説明

作業自動化方法

【課題】人手による作業をロボットによる作業に円滑に移行できる作業自動化方法を提供すること。
【解決手段】作業自動化方法は、ワーク組み立てシステム1に、人手作業エリア30A、30B、ロボット作業エリア40、および緩衝スペース50A、50Bを設け、人手作業エリア30A、30Bでは、ボディ10を連続送りとし、ロボット作業エリア40では、ボディ10をタクト送りとし、人手作業のうち移行対象となるものを抽出する手順と、この移行対象となる人手作業を、人手作業エリア30Bのうち最も緩衝スペース50B側で行う手順と、新たなロボットを緩衝スペース50Bに設置して、ロボット作業エリア40を拡張する手順と、移行対象となる人手作業を新たなロボットの作業に移行する手順と、人手作業エリア30Bのうち最も緩衝スペース50B側のエリアを削減して、人手作業エリア30Bを縮小する手順と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業自動化方法に関する。詳しくは、ワークに対して人手作業およびロボット作業を行う作業システムについて、人手作業をロボット作業に移行する作業自動化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のボディは、人手とロボットとで組み立てられる。したがって、このボディの生産ラインでは、作業者が作業するエリアと、ロボットが作業するエリアと、が混在している。
ここで、作業者がワークに対して作業する場合、このワークの搬送を停止する必要はないが、ロボットがワークに対して作業する場合、ワークの搬送を一旦停止する必要がある。よって、人手作業エリアでは、ワークを連続送りとし、ロボット作業エリアでは、ワークをタクト送りとしている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特公平6−83938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、ロボット技術の進歩により、人手による作業を徐々にロボットによる作業に移行して、組み立て効率を向上させることが要請されている。
【0004】
本発明は、人手による作業をロボットによる作業に円滑に移行できる作業自動化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の作業自動化方法は、ワーク(例えば、後述のボディ10)に対して作業者(例えば、後述の作業者P1〜P8)およびロボット(例えば、後述のロボットR1〜R4)により作業を行う作業システム(例えば、後述のワーク組み立てシステム1)について、人手作業をロボット作業に移行する作業自動化方法であって、前記作業システムに、搬送路(例えば、後述の搬送路21)に沿って設けられて複数の作業者が配置される人手作業エリア(例えば、後述の人手作業エリア30A、30B)と、前記搬送路に沿って設けられて複数のロボットが配置されるロボット作業エリア(例えば、後述のロボット作業エリア40)と、前記人手作業エリアと前記ロボット作業エリアとの境界に設けられた緩衝スペース(例えば、後述の緩衝スペース50A、50B)と、を設け、前記人手作業エリアでは、前記ワークを連続送りとし、前記ロボット作業エリアでは、前記ワークをタクト送りとし、前記人手作業のうち移行対象となるものを抽出する手順と、当該移行対象となる人手作業を、前記人手作業エリアのうち最も前記緩衝スペース側で行う手順と、新たなロボット(例えば、後述のロボットR4)を前記緩衝スペースに設置して、ロボット作業エリアを拡張する手順と、前記移行対象となる人手作業を前記新たなロボットの作業に移行する手順と、前記人手作業エリアのうち最も前記緩衝スペース側のエリアを削減して、前記人手作業エリアを縮小する手順と、を備えることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、人手作業をロボット作業に移行する手順は、以下のようになる。まず、人手作業のうち移行対象となるものを抽出する。次に、この移行対象となる人手作業を、人手作業エリアのうち最も緩衝スペース側で行う。次に、新たなロボットを緩衝スペースに設置して、ロボット作業エリアを拡張する。次に、移行対象となる人手作業を新たなロボットの作業に移行する。次に、人手作業エリアのうち最も緩衝スペース側のエリアを削減して、人手作業エリアを縮小する。
【0007】
よって、新たなロボットを設置する際、緩衝スペース内にロボットおよびこのロボットの周辺装置を設置できるので、設置作業中、装置類や工事作業者が人手作業エリアで作業する作業者の邪魔にならないから、生産ラインを停止させることなく設置できる。
