
【0033】
この冷却ファン51は、図8〜図11に示すように、回転により外側から冷却風を吸引して無段変速装置8に供給して無段変速装置8を冷却すると共に、この無段変速装置8の部位を通過した冷却風をミッションケース6に供給してミッションケース6を冷却するように機能する。この冷却ファン51は、入力軸8Aの軸芯方向にだけ冷却風を送るものではなく、外周部から遠心方向に流れる風も作り出すものであり、この田植機では、冷却ファン51から遠心方向に流れる風を無段変速装置8の油圧モータ8Mの方向に主に変更する案内手段Gとして、導風板52が備えられている。この導風板52は、平面視で無段変速装置8の後部外面形状に沿って斜めに傾斜した斜め姿勢で、かつ、側面視で、その前端が冷却ファン51の後部の外周形状に沿う姿勢で、冷却ファン51の直後方箇所に配備されている。
【0034】
前車軸ケース6Aの下面側に回り込む形状の連結部材54と、前車軸ケース6Aの上面に連結される支持プレート55とがボルト56により連結されている。支持プレート55は、前車軸ケース6Aに当接する連結部55Aと、連結部55Aよりも内側で、一段高い配置高さで配置された平面視で三角形状の載置支持部55Bとを備えて構成されている。また、搭乗ステップ22の下面側を支持するステップフレーム22Aに対してブラケット57が支持されている。導風板52は、上下方向の中間部が機体外方後方に膨れるように湾曲した形状をした板状であり、冷却ファン51から遠心方向(入力軸8Aの回転軸芯に直交する方向)に送り出される風を無段変速装置8の方向に案内するように前端側を冷却ファン51の外周に近接させ、後端側を無段変速装置8のケースの外面に接近させるように、平面視で走行機体Aの前後方向に対して略45度となる斜め姿勢で支持プレート55に対して下端が載置支持され、ブラケット57に対して上端が連結されている。
【0035】
導風板52は以下の手順で支持されている。つまり、導風板52の上部にブラケット57を溶接等によって連結し、この導風板52の下端を支持プレート55に溶接等によって固定しておき、このブラケット57の基端を連結ピン57Aにより左右軸芯周りでステップフレーム22Aに揺動自在に支持する。次に、連結部55Aをボルト56によって連結部材54によって前車軸ケース6Aに連結する。このような支持形態を採用することによりボルト56によって支持プレート55を前車軸ケース6Aに支持する際に導風板52が吊り下がる形態となるためセットが容易であり、導風板52の姿勢を決めるための操作の手間を軽減できる。特に、導風板52と支持プレート55とは必ずしも連結固定する必要はなく、例えば、支持プレート55の上面(連結部55Aの上面)に対して導風板52の下端が嵌り込む凹部や孔部等を形成しておき、これらに導風板52の下端を嵌め込む構成を採用して良い。また、支持プレート55を前車軸ケース6Aに連結した後に、導風板52の下端部を支持プレート55の上面(連結部55Aの上面)に連結できるように導風板52の下端にフランジを形成し、このフランジと連結部55Aとをボルト等で連結できる構成を採用しても良い。更に、連結ピン57Aを挿抜自在に構成することや、この連結ピン57を連結用のボルト等で構成することにより、導風板52を支持プレート55に支持した後に、その上端を搭乗ステップ22の下面側に支持する構成を採用しても良い。このように導風板52の下端側と上端側との支持形態は任意に設定できる。
【0036】
これにより、エンジン5の駆動力がベルト式伝動機構Dにより無段変速装置8に伝えられ、冷却ファン51が駆動される際には、無段変速装置8の入力軸8Aの軸芯に沿う方向に冷却ファン51の冷却風が無段変速装置8に供給されると共に、この冷却ファン51の外周部から遠心方向に送り出される空気を導風板52が無段変速装置8の方向に供給する。従って、冷却ファン51の外周部から遠心方向に流れ出し、無段変速装置8の冷却に機能しない風を冷却風として無段変速装置8に供給できるので、大型のファンを用いることなく、無段変速装置8の油温上昇を抑制でき、この無段変速装置8だけではなく、ミッションケース6の温度上方も抑制する。
【0037】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、前記実施の形態と共通の番号、符号を付している)。
【0038】
