説明

作業用走行車における補用部品の取り付け構造

【課題】インナールーフを取り付けるための孔部を補用部品取り付け用の孔部に兼用するにあたり、補用部品を取り付けない場合は、安価で装着が容易なクリップを用いてインナールーフを取り付けることができる一方、補用部品を取り付ける場合は、クリップに比して強度的に優れる補用部品取り付けネジを用いて補用部品を取り付けることを可能にする。
【解決手段】キャビン6のインナールーフ12を、上部フレーム8に形成される孔部8aに対して押し込み固定可能なクリップ13を用いて取り付ける共に、孔部8aの裏側に、クリップ13と干渉しない位置に雌ネジ溝17aが形成された筒状部材17を立設し、キャビン6の天井部に補用部品(14、15)を取り付ける場合は、取り付け位置に対応する孔部8aに対し、クリップ13に代えて補用部品取り付けネジ16を挿入し、筒状部材17の雌ネジ溝17aに螺合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタなどの作業用走行車における補用部品の取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、キャビン仕様のトラクタが増えている。特許文献1に示されるキャビン仕様のトラクタにおいては、運転座席の前方上方に、後方確認用のルームミラーや、直射日光を遮るためのサンバイザが設けられている。このようなルームミラーやサンバイザは、標準で装備される場合と、機種のグレードやユーザの好みに応じて、補用部品として選択的に取り付けられる場合とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4289614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来においては、ルームミラー、サンバイザなどの補用部品を、機種のグレードやユーザの好みに応じて選択的に取り付ける場合であっても、これらを取り付けることを前提としたキャビン構造とする必要があるため、使用するか否かに拘わらず、キャビンの上部フレームに予め補用部品取り付け用の孔部を形成しているのが実状であった。
【0005】
尚、キャビンのインナールーフを取り付けるための孔部を補用部品取り付け用の孔部に兼用することも可能であるが、補用部品の取り付けは、強度的にネジを使用する必要があるので、孔部を兼用化すると、インナールーフの取り付けもネジで行わなければならず、安価で装着が容易な樹脂製のクリップを用いた取り付けが困難になるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、運転空間を覆うキャビンと、該キャビンの上部フレームに取り付けられてキャビンの天井部を形成するインナールーフとを備える作業用走行車において、前記インナールーフを、上部フレームに形成される孔部に対して押し込み固定可能なクリップを用いて取り付ける共に、孔部の裏側に、クリップと干渉しない位置に雌ネジ溝が形成された筒状部材を立設し、キャビンの天井部に補用部品を取り付ける場合は、取り付け位置に対応する孔部に対し、クリップに代えて補用部品取り付けネジを挿入し、筒状部材の雌ネジ溝に螺合させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、キャビンのインナールーフを取り付けるための孔部を補用部品取り付け用の孔部に兼用するものでありながら、クリップ及びネジの取り付けに対応するので、補用部品を取り付けない場合は、安価で装着が容易なクリップを用いてインナールーフを取り付けることができる一方、補用部品を取り付ける場合は、クリップに比して強度的に優れる補用部品取り付けネジを用いて補用部品を取り付けることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】トラクタの側面図である。
【図2】キャビンの正面図である。
【図3】キャビンの要部斜視図である。
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】補用部品(ルームミラー、サンバイザ)が取り付けられたキャビンの正面図である。
【図6】補用部品(ルームミラー、サンバイザ)が取り付けられたキャビンの要部斜視図である。
【図7】図5のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1はトラクタの走行機体であって、該走行機体1は、エンジン(図示せず)が搭載されるエンジン搭載部2、ホイール式又はクローラ式の走行部3、運転座席や各種の操作具が配置される操縦部4、各種の作業機を選択的に装着可能な作業機装着部5などを備えて構成されている。
【0010】
図1及び図2に示すように、操縦部4には、オペレータの運転空間を覆うキャビン6が備えられている。キャビン6は、四隅に立設される支柱7、支柱7の上端部同士を連結する断面コ字状の上部フレーム8、キャビン6の上方を覆うアウタールーフ9、キャビン6の窓部を覆う窓ガラス10、キャビン6の乗降口を開閉自在に覆うドア11などを備えて構成されている。
【0011】