また、新たなロボットを緩衝スペースに設置した後、直ちに、移行対象となる人手作業を新たなロボットの作業に移行できるから、人手による作業をロボットによる作業に円滑に移行できる。
【0008】
また、ロボット作業エリアを拡張して、人手作業エリアを縮小したので、生産ラインの長さを変更することなく移行でき、低コストとなる。つまり、ロボット作業エリアを拡張して、ロボットによる作業を1工程増やしても、生産ラインの長さは、ロボット作業エリアを拡張する前と同じである。したがって、後にさらなる工程自動化が計画されても、以上の手順を繰り返すことで、容易にロボット作業エリアを拡張して、人手作業をロボット作業に円滑に移行できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新たなロボットを設置する際、緩衝スペース内にロボットおよびこのロボットの周辺装置を設置できるので、設置作業中、装置類や工事作業者が人手作業エリアで作業する作業者の邪魔にならないから、生産ラインを停止させることなく設置できる。また、新たなロボットを緩衝スペースに設置した後、直ちに、移行対象となる人手作業を新たなロボットの作業に移行できるから、人手による作業をロボットによる作業に円滑に移行できる。また、ロボット作業エリアを拡張して、人手作業エリアを縮小したので、生産ラインの長さを変更することなく移行でき、低コストとなる。つまり、ロボット作業エリアを拡張して、ロボットによる作業を1工程増やしても、生産ラインの長さは、ロボット作業エリアを拡張する前と同じである。したがって、後にさらなる工程自動化が計画されても、以上の手順を繰り返すことで、容易にロボット作業エリアを拡張して、人手作業をロボット作業に移行できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る作業自動化方法が適用される作業システムとしてのワーク組み立てシステム1の平面図である。
ワーク組み立てシステム1は、作業者による人手作業およびロボットによるロボット作業により、ワークとしての自動車のボディ10を組み立てるものである。
このワーク組み立てシステム1は、搬送路21に沿って自動車のボディ10を搬送する搬送装置20と、搬送路21に沿って設けられた2つの人手作業エリア30A、30Bと、搬送路21に沿って設けられたロボット作業エリア40と、を備える。
【0011】
ロボット作業エリア40には、搬送路21の上流側から順に、ボディ10を組み立てるためのロボットR1〜R3が配置される。
【0012】
人手作業エリア30A、30Bは、ロボット作業エリア40の上流側に設けられた人手作業エリア30Aと、ロボット作業エリア40の下流側に設けられた人手作業エリア30Bと、で構成される。
人手作業エリア30Aには、搬送路21の上流側から順に、ボディ10を組み立てるための作業者P1〜P3が配置される。一方、人手作業エリア30Bには、搬送路21の上流側から順に、ボディ10を組み立てるための作業者P4〜P8が配置される。
【0013】
人手作業エリア30A、30Bとロボット作業エリア40との境界には、緩衝スペース50A、50Bが設けられる。
緩衝スペース50A、50Bは、ロボット作業エリア40の上流側に設けられた緩衝スペース50Aと、ロボット作業エリア40の下流側に設けられた緩衝スペース50Bと、で構成される。
【0014】
搬送装置20は、人手作業エリア30A、30Bでは、ボディ10を停止させることなく搬送する。これに対し、搬送装置20は、ロボット作業エリア40では、ボディ10を間欠的に搬送する。つまり、搬送装置20は、人手作業エリア30A、30Bでは、ボディ10を連続送りし、ロボット作業エリア40では、ボディ10をタクト送りする。
【0015】
以上のワーク組立てシステム1では、以下の手順で、人手作業による工程を自動化する。
まず、図1に示すように、人手作業のうち移行対象となるものを抽出する。例えば、ハーネス取り付け作業を移行対象として抽出する。このハーネス取り付け作業は、人手作業エリア30Bの作業者P7が行っている。
【0016】
次に、図2に示すように、この移行対象となる人手作業を、人手作業エリア30Bのうち最も緩衝スペース50B側で行う。具体的には、このハーネス取り付け作業を行う作業者P7は、人手作業エリア30Bの作業者P4〜P8のうち最も緩衝スペース50B側に移動し、引き続きハーネス取り付け作業を行う。また、作業者P7の上流側に配置されていた作業者P4〜P6は、作業スペース1つ分だけ下流側に移動する。
【0017】
次に、図3に示すように、新たなロボットR4を緩衝スペース50Bに設置して、ロボット作業エリア40を下流側に向かって拡張する。具体的には、ロボットR3の下流側に、新たにロボットR4を設置する。この緩衝スペース50Bは、空きスペースであるので、搬送装置20が稼働中でも、ロボットR4を容易に設置できる。
