説明

作業管理装置および作業管理プログラム

【課題】作業の進捗状況に応じて作業全体を効率よく実施させること。
【解決手段】工程毎に実施される作業を管理する作業管理装置10は、作業対象の物品に対して実施される工程に関する情報と、各工程において使用可能な設備に関する情報とに基づいて、工程の実施順序と各工程において使用すべき設備とを定めた作業計画情報を作成する作業計画作成部と、作業計画作成部によって作成された作業計画情報と、各工程の作業内容が定義された情報とに基づいて、物品毎に各工程で実施すべき作業内容と各工程において使用すべき設備とを指示する作業指示情報を生成する作業指示作成部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業管理装置および作業管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
部品や製品の製造、検査、解体等は、複数の工程に細分化されて実施される場合がある。特許文献1では、このように細分化された各工程を担当する作業員に作業内容を指示するための作業指示書(作業手順書)を自動生成する技術が開示されている。また、特許文献1では、工程を実行するための装置の使用状況に基づいて工程の実施の有無を決定し、作業手順書に反映させる技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−56276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術等の従来技術では、作業の進捗状況に応じて作業全体を効率よく実施できるように作業計画および作業手順書を臨機応変に更新することができなかった。例えば、特許文献1に記載された技術は、装置の使用状況に基づいて工程の実施の有無を決定して作業手順書に反映させるが、装置が使用できない工程で実施される作業を遅延させるだけであり、作業全体を効率よく実施させることはできない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、作業の進捗状況に応じて作業全体を効率よく実施させることができる作業管理装置および作業管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る作業管理装置は、工程毎に実施される作業を管理する作業管理装置であって、作業対象の物品に対して実施される工程に関する情報と、各工程において使用可能な設備に関する情報とに基づいて、前記工程の実施順序と各工程において使用すべき設備とを定めた作業計画情報を作成する作業計画作成部と、前記作業計画作成部によって作成された前記作業計画情報と、各工程の作業内容が定義された情報とに基づいて、前記物品毎に各工程で実施すべき作業内容と各工程において使用すべき設備とを指示する作業指示情報を生成する作業指示作成部とを備える。
【0007】
ここで、本発明の望ましい態様として、本発明に係る作業管理装置は、前記工程での作業が開始される旨の作業開始通知が受信された場合に、当該作業開始通知に含まれる物品の識別番号に対応する前記作業指示情報に基づいて、実施すべき作業内容と各工程において使用すべき設備とを指示する作業指示画面を生成し、当該作業指示画面を前記作業開始通知の送信元に提供する作業指示画面提供部をさらに備える。
【0008】
また、本発明の望ましい態様として、本発明に係る作業管理装置は、前記作業開始通知と、前記工程での作業が完了した場合に送信される作業完了通知とに基づいて各工程での作業の進捗状況を記録する作業状況管理部をさらに備える。
【0009】
また、本発明の望ましい態様として、前記作業計画作成部は、前記作業完了通知が受信された場合に、前記作業計画情報のうち未実施の工程に関する情報を更新し、前記作業指示作成部は、前記作業計画作成部によって更新された前記作業計画情報に基づいて前記作業指示情報を更新する。
【0010】
また、本発明の望ましい態様として、前記作業指示画面提供部は、前記作業開始通知に含まれる識別番号に対応する物品に対して他の物品とともに作業を行うべき旨が前記作業計画情報において定められている場合に、当該他の物品についての前記作業指示画面をさらに生成し、前記作業開始通知の送信元に提供する。