図3及び図4に示すように、アウタールーフ9の下方には、所定の間隔を存してインナールーフ12が設けられている。インナールーフ12は、上部フレーム8の下端部に形成される孔部8aに対して押し込み固定可能なクリップ13を用いて上部フレーム8に取り付けられている。この種のクリップ13としては、安価で装着が容易な樹脂製のクリップが広く用いられている。例えば、本実施形態のクリップ13は、ピン押し込み孔を有するクリップ本体13aと、ピン押し込み孔に装着される押し込みピン13bとの2部材からなり、クリップ本体13aをインナールーフ12の孔部12aを介して上部フレーム8の孔部8aに挿入した後、押し込みピン13bの押し込み操作に応じてクリップ本体13aの挿入部分を拡開させることにより、孔部8aに抜止め状に装着されるようになっている。
【0012】
図5に示すように、キャビン6においては、運転座席の前方上方に、後方確認用のルームミラー14や、直射日光を遮るためのサンバイザ15を設けることができる。本実施形態のルームミラー14やサンバイザ15は、機種のグレードやユーザの好みに応じて選択的に取り付けられる補用部品であり、以下、これらの補用部品の取り付け構造について、図6及び図7を参照して説明する。
【0013】
図6及び図7に示すように、ルームミラー14、サンバイザ15などの補用部品は、インナールーフ12を取り付けるための孔部8aを利用し、ネジ16を用いて取り付けられる。このような補用部品の取り付け構造を実現するために、孔部8aの裏側には、筒状部材17が溶接などにより一体的に立設されている。この筒状部材17は、クリップ13の挿入長さ範囲において、クリップ13に干渉しない十分な内径を有することで、クリップ13によるインナールーフ12の取り付けを妨げないようになっている。
【0014】
また、筒状部材17は、クリップ13の挿入長さを超える範囲において、ネジ16と螺合可能な雌ネジ溝17aを有している。つまり、ルームミラー14、サンバイザ15などの補用部品を取り付ける場合は、取り付け位置に対応する孔部8aに対し、クリップ13に代えて補用部品取り付け用のネジ16を挿入し、筒状部材17の雌ネジ溝17aに螺合させることで、補用部品の取り付けが可能になる。
【0015】
尚、本実施形態の補用部品は、補用部品ブラケット18を介して取り付けられる。この補用部品ブラケット18の形状は任意であるが、インナールーフ12をネジ16で共締めするための押さえ部18aを備えることが好ましい。
【0016】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、運転空間を覆うキャビン6と、該キャビン6の上部フレーム8に取り付けられてキャビン6の天井部を形成するインナールーフ12とを備えるトラクタにおいて、インナールーフ12を、上部フレーム8に形成される孔部8aに対して押し込み固定可能なクリップ13を用いて取り付ける共に、孔部8aの裏側に、クリップ13と干渉しない位置に雌ネジ溝17aが形成された筒状部材17を立設し、キャビン6の天井部に補用部品(14、15)を取り付ける場合は、取り付け位置に対応する孔部8aに対し、クリップ13に代えて補用部品取り付けネジ16を挿入し、筒状部材17の雌ネジ溝17aに螺合させるので、キャビン6のインナールーフ12を取り付けるための孔部8aを補用部品取り付け用の孔部に兼用するものでありながら、クリップ13及びネジ16の取り付けに対応するので、補用部品を取り付けない場合は、安価で装着が容易なクリップ13を用いてインナールーフ12を取り付けることができる一方、補用部品を取り付ける場合は、クリップ13に比して強度的に優れる補用部品取り付けネジ16を用いて補用部品を取り付けることが可能になる。
【符号の説明】
【0017】
1 走行機体
4 操縦部
6 キャビン
8 上部フレーム
8a 孔部
12 インナールーフ
13 クリップ
14 ルームミラー
15 サンバイザ
16 ネジ
17 筒状部材
17a 雌ネジ溝
18 補用部品ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転空間を覆うキャビンと、該キャビンの上部フレームに取り付けられてキャビンの天井部を形成するインナールーフとを備える作業用走行車において、
前記インナールーフを、上部フレームに形成される孔部に対して押し込み固定可能なクリップを用いて取り付ける共に、孔部の裏側に、クリップと干渉しない位置に雌ネジ溝が形成された筒状部材を立設し、キャビンの天井部に補用部品を取り付ける場合は、取り付け位置に対応する孔部に対し、クリップに代えて補用部品取り付けネジを挿入し、筒状部材の雌ネジ溝に螺合させることを特徴とする作業用走行車における補用部品の取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−189879(P2011−189879A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59246(P2010−59246)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】