(a)図11に示すように、案内手段Gとして、無段変速装置8の油圧モータ8Mの出力軸8Dを無段変速装置8の外壁面から側方に突出させ、この出力軸8Dに対し、案内手段Gとして補助冷却ファン61を備えている。この補助冷却ファン61は、回転によって冷却風を無段変速装置8に供給するように冷却風の供給方向を設定してあり、冷却ファン51の外周部から遠心方向に流れる風を補助冷却ファン61が吸引して無段変速装置8の方向に案内するように機能する。これにより、冷却ファン51の外周部から遠心方向に流れ出す風を冷却風として無段変速装置8に積極的に供給すると共に、ミッションケース6に対しても積極的に供給して冷却を行えることになる。
【0039】
(b)案内手段Gとして、導風板52と、前述した補助冷却ファン61とを組み合わせる。このように組み合わせることにより、冷却ファン51の外周部から遠心方向に流れる風を効率的に取り込んで冷却風として無段変速装置8にたいして効率的に供給することが可能となる。
【0040】
(c)導風板52は、冷却ファン51の外周部のうち、上方側や下方側から流れ出す風を無段変速装置8の方向に案内するように、冷却ファン51の上方や下方に配置しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、静油圧式の無段変速装置を備えた作業機全般に利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 前車輪
5 エンジン
5A 出力軸
6A 前車軸ケース
8 無段変速装置
8A 入力軸
45 出力プーリ
46 入力プーリ
47 無端ベルト
51 冷却ファン
52 導風板
61 補助冷却ファン
D 伝動機構(ベルト式伝動機構)
G 案内手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの出力軸に備えた出力プーリと、静油圧式の無段変速装置の入力軸に備えた入力プーリとに亘って無端ベルトを巻回した伝動機構を備え、前記入力軸と一体回転する冷却ファンを備えている作業機であって、
外側の空気を吸引して前記無段変速装置に供給するように前記冷却ファンによる冷却風の流れが設定され、この冷却ファンの外周の外側部に、前記冷却ファンの外周部から、この冷却ファンの駆動軸芯と直交する遠心方向に流れる風を前記無段変速装置の方向に送る案内手段を備えている作業機。
【請求項2】
前記案内手段が、前記遠心方向に流れる風の流動方向を前記無段変速装置の方向に変更する導風板で構成されている請求項1記載の作業機。
【請求項3】
前記導風板が、前記冷却ファンの側部位置に配置されると共に、その下端部が、前車輪の車軸を内装する前車軸ケースに支持されている請求項2記載の作業機。
【請求項4】
前記案内手段が、前記遠心方向に流れる風を前記無段変速装置の方向に送るように前記無段変速装置の駆動力で駆動される補助冷却ファンで構成されている請求項1記載の作業機。
【請求項1】
エンジンの出力軸に備えた出力プーリと、静油圧式の無段変速装置の入力軸に備えた入力プーリとに亘って無端ベルトを巻回した伝動機構を備え、前記入力軸と一体回転する冷却ファンを備えている作業機であって、
外側の空気を吸引して前記無段変速装置に供給するように前記冷却ファンによる冷却風の流れが設定され、この冷却ファンの外周の外側部に、前記冷却ファンの外周部から、この冷却ファンの駆動軸芯と直交する遠心方向に流れる風を前記無段変速装置の方向に送る案内手段を備えている作業機。
【請求項2】
前記案内手段が、前記遠心方向に流れる風の流動方向を前記無段変速装置の方向に変更する導風板で構成されている請求項1記載の作業機。
【請求項3】
前記導風板が、前記冷却ファンの側部位置に配置されると共に、その下端部が、前車輪の車軸を内装する前車軸ケースに支持されている請求項2記載の作業機。
【請求項4】
前記案内手段が、前記遠心方向に流れる風を前記無段変速装置の方向に送るように前記無段変速装置の駆動力で駆動される補助冷却ファンで構成されている請求項1記載の作業機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−75106(P2011−75106A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−288151(P2010−288151)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288151(P2010−288151)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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