【0011】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る作業管理プログラムは、工程毎に実施される作業を管理する作業管理装置に、作業対象の物品に対して実施される工程に関する情報と、各工程において使用可能な設備に関する情報とに基づいて、前記工程の実施順序と各工程において使用すべき設備とを定めた作業計画情報を作成するステップと、前記作業計画情報と、各工程の作業内容が定義された情報とに基づいて、前記物品毎に各工程で実施すべき作業内容と各工程において使用すべき設備とを指示する作業指示情報を生成するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る作業管理装置および作業管理プログラムは、作業の進捗状況に応じて作業全体を効率よく実施させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施例に係る作業管理システムを示す図である。
【図2】図2は、本実施例に係る作業管理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本実施例に係る作業管理プログラムの構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、部品マスタの一例を示す図である。
【図5】図5は、設備マスタの一例を示す図である。
【図6】図6は、試験条件マスタの一例を示す図である。
【図7】図7は、期限情報の一例を示す図である。
【図8】図8は、作業計画情報の一例を示す図である。
【図9】図9は、作業指示テンプレートの一例を示す図である。
【図10】図10は、作業指示情報の一例を示す図である。
【図11】図11は、作業指示画面の一例を示す図である。
【図12】図12は、作業計画作成処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図13】図13は、作業開始通知受信処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図14】図14は、作業完了通知受信処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る作業管理装置および作業管理プログラムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。例えば、以下の実施例では、本発明をフローショップ方式で実施される試験作業に適用する例について説明するが、本発明は、このような用途のみならず、ジョブショップ方式で実施される作業や、生産・解体等の試験以外の作業に適用することができる。また、この実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【実施例】
【0015】
まず、図1を参照しながら、本実施例に係る作業管理システム1について説明する。作業管理システム1は、部品Pの試験に関する作業を管理するためのシステムである。ここで、部品Pの試験は、複数の工程に細分化されており、各工程は、作業現場A、作業現場Bまたは作業現場Cのいずれかにおいてフローショップ方式で実施されるものとする。すなわち、各工程が実施される順序は予め決まっているものとする。なお、部品の種類によっては一部の工程は省略されることがあり、また、条件によっては、異なる種類の部品が1つの工程で一緒に検査されることがあるものとする。
【0016】
図1は、作業管理システム1を示す図である。図1に示すように、作業管理システム1は、作業管理装置10と、複数の端末装置20と、管理端末30とを有する。端末装置20および管理端末30は、有線LAN(Local Area Network)や無線LAN等のネットワークによって作業管理装置10と通信可能に接続される。
【0017】
端末装置20は、各作業現場に1台以上配置され、各工程の作業を実施する作業員によって操作される端末であり、表示部21と、入力部22と、読取部23とを備える。表示部21は、液晶パネルや有機EL(Organic Electro−Luminescence)パネル等の表示装置を有し、工程の作業内容を示す作業指示画面等の各種画面を表示する。入力部22は、キーボード等の入力装置を有し、工程の作業結果等の入力を受け付ける。なお、端末装置20は、タッチパネルのように表示部21および入力部22の機能を兼ねる装置を備えていてもよい。
【0018】
読取部23は、部品Pを識別するための部品番号を、部品Pに添付または貼付された伝票等から読み取る。なお、読取部23が部品番号を読み取る方式は特定しない。例えば、読取部23は、バーコードとして印刷された部品番号を光学的に読み取る装置であってもよいし、無線ICタグに記録された部品番号を電磁的に読み取る装置であってもよい。
