説明

作業車の姿勢制御装置

【課題】 車体が旋回走行している状態において走行安定性が低下するおそれを少ないものにしながら、精度よく車体の前後傾斜角を検出して、姿勢変更操作手段による車体の前後傾斜方向での作動制御を良好に行えるようにする。
【解決手段】 前後傾斜角センサ24の検出値のうちの高周波数成分を除去した後の検出値と角速度センサ25の検出値を積分した積分値のうちの低周波数成分を除去した後の積分値とを加算して車体Vの前後傾斜角を求める傾斜角算出手段300を備えて構成され、車体Vが旋回走行状態であることが検出されると、下降傾斜作動を実行し且つ上昇傾斜作動を実行しない形態で、車体Vの水平基準面に対する前後傾斜角が前記設定傾斜角になるように姿勢変更操作手段の作動を制御する下降操作限定処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車の姿勢制御装置に関し、詳しくは、走行装置の接地部に対する車体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向及び後下がり傾斜方向夫々に変更操作自在な姿勢変更操作手段と、車体の水平基準面に対する前後傾斜角を検出する前後傾斜角検出手段と、前記前後傾斜角検出手段の検出情報に基づいて車体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定傾斜角になるように前記姿勢変更操作手段の作動を制御する前後姿勢制御を実行する姿勢制御手段とが備えられ、前記姿勢変更操作手段が、車体における前端側箇所の前記走行装置の接地部に対する高さを変更調節自在な前側の駆動手段、及び、車体における後端側箇所の前記走行装置の接地部に対する高さを変更調節自在な後側の駆動手段を各別に操作自在な状態で備えて構成され、前記姿勢制御手段が、前記前後姿勢制御として、前記走行装置の接地部に対する車体の前後傾斜角を前記前下がり傾斜方向及び前記後下がり傾斜方向のいずれに変更操作する場合においても、車体における前端側箇所及び後端側箇所のうちの変更操作する傾斜方向の下がり側に位置する箇所の前記走行装置の接地部に対する高さが下限位置でなければ、前記前側の駆動手段及び前記後側の駆動手段のうちの前記傾斜方向の下がり側とは反対側に位置する駆動手段の作動を停止させた状態で前記傾斜下がり側に位置する駆動手段を車体下降方向に作動させる下降傾斜作動を実行し、車体における前端側箇所及び後端側箇所のうちの変更操作する傾斜方向の下がり側に位置する箇所の前記走行装置の接地部に対する高さが下限位置であれば、前記前側の駆動手段及び前記後側の駆動手段のうちの前記傾斜下がり側に位置する駆動手段の作動を停止させた状態で前記傾斜下がり側とは反対側に位置する駆動手段を車体上昇方向に作動させる上昇傾斜作動を実行する形態で、且つ、前記下降傾斜作動を実行して車体における前端側箇所及び後端側箇所のうち傾斜下がり側に位置する箇所での前記走行装置の接地部に対する高さが下限位置になった後においても車体の水平基準面に対する前後傾斜角が前記設定傾斜角になっていなければ、前記下降傾斜作動に引き続いて前記上昇傾斜作動を実行する形態で、前記姿勢変更操作手段の作動を制御する姿勢変更操作処理を実行するように構成されている作業車の姿勢制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作業車の姿勢制御装置は、前記姿勢変更操作処理を実行することにより、車体における前端側箇所の走行装置の接地部に対する高さ、及び、車体における後端側箇所の走行装置の接地部に対する高さのうちのいずれか一方が常に下限位置になるように車体の前後傾斜角の変更操作が行われることになり、機体重心位置が低いものとなって姿勢が安定し易く走行安定性を向上させることができるようにしたものであるが、この種の作業車の姿勢制御装置において、従来では次のように構成されたものがあった。
【0003】
すなわち、前記前後傾斜角検出手段が、重力の作用によって車体の前後傾斜角を検出する重力式の傾斜角センサにて構成されて、その重力式の傾斜角センサの検出値に基づいて車体の前後傾斜角を求めるように構成され、そして、前記姿勢変更操作手段として、車体における左側前部、左側後部、右側前部、及び、右側後部の夫々において走行装置の接地部に対する高さを各別に変更調節自在な4個の駆動手段としての油圧シリンダを備えて構成され、前記4個の油圧シリンダのうち、左側前部及び右側前部に位置する2つの油圧シリンダを前側の駆動手段として作動させ、左側後部及び右側後部に位置する2つの油圧シリンダを後側の駆動手段として作動させる構成となっており、車体の前後傾斜角を変更するときは、前記姿勢制御手段が前記姿勢変更操作処理を実行するように構成されたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
更に説明を加えると、前記重力式の傾斜センサは、車体に備えられた容器に所定粘度の液体を収納し、且つ、その液体に浸漬する一対の電極を備えており、車体が水平基準面から傾斜するに伴って容器に対して液面が傾斜して、一対の電極の浸漬量が変化して一対の電極間の静電容量が変化することになるから、その一対の電極間の静電容量の変化を車体の前後傾斜角の情報として電気的に検出する構成となっている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−204613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来構成において使用される重力式の傾斜角センサは、車体の走行に伴う細かな振動によって液体が揺れ動いて誤った情報を検出しないように液体が所定粘度を有する構成となっており、このように液体が所定粘度を有する構成であるから、車体の素早い姿勢変化に対しては追従性が悪くなるものであった。
【0007】
すなわち、重力式の傾斜角センサは、車体の前後方向の傾斜角が変化していない状態や車体が緩速で前後傾斜しているような状態であれば、車体の前後傾斜角を精度よく検出することができるが、車体が急速に前後傾斜したような場合には、傾斜角センサが車体の傾斜に追従できずに応答遅れが発生して、車体の前後傾斜角を精度よく検出することができないおそれがあり、前記姿勢変更操作処理を良好に行うことができないおそれがあった。
【0008】
そこで、改良構成として、重力式の傾斜角センサとは別に車体の傾斜角検出方向での角速度を検出する角速度センサ、例えば振動ジャイロ式の角速度センサを備えて、この角速度センサの検出値を積分処理して傾斜角を求めて傾斜角センサの検出値を補うようにして車体の傾斜角を検出する構成も提案されている。つまり、応答性のよい角速度センサを用いて、車体が急速に傾斜するときであっても、角速度センサの検出値により車体の傾斜角を検出するようにして、傾斜角センサの応答遅れに起因した誤差を解消しようとするものである。
【0009】
しかし、上述したような角速度センサは、車体の前後傾斜方向での角速度を検出するように配置する場合、角速度センサは、角速度を検出するときの自己の検出軸芯を車体が前後傾斜するときの軸芯、つまり車体左右方向に沿う軸芯に沿うように取り付ける必要があるが、組み付けの誤差等により、車体左右方向に沿う軸芯に対して少しずれた状態で検出軸芯が設けられることがある。又、この種の作業車は圃場等の不整地を走行することが多く、車体が左右に傾斜した状態で走行することがあるが、このような状態においても、角速度を検出するときの自己の検出軸芯が車体左右方向に沿う軸芯に対して少しずれた状態になることがある。そして、このような角速度を検出するときの自己の検出軸芯が車体左右方向に沿う軸芯に対して少しずれた状態で車体が旋回走行すると、車体左右方向に沿う軸芯の周りでの前後傾斜方向での角速度だけでなく、車体左右方向に沿う軸芯と直交する上下軸芯周りでの角速度成分も検出してしまうことがある。
