説明

作業車の走行変速構造

【課題】走行負荷の増大により、静油圧式無段変速装置を低速側に操作するように構成する場合、走行用の駆動力(トルク)の不足を避けながら、エンジンに大きな負荷が掛からないように構成する。
【解決手段】エンジンの動力が伝達される走行用の静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7Pを変速自在に構成し、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mを変速自在に構成する。走行負荷が増大すると、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mが低速側に操作される。静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mが低速側に操作されても、走行負荷が増大すると、静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7Pが低速側に操作される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用として静油圧式無段変速装置を備えた作業車において、静油圧式無段変速装置の操作構造に関する。
【背景技術】
【0002】
走行用として静油圧式無段変速装置を備えた作業車では、特許文献1に開示されているような構成を備えたものがある。
特許文献1では、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプを変速自在に構成し、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプを操作する変速レバー(特許文献1の図1の7)を備えており、運転者が変速レバーにより静油圧式無段変速装置の油圧ポンプを操作する。
【0003】
エンジン(特許文献1の図1のE)の回転数を検出する回転数検出センサー(特許文献1の図1のS1)を備えており、エンジンの回転数が低下すると、走行負荷が増大したと判断されて、電動モータ(特許文献1の図1の10)により変速レバーが自動的に低速側に操作され、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプが低速側に操作される。
これにより、上り坂での走行や旋回時等において、エンジンに大きな負荷が掛からないようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−159487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
静油圧式無段変速装置において、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプを低速側に操作することは、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプの吐出量を少なくすることなので、機体の走行速度が低速になると同時に、走行用の駆動力(トルク)も小さくなる。これにより、走行抵抗の大きな軟弱な作業地において、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプを低速側に操作すると、走行用の駆動力(トルク)が不足する状態になることが考えられる。
【0006】
本発明は、走行用の静油圧式無段変速装置を備えた作業車の走行変速構造において、走行負荷の増大により、静油圧式無段変速装置を低速側に操作するように構成する場合、走行用の駆動力(トルク)の不足を避けながら、エンジンに大きな負荷が掛からないように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は作業車の走行変速構造において次のように構成することにある。
エンジンの動力が伝達される走行用の静油圧式無段変速装置を備え、静油圧式無段変速装置を伝動上手側の油圧ポンプと伝動下手側の油圧モータとを備えて構成し、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプを変速自在に構成して、静油圧式無段変速装置の油圧モータを変速自在に構成する。走行負荷が増大すると、静油圧式無段変速装置の油圧モータを低速側に操作する油圧モータ減速手段を備える。油圧モータ減速手段により静油圧式無段変速装置の油圧モータが低速側に操作されても、走行負荷が増大すると、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプを低速側に操作する油圧ポンプ減速手段を備える。
【0008】
(作用)
[I]−1
静油圧式無段変速装置の油圧モータを低速側に操作することは、静油圧式無段変速装置の油圧モータのプランジャのストロークを小さなものにすることなので、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプから油圧モータに作動油が十分に供給されても、静油圧式無段変速装置の油圧モータはあまり回転しなくてもよいことになる。これにより、静油圧式無段変速装置の油圧モータを低速側に操作した場合、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプの吐出量が確保されていれば、静油圧式無段変速装置の油圧モータから伝動下手側に、十分な走行用の駆動力(トルク)を備えた低速の動力が伝達されることになる。
【0009】
本発明の第1特徴によれば、走行負荷が増大すると、静油圧式無段変速装置の油圧モータが低速側に操作される。これによって、十分な走行用の駆動力(トルク)を備えた低速の動力が走行装置に伝達されることになるので、走行抵抗の大きな軟弱な作業地であっても、走行用の駆動力(トルク)の不足を避けながら、エンジンに大きな負荷が掛からないようにすることができる。
【0010】
[I]−2
前項[I]−1に記載のように、走行負荷が増大して、静油圧式無段変速装置の油圧モータが低速側に操作された場合、作業地の状態や作業条件等により、静油圧式無段変速装置の油圧モータの低速側への操作だけでは十分ではなく、走行負荷の増大が抑えられない状態になることがある。
【0011】
本発明の第1特徴によれば、前項[I]−1に記載のように、静油圧式無段変速装置の油圧モータが低速側に操作されても、走行負荷が増大すると、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプが低速側に操作される。これにより、さらに低速の動力が走行装置に伝達されることになるので、エンジンに大きな負荷が掛からないようにすることができる。
【0012】
本発明の第1特徴によれば、走行負荷が増大すると、最初に静油圧式無段変速装置の油圧ポンプを低速側に操作するのではなく、最初に静油圧式無段変速装置の油圧モータを低速側に操作しており、次に静油圧式無段変速装置の油圧ポンプを低速側に操作するように構成している。
これにより、最初に静油圧式無段変速装置の油圧モータを低速側に操作することによって、走行用の駆動力(トルク)の不足を避けながら、エンジンに大きな負荷が掛からないようにすることができるのであり、これでもなお走行負荷の増大が抑えられない場合、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプを低速側に操作することによって、エンジンに大きな負荷が掛からないようにすることができる。この場合、静油圧式無段変速装置の油圧モータが低速側に操作されると、走行用の駆動力(トルク)が不足する状態になることが考えられるのであるが、本発明の第1特徴ではエンジンに大きな負荷が掛からないようにすることを優先している。
【0013】
[I]−3
本発明の第1特徴によれば、走行負荷が増大すると、静油圧式無段変速装置の油圧モータを低速側に操作し、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプを低速側に操作するように構成しているので、減速範囲が静油圧式無段変速装置の油圧モータから油圧ポンプに亘る大きなものになる。
これによって、走行負荷が小さなものになる作業地の状態や作業条件等から、走行負荷が大きなものになる作業地の状態や作業条件等まで、各種の作業地の状態や作業条件等の広い範囲に対応することができるようになる。
【0014】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によれば、走行用の静油圧式無段変速装置を備えた作業車の走行変速構造において、走行負荷が増大すると、最初に静油圧式無段変速装置の油圧モータを低速側に操作し、次に静油圧式無段変速装置の油圧ポンプを低速側に操作するように構成することにより、走行用の駆動力(トルク)の不足を避けながら、エンジンに大きな負荷が掛からないようにすることができて、作業車の走行性能を向上させることができた。
本発明の第1特徴によると、減速範囲が静油圧式無段変速装置の油圧モータから油圧ポンプに亘る大きなものになるので、各種の作業地の状態や作業条件等の広い範囲に対応することができるようになって、作業車の走行性能を向上させることができた。
【0015】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の作業車の走行変速構造において次のように構成することにある。