【0019】
管理端末30は、作業管理システム1の管理者によって操作される端末であり、作業管理装置10によって管理されている作業の進捗状況を参照したり、作業管理装置10に記録されている各種データを編集したり、作業管理装置10に各種の指示を行ったりするために利用される。
【0020】
作業管理装置10は、作業計画情報136および作業指示情報138を作成する。作業計画情報136は、期限等の制約を守りつつ各工程の作業を効率よく実施するための作業計画(作業スケジュール)を定めた情報であり、例えば、フローショップ問題を解くことによって作成される。なお、本実施例においては、同一の作業を実施するための試験装置等の設備が複数用意されていることがあり、作業管理装置10は、複数の設備のうち、どの設備を用いて作業を実施するかについても決定する。
【0021】
作業計画情報136は、作業の進捗状況を管理するためにも用いられる。すなわち、作業計画情報136には、どの部品に対してどの設備を使ってどの工程の作業がいつ実施されたかが記録される。作業計画情報136の内容は、表やチャート図等の形式で管理端末30および端末装置20から参照される。
【0022】
作業指示情報138は、作業計画情報136等に基づいて作成され、作業手順、作業条件、使用すべき設備等に関する情報を部品毎かつ工程毎に保持する。作業管理装置10は、端末装置20からの要求に応じて、指定された部品の情報を作業指示情報138から抽出し、作業者に作業手順等を提示するための作業指示画面を生成して要求元の端末装置20の表示部21に表示させる。なお、作業指示画面は、例えば、HTML(HyperText Markup Language)のような書式の指定を含む電子文書として生成されてもよいし、画像データとして生成されてもよい。
【0023】
作業管理装置10は、任意のタイミングで作業計画情報136および作業指示情報138を更新することができる。例えば、何らかの理由で一部の工程での作業に遅れが生じた場合、作業計画情報136および作業指示情報138を更新することにより、作業の遅れに応じて、未実施の工程の実施順序や未実施の工程において使用すべき設備等が変更される。すなわち、作業管理装置10は、状況の変化に合わせて作業計画情報136を最適化し直すとともに、各工程に対して最新の作業計画に応じた作業順序等を指示することができる。
【0024】
作業管理システム1では、作業管理装置10と端末装置20との間で以下の様にして工程毎に情報がやりとりされる。端末装置20は、作業員の操作等によって読取部23で部品番号が読み取られると、読み取られた部品番号を含む作業開始通知を作業管理装置10へ送信する(ステップS1)。作業管理装置10は、作業開始通知を受信すると、作業の進捗状況を管理するために作業の開始時刻を作業計画情報136に記録する。そして、作業管理装置10は、作業指示画面を生成して端末装置20へ送信する(ステップS2)。
【0025】
端末装置20は、作業指示画面を表示部21に表示する。そして、作業指示画面を参照して作業を実施した作業者が入力部22に対してその工程での作業が完了したことを示す操作を実行すると、端末装置20は、作業完了通知を作業管理装置10へ送信する(ステップS3)。作業管理装置10は、作業完了通知を受信すると、作業の進捗状況を管理するために作業の完了時刻を作業計画情報136に記録する。そして、作業管理装置10は、作業計画情報136および作業指示情報138を再作成する。
【0026】
このように、作業管理システム1は、作業の進捗状況に応じて作業計画情報136を最適化し直すとともに、最適化された最新の作業内容を作業員に対して提示できるように構成されている。なお、図1に示した作業管理システム1の構成は例であり、作業管理システム1に含まれる各種装置の数はこの通りでなくてもよい。
【0027】
次に、図1に示した作業管理装置10の構成について説明する。図2は、作業管理装置10の構成を示すブロック図である。図2に示すように、作業管理装置10は、通信部11と、制御部12と、記憶部13とを備える。通信部11は、所定の通信プロトコルに基づいて、端末装置20および管理装置30との間での情報の送受信を制御する。
【0028】