【0010】
その結果、車体の旋回走行中においては、車体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定傾斜角になっていても角速度の検出値に誤差が含まれることになり、しかも、その誤差が積分によって累積して検出誤差が大きくなり、車体が前後方向に傾斜していると誤って判別されて、前後傾斜角方向に姿勢が変化する等、姿勢変更操作手段による車体の前後傾斜方向での姿勢変更操作を良好に行うことができないおそれがあった。
【0011】
そこで、角速度センサの検出値により車体の傾斜角を検出するようにして、傾斜角センサの応答遅れに起因した誤差を解消するようにしたものにおいて、上記したように旋回走行中における角速度センサによる検出誤差を無くすために旋回走行中は前記姿勢変更操作手段の作動を停止させる構成が考えられるが、このような構成にすると、例えば、車体における前端側箇所の走行装置の接地部に対する高さ、又は、車体における後端側箇所の走行装置の接地部に対する高さのうちのいずれかが下限位置よりも高い状態になったまま旋回走行を継続してしまうおそれがあり、車体の走行安定性が低下する不利がある。
【0012】
本発明の目的は、車体が旋回走行している状態において、前後傾斜角検出手段の検出誤差に起因した不要な姿勢変更を回避して走行安定性が低下するおそれを少ないものにしながら、車体が旋回走行していない状態においては、精度よく車体の前後傾斜角を検出して、姿勢変更操作手段による車体の前後傾斜方向での作動制御を良好に行うことが可能となる作業車の姿勢制御装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る作業車の姿勢制御装置は、走行装置の接地部に対する車体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向及び後下がり傾斜方向夫々に変更操作自在な姿勢変更操作手段と、車体の水平基準面に対する前後傾斜角を検出する前後傾斜角検出手段と、前記前後傾斜角検出手段の検出情報に基づいて車体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定傾斜角になるように前記姿勢変更操作手段の作動を制御する前後姿勢制御を実行する姿勢制御手段とが備えられ、
前記姿勢変更操作手段が、
車体における前端側箇所の前記走行装置の接地部に対する高さを変更調節自在な前側の駆動手段、及び、車体における後端側箇所の前記走行装置の接地部に対する高さを変更調節自在な後側の駆動手段を各別に操作自在な状態で備えて構成され、
前記姿勢制御手段が、前記前後姿勢制御として、
前記走行装置の接地部に対する車体の前後傾斜角を前記前下がり傾斜方向及び前記後下がり傾斜方向のいずれに変更操作する場合においても、車体における前端側箇所及び後端側箇所のうちの変更操作する傾斜方向の下がり側に位置する箇所の前記走行装置の接地部に対する高さが下限位置でなければ、前記前側の駆動手段及び前記後側の駆動手段のうちの前記傾斜方向の下がり側とは反対側に位置する駆動手段の作動を停止させた状態で前記傾斜下がり側に位置する駆動手段を車体下降方向に作動させる下降傾斜作動を実行し、車体における前端側箇所及び後端側箇所のうちの変更操作する傾斜方向の下がり側に位置する箇所の前記走行装置の接地部に対する高さが下限位置であれば、前記前側の駆動手段及び前記後側の駆動手段のうちの前記傾斜下がり側に位置する駆動手段の作動を停止させた状態で前記傾斜下がり側とは反対側に位置する駆動手段を車体上昇方向に作動させる上昇傾斜作動を実行する形態で、且つ、
前記下降傾斜作動を実行して車体における前端側箇所及び後端側箇所のうち傾斜下がり側に位置する箇所での前記走行装置の接地部に対する高さが下限位置になった後においても車体の水平基準面に対する前後傾斜角が前記設定傾斜角になっていなければ、前記下降傾斜作動に引き続いて前記上昇傾斜作動を実行する形態で、前記姿勢変更操作手段の作動を制御する姿勢変更操作処理を実行するように構成されているものであって、
その第1特徴構成は、前記前後傾斜角検出手段が、
重力の作用によって車体の水平基準面に対する前後傾斜角を検出する重力式の前後傾斜角センサと、車体の前後傾斜方向での角速度を検出する角速度センサと、前記前後傾斜角センサの検出値のうちの高周波数成分を除去した後の検出値と前記角速度センサの検出値を積分した積分値のうちの低周波数成分を除去した後の積分値とを加算して車体の前後傾斜角を求める傾斜角算出手段とを備えて構成され、
車体が旋回走行状態であるか否かを検出する旋回状態検出手段が備えられ、
前記姿勢制御手段が、前記前後姿勢制御として、
前記旋回状態検出手段にて車体が旋回走行状態であることが検出されると、前記下降傾斜作動を実行しかつ前記上昇傾斜作動を実行しない形態で、車体の水平基準面に対する前後傾斜角が前記設定傾斜角になるように前記姿勢変更操作手段の作動を制御する下降操作限定処理を実行し、前記旋回状態検出手段にて前記旋回走行状態でないことが検出されると、前記姿勢変更操作処理を実行するように構成されている点にある。
【0014】
第1特徴構成によれば、前後傾斜角検出手段が、重力の作用によって車体の前後傾斜角を検出する重力式の傾斜角センサと、車体の前後傾斜方向での角速度を検出する角速度センサと、前記前後傾斜角センサの検出値のうちの高周波数成分を除去した後の検出値と前記角速度センサの検出値を積分した積分値のうちの低周波数成分を除去した後の積分値とを加算して車体の前後傾斜角を求める傾斜角算出手段とを備えて構成されているから、例えば、車体の前後方向の傾斜角が変化していない状態や車体が緩速で前後傾斜しているような状態においては、その角度変化は低周波数成分として現出するから、主に重力式の傾斜角センサの高周波数成分を除去した後の検出値により車体の前後傾斜角を精度よく検出することが可能であり、車体が急激に前後傾斜している状態では、その角度変化は高周波数成分として現出するから、車体の前後傾斜方向での角速度を検出する角速度センサの検出値を積分した積分値のうちの低周波数成分を除去した後の積分値により車体の前後傾斜角を精度よく検出することが可能である。
このようにして、車体の前後傾斜姿勢が緩速で変化する場合であっても急速に変化する場合であっても、車体の前後傾斜角を精度よく検出することが可能となる。
【0015】
そして、旋回状態検出手段によって車体が旋回走行状態であるか否かが検出され、前記姿勢制御手段は、前記旋回状態検出手段にて車体が旋回走行状態であることが検出されると前記下降操作限定処理を実行する。つまり、車体が旋回走行状態であるときは、車体の水平基準面に対する前後傾斜角が前記設定傾斜角になるように前記姿勢変更操作手段の作動を制御するのであるが、そのとき、前記下降傾斜作動だけを実行し且つ前記上昇傾斜作動は実行しないのである。
【0016】
説明を加えると、車体が旋回走行中においては、角速度センサが組み付けの誤差や車体が左右傾斜した状態で走行する等の要因により、車体左右方向に沿う軸芯の周りでの角速度成分だけでなく、上下軸芯周りでの角速度成分も検出してしまうことがあるが、このように上下軸芯周りでの角速度を検出する場合には、車体が旋回走行すると、その旋回走行に伴う上下軸芯周りでの角速度が誤差として検出されるおそれがある。