人為的に操作される油圧モータ操作具と、人為的に操作される油圧ポンプ操作具とを備える。油圧モータ操作具の操作位置に対応する変速位置に静油圧式無段変速装置の油圧モータが操作され、油圧ポンプ操作具の操作位置に対応する変速位置に静油圧式無段変速装置の油圧ポンプが操作されるように構成する。
【0016】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によると、運転者が油圧モータ操作具を操作することにより、静油圧式無段変速装置の油圧モータを操作することができ、運転者が油圧ポンプ操作具を操作することにより、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプを操作することができる。これによって、静油圧式無段変速装置の変速範囲を油圧モータから油圧ポンプに亘る大きなものになるのであり、運転者が油圧モータ操作具及び油圧ポンプ操作具を操作することにより、静油圧式無段変速装置の大きな変速範囲から所望の変速位置を設定することができる。
【0017】
本発明の第2特徴によれば、走行負荷が増大すると、静油圧式無段変速装置の油圧モータが油圧モータ操作具の操作位置に対応する変速位置から低速側に操作されるのであり、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプが油圧ポンプ操作具の操作位置に対応する変速位置から低速側に操作される。
【0018】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、運転者が油圧モータ操作具及び油圧ポンプ操作具を操作することにより、静油圧式無段変速装置の大きな変速範囲から所望の変速位置を設定することができ、各種の作業地の状態や作業条件等の広い範囲に対応することができるようになって、作業車の走行性能を向上させることができた。
【0019】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第1又は第2特徴の作業車の走行変速構造において次のように構成することにある。
油圧モータ減速手段及び油圧ポンプ減速手段が作動した後において、走行負荷が減少すると、静油圧式無段変速装置の油圧モータ及び油圧ポンプの一方を高速側に操作する復帰手段を備える。
【0020】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
走行負荷の増大により、静油圧式無段変速装置の油圧モータが低速側に操作され、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプが低速側に操作された後において、走行負荷が減少した場合、静油圧式無段変速装置の油圧モータ及び油圧ポンプの両方が同時に高速側に操作されるように構成すると、静油圧式無段変速装置が大きく高速側に操作されることになる。
従って、この後に直ぐに走行負荷が増大すれば、静油圧式無段変速装置の油圧モータ及び油圧ポンプが低速側に操作されることになり、機体の走行速度が高速側及び低速側に頻繁に変化することになって、乗り心地の面で好ましくない。
【0021】
本発明の第3特徴によれば、走行負荷の増大により、静油圧式無段変速装置の油圧モータが低速側に操作され、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプが低速側に操作された後において、走行負荷が減少すると、静油圧式無段変速装置の油圧モータ及び油圧ポンプの一方が高速側に操作されるのであり、静油圧式無段変速装置の油圧モータ及び油圧ポンプの他方は高速側に操作されない。
このように走行負荷が減少した場合、静油圧式無段変速装置の油圧モータ及び油圧ポンプの一方を高速側に操作するように構成することにより、静油圧式無段変速装置が高速側に操作され過ぎる状態(機体の走行速度が高速側に復帰し過ぎる状態)は生じ難いので、この後に直ぐに走行負荷が増大しても、この後に静油圧式無段変速装置の油圧モータ及び油圧ポンプの一方が低速側に操作されるような状態は生じ難い。
【0022】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、走行負荷が減少した場合、静油圧式無段変速装置が高速側に操作され過ぎる状態(機体の走行速度が高速側に復帰し過ぎる状態)が生じ難いようにすることにより、機体の走行速度が高速側及び低速側に頻繁に変化する状態を少なくすることができて、乗り心地の向上を図ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[1]
図1に示すように、右及び左のクローラ式の走行装置1で支持された機体の前部に刈取部2が昇降自在に支持され、機体の前部の右側に運転部3が備えられて、機体の後部の左側に脱穀装置4が備えられ、機体の後部の右側にグレンタンク5が備えられて、作業車の一例である自脱型のコンバインが構成されている。
【0024】
図2に示すように、運転部3の下側にエンジン6が備えられ、機体の前部の左右中央付近にミッションケース8が備えられて、静油圧式無段変速装置7がミッションケース8の右側部の上部に連結されており、静油圧式無段変速装置7の入力軸7aとエンジン6の出力軸6aとに亘って、テンションクラッチ機能を備えたベルト伝動機構9が接続されている。
【0025】
図2に示すように、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bがミッションケース8に挿入され、スプライン構造により低速ギヤ10(伝動軸12)に連結されており、伝動軸12に高速ギヤ11が固定されている。出力軸13に低速ギヤ14及び高速ギヤ15が相対回転自在に外嵌されて、低速ギヤ10,14及び高速ギヤ11,15が咬合しており、シフト部材16がスプライン構造により出力軸13にスライド及び一体回転自在に外嵌されている。出力軸13と刈取部2の入力軸2aとに亘って、伝動ベルトによりテンションクラッチ型式の刈取クラッチ17が備えられている。エンジン6の出力軸6aの動力が、テンションクラッチ型式の脱穀クラッチ54(図4参照)を介して、脱穀装置4に伝達されるように構成されている。
【0026】
図2に示すように、シフト部材16を低速ギヤ14に咬合させると(低速位置)、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bの動力が低速ギヤ10,14及びシフト部材16を介して低速状態で刈取部2に伝達され、シフト部材16を高速ギヤ15に咬合させると(高速位置)、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bの動力が高速ギヤ11,15及びシフト部材16を介して高速状態で刈取部2に伝達される。以上のように、低速ギヤ10,14及び高速ギヤ11,15、シフト部材16等により、高低2段に変速自在な刈取変速装置18が構成されている。
【0027】
[2]
次に、ミッションケース8の伝動系(直進系)の構造について説明する。
図2に示すように、伝動軸20に伝動ギヤ19が相対回転自在に外嵌されて、伝動ギヤ19が低速ギヤ10に咬合しており、シフト部材21がスプライン構造により伝動軸20にスライド及び一体回転自在に外嵌されている。伝動軸20に伝動ギヤ22,23が固定されており、伝動軸20の端部に多板摩擦式の駐車ブレーキ24が備えられている。
【0028】
図2に示すように、通常はシフト部材21は伝動ギヤ19に咬合しており、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bの動力が低速ギヤ10及び伝動ギヤ19を介して、伝動軸20に伝達されている。故障等による機体の牽引時において、シフト部材21を伝動ギヤ19から離間させることにより、右及び左の走行装置1と静油圧式無段変速装置7とをシフト部材21の位置で遮断することができるのであり、静油圧式無段変速装置7の抵抗を受けることなく機体を牽引することができる。
【0029】
図2に示すように、伝動軸26に伝動ギヤ25が固定されて、伝動ギヤ22,25が咬合している。伝動軸26に右及び左の出力ギヤ27が相対回転自在に外嵌され、右及び左の出力ギヤ27の右及び左側に、右及び左の咬合部28がスプライン構造により伝動軸26にスライド及び一体回転自在に外嵌されている。右及び左の車軸29が備えられ、右及び左の車軸29に固定された右及び左の伝動ギヤ30が、右及び左の出力ギヤ27に咬合しており、右及び左の車軸29の端部に右及び左の走行装置1のスプロケット1a(図1参照)が連結されている。
【0030】
図2に示すように、伝動軸26に固定された受け部材31と右の咬合部28との間にバネ32が備えられ、伝動ギヤ25と左の咬合部28との間にバネ32が備えられて、右及び左の咬合部28がバネ32により右及び左の出力ギヤ27の咬合側に付勢されている。右の出力ギヤ27と右の咬合部28との間に右の油室が形成され、左の出力ギヤ27と左の咬合部28との間に左の油室が形成されており、右及び左の油室に作動油を供給することにより、バネ32に抗して右及び左の咬合部28を右及び左の出力ギヤ27から離間させることができる。
【0031】
図2に示すように、右の出力ギヤ27と右の咬合部28との間で咬合式の右のサイドクラッチ33が構成され、左の出力ギヤ27と左の咬合部28との間で咬合式の左のサイドクラッチ33が構成されている。右(左)の咬合部28が右(左)の出力ギヤ27に咬合することにより、右(左)のサイドクラッチ33が伝動状態となり、右(左)の咬合部28が右(左)の出力ギヤ27から離間することにより、右(左)のサイドクラッチ33が遮断状態となる。
【0032】