制御部12は、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)121と、記憶手段であるメモリ122とを備え、これらのハードウェア資源を用いてプログラムを実行することによって各種の機能を実現する。具体的には、制御部12は、記憶部13に記憶されているプログラムを読み出してメモリ122に展開し、メモリ122に展開されたプログラムに含まれる命令をCPU121に実行させる。そして、制御部12は、CPU121による命令の実行結果に応じて、メモリ122および記憶部13に対してデータの読み書きを行ったり、通信部11等の動作を制御したりする。
【0029】
記憶部13は、磁気記憶装置や半導体記憶装置等の不揮発性を有する記憶装置からなり、各種のプログラムやデータを記憶する。記憶部13に記憶されるプログラムには、作業管理プログラム131が含まれる。記憶部13に記憶されるデータには、部品マスタ132と、設備マスタ133と、試験条件マスタ134と、期限情報135と、作業計画情報136と、作業指示テンプレート137と、作業指示情報138とが含まれる。なお、図2において記憶部13が記憶することとしているプログラムおよびデータの一部または全ては、作業管理装置10がネットワークを介して通信可能な他の装置に記憶され、必要に応じて作業管理装置10にダウンロードされることとしてもよい。
【0030】
図3は、作業管理プログラム131の構成を示すブロック図である。図3に示すように、作業管理プログラム131は、作業計画作成部131aと、作業指示作成部131bと、作業指示画面提供部131cと、作業状況管理部131dとを有する。作業計画作成部131aは、作業計画情報136の作成と更新を行う機能を実現させる。作業指示作成部131bは、作業指示情報138の作成と更新を行う機能を実現させる。作業指示画面提供部131cは、作業指示画面を生成して端末装置20へ送信する機能を実現させる。作業状況管理部131dは、作業の進行状況を作業計画情報136に反映させる機能を実現させる。
【0031】
図4は、部品マスタ132の一例を示す図である。部品マスタ132は、実施すべき作業に関する情報を部品毎かつ工程毎に保持する。図4に示す部品マスタ132は、部品番号、部品名、実施順序、工程名、設備番号、試験条件番号といった項目を有し、1つの部品番号に対して実施順序〜試験条件番号の組み合わせを複数保持できるように構成されている。
【0032】
部品番号は、部品を識別するための番号である。部品名は、部品の名称である。実施順序は、工程が実施される順序を示す番号である。工程名は、工程の名称である。設備番号は、作業で使用される設備のグループを識別するための番号である。試験条件番号は、実施される試験の条件を識別するための番号である。なお、部品マスタ132に、部品の寸法や重量等の仕様に関する情報を保持してもよい。
【0033】
図5は、設備マスタ133の一例を示す図である。設備マスタ133は、工程での作業で使用される設備に関する情報を保持する。図5に示す設備マスタ133は、設備番号、設備名、個体番号といった項目を有し、1つの設備番号に対して個体番号を複数保持できるように構成されている。設備番号は、作業で使用される設備のグループを識別するための番号である。設備名は、設備の名称である。個体番号は、具体的な個々の設備を識別するための番号である。
【0034】
図5に示す設備マスタ133では、「E1」という設備番号に対して、「E1−A」、「E1−B」、「E1−C」、「E1−D」という4つの個体番号が対応付けられている。これは、「E1」で識別される設備のグループには、それぞれ、「E1−A」、「E1−B」、「E1−C」、「E1−D」で識別される設備が含まれることを示している。なお、同一のグループに含まれる設備は、いずれを用いても同等の結果を得ることができる設備、すなわち、同一または同等の設備である。
【0035】
ここで、工程での作業に必要な設備が、試験装置、治具、工具のように複数種類ある場合には、種類毎に設備マスタ133を用意して、同等の結果を得ることができる設備を管理することとしてもよい。
【0036】
図6は、試験条件マスタ134の一例を示す図である。試験条件マスタ134は、実施される試験の条件に関する情報を保持する。図6に示す試験条件マスタ134は、試験条件番号と対応付けて、試験時間と、上限温度や下限温度といった各種の試験条件についての項目とを保持できるように構成されている。試験条件番号は、実施される試験の条件を識別するための番号である。試験時間は、該当する試験条件において試験に要する時間である。各種の試験条件についての項目は、実施されうる全ての試験に対応できるように網羅的に用意され、該当する試験条件に関連する項目のみに値が設定される。