【0017】
そこで、車体が旋回走行している状態では、前記下降傾斜作動だけを実行し且つ前記上昇傾斜作動は実行しないようにして、極力、車体が低い位置になるようにしながら、車体の水平基準面に対する前後傾斜角が前記設定傾斜角に近付くように姿勢変更を行い、角速度センサの検出誤差に起因した不要な姿勢変更を回避しながら走行安定性が低下するおそれは少ないものにできる。
【0018】
一方、前記姿勢制御手段は、前記旋回状態検出手段にて前記旋回走行状態でないことが検出されると、前記姿勢変更操作処理を実行するので、車体が旋回走行していない状態においては、精度よく車体の前後傾斜角を検出して、姿勢変更操作手段による車体の前後傾斜方向での作動制御を良好に行うことが可能となる。
【0019】
従って、第1特徴構成によれば、車体が旋回走行している状態において、前後傾斜角検出手段の検出誤差に起因した不要な姿勢変更を回避して走行安定性が低下するおそれを少ないものにしながら、車体が旋回走行していない状態においては、精度よく車体の前後傾斜角を検出して、姿勢変更操作手段による車体の前後傾斜方向での作動制御を良好に行うことが可能となる作業車の姿勢制御装置を提供できるに至った。
【0020】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記姿勢制御手段が、モード切換指令手段による指令に基づいて、前記前後姿勢制御として、前記旋回状態検出手段にて車体が旋回走行状態であることが検出されると前記下降操作限定処理を実行し、且つ、前記旋回走行状態でないことが検出されると前記姿勢変更操作処理を実行する処理形態変更型の制御モードと、前記前後姿勢制御として、前記旋回状態検出手段の検出情報にかかわらず常に前記姿勢変更操作処理を実行する処理形態不変型の制御モードとに切り換え自在に構成されている点にある。
【0021】
第2特徴構成によれば、前記姿勢制御手段は、前記モード切換指令手段による指令に基づいて処理形態変更型の制御モードに切り換えられているときは、前記前後姿勢制御として、前記旋回状態検出手段にて前記旋回走行状態であることが検出されると前記下降操作限定処理を実行し、且つ、前記旋回走行状態でないことが検出されると前記姿勢変更操作処理を実行するので、車体が旋回走行している状態においては、前後傾斜角検出手段の検出誤差に起因した不要な姿勢変更を回避しながら走行安定性が低下するおそれは少ないものにしながら、旋回走行せず例えば直進走行しているような場合には、検出誤差の少ない状態で精度よく車体の前後傾斜角を検出して、姿勢変更操作手段による車体の前後傾斜方向での作動制御を良好に行うことが可能となる。
【0022】
例えば、作業車が乾燥している固めの圃場で作業走行するような場合には、この処理形態変更型の制御モードに切り換えて作業を行うことで、旋回走行中に車体が前後傾斜していないにもかかわらず、角速度センサの計測誤差に起因して前後傾斜角が変更操作されると、車体の前部に備えられる刈取装置等の作業装置が地面に突っ込むおそれがあるが、本第2特徴構成によれば、このような不利を回避し易いものとなる。ちなみに、固めの圃場であれば作業車の前後傾斜角が大きく変化するおそれは少なく、旋回走行中に前記姿勢変更操作処理を実行しなくても作業車の前後姿勢が不安定になり走行安定性を損なうおそれは少ない。
【0023】
一方、前記姿勢制御手段は、前記モード切換指令手段による指令に基づいて処理形態不変型の制御モードに切り換えられると、前記前後姿勢制御として、前記旋回状態検出手段の検出情報にかかわらず常に前記姿勢変更操作処理を実行することになる。この処理形態変更型の制御モードにおいては、例えば車体が旋回走行している場合であっても、姿勢変更操作処理を実行するので、旋回走行に起因して前後傾斜角の検出誤差が発生していても、車体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定傾斜角になるように姿勢変更操作されることになる。
【0024】
例えば、作業車が水田等の軟弱な圃場で作業走行するような場合には、作業車が走行するときの車体前後方向での加速度が発生すると、車体が軟弱な圃場内に埋り込み前後傾斜姿勢が大きく変化することがあるので早急に姿勢修正操作を行う必要があるが、そのような場合には、処理形態不変型の制御モードに切り換えておくことで、車体が旋回走行している場合においても車体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定傾斜角になるように姿勢変更操作を行うことができて使い勝手がよいものとなる。
【0025】
従って、第2特徴構成によれば、操縦者の指令に基づいて制御モードを切り換えることで、例えば圃場の硬軟度合いの違い等、作業状況の違いに応じて適切な制御状態で姿勢変更操作手段の作動を制御することができて使い勝手のよい作業車を提供できるに至った。
【0026】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成に加えて、前記姿勢制御手段が、前記処理形態変更型の制御モードにおいて、前記下降操作限定処理を実行している状態から前記姿勢変更操作処理を実行する状態に切り換わったときに車体の水平基準面に対する前後傾斜角が前記設定傾斜角になるように前記姿勢変更操作手段を作動させるときの処理形態変更時の姿勢変更用の操作速度を、処理形態を変更しない状態で車体の水平基準面に対する前後傾斜角が前記設定傾斜角になるように前記姿勢変更操作手段を作動させるときの通常用の姿勢変更用の操作速度よりも低速に設定した状態で前記姿勢変更操作手段の作動を制御するように構成されている点にある。
【0027】
第3特徴構成によれば、前記処理形態変更型の制御モードにて前記下降操作限定処理を実行している状態において、そのような状態から前記姿勢変更操作処理を実行する状態に切り換わることがあると、そのとき、姿勢変更用の操作速度を前記通常用の姿勢変更用の操作速度よりも低速に設定した状態で前記姿勢変更操作手段の作動を制御することになる。
【0028】
前記下降操作限定処理を実行している状態において、例えば走行路面の凹凸等に起因して車体の水平基準面に対する前後傾斜角が大きく変化していることも考えられるが、そのような状態から前記姿勢変更操作処理を実行する状態に切り換わり、通常用の姿勢変更用の操作速度で姿勢修正操作が行われると、急激に前後姿勢が変化して作業車に搭乗している操縦者にとっては乗り心地が悪くなるおそれがあるが、上記したように姿勢変更用の操作速度を前記通常用の姿勢変更用の操作速度よりも低速に設定した状態で前記姿勢変更操作手段の作動を制御するようにしたから、急激に前後姿勢が変化することがなく乗り心地が悪くなるおそれは少ないものになる。
【0029】
従って、第3特徴構成によれば、作業車に搭乗している操縦者が乗り心地が悪くなるおそれがなく、走行安定性の向上を図ることが可能となる作業車を提供できるに至った。
【0030】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかに加えて、前記走行装置として、各別に駆動速度を変更自在な左右一対の走行装置が備えられ、
前記左右一対の走行装置夫々の駆動速度を異ならせて車体を旋回走行させるように構成され、
前記旋回状態検出手段が、