以上の構造により図2に示すように、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bの動力が、低速ギヤ10、伝動ギヤ19、伝動軸20、伝動ギヤ22,25、伝動軸26、右及び左の咬合部28、右及び左の出力ギヤ27、右及び左の伝動ギヤ30、右及び左の車軸29を介して、右及び左の走行装置1に伝達されて、機体は直進する。
【0033】
[3]
次に、ミッションケース8の伝動系(旋回系)の構造について説明する。
図2に示すように、伝動軸34に相対回転自在に外嵌された伝動ギヤ35が、右の咬合部28の外周部のギヤ部に咬合しており、伝動軸34と伝動ギヤ35との間に緩旋回クラッチ36が備えられている。緩旋回クラッチ36は摩擦多板式に構成されて遮断状態に付勢されており、作動油が供給されることで伝動状態に操作され、作動油が排出されることで遮断状態に操作される。
【0034】
図2に示すように、伝動軸26に旋回クラッチケース37が相対回転自在に外嵌されており、伝動軸34に固定された伝動ギヤ38と旋回クラッチケース37の外周部のギヤ部とが咬合している。旋回クラッチケース37は左右対称に構成されており、旋回クラッチケース37と右の出力ギヤ27との間に右の旋回クラッチ39が備えられ、旋回クラッチケース37と左の出力ギヤ27との間に左の旋回クラッチ39が備えられている。右及び左の旋回クラッチ39は摩擦多板式に構成されており、作動油が供給されることで伝動状態に操作される。この場合、右及び左の旋回クラッチ39において、摩擦板が互いに密になるように配置されており、作動油が排出されても右及び左の旋回クラッチ39が半伝動状態となるように構成されている。
【0035】
これにより、図2に示すように、緩旋回クラッチ36が伝動状態に操作されると、伝動軸26の動力が右の咬合部28、伝動ギヤ35、緩旋回クラッチ36、伝動軸34及び伝動ギヤ38を介して、伝動軸26と同方向で伝動軸26よりも低速の動力として、旋回クラッチケース37に伝達される。緩旋回クラッチ36の伝動状態において、右又は左のサイドクラッチ33が遮断状態に操作され、右又は左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作されると、伝動軸26と同方向で伝動軸26よりも低速の動力が右又は左の出力ギヤ27に伝達される。
【0036】
図2に示すように、伝動軸34の左側にブレーキ40が備えられている。ブレーキ40は摩擦多板式に構成されて、作動油が供給されることで制動状態に操作され、作動油が排出されることで解除状態に操作される。
これにより図2に示すように、ブレーキ40が制動状態に操作されると、伝動軸34及び伝動ギヤ38を介して、旋回クラッチケース37が制動状態となる。ブレーキ40の制動状態において、右又は左のサイドクラッチ33が遮断状態に操作され、右又は左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作されると、右又は左の出力ギヤ27が制動状態となる。
【0037】
図2に示すように、伝動軸34に伝動ギヤ41が相対回転自在に外嵌されて、伝動ギヤ23,41が咬合しており、伝動軸34と伝動ギヤ41との間に、逆転クラッチ42が備えられている。逆転クラッチ42は摩擦多板式に構成されて遮断状態に付勢されており、作動油が供給されることで伝動状態に操作され、作動油が排出されることで遮断状態に操作される。
【0038】
これにより、図2に示すように、逆転クラッチ42が伝動状態に操作されると、伝動軸20の動力が伝動ギヤ23,41、逆転クラッチ42、伝動軸34及び伝動ギヤ38を介して、伝動軸26と逆方向の動力として、旋回クラッチケース37に伝達される。逆転クラッチ42の伝動状態において、右又は左のサイドクラッチ33が遮断状態に操作され、右又は左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作されると、伝動軸26と逆方向の動力が右又は左の出力ギヤ27に伝達される。
【0039】
[4]
次に、静油圧式無段変速装置7の油圧回路構造について説明する。
図5に示すように、静油圧式無段変速装置7はアキシャルプランジャ型式の油圧ポンプ7P及び油圧モータ7Mを備え、油圧ポンプ7P及び油圧モータ7Mを一対の油路7cで接続して構成されている。静油圧式無段変速装置7の入力軸7aにチャージポンプ44が接続されて、静油圧式無段変速装置7の入力軸7aによりチャージポンプ44が駆動される。
【0040】
図5に示すように、静油圧式無段変速装置7の油路7cに亘ってバイパス油路83が接続され、チャージポンプ44から延出されたチャージ油路45がバイパス油路83に接続されており、チャージ油路45にフィルタ49が備えられている。バイパス油路83においてチャージ油路45が接続される部分と静油圧式無段変速装置7の油路7cとの間に、逆止弁84及び絞り部85、リリーフ弁86が備えられており、リリーフ弁86のリリーフ圧が、静油圧式無段変速装置7の全体として許容される最高圧力に設定されている。ミッションケース8とは別に備えられたオイルタンク46と、チャージポンプ44とに亘って、供給油路47が接続されており、供給油路47にフィルタ48が備えられている。
【0041】
図5に示すように、チャージ油路45にリリーフ弁50が接続されて、リリーフ弁50が静油圧式無段変速装置7を収容するケース51に接続されている。ケース51とオイルタンク46とに亘って油路52が接続され、油路52にオイルクーラー53が備えられている。以上の構造により、オイルタンク46の作動油が、フィルタ48、供給油路47、チャージポンプ44、チャージ油路45を介して静油圧式無段変速装置7の油路7cに供給されて、余剰の作動油がリリーフ弁50を介してケース51に排出される。静油圧式無段変速装置7の各部からの作動油がケース51に排出されるのであり、ケース51の作動油が油路52及びオイルクーラー53を通過してオイルタンク46に戻される。
【0042】
[5]
次に、静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7Pの操作構造について説明する。
図4及び図5に示すように、静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7Pは中立位置N、前進側F及び後進側Rに無段階に変速自在に構成されている。運転者が操作する変速レバー43(油圧ポンプ操作具に相当)が運転部3に備えられ、変速レバー43と静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7Pの斜板7Paとが、連係リンク80を介して機械的に連係されている。
【0043】
図4に示すように、変速レバー43に操作力(アシスト力)を付加する電動モータ55と、変速レバー43が前進側F又は後進側Rに操作されようとしていることを検出する操作センサー(図示せず)とが備えられており、操作センサーの検出値に基づいて電動モータ55が制御装置79により以下のように操作される。
【0044】
図4に示すように、変速レバー43が前進側Fに操作されようとすると、この操作が操作センサーにより検出されて、電動モータ55が作動して前進側Fへの操作力を変速レバー43に与える。変速レバー43が後進側Rに操作されようとすると、この操作が操作センサーにより検出されて、電動モータ55が作動して後進側Rへの操作力を変速レバー43に与える。
【0045】
図4に示すように、変速レバー43により静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7P(斜板7Pa)を操作して、静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7P(斜板7Pa)を中立位置N、前進側F及び後進側Rに操作するのであり、電動モータ55の操作力の付加によって、変速レバー43により静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7P(斜板7Pa)を前進側F及び後進側Rに楽に操作することができる。変速レバー43の前進側F及び後進側Rへの操作が止まると、電動モータ55も停止して、電動モータ55の停止により静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7P(斜板7Pa)が保持される(油圧ポンプ操作具の操作位置に対応する変速位置に静油圧式無段変速装置の油圧ポンプが操作される状態に相当)。
【0046】
[6]
次に、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ54、刈取変速装置18の操作について説明する。
図4に示すように、変速レバー43の上部の握り部43aにおいて、変速レバー43の握り部43aの横面部の下部に、走行変速スイッチ81(油圧モータ操作具に相当)が備えられており、変速レバー43の握り部43aの後面部の上部に、刈取変速スイッチ82(油圧モータ操作具に相当)か備えられている。走行変速スイッチ81及び刈取変速スイッチ82は押しボタン型式に構成されて戻り側(突出側)に付勢されており、走行変速スイッチ81及び刈取変速スイッチ82の操作信号が制御装置79に入力される。
【0047】