【0037】
なお、1つの試験条件マスタ134に各種の試験条件についての項目を網羅的に用意するのではなく、試験の種類毎に試験条件マスタ134を作成し、対応する種別の試験に関する項目のみを用意することとしてもよい。すなわち、試験Aに対応する試験条件マスタ134には試験Aに関する項目のみを用意し、試験Bに対応する試験条件マスタ134には試験Bに関する項目のみを用意することとしてもよい。
【0038】
図7は、期限情報135の一例を示す図である。期限情報135は、作業の期限に関する情報を部品毎に保持する。図7に示す期限情報135は、部品番号、数量、期限といった項目を有する。部品番号は、部品を識別するための番号である。数量は、作業対象の部品の数量である。期限は、全ての作業を完了させる期限である。
【0039】
図8は、作業計画情報136の一例を示す図である。作業計画情報136は、各工程の作業を効率よく実施するための作業計画を定めた情報であり、部品マスタ132と、設備マスタ133と、試験条件マスタ134と、期限情報135とに基づいて作成される。図8に示す作業計画情報136は、部品番号、部品名、実施順序、工程名、設備番号、試験条件番号、個体番号、同時実施部品番号、開始予定時刻、完了予定時刻、開始時刻、完了時刻、良品数、不良品数といった項目を有し、1つの部品番号に対して実施順序〜不良品数の組み合わせを複数保持できるように構成されている。
【0040】
部品番号〜試験条件番号は、部品マスタ132と同一の項目である。個体番号は、使用すべき設備を識別するための番号である。なお、実際に作業を実施する際に現場の判断によって、指定された設備とは異なる設備を用いて作業が実施されることがあり、その場合、作業管理装置10は、作業の完了後に作業完了通知によって通知された情報に基づいて、個体番号の値を実際に使用された設備の番号へ書き換える。このように、実際の実施結果に基づいて個体番号の値を変更することにより、作業計画情報136を作業の正確な実施履歴を表す情報として活用することができる。
【0041】
同時実施部品番号は、同じ設備を使用して一緒に作業を行うべき他の部品を識別するための番号である。同じ設備を使用して複数の種類の部品の作業を一緒に行うことにより設備の準備に要する時間等を節約することができるため、作業管理装置10は、複数の種類の部品の作業を一緒に行うように作業計画を組むことがある。例えば、同一の工程で同一の試験条件で同時期に試験が行われる複数の種類の部品がある場合、作業管理装置10は、その工程でそれらの部品の試験が一緒に行われるように作業計画を組む。なお、一緒に作業を行うことができる他の部品がない場合、同時実施部品番号は空欄とされる。
【0042】
開始予定時刻は、作業管理装置10が決定した作業の開始時刻であり、完了予定時刻は、作業管理装置10が決定した作業の完了時刻である。開始時刻は、実際に作業が開始された時刻であり、完了時刻は、実際に作業が完了した時刻である。良品数は、試験によって良品と判定された部品の数であり、不良品数は、試験によって不良品と判定された部品の数である。開始時刻、完了時刻、良品数および不良品数は予め空欄とされ、端末装置20との情報のやりとりに基づいて値が設定される。
【0043】
図9は、作業指示テンプレート137の一例を示す図である。作業指示テンプレート137は、作業指示情報138のひな形として利用される。図9に示す作業指示テンプレート137は、工程名、行番号、表示文字列といった項目を有し、1つの工程名に対して行番号および表示文字列の組み合わせを複数保持できるように構成されている。
【0044】
工程名は、工程の名称である。行番号は、表示文字列に基づいて生成した文字列をテキストに埋め込む位置を示す番号である。表示文字列は、作業内容の一部を表す文字列である。表示文字列は、作業指示情報138の作成時に他の文字列に置換される所定の形式の変数を含むことがある。図9に示す例において、「@[変数名]」と「$[変数名]」とが変数に相当する。「@[変数名]」は、試験条件マスタ134の対応する値に置換される。「$[変数名]」は、作業計画情報136の対応する値に置換される。
【0045】
図10は、作業指示情報138の一例を示す図である。作業指示情報138は、作業内容に関する情報を、作業計画情報136に登録されている部品番号と工程名の組み合わせ毎に保持する。図10に示す作業指示情報138は、部品番号、部品名、実施順序、工程名、表示テキストといった項目を有し、1つの部品番号に対して実施順序〜表示テキストの組み合わせを複数保持できるように構成されている。