前記左右一対の走行装置の夫々の駆動速度を検出する一対の走行速度検出手段と、前記左右一対の走行装置の夫々の駆動速度の差に基づいて車体が旋回するときの旋回角速度を求める演算手段と、その旋回角速度を積分する積分手段と、その積分手段にて積分した積分値のうちの低周波数成分を除去する旋回状態検出用のハイパスフィルターと、その旋回状態検出用のハイパスフィルターの出力値により旋回走行状態であるか否かを判別する判別手段とを備えて構成されている点にある。
【0031】
第4特徴構成によれば、作業車は、左右一対の走行装置夫々の駆動速度を異ならせて車体を旋回走行させるが、一対の走行速度検出手段にて検出される左右一対の走行装置の夫々の駆動速度の差に基づいて、演算手段によって車体が旋回するときの旋回角速度が求められる。そして、演算手段にて求められる旋回角速度を積分手段にて積分して、その積分手段にて積分した積分値のうちの低周波数成分が旋回状態検出用のハイパスフィルターによって除去され、このハイパスフィルターの出力値により判別手段が前記旋回走行状態であるか否かを判別することになる。
【0032】
このように左右一対の走行装置の夫々の駆動速度の差に基づいて旋回角速度を求めて、その旋回角速度を積分することで旋回角度を求めるようにし、且つ、積分値のうちの低周波数成分が除去された後の出力値により前記旋回走行状態であるか否かを判別するようにしたので、速めの速度で旋回走行するような場合には、適切に旋回走行状態であることが判別されて前記下降操作限定処理を実行し、低速でゆっくりと旋回するような場合等においては前記低周波数成分が除去されることから旋回状態ではないと判別して前記姿勢変更操作処理を実行することになる。
【0033】
その結果、例えば、作業走行中に旋回走行する場合には速めの速度で旋回走行するので前記下降操作限定処理を実行することになるが、作業車が畦から圃場へ進入する場合には低速でゆっくりと旋回することがあり、そのような場合においては前記姿勢変更操作処理を実行することで進入作業が行い易いものになる等の利点がある。
【0034】
従って、第4特徴構成によれば、前記下降操作限定処理を実行するのに必要な旋回走行状態であるか否かを適切に判別することができ、作業状況に適した前後姿勢制御を実行することが可能な作業車を提供できるに至った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を作業車の一例としてのコンバインに適用した場合について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、コンバインは、左右一対のクローラ式の走行装置1L,1R、刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置3、脱穀された穀粒を貯留する穀粒タンク4、搭乗運転部2等を備えた車体Vに対して、稲や麦等の植立穀稈を刈り取って脱穀装置3に供給する刈取部10を昇降自在に備えて構成されている。
【0036】
刈取部10は、先端部に設けた分草具6、分草具6にて分草された植立穀稈を引き起こす引き起こし装置5、引き起こされた穀稈の株元側を切断するバリカン型の刈刃7、刈取穀稈を徐々に横倒れ姿勢に変更しながら後方側に搬送する縦搬送装置8等にて構成され、車体Vの前部に横軸芯P1周りに油圧式の刈取シリンダC1によって揺動昇降自在に設けられている。
【0037】
上記分草具6の後方側箇所に、刈取部10の地面に対する高さを検出する超音波式の刈高さセンサ9が設けられている。詳述はしないが、この刈高さセンサ9は、下方側に向けて超音波を発信してから受信するまでの時間を計測することで、刈取部10の地面に対する高さを検出するように非接触式に構成されている。
【0038】
そして、このコンバインでは、左右の走行装置1L,1Rの接地部に対する車体Vの前後傾斜角及び左右傾斜角を変更操作自在な姿勢変更操作手段100が設けられている。以下、その構成について説明する。
先ず、左右の走行装置1L,1Rの車体Vへの取付構造を説明する。尚、左右の走行装置1L,1Rは夫々同一構成であるから、そのうち左側の走行装置1Lについて以下に説明し、右側の走行装置1Rについてはその説明を省略する。
【0039】
図2に示すように、車体Vを構成する前後向き姿勢の主フレーム11に対して固定される支持フレーム12の前端側には駆動スプロケット13が回転自在に支持されるとともに、複数個の遊転輪体14を前後方向に並べた状態で枢支し、且つ、後端部にテンション輪体15を支持したトラックフレーム16が前記支持フレーム12に対して上下動可能に装着されている。そして、前記駆動スプロケット13とテンション輪体15及び各遊転輪体14にわたり無端回動体であるクローラベルトBが巻回されている。
【0040】
前記支持フレーム12の前部側には水平軸芯P2周りで回動可能に側面視で略L字形に構成される前ベルクランク17aが枢支され、支持フレーム12の後部側には水平軸芯P3周りで回動可能に側面視で略L字形に構成される後ベルクランク17bが枢支されている。前ベルクランク17aの下方側端部がトラックフレーム16の前部側箇所に枢支連結され、後ベルクランク17bの下方側端部は、ストローク吸収用の補助リンク17b1を介して、トラックフレーム16の後部側箇所に枢支連結されている。
一方、前後ベルクランク17a,17bの夫々の上方側端部には、夫々、油圧シリンダC2,C3のシリンダロッドが連動連結されている。前記各油圧シリンダC2,C3のシリンダ本体側は主フレーム11における横フレーム部分に枢支連結されており、前記各油圧シリンダC2,C3は夫々複動型の油圧シリンダにて構成されている。
【0041】
前ベルクランク17aに対応する油圧シリンダC2(以下、左前シリンダという)を最も伸張させるとともに、後ベルクランク17bに対応する油圧シリンダC3(以下、左後シリンダという)を最も短縮させると、図2に示すように、トラックフレーム16が支持フレーム12に受け止め支持され、トラックフレーム16が主フレーム11に最も近づいてほぼ平行状態となる。
【0042】
そして、図2に示す状態から、左後シリンダC3をそのままの状態に維持しながら左前シリンダC2を短縮作動させると、図3に示すように、車体Vの前部側を接地部に対して離間する方向に姿勢変更することになる。
図2に示す状態から、左前シリンダC2をそのままの状態に維持しながら左後シリンダC3を伸長作動させると、図4に示すように、車体Vの後部側を接地部に対して離間する方向に姿勢変更することになる。
又、図2に示す状態から、左前シリンダC2を短縮作動させ、且つ、左後シリンダC3を伸長作動させると、図5に示すように、車体Vが接地部に対して平行姿勢のまま離間する方向に姿勢変更することになる。
【0043】
右側の走行装置1Rにおいても左側の走行装置1Lと同様に、機体前部側に位置する右前シリンダC4と、機体後部側に位置する右後シリンダC5とが夫々備えられ、左側の走行装置1Lと同様な動作を行う。尚、左右両側の走行装置1L,1Rが夫々図2に示す状態になっていると、走行装置1L,1Rの接地部に対する車体Vの前後傾斜角及び左右傾斜角が夫々零又は略零となる基準状態としての下限基準姿勢となる。
【0044】
このように前記姿勢変更操作手段100が、車体Vにおける左側前部、左側後部、右側前部、及び、右側後部の夫々において前記左右走行装置1L,1Rの接地部に対する高さを各別に変更調節自在な4個の駆動手段としての前記4個の機体姿勢変更用の油圧シリンダC2〜C5を備えて構成されている。
【0045】