図4及び図5に示すように、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mは、高速位置H及び低速位置Lの範囲で無段階に変速自在に構成されて、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mの斜板7Maを操作する操作シリンダ56が備えられている。操作シリンダ56の位置を検出するポテンショメータ89が備えられて、ポテンショメータ89により操作シリンダ56の位置を検出することにより、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mの斜板7Maの位置が検出されるのであり、ポテンショメータ89の検出値が制御装置79に入力されている。
【0048】
図4及び図5に示すように、チャージ油路45から油路57が分岐し、操作シリンダ56を高速側に作動させる油室56aに油路57が接続されており、操作シリンダ56を低速側に付勢するバネ56bが備えられている。電磁操作型式の圧力制御弁58が油路57に備えられており、操作シリンダ56の油室56aの圧力が上昇すると、操作シリンダ56のバネ56bに抗して操作シリンダ56が高速側に作動するのであり、操作シリンダ56の油室56aの圧力が下降すると、操作シリンダ56のバネ56bにより操作シリンダ56が低速側に作動する。
【0049】
図4に示すように、操作モータ65が備えられて、操作モータ65と刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ54、刈取変速装置18とが機械的に連係されており、操作モータ65により刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ54、刈取変速装置18が操作される。操作モータ65により、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ54が遮断状態に操作されて刈取変速装置18が低速位置に操作された状態、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ54が伝動状態に操作されて刈取変速装置18が低速位置に操作された状態、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ54が伝動状態に操作されて刈取変速装置18が高速位置に操作された状態の3状態が現出される。
【0050】
図6に示すように、移動走行状態、標準刈取状態及び低速刈取状態が設定されており、移動走行状態、標準刈取状態及び低速刈取状態において、図4及び図6に示すように、制御装置79により圧力制御弁58及び操作モータ65、運転部3に備えられた表示部87が以下のように操作される。
【0051】
図4及び図6に示すように、移動走行状態は、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が移動走行用の高速位置Hに操作され、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ54が遮断状態に操作され、刈取変速装置18が低速位置に操作された状態であり、表示部87に高速位置Hが表示される。
標準刈取状態は、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が刈取作業用の中速位置Mに操作され、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ54が伝動状態に操作され、刈取変速装置18が低速位置に操作された状態であり、表示部87に中速位置Mが表示される。
低速刈取状態は、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が倒伏が激しい作物を刈り取る倒伏刈取作業用の低速位置Lに操作され、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ54が伝動状態に操作され、刈取変速装置18が高速位置に操作された状態であり、表示部87に低速位置Lが表示される。
【0052】
走行変速スイッチ81及び刈取変速スイッチ82の押し操作に基づいて、制御装置79により圧力制御弁58及び操作モータ65が以下のように操作される(油圧モータ操作具の操作位置に対応する変速位置に静油圧式無段変速装置の油圧モータが操作される状態に相当)。
【0053】
図6に示すように、移動走行状態が設定された状態において走行変速スイッチ81が押し操作されると、標準刈取状態が設定され、標準刈取状態が設定された状態において走行変速スイッチ81が押し操作されると、移動走行状態が設定される。このように、走行変速スイッチ81が押し操作される毎に、移動走行状態及び標準刈取状態が交互に設定される。
この場合、図6に示すように、移動走行状態が設定された状態において刈取変速スイッチ82が押し操作されても、この押し操作が無視されて移動走行状態が維持される。走行変速スイッチ81が押し操作されることにより、標準刈取状態が設定された状態において刈取変速スイッチ82が押し操作されると、低速刈取状態が設定される。
【0054】
図6に示すように、標準刈取状態が設定された状態において、刈取変速スイッチ82が押し操作されると、低速刈取状態が設定される。低速刈取状態が設定された状態において刈取変速スイッチ82が押し操作されると、標準刈取状態が設定される。このように刈取変速スイッチ82が押し操作される毎に、標準刈取状態及び低速刈取状態が交互に設定される。
この場合、図6に示すように、低速刈取状態が設定された状態において走行変速スイッチ81が押し操作されても、この押し操作が無視されて低速刈取状態が維持される。刈取変速スイッチ82が押し操作されることにより、標準刈取状態が設定された状態において走行変速スイッチ81が押し操作されると、移動走行状態が設定される。
【0055】
[7]
次に、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)の自動的な低速側への操作(油圧モータ減速手段)について、前項[6]に記載の移動走行状態が設定された状態により、図7に基づいて説明する。
【0056】
前項[6]に記載のように移動走行状態が設定されると、ポテンショメータ89の検出値に基づいて、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が高速位置Hに位置するように、圧力制御弁58の電流制御が行われる(操作シリンダ56の油室56aの圧力制御が行われる)(ステップS1)。
【0057】
静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷(走行負荷に相当)が増大すると、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が、静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷により低速側に操作されようとするのであるが、ポテンショメータ89の検出値に基づいて圧力制御弁58の電流値Aが上昇操作されて(操作シリンダ56の油室56aの圧力が昇圧操作されて)、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が高速位置Hに維持される(図8(a)の実線参照)(ステップS1,S2,S3)。この場合、表示部87に隣接して備えられたランプ88は消灯している(ステップS3)。
【0058】
静油圧式無段変速装置7の油路7cの圧力と圧力制御弁58の電流値Aとの関係が事前に把握されており、リリーフ弁86が開く圧力よりも少しだけ低い圧力に対応する電流値Aが、第1上限値A1として設定されている。静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷の増大により、圧力制御弁58の電流値Aが上昇操作されて(操作シリンダ56の油室56aの圧力が昇圧操作されて)、圧力制御弁58の電流値Aが第1上限値A1に達すると(ステップS2)、ランプ88が点滅し(ステップS4)、圧力制御弁58の電流値Aが第1上限値A1に固定される(図8(a)の実線参照)(ステップS5)。
【0059】
圧力制御弁58の電流値Aが第1上限値A1に固定された状態であると(ステップS5)、静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷が増大すれば、操作シリンダ56の油室56aの圧力が静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷に負けて、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が低速側に操作される(図8(a)の一点鎖線参照)。
【0060】
静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷が増大するのに伴って、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が高速位置Hから中速位置Mに達すると(図8(a)の一点鎖線参照)(ステップS6,S7)、ランプ88が点滅した状態で(ステップS8)圧力制御弁58の電流値Aが第1上限値A1から第2上限値A2に変更されて固定される(図8(b)の実線参照)(ステップS9)。第2上限値A2は、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が中速位置Mに位置する際の圧力制御弁58の電流値Aであるので、図8(b)の実線に示す状態となる(走行負荷が増大すると、静油圧式無段変速装置の油圧モータを低速側に操作する油圧モータ減速手段に相当)。