【0046】
部品番号は、部品を識別するための番号である。部品名は、部品の名称である。実施順序は、工程が実施される順序を示す番号である。工程名は、工程の名称である。表示テキストは、作業内容を示すテキストであり、作業指示テンプレート137に基づいて作成される。
【0047】
例えば、作業計画情報136に、部品番号が「X」の部品に対して工程名が「Y」の作業を試験条件番号が「Z」の試験条件で実施することが定義されていたものとする。この場合、制御部12は、工程名が「Y」のデータを作業指示テンプレート137から抽出し、抽出したデータの表示文字列の値を行番号の順に並び替えて連結することによって、表示テキストとして設定されるテキストを生成する。表示文字列の値を連結するに際して、制御部12は、以下のようにして変数を対応する値に置換する。
【0048】
表示文字列に「@[A]」が含まれる場合、制御部12は、試験条件マスタ134から試験条件番号が「Z」のデータを取得し、「@[A]」を、そのデータの項目Aの値と置き換える。また、表示文字列に「$[B]」が含まれる場合、制御部12は、作業計画情報136から部品番号が「X」で工程名が「Y」のデータを取得し、「$[B]」を、そのデータの項目Bの値と置き換える。
【0049】
なお、本実施例では、作業指示テンプレート137の表示文字列の項目に含まれる変数を試験条件マスタ134または作業計画情報136に含まれる値と置換する例を示したが、変数を他の情報に含まれる値と置換することとしてもよい。例えば、部品マスタ132に部品の寸法や重量等の仕様に関する情報を保持することとした場合、変数をそれらの値と置換できるようにしてもよい。
【0050】
次に、端末装置20の表示部21に表示される作業指示画面について説明する。図11は、作業指示画面の一例を示す図である。端末装置20は、読取部23で部品番号が読み取られるたびに、読み取られた部品番号を含む作業開始通知を作業管理装置10へ送信し、作業管理装置10から応答される作業指示画面を表示部21に表示する。
【0051】
図11に示すように、作業指示画面では、実施順序に従って工程毎に表示領域A1と入力領域A2とが設けられる。表示領域A1には、作業指示情報138の表示テキストの値が表示される。入力領域A2には、作業結果を入力するための入力欄と、作業が完了した際に押下される完了ボタンとが配置される。作業結果を入力するための入力欄には、良品数を入力する欄と、不良品数を入力する欄と、実際に使用した設備を選択する欄とが含まれる。実際に使用した設備を選択する欄には、使用するように指定された設備と同じグループに属する設備の個体番号が選択肢として設定される。
【0052】
端末装置20は、完了ボタンが押下されると、その完了ボタンを含む入力領域A2で入力された値と、部品番号とを含む作業完了通知を作業管理装置10へ送信し、作業指示画面を閉じる。
【0053】
作業管理装置10は、作業開始通知に含まれる部品番号によって識別される部品に対して、他の部品と一緒に作業を実施すべき旨の指定が作業計画情報136においてなされていた場合、図11に示すように、一緒に作業を実施すべき各部品の作業指示画面を部品毎に異なるタブに分けて表示する等して一度に応答する。このように、1つの部品についての作業開始通知に対して、一緒に作業を実施すべき他の部品の作業指示画面を追加して応答することにより、誤って作業を部品毎に別々に行ってしまうことが抑止される。
【0054】
次に、図12から図14のフローチャートを参照しながら、作業管理装置10の動作について説明する。図12は、作業計画作成処理の処理手順を示すフローチャートである。図12に示す処理手順は、例えば、管理端末30を通じて作業管理システム1の管理者から指示されたタイミングや、端末装置20から送信された作業完了通知に基づいて作業計画情報136が更新されたタイミングで実行される。
【0055】
図12に示すように、制御部12は、まず、期限情報135を読み出して、作業を実施すべき部品と作業の期限に関する情報を取得する(ステップS11)。続いて、制御部12は、読み出された部品の作業工程に関する情報を部品マスタ132から取得する(ステップS12)。そして、制御部12は、各作業工程にて使用可能な設備に関する情報を設備マスタ133から取得し(ステップS13)、各作業工程の作業時間に関する情報を試験条件マスタ134から取得する(ステップS14)。また、制御部12は、読み出された部品の開始時刻の値を作業計画情報136から取得して、実施すべき作業工程が未実施であるかを判定する(ステップS15)。