そして、左右の後シリンダC3,C5を作動停止させた状態において、左右の前シリンダC2,C4を短縮作動させると車体Vの前部側が走行装置1L,1Rの接地部に対して離間する方向に姿勢変更(前上昇操作)し、左右の前シリンダC2,C4を伸長作動させると車体Vの前部側が走行装置1L,1Rの接地部に対して近接する方向に姿勢変更(前下降操作)することになる。又、左右の前シリンダC2,C4を作動停止させた状態において、左右の後シリンダC3,C5を伸長作動させると車体Vの後部側が走行装置1L,1Rの接地部に対して離間する方向に姿勢変更(後上昇操作)し、左右の後シリンダC3,C5を短縮作動させると車体Vの後部側が走行装置1L,1Rの接地部に対して近接する方向に姿勢変更(後下降操作)することになる。
従って、左前シリンダC2と右前シリンダC4とが前側の駆動手段に対応しており、左前シリンダC2と左後シリンダC3が後側の駆動手段に対応している。
【0046】
前記4個の油圧シリンダC2,C3,C4,C5の夫々に対応させて、左右走行装置1L,1Rにおける前記各ベルクランク17a,17bの回動支点部に対応する箇所に、その回動量に基づいて前記各油圧シリンダC2,C3,C4,C5の操作量(即ち、伸縮作動したストローク量)を検出するポテンショメータ形のストロークセンサ18,19,20,21が設けられている(図9参照)。
【0047】
次に、動力伝達系を図6に示す。車体Vに搭載されたエンジンEから出力された動力は、脱穀クラッチ45を介して脱穀装置3に伝達されるとともに、走行クラッチ46及び走行変速装置としての無段変速装置47を介して左右の走行装置1L,1Rのミッション部48に伝達され、ミッション部48に伝達された動力は、走行装置1L,1Rに伝達される一方、刈取クラッチ49を介して刈取部10に伝達される。又、詳述はしないが、前記ミッション部48に伝達された動力を左右の走行装置1L,1Rにおける駆動速度に差をつけて旋回操作するための旋回用伝動機構55が備えられており、搭乗運転部2に備えられた左右方向並びに前後方向の夫々に十字揺動操作自在な操作レバー28の左右方向の揺動操作に基づいて旋回用伝動機構55を切り換えて車体Vを旋回走行させることができるようになっている。前記無段変速装置47は、搭乗運転部2に設けた変速レバー51によって変速操作されるように構成されている。又、左右の走行装置1L,1Rの夫々の出力軸の駆動速度を各別に検出する一対の走行速度検出手段としての回転速度センサ65,66が備えられる。
【0048】
そして、このコンバインには、重力の作用によって、車体Vの水平基準面に対する前後傾斜角を検出する重力式の前後傾斜角センサ24が車体Vに設けられており、この前後傾斜角センサ24は次のように構成されている。
すなわち、図7に示すように、車体Vに固定された角型の容器41の内部に、シリコンオイル等からなる所定粘度の液体42が収容され、同一形状の金属板を同一間隔で平行に立設した一対の検出電極43が傾斜角検出方向(図7において左右方向)に間隔をあけて容器41に固定される状態で2組配置されている。そして、液体42が重力により初期姿勢(液面水平状態)に復帰しているときに、車体Vが傾斜していない状態では、2組の検出電極43が同一漬浸状態(図7の状態)になり、車体Vが傾斜している状態では、2組の検出電極43の漬浸状態が異なり、その各検出電極43の静電容量を計測してその計測値の差(車体Vが傾斜していない状態ではゼロである)を傾斜角情報に対応する検出値に変換する変換回路部44が備えられている。又、車体Vの前後傾斜方向での角速度を検出する角速度センサ25が備えられており、前後傾斜角センサ24の検出値及び角速度センサ25の検出値に基づいて車体Vの前後傾斜角を求める傾斜角算出手段300が後述する制御装置22を利用して構成されている。
【0049】
又、重力の作用によって車体Vの水平基準面に対する左右傾斜角を検出する重力式の左右傾斜角センサ23が備えられており、この左右傾斜角センサ23は、検出方向が異なるが上述したような前後傾斜角センサ24と同一の構成である。
【0050】
図9に示すように、マイクロコンピュータ利用の制御装置22が設けられ、この制御装置22に、前記各ストロークセンサ18〜21、刈高さセンサ9、左右傾斜角センサ23、前後傾斜角センサ24、角速度センサ25の各検出情報が入力されている。又、搭乗運転部2の操作パネルには、左右方向での姿勢変更を行う左右姿勢制御の入切を指令する左右自動スイッチ26、前後方向での姿勢変更を行う前後姿勢制御の入切を指令する前後自動スイッチ27、制御モードを切り換えるためのモード切換指令手段としてのモード切換スイッチ67が設けられ、それらの各操作情報も制御装置22に入力されている。さらに、車体Vに対する刈取部10の地面に対する高さ即ち刈取高さを設定するボリューム式の刈高設定器39、刈取部上昇を指令する上昇スイッチSW1、刈取部下降を指令する下降スイッチSW2等が備えられ、これらの情報も制御装置22に入力されている。
【0051】
前記上昇スイッチSW1及び前記下降スイッチSW2は、搭乗運転部2の操作パネルに備えられた十字揺動自在な操作レバー28の前後揺動操作にて入り切り操作される構成となっている。つまり、操作レバー28を後方側に設定量以上揺動すると上昇スイッチSW1がオンし、操作レバー28を前方側に設定量以上揺動すると下降スイッチSW2がオンする構成となっている。
【0052】
そして、図8に示すように、前記操作レバー28の握り部28aの上部には、車体Vの左右傾斜姿勢を左下げ方向に姿勢変更させる左傾斜指令を指令する左傾斜スイッチ60、車体Vの左右傾斜姿勢を右下げ方向に姿勢変更させる右傾斜指令を指令する右傾斜スイッチ61、車体Vの前後傾斜姿勢を前下げ方向に姿勢変更させる前傾斜操作を指令する前傾斜スイッチ62、車体Vの前後傾斜姿勢を後下げ方向に姿勢変更させる後傾斜指令を指令する後傾斜スイッチ63、車体Vの水平姿勢を指令する水平スイッチ64の夫々が手指にて操作可能に設けられている。そして、これらの各スイッチ60〜64の検出情報も制御装置22に入力されている。
【0053】
前記各スイッチ60〜64は、押し操作によってオン(指令状態)となり押し操作を解除するとオフ(非指令状態)となる切り付勢式の押し操作スイッチにて構成され、左傾斜スイッチ60がオンすると車体Vの左側を下げて右側を上げるように傾斜させる左傾斜指令が指令され、右傾斜スイッチ61がオンすると車体Vの右側を下げて左側を上げるように傾斜させる右傾斜指令が指令され、前傾斜スイッチ62がオンすると車体Vの前側を下げて後側を上げるように傾斜させる前傾斜指令が指令され、後傾斜スイッチ63がオンすると車体Vの後側を下げて前側を上げるように傾斜させる右傾斜指令が指令される。
【0054】
又、制御装置22を利用して、前後傾斜角センサ24及び角速度センサ25の検出情報に基づいて、車体Vの水平基準面に対する前後傾斜角を算出して、その前後傾斜角が設定傾斜角に維持されるように姿勢変更操作手段100の作動を制御する前後姿勢制御を実行する姿勢制御手段200が構成されている。この姿勢制御手段200は、左右傾斜角センサ23の検出情報に基づいて、車体Vの水平基準面に対する左右傾斜角が設定傾斜角に維持されるように姿勢変更操作手段100の作動を制御するように構成されている。
【0055】
そして、姿勢制御手段200は、前後姿勢制御において、前記4個の油圧シリンダC2〜C5のうち、左側前部及び右側前部に位置する2個の油圧シリンダ(左前シリンダC2と右前シリンダC4)と、左側後部及び右側後部に位置する2個の油圧シリンダ(左後シリンダC3と右後シリンダC5)のいずれか一方の2個の油圧シリンダを駆動停止させた状態で、他方の2個の油圧シリンダを駆動操作するように構成され、且つ、ローリング制御において、前記4個の油圧シリンダC2〜C5のうち、左側前部及び左側後部に位置する2個の油圧シリンダ(左前シリンダC2と左後シリンダC3)と、右側前部及び右側後部に位置する2個の油圧シリンダ(右前シリンダC4と右後シリンダC5)のいずれか一方の2個の油圧シリンダを駆動停止させた状態で、他方の2個の油圧シリンダを駆動操作するように構成されている。