【0061】
圧力制御弁58の電流値Aが第2上限値A2に固定された状態であると(ステップS9)、静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷が増大すれば、操作シリンダ56の油室56aの圧力が静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷に負けて、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が低速側に操作される(図8(b)の一点鎖線参照)。
【0062】
静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷が増大するのに伴って、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が中速位置Mから低速位置Lに達すると(図8(b)の一点鎖線参照)(ステップS10,S11)、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が、これ以上に低速側に操作されない状態となり、ステップS11からステップS13,S14,S15,S16に移行する。
【0063】
[8]
次に、静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7P(斜板7Pa)の自動的な低速側への操作(油圧ポンプ減速手段)について、前項[6]に記載の移動走行状態が設定された状態により、前項[7]に引き続いて図7に基づいて説明する。
【0064】
図4に示すように、エンジン6の回転数Eを検出する回転数センサー90が備えられており、回転数センサー90の検出値が制御装置79に入力されている。運転部3にダイヤル操作型式のアクセル操作具91が備えられて、アクセル操作具91の操作位置が制御装置79に入力されている。アクセル操作具91は無負荷状態でのエンジン6の回転数E2を設定するものであり、アクセル操作具91の操作位置に基づいてエンジン6の電子ガバナ(図示せず)が操作される。
【0065】
静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷が増大するのに伴って、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が中速位置Mから低速位置Lに達すると(図8(b)の一点鎖線参照)(ステップS10,S11)、ランプ88が点滅した状態で(ステップS13)、回転数センサー90によりエンジン6の回転数E1が検出されて(ステップS14)、アクセル操作具91によって設定された無負荷状態でのエンジン6の回転数E2とエンジン6の回転数Eとが比較される(ステップS15)。
【0066】
無負荷状態でのエンジン6の回転数E2とエンジン6の回転数E1との差(走行負荷に相当)が設定値E3よりも大きいと(ステップS15)、走行負荷が増大したと判断されて、電動モータ55により変速レバー43が所定量だけ低速側に操作され、これに伴って静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7P(斜板7Pa)が所定量だけ低速側に操作される(ステップS16)(油圧モータ減速手段により静油圧式無段変速装置の油圧モータが低速側に操作されても、走行負荷が増大すると、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプを低速側に操作する油圧ポンプ減速手段に相当)。
【0067】
前述のように静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7P(斜板7Pa)が所定量だけ低速側に操作されても、エンジン6の回転数E2とエンジン6の回転数E1との差が設定値E3よりも大きいと(ステップS15)、再び電動モータ55により変速レバー43が所定量だけ低速側に操作され、これに伴って静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7P(斜板7Pa)が所定量だけ低速側に操作される(ステップS16)。この間、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)は低速位置Lに維持された状態となる。
【0068】
[9]
次に、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)の自動的な高速側への操作(復帰手段)について、前項[6]に記載の移動走行状態が設定された状態により、前項[7][8]に引き続いて図7に基づいて説明する。
【0069】
ステップS13〜S16のように、静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7P(斜板7Pa)が所定量だけ低速側に操作された状態において、無負荷状態でのエンジン6の回転数E2とエンジン6の回転数E1との差が設定値E3よりも小さくなると(ステップS15)、走行負荷が減少したと判断されて、静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7P(斜板7Pa)の低速側への操作が停止され(ステップS17)、変速レバー43及び静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7P(斜板7Pa)が停止された位置に残される。
【0070】
次にステップS17からステップS8〜S12に移行する。この時点では、圧力制御弁58の電流値Aが第2上限値A2に固定されているが(ステップS9)、静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷により、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が低速位置Lに位置している(図8(b)の一点鎖線参照)。
この状態において、圧力制御弁58の電流値Aが第2上限値A2に固定された状態であるので(ステップS9)、静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷が減少すると、操作シリンダ56の油室56aの圧力が静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷に勝ち、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が高速側に操作される。
【0071】
静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷が減少するのに伴って、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が低速位置Lから中速位置Mに達すると(図8(b)の実線参照)(ステップS10,S12)、ステップS12からステップS4に移行し、圧力制御弁58の電流値Aが第2上限値A2から第1上限値A1に変更されて固定される(ステップS5)(油圧モータ減速手段及び油圧ポンプ減速手段が作動した後において、走行負荷が減少すると、静油圧式無段変速装置の油圧モータ及び油圧ポンプの一方を高速側に操作する復帰手段に相当)。
【0072】
この時点では、圧力制御弁58の電流値Aが第1上限値A1に固定されているが(ステップS5)、静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷によって、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が中速位置Mに位置している(図8(a)の一点鎖線参照)。
この状態において、圧力制御弁58の電流値Aが第1上限値A1に固定された状態であるので(ステップS5)、静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷が減少すると、操作シリンダ56の油室56aの圧力が静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷に勝ち、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が高速側に操作される。
【0073】
静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷が減少するのに伴って、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が中速位置Mから高速位置Hに達すると(図8(a)の実線)(ステップS2)、ランプ88が消灯し(ステップS3)、ステップS1に移行する。これによって、前項[7]に記載のように、ポテンショメータ89の検出値に基づいて、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が高速位置Hに位置するように、圧力制御弁58の電流制御が行われる(操作シリンダ56の油室56aの圧力制御が行われる)(ステップS1)。
【0074】
[10]
前項[7][8][9]では、前項[6]に記載の移動走行状態が設定された状態について説明している。これに対し、前項[6]に記載の標準刈取状態が設定されると、図7のステップS1〜S12に代えて、以下のような操作が行われる。
【0075】