【0056】
こうして取得した情報に基づいて、制御部12は、未実施の作業工程の実施計画を作成する(ステップS16)。ここでは、期限が守られる範囲で、設備の効率的な利用や総作業時間の短縮化が達成できるように最適化された実施計画が作成される。実施計画の作成は、既知のスケジューリング技術(例えば、特願2010−269116にて開示されている技術)を利用して実現してもよい。また、実施計画の作成に際して、作業員の人数や勤務時間帯等の他の情報を使用してもよい。
【0057】
続いて、制御部12は、作成した実施計画に基づいて作業計画情報136を更新する(ステップS17)。具体的には、制御部12は、作業計画情報136に登録されている作業工程のうち未実施の作業工程の開始予定時刻や完了予定時刻を変更したり、個体番号を変更したりする。また、制御部12は、未登録の作業工程に関する情報を作業計画情報136に追加する。
【0058】
続いて、制御部12は、作業指示情報138を更新する(ステップS18)。具体的には、制御部12は、未実施の各作業工程に対応する表示文字列を作業指示テンプレート137から取得し、変数を置換した上で部品毎かつ作業工程毎に連結してテキストを生成する。そして、生成したテキストに対応する部品と作業工程が作業指示情報138に登録済みであれば、制御部12は、登録済みの部品と作業工程に対応する表示テキストを生成したテキストで上書きする。生成したテキストに対応する部品と作業工程が作業指示情報138に登録されていない場合、制御部12は、登録済みの部品と作業工程と生成したテキストとを対応づけて作業指示情報138に登録する。
【0059】
図13は、作業開始通知受信処理の処理手順を示すフローチャートである。図13に示す処理手順は、端末装置20からの作業開始通知が受信されるたびに実行される。図13に示すように、制御部12は、まず、作業開始通知に含まれる部品番号を取得する(ステップS21)。そして、制御部12は、部品番号に対応する部品の未実施の作業工程のうち、開始予定時刻が最も早い作業工程に対応するデータを作業計画情報136から選択する(ステップS22)。
【0060】
続いて、制御部12は、選択したデータの開始時刻の項目に現在時刻を設定し、対応する作業工程が未実施ではなくなったことを記録する(ステップS23)。そして、制御部12は、選択したデータと同一の部品に関するデータを作業指示情報138から取得し(ステップS24)、取得したデータに基づいて作業指示画面を作成する(ステップS25)。なお、ステップS22で取得したデータの同時実施部品番号の項目に部品番号が設定されている場合、その部品番号に対応する部品の作業指示画面も作成することが望ましい。そして、制御部12は、生成した作業指示画面を作業開始通知の送信元の端末装置20へ送信し、表示部21に表示させる(ステップS26)。
【0061】
図14は、作業完了通知受信処理の処理手順を示すフローチャートである。図14に示す処理手順は、端末装置20からの作業完了通知が受信されるたびに実行される。図14に示すように、制御部12は、まず、作業完了通知に含まれる部品番号を取得する(ステップS31)。そして、制御部12は、部品番号に対応する部品の未実施の作業工程のうち、開始予定時刻が最も早い作業工程に対応するデータを作業計画情報136から選択する(ステップS32)。
【0062】
続いて、制御部12は、選択したデータの完了時刻の項目に現在時刻を設定し、対応する作業工程が完了したことを記録する(ステップS33)。そして、制御部12は、作業完了通知に含まれる良品数、不良品数および個体番号を選択したデータの対応する項目に設定する(ステップS34)。こうして作業工程の進捗状況に関する情報を更新した後、制御部12は、図12に示した作業計画作成処理を再実行する(ステップS35)。
【0063】
上述してきたように、本実施例では、作業管理装置10が、作業の進捗状況に応じて作業計画情報136を最適化し直すとともに、最適化された最新の作業内容を作業員に対して表示させる。このため、作業の進捗状況に応じて作業全体を効率よく実施させることができる。
【0064】