【0018】
次に、図4に示すように、移行対象となる人手作業を、新たなロボットR4の作業に移行する。具体的には、ロボットR4により、ハーネス取り付け作業を行う。その後、作業者P7は、図示しない他の作業位置に移動する。これにより、人手作業エリア30Bを下流側に向かって縮小し、緩衝スペース50Bの長さは変化しない。
【0019】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)新たなロボットR4を緩衝スペース50Bに設置する際、緩衝スペース50B内にロボットR4およびこのロボットR4の周辺装置を設置できるので、設置作業中、装置類や工事作業者が人手作業エリア30Bで作業する作業者の邪魔にならないから、生産ラインを停止させることなく設置できる。
【0020】
また、新たなロボットR4を緩衝スペース50Bに設置した後、直ちに、移行対象となる人手作業を新たなロボットR4の作業に移行できるから、人手によるハーネス取り付け作業をロボットによるハーネス取り付け作業に円滑に移行できる。
また、ロボット作業エリア40を拡張して、人手作業エリア30Bを縮小したので、生産ラインの長さを変更することなく移行でき、低コストとなる。つまり、ロボット作業エリア40を拡張して、ロボットR4による作業を1工程増やしても、生産ラインの長さは、ロボット作業エリア40を拡張する前と同じである。したがって、後にさらなる工程自動化が計画されても、以上の手順を繰り返すことで、容易にロボット作業エリア40を拡張して、人手作業をロボット作業に円滑に移行できる。
【0021】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本実施形態では、人手作業エリア30Bで行われている工程を自動化して、ロボット作業エリア40を下流側に向かって拡張したが、これに限らず、人手作業エリア30Aで行われている工程を自動化して、ロボット作業エリア40を上流側に向かって拡張してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る作業自動化方法が適用された作業システムの構成を示すブロック図である。
【図2】前記実施形態に係る作業システムについて、移行対象となる人手作業を抽出する手順を説明するための図である。
【図3】前記実施形態に係る作業システムについて、新たなロボットを設置して、ロボット作業エリアを拡張する手順を説明するための図である。
【図4】前記実施形態に係る作業システムについて、移行対象となる人手作業を新たなロボットの作業に移行する手順を説明するための図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ワーク組み立てシステム(作業システム)
10 ボディ(ワーク)
21 搬送路
30A、30B 人手作業エリア
40 ロボット作業エリア
50A、50B 緩衝スペース
P1〜P8 作業者
R1〜R4 ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対して作業者およびロボットにより作業を行う作業システムについて、人手作業をロボット作業に移行する作業自動化方法であって、
前記作業システムに、搬送路に沿って設けられて複数の作業者が配置される人手作業エリアと、前記搬送路に沿って設けられて複数のロボットが配置されるロボット作業エリアと、前記人手作業エリアと前記ロボット作業エリアとの境界に設けられた緩衝スペースと、を設け、前記人手作業エリアでは、前記ワークを連続送りとし、前記ロボット作業エリアでは、前記ワークをタクト送りとし、
前記人手作業のうち移行対象となるものを抽出する手順と、
当該移行対象となる人手作業を、前記人手作業エリアのうち最も前記緩衝スペース側で行う手順と、
新たなロボットを前記緩衝スペースに設置して、ロボット作業エリアを拡張する手順と、
前記移行対象となる人手作業を前記新たなロボットの作業に移行する手順と、
前記人手作業エリアのうち最も前記緩衝スペース側のエリアを削減して、前記人手作業エリアを縮小する手順と、を備えることを特徴とする作業自動化方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−214264(P2009−214264A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62647(P2008−62647)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】