前項[6]に記載の標準刈取状態が設定されると、ポテンショメータ89の検出値に基づいて、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が中速位置Mに位置するように、圧力制御弁58の電流制御が行われる(操作シリンダ56の油室56aの圧力制御が行われる)。静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷(走行負荷に相当)が増大すると、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が、静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷により低速側に操作されようとするのであるが、ポテンショメータ89の検出値に基づいて、圧力制御弁58の電流値Aが上昇操作されて(操作シリンダ56の油室56aの圧力が昇圧操作されて)、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が中速位置Mに維持される。
【0076】
圧力制御弁58の電流値Aが上昇操作されて(操作シリンダ56の油室56aの圧力が昇圧操作されて)、圧力制御弁58の電流値Aが第3上限値(事前に設定されている)に達すると、ランプ88が点滅し、圧力制御弁58の電流値Aが第3上限値に固定される。圧力制御弁58の電流値Aが第3上限値に固定された状態であると、静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷が増大すれば、操作シリンダ56の油室56aの圧力が静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷に負けて、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が低速側に操作される。
【0077】
静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷が増大するのに伴って、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が中速位置Mから低速位置Lに達すると、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が、これ以上に低速側に操作されない状態となり、図7のステップS13〜S17に移行する。
【0078】
図7のステップS13〜S17において、無負荷状態でのエンジン6の回転数E2とエンジン6の回転数E1との差が設定値E3よりも大きいと、走行負荷が増大したと判断されて、電動モータ55により変速レバー43が所定量だけ低速側に操作され、これに伴って静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7P(斜板7Pa)が所定量だけ低速側に操作される。
無負荷状態でのエンジン6の回転数E2とエンジン6の回転数E1との差が設定値E3よりも小さくなると、走行負荷が減少したと判断されて、静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7P(斜板7Pa)の低速側への操作が停止され、変速レバー43及び静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7P(斜板7Pa)が停止された位置に残されて、図7のステップS13〜S17に移行する前の状態に戻る。
【0079】
この時点では、圧力制御弁58の電流値Aが第3上限値に固定されているが、静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷により、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が低速位置Lに位置している。
この状態において、圧力制御弁58の電流値Aが第3上限値に固定された状態であるので、静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷が減少すると、操作シリンダ56の油室56aの圧力が静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷に勝ち、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が高速側に操作される。
【0080】
静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷が減少するのに伴って、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が低速位置Lから中速位置Mに達すると、ポテンショメータ89の検出値に基づいて、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が中速位置Mに位置するように、圧力制御弁58の電流制御が行われる状態(操作シリンダ56の油室56aの圧力制御が行われる状態)に復帰する。
【0081】
前項[6]に記載の低速刈取状態が設定されると、ポテンショメータ89の検出値に基づいて、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が低速位置Lに位置するように、圧力制御弁58の電流制御が行われる状態において、図7のステップS13〜S17が行われる。
【0082】
[11]
次に、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)、右及び左の旋回クラッチ39、緩旋回クラッチ36、ブレーキ40、逆転クラッチ42に作動油を給排操作する油圧ユニット59について説明する。
図2及び図3に示すように、油圧ユニット59がミッションケース8の左側部の下部に連結されている。静油圧式無段変速装置7の入力軸7aに油圧ポンプ60が接続され、静油圧式無段変速装置7の入力軸7aにより油圧ポンプ60が駆動されるように構成されており、油圧ポンプ60から延出された油路61が油圧ユニット59に接続されている。
【0083】
図3に示すように、ミッションケース8と油圧ポンプ60とに亘って供給油路62が接続されて、供給油路62にオイルクーラー63が備えられており、供給油路62における油圧ポンプ60とオイルクーラー63との間の部分にフィルタ64が備えられている。ミッションケース8に貯留された潤滑油が作動油として、オイルクーラー63及びフィルタ64を通過して油圧ポンプ60に供給される。油圧ポンプ60の作動油が油路61を介して油圧ユニット59に供給されるのであり、後述するように油圧ユニット59の各部から排出された作動油がミッションケース8に戻される。
【0084】
図3に示すように、油圧ユニット59の内部に右旋回制御弁67、左旋回制御弁68、第1リリーフ弁69、アンロード弁70、第2リリーフ弁76、比例制御弁71、旋回切換制御弁72、パイロット操作弁73,74が備えられている。油圧ポンプ60の油路61が油圧ユニット59に接続され、油路61に接続された油路66に右及び左旋回制御弁67,68、第1リリーフ弁69、アンロード弁70が並列的に接続されている。
【0085】
図3に示すように、右旋回制御弁67が右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)及び右の旋回クラッチ39に接続されており、左旋回制御弁68が左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)及び左の旋回クラッチ39に接続されている。右及び左旋回制御弁67,68は供給位置67a,68a及び排出位置67b,68bに操作自在な電磁操作型式に構成されて、排出位置67b,68bに付勢されている。アンロード弁70は遮断位置70a及び排出位置70bに操作自在な電磁操作型式に構成されて、遮断位置70aに付勢されている。
【0086】
図3に示すように、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)から分岐した油路75に、第2リリーフ弁76が接続され、油路75に比例制御弁71及び旋回切換制御弁72が直列的に接続されており、旋回切換制御弁72が緩旋回クラッチ36、ブレーキ40及び逆転クラッチ42に接続されている。比例制御弁71は電磁操作型式に構成されて、作動油の圧力制御が可能である。旋回切換制御弁72は、緩旋回位置72a、信地旋回位置72b及び超信地旋回位置72cに操作自在なパイロット操作型式に構成されており、緩旋回位置72aに付勢されている。この場合、第1リリーフ弁69のリリーフ圧が比較的高い値に設定され、第2リリーフ弁76のリリーフ圧が比較的低い値に設定されている。
【0087】
図3に示すように、油路75から分岐したパイロット作動油を旋回切換制御弁72に供給して信地旋回位置72bに操作するように、パイロット操作弁73が構成され、油路75から分岐したパイロット作動油を旋回切換制御弁72に供給して超信地旋回位置72cに操作するように、パイロット操作弁74が構成されている。油圧ユニット59とミッションケース8との連結面(合わせ面)に、ドレン油路(図示せず)が形成されており、右旋回制御弁67、左旋回制御弁68、第1リリーフ弁69、アンロード弁70、第2リリーフ弁76、比例制御弁71、旋回切換制御弁72、パイロット操作弁73,74の作動油がドレン油路を介してミッションケース8に戻される。