【0056】
そして、制御装置22からは、刈取シリンダC1及び4個の機体姿勢変更用の油圧シリンダC2〜C5を油圧制御するための油圧制御用の電磁弁29〜33に対する駆動信号が夫々出力されている。尚、制御装置22は、詳述はしないが、刈取作業中において、刈高さセンサ9の検出値が刈高さ設定器39にて設定された設定刈高さに維持されるように刈取シリンダC1を作動させる刈高さ制御を実行する。
【0057】
又、制御装置22を利用して、前後傾斜角センサ24の検出値及び角速度センサ25の検出値に基づいて車体Vの前後傾斜角を求める傾斜角算出手段300が構成されている。説明を加えると、図10に示すように、制御装置22が、逐次検出される前後傾斜角センサ24の検出値のうちの高周波数成分を除去するローパスフィルター処理、角速度センサ25の検出値を積分する積分処理、及び、その積分した積分値のうちの低周波数成分を除去するハイパスフィルター処理の夫々をソフト処理により実行し、且つ、ローパスフィルター処理を行った後の出力値とハイパスフィルター処理を行った後の出力値とを加算して車体Vの前後傾斜角を求める処理を実行するように構成されている。
【0058】
すなわち、制御装置22を利用して、ローパスフィルター301、積分手段302、ハイパスフィルター303等が構成されており、これらにより傾斜角算出手段300が構成され、前後傾斜角センサ24と、角速度センサ25と、傾斜角算出手段300とにより車体の水平基準面に対する前後傾斜角を検出する前後傾斜角検出手段400が構成されることになる。制御装置22は、上記したような前後傾斜角の算出処理を設定単位時間毎に繰り返し実行するように構成されている。
【0059】
又、この実施形態では、制御装置22を利用して、左右一対の走行装置1L,1Rの夫々の駆動速度の差に基づいて、車体Vが旋回走行状態であるか否かを検出する旋回状態検出手段SKが構成されている。
【0060】
すなわち、前記旋回状態検出手段SKは、図11に示すように、前記左右一対の回転速度センサ65,66と、前記左右一対の走行装置1L,1Rの夫々の駆動速度の差に基づいて車体Vが旋回するときの旋回角速度を求める演算手段500と、その旋回角速度を積分する積分手段501と、その積分手段501にて積分した積分値のうちの低周波数成分を除去する旋回状態検出用のハイパスフィルター502と、その旋回状態検出用のハイパスフィルター502の出力値により旋回走行状態であるか否かを判別する判別手段503とを備えて構成されている。
【0061】
具体的には、制御装置22が、左右一対の回転速度センサ65,66の検出情報に基づいて車体Vが旋回するときの旋回角速度を求める演算処理、その旋回角速度を積分する積分処理、積分した積分値のうちの低周波数成分を除去するハイパスフィルター処理、そのハイパスフィルター処理の出力値により旋回走行状態であるか否かを判別する判別処理を夫々ソフト処理により実行する構成となっており、制御装置22を利用して、前記演算手段500、前記積分手段501、前記旋回状態検出用のハイパスフィルター502、及び、前記判別手段503の夫々が構成されている。
【0062】
又、姿勢制御手段200は、前後姿勢制御として、走行装置1L,1Rの接地部に対する車体Vの前後傾斜角を前下がり傾斜方向及び後下がり傾斜方向のいずれに変更操作する場合においても、車体Vにおける前端側箇所及び後端側箇所のうちの変更操作する傾斜方向の下がり側に位置する箇所の走行装置1L,1Rの接地部に対する高さが下限位置でなければ、前側の駆動手段(左前シリンダC2及び右前シリンダC4)及び後側の駆動手段(左後シリンダC3及び右後シリンダC5)のうちの傾斜方向の下がり側とは反対側に位置する駆動手段の作動を停止させた状態で前記傾斜下がり側に位置する駆動手段を車体下降方向に作動させる下降傾斜作動を実行し、車体Vにおける前端側箇所及び後端側箇所のうちの変更操作する傾斜方向の下がり側に位置する箇所の前記走行装置1L,1Rの接地部に対する高さが下限位置であれば、前記前側の駆動手段及び前記後側の駆動手段のうちの前記傾斜下がり側に位置する駆動手段の作動を停止させた状態で前記傾斜下がり側とは反対側に位置する駆動手段を車体上昇方向に作動させる上昇傾斜作動を実行する形態で、且つ、前記下降傾斜作動を実行して車体における前端側箇所及び後端側箇所のうち傾斜下がり側に位置する箇所での前記走行装置1L,1Rの接地部に対する高さが下限位置になった後においても車体の水平基準面に対する前後傾斜角が前記設定傾斜角になっていなければ、前記下降傾斜作動に引き続いて前記上昇傾斜作動を実行する形態で、前記姿勢変更操作手段100の作動を制御する姿勢変更操作処理を実行するように構成されている。
【0063】
そして、姿勢制御手段200は、前後姿勢制御として、旋回状態検出手段SKにて車体Vが旋回走行状態であることが検出されると、前記下降傾斜作動を実行しかつ前記上昇傾斜作動を実行しない形態で、車体Vの水平基準面に対する前後傾斜角が前記設定傾斜角になるように前記姿勢変更操作手段100の作動を制御する下降操作限定処理を実行し、旋回状態検出手段SKにて前記旋回走行状態でないことが検出されると、前記姿勢変更操作処理を実行するように構成されている。
【0064】
さらに説明を加えると、姿勢制御手段200は、モード切換スイッチ67による指令に基づいて、前後姿勢制御として、旋回状態検出手段SKにて車体Vが旋回走行状態であることが検出されると前記下降操作限定処理を実行し、且つ、旋回走行状態でないことが検出されると前記姿勢変更操作処理を実行する処理形態変更型の制御モードとしての乾田モードと、前記前後姿勢制御として、前記旋回状態検出手段SKの検出情報にかかわらず常に前記姿勢変更操作処理を実行する処理形態不変型の制御モードとしての湿田モードに切り換え自在に構成されている。すなわち、この実施形態では、乾田や湿田等の圃場の状況に応じて制御モードが切り換えられる構成となっている。
【0065】
又、前記乾田モードにおいて、前記下降操作限定処理を実行している状態から前記姿勢変更操作処理を実行する状態に切り換わったときに車体Vの前後傾斜角が前記設定傾斜角になるように前記姿勢変更操作手段100を作動させるときの処理形態変更時の姿勢変更用の操作速度を、処理形態を変更しない状態で車体Vの前後傾斜角が前記設定傾斜角になるように前記姿勢変更操作手段100を作動させるときの通常用の姿勢変更用の操作速度よりも低速に設定した状態で前記姿勢変更操作手段100の作動を制御するように構成されている。
【0066】
そして、前記湿田モードにおける制御感度を前記乾田モードにおける制御感度よりも敏感な制御感度に設定するように構成されている。すなわち、前後傾斜角検出手段にて検出される車体の水平基準面に対する前後傾斜角と前記設定傾斜角との偏差が姿勢制御用の不感帯を外れていると、前記偏差が前記不感帯内に入るように前記姿勢変更操作手段を作動させるように構成され、且つ、前記乾田モードでは、前記姿勢制御用の不感帯として乾田用の不感帯を用い、前記湿田モードでは、前記姿勢制御用の不感帯として前記乾田用の不感帯の幅よりも狭い幅の湿田用の不感帯を用いることにより乾田モードより敏感な制御感度に設定するように構成されている。
【0067】