なお、上記の実施例で示した構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。例えば、上記の実施例では、作業管理装置10が作業完了通知を受信するたびに作業計画情報136および作業指示情報138を再作成することとしたが、作業完了通知が通知された時刻と作業指示情報138に設定されている完了予定時刻との差が所定値よりも大きい場合にのみ再作成を実行することとしてもよい。このようにすることにより、計画と実績の乖離が小さい場合には作業計画情報136等の再作成を抑制して作業管理装置10の負荷を減らしつつ、計画と実績の乖離が大きくなった場合には作業計画を最適化し直して高効率化を実現することができる。
【0065】
また、作業管理装置10が作業開始通知を受信した場合にも作業計画情報136および作業指示情報138を再作成することとしてもよい。この場合、作業開始通知が通知された時刻と作業指示情報138に設定されている開始予定時刻との差が所定値よりも大きい場合にのみ再作成を実行することとしてもよい。このようにすることにより、最新の状況に合った作業指示画面を作業開始通知の送信元の端末装置20に提供することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 作業管理システム
10 作業管理装置
11 通信部
12 制御部
121 CPU
122 メモリ
13 記憶部
131 作業管理プログラム
131a 作業計画作成部
131b 作業指示作成部
131c 作業指示画面提供部
131d 作業状況管理部
132 部品マスタ
133 設備マスタ
134 試験条件マスタ
135 期限情報
136 作業計画情報
137 作業指示テンプレート
138 作業指示情報
20 端末装置
21 表示部
22 入力部
23 読取部
30 管理端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程毎に実施される作業を管理する作業管理装置であって、
作業対象の物品に対して実施される工程に関する情報と、各工程において使用可能な設備に関する情報とに基づいて、前記工程の実施順序と各工程において使用すべき設備とを定めた作業計画情報を作成する作業計画作成部と、
前記作業計画作成部によって作成された前記作業計画情報と、各工程の作業内容が定義された情報とに基づいて、前記物品毎に各工程で実施すべき作業内容と各工程において使用すべき設備とを指示する作業指示情報を生成する作業指示作成部と
を備えることを特徴とする作業管理装置。
【請求項2】
前記工程での作業が開始される旨の作業開始通知が受信された場合に、当該作業開始通知に含まれる物品の識別番号に対応する前記作業指示情報に基づいて、実施すべき作業内容と各工程において使用すべき設備とを指示する作業指示画面を生成し、当該作業指示画面を前記作業開始通知の送信元に提供する作業指示画面提供部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の作業管理装置。
【請求項3】
前記作業開始通知と、前記工程での作業が完了した場合に送信される作業完了通知とに基づいて各工程での作業の進捗状況を記録する作業状況管理部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の作業管理装置。
【請求項4】
前記作業計画作成部は、前記作業完了通知が受信された場合に、前記作業計画情報のうち未実施の工程に関する情報を更新し、
前記作業指示作成部は、前記作業計画作成部によって更新された前記作業計画情報に基づいて前記作業指示情報を更新することを特徴とする請求項3に記載の作業管理装置。
【請求項5】
前記作業指示画面提供部は、前記作業開始通知に含まれる識別番号に対応する物品に対して他の物品とともに作業を行うべき旨が前記作業計画情報において定められている場合に、当該他の物品についての前記作業指示画面をさらに生成し、前記作業開始通知の送信元に提供することを特徴とする請求項2に記載の作業管理装置。
【請求項6】
工程毎に実施される作業を管理する作業管理装置に、
作業対象の物品に対して実施される工程に関する情報と、各工程において使用可能な設備に関する情報とに基づいて、前記工程の実施順序と各工程において使用すべき設備とを定めた作業計画情報を作成するステップと、
前記作業計画情報と、各工程の作業内容が定義された情報とに基づいて、前記物品毎に各工程で実施すべき作業内容と各工程において使用すべき設備とを指示する作業指示情報を生成するステップと
を実行させることを特徴とする作業管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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