右及び左旋回制御弁67,68、アンロード弁70、比例制御弁71、パイロット操作弁73,74は、後述する[12][13][14][15]に記載のように、制御装置79によって操作される。
【0088】
[12]
次に、操向レバー77による直進状態について説明する。
図1及び図4に示すように、右及び左に操作自在な操向レバー77が運転部3に備えられ、操向レバー77の操作位置が制御装置79に入力されており、操向レバー77は直進位置N、右及び左第1旋回位置R1,L1、右及び左第2旋回位置R2,L2に操作自在に構成されている。ダイヤル操作型式の旋回モードスイッチ78が運転部3に備えられ、旋回モードスイッチ78の操作位置が制御装置79に入力されており、旋回モードスイッチ78は緩旋回位置、信地旋回位置及び超信地旋回位置を備えている。
【0089】
図2,3,4に示すように、旋回モードスイッチ78の操作位置に関係なく、操向レバー77が直進位置Nに操作されると、右及び左旋回制御弁67,68が排出位置67b,68bに操作され、アンロード弁70が排出位置70bに操作される。これにより、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)、右及び左の旋回クラッチ39から作動油が排出され、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)が伝動状態に操作されて、右及び左の旋回クラッチ39が半伝動状態に操作される。比例制御弁71により緩旋回及び逆転クラッチ36,42が遮断状態に操作され、ブレーキ40が解除状態に操作される。
【0090】
図2及び前項[2]に記載のように、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bの動力が、低速ギヤ10、伝動ギヤ19、伝動軸20、伝動ギヤ22,25、伝動軸26、右及び左の咬合部28、右及び左の出力ギヤ27、右及び左の伝動ギヤ30、右及び左の車軸29を介して、右及び左の走行装置1に伝達されて、機体は直進する。
【0091】
[13]
次に、操向レバー77による緩旋回状態について説明する。
図2,3,4に示すように、旋回モードスイッチ78が緩旋回位置に操作されると、パイロット操作弁73,74により旋回切換制御弁72が緩旋回位置72aに操作される。これにより、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)及び右の旋回クラッチ39に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。
【0092】
図2に示すように、左の旋回クラッチ39が半伝動状態であるので、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)の動力が、左の出力ギヤ27及び左の旋回クラッチ39から、右の旋回クラッチ39を介して右の出力ギヤ27に伝達され、伝動軸26と同方向で伝動軸26より少し低速の動力が右の出力ギヤ27に伝達される。これにより、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0093】
図2,3,4に示すように、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、前述のように右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されアンロード弁70が遮断位置70aに操作されるのと同時に、比例制御弁71及び旋回切換制御弁72(緩旋回位置72a)を介して、緩旋回クラッチ36に作動油が供給され始めるのであり、操向レバー77が右第1旋回位置R1から右第2旋回位置R2に操作されるほど、比例制御弁71により緩旋回クラッチ36の作動圧が昇圧操作される。
【0094】
図2,3,4に示すように、操向レバー77の操作位置に基づいて比例制御弁71により緩旋回クラッチ36の作動圧が昇圧操作されるのに伴って、伝動軸26の動力が右の咬合部28、伝動ギヤ35、緩旋回クラッチ36、伝動軸34、伝動ギヤ38、旋回クラッチケース37及び右の旋回クラッチ39を介して、伝動軸26と同方向で伝動軸26よりも低速の動力として右の出力ギヤ27に伝達される。
【0095】
この場合、図2に示すように、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力と緩旋回クラッチ36からの動力とが、同時に右の出力ギヤ27に伝達される状態となるので、緩旋回クラッチ36の作動圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力が緩旋回クラッチ36からの動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される。これにより緩旋回クラッチ36の作動圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0096】
次に操向レバー77の操作位置が右第2旋回位置R2に接近し、緩旋回クラッチ36の作動圧が高圧になると、図2に示すように、緩旋回クラッチ36からの動力が左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力に打ち勝って、緩旋回クラッチ36からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される。この状態において、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力により右の出力ギヤ27が駆動されるよりも、緩旋回クラッチ36からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される方が、右の出力ギヤ27が低速で駆動されることになり、機体は右に緩旋回する。
【0097】
図2,3,4に示すように、操向レバー77が左第1旋回位置L1に操作されると、左旋回制御弁68が供給位置68aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)及び左の旋回クラッチ39に作動油が供給され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)が遮断状態に操作されて、左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。これと同時に前述と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。操向レバー77が左第1旋回位置L1から左第2旋回位置L2に操作されると、前述と同様な操作が行われて、機体は左に緩旋回する。
【0098】
[14]
次に、操向レバー77による信地旋回状態について説明する。
図2,3,4に示すように、旋回モードスイッチ78が信地旋回位置に操作されると、パイロット操作弁73,74により旋回切換制御弁72が信地旋回位置72bに操作される。
これにより、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)及び右の旋回クラッチ39に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。この場合、左の旋回クラッチ39が半伝動状態であるので、前項[13]に記載と同様に機体は緩やかに右に向きを変える。
【0099】
図2,3,4に示すように、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、前述のように右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されアンロード弁70が遮断位置70aに操作されるのと同時に、比例制御弁71及び旋回切換制御弁72(信地旋回位置72b)を介して、ブレーキ40に作動油が供給され始めるのであり、操向レバー77が右第1旋回位置R1から右第2旋回位置R2に操作されるほど、比例制御弁71によりブレーキ40の作動圧が昇圧操作される。
【0100】
図2,3,4に示すように、操向レバー77の操作位置に基づいて比例制御弁71によりブレーキ40の作動圧が昇圧操作されるのに伴って、伝動軸34、伝動ギヤ38、旋回クラッチケース37及び右の旋回クラッチ39を介して、右の出力ギヤ27に制動力が掛かる。
【0101】
この場合、図2に示すように、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力と、ブレーキ40の制動力とが、同時に右の出力ギヤ27に伝達される状態となるので、ブレーキ40の作動圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力がブレーキ40の制動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される。これにより、ブレーキ40の作動圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0102】
次に操向レバー77の操作位置が右第2旋回位置R2に接近し、ブレーキ40の作動圧が高圧になると、図2に示すように、ブレーキ40の制動力が左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力に打ち勝って、ブレーキ40の制動力により右の出力ギヤ27が制動状態となり、機体は右に信地旋回する。
【0103】