次に、制御装置22による前後姿勢制御について、図12のフローチャートに基づいて具体的に説明する。
前後自動スイッチ27がオン操作されていれば、モード切換スイッチ67の操作状態により切り換えられる制御モードが湿田モードであるか乾田モードであるかを判別する。そして、湿田モードであれば、次のような姿勢変更操作処理を実行する。尚、水平基準面に対する設定傾斜角としては零度つまり水平状態に相当する値が予め設定されている。
【0068】
前後傾斜角センサ24の検出値と設定傾斜角が零に相当する信号値(制御目標値)との偏差が前記湿田用の不感帯を車体Vの前傾斜側に外れていれば、車体Vの前後傾斜姿勢を後下げ方向に姿勢変更させる後傾斜処理を実行する。すなわち、4つのシリンダC2〜C5からなる姿勢変更操作手段100を作動させるときの姿勢変更用の操作速度を通常の操作速度としての標準値を設定する。そして、機体後部に位置する左右のストロークセンサ19、21の検出情報に基づいて、左後シリンダC3と右後シリンダC5のいずれかが下限位置に操作されているか否かを判断し、両シリンダC3,C5がいずれも下限位置に操作されていなければ、傾斜方向の下がり側とは反対側に位置する駆動手段としての左前シリンダC2及び右前シリンダC4の作動を停止させて、左後シリンダC3と右後シリンダC5のいずれかが下限位置に達するまで、傾斜方向の下がり側に位置する駆動手段としての左後シリンダC3及び右後シリンダC5を短縮作動させる下降傾斜作動を実行する。
【0069】
左後シリンダC3及び右後シリンダC5のいずれかが下限位置に操作されても、そのとき前記偏差が湿田用の不感帯を車体Vの後傾斜側に外れていれば、引き続いて、左後シリンダC3及び右後シリンダC5を作動停止させて、左前シリンダC2及び右前シリンダC4のいずれかが上限位置に達するまで、左前シリンダC2及び右前シリンダC4を短縮作動させる上昇傾斜作動を実行する。
【0070】
又、前後傾斜角センサ24の検出値と水平状態に対応する信号値との偏差が前記湿田用の不感帯を車体Vの後傾斜側に外れていれば、車体Vの前後傾斜姿勢を前下げ方向に姿勢変更させる前傾斜処理を実行する。すなわち、機体前部に位置する左右のストロークセンサ18、20の検出情報に基づいて、左前シリンダC2と右前シリンダC4のいずれかが下限位置に操作されているか否かを判断し、両シリンダC2,C4がいずれも下限位置に操作されていなければ、その両シリンダC2,C4のいずれかが下限位置に達するまで、左前シリンダC2及び右前シリンダC4を伸長作動させる。左前シリンダC2及び右前シリンダC4のいずれかが下限位置に操作されても偏差が湿田用の不感帯を車体Vの後傾斜側に外れていれば、左後シリンダC3及び右後シリンダC5のいずれかが上限位置に達するまで、左後シリンダC3及び右後シリンダC5を伸長作動させる。
【0071】
尚、図示はしないが、前後姿勢制御を実行中に、手動による前後姿勢変更操作の指令があったときは、その指令に基づく手動姿勢変更操作を優先して実行する。つまり、前傾斜スイッチ62がオン操作されるとオンしている間だけ偏差の大きさにかかわらず前記前傾斜処理を実行し、後傾斜スイッチ63がオン操作されるとオンしている間だけ偏差の大きさにかかわらず後傾斜処理を実行する。
【0072】
そして、前記制御モードが乾田モードであれば、次のような処理を実行する。
前後傾斜角センサ24の検出値と水平状態に対応する信号値との偏差が前記乾田用の不感帯を外れていれば、次に、前記旋回状態検出手段SKの判別結果が旋回状態であるか否かを判断して、旋回状態でないことが判別されていると、上述したような姿勢変更操作処理を実行する。但し、旋回状態である状態から旋回状態でない状態に切り換わった直後であれば、姿勢変更操作手段100を作動させるときの姿勢変更用の操作速度として、通常用の姿勢変更用の操作速度である標準値よりも設定量だけ低速の操作速度を設定して姿勢変更操作処理を実行することになる。
【0073】
しかし、前記旋回状態検出手段SKにて旋回状態であることが判別されていると、次のような下降操作限定処理を実行する。
前記偏差が前記乾田用の不感帯を前傾斜側に外れていれば、車体Vの前後傾斜姿勢を後下げ方向に姿勢変更させる後傾斜処理を実行する。すなわち、機体後部に位置する左右のストロークセンサ19、21の検出情報に基づいて、左後シリンダC3と右後シリンダC5のいずれかが下限位置に操作されているか否かを判断し、両シリンダC3,C5がいずれも下限位置に操作されていなければ、傾斜方向の下がり側とは反対側に位置する駆動手段としての左前シリンダC2及び右前シリンダC4の作動を停止させて、左後シリンダC3と右後シリンダC5のいずれかが下限位置に達するまで、左後シリンダC3及び右後シリンダC5を短縮作動させる下降傾斜作動を実行する。
【0074】
前記偏差が前記乾田用の不感帯を後傾斜側に外れていれば、車体Vの前後傾斜姿勢を前下げ方向に姿勢変更させる前傾斜処理を実行する。すなわち、機体前部に位置する左右のストロークセンサ18、20の検出情報に基づいて、左前シリンダC2と右前シリンダC4のいずれかが下限位置に操作されているか否かを判断し、両シリンダC2,C4がいずれも下限位置に操作されていなければ、左後シリンダC3と右後シリンダC5の作動を停止させて、両シリンダC2,C4のいずれかが下限位置に達するまで、左前シリンダC2及び右前シリンダC4を伸長作動させる下降傾斜作動を実行する。
【0075】
このように、乾田モードにおいては、前記旋回状態であることが判別されると、上昇傾斜作動を実行することなく下降傾斜作動だけを実行するので、角速度センサ25の検出誤差が発生するおそれがある旋回走行中においては、このような角速度センサ25の検出誤差に起因した不要な姿勢変更により走行安定性が低下することを回避できるのである。
【0076】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
【0077】
(1)上記実施形態では、前記姿勢制御手段が、前記処理形態変更型の制御モードにおいて、前記下降操作限定処理を実行している状態から前記姿勢変更操作処理を実行する状態に切り換わったときに、姿勢変更用の操作速度を通常用の姿勢変更用の操作速度よりも低速に設定した状態で前記姿勢変更操作手段の作動を制御する構成としたが、姿勢変更用の操作速度を通常用の姿勢変更用の操作速度にて作動する構成としてもよい。
【0078】
(2)上記実施形態では、前記旋回状態検出手段が、一対の走行装置の夫々の駆動速度の差に基づいて旋回状態であるか否かを判別する構成を例示したが、このような構成に限らず、車体の旋回走行を指令する手動操作式の旋回指令手段の指令の有無に基づいて旋回走行状態であるか否かを検出するようにしてもよい。
【0079】
(3)上記実施形態では、前記モード切換指令手段による指令に基づいて、前記処理形態変更型の制御モードとしての乾田モードと、前記処理形態不変型の制御モードとしての湿田モードとに切り換え自在に構成され、乾田や湿田等の圃場の状況に応じて切り換えるものを例示したが、前記姿勢制御手段が前記処理形態変更型の制御モードのみを備える構成としてもよく、又、圃場の状況の違いに代えて、操縦者の好みに応じて選択するような構成としてもよい。
【0080】
(4)上記実施形態では、走行装置を、左右一対のクローラ式の走行装置で構成したが、これに限るものではなく、例えば、単一の走行装置でもよく、又、クローラ式ではなく車輪式の走行装置でもよい。
【0081】