図2,3,4に示すように、操向レバー77が左第1旋回位置L1に操作されると、左旋回制御弁68が供給位置68aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)及び左の旋回クラッチ39に作動油が供給され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)が遮断状態に操作されて、左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。これと同時に前述と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。操向レバー77が左第1旋回位置L1から左第2旋回位置L2に操作されると、前述と同様な操作が行われて、機体は左に信地旋回する。
【0104】
[15]
次に、操向レバー77による超信地旋回状態について説明する。
図2,3,4に示すように旋回モードスイッチ78が超信地旋回位置に操作されると、パイロット操作弁73,74により旋回切換制御弁72が超信地旋回位置72cに操作される。
これにより、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)及び右の旋回クラッチ39に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。この場合、左の旋回クラッチ39が半伝動状態であるので、前項[13]に記載と同様に機体は緩やかに右に向きを変える。
【0105】
図2,3,4に示すように、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、前述のように右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されアンロード弁70が遮断位置70aに操作されるのと同時に、比例制御弁71及び旋回切換制御弁72(超信地旋回位置72c)を介して、逆転クラッチ42に作動油が供給され始めるのであり、操向レバー77が右第1旋回位置R1から右第2旋回位置R2に操作されるほど、比例制御弁71により逆転クラッチ42の作動圧が昇圧操作される。
【0106】
図2,3,4に示すように、操向レバー77の操作位置に基づいて比例制御弁71により逆転クラッチ42の作動圧が昇圧操作されるのに伴って、伝動軸20の動力が伝動ギヤ23,41、逆転クラッチ42、伝動軸34、伝動ギヤ38、旋回クラッチケース37及び右の旋回クラッチ39を介して、伝動軸26と逆方向の動力として右の出力ギヤ27に伝達される。
【0107】
この場合、図2に示すように、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力と、逆転クラッチ42からの動力とが、同時に右の出力ギヤ27に伝達される状態となるので、逆転クラッチ42の作動圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力が逆転クラッチ42からの動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される。これにより逆転クラッチ42の作動圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0108】
次に操向レバー77の操作位置が右第2旋回位置R2に接近し、逆転クラッチ42の作動圧が高圧になると、図2に示すように、逆転クラッチ42からの動力が左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力に打ち勝って、逆転クラッチ42からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される。この状態において、左の出力ギヤ27に対して、右の出力ギヤ27が逆方向に駆動されて、機体は右に超信地旋回する。
【0109】
図2,3,4に示すように、操向レバー77が左第1旋回位置L1に操作されると、左旋回制御弁68が供給位置68aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)及び左の旋回クラッチ39に作動油が供給され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)が遮断状態に操作されて、左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。これと同時に前述と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。操向レバー77が左第1旋回位置L1から左第2旋回位置L2に操作されると、前述と同様な操作が行われて、機体は左に超信地旋回する。
【0110】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]の図7のステップS5,S9において、圧力制御弁58の電流値Aを第1及び第2上限値A1,A2に固定するのではなく、無負荷状態でのエンジン6の回転数E2とエンジン6の回転数E1との差が、設定値E3よりも小さい状態に維持されるように、圧力制御弁58の電流制御(操作シリンダ56の油室56aの圧力制御)を行って、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が低速側に操作されるように構成してもよい。
【0111】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]の[9][10]及び[発明の実施の第1別形態]において、静油圧式無段変速装置7に掛かる負荷(走行負荷)やエンジン6に掛かる負荷(走行負荷)が減少すると、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M(斜板7Ma)が高速側に操作されるのではなく、静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7P(斜板7Pa)が高速側に操作されるように構成してもよい。
【0112】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態][発明の実施の第2別形態]において、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mを高速位置H、中速位置M及び低速位置Lに操作自在に構成するのではなく、変速レバー43とは別の変速レバー(図示せず)(油圧モータ操作具に相当)により、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mを無段階に操作できるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】ミッションケースの縦断正面図
【図3】油圧ユニットの油圧回路構造を示す図
【図4】変速レバー、走行変速スイッチ、刈取変速スイッチ、操向レバー、旋回モードスイッチ、静油圧式無段変速装置、操作モータ及び油圧ユニットの関係を示す図
【図5】静油圧式無段変速装置の油圧回路構造を示す図
【図6】移動走行状態、標準刈取状態及び低速刈取状態を示す図
【図7】移動走行状態が設定された状態での制御の流れを示す図
【図8】移動走行状態が設定された状態での静油圧式無段変速装置の油圧モータの斜板の状態を示す図
【符号の説明】
【0114】
6 エンジン
7 静油圧式無段変速装置
7P 静油圧式無段変速装置の油圧ポンプ
7M 静油圧式無段変速装置の油圧モータ
43 油圧ポンプ操作具
81,82 油圧モータ操作具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動力が伝達される走行用の静油圧式無段変速装置を備え、前記静油圧式無段変速装置を伝動上手側の油圧ポンプと伝動下手側の油圧モータとを備えて構成し、
前記静油圧式無段変速装置の油圧ポンプを変速自在に構成して、前記静油圧式無段変速装置の油圧モータを変速自在に構成し、
前記走行負荷が増大すると、前記静油圧式無段変速装置の油圧モータを低速側に操作する油圧モータ減速手段を備え、
前記油圧モータ減速手段により静油圧式無段変速装置の油圧モータが低速側に操作されても、前記走行負荷が増大すると、前記静油圧式無段変速装置の油圧ポンプを低速側に操作する油圧ポンプ減速手段を備えてある作業車の走行変速構造。
【請求項2】
人為的に操作される油圧モータ操作具と、人為的に操作される油圧ポンプ操作具とを備えて、
前記油圧モータ操作具の操作位置に対応する変速位置に静油圧式無段変速装置の油圧モータが操作され、前記油圧ポンプ操作具の操作位置に対応する変速位置に静油圧式無段変速装置の油圧ポンプが操作されるように構成してある請求項1に記載の作業車の走行変速構造。
【請求項3】
前記油圧モータ減速手段及び油圧ポンプ減速手段が作動した後において、前記走行負荷が減少すると、前記静油圧式無段変速装置の油圧モータ及び油圧ポンプの一方を高速側に操作する復帰手段を備えてある請求項1又は2に記載の作業車の走行変速構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−101465(P2010−101465A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275438(P2008−275438)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】