(5)上記実施形態では、姿勢変更操作手段100を、車体Vの前後左右の4箇所に位置した4個の油圧シリンダC2〜C5にて構成したが、油圧シリンダ以外に、電動モータとネジ送り機構等からなる他の駆動手段にて構成してもよい。又、走行装置を接地部に対する車体の前後傾斜角を1個の駆動手段によって変更操作する構成としてもよい。
【0082】
(6)上記実施形態では、作業車としてコンバインを例示したが、例えば農用トラクタ、田植え機等、コンバイン以外の作業車であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】コンバインの前部を示す側面図
【図2】走行装置の昇降操作構成を示す側面図
【図3】走行装置の昇降操作構成を示す側面図
【図4】走行装置の昇降操作構成を示す側面図
【図5】走行装置の昇降操作構成を示す側面図
【図6】コンバインの動力伝達図
【図7】傾斜角センサの構成を示す斜視図
【図8】操作レバーの斜視図
【図9】制御ブロック図
【図10】前後傾斜角検出手段のブロック図
【図11】旋回状態検出手段のブロック図
【図12】制御作動を示すフローチャート
【符号の説明】
【0084】
1L,1R 走行装置
24 前後傾斜角センサ
25 角速度センサ
65,66 走行速度検出手段
67 モード切換指令手段
100 姿勢変更操作手段
200 姿勢制御手段
300 傾斜角算出手段
400 前後傾斜角検出手段
500 演算手段
501 積分手段
502 ハイパスフィルター
503 判別手段
C2,C4 前側の駆動手段
C3,C5 後側の駆動手段
SK 旋回状態検出手段
V 車体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置の接地部に対する車体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向及び後下がり傾斜方向夫々に変更操作自在な姿勢変更操作手段と、車体の水平基準面に対する前後傾斜角を検出する前後傾斜角検出手段と、前記前後傾斜角検出手段の検出情報に基づいて車体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定傾斜角になるように前記姿勢変更操作手段の作動を制御する前後姿勢制御を実行する姿勢制御手段とが備えられ、
前記姿勢変更操作手段が、
車体における前端側箇所の前記走行装置の接地部に対する高さを変更調節自在な前側の駆動手段、及び、車体における後端側箇所の前記走行装置の接地部に対する高さを変更調節自在な後側の駆動手段を各別に操作自在な状態で備えて構成され、
前記姿勢制御手段が、前記前後姿勢制御として、
前記走行装置の接地部に対する車体の前後傾斜角を前記前下がり傾斜方向及び前記後下がり傾斜方向のいずれに変更操作する場合においても、車体における前端側箇所及び後端側箇所のうちの変更操作する傾斜方向の下がり側に位置する箇所の前記走行装置の接地部に対する高さが下限位置でなければ、前記前側の駆動手段及び前記後側の駆動手段のうちの前記傾斜方向の下がり側とは反対側に位置する駆動手段の作動を停止させた状態で前記傾斜下がり側に位置する駆動手段を車体下降方向に作動させる下降傾斜作動を実行し、車体における前端側箇所及び後端側箇所のうちの変更操作する傾斜方向の下がり側に位置する箇所の前記走行装置の接地部に対する高さが下限位置であれば、前記前側の駆動手段及び前記後側の駆動手段のうちの前記傾斜下がり側に位置する駆動手段の作動を停止させた状態で前記傾斜下がり側とは反対側に位置する駆動手段を車体上昇方向に作動させる上昇傾斜作動を実行する形態で、且つ、
前記下降傾斜作動を実行して車体における前端側箇所及び後端側箇所のうち傾斜下がり側に位置する箇所での前記走行装置の接地部に対する高さが下限位置になった後においても車体の水平基準面に対する前後傾斜角が前記設定傾斜角になっていなければ、前記下降傾斜作動に引き続いて前記上昇傾斜作動を実行する形態で、前記姿勢変更操作手段の作動を制御する姿勢変更操作処理を実行するように構成されている作業車の姿勢制御装置であって、
前記前後傾斜角検出手段が、
重力の作用によって車体の水平基準面に対する前後傾斜角を検出する重力式の前後傾斜角センサと、車体の前後傾斜方向での角速度を検出する角速度センサと、前記前後傾斜角センサの検出値のうちの高周波数成分を除去した後の検出値と前記角速度センサの検出値を積分した積分値のうちの低周波数成分を除去した後の積分値とを加算して車体の前後傾斜角を求める傾斜角算出手段とを備えて構成され、
車体が旋回走行状態であるか否かを検出する旋回状態検出手段が備えられ、
前記姿勢制御手段が、前記前後姿勢制御として、
前記旋回状態検出手段にて車体が旋回走行状態であることが検出されると、前記下降傾斜作動を実行しかつ前記上昇傾斜作動を実行しない形態で、車体の水平基準面に対する前後傾斜角が前記設定傾斜角になるように前記姿勢変更操作手段の作動を制御する下降操作限定処理を実行し、前記旋回状態検出手段にて前記旋回走行状態でないことが検出されると、前記姿勢変更操作処理を実行するように構成されている作業車の姿勢制御装置。
【請求項2】
前記姿勢制御手段が、モード切換指令手段による指令に基づいて、
前記前後姿勢制御として、前記旋回状態検出手段にて車体が旋回走行状態であることが検出されると前記下降操作限定処理を実行し、且つ、前記旋回走行状態でないことが検出されると前記姿勢変更操作処理を実行する処理形態変更型の制御モードと、
前記前後姿勢制御として、前記旋回状態検出手段の検出情報にかかわらず常に前記姿勢変更操作処理を実行する処理形態不変型の制御モードとに切り換え自在に構成されている請求項1記載の作業車の姿勢制御装置。
【請求項3】
前記姿勢制御手段が、
前記処理形態変更型の制御モードにおいて、前記下降操作限定処理を実行している状態から前記姿勢変更操作処理を実行する状態に切り換わったときに車体の水平基準面に対する前後傾斜角が前記設定傾斜角になるように前記姿勢変更操作手段を作動させるときの処理形態変更時の姿勢変更用の操作速度を、処理形態を変更しない状態で車体の水平基準面に対する前後傾斜角が前記設定傾斜角になるように前記姿勢変更操作手段を作動させるときの通常用の姿勢変更用の操作速度よりも低速に設定した状態で前記姿勢変更操作手段の作動を制御するように構成されている請求項2記載の作業車の姿勢制御装置。
【請求項4】
前記走行装置として、各別に駆動速度を変更自在な左右一対の走行装置が備えられ、
前記左右一対の走行装置夫々の駆動速度を異ならせて車体を旋回走行させるように構成され、
前記旋回状態検出手段が、
前記左右一対の走行装置の夫々の駆動速度を検出する一対の走行速度検出手段と、前記左右一対の走行装置の夫々の駆動速度の差に基づいて車体が旋回するときの旋回角速度を求める演算手段と、その旋回角速度を積分する積分手段と、その積分手段にて積分した積分値のうちの低周波数成分を除去する旋回状態検出用のハイパスフィルターと、その旋回状態検出用のハイパスフィルターの出力値により旋回走行状態であるか否かを判別する判別手段とを備えて構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業車の姿勢制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−72147(P2009−72147A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245492(P2007−245492)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】